(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955310
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】区画的な血管処置のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20160707BHJP
A61L 29/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
A61M25/10 500
A61M25/10 550
A61L29/00 W
【請求項の数】23
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-500094(P2013-500094)
(86)(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公表番号】特表2013-521937(P2013-521937A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011027982
(87)【国際公開番号】WO2011112863
(87)【国際公開日】20110915
【審査請求日】2014年3月5日
(31)【優先権主張番号】61/313,600
(32)【優先日】2010年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512237246
【氏名又は名称】クアトロ・ヴァスキュラー・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】エイタン・コンスタンティーノ
(72)【発明者】
【氏名】タヌム・フェルド
【審査官】
倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06245040(US,B1)
【文献】
特表2005−508709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61L 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管形成術を行うためのシステムであって、
先端部にバルーンを有したカテーテルシャフトと;
膨張可能な拘束構造と;
を具備し、
前記拘束構造が、周縁まわりに互いに離間して配置された複数の軸方向ストラットと、軸方向において互いに離間して配置された径方向に膨張可能な複数のリングと、を備え、
前記軸方向ストラットおよび前記リングが、互いに交差しているとともに、前記バルーン上に配置され、
前記拘束構造が、前記バルーンの非拘束サイズよりも小さい直径とされた拡径状態を有し、これにより、血管内において前記バルーンおよび前記拘束構造が膨張された際には、前記バルーンのうちの、互いに隔離された複数の個別領域が、前記拘束構造の周縁を通しておよびそれら周縁を超えて突出し、これにより、前記拘束構造が血管壁へと到達しない状態で、前記複数の個別領域が血管壁に対して接触するものとされている特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記軸方向ストラットおよび前記リングが、少なくとも16個の開口を形成していることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、
前記軸方向ストラットおよび前記リングが、周縁まわりにおいて4個の開口を形成していることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記リングが、前記軸方向ストラットに対して、75°〜105°という範囲の交差角度でもって連結されていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、
前記交差角度が、90°であることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記軸方向ストラットが、前記バルーンの先端部および基端部において前記カテーテルに対して連結されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、
前記軸方向ストラットの各々の先端部と基端部との少なくとも一方が、前記バルーンが膨らまされる際には、前記カテーテルシャフト上において軸方向に並進移動可能とされていることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6記載のシステムにおいて、
前記軸方向ストラットが、前記バルーンが膨らまされる際には、延伸されることができることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、
前記拘束構造の両端部が、前記カテーテルシャフトに対して固定されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
径方向に膨張可能な前記リングが、前記バルーンが膨らまされる際に前記リングを拡径させ得るよう、延伸可能な弾性材料から形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10記載のシステムにおいて、
