(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに関連性を有する一対の比較対象に対し、一方の比較対象から任意に抽出した基準抽出部位と他方の比較対象から抽出した複数の比較抽出部位との相関を示す複数の評価値を導出する評価値導出部と、
複数の基準抽出部位それぞれに対して相関が相対的に高い複数の比較抽出部位を抽出し、基準抽出部位に対する複数の比較抽出部位の相関順と該相関順同士の位置関係とを導出して該基準抽出部位に対応づける位置関係情報導出部と、
1の基準抽出部位に対する複数の比較抽出部位の相関順と該相関順同士の位置関係と、他の基準抽出部位に対する複数の比較抽出部位の相関順と該相関順同士の位置関係とを比較して、該複数の比較抽出部位同士の位置関係と基準抽出部位同士の前後の位置関係が同じになるように、複数の比較抽出部位の中から基準抽出部位に対応する比較抽出部位を特定する位置関係置換部と、
を備えることを特徴とするフィルタリング装置。
前記フィルタリング装置は、互いに関連性を有する一対の画像を生成するステレオ撮像装置に適用され、前記一対の比較対象はステレオ撮像装置の一方のカメラで撮像した基準画像と他方のカメラで撮像した比較画像からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のフィルタリング装置。
前記フィルタリング装置は、単眼カメラを有する単眼撮像装置に適用され、前記一対の比較対象は互いに異なる時刻に撮像された一対の画像からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のフィルタリング装置。
前記フィルタリング装置は、単眼カメラを有する単眼撮像装置に適用され、前記一対の比較対象は撮像画像と予め準備されたテンプレート画像からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項にフィルタリング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の技術では、有効と判定されなかった基準ブロックに関する視差(差分値)が除外されることとなるので、この有効と判定されなかった基準ブロックに対応する比較ブロックが実際には存在するにも拘わらず、存在しないものとして処理されてしまう。また、複数の基準ブロックに対応する複数の比較ブロックが互いに誤ってマッチングしてしまった場合、すなわち、1の基準ブロックに、他の基準ブロックに対応する比較ブロックがマッチングし、他の基準ブロックに、1の基準ブロックに対応する比較ブロックがマッチングした場合(かかる事象を単にクロスペアリングという)、特許文献2の技術では、その誤ったマッチングを正すことができない。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、基準ブロック同士や比較ブロック同士の相対的な位置関係を評価することで、対象物の差分値を適切に導出することが可能なフィルタリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のフィルタリング装置は、互いに関連性を有する一対の比較対象に対し、一方の比較対象から任意に抽出した基準抽出部位と他方の比較対象から抽出した複数の比較抽出部位との相関を示す複数の評価値を導出する評価値導出部と、
複数の基準抽出部位それぞれに対して相関が相対的に高い複数の比較抽出部位を抽出し、基準抽出部位に対する複数の比較抽出部位の相関順と相関順同士の位置関係とを導出して基準抽出部位に対応づける位置関係情報導出部と、
1の基準抽出部位に対する複数の比較抽出部位の相関順と相関順同士の位置関係と、他の基準抽出部位に対する複数の比較抽出部位の相関順と相関順同士の位置関係とを比較して、複数の比較抽出部位同士の位置関係と基準抽出部位同士の前後の位置関係が同じになるように、複数の比較抽出部位の中から基準抽出部位に対応する比較抽出部位を特定する位置関係置換部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
位置関係置換部は、1の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位と、他の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位との位置
の差が所定の閾値未満であり、かつ、1の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位と、他の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位との位置
の差が所定の閾値未満である場合、いずれか一方の基準抽出部位に対応する比較抽出部位の相関関係に誤りが生じていると評価してもよい。
【0012】
位置関係情報導出部は、抽出した比較抽出部位の基準抽出部位に対する相対位置を導出し、位置関係置換部は、1の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位の相対位置と、他の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位の相対位置と
の差が所定の閾値未満である場合、1の基準抽出部位に対応する比較抽出部位の相関関係に誤りが生じていると評価し、1の基準抽出部位に対応する比較抽出部位の相関順を互いに置換してもよい。
【0013】
位置関係情報導出部は、抽出した比較抽出部位の基準抽出部位に対する相対位置を導出し、位置関係置換部は、1の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位の相対位置と、他の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位の相対位置と
の差が所定の閾値未満である場合、他の基準抽出部位に対応する比較抽出部位の相関関係に誤りが生じていると評価し、他の基準抽出部位に対応する比較抽出部位の相関順を互いに置換してもよい。
【0014】
位置関係情報導出部は、抽出した比較抽出部位の基準抽出部位に対する相対位置を導出し、位置関係置換部は、1の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位の相対位置と、他の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位の相対位置と
