特許第5955283号(P5955283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955283
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】エレベータの押釦保護装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/46 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   B66B1/46 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-162711(P2013-162711)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-30607(P2015-30607A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
【審査官】 筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−101973(JP,A)
【文献】 米国特許第04822963(US,A)
【文献】 特開2005−162443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 − 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗かご内もしくは乗場に設けられるフェイスプレートに取り付けられる釦枠と、この釦枠に移動可能に保持されるストローク部とを有する押釦を保護するものであって、
前記押釦を覆うように配置される釦保護板と、前記フェイスプレートの表面に固定され、前記釦保護板を前記押釦方向への移動可能に保持する釦カバー枠とを備えたエレベータの押釦保護装置において、
前記釦保護板を前記押釦の前記ストローク部の表面に固定し、
前記釦カバー枠に、前記釦保護板の前記押釦方向への移動を規制するストッパ部を設け、
前記釦保護板のストロークを、前記押釦のストロークよりも小さく設定し
前記釦保護板は、押圧操作される基板部と、この基板部の裏面側に前記基板部と一体に設けられ、前記押釦の前記ストローク部に接着される接着固定部とを有し、
前記釦カバー枠は、前記押釦の前記釦枠の挿脱を許容させる第1穴と、前記第1穴の形状法よりも大きな形状寸法に設定され、前記釦保護板の前記基板部が収容される第2穴とを有することを特徴とするエレベータの押釦保護装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータの押釦保護装置において、
前記釦保護板の前記接着固定部は、その外縁部に、前記釦保護板の前記押釦方向への移動時に前記釦カバー枠の前記ストッパ部との干渉を防ぐ逃げ部を有することを特徴とするエレベータの押釦保護装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエレベータの押釦保護装置において、
前記フェイスプレートは、前記押釦が取り付けられる押釦取り付け穴を有し、
前記押釦の前記釦枠は、前記フェイスプレートの前記押釦取り付け穴の縁部に係止される係止部を有し、
前記釦カバー枠の前記第1穴の形状寸法を、前記釦枠の前記係止部の形状寸法よりも大きく設定したことを特徴とするエレベータの押釦保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの乗かご内もしくは乗場に取り付けられる押釦を保護するエレベータの押釦保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不特定多数の利用者が利用するエレベータにあっては、呼び登録する呼釦やドアの開閉を操作する開閉釦等の押釦が、手や傘などで強打されて、破損や脱落を生じる悪戯が行われることがある。
【0003】
このような悪戯から押釦を保護する従来技術が、特許文献1に開示されている。この従来技術は、エレベータの乗場に設けられるフェイスプレートに取り付けられるハウジングすなわち釦枠と、ハウジングに移動可能に保持される可動接触子すなわちストローク部とを有する乗場押釦を保護するものである。この従来技術の押釦保護装置は、押釦を覆うように配置される釦カバーすなわち釦保護板と、フェイスプレートの表面に固定され、釦カバーを乗場押釦方向への移動可能に保持するカバー枠すなわち釦カバー枠とを備えている。また、釦カバーと乗場押釦との間に、緩衝ゴムを備えている。
【0004】
この従来技術では、乗場押釦の表面を覆う釦カバーが手や傘などで強打されたときには、釦カバーに対する衝撃力に応じて緩衝ゴムが撓み変形する。すなわち釦カバーに与えられた衝撃力が緩衝ゴムの撓み変形により吸収され、乗場押釦に衝撃力が伝えられないように保たれる。これにより、乗場押釦の破損や脱落が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−101973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術は、乗場押釦に衝撃力が与えられたときの乗場押釦の保護を実現できる。しかしながら、この従来技術では、衝撃力が与えられたときに緩衝ゴムが撓み変形して釦カバーがフェイスプレートの表面に衝突し、このためにフェイスプレートが破損する懸念があった。
【0007】
なお、前述した従来技術では、乗場押釦の交換に際し、フェイスプレートの押釦取り付け穴に比べてハウジングの外形が大きいために、フェイスプレートの表面側に乗場押釦を抜き取ることができない。このために、乗場押釦の交換作業が煩雑になり、押釦の交換作業の能率向上を見込めない問題もあった。
【0008】
本発明は、前述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、押釦とともに、押釦が取り付けられるフエイスプレートを悪戯による衝撃から保護することができるエレベータの押釦保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係るエレベータの押釦保護装置は、エレベータの乗かご内もしくは乗場に設けられるフェイスプレートに取り付けられる釦枠と、この釦枠に移動可能に保持されるストローク部とを有する押釦を保護するものであって、前記押釦を覆うように配置される釦保護板と、前記フェイスプレートの表面に固定され、前記釦保護板を前記押釦方向への移動可能に保持する釦カバー枠とを備えたエレベータの押釦保護装置において、前記釦保護板を前記押釦の前記ストローク部の表面に固定し、前記釦カバー枠に、前記釦保護板の前記押釦方向への移動を規制するストッパ部を設け、前記釦保護板のストロークを、前記押釦のストロークよりも小さく設定し、前記釦保護板は、押圧操作される基板部と、この基板部の裏面側に前記基板部と一体に設けられ、前記押釦の前記ストローク部に接着される接着固定部とを有し、前記釦カバー枠は、前記押釦の前記釦枠の挿脱を許容させる第1穴と、前記第1穴の形状法よりも大きな形状寸法に設定され、前記釦保護板の前記基板部が収容される第2穴とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るエレベータの押釦保護装置は、押釦とともに、押釦が取り付けられるフェイスプレートを悪戯による衝撃から保護することができ、従来に比べて信頼性の高いエレベータの押釦保護装置を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る押釦保護装置の一実施形態が設けられるエレベータの押釦の配設形態の一例を示す図で、(a)図は正面図、(b)図は(a)図のA−A断面図である。
図2】本実施形態に係る押釦保護装置をフェイスプレートに取り付けた状態を示す図で、(a)図は正面図、(b)図は(a)図のB−B断面図である。
図3】本実施形態に備えられる釦カバー枠を示す図で、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。
図4】本実施形態に備えられる釦保護板を示す図で、(a)図は正面図、(b)図は側面図である。
図5図3に示す釦カバー枠に図4に示す釦保護板を取り付けた状態を示す図で、(a)図は正面図、(b)図は(a)図のC−C断面図である。
図6】本実施形態に係る押釦保護装置が取り付けられる前の押釦部分を示す縦断面図である。
図7図6に示す押釦部分に、本実施形態に備えられる釦カバー枠を取り付けるときの状態を示す縦断面図である。
図8図6に示す押釦部分に、本実施形態に備えられる釦カバー枠を取り付けた後に、本実施形態に備えられる釦保護板を取り付けるときの状態を示す縦断面図である。
図9図6に示す押釦部分に、本実施形態に係る押釦保護装置を取り付けた状態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のE部拡大図である。
図10】本実施形態に係る押釦保護装置の釦保護板を押圧する直前の状態を示す縦断面図である。
図11】本実施形態に係る押釦保護装置の釦保護板をストロークエンドまで押圧したときの状態を示す図で、(a)図は縦断面図、(b)図は(a)図のF部拡大図である。
図12】本実施形態において行われる押釦の交換作業を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るエレベータの押釦保護装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明に係る押釦保護装置の一実施形態が設けられるエレベータの押釦1は、フェイスプレート2の押釦取り付け穴2aに挿入され、フェイスプレート2の裏側に固定される板ばね2bに挟持されている。この押釦1は、板ばね2bに狭圧される釦枠1aと、この釦枠1aに移動可能に保持され、図示しない可動接触子が形成されたストローク部1cとを有している。また、この押釦1内には、ストローク部1cをフェイスプレート2の表面側に付勢する図示しないばねを備えている。ストローク部1cは、押圧力を与えられることにより、図示しないばねの弾性力に抗して可動限界1bまで移動可能な構造となっている。この可動限界1bに至るまでの間に、ストローク部1cの図示しない可動接触子が図示しない固定接触子に接触してONとなり、図示しないばねの弾性力によって可動限界1bから離れる方向に移動することにより、ストローク部1cの図示しない可動接触子が図示しない固定接触子から離れてOFFとなる。
【0014】
図2〜5に示すように、本実施形態に係る押釦保護装置3は、押釦1を覆うように配置される透明部材から成る釦保護板5と、フェイスプレート2の表面に固定され、釦保護板5を押釦1方向への移動可能に保持する釦カバー枠4とを備えている。
【0015】
図2に示すように、釦保護板5は、押釦1のストローク部1cの表面に固定してある。図3に示すように、釦カバー枠4に、釦保護板5の押釦1方向への移動を規制するストッパ部4cを設けてある。
【0016】
釦カバー枠4のストッパ部4cによって移動を規制される釦保護板5のストロークを、前述の可動限界1bまでストローク部1cが移動可能な押釦1のストロークよりも小さく設定してある。
【0017】
図4に示すように、釦保護板5は、押圧操作される基板部5aと、この基板部5aの裏面側に基板部5aと一体に設けられ、押釦1のストローク部1cの表面に接着される接着固定部5bとを有している。また、この接着固定部5bは、その外縁部に、釦保護板5の押釦1方向への移動時に釦枠1aの係止部1dとの干渉を防ぐ傾斜状の逃げ部5eを有している。釦保護板5bの高さ5dは、釦保護板5bの適切なストロークを考慮するとともに、釦保護板5bと釦枠1aの係止部1dとの干渉防止を考慮した寸法に設定してある。