径方向に膨張可能な前記リングが、前記バルーンが膨らまされる際に前記リングを拡径させ得る変形可能な特徴物を付帯して形成されていることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、
前記変形可能な特徴物が、ジグザグ形状とS字形状とコイルとのうちの1つ以上のものを有していることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記バルーンが、血管壁内へと搬送されるべき薬剤によってコーティングされていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
血管形成術を行うためのデバイスを製造するための方法であって、
バルーンを折り畳み;
前記バルーン上に拘束構造を配置する;
という方法において、
前記拘束構造を、周縁まわりに互いに離間して配置された複数の軸方向ストラットと、軸方向において互いに離間して配置された径方向に膨張可能な複数のリングと、を備えたものとし、
前記軸方向ストラットおよび前記リングを、互いに交差したものとし、
前記バルーンの膨張により、前記バルーンのうちの、互いに隔離された複数の個別領域を、前記軸方向ストラットと径方向に膨張可能な前記リングとの間の開口から突出させ、これにより、前記軸方向ストラットおよび前記リングが血管壁へと到達しない状態で、前記複数の個別領域を血管壁に対して接触可能なものとし、これにより、前記バルーンを回転させることなく、前記バルーンを膨張させ、
さらに、カテーテルシャフトに対して、前記拘束構造を取り付ける、
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、
前記バルーンを、膨張不可能なまたは半ソフトな材料から形成し、
前記バルーンを、10〜25気圧という範囲の圧力で膨らませることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14または15記載の方法において、
前記バルーンを膨らませる際には、前記軸方向ストラットおよび前記リングが少なくとも16個の開口を形成するようにして、前記バルーンが拘束されていることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法において、
さらに、薬剤によって前記バルーンをコーティングすることを特徴とする方法。
【請求項18】
血管形成術を行うためのデバイスを製造するための方法であって、
バルーンを折り畳み;
前記バルーン上に、複数の開口を有した拘束構造を配置する;
という方法において、
前記バルーンの膨張により、周縁まわりにおいて前記複数の開口から突出する互いに隔離された複数の個別領域を形成し、これら個別領域が、前記バルーンを回転させることなく、局在化した力でもって表面に対してそれぞれ係合することができ、
傷害のセグメントにおける前記バルーンの直径を、隣接するセグメントにおける前記バルーンの直径と同様のものとすることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、
さらに、前記拘束構造を、複数の軸方向ストラットと、これら軸方向ストラットに対して交差しているとともに軸方向において互いに離間して配置された径方向に膨張可能な複数のリングと、から形成することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、
前記軸方向ストラットおよび前記複数のリングにより、前記複数の個別領域を前記開口から突出させ得るための、四角形の開口を形成することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれか1項に記載の方法において、
前記バルーンを、膨張不可能なまたは半ソフトな材料から形成し、
前記バルーンを、10〜25気圧という範囲の圧力で膨らませることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれか1項に記載の方法において、
さらに、薬剤によって前記バルーンをコーティングすることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項18〜22のいずれか1項に記載の方法において、
前記複数の個別領域を、互いに同様のサイズを有したものとするとともに、前記バルーンの表面上にわたって一様に分散されたものとすることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年3月12日付けで出願された米国特許予備出願第61/313,600号(代理人No.026728−000200US)の優先権を主張するものである。この文献の記載内容は、参考のためここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、医学的な方法およびデバイスに関するものであり、より詳細には、生体組織に対して活性物質を供給することを意図した医学的な血管形成用バルーンカテーテルおよびデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0003】
