(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955272
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
E01B 35/12 20060101AFI20160707BHJP
E01B 35/00 20060101ALI20160707BHJP
B61K 9/08 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
E01B35/12
E01B35/00
B61K9/08
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-118782(P2013-118782)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-234694(P2014-234694A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】村本 勝己
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 壱記
【審査官】
須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/004728(WO,A1)
【文献】
米国特許第6358140(US,B1)
【文献】
登録実用新案第3057085(JP,U)
【文献】
特開平11−325820(JP,A)
【文献】
特公昭29−007403(JP,B1)
【文献】
特開2004−239701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/12
B61K 9/08
E01B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道軌道に沿って重錘落下式の剛性測定装置を搬送する搬送装置であって、
一方のレール上を走行する車輪と、
前記剛性測定装置を支持する支持アームと、
前記支持アームの基部が固着された、前記車輪の車軸と直交する支軸と、
前記支軸に基部が固着され、前記支持アームの前記支軸周りの揺動を操作する操作ロッドとを具備することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記支軸は、前記レール上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記操作ロッドの少なくとも表面は絶縁体で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記支持アームは、前記剛性測定装置の支持位置を上下方向で調整する調整機構を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記車輪は、軌間内側をガイドする第1フランジ部と、
軌間外側をガイドする、車軸方向に移動可能な第2フランジ部と、
前記第2フランジ部を軌間内側に向けて付勢する付勢手段とを具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第2フランジ部の周面は、軌間外側から内側に向けて直径が小さくなる傾斜面であることを特徴とする請求項5記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重錘落下式の剛性測定装置を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FWD(Falling Weight Deflectometer)と呼ばれる、盛土、切土、路床、路盤等路の土構造物の剛性を測定する重錘落下式の剛性測定装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。FWDは、重錘を自由落下させることにより土構造物に衝撃荷重を加え、これにより生じた反力や変位量等から、土構造物の剛性の測定を行う装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−176504号公報
【特許文献2】特開2004−278165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、重錘を使用しているため剛性測定装置の重量は、小型の物でも20〜30kg程度と重く、複数箇所で測定を行う場合には、人手による測定箇所間の搬送作業は重労働であった。
