特許第5955264号(P5955264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955264
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】光発生装置、光走査装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20160707BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20160707BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   G02B26/10 D
   B41J2/47 101D
   H04N1/04 104A
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-94821(P2013-94821)
(22)【出願日】2013年4月27日
(65)【公開番号】特開2014-215568(P2014-215568A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 譲
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−057626(JP,A)
【文献】 特開2000−221436(JP,A)
【文献】 特開2010−015877(JP,A)
【文献】 特開2006−234956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10,26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉性を有する光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を異なる振動方向に振動する少なくとも2つの成分の光に分割する光分割手段と、
前記光分割手段により分割された光各々を前記光源から出射された光の光軸上の異なる位置に集束させる光学手段と、を備え
前記光分割手段は、前記光源から出射された光の波面における2以上の異なる局所領域ごとに当該光を異なる振動方向に偏光する光発生装置。
【請求項2】
前記光分割手段は、一つの前記局所領域に対応する光を偏光する第1偏光部と、前記第1偏光部に隣接され他の前記局所領域に対応する光を偏光する第2偏光部とを有し、前記第1偏光部を透過する光の振動方向と前記第2偏光部を透過する光の振動方向とのなす角を略90度にする請求項に記載の光発生装置。
【請求項3】
前記第1偏光部は、前記第1偏光部を透過する前の光の振動方向に対して前記第1偏光部を透過する光の振動方向を右略45度の方向に偏光し、
前記第2偏光部は、前記第2偏光部を透過する前の光の振動方向に対して前記第2偏光部を透過する光の振動方向を左略45度の方向に偏光する請求項に記載の光発生装置。
【請求項4】
前記第1偏光部を透過する光の光量と前記第2偏光部を透過する光の光量とが同じである請求項又はに記載の光発生装置。
【請求項5】
前記第1偏光部及び前記第2偏光部は、前記光軸を中心とした同心円状にある請求項のいずれかに記載の光発生装置。
【請求項6】
干渉性を有する光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を異なる振動方向に振動する少なくとも2つの成分の光に分割する光分割手段と、
前記光分割手段により分割された光各々を前記光源から出射された光の光軸上の異なる位置に集束させる光学手段と、を備え、
前記光学手段が、
前記光分割手段により分割された少なくとも2つの成分の光を、当該光各々に対応して予め定められた異なる屈折力に基づき屈折させる屈折手段と、
前記屈折手段により屈折された光を前記屈折力に対応する前記光軸上の異なる位置に集束させる集束手段と、
を備えた光発生装置。
【請求項7】
前記屈折手段は、前記異なる屈折力各々に対応する屈折部を有するフレネルレンズである請求項に記載の光発生装置。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載の光発生装置と、
前記光発生装置で発生した光を被照射体に対して走査する走査手段と、
を備えた光走査装置。
【請求項9】
請求項に記載の光走査装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点深度が拡大された光を発生させる光発生装置、前記光発生装置を備える光走査装置、及び前記光走査装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、入力された画像データーに応じた画像を印刷用紙に形成する電子写真方式の画像形成装置では、光源から出射された光が感光体ドラムの露光面に対して走査されることにより、感光体ドラムの露光面に前記画像データーに応じた静電潜像が形成される。前記画像データーに基づいて予め定められた画質の静電潜像を形成するためには、感光体ドラムの露光面に光を正確に結像させる必要がある。しかしながら、周辺温度の変化による材質の膨張や寸法公差等の様々な要因により、感光体ドラムの露光面の位置が変動し、前記露光面に対して適切な位置に光を結像させることができず、前記画像データーに応じた静電潜像が形成されなくなり、印刷用紙に形成される画像の画質が劣化する場合がある。
そこで、特許文献1には、1軸性の結晶からなる光学部材を光路上に配置することにより、光軸上に複数の集光点(結像点)を形成し、これにより焦点深度を拡大する方法が記載されている。また、特許文献2には、光軸と直交する方向に屈折率の異なる複数の媒質を配列して、光軸上に複数の集光点を形成することにより焦点深度を拡大して、感光体ドラムの露光面の位置の変動等が生じても露光に必要な光量を確保できる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4063990号公報
【特許文献2】特開2003−329953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示された方法により、1軸性の結晶を光路上に配置させた場合、異常光線の屈折角度が縦方向と横方向とで変わるため、フレア等が発生して画質が低下する問題が生じる。ここで、前記異常光線とは、複屈折により二分割された光線のうち、屈折の法則に従わない光線のことをいう。また、前記特許文献2に開示された構成により、適切に焦点深度を拡大させるためには、少なくとも1方向にインコヒーレントな光を出射するブロードエリア半導体レーザー(Broad Area Laser Diode)等を光源として使用する必要があるため、装置の構成が複雑になる。また、前記特許文献2に開示された構成では、全ての方向にコヒーレントな光を出射する光源を使用した場合、干渉により露光に必要な光量が得られないという問題が生じる。ここで、インコヒーレントな光とは、光の位相や振幅が不規則に変化して干渉しにくい光のことをいう。また、コヒーレントな光とは、光の位相や振幅が規則的に変化して干渉しやすい光のことをいう。
従って、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コヒーレントな光を出射する光源を使用する構成であっても、光の焦点深度を拡大することができる光発生装置、光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る光発生装置は、光源、光分割手段、及び光学手段を備える。前記光源は、干渉性を有する光を出射する。前記光分割手段は、前記光源から出射された光を異なる振動方向に振動する少なくとも2つの成分の光に分割する。前記光学手段は、前記光分割手段により分割された光各々を前記光源から出射された光の光軸上の異なる位置に集束させる。
前記光発生装置の構成によれば、コヒーレントな光を出射する光源を使用する構成であっても、焦点深度を拡大することができる。