血管形成用バルーンは、狭窄した血管を処置するに際して最も通常的に使用されている1つのツールである。そのようなバルーンは、典型的には、膨らまされたときには円筒形とされ、様々な血管サイズに適合し得るよう、様々な長さおよび直径を有している。バルーンは、フレキシブルなカテーテルの先端部のところに配置され、ターゲットサイト/障害部位へと搬送される。ターゲットサイトにおいては、バルーンは、通常は8〜20気圧といったような高圧で膨らまされる。これにより、障害部位の抵抗に打ち勝って、管腔を膨張させることができる。そのような高圧での血管形成術は、多くの場合、血管壁への外傷に関連しており、血管の解離(30%〜40%)や、処置された血管の急激な閉塞(5%〜12%)や、再狭窄、を伴う。よって、従来の血管形成術が、閉塞した血管のための一次的処置として使用された場合には、約50%の場合において、再狭窄が起こり得る。したがって、冠状動脈の処置の大部分の場合には、初期治療として血管形成術が使用され、その後に、ステントが交換される。多くの場合、ステントは、薬剤およびポリマーによってコーティングされている。このため、ステント血栓症または血餅のリスクを制限するために、患者は、長期にわたって、場合によっては一生にわたって、抗血小板療法を受ける必要がある。抗血小板療法は、出血というリスクを増大させるとともに、高価なものである。加えて、患者は、手術の前には、抗血小板療法を停止しなければならない。よって、突然死のリスクを増大させるとともに、手術の有効性を妨害してしまう。
【0004】
バルーン血管形成術によって処置された血管における解離は、非常に一般的である。解離の発生割合は、すべての場合において最大で30%であると評価される。解離のいくつかは、深刻なものであって、緊急な手術を必要とする、すなわち、追加的なステントの配置を必要とする。加えて、解離は、処置された障害部位にステントが配置されたとしても、長期的な臨床結果を悪いものとしかねず、また、再狭窄をもたらしかねない。解離は、通常は、バルーンの膨張時に発生するいくつかの機構に起因する。すなわち、バルーンのプリーツが広げられる際に血管壁上に印加される剪断力と、血管疾病の非対称特性の結果として起こる不均等なバルーン膨張と、に起因する。膨張時には、折り畳まれたバルーンが広げられるにつれて、バルーンの直径が径方向に増大する。バルーンの折り畳まれたローブが開く際には、複数のローブは、互いにスライドし、障害部位および/または血管壁に対して接線方向力を印加する。このような接線方向力は、障害部位または血管壁に擦傷を引き起こしてしまい、最悪の場合には、解離を引き起こしてしまう。
図1A〜
図1Cに示すように、カテーテル10は、初期的には、血管(blood vessel,BV)内のプラーク(plaque,P)の領域内に配置される。カテーテル10上のバルーン12は、折り畳まれた複数のローブを有している。バルーンが膨らまされる際には、それらローブは、
図1Bに示すように、広げられる。折り畳まれた複数のローブがなす複数の層は、
図1Bにおいて矢印で示すように、互いに逆向きに移動する。その際、上側の露出された層は、障害部位の表面を横断して、また、存在する場合には露出された血管壁の表面を横断して、スライドする傾向がある。バルーン表面のそのような意図しない側方移動は、
図1Cに示すようにバルーンが完全に膨張されるまで、起こり得る。
【0005】
不均等な膨張は、血管内における疾病の不均等な性状に起因する。血管形成用のバルーンは、通常は、ソフトではなく、あるいは、半ソフトなものである。半ソフトなバルーンが非対称な障害部位に向けて膨らまされた場合には、バルーンは、「最小抵抗の経路」に追従することとなり、その直径は、血管のうちの疾病度合いの小さい部分において、より大きく増大する。これにより、多くの場合、そのような領域において傷害が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,245,040号明細書
【特許文献2】米国特許第5,735,816号明細書
【特許文献3】米国特許第7,708,748号明細書
【特許文献4】米国特許第7,686,824号明細書
【特許文献5】米国特許第5,863,284号明細書
【特許文献6】米国特許第5,772,681号明細書
【特許文献7】米国特許第5,643,210号明細書
【特許文献8】米国特許第5,987,661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それらの理由により、血管の治療において使用される改良されたバルーン、および、血管形成用バルーンのための膨張構造が要望されている。特に、バルーンの膨張特性を調節することによって、バルーンの膨張時に血管壁に損傷または解離を引き起こしにくいような血管形成用バルーンが要望されており、さらに、局所的にソフトな領域を有しつつセグメント化された区画による膨張をもたらすことが要望されている。さらに、低減された解離が、現在の血管形成用バルーンおよびその使用において課題となっている弾性的な反発および突発的な再閉塞というリスクを低減させることが望ましい。さらに、そのような改良された血管形成用バルーン構造が、ステントや、薬剤溶出ステントや、薬剤コーティングバルーン、に適合していることが望ましい。これらの利点は、好ましくは、処置対象をなす患者の管腔サイズを増大させて血管を回復させるというカテーテルの能力の損失を引き起こすことなく得られる。これら目的の少なくともいくつかは、後述のような本発明によって、適合する。
【0008】