そこで、特許文献2に示すように、自動車に牽引される走行台車に搭載した牽引型の剛性測定装置や、自動車自体に搭載した車両搭載型の剛性測定装置が提案されているが、自動車の進入することができない鉄道軌道では、依然として人手による剛性測定装置の搬送作業を行う必要があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、剛性測定装置を鉄道軌道に沿って容易に搬送することができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送装置は、鉄道軌道に沿って重錘落下式の剛性測定装置を搬送する搬送装置であって、一方のレール上を走行する車輪と、前記剛性測定装置を支持する支持アームと、前記支持アームの基部が固着された、前記車輪の車軸と直交する支軸と、前記支軸に基部が固着され、前記支持アームの前記支軸周りの揺動を操作する操作ロッドとを具備することを特徴とする。
さらに、本発明の搬送装置において、前記支軸は、前記レール上に配置しても良い。
さらに、本発明の搬送装置において、前記操作ロッドの少なくとも表面は絶縁体で構成しても良い。
さらに、本発明の搬送装置において、前記支持アームは、前記剛性測定装置の支持位置を上下方向で調整する調整機構を具備していても良い。
さらに、本発明の搬送装置において、前記車輪は、軌間内側をガイドする第1フランジ部と、軌間外側をガイドする、車軸方向に移動可能な第2フランジ部と、前記第2フランジ部を軌間内側に向けて付勢する付勢手段とを具備していても良い。
さらに、本発明の搬送装置において、前記第2のフランジ部の周面は、軌間外側から内側に向けて直径が小さくなる傾斜面に形成されていても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作ロッドの操作によって剛性測定装置を簡単に持ち上げることができ、持ち上げた状態の剛性測定装置を車輪の転動によって簡単にレール上を走行させることができるため、剛性測定装置をレールに沿って軌道方向に容易に搬送することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る搬送装置の実施の形態の構成を示す三面図であり、(a)は正面図であり、(b)は平面図であり、(c)は側面図である。
【
図3】本発明に係る搬送装置の実施の形態の使用方法を説明するための説明図である。
【
図4】
図1に示す連結アームを伸縮可能にした例を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る搬送装置のバラスト軌道での使用例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施の形態の搬送装置1は、
図1を参照すると、本体部2と、車軸31が本体部2に軸支された車輪3と、車輪3の車軸31と直交する方向に本体部2に軸支された支軸4と、支軸4に一端が固着された支持アーム5及び操作ロッド6とを備えている。
【0010】
本体部2は、前後方向に並んだ2個の車輪3の車軸31をそれぞれ軸支する一対の車輪支持板21と、一対の車輪支持板21上部間に架け渡されて本体部2を補強すると共に、支軸4を軸支する一対の支軸支持板22とを備えている。一対の支軸支持板22には、車輪3の車軸31と直交する方向に対向する額部22aがそれぞれ形成されており、一対の支軸支持板22の額部22a間に支軸4が軸支されている。
【0011】
車輪支持板21に軸支された車輪3は、1本の鉄道用のレール70上を転動する。本実施の形態では、前後方向に2個の車輪3を設けたが、車輪3の数は、1個であっても、3個以上であってもよい。
【0012】
車輪3には、
図2(a)を参照すると、レール70の軌間内側をガイドする円板状の第1フランジ部32が形成されている。また、車軸31には、レール70の軌間外側をガイドする円板状の第2フランジ部33が軸方向(左右方向)に移動可能に環装されていると共に、車輪3との間に第2フランジ部33を挟む円板状の第3フランジ部34が形成されている。そして、第2フランジ部33と第3フランジ部34との間の車軸31には、バネ35が環装され、第2フランジ部33を車輪3の方向(右方向)に付勢している。また、第2フランジ部33の周面は、軌間外側から内側に向けて直径が小さくなる傾斜面33aとなっている。
【0013】
このように車輪3は、レール70の軌間内側をガイドする第1フランジ部32と、レール70の軌間外側をガイドする第2フランジ部33とを備えているため、1本のレール70上を安定して転動することが可能になる。また、第2フランジ部33が軸方向(左右方向)に移動可能であるため、