【0018】
図3に示すように、釦カバー枠4は、前述したストッパ部4cの他、押釦1の釦枠1aの挿脱を許容させる第1穴4aと、この第1穴4aの形状寸法よりも大きな形状寸法に設定され、釦保護板5の基板部5aが収容される第2穴4bとを有している。ストッパ部4cの高さ4eは、釦保護板5のストロークを押釦1のストローク部1cのストロークよりも小さく設定することを考慮した寸法に、また押釦1のオン操作の実施を考慮した寸法に設定してある。
【0019】
図6に示すように、押釦1の釦枠1aは、フェイスプレート2の押釦取り付け穴2aの縁部に係止される係止部1dを有している。また、釦カバー枠4の第1穴4aの形状寸法を、釦枠1aの係止部1dの形状寸法よりも大きく設定してある。なお、釦保護板5の基板部5aの外形5cは、釦カバー枠4の第2穴4bの形状寸法よりもわずかに小さな形状に形成してある。
【0020】
前述した構成の本実施形態に係る押釦保護装置3を、図6に示すようにフェイスプレート2に取り付けられている押釦1に取り付けるに際しては、まず図7に示すように、釦カバー枠4の第1穴4a内に押釦1の釦枠1aの係止部1dを位置させるようにして、接着固定部4dをフェイスプレート2の表面に固定する。
【0021】
次に図8に示すように、釦カバー枠4の第2穴4b内に釦保護板5の基板部5aを位置させるようにして、釦保護板5の接着固定部5bを押釦1のストローク部1cの表面に固定する。
【0022】
このようにして図9に示すように、本実施形態に係る押釦保護装置3が押釦1に取り付けられる。この状態にあっては、同図9の(b)に示すように、釦保護板5の端部と釦カバー枠4のストッパ部4cとの間に、釦保護板5の押釦1方向への移動を許容させる空間部6が形成される。
【0023】
したがって、図10に示すように、操作者7が本実施形態の釦保護板5を介して押釦1のストローク部1cを押圧すると、図11の(a)図の矢印8で示すように、押釦1の内部の図示しないばねの弾性力に抗して釦保護板5とストローク部1cとが一体的に移動し、釦保護板5が釦カバー枠4のストッパ部4cに係止され、釦保護板5とストローク部1cの移動が停止する。なお、例えば釦保護板5がストッパ部4cに係止される直前に押釦1のオン操作が実施される。このように釦保護板5とストローク部1cの移動が停止した状態にあっては、押釦1のストローク1cは可動限界1bに至らない状態に保たれる。
【0024】
また、釦保護板5に加えていた操作者7の押圧力が除かれると、押釦1の内部の図示しないばねの弾性力によって、押釦1のストローク部1cと釦保護板5とが一体的に可動限界1bから離れる方向に移動し、押釦1はオフとなって本実施形態に係る押釦保護装置3は、釦保護板5の基板部5aと釦カバー枠4のストッパ4cとの間に、所定の大きさの空間部6を形成する初期の形態に復帰する。
【0025】
なお、押釦1の劣化等により新たな押釦に交換する場合には、釦保護板5に引き抜き力を加えることにより、図1の(b)図に示す板ばね2bによる押釦1の釦枠1aに対する拘束力が解かれ、図12の矢印9に示すように、一体的に設けられた釦保護板5と押釦1とを引き抜くことができる。
【0026】
以上のように構成した本実施形態に係る押釦保護装置3にあっては、仮に悪戯によって押釦1を覆う釦保護板5に衝撃力が与えられたときには、釦保護板5と一体的に押釦1が移動するが、このとき釦保護板5のストロークが押釦1のストロークよりも小さく設定してあることから、押釦1が可動限界1bを超えるまで過度に動くことがなく、これにより悪戯による衝撃力から押釦1を、破損あるいは脱落しないように保護することができる。
【0027】
また、前述のように押釦1を覆う釦保護板5に衝撃力が与えられたときには、釦保護板5は釦カバー枠4のストッパ部4cによって押釦1方向への移動が規制される。すなわち、釦保護板5に衝撃力が与えられた際に、釦保護板5がフェイスプレート2に衝突することがない。釦保護板5に与えられた衝撃力は、釦カバー枠4を介してフェイスプレート2に伝えられる。ここで、フェイスプレート2に対する釦カバー枠4の接触面積を比較的大きく確保できるので、釦カバー枠4の接着固定部4dに接触するフェイスプレート2の各部分に伝えられる力を小さく抑えることができる。これによりフェイスプレート2も破損を生じないように保護することができる。
【0028】
すなわち本実施形態は、押釦1とともに、押釦1が取り付けられるフエイスプレート2を悪戯による衝撃から保護することができ、信頼性の高いエレベータの押釦保護装置を実現させることができる。
【0029】
また本実施形態は、押釦1の交換に際しては、一体化された釦保護板5と押釦1とを、図12の矢印9で示すように、フェイスプレート2の表面側に引き抜くことができるので、押釦交換作業を容易に、能率良く行うことができる。
【0030】
また本実施形態は、押釦1のストローク部1cに釦保護板5を固定させ、釦保護板5の初期形態への復帰を押釦1内に設けられた図示しないばねの弾性力によって行わせるように構成したことから、釦保護板5を初期形態へ復帰させる特別な機構を設けなくて済む。したがって本実施形態は、構成が簡単で、部品数を少なく抑えることができ、製作費を安くすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 押釦
1a 釦枠
1c ストローク部
1d 係止部
2 フェイスプレート
2a 押釦取り付け穴
3 押釦保護装置
4 釦カバー枠
4a 第1穴
4b 第2穴
4c ストッパ部
4d 接着固定部
5 釦保護板
5a 基板部
5b 接着固定部
5e 逃げ部
6 空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図10
図11
図12
図9