特許文献1,2は、弾性的な螺旋形の制限部材を備えたバルーンカテーテルを示している。それら螺旋部材は、バルーンの膨張時には、バルーン内に螺旋形の凹所を形成する。興味がある他の文献には、特許文献3〜8がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、狭窄した血管の血管形成術のためのまたは膨張のためのデバイスを備えており、付加的には、血管壁に対して活性物質を搬送するためのデバイスを備えている。バルーンカテーテルは、バルーンの膨張特性を調節することができ、局所的にソフトな領域を使用することによってセグメント化された膨張をもたらすことができ、これにより、血管疾病の不均一特性に適合することができる。本発明におけるバルーンカテーテルは、カテーテルの先端部上においてバルーン上にわたって配置された拘束構造(CS)を備えている。CSは、バルーンの膨張を制御して制限するように機能するものであり、バルーンのトポグラフィー(凹凸形状)を調節する。典型的には、表面上に突出領域(「ピロー」)を形成することによって、バルーンのトポグラフィー(凹凸形状)を調節する。突出領域により、隣接する突出領域とは独立に、血管壁の小さな領域を局所的に膨張させることができる。そのような互いに離散的な複数の突出領域の各々は、バルーンが膨らまされたときには、障害部位のセグメントに対して個別的に係合する。これにより、セグメントに対して印加される圧力およびバルーンの膨張度合いが、制御されて制限される。これにより、障害部位のすべてのセグメントを適切に処理しつつも、傷害のリスクを低減することができる。障害部位を、長手方向に沿って一様に処理することができ、なおかつ、障害部位の各セグメントに対しての過度な圧力を低減または回避することができる。そのような局所的な膨張は、上述したような「最小抵抗の経路」の形成を防止し、血管の様々な部位または領域に対しての局所的なかつ不均一な処置を可能とし、修正されたバルーントポロジー(バルーンの凹凸形状)によって、血管形成術に基づく非常に大きな圧力でもってバルーンが膨らまされる際に、血管の傷害または損傷を最小化する。CSは、さらに、バルーンが膨張して壁層が開口して血管壁に対して横方向にスライドする際に、障害部位および血管壁に対して剪断力を伝達することを防止する。従来技術によるバルーンは、血管の被処置領域(周縁障害部位において、時に、200mm〜300mmという長さ)上において連続した表面を呈する。このため、バルーンは、被処置表面に沿って不均等に変形することとなる。不均等な障害部位形状を有した疾病血管に対して適用されたときには、その
ような「集中した膨張」機構は、損傷および解離の可能性を増大させる。これに対し、本発明によるバルーンは、長手方向にわたって疾病のサイズが大幅に変化したとしても、疾病の長手方向に沿って、(例えば、互いに均等に分散された複数の突出領域の結果として)より局在化したなおかつバランスの取れた力の分散をもたらす。
【0010】
本発明の一実施形態においては、CSは、収縮されて折り畳まれたバルーン上に配置され、バルーンの先端部の近傍においてあるいはバルーンの基端部の近傍においてあるいは好ましくはバルーンの先端部と基端部との双方の近傍において、カテーテルのシャフトに対して取り付ける。CSは、バルーンに対して取り付けられる必要はなく、折り畳まれたバルーン上にわたって浮遊させることができ、付加的には、両端部のところに弾性カバー(例えば、ポリマーから形成されたカバー)を付設することができる。バルーンの膨張時には、CSは、最大直径へと膨張し、バルーンは、CS内の所定パターンの開口を通してさらに膨張することができる。デバイスの収縮時には、CSは、元々の直径へと弾性的に閉塞する。
【0011】
本発明の一実施形態においては、バルーンが膨張する際には、バルーンとCSとの双方の直径が増大する。しかしながら、CSの最大直径は、バルーンの最大直径よりも小さい。このため、バルーンは、CS内の開口を通して膨張を続ける。これにより、一連をなす複数の突出領域が形成される。典型的には、直交したあるいはダイヤモンド状の「キルト模様の」パターンでもって、一連をなす複数の突出領域が形成される。CSは、膨張前には比較的小さな直径を有しており、バルーンの膨張によって印加された膨張力に基づいて、バルーンの完全膨張直径よりも小さな最大直径にまで、膨張することができる。CSの膨張は、CSの幾何形状によって制限される。
【0012】
CSは、被処置セグメントにおいてバルーン直径を制限することによって、膨張プロセス時に大きな直径差を除去するようにして、バルーン直径を制御することができる。よって、バルーンの圧力が増大した際には、局所的縮小に打ち勝ち得るよう通常的に行われるように、処置対象をなす障害部位の他の部分を伸ばし過ぎることを、全体的に低減したりまたは回避したりすることができる。加えて、CSは、血管壁に対してのバルーンの膨張に起因する接線方向力の伝達を低減または除去することができる。CSは、互いに交差する複数のチャネルからなるネットワークを形成し、それらチャネルの間に複数の突出領域すなわち複数の「ピロー」を形成する。突出領域どうしの間のチャネルは、互いに隣接する突出領域どうしの間に応力逃がし領域を形成することによって、径方向の応力の蓄積を防止する。応力逃がし領域は、直接的なバルーン表面接触を行うことなく、膨張することができる。これにより、膨張時に血管壁に起こる損傷を最小化することができる。加えて、複数のチャネルは、プラークの押出(再分配)を可能とする。これにより、従来技術によるバルーンにおける単純な圧迫機構に加えて、新たな機構を追加することができる。