図2(b)に示すように、レール70の軌間外側に存在するレールボンド等の突起物71を回避することができる。すなわち、搬送装置1をレール70の軌道方向に沿って走行させた際に突起物71があると、突起物71が第2フランジ部33の傾斜面33aに当接し、第2フランジ部33は、バネ35の付勢力に抗して車輪3からの方向(右方向)に移動される。これにより、軌間外側をガイドする第2フランジ部33による突起物71の破損が防止される。なお、本実施の形態では、第2フランジ部33のみを軸方向(左右方向)に移動可能に構成したが、第1フランジ部32も第2フランジ部33と同様に、軸方向(左右方向)に移動可能に構成しても良い。この場合には、レール70に車輪3を載せる向きが限定されない。
【0014】
支軸4は、支持アーム5及び操作ロッド6の揺動の中心軸である。支軸4は、車輪3をレール70に載せた状態で、軌道方向において2個の車輪3の間に配置されると共に、レール70上に、レール70と平行(軌道方向)に配置される。
【0015】
支持アーム5は、一端が支軸4に固着された基部アーム部51と、重錘落下式の剛性測定装置を支持する支持部52と、基部アーム部51の開放端と支持部52とを連結する連結アーム部53とを備えている。支持部52は、剛性測定装置を締め付けて支持するリング状の部材である。また、基部アーム部51の開放端と連結アーム部53との接続と、連結アーム部53と支持部52との接続は、ボルト、ナット等の締結具によってそれぞれ行われている。そして、締結具を緩めることで、基部アーム部51及び支持部52と連結アーム部53との支軸4の回転方向の角度を調整することができる構成になっている。
【0016】
操作ロッド6は、表面が絶縁体で構成された棒状の部材であり、支軸4の回転方向において、支持アーム5の基部アーム部51と所定の角度を持って基部が支軸4に固着されている。これにより、操作ロッド6は、支軸4を中心とする支持アーム5の揺動を操作する操作手段として機能する。すなわち、操作ロッド6の開放端側を持ち、支軸4を中心にして操作ロッド6を揺動させると、支持アーム5も支軸4を中心にして同じ角度だけ揺動される。操作ロッド6は、操作ロッド6としては、グラスファイバーや硬質ラバー等の絶縁材料で全体を構成しても良く、導電材料である金属棒をフッ素系樹脂等の絶縁材料でコーティングしても良い。
【0017】
次に、搬送装置1の使用方法について
図3を参照して詳細に説明する。
まず、
図3(a)に示すように、重錘落下式の剛性測定装置80をレール70に沿った測定対象面に載荷させた状態で、支持アーム5によって剛性測定装置80を支持する。
【0018】
本実施の形態では、剛性測定装置80における円筒状の荷重計81をリング状の支持部52によって締め付けて支持するように構成されているため、支持部52によって剛性測定装置80を締め付けて支持する位置は、レール70のレール面から測定対象面までの高さhに応じて、矢印Aに示す上下方向に調整可能である。軌道の種類、例えばレール70の種類に高さが異なり、JIS50kgNは、JIS60kgよりもレール高さが20mm程度低い。このため、剛性測定装置80の支持位置を上下方向で調整する機構が必要となり、この場合には、リング状の支持部52が剛性測定装置80の支持位置を上下方向で調整する調整機構として機能する。
【0019】
また、上述のように、基部アーム部51及び支持部52と連結アーム部53との支軸4の回転方向の角度も調整可能に構成されている。従って、基部アーム部51及び支持部52と連結アーム部53との支軸4の回転方向の角度を矢印B、Cに示すように調整することでも、レール70のレール面から測定対象面までの高さhに応じて、剛性測定装置80支持位置を上下方向で調整することができる。この場合には、連結アーム部53が剛性測定装置80の支持位置を上下方向で調整する調整機構として機能する。
【0020】
なお、リング状の支持部52が剛性測定装置80の支持位置の調整と、基部アーム部51及び支持部52と連結アーム部53との角度の調整とを同時に行うことで、レール70から測定個所までの距離Lも所定の範囲内で設定可能である。
【0021】
さらに、伸縮機構が備え、長さを調整が可能に構成された連結アーム部53aを用いて、基部アーム部51と支持部52とを連結するように構成することで、
図4(a)、(b)に示すように、レール70から測定個所までの距離L1、L2を更に広い範囲で設定可能である。
【0022】
次に、剛性測定装置80による合成の測定後、次の測定個所に移動する際には、操作ロッド6の開放端側を持ち、支軸4を中心にして操作ロッド6を揺動させると、
図3(b)に示すように、支持アーム5も支軸4を中心にして同じ角度だけ揺動され、剛性測定装置80が持ち上がる。剛性測定装置80が持ち上がった状態では、力点となる操作ロッド6の開放端は、軌間内側に位置するように構成されている。従って、操作ロッド6の開放端を下方に押す力Fと、剛性測定装置80の重量Gとは、支軸4に作用することになる。そして、上述のように支軸4は、レール70上に配置されているため、レール70上で操作ロッド6の開放端を下方に押す力Fと、剛性測定装置80の重量Gとのバランスをとることができる。この状態で、搬送装置1を軌道方向に押すことで、剛性測定装置80を手で持ち上げることなく容易に搬送することができる。
【0023】
剛性測定装置80を搬送して、次の測定個所に到着すると、再び剛性測定装置80を測定対象面に降ろすことで、剛性測定装置80による剛性の測定が行われる。なお、レール70のレール面から測定対象面までの高さhが同一である場合には、測定個所毎に剛性測定装置80の支持位置を調整することなく、同じ条件で剛性の測定を行うことができる。
【0024】
次に、搬送装置1のバラスト軌道での使用例について
図5を参照して詳細に説明する。
搬送装置1のバラスト軌道における剛性測定装置80の搬送に適している。
すなわち、
図5に示すように、バラスト軌道は、バラスト道床72上にまくらぎ73が敷設されている。そして、剛性測定装置80を用いて、レール70の敷設方向(以下、「軌道方向」という。)の異なる箇所にそれぞれ敷設されたまくらぎ73下のバラスト道床72の剛性、すなわち軌道を支持する軌道支持剛性をそれぞれ測定する。従って、剛性測定装置80を次の測定個所に搬送する場合には、足場の悪いバラスト道床72の上を通ることになり、手で持って運んだり、ネコ車等の台車を用いて搬送したりすることが困難である。そこで、搬送装置1を用いることで、足場の悪いバラスト道床72でも、持ち上げた状態の剛性測定装置80を車輪3の転動によって簡単にレール70上を搬送することができる。
【0025】
以上説明したように本実施の形態は、鉄道軌道に沿って重錘落下式の剛性測定装置80を搬送する搬送装置1であって、一方のレール上を走行する車輪3と、剛性測定装置80を支持する支持アーム5と、支持アーム5の基部が固着された、車輪3の車軸31と直交する支軸4と、支軸4に基部が固着され、支持アーム5の前記支軸周りの揺動を操作する操作ロッド6とを備えている。
この構成により、操作ロッド6の操作によって剛性測定装置80を簡単に持ち上げることができ、持ち上げた状態の剛性測定装置80を車輪3の転動によって簡単にレール70上を走行させることができるため、剛性測定装置80をレール70に沿って軌道方向に容易に搬送することができる。
【0026】
さらに、本実施の形態によれば、支軸4は、レール70上に配置されている。
この構成により、操作ロッド6の開放端を下方に押す力Fと、剛性測定装置80の重量Gとは、支軸4に作用し、レール70上で操作ロッド6の開放端を下方に押す力Fと、剛性測定装置80の重量Gとのバランスをとることができる。
【0027】
さらに、本実施の形態によれば、操作ロッド6の少なくとも表面は絶縁体で構成されていることを特徴とする。
搬送装置1が倒れて操作ロッド6がレール70間に架け渡されてしまっても、レール70間が導通することがない。
【0028】
さらに、本実施の形態によれば、支持アーム5は、剛性測定装置80の支持位置を上下方向で調整する調整機構(支持部52、連結アーム部53、53a)を備えている。
この構成により、所定の測定位置に剛性測定装置80を載荷することが可能となり、結果として、剛性測定装置80による剛性測定のバラツキを抑え、精度の高い測定を可能とすることができる。また、レール70の種別や高さが変わった場合でも、適切な位置に剛性測定装置80を載荷することが可能となる。
【0029】
さらに、本実施の形態によれば、車輪3は、軌間内側をガイドする第1フランジ部32と、軌間外側をガイドする、車軸31方向に移動可能な第2フランジ部33と、第2フランジ部33を軌間内側に向けて付勢するバネ35とを備えている。
この構成により、車輪3は、1本のレール70上を安定して転動することが可能になる。また、レール70の軌間外側に存在するレールボンド等の突起物71を回避することができ、軌間外側をガイドする第2フランジ部33による突起物71の破損が防止される。
【0030】
さらに、本実施の形態によれば、第2のフランジ部33の周面は、軌間外側から内側に向けて直径が小さくなる傾斜面33aに形成されている。
この構成により、搬送装置1を軌道方向に移動させるだけで、レールボンド等の突起物71を容易に回避することが可能となり、レール70上で搬送装置1の軌道方向への移動が容易となる。
【0031】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 搬送装置
2 本体部
3 車輪
4 支軸
5 支持アーム
6 操作ロッド
21 車輪支持板
22 支軸支持板
22a 額部
31 車軸
32 第1フランジ部
33 第2フランジ部
34 第3フランジ部
33a 傾斜面
35 バネ
51 基部アーム部
52 支持部
53、53a 連結アーム部
70 レール
71 突起物
72 バラスト道床
73 まくらぎ
80 剛性測定装置
81 荷重計