また、本発明に係る光走査装置は、前記光発生装置と、前記光発生装置で発生した光を被照射体に対して走査する走査手段と、を備えて構成される。前記光走査装置の構成によれば、感光体ドラムなどの被照射体の光照射面の位置が変動する場合でも、必要とされる光量の光を光照射面に集光させることができる。
さらに、本発明に係る画像形成装置は、前記光走査装置を備えて構成される。前記画像形成装置の構成によれば、前記画像形成装置が備える感光体ドラムの露光面の位置が変動する場合でも、前記光走査装置により、必要とされる光量の光を前記露光面に集光させることができ、前記感光体ドラムの露光面を適切に露光することができる。これにより、感光体ドラムの露光面の位置の変動に起因する画質の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コヒーレントな光を出射する光源を使用する構成であっても、焦点深度を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る複合機の概略構成を示す概略構成図。
図2】本発明の実施形態に係る光走査装置の概略構成を示す概略構成図。
図3】本発明の実施形態に係る光発生装置の概略構成を示す概略構成図。
図4】本発明の実施形態に係る偏光子の概略構成を示す概略構成図。
図5】偏光後のレーザー光の振動方向を模式的に示す波形図。
図6】本発明の実施形態に係るフレネルレンズの概略構成を示す概略構成図。
図7】焦点位置近傍の光量の強さを模式的に示すグラフ。
図8】シミュレーションにより算出された焦点位置近傍の光量の値を示す分布図。
図9】シミュレーションにより算出された焦点位置近傍の光量の強さをしめすグラフ。
図10】本発明の他の実施例に係る偏光子の概略構成を示す概略構成図。
図11】本発明の他の実施例に係るフレネルレンズの概略構成を示す概略構成図。
図12】本発明の他の実施例に係る焦点位置近傍における3つの集光点の光量の強さを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
<複合機100の概略構成>
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態の複合機100の概略構成について説明する。なお、図1(A)は、前記複合機100の模式断面図、図1(B)は、図1(A)におけるA−A矢視図である。
前記複合機100は、画像読取部1、ADF2、画像形成部3、給紙部4、制御部5、及び操作表示部6等を備えた画像形成装置である。前記操作表示部6は、前記制御部5からの制御指示に従って各種の情報を表示し、ユーザー操作に応じて前記制御部5に各種の情報を入力するタッチパネル等である。
なお、前記複合機100は、本発明の画像形成装置の一例に過ぎない。例えば、本発明は、プリンター、ファクシミリ装置、及びコピー機等の画像形成装置であってもよい。
【0010】
前記画像読取部1は、原稿カバー50、コンタクトガラス51、読取ユニット52、ミラー53、54、光学レンズ55、及びCCD(Charge Coupled Device)56等を備えた画像読取手段である。前記コンタクトガラス51は、前記画像読取部1の上面に設けられており、前記複合機100の画像読取対象となる原稿Pが載置される透明な原稿台である。前記原稿カバー50は、必要に応じて前記コンタクトガラス51を覆うものである。そして、前記画像読取部1は、前記制御部5により制御されることによって、前記コンタクトガラス51上に載置された原稿Pから画像データーを読み取る。
前記読取ユニット52は、LED光源521及びミラー522を備えており、ステッピングモーター等の駆動モーターを用いた不図示の移動機構により図1(A)における左右方向(副走査方向)へ移動可能に構成されている。そして、前記駆動モーターにより前記読取ユニット52が副走査方向に移動されると、前記LED光源521から前記コンタクトガラス51に向けて照射される光が副走査方向に走査される。
前記LED光源521は、前記複合機100の図1(A)における紙面垂直方向(主走査方向)に沿って配列された多数の白色LEDを備えている。前記LED光源521は、前記コンタクトガラス51上の読取位置52Aにある原稿Pに向けて1ライン分の白色光を照射する。なお、前記読取位置52Aは、前記読取ユニット52の副走査方向への移動に伴って副走査方向に移動する。
前記ミラー522は、前記LED光源521から前記読取位置52Aにある原稿Pに光を照射したときの反射光を前記ミラー53に向けて反射させる。そして、前記ミラー522で反射した光は、前記ミラー53、54により前記光学レンズ55に導かれる。前記光学レンズ55は、入射した光を集光して前記CCD56に入射させる。
前記CCD56は、受光した光をその光量に応じた電気信号(電圧)に変換し、画像データーとして出力する光電変換素子である。具体的には、前記CCD56は、前記LED光源521から光が照射されたときに前記原稿Pから反射した光に基づいて前記原稿Pの画像データーを読み取る。前記CCD56で読み取られた画像データーは前記制御部5に入力される。
【0011】
前記ADF2は、前記原稿カバー50に設けられている。前記ADF2は、原稿セット部21、複数の搬送ローラー22、原稿押さえ23、及び排紙部24等を備えた自動原稿送り装置である。
前記ADF2は、前記搬送ローラー22各々を不図示のステッピングモーターで駆動させることにより、前記原稿セット部21にセットされた原稿Pを前記コンタクトガラス51上の読取位置52Aを通過させて前記排紙部24まで搬送させる。この際に、前記画像読取部1により前記読取位置52Aを通過する原稿Pから画像データーが読み取られる。
前記原稿押さえ23は、前記コンタクトガラス51上の読取位置52Aの上方に原稿Pが通過できる間隔を隔てた位置に設けられている。前記原稿押さえ23は、主走査方向に長尺状に形成されており、その下面(コンタクトガラス51側の面)には白色のシートが貼り付けられている。前記複合機100では、前記白色のシートの画像データーが白色基準データーとして読み取られる。前記白色基準データーは、周知のシェーディング補正等で用いられる。
【0012】
前記画像形成部3は、前記画像読取部1で読み取られた画像データー、又は外部のパーソナルコンピューター等の情報処理装置から入力された画像データーに基づいて画像形成処理(印刷処理)を実行する電子写真方式の画像形成手段である。
具体的には、前記画像形成部3は、感光体ドラム31(被照射体の一例)、帯電装置32、LSU33(光走査装置の一例)、現像装置34、転写ローラー35、除電装置36、定着ローラー37、及び加圧ローラー38等を備えている。そして、前記画像形成部3では、前記給紙部4により搬送される用紙に以下の手順で画像が形成され、画像形成後の用紙は排紙トレイに排紙される。
まず、前記帯電装置32により前記感光体ドラム31が所定の電位に一様に帯電される。次に、前記LSU33により前記感光体ドラム31の表面に画像データーに基づく光が照射される。これにより、前記感光体ドラム31の表面に静電潜像が形成される。そして、前記感光体ドラム31上の静電潜像は前記現像装置34によりトナー像として現像(可視像化)される。続いて、前記感光体ドラム31に形成されたトナー像は前記転写ローラー35により用紙に転写される。その後、用紙に転写されたトナー像は、その用紙が前記定着ローラー37及び前記加圧ローラー38の間を通過して排出される際に前記定着ローラー37で加熱されて前記用紙に溶融定着する。なお、前記感光体ドラム31の電位は前記除電装置36で除電される。
【0013】
前記制御部5は、CPU、ROM、RAM、及びEEPROM等の制御機器を有している。そして、前記制御部5は、前記ROMに記憶された所定の制御プログラムを前記CPUで実行することにより、前記複合機100を統括的に制御する。また、前記RAMは揮発性の記憶手段、前記EEPROMは不揮発性の記憶手段であって、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリとして使用される。なお、前記制御部5は、集積回路(ASIC、DSP)等の電子回路で構成されたものであってもよく、前記複合機100を統括的に制御するメイン制御部と別に設けられた制御部であってもよい。