【0013】
第1見地においては、本発明は、血管形成術を行うためのシステムを提供する。本発明によるシステムは、先端部に膨張可能なバルーンを有したカテーテルシャフトと、膨張可能なバルーン上に配置された拘束構造と、を具備している。拘束構造は、バルーンの膨張前にバルーン上に密接した非拡径状態と、(完全に膨張した際の)バルーンの非拘束サイズよりも小さいサイズとされた拡径状態と、を有している。これにより、拘束構造は、複数の交差するチャネルラインに沿って、バルーンの膨張を制限する。「交差する」チャネルラインという用語は、複数のチャネルが複数の場所において交差することを意味している。これにより、複数のチャネルは、相互連結されたチャネルからなる交差マトリクスを備えている。個々のチャネルラインは、軸方向を向くことができる、あるいは、周縁方向を向くことができる。あるいは、好ましくは、チャネルラインは、軸方向と周縁方向との双方を向くことができる。この場合には、軸方向チャネルが、周縁方向チャネルに対して交差する。これに代えて、複数のチャネルは、2つまたはそれ以上の相応して曲がった螺旋チャネルとして形成することができ、この場合には、ダイヤモンド形状の突出領域が形成される。
【0014】
特定の好ましい実施形態においては、拘束構造は、周縁まわりに互いに離間して配置された複数の軸方向ストラットと、軸方向において互いに離間して配置された径方向に膨張可能な複数のリングと、を備えている。リングは、ストラットに対して交差角度を有して連結され、好ましくは、リングは、ストラットに対して、75°〜105°という範囲の交差角度でもって連結される。特に好ましい実施形態においては、交差角度は、90°とされる。軸方向ストラットは、バルーンの先端部および基端部においてカテーテルに対して連結される。いくつかの実施形態においては、各ストラットの先端部と基端部との少なくとも一方は、バルーンが膨らまされる際には、カテーテルシャフト上において軸方向に並進移動可能とされる(起こり得る短縮に対応することができる)。これに代えて、個々のストラットの各々は、バルーンの基端部と先端部との双方においてカテーテルシャフトに対して固定し得るとともに、張力に対して弾性的であり、これにより、バルーンが膨らまされる際には、ストラットが延伸される。例えば、軸方向ストラットは、弾性体または他の弾性材料から構成することができ、延伸可能なものである。より典型的には、軸方向ストラットは、変形可能な特徴物を有することができ、例えばジグザグ形状やS字形状やコイルスプリング等とすることができる。これにより、ストラットの一端または両端がカテーテルシャフトに対して取り付けられた際には、(必要であれば)延伸に対応することができる。
【0015】
径方向に膨張可能なリングは、バルーンが膨らまされる際にリングを拡径させ得るように、形成することができる。径方向に膨張可能なリングは、例えば延伸可能なポリマー等といったような、本来的に弾性的な材料から形成することができる。しかしながら、より典型的には、リングは、バルーンが膨らまされる際にリングを拡径させ得る変形可能な特徴物を付帯して形成される。変形可能な特徴物は、軸方向ストラットと同じものとすることができ、例えばジグザグ形状やS字形状やコイルスプリング等とすることができる。すべての場合において、リングは、バルーンが膨らまされたときにそれ以上には拡径されない最大直径を有することが必要である。リングが変形可能な特徴物を付帯して形成される場合には、最大のリングの拡径は、変形可能な特徴物が完全に延伸されたときに、起こる。弾性体または他の材料からリングが形成されたときには、膨張不可能な繋ぎ綱または他の膨張制限物を、リング内に構築することができ、これにより、リングを、最大直径を超えて膨張させることがない。
【0016】
バルーンは、薬剤を搬送させ得るよう、コーティングすることができる、あるいは、他の態様で適用することができる。薬剤によってバルーンをコーティングするための技術は、特許文献において公知である。例えば、米国特許第7,750,041号明細書;米国特許出願第2010/02280228号明細書;米国特許出願第2010/0278744号明細書;米国特許出願第2008/0102034号明細書;を参照することができる。これら文献の記載内容は、参考のためここに組み込まれる。
【0017】
第2見地においては、本発明は、血管内の障害部位を処置するための方法を提供する。本発明による方法においては、血管内においてバルーンを膨張させ、複数のチャネルラインに沿って、典型的には、互いに交差する軸方向チャネルラインおよび/または周縁方向チャネルラインに沿って、バルーンの膨張を制限する。複数のチャネルラインは、バルーン内に、複数の隔離された突出領域を形成する。この場合、突出領域は、障害部位に対して接触し、複数のチャネルラインは、血管壁から離間して凹所を形成する。「凹所」という用語は、チャネルラインの底部またはトラフが、バルーンの膨張面と比較して、カテーテルの軸線に対して径方向において、より接近して位置していることを意味している。多くの場合において、チャネルの底部は、障害部位に対して、あるいは、血管壁に対して、接触することはない。しかしながら、他の場合においては、とりわけプラークまたは血栓が押し出される際には、複数のチャネルは、障害部位の材料によって充填されることができ、さらに、チャネルの底部が血管壁から径方向内向きに離間して留まっていることのために、上述したように、応力を逃がし得るという利点をもたらすことができる。