の差が所定の閾値以上であり、かつ、1の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位の相対位置と、他の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位の相対位置と
の差が所定の閾値以上である場合、基準抽出部位に対して相対位置が最も小さくなる比較抽出部位を有効とし、それ以外の比較抽出部位の相対位置を無効としてもよい。
【0015】
位置関係置換部は、1の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位と、他の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位との位置
の差が所定の閾値未満であり、かつ、1の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位と、他の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位との位置
の差が所定の閾値未満である場合、両方の基準抽出部位に対応する比較抽出部位の相関関係に誤りが生じているおそれがあると評価してもよい。
【0016】
位置関係情報導出部は、抽出した比較抽出部位の基準抽出部位に対する相対位置を導出し、位置関係置換部は、1の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位の相対位置と、他の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位の相対位置と
の差が所定の閾値未満である場合、両方の基準抽出部位に対応するそれぞれの比較抽出部位の相関関係を互いに置換してもよい。
【0017】
位置関係情報導出部は、抽出した比較抽出部位の基準抽出部位に対する相対位置を導出し、位置関係置換部は、1の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位の相対位置と、他の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位の相対位置と
の差が所定の閾値未満である場合、両方の基準抽出部位に対応するそれぞれの比較抽出部位の相関関係は正しいものとして評価してもよい。
【0018】
位置関係情報導出部は、抽出した比較抽出部位の基準抽出部位に対する相対位置を導出し、位置関係置換部は、1の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位の相対位置と、他の基準抽出部位に対して2番目に相関が高い比較抽出部位の相対位置と
の差が所定の閾値以上であり、かつ、1の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位の相対位置と、他の基準抽出部位に対して最も相関が高い比較抽出部位の相対位置と
の差が所定の閾値以上である場合、2つの基準抽出部位のうち、相対位置が最小となる基準抽出部位の相対位置を有効とし、相対位置が最小とならない基準抽出部位の相対位置は無効としてもよい。
【0019】
フィルタリング装置は、互いに関連性を有する一対の画像を生成するステレオ撮像装置に適用され、一対の比較対象はステレオ撮像装置の一方のカメラで撮像した基準画像と他方のカメラで撮像した比較画像からなるとしてもよい。
【0020】
フィルタリング装置は、単眼カメラを有する単眼撮像装置に適用され、一対の比較対象は互いに異なる時刻に撮像された一対の画像からなるとしてもよい。
【0021】
フィルタリング装置は、単眼カメラを有する単眼撮像装置に適用され、一対の比較対象は撮像画像と予め準備されたテンプレート画像からなるとしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基準ブロック同士や比較ブロック同士の相対的な位置関係を評価することで、対象物の差分値を適切に導出することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
近年では、車両に搭載した車載カメラによって自車両の前方の道路環境を撮像し、画像(比較対象)内における色情報や位置情報に基づいて先行車両等の対象物を特定し、特定された対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ(ACC:Adaptive Cruise Control)、所謂衝突防止機能を搭載した車両が普及しつつある。
【0026】
かかる衝突防止機能では、自車両前方に位置する対象物の、自車両との相対距離を得るために、例えば、視点の異なる2つの撮像装置(ステレオ撮像装置)を用い、2つの撮像装置それぞれから取得した一対の比較対象である基準画像と比較画像とを比較し、所謂パターンマッチングを用いて相関の高いブロック(抽出部位)を抽出する。しかし、複数の類似した対象物や、対象物中の類似した対象部位が水平方向に位置する場合、類似する他の対象物や対象部位とマッチングされてしまい、誤った視差(差分値)を導出する可能性がある。そこで、本実施形態では、基準ブロック(基準抽出部位)同士や比較ブロック(比較抽出部位)同士の相対的な位置関係、特に、基準ブロックと比較ブロックとの評価値のうち相関が高い順番の位置関係を評価することで、対象物の視差を適切に導出することを目的としている。ここで、ブロックは、画像中の1または複数の画
素で構成される部位を示す。以下、このような目的を達成するための環境認識システムを説明し、その具体的な構成要素である車外環境認識装置に設けられたフィルタリング装置を詳述する。
【0027】
(環境認識システム100)
図1は、環境認識システム100の接続関係を示したブロック図である。環境認識システム100は、自車両1内に設けられた、撮像装置110と、車外環境認識装置120と、車両制御装置(ECU:Engine Control Unit)130とを含んで構成される。
【0028】