【0014】
<LSU33の概略構成>
次に、図2を参照しつつ、前記LSU33の概略構成について説明する。ここに、図2は前記LSU33を上方から見た模式図である。
図2に示されるように、前記LSU33は、光発生装置10、及びポリゴンミラー12を備えている。
前記ポリゴンミラー12は、不図示の駆動モーターにより矢印R方向(図2参照)に回転駆動されることにより、前記光発生装置10で発生したレーザー光Lを反射(偏向)して、前記感光体ドラム31に対して走査する。即ち、前記ポリゴンミラー12及び前記駆動モーターは、光発生装置10で発生した前記レーザー光Lを前記感光体ドラム31に対して走査する走査手段の一例である。前記ポリゴンミラー12は、アルミニウム製であり、前記光発生装置10が備えるレーザー光源11から出射される前記レーザー光Lを反射させる6つの反射面を有する回転多面鏡である。前記ポリゴンミラー12は、平面視で正六角形状に形成されている。前記ポリゴンミラー12の鉛直下方に前記駆動モーターが設けられている。前記駆動モーターの出力軸に前記ポリゴンミラー12が連結されている。これにより、前記駆動モーターが前記制御部5により回転駆動されると、前記ポリゴンミラー12が出力軸を中心軸として回転される。一般に、前記ポリゴンミラー12による前記レーザー光Lの走査方向は主走査方向(図2における上下方向)と称される。なお、図2に示される前記ポリゴンミラー12は正六角形状であるが、もちろんその他の正多角形状であってもよい。
【0015】
<光発生装置10の概略構成>
次に、図3を参照しつつ、前記光発生装置10の概略構成について説明する。ここに、図3は前記光発生装置10を斜め上方から見た模式図である。
図3に示されるように、前記光発生装置10は、前記レーザー光源11(光源の一例)、波長板14(光分割手段の一例)、フレネルレンズ15(屈折手段の一例)、アパチャー16、及びfθレンズ13(集光手段の一例)等を備えている。
なお、前記レーザー光源11が出射する前記レーザー光Lの中心、前記フレネルレンズ15の中心、前記fθレンズ13の中心、及び前記fθレンズ13により集光される光の焦点(集光点)のそれぞれを結ぶ直線を光軸67とする。また、説明の便宜上、図3において、前記レーザー光源11、前記波長板14、前記フレネルレンズ15、前記アパチャー16、及び前記fθレンズ13の中心が前記光軸67上となるように各構成要素が配置されている。
【0016】
前記レーザー光源11は、直線偏光であり干渉性を有するレーザー光Lを出射する。前記レーザー光Lは、光の位相や振幅が規則的に変化して干渉しやすいコヒーレント(coherent)な光であって、一定の周期で所定の振動方向へ振動する光である。前記レーザー光源11は、半導体の再結合発光を利用した半導体レーザー(semiconductor laser)などにより構成される。
【0017】
前記波長板14は、前記レーザー光源11から出射された前記レーザー光Lを異なる振動方向に振動する2つの成分のレーザー光LR1’、LR2’に分割する。具体的には、前記波長板14は、前記レーザー光源11から出射された前記レーザー光Lの波面における2つの異なる局所領域ごとに前記レーザー光Lを異なる振動方向に偏光するものである。なお、前記レーザー光Lの波面は、前記レーザー光Lの位相が揃った点を連ねた面である。また、前記局所領域とは、前記レーザー光Lの波面において定義される概念であり、前記波長板14が有する後述の第1偏光部R1’及び第2偏光部R2’それぞれに入射する光の入射範囲に対応している。
【0018】
以下、図4を参照しつつ、前記波長板14の構成について説明する。なお、図4(A)は、前記波長板14の正面図、図4(B)は、図4(A)におけるB−B断面図である。
前記波長板14は、水晶、カールサート(calcite)、及び複屈折ポリマーを2枚のガラス基板にはさみ込んだ素材などにより構成されている。前記波長板14は、所定の厚みを有する円盤状に形成されており、第1偏光部R1’と、第2偏光部R2’とを有する。前記第1偏光部R1’は、一つの前記局所領域に対応する前記レーザー光Lを偏光するものである。また、前記第2偏光部R2’は、前記第1偏光部R1’に隣接され他の前記局所領域に対応する前記レーザー光Lを偏光するものである。なお、本実施形態では、説明の便宜上、前記レーザー光Lが前記波長板14から漏れることなく前記波長板14の全域に一様に照射されるものとして説明する。もちろん、前記第2偏光部R2’の外周縁部に前記レーザー光Lが照射されないように波長板14が形成されていてもかまわない。
【0019】
前記第1偏光部R1’は、前記波長板14の中心部分に設けられており、直径がh1’の円盤状に形成されている。前記第1偏光部R1’は、該第1偏光部R1’を透過する前記レーザー光Lの振動方向(偏光方向)に対して、前記第1偏光部R1’を透過する前記レーザー光Lの振動方向を右45度の方向に偏光する1/2波長板である。具体的には、前記第1偏光部R1’は、該第1偏光部R1’を透過する前記レーザー光Lをレーザー光LR1’(図5参照)に変更する。詳細には、前記第1偏光部R1’は、前記第1偏光部R1’を透過する前の一方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光Lを、前記レーザー光Lの振動方向を基準に右45度方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光LR1’に変更する。つまり、直線偏光である前記レーザー光Lが前記第1偏光部R1’を透過することによって、その振動方向が右45度に回転した前記レーザー光LR1’として前記第1偏光部R1’から出ていくことになる。言い換えると、前記第1偏光部R1’は、直線偏光である入射前の前記レーザー光Lを、その前記振動方向の振動面(偏光面)が右回転方向へ45度回転した振動方向の前記レーザー光LR1’に変更して出射する。つまり、前記第1偏光部R1’は、前記レーザー光Lの振動方向を右回転方向へ45度回転させて前記レーザー光LR1’として出射させるものである。
前記第2偏光部R2’は、前記波長板14の周辺部分であって、前記第1偏光部R1’の外周の外側に設けられている。即ち、前記第1偏光部R1’及び前記第2偏光部R2’は、前記光軸67を中心とした同心円状にある。前記第2偏光部R2’は、該第2偏光部R2’を透過する前記レーザー光Lの振動方向(偏光方向)に対して、前記第2偏光部R2’を透過する前記レーザー光Lの振動方向を左45度の方向に偏光する1/2波長板である。具体的には、前記第2偏光部R2’は、該第2偏光部R2’を透過する前記レーザー光Lをレーザー光LR2’(図5参照)に変更する。詳細には、前記第2偏光部R2’は、前記第2偏光部R2’を透過する前の一方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光Lを、前記レーザー光Lの振動方向を基準に左45度方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光LR2’に変更する。つまり、直線偏光である前記レーザー光Lが前記第2偏光部R2’を透過することによって、その振動方向が左45度に回転した前記レーザー光LR2’として前記第2偏光部R2’から出ていくことになる。言い換えると、前記第2偏光部R2’は、直線偏光である入射前の前記レーザー光Lを、その前記振動方向の振動面(偏光面)が左回転方向へ45度回転した振動方向の前記レーザー光LR2’に変更して出射する。つまり、前記第2偏光部R2’は、前記レーザー光Lの振動方向を左回転方向へ45度回転させて前記レーザー光LR2’として出射させるものである。
【0020】