【0018】
バルーンは、典型的には、膨張不可能な材料から、あるいは、半ソフトな材料から、形成され、これにより、血管壁内においてバルーンを過度に膨張させることなく、バルーンを、典型的には10〜25気圧といったような、比較的大きな圧力でもって、膨らませることができる。よって、バルーンが最大に拡径されたときには、バルーン(膨張不可能なとき)と拘束構造との双方が、それぞれの最大直径となる。その際、最大直径の差が、バルーン表面に形成されるチャネルの深さを規定する。突出領域は、多くの場合、同様のサイズ(障害部位に対して係合する領域の±50%)を有しており、バルーン表面上にわたって一様に分散される。バルーンは、その後のステントの導入および/または薬剤の移送を行うことなく、血管形成術のために使用することができる。これに代えて、バルーンは、ステントを拡径させるために使用することができる。その場合、ステントを、薬剤によってコーティングされたステントとすることも、また、薬剤によってコーティングされていないステントとすることも、できる。最後に、バルーン自体を、薬剤によってコーティングすることができる。これにより、処置時に、傷害部位に対してあるいは血管壁に対して、薬剤を移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】狭窄した血管内における従来のバルーンの膨張における各ステージを示す横断面図である。
【
図1B】狭窄した血管内における従来のバルーンの膨張における各ステージを示す横断面図である。
【
図1C】狭窄した血管内における従来のバルーンの膨張における各ステージを示す横断面図である。
【
図2A】バルーン上に配置された拘束構造を示す図であって、膨張後の様子を示している。
【
図2B1】バルーン上に配置された拘束構造を示す図であって、膨張前の様子を示している。
【
図2B2】バルーン上に配置された拘束構造を示す図であって、膨張後の様子を示している。
【
図3A】例示としての第1のリング構造を示す図であって、隣接する軸線方向ストラットどうしの間のリングセグメントが、ジグザグパターンとして形成されている。
【
図3B】例示としての第1のリング構造を示す図であって、隣接する軸線方向ストラットどうしの間のリングセグメントが、ジグザグパターンとして形成されている。
【
図4A】例示としての第2のリング構造を示す図であって、隣接する軸線方向ストラットどうしの間のリングセグメントが、S字形状パターンとして形成されている。
【
図4B】例示としての第2のリング構造を示す図であって、隣接する軸線方向ストラットどうしの間のリングセグメントが、S字形状パターンとして形成されている。
【
図5A】例示としての第3のリング構造を示す図であって、隣接する軸線方向ストラットどうしの間のリングセグメントが、コイルスプリングとして形成されている。
【
図5B】例示としての第3のリング構造を示す図であって、隣接する軸線方向ストラットどうしの間のリングセグメントが、コイルスプリングとして形成されている。
【
図6A】拘束デバイスの内部におけるバルーンの膨張の3つのステージにおいて、本発明による膨張デバイスを示す横断面図である。
【
図6B】拘束デバイスの内部におけるバルーンの膨張の3つのステージにおいて、本発明による膨張デバイスを示す横断面図である。
【
図6C】拘束デバイスの内部におけるバルーンの膨張の3つのステージにおいて、本発明による膨張デバイスを示す横断面図である。
【
図7A】従来技術によるデバイスに関しての血管損傷についての有限要素解析を示す図である。
【
図7B】本発明によるデバイスに関しての血管損傷についての有限要素解析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、典型的には動脈と静脈とを含めた血管といったような、より典型的には冠状動脈や末梢動脈といったような、生体管腔のうち、疾病を患ったまたは遮られたまたは閉塞されたまたは狭窄した管腔を処置するためのデバイスを提供するものである。このデバイスは、障害部位に対してのおよび管腔壁に対しての損傷を最小化しつつ、また、血管の損傷および傷害というリスクを低減しつつ、閉塞された血管を拡径させる。バルーンカテーテルのバルーン上へと「弾性的な」拘束構造(constraining structure,CS)を配置することにより、バルーンの膨張時に、バルーンの膨張が制御され、さらに、バルーンが収縮される際には、バルーンの折り畳みが補助される。CSは、バルーンが完全に膨らまされた時のバルーンの最大直径よりも小さな直径へと拡張し得るよう構成されている。CS構造は、膨張に対して径方向の抵抗をもたらし、これにより、バルーンを拘束し得るとともに、バルーンから管腔壁に向けて印加される内部高圧を分配させることができるあるいは緩衝することができる。これにより、CSは、制御性が高くなおかつ損傷の少ない拡径プロセスをもたらすことができる。典型的には例えばポリアミドまたはポリエーテルブロックアミドといったような膨張不可能な材料から形成されたバルーンは、好ましくは、膨張不可能なものあるいは半ソフトなものであり、典型的な膨張圧力範囲内において10%以下という伸び可能性を有しており、十分に大きな完全膨張サイズを有している。これにより、複数の領域がCS内の通路を通して突出し、複数の突出領域を形成し、これら突出領域が、障害部位に係合して障害部位を拡径させる。
【0021】
CSは、バルーンの先端部および/または基端部のところにおいてカテーテルシャフトに対して、連結することができる、あるいは、接続することができる。これに代えて、CSは、単純なカバーまたは拘束部材を使用することによって、固定的な取付を行うことなく、バルーン上において浮かすことができる。CSは、好ましくは、バルーンの膨張時には、その長さを維持し得るよう構成されている。これにより、CSとバルーンとの間の軸方向の相対移動を制限することができる。CSは、適切なプロセスによって適切な構成でもって、様々な材料から製造することができる。CSは、例えばニッケルチタン合金(すなわち、ニチノール(登録商標))といったような好ましくは弾性金属のような金属から、および/または、様々なポリマー(例えば、ナイロン)から、形成することができる。例えば、CSは、ワイヤから構成することができる。あるいは、CSは、チューブやシースや他の態様とされた材料からレーザーカットすることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態においては、CS構造は、バルーン上に配置され、バルーンの膨張時には膨らまされる。CSは、バルーンよりも小さな直径へと拡径される。これにより、円筒形ケージ内において、バルーンの膨張を制限する。しかしながら、バルーンの複数の部分は、CSがなすケースの開口を通して膨張を維持する。これにより、制御された膨張パターンを形成するとともに、剪断力を低減するあるいは除去する。
【0023】
CSが最大直径(この最大直径は、最大に拡径されたバルーンの直径よりも小さい)へと到達した後には、バルーンは、CSの開口を通しての膨張を継続する。これにより、デバイスの表面に、突出領域(山)とチャネル(谷)とからなるトポグラフィー(すなわち、凹凸形状)を形成する。この際、チャネルがなすパターンは、CSの幾何形状によって規定される。CSは、
図6A〜
図6Cおよび
図7を参照して詳細に後述するように、制御された膨張プロセスに寄与し、膨張しすぎを回避し、さらに、血管壁上へと剪断力および一様な高圧が印加されることを最小化する。
【0024】
さて、
図2A,
図2B1,
図2B2に示すように、本発明の原理に基づいて構成された例示としての拘束構造14は、複数の軸方向ストラット16と、軸方向において互いに離間して配置されなおかつ径方向に膨張可能とされた複数のリング18と、を備えている。バルーン12およびカテーテル10が、非拡径状態とされたときには(
図2B1に図示されている)、バルーンは、
図6Aに明瞭に図示されているように(後述する)、複数のローブが互いにオーバーラップされた状態で、折り畳まれている。拘束構造14は、全体的に、円筒形の幾何形状を有している。その円筒形状の直径は、収縮状態のバルーン12をカバーし得るに十分な程度の大きさとされている。
【0025】
バルーン12を膨らませたときには、
図2Aおよび
図2B2に示すように、径方向に膨張可能なリング18が、バルーンの力に応答して、膨張する。しかしながら、リングは、バルーンの膨張または拡径が継続されたにしてもそれ以上には拡径し得ないような最大直径に到達するように、構成されている。軸方向のストラット16が、径方向に膨張可能なリング18に対して取り付けられていることによりあるいはそのようなリング18に対して連結されていることにより、ストラットの径方向外向きの移動距離も、また、リングの最大直径によって規定される距離へと制限される。よって、バルーンが、径方向に膨張可能なリング18の最大直径よりも大きな完全拡径直径を有していることにより、バルーンが完全に膨らまされたときには、複数の軸方向チャネル20および複数の周縁方向チャネル22が、バルーン表面に形成される。複数の突出領域24(
図2B2に図示されている)が、隣接する複数の軸方向ストラット16と隣接する複数の径方向に膨張可能なリング18との間の開口内にあるいはそれらの間の隙間内に、形成される。上述したような本発明の利点をもたらすのは、これら突出領域24である。
【0026】
拘束部材14の軸方向ストラット16および径方向に膨張可能なリング18は、単純な直線状の梁または部材として図示されている。それらストラット16およびリング18が、いくらかの弾性または伸長可能性を有する必要があることは、理解されるであろう。これにより、バルーンの径方向膨張に適合し得るとともに、リングのサイズ増大に適合することができる。軸方向ストラット14は、基端部および先端部の一方または双方においてカテーテルシャフト26に沿って自由にスライドし得ることのために、フレキシブルであることだけが必要とされる。一方、リング18は、バルーンの直径が増大する際に、周縁方向の寸法を延伸させ得る能力を有していなければならない。ただし、上述したように、リングは、それ以上は拡径し得ないような最大直径を有している。最も単純には、軸方向ストラット16および/または径方向に膨張可能なリング18は、例えば弾性ポリマーやコイルスプリング等といったような、張力が印加されたときに延伸され得る弾性材料から、形成することができる。しかしながら、そのような材料および/または構造が、径方向に膨張可能なリングと一緒に使用される場合には、径方向の膨張制限をもたらすための膨張不可能なまたは延伸不可能な部材が、個別的に設けられなければならない。
【0027】
