(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記衝突判定手段は、前記車両通過情報に含まれる「到達可能な軌道」と、分岐情報に含まれる「分岐点に接している軌道」とが一致した場合に、「車両衝突の可能性あり」と判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両衝突警告システム。
前記通達手段は、車両衝突の可能性がある一の車両に警告を通達した上で、さらに他の車両に対しても警告を通達することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両衝突警告システム。
前記通達手段は、運行に携わるオペレータが目視可能な表示器、及び/又は、運行に携わるオペレータに警告を発することが可能な警告器を介して車両衝突の可能性を通達することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両衝突警告システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車両衝突警告システム1の実施の形態を、図を基に説明する。
本発明の車両衝突警告システム1は、工場内の線路などの軌道R上において様々な原料や製品を搬送するに際し、その搬送中の搬送用車両同士の衝突を未然に防ぐ作業を支援するものである。
以下、実施形態として、製鉄所を想定しつつ、溶銑を高炉4から転炉設備5まで搬送する混銑車3(トピードカー)の車両衝突警告システム1について説明する。
【0018】
図1に示すように、混銑車3(以下、車両と呼ぶこともある)は、高炉4から出た精錬処理前の溶銑を転炉設備5まで運搬する運搬車であり、予め敷設された線路によって構成される軌道R上を移動することで溶銑を搬送する。混銑車3は、まず高炉4で溶銑を受銑する。その後、混銑車3は除滓棟に移動して、溶銑上のスラグが取り除かれる。除滓後に、混銑車3は転炉設備5まで移動して、溶銑を取鍋に装入する。
【0019】
溶銑搬送を行う混銑車3は、樽形状であって内部に溶銑が装入される容器本体と、容器本体を支持すると共に、軌道R上を移動する台車とを備えて構成されている。容器本体と台車とが一体となった混銑車3は軌道R上を移動する。
製鉄所の敷地内に敷設された軌道Rは、旅客鉄道用車両が走行できる線路とほぼ同じ構成であり、左右一対のレールを備えている。この軌道Rは、分岐点(ポイント)を介して複数連結され、高炉4、予備精錬設備、転炉設備5などを結んでいる。各設備間を結んだ複数の軌道Rは、複雑に入り組んで敷設されている。軌道R上のポイントの切り替えによって、混銑車3が各設備に向かって走行できるようになっている。
【0020】
なお、混銑車3は、自走できないため、動力装置を有する機関車2に牽引され、軌道R上を走行している。製鉄所に敷設された軌道Rは、旅客鉄道用の軌道Rとは異なり、上り・下りの明確な区別はなされておらず、ある軌道Rを、混銑車3が一方から他方へ移動することもあれば、他方から一方へ移動することもある。つまり、混銑車3は、機関車2により牽引されるようにして移動することもあれば、機関車2で押されながら移動する状況になることもある。
【0021】
軌道R上を走行する混銑車3には、当該混銑車3の操縦・運転を行う運転オペレータMBが乗務している。その一方で、製鉄所の敷地内に設けられた管制室6には、混銑車3の配車を指示する管制オペレータMAが存在する。この管制オペレータMAは、効率的な混銑車3の配備、運行指示の指令を出す。
とはいえ、運転オペレータMBや管制オペレータMA(両者を併せて、運行オペレータMA,MBと呼ぶこともある)による運行管理には、人為的ミスに起因する事故(例えば、車両同士の衝突)の発生の可能性がある。そこで、本願発明の車両衝突警告システム1を用いることで、工場内に敷設された軌道R上を走行する複数の車両3に関し、車両3同士が衝突する可能性のある状況を検出し、運行に携わる運行オペレータMA,MBにその情報を通達することで、混銑車3の安全な運行に資することができるようになる。
【0022】
以下、本願発明の車両衝突警告システム1について、説明を行う。
図2に示すように、本実施形態に係る車両衝突警告システム1は、管制室6内に設置されたコンピュータ7(サーバ)と、このコンピュータ7で算出された「車両衝突の可能性」を表示する表示器(表示モニタ13)が備えられている。
図2に示すように、表示モニタ13には、製鉄所内の軌道路線図が表示されている。その軌道路線図には、軌道R上の全てのポイント(分岐点)と、そのポイントの間の軌道Rとが表示されている。
【0023】