即ち、前記波長板14は、前記第1偏光部R1’を透過する前記レーザー光Lの振動方向と前記第2偏光部R2’を透過する前記レーザー光Lの振動方向とのなす角を90度にするものである。この場合、前記第1偏光部R1’において偏光された前記レーザー光LR1’の振動方向、及び前記第2偏光部R2’において偏光された前記レーザー光LR2’の振動方向のなす角が90度になるため(図5参照)、相互に他方のレーザー光による干渉の影響を受けなくなる。もちろん、前記第1偏光部R1’と前記第2偏光部R2’とが前記レーザー光Lを偏光する方向が逆でもかまわない。なお、局所領域ごとに各々偏光された前記レーザー光Lを近傍位置に集光した場合に、振動方向のなす角が90度であれば干渉による光量減少を完全に防止できため、本実施形態では、右45度、左45度に偏光している。しかし、完全に90度でなくても(「略90度」でも)干渉の影響のほとんどを排除することができる。そのため、正確に右45度、左45度でなくても、多少の誤差があっても、右方向及び左方向それぞれへ概ね45度(右略45度、左略45度)に偏光するものでもよい。
【0021】
前記第1偏光部R1’は、後述する前記フレネルレンズ15の中心部分の第1屈折部R1に対応しており、前記第2偏光部R2’は、前記フレネルレンズ15の周辺部分の第2屈折部R2に対応している。また、前記第1偏光部R1’の直径h1’及び、前記第2偏光部R2’の直径h2’は、前記第1偏光部R1’の面積と前記第2偏光部R2’の面積とが等しくなるように定められている。
例えば、直径h1’及び直径h2’は、h1’:h2’=21/2:2の比率となるように定められている。この場合、前記第1偏光部R1’を透過する前記レーザー光LR1’の光量と前記第2偏光部R2’を透過する前記レーザー光LR2’の光量とが同じになる。これにより、fθレンズ13により集光される各集光点の光量のピーク値を揃えることができる。なお、前記第1偏光部R1’の面積とは、前記第1偏光部R1’において前記光軸67に直交する面の全域の面積をいう。また、前記第2偏光部R2’の面積とは、前記第2偏光部R2’において前記光軸67に直交する面であって光が透過する領域の面積をいう。
【0022】
前記フレネルレンズ15は、前記波長板14により分割された2つの成分の光(前記レーザー光LR1’、LR2’)を、当該光(前記レーザー光LR1’、LR2’)各々に対応して予め定められた異なる屈折力に基づき屈折させる。
以下、図6を参照しつつ、前記フレネルレンズ15の構成について説明する。なお、図6(A)は、前記フレネルレンズ15の正面図、図6(B)は、図6(A)におけるC−C断面図である。
前記フレネルレンズ15は、ガラスや無色透明なプラスチック(アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート)などの素材により構成されている。前記フレネルレンズ15は、正面からみて円形状に形成されており、前記異なる屈折力各々に対応する第1屈折部R1及び第2屈折部R2を有する。これら第1屈折部R1及び第2屈折部R2が、本発明の屈折部の一例である。なお、本実施形態では、説明の便宜上、前記波長板14により分割された前記レーザー光LR1’が第1屈折部R1の全域に一様に照射され、また、前記レーザー光LR2’が第2屈折部R2の全域に一様に照射されるものとして説明する。
【0023】
図6(A)に示されるように、前記フレネルレンズ15の正面は、前記光軸67を中心とし、且つ前記光軸67に対して直交する同心円状の2つの領域に分割されており、前記第1屈折部R1が前記光軸67側の領域を構成し、前記第2屈折部R2が前記第1屈折部R1の外周の外側の領域を構成している。図6(B)に示されるように、前記第1屈折部R1の正面側は円弧形状に形成されている。また、前記第2屈折部R2の正面側も円弧形状に形成されている。前記フレネルレンズ15の断面において、前記第1屈折部R1と前記第2屈折部R2とが2段の円弧形状に形成にされている。
前記第1屈折部R1は、前記フレネルレンズ15の中心部分に設けられている。前記第1屈折部R1に光が入射する側の面71は、直径h1の円形状である。前記第1屈折部R1から光が出て行く正面側の曲面61は、外側へ突出した円弧形状に形成されている。
前記第2屈折部R2は、前記フレネルレンズ15の周辺部分であって、第1屈折部R1の外周の外側に設けられている。前記第2屈折部R2から光が出て行く側の曲面62は、外側へ突出した円弧形状に形成されている。
【0024】
前記第1屈折部R1の曲面61及び前記第2屈折部R2の曲面62それぞれの基本輪郭(z)は、前記第1屈折部R1、及び前記第2屈折部R2ごとに、前記光軸67方向から径方向距離の関数である下記の式(1)により定義される。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、rは前記光軸67からの径方向距離であり、cは基本輪郭の基本曲率であり、kは円錐定数である。また、Aは四次の変形定数であり、Bは六次の変形定数である。さらに高次の項を含めることができる。なお、前記第1屈折部R1、及び前記第2屈折部R2の素材は同じものであり、曲面61及び曲面62の曲率のみが異なるものとする。
前記第1屈折部R1は、入射された前記レーザー光LR1’を屈折して前記光軸67に対して平行(レーザー光LR1)にする。前記第2屈折部R2は、入射された前記レーザー光LR2’を屈折して前記光軸67に対してΔθの角度で進む光(レーザー光LR2)にする。ここで、角度Δθは、前記レーザー光LR1及び前記レーザー光LR2を前記fθレンズ13により集光した場合に、前記レーザー光LR1、LR2各々の集光点が隣接した位置に形成されることにより、焦点深度を拡大することができる角度である。この角度Δθは、各集光点の位置関係から予め算定された値である。なお、本実施形態では、前記レーザー光LR1を前記光軸67に対して平行にしたが、これに限るものではない。前記第1屈折部R1の屈折力と前記第2屈折部R2の屈折力とが異なっており、前記レーザー光LR1と前記レーザー光LR2が、前記光軸67にほぼ平行でありながら異なる方向へ進むものであればよい。
【0027】
なお、直径h1と直径h2とは、前記第1屈折部R1の面71の面積と前記第2屈折部R2の面72の面積とが等しくなるように定められている。例えば、直径h1及び直径h2は、h1:h2=21/2:2の比率となるように定められている。この場合、前記第1屈折部R1を透過する前記レーザー光LR1の光量と前記第2屈折部R2を透過する前記レーザー光LR2の光量とが同じになる。これにより、前記fθレンズ13により集光される各集光点の光量の強度を揃えることができる。
【0028】
前記アパチャー(aperture)16は、前記フレネルレンズ15により概ね平行光にされた前記レーザー光Lの周辺光束領域を遮断して前記レーザー光Lを整形する。これにより、前記レーザー光源11の製造ばらつきや、経時的な変化による前記レーザー光Lの径が変化することを防止する。
前記fθレンズ13は、前記フレネルレンズ15により屈折された前記レーザー光Lを分割された成分(前記レーザー光LR1、LR2)ごとに、前記光軸67上の異なる位置に集束(集光)させる。つまり、前記fθレンズ13は、前記ポリゴンミラー12により等角運動される前記レーザー光Lの照射位置(焦点位置)を等速度運動に変換して、前記感光体ドラム31の表面上に結像させる。前記LSU33において、前記fθレンズ13は非球面形状の複数のレンズ(レンズ13A、レンズ13Bなど)から構成される組レンズである(図2参照)。前記fθレンズ13は、ガラス、無色透明なプラスチック(アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート)など素材により構成されている。
なお、前記フレネルレンズ15と前記fθレンズ13とが、前記波長板14により分割された光(前記レーザー光LR1’、LR2’)各々を前記レーザー光源11から出射された前記レーザー光Lの前記光軸67上の異なる位置に集束させる光学手段の一例である。