これに代えて、軸方向ストラット16および/または径方向に膨張可能なリング18は、典型的には上述したようなニッケルチタン合金のような金属といったような全体的に延伸不可能な材料から形成することができ、なおかつ、張力が印加された際に伸長し得る特徴物またはパターンを付設することができる。例えば、
図3Aおよび
図3Bに示すように、径方向に膨張可能なリング18は、ジグザグパターンでもって形成することができる。これにより、リング18は、
図3Aに示すような短縮された構成から、
図3Bに示すような完全に伸長された構成へと、引き伸ばすことができる。図示されていないけれども、軸方向ストラットは、軸方向の延伸を可能とし得るような同じ幾何特徴物を使用し得ることは、理解されるであろう。
図4Aおよび
図4Bに示すように、リング18は、短縮された構成(
図4A)から
図2Aおよび
図2B2に示すような完全に拡径された直径に対応する完全に伸長された構成(
図4B)への延伸を可能とし得るよう、S字形状または蛇行した構造を有することができる。これに代えて、リング18は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、コイル構成を有することができる。この場合、コイルは、リングが
図5Aに示すような最小直径とされたときには、短縮された構成をとることとなり、また、
図5Bに示すように、完全に拡径された構成に適合し得るように、延伸されることとなる。しかしながら、コイルスプリングは、上述した弾性ポリマーの実施形態の場合と同様に、大部分の例において、所望の最大限界を超えての拡径を防止し得るよう、個別の部材を必要とする。
【0028】
図6A〜
図6Cに示すように、バルーン12と拘束部材14とを付帯したカテーテル10は、従来技術の場合と同様に、血管BV内においてプラークPの領域へと導入される。バルーン12および拘束部材14が、ターゲット位置へと到達すると、バルーンが膨らまされ、これにより、拘束部材14が、
図6Bに示すように拘束部材14が最大直径へと到達するまで、径方向に拡径される。拘束部材14が最大直径へと到達した後には、拘束部材14は、それ以上に拡径することはない。しかしながら、バルーン12のうちの、隣接する複数の軸方向ストラットと隣接する複数の径方向に膨張可能なリングとの間に位置した部分は、拡径を継続し、最終的には、
図6Cに示すような最大拡径状態へと到達する。
図6Cにおいては、完全に形成された複数の突出領域24が存在している。上述したように、バルーン12が典型的には膨張不可能な材料から形成されていることのために、バルーンが最大サイズに到達した後には、さらなるバルーン膨張によっても、バルーンサイズが増大することはない。
【0029】
図7Aおよび
図7Bは、管腔壁上に印加された力についての有限要素解析を示すものであって、従来技術によるバルーンの場合(
図7A)と、本発明によるデバイスの場合(
図7B)と、を比較している。従来技術によるバルーンは、一様な大きな歪みを示している。これに対し、本発明によるデバイスは、組織とバルーンとが接触していない領域においては、延伸を示している。一様なバルーン圧力が、交互的な圧力パターンへと置き換えられている。そのような交互的なパターンは、血管の損傷を低減する。
【0030】
本発明を使用することにより、とりわけ(限定するものではないけれども)血管またの管腔の状況を処置するのに適しているような、例えば抗増殖性薬剤や細胞分裂抑制薬のような、また、例えば抗生物質や抗血小板薬やホルモン等も含み得る他の物質のような、様々な薬剤または様々な活性物質を搬送することができる。
【0031】
活性物質は、例えばバルーン表面やCS表面やあるいはそれらの双方上に直接的にコーティングするといったような、様々な構成や手法によって、配置することができる。バルーン上やCS上やあるいはそれらの双方上に配置されたマトリクス/キャリア内に組み込むことができる。損傷の小さな拡径と、活性物質の放出と、を組み合わせることは、大部分の人にとって、薬剤溶出ステントよりも優位である。それは、良好な長期特性を提供しつつも、恒久的な埋設の必要性を最小化するからである。
【0032】
一実施形態においては、バルーン表面は、薬剤によってコーティングされる。バルーンの膨張時には、バルーンのうちの薬剤によってコーティングされた外表面に形成された突出領域が、血管壁に対して係合し、血管壁内へと薬剤を押し込む。これにより、処置サイトへと効果的に薬剤を搬送することができる。
【0033】
薬剤搬送は、多様な手法を使用して行うことができる。限定するものではないけれども、バルーンをコーティングすることによって、あるいは、CS構造をコーティングすることによって、あるいは、バルーンとCS構造との双方をコーティングすることによって、行うことができる。薬剤によるコーティングは、直接的に行うことも、また、マトリクスまたはマイクロカプセルという態様とされたキャリアを使用することによって行うことも、できる。
【0034】
上記においては、本発明の好ましい実施形態について十分に説明したけれども、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を逸脱することなく、様々な代替可能な構成や、様々な修正や、様々な追加的な構成や、様々な置換した構成、が可能である。
【符号の説明】
【0035】
10 カテーテル
12 バルーン
14 拘束構造
16 軸方向ストラット
18 リング
20 軸方向チャネル
22 周縁方向チャネル
24 突出領域
26 カテーテルシャフト