さらに、表示モニタ13には、軌道R上を走行する全ての混銑車3の現在位置、運行方向が表示され、管制オペレータMAは、表示モニタ13の表示を見ながら混銑車3に関し配車の指令を出すことができるようになっている。加えて、この表示モニタ13には、混銑車3同士の衝突、すなわち「車両衝突の可能性」に対する警告が表示されるようになっている。管制オペレータMAは、表示モニタ13を目視することで、車両衝突の可能性を知ることができ、混銑車3の移動を止める指示などを運転オペレータMBに対して通達するなどの適切な対応を取ることが可能となる。
【0024】
この表示モニタ13と同内容を表示するモニタ(運行支援モニタ14)が、混銑車3乃至は混銑車3を牽引する機関車2の運転席に設けられることは好ましい。この場合、運転オペレータMBが運行支援モニタ14を目視することで、車両衝突の可能性を知ることができ、混銑車3の移動を止めるなどの適切な対応を取ることができる。
管制室6内に設置された表示モニタ13における「車両衝突の可能性」の警告は、衝突する可能性の高い混銑車3から順に警告を出すようにするとよい。例えば、表示モニタ13上で、衝突する可能性が高い混銑車3を赤色に点滅表示させ、その後乃至はほぼ同時に、衝突する可能性が低い混銑車3に対し、黄色の点滅表示を行わせるとよい。衝突の可能性がない混銑車3は、緑色の表示をするとよい。表示モニタ13による表示と併せて、ブザーなどの警告器による音での通達や、警告灯による光での通達を行うとよい。音、光による通達だけでもよい。
【0025】
ところで、車両衝突の可能性を正確に算出するためには、管制室6に配備されたコンピュータ7が全ての車両の現在位置を確実に把握する必要がある。そこで、軌道R上を走行する全ての車両3には、GPSを用いて当該車両3の位置や速度を検出する測位検出装置12が搭載されている。検出された車両3の位置や速度の情報は、無線LANなどの無線通信手段を用いて管制室6のコンピュータ7に転送されている。転送された車両3の位置や速度の情報は、管制室6に設けられたコンピュータ7内の記憶手段11に記憶される。
【0026】
管制室6内のコンピュータ7には、記憶手段11の他に、軌道情報算出手段8と、衝突判定手段9と、通達手段10とが備えられ、これらの手段が協働して「車両衝突の可能性」を算出し、運行オペレータMA,MBに通知するようになっている。コンピュータ7内に備えられたこれらの手段8,9,10,11は、ソフトウェアで実現されている。
管制室6内のコンピュータ7において、車両衝突の可能性を算出するには、まずコンピュータ7に備えられた軌道情報算出手段8を用いて、「分岐情報」と「車両通過情報」を算出する。「分岐情報」とは、軌道R上に存在するポイントに接している軌道Rの情報を含み、「車両通過情報」とは、軌道R上を走行する混銑車3に対して、当該混銑車3が存在する軌道Rならびに当該混銑車3がポイントを通過して到達可能な軌道Rの情報を含む。
【0027】
次に、軌道情報算出手段8で算出された「分岐情報」と「車両通過情報」とを基に、衝突判定手段9において、ある混銑車3と別の混銑車3とが衝突する可能性を判定する。
このとき、衝突判定手段9は、車両通過情報に含まれる「到達可能な軌道」と、分岐情報に含まれる「分岐点に接している軌道」とが一致したとき、すなわち、2台以上の混銑車3が同一の軌道Rを走行する可能性があるとき、「車両衝突の可能性あり」と判定する。
【0028】
衝突判定手段9で判定された車両衝突の可能性を、通達手段10を用いて、モニタ(表示モニタ13や運行支援モニタ14)に表示させ、全ての運行オペレータMA,MBに通達、警告するようにしている。
表示モニタ13や運行支援モニタ14を運行オペレータMA,MBが目視することで、仮に、運行オペレータMA,MBが経験の浅いものであったとしても、軌道R上における混銑車3の位置の把握、衝突の可能性を的確に判断でき、運行オペレータMA,MBに事故回避の通達を的確に指示できるようになる。
【0029】
以下、管制室6内のコンピュータ7で行われる処理、すなわち、軌道R上を走行する混銑車3同士が衝突する可能性を算出し、運転オペレータMBへ警告する処理の詳細について、幾つかの事例を挙げつつ説明する。
図3には、製鉄所敷地内の一部の軌道Rを模式的に表現した軌道路線図が示されている。この軌道路線図は、表示モニタ13に表示されるものである。軌道路線図には、軌道Rが線分で示され、軌道Rと軌道Rの交差点乃至は分岐点、すなわち、ポイント(軌道ポイント)が丸印で示されている。一のポイントと他のポイントとで挟まれた軌道Rは、ゾーンと考えることもできる。
【0030】
表示モニタ13には、ポイントの名称やゾーン名も表示され、加えて、運行中の混銑車3も位置も四角印で示されるようになっていて、軌道R上を走行する全ての混銑車3の現在位置を容易に把握できるようになっている。
図3に示す如く、本実施形態の場合、ポイントはP1、P2と表示され、ゾーンはZa,Zbと表示されている。混銑車3はX、Yのように表示されている。
【0031】
ところで、ポイントにはゾーンが必ず接している。それらの情報を、コンピュータ7に備えられた軌道情報算出手段8においては、例えば、ポイントP1に接するゾーンの情報をP1(a,b,j)と記することにする。つまり、P1(a,b,j)とは、ポイントP1にゾーンZa、Zb、Zjが接していることである。軌道情報算出手段8は、これらの情報を「分岐情報」として算出する。この分岐情報は、
図3のように、表示モニタ13の軌道路線図上に表示するようにしてもよい。
【0032】
ゾーンに接しているポイントの切り替えによって、混銑車3が、高炉4、予備精錬設備、転炉設備5などの各設備に向かって走行できるようになっている。しかし、ポイントの切り替えをしても、ゾーンを走行する混銑車3は、自由に方向転換することができない。例えば、
図3で、ゾーンZbからゾーンZaに向かって走行している混銑車3は、ポイントP1でゾーンZjに進入することができない。つまり、混銑車3が方向転換をするには、2つのゾーンに挟まれる角度が鈍角である必要がある。軌道情報算出手段8は、このような情報を「車両通過情報」として算出する。車両通過情報の詳細は後述する。
[事例1−1]
次に、実際に軌道R(ゾーン)上を走行している2台の混銑車3の「車両衝突の可能性」について述べていく。
【0033】
図4には、軌道路線図において2台の混銑車3がゾーンを走行中であることが示されている。
図4において、ゾーンZbをポイントP1へ向けて走行する車両が混銑車3であり、ゾーンZeをポイントP3へ向けて走行する車両が混銑車Yである。これら走行状況を表示するにあたっては、混銑車X、Yには、GPSを利用した測位検出装置12が搭載され、混銑車X、Yの位置や速度を検出している。検出された混銑車X、Yの位置や速度の情報は、無線通信手段を用いて管制室6に設けられたコンピュータ7に転送され、記憶手段11に記憶される。
【0034】
記憶手段11に記憶された混銑車X、Yの走行情報を基に、軌道情報算出手段8は、混銑車X、Yに対する「車両通過情報」を求める。車両通過情報とは、混銑車3が存在する軌道Rならびにこの混銑車3が向かう先にあるポイントを通過して到達可能な軌道Rを示すものである。
混銑車Xの車両通過情報は、「ポイントP1へ向かいつつ、現在ゾーンZbを通過中である。ポイントP1を通過後は、ゾーンZaへ行くことが可能である」となっている。この情報を、軌道情報算出手段8においては、P1b(a)と表記する。
【0035】
同様に、混銑車Yの車両通過情報は、「ポイントP3へ向かいつつ、現在ゾーンZeを通過中である。ポイントP3を通過後は、ゾーンZd、Zj、Zlへ行くことが可能である」となっている。この情報を、軌道情報算出手段8においては、P3e(d,j,l)と表記する。この車両通過情報は、
図4のように表示モニタ13の軌道路線図上に表示するとよい。
【0036】
以上得られた、分岐情報(P1(a,b,j)等)、車両通過情報(P1b(a)等)が表示モニタ13に表示されると、それを見た管制室6の管制オペレータMAは、混銑車3に対して的確な運行指示を行うことができる。
加えて、コンピュータ7に備えられた衝突判定手段9を用いて、軌道R上を走行する混銑車Xと、混銑車Yとが衝突する可能性を判定し、表示モニタ13を通じて、運行オペレータMA,MBに通達するようにしている。
【0037】
まず、
図4を参照するに、混銑車Xの「分岐情報」P1(a,b,j)と、混銑車Yの「分岐情報」P3(d,e,j,l)とから、ゾーンZjが重複し、衝突の可能性のある軌道RがゾーンZjであることがわかる。つまり、ゾーンZjには、2台の混銑車X、Yが同時に存在する可能性、言い換えれば、車両衝突の可能性があることを示す。
次に、ゾーンZjに2台の混銑車3が向かっているか否かを判定する。そのためには、混銑車Xの「車両通過情報」P1b(a)と、衝突の可能性のあるゾーンZjとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字aと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字jとを比較する。添え字の比較でa≠jであって、混銑車XはゾーンZjに進入する可能性がないため、「衝突の可能性なし」と判定される。
【0038】
一方、混銑車Yの「車両通過情報」P3e(d,j,l)と、衝突の可能性のある軌道RゾーンZjとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字 d、j、l と、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字jとを比較する。添え字の比較結果はj=jであって、ゾーンZjが重複し、混銑車YがゾーンZjに進入する場合に、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。このように、どちらの混銑車3が衝突の可能性が高いかを判定することが可能となっている。
【0039】
この判定結果は、通達手段10を通じて、表示モニタ13及び運行支援モニタ14に表示されると共に、必要であれば警告器を介して、警告音や警告光を発するようにする。
表示モニタ13や運行支援モニタ14を見た運行に携わる運行オペレータMA,MBは、衝突の可能性を確認し、衝突事故を回避する動作を行うことができる。
具体的には、表示モニタ13を目視した管制オペレータMAは、混銑車Yの運転オペレータMBに対して、「次のポイントP3を左折(ゾーンZjに進入)すると、混銑車Xと衝突する可能性がある(危険レベル中)。左折する場合には、混銑車Yの速度を落としなさい。」というような警告を通達することができる。
【0040】
次に、表示モニタ13を目視した管制オペレータMAは、混銑車Xの運転オペレータMBに対して、「次のポイントP1の左方向から混銑車Yが合流してくる可能性があるかもしれない(危険レベル小)。注意しなさい。」というような警告を通達する。このような警告の結果、混銑車Yの運転オペレータMBは、管制室6から警告に従い、速度を低下させる動作を行ったり、ゾーンZj以外のゾーン(Zd、Zl)に進行したりといった衝突回避行動を行う。混銑車Yの速度が低下したり、ゾーンZjに進入しないことがコンピュータ7に転送されると、管制オペレータMAは、混銑車Xの運行オペレータMA,MBに対して、「混銑車Yは衝突の回避行動を取った。」というような通達を行うことができる。
【0041】
管制オペレータMAの識別性を上げるため、通達手段10は、表示モニタ13上の混銑車Yの表示を黄色点滅させるとよい。加えて、混銑車Xや上記した状況にない混銑車3(例えば、混銑車W、図示せず)に対しては、表示モニタ13上の混銑車X、Wの部分を緑色表示し、「危険レベル小、危険レベルゼロ」であることを通達してもよい。
[事例1−2]
図5には、
図4の続きの状況が記されており、混銑車YがポイントP3を通過し、ゾーンZjに進入した事例が示されている。
【0042】
混銑車Xは、
図4と同様に、ポイントP1に向かって、ゾーンZbを走行している(車両通過情報:P1b(a))。一方、混銑車Yは、ポイントP3を通過後、ゾーンZjへ進入した上で、ポイントP1に向かって走行している。
ここで、コンピュータ7に備えられた衝突判定手段9を用いて、軌道R上を走行する混銑車Xと、混銑車Yとが衝突する可能性を判定する。
【0043】
まず、混銑車Xの「分岐情報」P1(a,b,j)と、混銑車Yの「分岐情報」P1(a,b,j)とから、ゾーンZa、Zb、Zjの3つが重複し、衝突の可能性のある軌道RがゾーンZa、Zb、Zjであることがわかる。
次に、混銑車Xの「車両通過情報」P1b(a)と、重複ゾーンZa、Zb、Zjとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字aと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字a、b、jとを比較する。添え字の比較結果はa=aであって、ゾーンZaが重複し、混銑車XがゾーンZaに進入する場合に、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。
【0044】
同様に、混銑車Yの「車両通過情報」P1j(a)と、重複ゾーンZa、Zb、Zjとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字aと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字a、b、jとを比較する。添え字の比較結果はa=aであって、ゾーンZaが重複し、混銑車YがゾーンZaに進入する場合に、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。
【0045】
混銑車X、Yの両車両3に対して「衝突の可能性あり」との判定が出される状況は、危険レベル大であり、表示モニタ13上の混銑車X、Yのそれぞれ部分を赤色表示し、衝突の可能性が大きいことを表示する。
この表示モニタ13を見た管制オペレータMAは、混銑車X、Yの両車両3に対して、「衝突する可能性が大である。直ちに、減速乃至は停止しなさい。」というような警告を通達することができる。このような警告の結果、運転オペレータMBは、管制室6から警告に従い、混銑車3の速度を低下若しくは停止する動作を行い、衝突回避行動を行う。管制オペレータMAは、衝突の可能性の高い混銑車Yには、優先的に衝突の可能性を知らせると共に、先にポイントP1を通過するように指令を出し、他方の混銑車Xには、混銑車YがポイントP1を通過した後に、後を追いかけるが如くポイントP1を通過するように指令を出してもよい。
【0046】
以上の動作から明らかなように、本実施形態の車両衝突警告システム1は、各軌道R及び各分岐に対する情報と、車両3の位置情報とから車両衝突の可能性を確実に判断し、得られた情報を基に、運行に携わる全ての運行オペレータMA,MBに車両衝突の危険性を確実に通達することができ、混銑車3の安全運行に資することができるものとなっている。
[事例2]
図6には、混銑車X及び混銑車Yが同一直線の軌道R上を対面しながら走行している事例が示されている。
【0047】
混銑車Xは、
図4及び
図5と同様に、ポイントP1に向かって、ゾーンZbを走行している(車両通過情報:P1b(a))。また、混銑車Yも、ポイントP1に向かって、ゾーンZaを走行している(車両通過情報:P1a(b,j))。
ここで、コンピュータ7に備えられた衝突判定手段9を用いて、軌道R上を走行する混銑車Xと、混銑車Yとが衝突する可能性を判定する。
【0048】
まず、混銑車Xの「分岐情報」P1(a,b,j)と、混銑車Yの「分岐情報」P1(a,b,j)とから、ゾーンZa、Zb、Zjの3つが重複し、衝突の可能性のある軌道RがゾーンZa、Zb、Zjであることがわかる。
次に、混銑車Xの「車両通過情報」P1b(a)と、重複ゾーンZa、Zb、Zjとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字aと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字a、b、jとを比較する。添え字の比較結果はa=aであって、ゾーンZaが重複し、混銑車YがゾーンZaに存在する状況下において混銑車XがゾーンZaに進入する場合に、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。
【0049】
同様に、混銑車Yの「車両通過情報」P1a(b,j)と、重複ゾーンZa、Zb、Zjとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字b,jと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字a、b、jとを比較する。添え字の比較結果はb=b、j=jであって、ゾーンZb、Zjが重複し、混銑車XがゾーンZbに存在する状況下において混銑車YがゾーンZbに進入する場合に、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。
【0050】
なお、混銑車X、Yの両車両が、ポイントP1に向かっていることが軌道路線図から読み取ることができるため、衝突判定手段9で判定するまでもなく「衝突の可能性あり」ということがわかる。
混銑車X、Yの両車両3に対して「衝突の可能性あり」との判定が出される状況は、危険レベル大であり、表示モニタ13上の混銑車X、Yのそれぞれ部分を赤色表示し、衝突の可能性が大きいことを表示する。
【0051】
この表示モニタ13を見た管制オペレータMAは、混銑車Xに対して、「衝突する可能性が大である。直ちに、減速乃至は停止しなさい。」というような警告を通達することができる。また、混銑車Yに対して、「次のポイントP1を直進(ゾーンZbに進入)すると、混銑車Xと衝突可能性が大である。次のポイントP1を左折(ゾーンZjに進入)しなさい。」というような警告を通達することができる。
【0052】
このような警告の結果、混銑車Xの運転オペレータMBは、管制室6から警告に従い、混銑車の速度を低下若しくは停止する動作を行い、衝突回避行動を行う。同様に、混銑車Yの運転オペレータMBは、管制室6から警告に従い、混銑車3を次のポイントP1で左へ方向転換し、衝突回避行動を行う。管制オペレータMAは、衝突の可能性の高い混銑車Yには、優先的に衝突の可能性を知らせると共に、先にポイントP1を左折し、ゾーンZjに進入するように指令を出し、他方の混銑車Xには、混銑車YがポイントP1を左折したことが確認された後に、ポイントP1を直進する指令を出してもよい。
[事例3]
また、
図7には、混銑車X及び混銑車Yが同一の軌道R上を同じ方向を向いて走行している事例が示されている。
【0053】
混銑車Xは、ポイントP1に向かって、ゾーンZbを走行している(車両通過情報:P1b(a))。また、混銑車Yは、混銑車Xの後方に位置し、ポイントP1に向かってゾーンZbを走行している(車両通過情報:P1b(a))。
ここで、コンピュータ7に備えられた衝突判定手段9を用いて、軌道R上を走行する混銑車Xと混銑車Yとが衝突する可能性を判定する。
【0054】
まず、混銑車Xの「分岐情報」P1(a,b,j)と、混銑車Yの「分岐情報」P1(a,b,j)とから、ゾーンZa、Zb、Zjの3つが重複することがわかる。
次に、混銑車Xの「車両通過情報」P1b(a)と、重複ゾーンZa、Zb、Zjとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字aと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字a、b、jの添字とを比較する。添え字の比較結果はa=aであって、ゾーンZaが重複し、混銑車XがゾーンZa上で、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。
【0055】
同様に、混銑車Yの「車両通過情報」P1b(a)と、重複ゾーンZa、Zb、Zjとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字aと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字a、b、jの添字とを比較する。添え字の比較結果はa=aであって、ゾーンZaが重複し、混銑車YがゾーンZa上で、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。
【0056】
混銑車X、Yの両車両3に対して「衝突の可能性あり」との判定が出される状況は、危険レベル大であり、表示モニタ13上の混銑車X、Yのそれぞれ部分を赤色表示し、衝突の可能性が大きいことを表示するとよい。
ところで、この事例の場合、車両通過情報のカッコの前の添字に関して、混銑車X(P1b(a))と混銑車Y(P1b(a))とは、同じ添え字bを有している。この場合、コンピュータ7内の衝突判定手段9では、混銑車X、混銑車Yは同じゾーンZbを前後に並んで走行してると判断し、混銑車X,Yの現在位置より、ポイントP1から混銑車Xまでの距離と、ポイントP1から混銑車Yまでの距離とを座標情報から算出する。座標情報を得るに際しては、測位検出装置12を利用するとよい。算出した距離などは、表示モニタ13などを通じ管制オペレータMAに対し、警告情報として伝えるとよい。算出した距離の差(混銑車X,Y間の距離差)が所定値以下となり、近接状態となった場合には、管制オペレータMAは「他の混銑車との距離を一定に維持しなさい。」というような警告を通達することができる。
【0057】
このような警告の結果、混銑車Xの運転オペレータMBは、管制室6から警告に従い、後方の混銑車Yの位置などに注意する。一方、混銑車Yの運転オペレータMBは、管制室6から警告に従い、混銑車Xに衝突しないように混銑車Yの速度を調節すると共に、混銑車Xとの距離を一定に維持することで衝突回避行動を行う。管制オペレータMAは、衝突の可能性の高い混銑車Yには、優先的に衝突の可能性を知らせ、混銑車3の速度を減速させるか乃至は停止させる指令と混銑車Xとの距離を維持する指令を出す。
[事例4]
図8には、軌道路線図において2台の混銑車3が異なった軌道R上を走行中である事例が示されている。
【0058】
混銑車Xは、ポイントP1に向かって、ゾーンZbを走行している(車両通過情報:P1b(a))。一方、混銑車Yは、ポイントP3に向かって、ゾーンZdを走行している(車両通過情報:P3d(e))。
ここで、コンピュータ7に備えられた衝突判定手段9を用いて、軌道R上を走行する混銑車Xと、混銑車Yとが衝突する可能性を判定する。
【0059】
まず、混銑車Xの「分岐情報」P1(a,b,j)と、混銑車Yの「分岐情報」(P3(d,e,j,l))とから、ゾーンZjが重複し、衝突の可能性のある軌道RがゾーンZjであることがわかる。
次に、混銑車Xの「車両通過情報」(P1b(a))と、重複ゾーンZjとを比較する。添え字の比較結果はa≠jであって、混銑車3は、衝突の可能性がないことが示され、「衝突の可能性なし」と判定される。
【0060】
同様に、混銑車Yの「車両通過情報」(P3d(e))と、重複ゾーンZjとを比較する。添え字の比較結果はe≠jであって、混銑車Yは、衝突の可能性がないことが示され、「衝突の可能性なし」と判定される。
混銑車X、Yの両車両3に対して「衝突の可能性なし」との判定が出される状況は、危険レベルがゼロであり、表示モニタ13上の混銑車X、Yのそれぞれ部分を緑色表示し、衝突の可能性がないことを表示する。
【0061】
このとき、ゾーンZjは混銑車X、Yが進入できないゾーンであることがわかっており、衝突判定手段9で判定するまでもなく「衝突の可能性なし」であることがわかる。
この表示モニタ13を見た管制オペレータMAは、混銑車X、Yに対して、安全に走行できることを通達する。
[事例5]
図9には、軌道路線図において2台の混銑車3が異なった軌道R上を走行中であることが示されている。
【0062】
混銑車Xは、ポイントP3に向かって、ゾーンZeを走行している(車両通過情報:P3e(d,j,l))。一方、混銑車Yは、ポイントP5に向かって、ゾーンZgを走行している(車両通過情報:P5g(h,l))。
ここで、コンピュータ7に備えられた衝突判定手段9を用いて、軌道R上を走行する混銑車Xと、混銑車Yとが衝突する可能性を判定する。
【0063】
まず、混銑車Xの「分岐情報」P3(d,e,j,l)と、混銑車Yの「分岐情報」P5(g,h,l)とから、ゾーンZlが重複し、衝突の可能性のある軌道RがゾーンZlであることがわかる。
次に、混銑車Xの「車両通過情報」P3e(d,j,l)と、重複ゾーンZlとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字d、j、lと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字lとを比較する。添え字の比較結果はl=lであって、ゾーンZlが重複し、混銑車XがゾーンZlに進入する場合に、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。
【0064】
同様に、混銑車Yの「車両通過情報」P5g(h,l)と、重複ゾーンZlとを比較する。このとき、車両通過情報のカッコ内の添字h、lと、分岐情報から得られた衝突の可能性のあるゾーンの添字lとを比較する。添え字の比較結果はl=lであって、ゾーンZlが重複し、混銑車YがゾーンZlに進入する場合に、衝突の可能性があることが示され、「衝突の可能性あり」と判定される。
【0065】
混銑車X、Yの両車両3に対して「衝突の可能性あり」との判定が出される状況は、危険レベル大であり、表示モニタ13上の混銑車X、Yのそれぞれ部分を赤色表示し、衝突の可能性が大きいことを表示する。
この表示モニタ13を見た管制オペレータMAは、混銑車X、混銑車Yの両車両3に対して、「ゾーンZlに進入すると衝突する可能性が大である。ゾーンZlに進入しないようにするか、ゾーンZlに進入する場合には減速若しくは停止しなさい。」というような警告を通達することができる。このような警告の結果、運転オペレータMBは、管制室6から警告に従い、混銑車3をゾーンZlに進入しない経路(ゾーン)を取るか、ゾーンZlに進入する場合には減速若しくは停止する動作を取り、衝突回避行動を行う。管制オペレータMAは、混銑車X、Yが同時にゾーンZlに進入すると、衝突の可能性が高いため、混銑車X,Yの両車両3に危険度を知らせる。また、先にゾーンZlに進入した混銑車3にはそこで待機するように指令を出し、他方の混銑車3には、ゾーンZlに進入しないように別の経路(ゾーン)に進む指令を出してもよい。
【0066】
以上の事例より、本実施形態の車両衝突警告システム1は、各軌道R及び各分岐に対する情報をモニタに示しておき、そのモニタに混銑車3の位置情報を表示させることで、車両衝突の可能性の判断を容易にすることができる。すなわち、コンピュータ7によって、「分岐情報」と「車両通過情報」の2つの情報から車両衝突の可能性を確実に判断することができる。管制オペレータMAは、車両衝突の可能性が表示された表示モニタ13を目視することで、混銑車3を運行している運転オペレータMBに車両衝突の可能性を確実に通達することができ、混銑車3の安全運行を支援するものとなっている。
【0067】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、本発明の車両衝突警告システムは、整備された道路上を走行する運搬車(トラック等)に対しても適用することが可能である。
また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。