【0029】
以下、図7を参照しつつ、上述のように構成された光発生装置10が使用されたことによる光の焦点深度の拡大効果ついて説明する。なお、以下の説明では、前記フレネルレンズ15が後述する形状に形成されたものであり、また、前記fθレンズ13が単一の凸型レンズ(焦点距離が180mmのf180レンズ)であるとして、焦点位置における光量分布をシミュレーションにより算出した結果に基づいて説明する。
【0030】
ここで、前記フレネルレンズ15の具体的な形状の一例について説明する。詳細には、前記フレネルレンズ15として、前記アパチャー16から前記フレネルレンズ15と前記fθレンズ13との距離が14.1mmであり、前記フレネルレンズ15の厚さが1.3815mmであり、前記第1屈折部R1の直径h1が2×21/2mmであり、前記第2屈折部R2の直径h2が4mmであるのものを採用している。この場合、前記第1屈折部R1の曲面61及び前記第2屈折部R2の曲面62の形状は、前記式(1)に下記表1のパラメータを代入して得られる基本輪郭に形成されている。
【0031】
【表1】
【0032】
図7(A)は、光発生装置10により前記レーザー光Lを2つの集光点(位置Z1及び位置Z2)に集光させたときの各集光点の光量の強度分布グラフである。また、図7(B)は、前記レーザー光Lを1つの集光点(位置Z0)に集光させたときの光量の強度分布グラフである。なお、以下の説明では、予め定められた光の強度Q2(図7参照)以上の光量の範囲が、ピントボケとして許容することができる焦点であるとして説明する。ここで、前記強度Q2は、例えば、図7(B)の位置Z0における光強度のピーク値Q1の半分の強度とする。
図7(A)に示されるように、前記レーザー光LR1は、前記fθレンズ13により前記位置Z1を集光点として集光される。このとき、前記位置Z1における光の強度は、前記位置Z1において光強度がピーク値Q3(>Q2)となる末広がり形状の光量分布81として表すことができる。また、前記レーザー光LR2は、前記fθレンズ13により前記位置Z2を集光点として集光される。このとき、前記位置Z2における光の強度は、前記位置Z2において光強度がピーク値Q3(>Q2)となる末広がり形状の光量分布82として表すことができる。
前記フレネルレンズ15及び前記fθレンズ13は、前記光量分布81と前記光量分布82とが重なる領域T(図7(A)の網掛け部分)を生じさせる前記位置Z1、Z2に前記レーザー光LR1及び前記レーザー光LR2を屈折させるように設計されている。本実施形態では、上述したように、前記波長板14により分割された前記レーザー光LR1の振動方向と前記レーザー光LR2の振動方向とが90度ずれている。そのため、前記領域Tにおいて互いの光が干渉により弱まることはなく、重ね合わされることにより逆に強めあう。これにより、前記位置Z1と前記位置Z2との中心にある位置Z0における光強度が前記位置Z1及び前記位置Z2それぞれのピーク値Q3を超えるピーク値Q4まで強まる。
この場合、強度Q2以上となる光軸方向の焦点深度LP1(図7(A)参照)は、1つの集光点により焦点を形成した場合の強度Q2以上となる焦点深度LP2(図7(B)参照)よりも広くなる(LP1>LP2)。
【0033】
なお、仮に前記レーザー光LR1の振動方向と前記レーザー光LR2の振動方向とが90度ずれていないとすると、前記位置Z1をピーク位置とする光量強度の分布と前記位置Z2をピーク位置とする光量強度の分布とが重なる領域Tにおいて干渉により光量が減少する。そのため、干渉により光量が減少して、露光に必要な光強度が得られない場合がある。この不都合を回避するために、前記波長板14により、前記レーザー光LR1の振動方向と前記レーザー光LR2の振動方向とを90度ずらしている。
【0034】
さらに、図8及び図9を参照しつつ、シミュレーションの結果に基づいて、上記例の焦点深度を拡大した効果について説明する。ここに、図8(A)は2つの集光点により形成される焦点位置近傍の光量の分布図であり、図8(B)は1つの集光点により形成される焦点位置近傍の光量の分布図である。なお、図8は、前記レーザー光LR1の波面の集光点(X、Z)=(0、Z1)近傍の強度分布であり、横軸は前記光軸67と垂直な方向(X軸)であり、縦軸は前記光軸67(Z軸)方向である。また、図中の等高線は、光強度ピーク値を1とした場合に、光の強度が1/10になるごとに線を引いたものである。この場合、前記強度Q2の範囲は、図8(A)及び(B)の光量の中心領域から5番目の等高線で囲まれる領域に該当する。
図9(A)は2つの集光点により形成される焦点位置近傍の前記光軸67方向の光量の強度分布グラフであり、図9(B)は1つの集光点により形成される焦点位置近傍の前記光軸67方向の光量の強度分布グラフである。なお、図9は、前記レーザー光LR1の波面の集光点(X、Z)=(0、Z1)近傍の焦点深度方向の光量の強度分布であり、横軸は前記光軸67(Z軸方向)であり、縦軸は光量の強度の分布である。つまり、図9(A)は、図8(A)の光量のピーク部分を通る縦線(前記光軸67、X=0)に沿って光量の強度が表された図である。図9(B)は、図8(B)の光量のピーク部分を通る縦線(前記光軸67、X=0)に沿って光量の強度が表された図である。
【0035】
図8(B)に示される1つの集光点により形成される焦点位置近傍の光量の分布図によると、光量の強度の分布範囲は、Z軸方向が長軸であり、X軸方向が短軸である略楕円状である。各等高線により区分けされる光量の強度の分布範囲は、楕円状にほぼ均等である。また、図9(B)に示される1つの集光点により形成される焦点位置近傍の前記光軸67方向の光量の強度分布グラフによると、末広がり形状の光量分布92として表すことができる。この場合、1つの集光点により形成される前記焦点深度LP2は、約17.6mmである。光強度がピーク値の1/10になる照射範囲の長さL2は、約31.2mmである。
図8(A)に示される2つの集光点により形成される焦点位置近傍の光量の分布図によると、光量の強度の分布範囲は、Z軸方向が長軸であり、X軸方向が短軸である略楕円状である。図8(A)の分布図において各等高線により区分けされる光量の強度の分布範囲は、1つの集光点により形成される光強度の分布範囲(図8(B)参照)よりも、Z軸方向に引き伸ばされた楕円状である。また、図9(A)に示される2つの集光点により形成される焦点位置近傍の前記光軸67方向の光量の強度分布グラフによると、前記位置Z1付近における光の強度は、末広がり形状の光量分布91として表すことができる。前記光量分布91は、前記光量分布92よりもZ方向に広がっており、ピーク部分が鈍角状である。この場合、2つの集光点により形成される前記焦点深度LP1は、約22.3mmである。また、光強度がピーク値の1/10になる照射範囲の長さL1は、約35.2mmである。
上記シミュレーション結果によると、2つの集光点により形成される前記焦点深度LP1(図8(A)参照)は、1つの集光点により形成される前記焦点深度LP2(図8(B)参照)よりも約4.7mm長くなる。このように、2つの集光点により焦点を形成することにより、1つの集光点より形成される焦点よりも焦点深度を拡大することができる。そのため、被照射体の光照射面の位置が変動したとしても、前記光発生装置10から出射された前記レーザー光Lが、被照射体の光照射面に照射された場合に、焦点のピントボケとして許容することができる範囲を焦点深度方向に広くすることができる。
【0036】
以上説明したように、コヒーレントな光を出射する前記レーザー光源11を使用する構成の前記光発生装置10であっても、焦点位置近傍に相互に干渉しない2つの集光点が形成されるため、焦点深度を拡大することができる。
また、前記光発生装置10を使用する構成の前記LSU33により、前記感光体ドラム31の照射面の位置が変動しても、予め定められた画質の結像を形成するために必要とされる光量の光を照射面に集光させることができる。
