【実施例】
【0079】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態であるが、本発明を限定することを意図するものではない。
【0080】
実施例1
式IIのポリペプチド機能化ツイン塩基化合物の合成
以下の合成において使用されるすべての試薬および溶媒は、アルドリッチ社、ノバビオケム社、バッケム社、フルカ社、アドバンスドケムテック社のフィッシャーサイエンティフィック社から入手し、さらに精製することなく使用した。試薬グレードのジクロロメタン、メタノール、およびエーテルは、MBraun溶媒精製システムで精製した。ポリペプチドRSR機能化ツイン塩基対モジュール、すなわちKRSR−(C∧G)
2、およびアミノブタン機能化ツイン塩基対モジュール、すなわちAB−(C∧G)
2は、
図1A〜
図1Dに示され、それぞれ
図2Aおよび
図2Bに示される手順に従って合成した。
図1E〜
図1Gは、(E)ツイン塩基RNT TB−KRSR;(F)TBL;(G)ツインC∧G塩基が、ロゼットナノチューブへと自己組織化するプロセスを示す。
【0081】
標準的なFmoc(各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Carpino他、J.Org.Chem.1972;37(22):3404−3409、およびAtherton他、J.Chem.Soc、Chem.Commun.、1978:537−539を参照のこと)固相ペプチド合成を使用して、ワング(Wang)樹脂担持KRSRペプチドを調製した。SPPS(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Merrifield、J.Am.Chem.Soc.1963;85(14):2149−2154を参照のこと)は、迅速なペプチド合成を好収量で可能にする簡便な手順である。この方法は、液相ペプチド合成において一般的な、溶解性、精製、およびラセミ化の問題を排除する。一般に、最初に、保護アミノ酸Fmoc−Lys(Boc)−OHのカルボキシ基を、ワング樹脂上のