(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射性廃液及び/又は放射性固形物中の放射性ヨウ素及び放射性セシウムのいずれについても親水性樹脂組成物を用いて除去処理することができる放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法であって、
上記親水性樹脂組成物が、親水性セグメントを30〜80質量%の範囲で有し、且つ、構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基とポリシロキサンセグメントとを有する、親水性ポリウレタン樹脂、親水性ポリウレア樹脂、親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の親水性樹脂を含み、且つ、
該親水性樹脂100質量部に対して、粘土鉱物を1〜180質量部の割合で分散含有してなることを特徴とする放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法。
前記親水性樹脂が、少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリオール又は少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリアミン、及び、少なくとも1個の活性水素含有基とポリシロキサンセグメントとを同一分子内に有する化合物を原料の一部として形成された樹脂である請求項1又は2に記載の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法。
前記粘土鉱物が、層構造を有する、パイロフィライト、カオリナイト、雲母、スメクタイト(モンモリロナイト)、バーミキュライトからなる群より選択されるいずれか1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法。
前記粘土鉱物が、層構造を有する、パイロフィライト、カオリナイト、雲母、スメクタイト(モンモリロナイト)、バーミキュライトからなる群より選択される少なくとも1種である請求項5又は6に記載の親水性樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
現在、広く普及している原子炉発電プラントにおいては、原子炉での核分裂によって相当の量の放射性副産物の生成を伴う。これら放射性物質の主なものは、放射性ヨウ素、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、放射性セリウム等の極めて危険な放射性同位元素を含む核分裂生成物及び活性元素である。これらの中でも、放射性ヨウ素は184℃で気体になるため、核燃料の検査や交換の際に、更には、核燃料取扱い時の事故や原子炉暴走事故等の不慮の事由により、非常に放出され易いという危険性を有している。その対象となる放射性ヨウ素は、長半減期のヨウ素129(半減期:1.57年×10
7年)、短半減期のヨウ素131(半減期:8.05日)が主なものである。ここで、放射性を示さない普通のヨウ素は、人体に必須とされている微量元素であり、咽喉の近くの甲状腺に集められ、成長ホルモンの成分になる。このため、人が呼吸や水・食物を通して放射性ヨウ素を取りこむと、普通のヨウ素と同じように甲状腺に集められ、内部放射能被曝を増大させるため、特に厳格な放出放射能量の低減対策が施されなければならない。
【0003】
また、放射性セシウムは、融点が28.4℃と常温付近で液状を示す金属の一つであり、放射性ヨウ素と同様に非常に放出され易いものである。その対象となる放射性セシウムは、比較的短半減期のセシウム134(半減期:2年)、長半減期のセシウム137(半減期:30年)が主なものである。中でも特にセシウム137は、半減期が長いだけではなく、高エネルギーの放射線を放出し、且つ、アルカリ金属であるため、水への溶解性が大きいという性質を有している。更に、放射性セシウムは、呼吸や皮膚からも人体に吸収されやすく、ほぼ全身に均一に分散されるため、放出された場合の人への健康被害は深刻なものになる。
【0004】
このため、世界中で稼働している原子炉から不慮の事由等により偶発的に放射性セシウムが放出された場合は、原子炉で働く労働者や近隣の住民に対する放射能汚染のみならず、空気により運ばれる放射性セシウムにより汚染された食品や水を介して、人間や動物へと、より広範な放射能汚染を引き起こすことが懸念される。この点についての危険性は、チェルノブイリ原子力発電所の事故により明らかに実証済である。
【0005】
このような事態に対し、原子炉で生成された放射性ヨウ素の処理方法として、洗浄処理方式、繊維状の活性炭等を用いた固体吸着剤充填による物理・化学的処理方式(特許文献1、2参照)、イオン交換剤による処理(特許文献3参照)などが検討されている。
【0006】
しかしながら、上記したいずれの方法も下記に述べるように課題があり、これらの課題が解決された放射性ヨウ素の除去方法の開発が望まれている。まず、洗浄処理方式で実用化されているものとしてはアルカリ洗浄法などがあるが、液体吸着剤による洗浄処理方式で処理し、これを液体のまま長期間貯蔵するのには、量的にも、また安全上も問題が多い。また、固体吸着剤充填による物理・化学的処理方式では、捕捉されたヨウ素は、他のガスとの交換の可能性に常に晒されており、また、温度が上昇すると容易に吸着物を放出するという難点がある。更に、イオン交換剤による処理方式では、イオン交換剤の耐熱温度は100℃程度までであり、これより高温では十分な性能を発揮し得ないという課題もある。
【0007】
一方、原子炉内での核分裂により生成した放射性セシウムの除去処理方法としては、無機イオン交換体や選択性イオン交換樹脂による吸着法、重金属と可溶性フェロシアン化物又はフェロシアン化物塩併用による共沈法、セシウム沈殿試薬による化学処理法などが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
しかしながら、上述した処理方法は、いずれも循環ポンプや浄化槽、更には各吸着剤を内蔵した充填槽などの大掛かりな設備を必要とし、また、それらを稼働させるための多大なエネルギーを必要とする。また、2011年3月11日に発生した日本国の福島第一原発事故のように、電源が断たれたような場合にはこれらの設備は稼働できなくなるので、この場合は放射性セシウムによる汚染の危険度が増大する。そして、電源が断たれた場合には特に、原子炉の暴走事故により周辺地域へ拡散した放射性セシウムに対しての除去が極めて困難な状況に陥り、放射能汚染を拡大しかねない状況となることが懸念される。したがって、電源が断たれたような事態が生じた場合においても対応が可能な、放射性セシウムの除去技術の一刻も早い開発が望まれ、開発されれば極めて有益である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明で使用する親水性樹脂組成物は、親水性樹脂に粘土鉱物を分散含有させてなる組成物からなり、該親水性樹脂は、親水性成分を構成単位とする親水性セグメントと、少なくとも1個の第3級アミノ基を有する成分を構成単位とする第3級アミノ基含有セグメントと、ポリシロキサンセグメントを有していることを特徴とする。すなわち、本発明で使用する親水性樹脂は、その構造中に、親水性成分を構成単位とする親水性セグメントと、少なくとも1個の第3級アミノ基を有する成分を構成単位とする第3級アミノ基含有セグメントとポリシロキサンセグメントを有しているものであればよい。これらのセグメントは、親水性樹脂の合成時に鎖延長剤を使用しない場合は、それぞれランダムにウレタン結合、ウレア結合又はウレタン−ウレア結合等で結合されている。親水性樹脂の合成時に鎖延長を使用する場合には、上記の結合とともに、これらの結合の間に鎖延長剤の残基である短鎖が存在した構造になる。
【0019】
本発明における「親水性樹脂」とは、その分子中に親水性基を有しているが、水や温水等には不溶解性の樹脂を意味し、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース誘導体等の水溶性樹脂とは区別されるものである。その詳細については後述する。
【0020】
本発明の親水性樹脂組成物は、親水性樹脂と粘土鉱物とを含んでなり、このような構成の親水性樹脂組成物を用いることで、放射性ヨウ素と放射性セシウムとを一緒に除去処理することが可能になるが、その理由について本発明者らは下記のように考えている。まず、本発明で使用する親水性樹脂は、その構造中にある親水性セグメントによって優れた吸水性を示す。更に、その構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基が導入されていることによって、イオン化した放射性ヨウ素との間にイオン結合が形成され、その結果、親水性樹脂中に放射性ヨウ素が定着されたものと考えられる。
【0021】
しかし、水分の存在下では上記の如きイオン性結合は解離し易いことから、一定時間経過すれば再び放射性ヨウ素は樹脂から放出されるものと考えられ、本発明者らは、樹脂中における放射性ヨウ素の定着状態をそのまま固定化し、これを除去することは難しいものと予想していた。しかしながら、本発明者らの検討によれば、実際には、イオン結合した放射性ヨウ素は、長時間経っても樹脂中に定着されたままであることがわかった。この理由は定かではないが、本発明において用いる特定の親水性樹脂には、その分子内に疎水性部分も存在しており、該樹脂中の第3級アミノ基と放射性ヨウ素との間にイオン結合が形成された後、この疎水性部分が、親水性部分(親水セグメント)及びイオン結合部分の周りを取り囲むようになるためではないかと推察している。このような理由から、特有の構造を有する親水性樹脂を含む本発明の親水性樹脂組成物を用いることで、本発明では、放射性ヨウ素を樹脂に定着させて固定化させることができ、その結果、放射性ヨウ素の除去を安定して行うことが可能となったものと考えられる。
【0022】
更に、本発明で使用する親水性樹脂は、その構造中にポリシロキサンセグメントを有するものでもあり、このような構成とすることで、当該樹脂を樹脂フィルムやシート等の形態で用いた場合に、その耐水性や表面の耐ブロッキング性(耐くっつき性)が向上するという、より有益な効果が得られる。この結果、前記した所期の目的をより良好に達成することが可能になる。ここで、樹脂分子中に導入されるポリシロキサンセグメントは、本来、疎水性(撥水性)であるが、特定範囲の量のポリシロキサンセグメントを構造中に導入させた場合、その樹脂は、「環境応答性」があるものになることが知られている(高分子論文集、第48巻[第4号]、227(1991))。当該論文でいう、樹脂に「環境応答性」があるとは、乾燥した状態では、樹脂表面は完全にポリシロキサンセグメントで覆われるが、樹脂を水中に浸漬した場合には、ポリシロキサンセグメントが樹脂中に埋没してしまう現象のことである。
【0023】
本発明では、使用する樹脂の構造中にポリシロキサンセグメントを導入することで、樹脂に表れるこの「環境応答性」の現象を放射性セシウムの除去処理に利用し、下記に述べるように、当該処理をより有効なものにする。本発明で用いる親水性樹脂は、その構造中に存在する親水性セグメントにより優れた吸水性を示し、イオン化した放射性セシウムを速やかに取り込むことができ、その除去処理に有効なものである。しかし、本発明者らの検討によれば、使用する親水性樹脂の構造上の特徴がこの点のみである場合は、その実用化において下記の課題があった。すなわち、放射性セシウムの除去処理に際しては、例えば、使用する樹脂組成物をフィルム状としたり、基材に塗布してシート状等の形態にして利用し、これらを、放射性セシウムを含有する廃液に浸漬させたり、放射性セシウムを含有する固形物の覆いとするといったことが必要になる。そのような場合には使用する樹脂フィルム等に、上記した放射性セシウムの除去処理に対する耐久性が求められるが、親水性セグメントのみを有する構造の樹脂を用いた場合は、その使用状態によっては耐久性が十分とは言い難い。本発明者らは、この問題に対して鋭意検討した結果、使用する親水性樹脂の分子中(構造中)に、更にポリシロキサンセグメントを導入することで、その耐水性や表面の耐ブロッキング性能(耐くっつき性)を向上させることができることを見出した。すなわち、樹脂の構造を本発明で規定する親水性樹脂のようにすることで、上記したような使用形態とした場合であっても、樹脂フィルム等が十分な耐水機能等を示し、より有効な放射性セシウムの除去処理を行うことができる構成となる。
【0024】
更に、本発明では、上記機能を示す親水性樹脂とともに、粘土鉱物が分散されている親水性樹脂組成物を用いて除去処理を行っているため、下記に述べるように、分散した粘土鉱物により、より速やかに且つ効率よく放射性セシウムが定着され、固定化されたと考えられる。
【0025】
本発明で使用する粘土鉱物は、中でも結晶性の層状構造を有する粘土鉱物を用いることが好ましい。粘土鉱物は、ケイ酸塩鉱物の蛇紋石・カンラン石が熱水作用等を受けて分解し、板状結晶が積み重なったものに、結晶の隙間に水が侵入したり、大きな圧力を受け続け、徐々に粘土化したものである。しかし、総じて柔らかく、その層状構造の違いによって、或いは層状構造の間に挟み込む物質によって、様々な種類の粘土鉱物があることが知られている。そして、先の福島第一原発事故を受けて行われた土壌への放射能汚染に対する調査などにおいて、土壌中の放射性セシウムが粘土鉱物に吸着することや、2:1型粘土鉱物に放射性セシウムが強く固定されることなどが報告されている。本発明においても、放射性セシウムが吸着しやすく固定されやすい粘土鉱物を使用することが有効であるので、2:1型粘土鉱物に分類されているものを使用することが好ましい。2:1型粘土鉱物に分類される具体的なものとしては、パイロフィライト(Pyrophylite)、雲母(Mica)、スメクタイト(Smectite)、バーミキュライト(Vermiculite)等が挙げられるが、1:1型粘土鉱物に分類されるカオリナイト(Kaolinite)等も使用できる。粘土鉱物の主成分は層状ケイ酸塩鉱物であり、例えば、2:1型粘土鉱物では、ケイ素と酸素からなるケイ素四面体シートが、アルミニウムと酸素からなるアルミニウム八面体シートを持つ層を一単位とし、これらの層が積み重なってできており、ケイ素四面体シートのケイ素の一部がアルミニウムと置き換わるといったことに起因してシートが負電荷を持ち、その負電荷を、ナトリウム、カリウム、カルシウム等が中和する構造をしている。このため、粘土鉱物では、金属陽イオン(アルミニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム等)と、ケイ酸が連結した面が層状に形成されており、これらの金属陽イオンは、水溶液中で他の陽イオンと互いに入れ替わる性質がある。
【0026】
ここで、粘土鉱物の陽イオンにおけるイオン交換の優先順位は下記の通りである。
<イオン交換順位>
セシウム(Cs)>ルビジウム(Rb)>NH
4>バリウム(Ba)>ストロンチウム(Sr)>ナトリウム(Na)>カルシウム(Ca)>鉄(Fe)>アルミニウム(Al)>マグネシウム(Mg)>リチウム(Li)
【0027】
上記したようにセシウムやストロンチウムのイオン交換順位は高く、先に述べたように、このことに起因すると考えられる、粘土鉱物に放射性セシウムイオンが強く吸着することは公知である。そして、粘土鉱物の持つこの特性を放射性セシウム等の放射性物質の除去に利用することについての検討も行われ始めている。本発明では、上記した放射性ヨウ素を除去することができる特有の構造を有する親水性樹脂に、上記した放射性セシウム等の放射性物質を除去することができる粘土鉱物を分散させた親水性樹脂組成物を用いることで、放射性ヨウ素と放射性セシウムを一緒に除去処理することを実現可能にする新たな技術を提供する。
【0028】
本発明を特徴づける親水性樹脂は、少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリオール又は少なくとも1個の第3級アミノ基を有するポリアミン、及び、少なくとも1個の活性水素含有基とポリシロキサンセグメントとを同一分子内に有する化合物を原料の一部として形成された、水及び温水に不溶解性の樹脂である。より具体的には、例えば、有機ポリイソシアネートと、親水性成分である高分子量の親水性ポリオール及び/又はポリアミンと、少なくとも1個の活性水素含有基と少なくとも1個の第3級アミノ基とを同一分子内に有する化合物と、少なくとも1個の活性水素含有基とポリシロキサンセグメントとを同一分子内に有する化合物とを反応させてることにより得られる、親水性セグメントを有し、且つ、構造中の主鎖及び/又は側鎖に第3級アミノ基とポリシロキサンセグメントとを有する樹脂である。以下、該親水性樹脂を得るための成分について、それぞれ説明する。
【0029】
まず、本発明で使用する親水性樹脂の構造中に、第3級アミノ基を導入するために使用する化合物としては、分子中に少なくとも1個の活性水素含有基(反応性基)を有し、且つ、その分子鎖中に第3級アミノ基を有するものが挙げられる。少なくとも1個の活性水素含有基を有する化合物としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、酸ハライド基、カルボキシエステル基、酸無水物基等の反応性基を有する化合物が挙げられる。
【0030】
上記の如き反応性基を有する第3級アミノ基含有化合物の好ましい例としては、例えば、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物が挙げられる。なお、低級アルキレン基とは、炭素数が1〜8程度のものをいう。
[式(1)中の、R
1は、炭素数20以下のアルキル基、脂環族基、又は芳香族基(ハロゲン、アルキル基で置換されていてもよい)であり、R
2及びR
3は、−O−、−CO−、−COO−、−NHCO−、−S−、−SO−、−SO
2−等で連結されていてもよい低級アルキレン基であり、X及びYは、−OH、−COOH、−NH
2、−NHR
1(R
1は上記と同じ定義である)、−SH等の反応性基であり、X及びYは、同一でも異なってもよい。また、X及びYは、上記の反応性基に誘導できるエポキシ基、アルコキシ基、酸ハライド基、酸無水物基、又はカルボキシルエステル基でもよい。]
【0031】
[式(2)中の、R
1、R
2、R
3、X及びYは前記式(1)におけるものと同じ定義であるが、但し2つのR
1同士は環状構造を形成するものであってもよい。R
4は−(CH
2)
n−(該式中のnは0〜20の整数)である。]
【0032】
[式(3)中の、X及びYは前記式(1)におけるものの定義と同じであり、Wは窒素含有複素環、窒素と酸素含有複素環、又は窒素と硫黄含有複素環を表す。]
【0033】
上記の一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。例えば、N,N−ジヒドロキシエチル−メチルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−エチルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−イソプロピルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−n−ブチルアミン、N,N−ジヒドロキシエチル−t−ブチルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、N,N−ジヒドロキシエチル−m−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−m−クロロアニリン、N,N−ジヒドロキシエチルベンジルアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−N’,N’−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン、N−ヒドロキシエチル−ピペラジン、N,N−ジヒドロキシエチル−ピペラジン、N−ヒドロキシエトキシエチル−ピペラジン、1,4−ビスアミノプロピル−ピペラジン、N−アミノプロピル−ピペラジン、ジピコリン酸、2,3−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジン−ジメタノール、2−(4−ピリジル)−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,6−ジアミノトリアジン、2,5−ジアミノトリアゾール、2,5−ジアミノオキサゾール等が使用できる。
【0034】
また、これら第3級アミノ化合物のエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物等も本発明に使用できる。その付加物としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。なお、下記の構造式中のmは、1〜60の整数を、nは、1〜6の整数を表す。
【0035】
本発明で用いる親水性樹脂は、少なくとも1個の活性水素含有基とポリシロキサンセグメントとを同一分子内に有する化合物を原料の一部として反応して得られるが、この際に用いる、ポリシロキサンセグメントを導入するために使用可能なポリシロキサン化合物について説明する。ポリシロキサンセグメントを導入するために使用可能なポリシロキサン化合物としては、例えば、分子中に1個又は2個以上の反応性基、具体的には、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基等を有するポリシロキサン化合物が挙げられる。上記のような反応性基を有するポリシロキサン化合物の好ましい例としては、下記の如き化合物が挙げられる。なお、以下の化合物において、低級アルキレン基とは、炭素数が1〜8程度のものをいう。
【0040】
カルボキシル変性ポリシロキサン化合物
【0041】
上記した活性水素含有基を有するポリシロキサン化合物中では、特にポリシロキサンポリオール及びポリシロキサンポリアミンが有用である。なお、列記した化合物は、いずれも本発明において使用できる好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他、現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0042】
本発明を特徴づける親水性樹脂を得るために使用する有機ポリイソシアネートとしては、従来のポリウレタン樹脂の合成における公知のものがいずれも使用でき、特に制限されない。好ましいものとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略)、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアナート(以下、水素添加MDIと略)、イソホロンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等、或いはこれらの有機ポリイソシアネートと低分子量のポリオールやポリアミンを末端イソシアネートとなる様に反応させて得られるポリウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0043】
本発明を特徴づける親水性樹脂を得るために使用する親水性成分としては、例えば、末端に、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の親水性基を有する重量平均分子量(GPCで測定した標準ポリスチレン換算。以下同じ。)が400〜8,000の範囲の高分子量の親水性ポリオール及び/又はポリアミンが挙げられる。より具体的には、末端が水酸基で、親水性を有するポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリテトラメチレングリコール共重合ポリオール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合ポリオール、ポリエチレングリコールアジペートポリオール、ポリエチレングリコールサクシネートポリオール、ポリエチレングリコール/ポリε−ラクトン共重合ポリオール、ポリエチレングリコール/ポリバレロラクトン共重合ポリオール等を好適に使用することができる。
【0044】
また、末端がアミノ基で、親水性を有するポリアミンとしては、例えば、ポリエチレンオキサイドジアミン、ポリエチレンオキサイドプロピレンオキサイドジアミン、ポリエチレンオキサイドトリアミン、ポリエチレンオキサイドプロピレンオキサイドトリアミン等が挙げられる。その他の親水性成分としては、カルボキシル基やビニル基を有するエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0045】
本発明においては、上記したような成分からなる親水性樹脂に耐水性を付与するため、上記の親水性成分とともに、親水鎖を有しない他のポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸等を併用することも可能である。
【0046】
本発明に使用する親水性樹脂を合成する際に、必要に応じて使用される鎖延長剤としては、例えば、低分子ジオールやジアミン等の従来公知の鎖延長剤がいずれも使用でき、特に限定されない。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0047】
以上の原料成分を用いて得られる、本発明で使用する親水性セグメント及び第3級アミノ基及びポリシロキサンセグメントを分子鎖中に有する親水性樹脂は、重量平均分子量が、3,000〜800,000の範囲のものであることが好ましい。更に好ましくは、重量平均分子量は5,000〜500,000の範囲のものである。
【0048】
本発明に特に好適に用いられる親水性樹脂中の第3級アミノ基の含有量(当量)は、0.1〜50eq(当量)/kgの範囲が好ましく、更に好ましくは0.5〜20eq/kgである。第3級アミノ基の含有量が0.1eq/kg未満、すなわち分子量10,000当たり1個未満では、本発明の所期の目的である放射性ヨウ素の除去性の発現が不十分となり、一方、第3級アミノ基の含有量が50eq/kg超、すなわち分子量10,000当たり500個超では樹脂中の親水性部分の減少による疎水性が強くなり、吸水性能に劣るようになるので好ましくない。
【0049】
また、本発明に好適に用いられる親水性樹脂のポリシロキサンセグメントの含有量は、0.1〜12質量%、特に0.5〜10質量%の範囲が好ましい。ポリシロキサンセグメントの含有量が0.1質量%未満では、本発明の目的である耐水性や表面の耐ブロッキング性の発現が不十分となり、一方、12質量%を超えるとポリシロキサンセグメントによる撥水性が強くなり、吸水性能を低下させ放射性ヨウ素の吸着性を阻害するので好ましくない。
【0050】
また、本発明に好適に用いられる親水性樹脂の親水性セグメントの含有量は、30〜80質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは50〜75質量%の範囲である。親水性セグメントの含有量が30質量%未満では、吸水性能に劣り放射性ヨウ素の除去性が低下するので好ましくない。一方、80質量%を超えると耐水性に劣るようになり好ましくない。
【0051】
本発明の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法に用いる本発明の親水性樹脂組成物は、上述した親水性樹脂に、先に述べた粘土鉱物を分散させることによって得られる。具体的には、上述した親水性樹脂に、粘土鉱物と分散溶媒を入れ、所定の分散機によって分散操作を行うことにより製造することができる。上記分散に使用する分散機としては、通常顔料分散に用いる分散機であれば問題なく使用することができる。例えば、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、パールミル(以上、アイリッヒ社製)、サンドミル、ビスコミル、アトライターミル、バスケットミル、湿式ジェットミル(以上、ジーナス社製)等が挙げられるが、分散性と経済性を鑑みて選択し、設定するのが好ましい。また、メディアとしては、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ等を用いることができる。
【0052】
本発明の親水性樹脂組成物における親水性樹脂と粘土鉱物との分散割合は、親水性樹脂100質量部に対して粘土鉱物を1〜180質量部である。粘土鉱物が1質量部未満では、放射性セシウムの除去効果が不十分であり、180質量部を超えると組成物の機械物性が弱くなるとともに、耐水性に劣るようになり、放射能汚染水中で形状を保てなくなり好ましくない。また、本発明の親水性樹脂組成物における親水性樹脂と粘土鉱物の組成比の決定に際しては、前記した粘土鉱物のイオン交換順位に従って粘土鉱物中からイオン交換後のイオンが水溶液中に溶出するので、二次汚染の発生を防ぐためには、この点についても考慮する必要がある。
【0053】
本発明の放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去方法を実施するにあたっては、上記した構成からなる本発明の親水性樹脂組成物を下記のような形態で使用することが好ましい。例えば、親水性樹脂組成物の溶液を、離型紙や離型フィルム等に、乾燥後の厚みが5〜200μm、好ましくは10〜100μmとなるように塗布し、乾燥炉で乾燥させて得られたフィルム状のものが挙げられる。この場合には、使用時に、離型紙・フィルム等から剥離して放射性ヨウ素・放射性セシウムの除去フィルムとして使用する。また、その他、各種基材に、先に説明した原料から得られる樹脂溶液を塗布又は含浸して使用してもよい。この場合の基材としては、金属、ガラス、木材、繊維、各種プラスチック等が使用できる。
【0054】
上記のようにして得られた、本発明の親水性樹脂組成物製の、フィルム又は各種基材に塗布したシートを、放射性廃液や、放射性固形物を予め水で除染した廃液などに浸漬することにより、これらの液中に存在する放射性ヨウ素及び放射性セシウムの両方を選択的に除去することができる。また、放射能で汚染された固形物などに対しては、本発明の親水性樹脂組成物製のフィルムやシートで固形物を覆うことにより、放射性ヨウ素及び放射性セシウムの拡散を防ぐことができる。
【0055】
本発明の親水性樹脂組成物のフィルムやシートは水には溶けないため、除染後に、容易にその廃液から取りだすことができる。このように、放射性ヨウ素・放射性セシウムの両方を除去するのに特別な設備も電力も必要とせず、簡単に且つ低コストで除染することができる。更には、吸水した水分を乾燥させ120〜220℃に加熱すれば、樹脂が軟化して体積の収縮が起こり放射性廃棄物の減容化の効果も期待できる。
【実施例】
【0056】
次に、具体的な製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の各例における「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0057】
[製造例1](第3級アミノ基及びシロキサンセグメント含有−親水性ポリウレタン樹脂の合成)
撹拌機、温度計、ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、該容器内で、下記構造のポリジメチルシロキサンポリオール(分子量3,200)8部、ポリエチレングリコール(分子量2,040)142部、N−メチルジエタノールアミン20部及びジエチレングリコール5部を、100部のメチルエチルケトン(以下、MEKと略す)と200部のジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)との混合溶剤中に溶解した。そして、60℃でよく撹拌しながら、73部の水素添加MDIを100部のMEKに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で6時間反応させた後、60部のMEKを加え、本発明で規定する構造の親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0058】
【0059】
上記で得た樹脂溶液は、固形分35%で330dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この溶液から形成した親水性樹脂製フィルムは、破断強度20.5MPa、破断伸度が400%であり、熱軟化温度は103℃であった。
【0060】
[製造例2](第3級アミノ基及びシロキサンセグメント含有−親水性ポリウレア樹脂の合成)
製造例1で使用したと同様に反応容器に、下記構造のポリジメチルシロキサンジアミン(分子量3,880)5部、ポリエチレンオキサイドジアミン(ハンツマン社製、商品名「ジェファーミンED」;分子量2,000)145部、メチルイミノビスプロピルアミン25部及び1,4−ジアミノブタン5部を、250部のDMFに溶解した。そして、内温を20〜30℃でよく撹拌しながら、75部の水素添加MDIを100部のDMFに溶解した溶液を徐々に滴下して反応させた。滴下終了後、次第に内温を上昇させ、50℃に達したところで更に6時間反応させた後、124部のDMFを加え、本発明で規定する構造を有する親水性ポリウレア樹脂溶液を得た。
【0061】
【0062】
上記で得た樹脂溶液は、固形分35%で、315dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この樹脂溶液から形成した親水性樹脂製フィルムは破断強度が31.3MPa、破断伸度が370%であり、熱軟化温度は147℃であった。
【0063】
[製造例3](第3級アミノ基及びシロキサンセグメント含有−親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂の合成)
製造例1で使用したと同様の反応容器中に、下記構造のエチレンオキサイド付加型ポリジメチルシロキサン(分子量4,500)5部、ポリエチレンオキサイドジアミン(ハンツマン社製、商品名「ジェファーミンED」;分子量2,000)145部、N,N−ジメチル−N’,N’−ジヒドロキシエチル−1,3−ジアミノプロパン30部、及び、1,4−ジアミノブタン5部を、150部のMEKと150部のDMFとの混合溶剤中に溶解した。そして、内温を20〜30℃でよく撹拌しながら、72部の水素添加MDIを100部のMEKに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で6時間反応させ、反応終了後、MEKを75部加えて、本発明で規定する構造を有する親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂溶液を得た。
【0064】
【0065】
上記で得た樹脂溶液は、固形分35%で、390dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この樹脂溶液から形成した親水性樹脂製フィルムは破断強度が22.7MPa、破断伸度が450%であり、熱軟化温度は127℃であった。
【0066】
[製造例4](比較例で使用する第3級アミノ基及びシロキサンセグメント非含有−非親水性ポリウレタン樹脂の合成)
製造例1で使用したと同様の反応容器を窒素置換し、平均分子量約2,000のポリブチレンアジペート150部と1,4−ブタンジオール15部とを、250部のDMF中に溶解した。そして、60℃でよく撹拌しながら62部の水素添加MDIを171部のDMFに溶解したものを徐々に滴下した。滴下終了後80℃で6時間反応させて、比較例で用いる非親水性ポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0067】
上記で得た樹脂溶液は、固形分35%で、320dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この樹脂溶液から得られた非親水性樹脂製フィルムは、破断強度が45MPa、破断伸度が480%であり、熱軟化温度は110℃であった。
【0068】
[製造例5](比較例で使用する第3級アミノ基含有シロキサンセグメント非含有−非親水性ポリウレタン樹脂の合成)
製造例1で使用したと同様に反応容器を窒素置換し、平均分子量約2,000のポリブチレンアジペート150部と、N−メチルジエタノールアミン20部と、ジエチレングリコール5部とを、200部のMEKと150部のDMFとの混合溶剤中に溶解した。そして、60℃でよく撹拌しながら、74部の水素添加MDIを112部のMEKに溶解した溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、80℃で6時間反応させて、比較例で用いる非親水性樹脂溶液を得た。
【0069】
上記で得た樹脂溶液は、固形分35%で、510dPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この樹脂溶液から形成した非親水性樹脂製フィルムは、破断強度23.5MPa、破断伸度が470%であり、熱軟化温度は110℃であった。
【0070】
以上のようにして得られた製造例1〜5の各樹脂の重量平均分子量、第3級アミノ基の含有量及びポリシロキサンセグメントの含有量は下表1のとおりであった。
【0071】
<実施例1〜3及び比較例1、2>
製造例1〜5で得た各樹脂溶液と、粘土鉱物(主成分:モンモリロナイト、商品名「クニピア」、クニミネ工業(株)製)とを、表2に示した配合(質量基準で表示)で高密度アルミナボール(3.5g/ml)を使用して、ボールミルにて24時間分散した。そして分散後の内容物を、ポリエステル樹脂製の200メッシュのふるいを通して取り出して、樹脂溶液中に粘土鉱物が分散されてなる各樹脂組成物を得た。
【0072】
【0073】
[評価]
(樹脂フィルムの作製)
上記した実施例1〜3及び比較例1、2で得た各樹脂組成物をそれぞれに用い、下記のようにして各樹脂製フィルムを作製した。具体的には、離型紙上に、上記各樹脂組成物を塗布した後、110℃で3分加熱乾燥して溶剤を揮散させて、約20μmの厚さの各樹脂製フィルムを作製した。次に、このようにして得た各樹脂製フィルムを用い、以下の項目を評価した。
【0074】
<耐ブロッキング性(耐くっつき性)>
実施例及び比較例の各樹脂組成物で形成した各樹脂製フィルムについて、それぞれフィルム面同士を重ね合わせた後、0.29MPaの荷重を掛け、40℃で1日放置した。その放置後、重ね合わせたフィルム同士のブロッキング性を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:ブロッキング性なし
△:僅かにブロッキング性あり
×:ブロッキング性あり
【0075】
<耐水性>
実施例及び比較例の各樹脂組成物で形成した厚さ20μmの各樹脂フィルムを、縦5cm×横1cmの形状に切り、25℃の水中に12時間浸漬し、浸漬フィルムの縦方向の膨張係数を測定し、耐水性を評価した。なお、膨張係数(膨張率)は、以下の方法で算出し、膨張係数が200%以下のものを○とし、200%超のものを×として耐水性を評価した。得られた結果を表3に示した。
膨張係数(%)=(試験後の縦の長さ/試験前の縦の長さ)×100
【0076】
【0077】
(評価試験用のヨウ素溶液及びセシウム溶液の作製)
評価試験用のヨウ素溶液は、イオン交換処理した純水にヨウ化カリウムを、ヨウ素イオン濃度が200mg/L(200ppm)となるよう溶解して調製した。また、評価試験用のセシウム溶液は、イオン交換処理した純水に塩化セシウムを、セシウムイオン濃度が200mg/L(200ppm)となるよう溶解して調製した。なお、ヨウ素イオン及びセシウムイオンが除去できれば、当然に、放射性ヨウ素及び放射性セシウムの除去ができる。
【0078】
<実施例1の樹脂組成物についての評価結果>
実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルム20gを、先に評価試験用に調製したヨウ素溶液50mlとセシウム溶液50ml(いずれもイオン濃度200ppm)の混合溶液中に静置浸漬し(25℃)、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度をイオンクロマトグラフ(東ソー製;IC2001)で測定した。測定結果を表4に示したが、表4に示した通り、経過時間毎に、溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度がともに減少することが確認された。表4中に経過時間毎の溶液中のこれらのイオンの除去率を合わせて記載した。また、得られた経時変化の結果をグラフ化して、
図1及び
図2に示した。
【0079】
【0080】
<実施例2の樹脂組成物についての評価結果>
実施例2の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルム20gを用いた以外は、実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルムを用いたと同様にして、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度を測定した。得られた結果を先に説明した実施例1の場合と同様に、表5と
図1及び
図2に示した。
【0081】
【0082】
<実施例3の樹脂組成物についての評価結果>
実施例3の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルム20gを用いた以外は、実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルムを用いたと同様にして、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度を測定した。得られた結果を表6と、
図1及び
図2に示した。
【0083】
【0084】
<比較例1の樹脂組成物についての評価結果>
比較例1の非親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルム20gを用いた以外は、実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルムを用いたと同様にして、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度を測定した。得られた結果は表7と、
図3及び
図4に示した。
【0085】
【0086】
<比較例2の樹脂組成物についての評価結果>
比較例2の非親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルム20gを用いた以外は、実施例1の親水性樹脂組成物を用いて作製した樹脂フィルムを用いたと同様にして、経過時間毎に溶液中のヨウ素イオン濃度及びセシウムイオン濃度を測定した。得られた結果は表8と
図3及び
図4に示した。
【0087】