撮像装置110は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含んで構成され、自車両1の前方に相当する環境を撮像し、3つの色相(R(赤)、G(緑)、B(青))からなるカラー画像やモノクロ画像を生成することができる。ここでは、撮像装置110で撮像されたカラー画像を輝度画像として採用し、後述する距離画像と区別する。
【0029】
また、撮像装置110は、自車両1の進行方向側において2つの撮像装置110それぞれの光軸が略平行になるように、略水平方向に離隔して配置される。撮像装置110は、自車両1の前方の検出領域に存在する対象物を撮像した画像データを、例えば1/60秒のフレーム毎(60fps)に連続して生成する。ここで、認識する対象物は、車両、歩行者、信号機、道路(進行路)、ガードレール、建物といった独立して存在する立体物のみならず、テールランプやウィンカー、信号機の各点灯部分等、立体物の一部として特定できる物も含む。以下の実施形態における各機能部は、このような画像データの更新を契機としてフレーム毎に各処理を遂行する。
【0030】
車外環境認識装置120は、2つの撮像装置110それぞれから画像データを取得し、所謂パターンマッチングを用いて視差を導き出し、導出された視差情報(後述する相対距離に相当)を画像データに対応付けて距離画像を生成する。パターンマッチングについては後ほど詳述する。また、車外環境認識装置120は、輝度画像に基づく輝度、および、距離画像に基づく自車両1との相対距離を含む実空間における3次元の位置情報を用い、輝度が等しく3次元の位置情報が近いブロック同士を対象物としてグループ化し、自車両1前方の検出領域における対象物がいずれの特定物に対応するかを特定する。
【0031】
車外環境認識装置120は、特定物を特定すると、その特定物(例えば、先行車両)を追跡しつつ、特定物の相対速度等を導出し、特定物と自車両1とが衝突する可能性が高いか否かの判定を行う。ここで、衝突の可能性が高いと判定した場合、車外環境認識装置120は、その旨、運転者の前方に設置されたディスプレイ122を通じて運転者に警告表示(報知)を行うとともに、車両制御装置130に対して、その旨を示す情報を出力する。
【0032】
車両制御装置130は、ステアリングホイール132、アクセルペダル134、ブレーキペダル136を通じて運転者の操作入力を受け付け、操舵機構142、駆動機構144、制動機構146に伝達することで自車両1を制御する。また、車両制御装置130は、車外環境認識装置120の指示に従い、駆動機構144、制動機構146を制御する。
【0033】
以下、車外環境認識装置120の構成について詳述する。ここでは、本実施形態に特徴的な、フィルタリング装置における対象物の視差を求める処理について詳細に説明し、本実施形態の特徴と無関係の構成については説明を省略する。
【0034】
(車外環境認識装置120)
図2は、車外環境認識装置120の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
図2に示すように、車外環境認識装置120は、I/F部150と、データ保持部152と、中央制御部154とを含んで構成される。
【0035】
I/F部150は、撮像装置110や車両制御装置130との双方向の情報交換を行うためのインターフェースである。データ保持部152は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、以下に示す各機能部の処理に必要な様々な情報を保持し、また、撮像装置110から受信した画像データを一時的に保持する。
【0036】
中央制御部154は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、システムバス156を通じて、I/F部150、データ保持部152等を制御する。また、本実施形態において、中央制御部154は、評価値導出部160、位置関係情報導出部162、位置関係置換部164、差分値決定部166としても機能する。また、評価値導出部160、位置関係情報導出部162、位置関係置換部164、および、差分値決定部166はフィルタリング装置としても機能する。以下、基準画像と比較画像とを例示しつつ、各機能部を説明する。
【0037】
図3は、基準画像200と比較画像210を例示した説明図である。ここでは、視点の異なる2つの撮像装置110から取得した一対の画像のうち、
図3(a)に示す、右に位置する撮像装置110からの画像を基準画像200とし、
図3(b)に示す、左に位置する撮像装置110からの画像を比較画像210とする。
【0038】
基準画像200と比較画像210とに基づいて評価値を導出する場合、例えば、
図3(a)および(b)のトラックの中央において楕円で囲った領域では、垂直方向に延長される類似する2つのエッジ230が生じており、その2つのエッジ230においては、基準ブロック同士および比較ブロック同士が類似する。本実施形態では、このように、基準ブロック同士が類似する場合に、その基準ブロックに対し、本来対応させるべきではない比較ブロックを誤って対応させてしまうことを回避する。これは、以下のようにして実現する。
【0039】
複数の基準ブロック同士が類似する場合、それに対応する複数の比較ブロック同士も類似することとなる。すなわち、1の基準ブロックに対して複数の比較ブロックの相関が高くなり易い。そこで、本実施形態では、1の基準ブロックに対して相関が最も高い比較ブロックのみならず、類似していると考えられる相関が相対的に高い複数の比較ブロックも抽出する。そして、本来対応させるべき比較ブロックをその複数の比較ブロックの中から特定する。
【0040】
また、上記2つの撮像装置110は視点こそ異なるものの、同一の被写体を撮像しているので、相対距離が等しい対象物における基準ブロックと比較ブロックとの位置関係は、その対象物中のいずれの基準ブロックにおいてもほぼ等しくなる。そうすると、複数の基準ブロックが類似していたとしても、複数の基準ブロックそれぞれに対応する複数の比較ブロック同士の位置関係は、基準ブロック同士の位置関係とほぼ等しくなる。そこで、本実施形態では、基準ブロック同士の位置関係と、比較ブロック同士の位置関係とが等しくなるように、少なくとも1の基準ブロックに対応する比較ブロックを並べ替える。
【0041】
そこで、評価値導出部160は、2つの撮像装置110それぞれから取得した2つの画像データに基づく2つの画像に対し、一方の画像(基準画像200)から任意に抽出した基準ブロックと他方の画像(比較画像210)から抽出した複数の比較ブロックとの相関を示す複数の評価値を導出する。次に、位置関係情報導出部162は、評価値導出部160が導出した複数の評価値のうち相関が高い方から予め定められた所定数の評価値を特定し、特定された評価値の相関が高い順番である相関順と相関順同士の位置関係とを示す位置関係情報(基準ブロックに対応する比較ブロックの相関関係)を導出し、基準ブロックに対応付ける。ここで、相関順と、相関順同士の仮の位置関係が定められる。
【0042】
位置関係置換部164は、導出された位置関係情報と所定の関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されていなければ、導出された位置関係情報を基準ブロックに対応付けてデータ保持部152に保持させる。かかる所定の関係については後程詳述する。ここで、基準ブロックと比較ブロックとが適切に対応していない場合、新たに導出された位置関係情報と、既にデータ保持部152に保持されている位置関係情報とが所定の関係になる場合がある。そこで、位置関係置換部164は、導出された位置関係情報と所定の関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されていれば、導出された位置関係情報に対応する基準ブロック、保持された位置関係情報に対応する基準ブロック、および、位置関係情報に基づいて、複数の比較ブロック同士の位置関係と基準ブロック同士の前後の位置関係が同じになるように、少なくともいずれか1の基準ブロックの位置関係情報を変更して、複数の比較ブロックの中から基準ブロックに対応する比較ブロック(相関が最も高い相関順の位置)を特定する。こうして、位置関係情報(相関順とその位置関係)が本来あるべき状態に更新される。そして、差分値決定部166は、位置関係置換部164によって特定された、基準ブロックに関する位置関係情報における相関が最も高い相関順の位置を、基準ブロックの視差として決定する。以下、パターンマッチング処理の詳細な動作を説明する。
【0043】
(パターンマッチング処理)
図4は、パターンマッチング処理の動作を示したフローチャートである。ここでは、撮像装置110において画像データが生成される毎に、当該パターンマッチング処理が割込処理として実行される。また、説明の便宜上、ここでは、評価値を高い方から2つ特定する例を挙げる。したがって、相関順は1stと2ndの2つとなる。
【0044】
(ステップS300)
評価値導出部160は、データ保持部152に設定された各保持領域(後述する視差候補保持領域、基準保持領域、2nd保持領域、2nd視差保持領域)をリセットする。そして、評価値導出部160は、2つの撮像装置110それぞれから画像データを取得し、取得した2つの画像データに基づく、互いに関連性を有する一対の画像のうち、基準となる基準画像200から1の基準ブロックを抽出する。
【0045】
(ステップS302)
評価値導出部160は、所謂パターンマッチングによって、抽出した基準ブロックと、比較先である比較画像210から抽出した複数の比較ブロックとの相関を示す複数の評価値を導出する。
【0046】
このパターンマッチングとしては、一対の画像間において、任意のブロック単位で輝度(Y色差信号)を比較することが考えられる。例えば、輝度の差分をとるSAD(Sum of Absolute Difference)、差分を2乗して用いるSSD(Sum of Squared intensity Difference)や、各画素の輝度から平均値を引いた分散値の類似度をとるNCC(Normalized Cross Correlation)等の手法がある。このうち、ここでは、SADを例に挙げて説明する。また、本実施形態では、基準画像200および比較画像210のブロック周囲の画素の輝度の平均値を求め、ブロック内の輝度からそれぞれの平均値を減算した結果に基づいて評価値を導出する平均値差分マッチングを行っている。以下に、平均値差分マッチングの動作を説明する。
【0047】
図5は、平均値差分マッチングの動作を説明する説明図である。まず、評価値導出部160は、
図5(a)に示すように、基準画像200から、例えば水平4画素×垂直4画素の画素202の配列で表されるブロック(以下、基準ブロックという)204を抽出する。そして、以降の処理において、順次、基準ブロック204を抽出し、抽出した基準ブロック204毎に視差を導出する。ここでは、基準ブロック204を水平4画素×垂直4画素としているが、基準ブロック204内の画素数は任意に設定することができる。
【0048】
かかる基準ブロック204においては、隣接する基準ブロック204同士の画素を重ねない。また、本実施形態では、基準ブロック204同士を隣接させているので、例えば、検出領域(例えば水平600画素×垂直180画素)に映し出されている全ての画素202に対して、水平150×垂直45=6750のブロックが基準ブロック204として順次抽出されることとなる。
【0049】
ただし、上述したように、本実施形態では平均値差分マッチングを採用しているので、
図5(b)に示すように、評価値導出部160は、下記数式1に基づいて、基準ブロック204を中心とした基準ブロック204の周囲の水平8画素×垂直8画素で表される領域206内の画素202の輝度Rb(i,j)の平均値Abを求める。
Ab=ΣRb(i,j)/64…(数式1)
ただし、iは1〜8で表される領域206内の水平画素位置、jは1〜8で表される領域206内の垂直画素位置である。また、領域206が基準画像200に収まらない場合(端部により領域206が欠ける場合)、収まらない部分を省略して平均値Abを求める。
【0050】
そして、評価値導出部160は、下記数式2の如く、基準ブロック204内の画素202の輝度Eb(i,j)から上記平均値Abを減算して、平均値差分輝度EEb(i,j)を導出する。
EEb(i,j)=Eb(i,j)−Ab…(数式2)
ただし、iは1〜4で表される基準ブロック204内の水平画素位置、jは1〜4で表される基準ブロック204内の垂直画素位置である。
【0051】
続いて、評価値導出部160は、
図5(c)に示すように、比較画像210から、例えば水平4画素×垂直4画素の画素212の配列で表されるブロック(以下、比較ブロックという)214を抽出する。ここでは、1の基準ブロック204に対して、順次、複数の比較ブロック214を抽出し、それぞれ基準ブロック204との相関を示す評価値を導出する。
【0052】
かかる比較ブロック214は、例えば、水平方向に1画素ずつシフトされて抽出されるので、隣接する比較ブロック214同士の画素が重なることとなる。本実施形態では、1の基準ブロック204に対し、基準ブロック204に相当する位置216から水平方向の左右に合計128の比較ブロック214を抽出することとなる。したがって、抽出範囲(探索範囲)は水平(128+3=)131画素×垂直4画素となる。基準ブロック204に相当する位置216と抽出範囲との位置関係は、基準画像200と比較画像210との視差の出現態様に応じて設定される。
【0053】
ただし、上述したように、本実施形態では平均値差分マッチングを採用しているので、基準ブロック204同様、評価値導出部160は、下記数式3に基づいて比較ブロック214を中心とした比較ブロック214の周囲の水平8画素×垂直8画素で表される領域内の画素の輝度Rc(i,j)の平均値Acを求める。
Ac=ΣRc(i,j)/64…(数式3)
ただし、iは1〜8で表される領域内の水平画素位置、jは1〜8で表される領域内の垂直画素位置である。
【0054】
そして、評価値導出部160は、下記数式4の如く、比較ブロック214内の画素の輝度Ec(i,j)から上記平均値Acを減算して、平均値差分輝度EEc(i,j)を導出する。
EEc(i,j)=Ec(i,j)−Ac…(数式4)
ただし、iは1〜4で表される比較ブロック214内の水平画素位置、jは1〜4で表される比較ブロック214内の垂直画素位置である。
【0055】
次に、評価値導出部160は、下記数式5に示すように、基準ブロック204の各画素202の平均値差分輝度EEb(i,j)から、比較ブロック214内の同一の位置に相当する各画素212の平均値差分輝度EEc(i,j)を減算し、それを積算して評価値Tを導出する。
T=Σ(EEb(i,j)−EEc(i,j))…(数式5)
【0056】
こうして導出された複数の評価値Tは、小さい程、すなわち、差分がないほど、相関が高くなる。したがって、1の基準ブロック204に対する比較ブロック214との複数(ここでは128)の評価値のうち、最小の評価値(最小値)の位置が視差の一端を示す位置の候補となる。
【0057】
ただし、本実施形態では、最小の評価値のみならず、次に小さい評価値も視差の一端を示す位置の候補とする。すなわち、最小の評価値と次に小さい評価値の2つが処理対象となる。
【0058】
上記平均値差分マッチングは、画像の高周波成分のみをマッチングの対象とするものであり、ハイパスフィルタと等価な作用を有しているため低周波ノイズを除去することができる。また、基準画像200と比較画像210との間の輝度の僅かなバランスの狂いの影響、カメラやアナログ回路部品の経年変化によるゲイン変化の影響に対しても、視差の特定精度が高く、視差の導出精度を高めることが可能となる。
【0059】
(ステップS304)
位置関係情報導出部162は、複数の評価値のうち小さい方から(相関が高い方から)予め定められた所定数(ここでは2)の評価値を特定し、特定された評価値の値が小さい順番(相関が高い順番)である相関順と相関順同士の位置関係とを示す位置関係情報を導出する。
【0060】
図6は、位置関係情報を説明するための説明図である。例えば、
図6のように、基準ブロック204aとの平均値差分マッチングを実行した結果、比較ブロック214aで評価値が最小となり、比較ブロック214bで評価値が2番目に小さくなったとする。すると、かかる2つの比較ブロック214a、214bにそれぞれ「1st」と「2nd」の相関順を関連付ける。そして、2つの比較ブロック214a、214bが比較画像210中のどこに位置するか(位置関係)が導出される。例えば、
図6の例では、基準ブロック204aのブロック位置Daに対し、相関順1stの比較ブロック214aがPa+Faに位置し、相関順2ndの比較ブロック214bがPa+Saに位置し、これが位置関係情報となる。このように相関順と、相関順同士の位置関係が導出されると、評価値自体は不要となる。ただし、Dx(xは基準ブロック204の識別子に対応)は基準画像200におけるブロック位置であり、Px、Fx、Sxは比較画像210における画素位置である。
【0061】
(ステップS306)
続いて、位置関係置換部164は、導出された位置関係情報と所定の関係、具体的には、相関順同士の位置関係が等しい関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されているか否か判定する。ここで、相関順同士の位置関係が等しい関係とは、導出された位置関係情報に対応する比較ブロック214の相関順の位置(例えば、1stの位置Pa+Fa、2ndの位置Pa+Sa)と、保持された位置関係情報に対応する比較ブロック214の相関順の位置(例えば、1stの位置Px+Fx、2ndの位置Px+Sx)とが等しい、または、ほぼ等しいことを言う。この場合、いずれか一方の基準ブロック204に対応する比較ブロック214の相関関係(位置関係情報)に誤りが生じていると評価することができる。
【0062】
(ステップS308)
パターンマッチングの比較的早い段階において、導出された位置関係情報と相関順同士の位置関係が等しい関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されていなければ(S306におけるNO)、位置関係置換部164は、今度は、導出された位置関係情報と所定の関係、具体的には、相関順同士の位置関係が置換関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されているか否か判定する。ここで、相関順同士の位置関係が置換関係とは、導出された位置関係情報に対応する比較ブロック214の相関順の位置(例えば、1stの位置Pa+Fa、2ndの位置Pa+Sa)と、保持された位置関係情報に対応する比較ブロック214の相関順の位置(例えば、1stの位置Px+Fx、2ndの位置Px+Sx)との、1stと2ndの位置が互いに置き換えられている関係を言う。この場合、両方の基準ブロック204に対応する比較ブロック214の相関関係(位置関係情報)に誤りが生じているおそれがあると評価することができる。
【0063】
(ステップS310)
パターンマッチングの比較的早い段階において、導出された位置関係情報と相関順同士の位置関係が置換関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されていなければ(S308におけるNO)、位置関係置換部164は、導出された位置関係情報を基準ブロック204aに対応付けてデータ保持部152の各保持領域に保持させ、ステップS332に処理を移す。
【0064】
図7は、保持領域を説明するための説明図であり、特に、
図7(a)は、視差候補保持領域を示し、
図7(b)は、基準保持領域を示し、
図7(c)は、2nd保持領域を示し、
図7(d)は、2nd視差保持領域を示す。例えば、
図6に示した位置関係情報を保持することを試みると、
図7(a)の視差候補保持領域のブロック位置Daに、基準ブロック204aの視差、すなわち、ブロック位置Daに相当する画素位置Paと1st位置Pa+Faとの差分(相対位置)Faが保持される。また、
図7(b)の基準保持領域の1st位置Pa+Faには、元となる基準ブロック204aを特定するためのブロック位置Daが保持される。
図7(c)の2nd保持領域の1st位置Pa+Faには、その1st位置と対応する基準ブロック204aの2nd位置Pa+Saが保持される。
図7(d)の2nd視差保持領域の1st位置Pa+Faには、その1st位置と対応する基準ブロック204aの2nd位置Pa+Saが視差として選択された場合の差分(相対位置)Saが保持される。こうして、位置関係情報がデータ保持部152に保持される。かかる保持領域では、基準保持領域を参照して、任意の比較ブロック214が既に1st位置として抽出されているか否か判定でき、1st位置として抽出されていれば、2nd保持領域や2nd視差保持領域を参照して、2nd位置の情報を取得することができる。
【0065】
(ペアリング)
図8は、位置関係置換部164の動作を説明するための説明図である。このように、位置関係情報がデータ保持部152に保持されると、以降の基準ブロック(例えば、204b)の位置関係情報(Db、Pb、Fb、Sb)が、その保持された位置関係情報(Da、Pa、Fa、Sa)と相関順同士の位置関係が等しい関係となる可能性が生じる。そこで、ステップS306において、位置関係置換部164は、相関順同士の位置関係が等しい関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されているか否かを以下の数式6および数式7に基づいて判定する。
|(Pa+Fa)−(Pb+Fb)|<閾値 …(数式6)
|(Pa+Sa)−(Pb+Sb)|<閾値 …(数式7)
上記数式6は、1st位置の差が閾値未満であれば、1st位置同士が等しい、または、ほぼ等しいとみなすことができることを示し、上記数式7は、2nd位置の差が閾値未満であれば、2nd位置同士が等しい、または、ほぼ等しいとみなすことができることを示す。かかる数式6および数式7を満たす場合、いずれか一方の基準ブロック204について相関順が誤っているおそれが高い。
【0066】
(ステップS312)
導出された位置関係情報と相関順同士の位置関係が等しい関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されていれば、すなわち、上記数式6および数式7の条件を満たしていれば(S306におけるYES)、位置関係置換部164は、以下の数式8を満たすか否か判定する。
|Fb−Sa|<閾値 …(数式8)
上記数式8を用いることで、基準ブロック204bの1stの視差に相当する差分(相対位置)Fbが基準ブロック204aの2ndの視差に相当する差分(相対位置)Saと等しい、または、ほぼ等しいか判定できる。
【0067】
(ステップS314)
上記数式8を満たす場合(S312におけるYES)、一方の基準ブロック204aについて相関順が誤っているとみなすことができるので、位置関係置換部164は、基準ブロック204aの相関順を互いに置換するとともに、基準ブロック204aの位置関係情報をデータ保持部152に保持させ、ステップS332に処理を移す。
【0068】
図9および
図10は、保持領域を説明するための説明図である。具体的に、位置関係置換部164は、既に保持された基準ブロック204aの位置関係情報について、
図9に示すように、基準ブロック204aの相関順(1stと2ndと)を置換する。すなわち、
図9(a)の視差候補保持領域のブロック位置Daに、ブロック位置Daに相当する画素位置Paと2nd位置Pa+Saとの差分Saが新たに保持される。また、
図9(b)の基準保持領域の2nd位置Pa+Saにブロック位置Daが保持される。
図9(c)の2nd保持領域の2nd位置Pa+Saには、基準ブロック204aの1st位置Pa+Faが保持される。
図9(d)の2nd視差保持領域の2nd位置Pa+Saには視差に相当する差分Faが保持される。こうして、基準ブロック204aの位置関係情報が更新され、新たに生じうるペアリングに対応可能となる。
【0069】
また、位置関係置換部164は、導出された基準ブロック204bの位置関係情報について、
図10(a)の視差候補保持領域のブロック位置Dbに、ブロック位置Dbに相当する画素位置Pbと1st位置Pb+Fbとの差分Fbが保持される。また、
図10(b)の基準保持領域の1st位置Pb+Fbには、元となる基準ブロック204bを特定するためのブロック位置Dbが保持される。
図10(c)の2nd保持領域の1st位置Pb+Fbには、2nd位置Pb+Sbが保持される。
図10(d)の2nd視差保持領域の1st位置Pb+Fbには視差に相当する差分Sbが保持される。こうして、基準ブロック204bの位置関係情報がデータ保持部152に保持される。
【0070】
(ステップS316)
上記数式8を満たさない場合(S312におけるNO)、位置関係置換部164は、以下の数式9を満たすか否か判定する。
|Fa−Sb|<閾値 …(数式9)
上記数式9を用いることで、基準ブロック204aの1stの視差に相当する差分(相対位置)Faが基準ブロック204bの2ndの視差に相当する差分(相対位置)Sbと等しい、または、ほぼ等しいか判定できる。
【0071】
(ステップS318)
上記数式9を満たす場合(S316におけるYES)、他方の基準ブロック204bについて相関順が誤っているとみなすことができるので、位置関係置換部164は、基準ブロック204aの位置関係情報を更新することなく、基準ブロック204bの相関順(1stと2ndと)を互いに置換し、置換した位置関係情報をデータ保持部152に保持させ、ステップS332に処理を移す。
【0072】
図11は、保持領域を説明するための説明図である。具体的に、位置関係置換部164は、導出された基準ブロック204bの位置関係情報について、
図11(a)の視差候補保持領域のブロック位置Dbに、ブロック位置Dbに相当する画素位置Pbと2nd位置Pb+Sbとの差分Sbが保持される。また、
図11(b)の基準保持領域の2nd位置Pb+Sbにブロック位置Dbが保持される。
図11(c)の2nd保持領域の2nd位置Pb+Sbには、基準ブロック204aの1st位置Pb+Fbが保持される。
図11(d)の2nd視差保持領域の2nd位置Pb+Sbには視差に相当する差分Fbが保持される。こうして、基準ブロック204bの位置関係情報がデータ保持部152に保持され、新たに生じうるペアリングに対応可能となる。
【0073】
(ステップS320)
上記数式9を満たさない場合(S316におけるNO)、2つの基準ブロック204a、204bのうち、視差が最小となる(比較ブロック214との相対位置が最小となる)一方の基準ブロック204に関する視差のみを有効とし、視差が最小とならない他方の基準ブロック204を無効化して、ステップS332に処理を移す。
【0074】
図12は、保持領域を説明するための説明図である。仮に、基準ブロック204aを無効とする場合、位置関係置換部164は、既に保持された基準ブロック204aの位置関係情報について、
図12に示すように、リセット処理を施す。すなわち、
図12(a)の視差候補保持領域のブロック位置Daの値Faを0に変換する。また、
図12(b)〜(d)の各保持領域の1st位置Pa+Faの値を全てリセットする。こうして、基準ブロック204aの位置関係情報が無効化される。かかる視差が最小とならない基準ブロック204の無効化処理については特許第3287465号公報等、既存の技術を適用できるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0075】
(クロスペアリング)
図13は、位置関係置換部164の他の動作を説明するための説明図である。上記では、基準ブロック(例えば、204b)の位置関係情報(Db、Pb、Fb、Sb)が、その保持された位置関係情報(Da、Pa、Fa、Sa)と相関順同士の位置関係が等しくなる場合を説明した。ここでは、両位置関係情報の相関順同士の位置関係が置換関係にある場合を説明する。ステップS308において、位置関係置換部164は、相関順同士の位置関係が置換関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されているか否かを以下の数式10および数式11に基づいて判定する。
|(Pa+Fa)−(Pb+Sb)|<閾値 …(数式10)
|(Pa+Sa)−(Pb+Fb)|<閾値 …(数式11)
上記数式10は、基準ブロック204aの1st位置と基準ブロック204bの2nd位置との差が閾値未満であれば、それらが等しい、または、ほぼ等しいとみなすことができることを示し、上記数式11は、基準ブロック204aの2nd位置と基準ブロック204bの1st位置との差が閾値未満であれば、それらが等しい、または、ほぼ等しいとみなすことができることを示す。かかる数式10および数式11を満たす場合、両基準ブロック204について相関順が誤っているおそれがある。
【0076】
(ステップS322)
導出された位置関係情報と相関順同士の位置関係が置換関係にある位置関係情報がデータ保持部152に保持されていれば、すなわち、上記数式10および数式11の条件を満たしていれば(S308におけるYES)、位置関係置換部164は、以下の数式12を満たすか否か判定する。
|Sa−Sb|<閾値 …(数式12)
上記数式12を用いることで、基準ブロック204aと基準ブロック204bとの2ndの視差(相対位置)同士が等しい、または、ほぼ等しいか判定できる。
【0077】
(ステップS324)
上記数式12を満たす場合(S322におけるYES)、両基準ブロック204a、204bについて相関順が誤っているとみなすことができるので、位置関係置換部164は、基準ブロック204aの相関順を互いに置換するとともに、基準ブロック204bの相関順を互いに置換し、置換した位置関係情報をデータ保持部152に保持させ、ステップS332に処理を移す。
【0078】
図14および
図15は、保持領域を説明するための説明図である。具体的に、位置関係置換部164は、既に保持された基準ブロック204aの位置関係情報について、
図14に示すように、基準ブロック204aの相関順を置換する。すなわち、
図14(a)の視差候補保持領域のブロック位置Daに、ブロック位置Daに相当する画素位置Paと2nd位置Pa+Saとの差分Saが新たに保持される。また、
図14(b)の基準保持領域の2nd位置Pa+Saにブロック位置Daが保持される。
図14(c)の2nd保持領域の2nd位置Pa+Saには、基準ブロック204aの1st位置Pa+Faが保持される。
図14(d)の2nd視差保持領域の2nd位置Pa+Saには視差に相当する差分Faが保持される。こうして、基準ブロック204aの位置関係情報が更新される。
【0079】
また、位置関係置換部164は、導出された基準ブロック204bの位置関係情報について、相関順を置換し、
図15(a)の視差候補保持領域のブロック位置Dbに、ブロック位置Dbに相当する画素位置Pbと2nd位置Pb+Sbとの差分Sbが保持される。また、
図15(b)の基準保持領域の2nd位置Pb+Sbには、元となる基準ブロック204bを特定するためのブロック位置Dbが保持される。
図15(c)の2nd保持領域の2nd位置Pb+Sbには、1st位置Pb+Fbが保持される。
図15(d)の2nd視差保持領域の2nd位置Pb+Sbには視差に相当する差分Fbが保持される。こうして、基準ブロック204bの位置関係情報が正しく更新され、データ保持部152に保持される。
【0080】
(ステップS326)
上記数式12を満たさない場合(S322におけるNO)、位置関係置換部164は、以下の数式13を満たすか否か判定する。
|Fa−Fb|<閾値 …(数式13)
上記数式13を用いることで、基準ブロック204aと基準ブロック204bとの1stの視差(相対位置)同士が等しい、または、ほぼ等しいか判定できる。
【0081】
(ステップS328)
上記数式13を満たす場合(S326におけるYES)、基準ブロック204aおよび基準ブロック204bの両ブロックについて、相関順が正しいとみなすことができるので、位置関係置換部164は、基準ブロック204aの位置関係情報を更新することなく、基準ブロック204bの位置関係情報をデータ保持部152に保持させ、ステップS332に処理を移す。
【0082】
図16は、保持領域を説明するための説明図である。具体的に、位置関係置換部164は、導出された基準ブロック204bの位置関係情報について、
図16(a)の視差候補保持領域のブロック位置Dbに、ブロック位置Dbに相当する画素位置Pbと1st位置Pb+Fbとの差分Fbが保持される。また、
図16(b)の基準保持領域の1st位置Pb+Fbにブロック位置Dbが保持される。
図16(c)の2nd保持領域の1st位置Pb+Fbには、基準ブロック204aの2nd位置Pb+Sbが保持される。
図16(d)の2nd視差保持領域の1st位置Pb+Fbには視差に相当する差分Sbが保持される。こうして、基準ブロック204bの位置関係情報がデータ保持部152に保持される。
【0083】
(ステップS330)
上記数式13を満たさない場合(S326におけるNO)、2つの基準ブロック204a、204bのうち、視差が最小となる(比較ブロック214との相対位置が最小となる)基準ブロック204に関する視差のみを有効とし、視差が最小とならない基準ブロック204を無効化して、ステップS332に処理を移す。かかる処理については、
図12を用いて既に説明したので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0084】
(ステップS332)
続いて、位置関係置換部164は、対象となる全ての基準ブロック204についてステップS302〜ステップS330の処理が完了したか否か判定する。
【0085】
(ステップS334)
対象となる全ての基準ブロック204について処理が完了していなければ(S332におけるNO)、基準となる基準画像から新たに1の基準ブロック204を抽出して、ステップS302からの処理を繰り返す。
【0086】
(ステップS336)
対象となる全ての基準ブロック204について処理が完了していれば(S332におけるYES)、差分値決定部166は、位置関係置換部164によって特定された、基準ブロック204に関する位置関係情報における相関が最も高い相関順の位置、すなわち、1st位置を、基準ブロック204の視差として決定し、当該パターンマッチング処理を終了する。
【0087】
以上、説明したように、パターンマッチングにおいて、比較画像210の1の比較ブロック214が基準画像200の複数の基準ブロック204と相関が最も高くなる場合においても、単に一方の基準ブロック204を無効とせず、基準ブロック同士や比較ブロック同士の相対的な位置関係を評価し、本来の相関順となっていない位置関係情報の相関順を置換して正すことで、対象物の視差を適切に導出することが可能となる。こうして、基準ブロック204同士と比較ブロック214同士の位置関係がより明確に対応付けられる。
【0088】
また、コンピュータを、上述したフィルタリング装置や環境認識システム100として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
例えば、上述した実施形態においては、比較対象として、視点の異なる2つの撮像装置110において同時に撮像された一対の画像を用いる例を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、互いに関連性を有する一対の画像に対して広く適用可能である。このような互いに関連性を有する一対の画像としては、例えば、所謂オプティカルフローの処理対象である、単眼カメラによる1の撮像装置(単眼撮像装置)で異なる時刻に撮像され、時系列に出力された2つの画像や、所謂テンプレートマッチングの処理対象である、撮像された画像と予め準備された画像(テンプレート画像)との組み合わせ等が考えられる。また、上述した実施形態では、差分値として、視点の異なる2つの撮像装置110において同時に撮像された一対の画像における「視差」を挙げて説明したが、かかる場合に限らず、差分値は、互いに関連性を有する一対の画像における基準ブロックの差分等、対応する抽出部位同士の差分であればよい。
【0091】
また、上述した実施形態では、輝度画像を比較対象とし、輝度画像の輝度に基づいて評価値を導出しているが、かかる場合に限らず、輝度以外の情報、例えば、遠赤外線カメラより得られる熱分布や、レーザレーダやミリ波レーダより得られる反射強度の分布等を比較対象とし、それらに基づいて評価値を導出してもよい。この場合も、上記同様、差分値は、対応する抽出部位同士の差分であればよい。
【0092】
また、上述した実施形態では、
図3に示すように、トラックの中央における領域を例に挙げて説明したが、道路のパイロン列、照明灯または電柱、テールランプ等、車両の所定部位にも適用できるのは言うまでもない。
【0093】
また、上述した実施形態では、「1st」と「2nd」の2つの差分値の候補に対する処理を例示したが、候補となる差分値は2に留まらず、データ保持部152の該当する保持領域を追加することで、3以上の差分値の候補に対して同様のペアリングおよびクロスペアリングを行うことも可能である。
【0094】
なお、本明細書のパターンマッチング処理の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、例えば、ペアリングとクロスペアリングを、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。ペアリングとクロスペアリングとを並列的に実行する場合、両現象が同時に成り立つことがある。この場合、いずれかの処理を優先するとしてもよいし、さらに他の処理結果を用いて、いずれの処理が正しいかを判定してもよい。