さらに、前記LSU33を使用する構成の前記複合機100は、前記感光体ドラム31の露光面の位置が変動する場合でも、前記LSU33により、画像データーに基づいて予め定められた画質の静電潜像を形成するために必要とされる光量の光を露光面に集光させることができ、画質が保たれた静電潜像を形成することができる。これにより、前記感光体ドラム31の露光面の位置の変動に起因する画質の低下を防止することができる。
【0037】
なお、前記レーザー光源11の前記レーザー光Lを偏光する手段として前記波長板14を使用する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、偏光子、液晶等とレンズを組み合わせた構成により実現しても良い。また、ホログラムを用いて波面を制御することにより偏光してもよい。
なお、前記レーザー光LR1、LR2を集光する手段として前記fθレンズ13を使用する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、集光レンズ、ホログラム、放物鏡面等により実現してもよい。
【0038】
<他の実施例>
以下、本発明の他の実施例について説明する。ここで、本発明の他の実施例が上述の実施形態と異なるところは、波長板141とフレネルレンズ151の構成であり、その他の構成は上述の実施形態の構成と共通するため、ここでは、異なる部分だけ説明して、共通する構成の説明は省略する。
他の実施例では、前記レーザー光源11が出射する前記レーザー光Lを3つの領域ごとに偏光し、屈折し、及び集光することにより焦点深度を拡大する。ここでは、図10図12を参照しつつ、他の実施例の前記光発生装置110について説明する。
【0039】
前記波長板141は、前記レーザー光源11から出射された前記レーザー光Lを異なる振動方向に振動する3つの成分のレーザー光LR3’、LR4’、LR5’に分割する。つまり、前記波長板141は、前記レーザー光源11から出射された前記レーザー光Lを異なる振動方向に振動する少なくとも2つの成分の光に分割する光分割手段の一例である。具体的には、前記波長板141は、前記レーザー光源11から出射された前記レーザー光Lの波面における2つ以上の異なる局所領域ごとに前記(当該)レーザー光Lを異なる振動方向に偏光するものである。
なお、前記局所領域とは、前記レーザー光Lの波面において定義される概念であり、前記波長板141が有する後述の第3偏光部R3’、第4偏光部R4’、及び第5偏光部R5’それぞれに入射する光の入射範囲に対応している。
【0040】
以下、図10を参照しつつ、前記波長板141の構成について説明する。なお、図11(A)は、前記波長板141の正面図、図11(B)は、図11(A)におけるD−D断面図である。前記波長板141は、所定の厚みを有する円盤状に形成されており、第3偏光部R3’と、第4偏光部R4’と、第5偏光部R5’とを有する。前記第3偏光部R3’は、一つの前記局所領域に対応する前記レーザー光Lを偏光するものである。前記第4偏光部R4’は、前記第3偏光部R3’及び前記第5偏光部R5’に隣接され他の前記局所領域に対応する前記レーザー光Lを偏光するものである。前記第5偏光部R5’は、前記第4偏光部R4’に隣接され、その他の前記局所領域に対応する前記レーザー光Lを偏光するものである。なお、本実施例では、説明の便宜上、前記レーザー光Lが前記波長板141から漏れることなく前記波長板141の全域に一様に照射されるものとして説明する。もちろん、前記第5偏光部R5’の外周縁部に前記レーザー光Lが照射されないように波長板141が形成されていてもかまわない。
【0041】
前記第3偏光部R3’は、前記波長板141の中心部分に設けられており、直径がh3’の円盤状に形成されている。
前記第3偏光部R3’は、該第3偏光部R3’を透過する前記レーザー光Lの振動方向(偏光方向)に対して、前記第3偏光部R3’を透過する前記レーザー光Lの振動方向を右45度の方向に偏光する1/2波長板である。具体的には、前記第3偏光部R3’は、該第3偏光部R3’を透過する前記レーザー光Lをレーザー光LR3’に変更する。詳細には、前記第3偏光部R3’は、前記第3偏光部R3’を透過する前の一方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光Lを、前記レーザー光Lの振動方向を基準に右45度方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光LR3’に変更する。つまり、直線偏光である前記レーザー光Lが前記第3偏光部R3’を透過することによって、その振動方向が右45度に回転した前記レーザー光LR3’として前記第3偏光部R3’から出ていくことになる。言い換えると、前記第3偏光部R3’は、直線偏光である入射前の前記レーザー光Lを、その前記振動方向の振動面(偏光面)が右回転方向へ45度回転した振動方向の前記レーザー光LR3’に変更して出射する。つまり、前記第3偏光部R3’は、前記レーザー光Lの振動方向を右回転方向へ45度回転させて前記レーザー光LR3’として出射させるものである。
前記第4偏光部R4’は、前記波長板141の中間部分であって、前記第3偏光部R3’の外周の外側に設けられている。前記第4偏光部R4’は、該第4偏光部R4’を透過する前記レーザー光Lの振動方向(偏光方向)に対して、前記第4偏光部R4’を透過する前記レーザー光Lの振動方向を左45度の方向に偏光する1/2波長板である。具体的には、前記第4偏光部R4’は、該第4偏光部R4’を透過する前記レーザー光Lをレーザー光LR4’に変更する。詳細には、前記第4偏光部R4’は、前記第4偏光部R4’を透過する前の一方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光Lを、前記レーザー光Lの振動方向を基準に左45度方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光LR4’に変更する。つまり、直線偏光である前記レーザー光Lが前記第4偏光部R4’を透過することによって、その振動方向が左45度に偏光した前記レーザー光LR4’として前記第4偏光部R4’から出ていくことになる。言い換えると、前記第4偏光部R4’は、直線偏光である入射前の前記レーザー光Lを、その前記振動方向の振動面(偏光面)が左回転方向へ45度回転した振動方向の前記レーザー光LR4’に変更して出射する。つまり、前記第4偏光部R4’は、前記レーザー光Lの振動方向を左回転方向へ45度回転させて前記レーザー光LR4’として出射させるものである。
前記第5偏光部R5’は、前記波長板141の周辺部分であって、前記第4偏光部R4’の外周の外側に設けられている。即ち、前記第3偏光部R3’、前記第4偏光部R4’、及び前記第5偏光部R5’は、前記光軸67を中心とした同心円状にある。前記第5偏光部R5’は、該第5偏光部R5’を透過する前記レーザー光Lの振動方向(偏光方向)に対して、前記第5偏光部R5’を透過する前記レーザー光Lの振動方向を右45度の方向に偏光する1/2波長板である。具体的には、前記第5偏光部R5’は、該第5偏光部R5’を透過する前記レーザー光Lをレーザー光LR5’に変更する。詳細には、前記第5偏光部R5’は、前記第5偏光部R5’を透過する前の一方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光Lを、前記レーザー光Lの振動方向を基準に右45度方向に振動(直線偏光)している前記レーザー光LR5’に変更する。つまり、直線偏光である前記レーザー光Lが前記第5偏光部R5’を透過することによって、その振動方向が右45度に回転した前記レーザー光LR5’として前記第5偏光部R5’から出ていくことになる。言い換えると、前記第5偏光部R5’は、直線偏光である入射前の前記レーザー光Lを、その前記振動方向の振動面(偏光面)が右回転方向へ45度回転した振動方向の前記レーザー光LR5’に変更して出射する。つまり、前記第5偏光部R5’は、前記レーザー光Lの振動方向を右回転方向へ45度回転させて前記レーザー光LR5’として出射させるものである。
【0042】
即ち、前記波長板141は、前記第3偏光部R3’を透過する前記レーザー光Lの振動方向と前記第4偏光部R4’を透過する前記レーザー光Lの振動方向とのなす角を90度にするものである。この場合、前記第3偏光部R3’において偏光された前記レーザー光LR3’の振動方向、及び前記第4偏光部R4’において偏光された前記レーザー光LR4’の振動方向のなす角が90度になるため、相互に他方のレーザー光による干渉の影響を受けなくなる。また、前記波長板141は、前記第4偏光部R4’を透過する前記レーザー光Lの振動方向と前記第5偏光部R5’を透過する前記レーザー光Lの振動方向とのなす角を90度にするものである。この場合、前記第4偏光部R4’において偏光された前記レーザー光LR4’の振動方向、及び前記第5偏光部R5’において偏光された前記レーザー光LR5’の振動方向のなす角が90度になるため、相互に他方のレーザー光による干渉の影響を受けなくなる。もちろん、前記第3偏光部R3’と前記第4偏光部R4’とが前記レーザー光Lを偏光する方向が逆でもかまわない。また、前記第4偏光部R4’と前記第5偏光部R5’とが前記レーザー光Lを偏光する方向が逆でもかまわない。
【0043】
なお、前記第3偏光部R3’は、後述する前記フレネルレンズ151の中心部分の第3屈折部R3に対応しており、前記第4偏光部R4’は、前記フレネルレンズ151の中間部分の第4屈折部R4に対応しており、前記第5偏光部R5’は、前記フレネルレンズ151の周辺部分の第5屈折部R5に対応している。また、前記第3偏光部R3’の直径h3’、前記第4偏光部R4’の直径h4’、及び前記第5偏光部R5’の直径h5’は、前記第3偏光部R3’の面積、前記第4偏光部R4’の面積、及び前記第5偏光部R5’の面積が同じになるように定められている。
この場合、前記第3偏光部R3’を透過する前記レーザー光LR3’の光量と、前記第4偏光部R4’を透過する前記レーザー光LR4’の光量と、前記第5偏光部R5’を透過する前記レーザー光LR5’の光量とが同じになる。これにより、fθレンズ13により集光される各集光点の光量のピーク値を揃えることができる。なお、前記第3偏光部R3’の面積とは、前記第3偏光部R3’において光軸67に直交する面の全域の面積をいう。前記第4偏光部R4’の面積とは、前記第4偏光部R4’において光軸67に直交する面であって光が透過する領域の面積をいう。また、前記第5偏光部R5’の面積とは、前記第5偏光部R5’において光軸67に直交する面であって光が透過する領域の面積をいう。
【0044】
前記フレネルレンズ151は、前記波長板141により分割された成分の光(前記レーザー光LR3’、LR4’、LR5’)を、当該光(前記レーザー光LR3’、LR4’、LR5’)各々に対応して予め定められた異なる屈折力に基づき屈折させる。
以下、図11を参照しつつ、前記フレネルレンズ151の構成について説明する。なお、図11(A)は、前記フレネルレンズ151の正面図、図11(B)は、図11(A)におけるE−E断面図である。
前記フレネルレンズ151は、正面からみて円形状に形成されており、前記異なる屈折力各々に対応する第3屈折部R3、第4屈折部R4、及び第5屈折部R5を有する。これら第3屈折部R3、第4屈折部R4、及び第5屈折部R5が、本発明の屈折部の一例である。なお、本実施例では、説明の便宜上、前記波長板141により分割された前記レーザー光LR3’が第3屈折部R3の全域に一様に照射され、前記レーザー光LR4’が第4屈折部R4の全域に一様に照射され、前記レーザー光LR5’が第5屈折部R5の全域に一様に照射されるものとして説明する。
【0045】
図11(A)に示されるように、前記フレネルレンズ151の正面は、前記光軸67を中心とし、且つ前記光軸67に対して直交する同心円状の3つの領域に分割されており、前記第3屈折部R3が前記光軸67側の領域を構成し、前記第4屈折部R4が前記第3屈折部R3の外周の中間の領域を構成し、前記第5屈折部R5が前記第4屈折部R4の外周の外側の領域を構成している。図11(B)に示されるように、前記第3屈折部R3の正面側は円弧形状に形成されている。また、前記第4屈折部R4及び前記第5屈折部R5の正面側も円弧形状に形成されている。前記フレネルレンズ151の断面において、前記第3屈折部R3、前記第4屈折部R4、及び前記第5屈折部R5が3段の円弧形状に形成にされている。
前記第3屈折部R3は、前記フレネルレンズ151の中心部分に設けられている。前記第3屈折部R3に光が入射する側の面73は、直径h3の円形状である。前記第3屈折部R3から光が出て行く正面側の曲面63は、外側へ突出した円弧形状に形成されている。
前記第4屈折部R4は、前記フレネルレンズ151の中間部分であって第3屈折部R3の外周の外側に設けられている。前記第4屈折部R4から光が出て行く側の曲面64は、外側へ突出した円弧形状に形成されている。
前記第5屈折部R5は、前記フレネルレンズ151の周辺部分であって、第4屈折部R4の外周の外側に設けられている。前記第5屈折部R5から光が出て行く側の曲面65は、外側へ突出した円弧形状に形成されている。
【0046】
前記第3屈折部R3の曲面63、前記第4屈折部R4の曲面64、及び前記第5屈折部R5の曲面65それぞれの基本輪郭(z)は、前記第3屈折部R3、前記第4屈折部R4、及び前記第5屈折部R5ごとに、前記光軸67方向から径方向距離の関数である上記の式(1)により定義される。
【0047】
なお、前記第3屈折部R3、前記第4屈折部R4、及び前記第5屈折部R5の素材は同じものであり、曲面63、曲面64、及び曲面65の曲率のみが異なるものとする。
前記第3屈折部R3は、入射された前記レーザー光LR3’を屈折して前記光軸67に対して平行(レーザー光LR3)にする。前記第4屈折部R4は、入射された前記レーザー光LR4’を屈折して前記光軸67に対してΔθ4の角度で進む光(レーザー光LR4)にする。前記第5屈折部R5は、入射された前記レーザー光LR5’を屈折して前記光軸67に対してΔθ5の角度で進む光(レーザー光LR5)にする。ここで、角度Δθ4、Δθ5は、前記レーザー光LR3、前記レーザー光LR4、及び前記レーザー光LR5を前記fθレンズ13により集光した場合に、前記レーザー光LR3、LR4、及びLR5各々の集光点が隣接した位置に形成されることにより、焦点深度を拡大することができる角度である。この角度Δθ4、Δθ5は、各集光点の位置関係から予め算定された値である。なお、本実施形態では、前記レーザー光LR3を前記光軸67に対して平行にしたが、これに限るものではない。前記第3屈折部R3の屈折力、前記第4屈折部R4の屈折力、及び前記第5屈折部R5の屈折力が異なっており、前記レーザー光LR3、前記レーザー光LR4、及び前記レーザー光LR5が、前記光軸67にほぼ平行でありながら異なる方向へ進むものであればよい。
【0048】
なお、直径h3、直径h4、直径h5及びは、前記第3屈折部R3の面73の面積、前記第4屈折部R4の面74の面積、及び前記第5屈折部R5の面75の面積が等しくなるように定められている。この場合、前記第3屈折部R3を透過する前記レーザー光LR3の光量、前記第4屈折部R4を透過する前記レーザー光LR4の光量、及び前記第5屈折部R5を透過する前記レーザー光LR5の光量が同じになる。これにより、前記fθレンズ13により集光される各集光点の光量の強度を揃えることができる。
【0049】
以下、図12を参照しつつ、上述のように構成された前記光発生装置110が使用されたことによる光の焦点深度の拡大効果ついて説明する。
図12は、前記光発生装置110により光を3つ集光点(位置Z3、位置Z4及び位置Z5)に集光させたときの各集光点それぞれにおける強度分布を示す強度分布グラフである。
図12に示されるように、前記レーザー光LR3は、前記fθレンズ13により前記位置Z3を集光点として集光される。このとき、前記位置Z3における光の強度は、前記位置Z3において光強度がピーク値Q5(>Q2)となる末広がり形状の光量分布83として表すことができる。また、前記レーザー光LR4は、前記fθレンズ13により前記位置Z4を集光点として集光される。このとき、前記位置Z4における光の強度は、前記位置Z4において光強度がピーク値Q5(>Q2)となる末広がり形状の光量分布84として表すことができる。さらに、前記レーザー光LR5は、前記fθレンズ13により前記位置Z5を集光点として集光される。このとき、前記位置Z4における光の強度は、前記位置Z5において光強度がピーク値Q5(>Q2)となる末広がり形状の光量分布85として表すことができる。
前記フレネルレンズ151及び前記fθレンズ13は、前記光量分布83と前記光量分布84とが重なる領域T1(図12の網掛け部分)を生じさせる前記位置Z3、Z4に前記レーザー光LR3及び前記レーザー光LR4を屈折させるように設計されている。また、前記フレネルレンズ151及び前記fθレンズ13は、前記光量分布84と前記光量分布85とが重なる領域T2(図12の網掛け部分)を生じさせる前記位置Z4、Z5に前記レーザー光LR4及び前記レーザー光LR5を屈折させるように設計されている。さらに、前記フレネルレンズ151及び前記fθレンズ13は、前記領域T1と前記領域T2とが重ならない前記位置Z3、Z4、及びZ5に前記レーザー光LR3、前記レーザー光LR4、及び前記レーザー光LR5を屈折させるように設計されている。本実施例では、上述したように、前記波長板141により分割された前記レーザー光LR3の振動方向と前記レーザー光LR4の振動方向とが90度ずれている。また、前記波長板141により分割された前記レーザー光LR4の振動方向と前記レーザー光LR5の振動方向とが90度ずれている。そのため、前記領域T1、T2において互いの光が干渉により弱まることはなく、重ね合わされることにより逆に強めあう。これにより、前記位置Z3と前記位置Z4との中心にある位置Z01における光強度が前記位置Z3及び前記位置Z4それぞれのピーク値Q5を超えるピーク値Q6まで強まる。また、前記位置Z4と前記位置Z5との中心にある位置Z02における光強度が前記位置Z4及び前記位置Z5それぞれのピーク値Q5を超えるピーク値Q6まで強まる。
この場合、強度Q2以上となる光軸方向の焦点深度LP3(図12参照)は、1つの集光点により焦点を形成する場合の強度Q2以上となる焦点深度LP2よりも広くなる(LP3>LP2、図7(A)参照)。
【0050】
このように、3つの集光点により焦点を形成することにより、2つの集光点により焦点を形成するよりも焦点深度を拡大することができる。そのため、被照射体の光照射面の位置が変動したとしても、前記光発生装置110から出射された前記レーザー光Lが、被照射体の光照射面に照射された場合に、焦点のピントボケとして許容することができる範囲を焦点深度方向に広くすることができる。但し、3集光点により焦点を形成する場合は2つの集光点により焦点を形成するよりも光量のピーク値が低くなるため、前記レーザー光源11が出射する前記レーザー光Lの光量を強くする必要がある。
なお、他の実施例として3つの集光点により焦点を形成することにより焦点深度を拡大させる前記波長板141、及び前記フレネルレンズ151について説明したが、これに限るものではない。前記波長板141の偏光部、前記フレネルレンズ151の屈折部をそれぞれ4以上の部分に分けて、各部分ごとに別の集光点を形成することにより焦点深度を拡大させてもよい。
【0051】
<その他の実施例>
上記実施形態及び他の実施例の説明では、前記波長板14、141及び前記フレネルレンズ15、151の正面の形状が前記光軸67を中心とする同心円状の場合について説明したが、この形状に限るものではない。
例えば、一方向にしか屈折しない1次元フレネルレンズであってもよい。つまり、シリンドリカルレンズの屈折面を複数の屈折部に分割する。各屈折部の曲面の基本輪郭は、前記式(1)により定義され、曲率のみが異なる。これにより、前記レーザー光Lを分割された局所領域ごとに、異なる屈折力に基づき一方向にのみ屈折させることができる。これに対応して、波長板は、縞状に形成された偏光部を複数有する。前記偏光部は、前記レーザー光Lを前記局所領域ごとに、隣接する前記局所領域との振動方向のなす角が90度に成るように偏光する。
また、フレネルレンズの正面の形状が前記光軸67を中心とする同心楕円状である場合が考えられる。複数の屈折部各々が楕円状の形状である。つまり、各屈折部の曲面の基本輪郭は、長軸方向、及び短軸方向の一方又は双方が前記式(1)により定義され、曲率のみが異なる。これにより、前記レーザー光Lを分割された局所領域ごとに、長軸方向と短軸方向とが異なる屈折力に基づき屈折させることができる。これに対応して、波長板は、楕円に形成された偏光部を複数有する。前記偏光部は、前記レーザー光Lを前記局所領域ごとに、隣接する前記局所領域との振動方向のなす角が90度に成るように偏光する。
【0052】
また、上記実施形態及び他の実施例の説明では、前記フレネルレンズ15、151により前記レーザー光Lの波面の局所領域ごとに異なる屈折力により屈折させたが、これに限るものではない。
例えば、組レンズである前記fθレンズ13に、フレネルレンズを組み合わせて一組の組レンズにする。組み合わされる前記フレネルレンズの各屈折部の曲面の基本輪郭は、前記式(1)により定義され、曲率のみが異なる。この場合、偏光され、且つ前記光軸67に平行にされた前記レーザー光Lが前記組レンズに入射されると、入射された前記レーザー光Lは、前記組レンズにより前記レーザー光Lの波面の局所領域ごとに複数の集光点に集光される。この複数の集光点により焦点深度を拡大させることができる。
【0053】
また、前記光発生装置10、110では、前記レーザー光源11が出射する前記レーザー光Lの波面の局所領域ごとに偏光させたが、これに限るものではない。
例えば、前記レーザー光Lの光路上にハーフミラーを設けて、前記レーザー光Lを分離させる。分離された一方のレーザー光LAの振動方向及び屈折力を変更させてから他方のレーザー光LBに統合させる構成が考えられる。これにより、統合後のレーザー光には、屈折力が異なる2成分の光が含まれるため(前記レーザー光LA、LB)、そのまま集光させると2つの集光点が形成される。この2つの集光点により焦点深度を拡大させることができる。
【0054】
<その他の適用例>
上記実施形態及び実施例の説明では、1つの前記光発生装置10、110を備える前記LSU33について説明したが、これに限るものではない。例えば、前記LSU33は、複数の前記光発生装置10、110を備えるタンデム式であってもよい。
【0055】
また、前記光発生装置10、110を備える前記LSU33、及び前記複合機100について説明したが、これに限るものではない。
例えば、前記光発生装置10、110は、CD(Compact Disc)プレーヤー、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤーなどの情報機器に適用することもできる。これにより、CD、DVDの深い記録層に記録された情報を正確読み取ることができ、また深い記録層に情報を正確に書き込むことができる。
また、レーザー加工機、レーザーメスなどに前記光発生装置10、110を適用することもできる。これにより、凸凹な表面を有する対象物であっても、適切な位置に穴を開けたり、適切な箇所を切断したりすることができる。
【符号の説明】
【0056】
100:複合機(画像形成装置の一例)
1:画像読取部
2:ADF
3:画像形成部
4:給紙部
5:制御部
6:操作表示部
10:光発生装置
11:レーザー光源
12:ポリゴンミラー
13:fθレンズ
14:波長板
15:フレネルレンズ
16:アパチャー
31:感光体ドラム
32:帯電装置
33:LSU(光走査装置)
34:現像装置
35:転写ローラー
36:除電装置
37:定着ローラー
38:加圧ローラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12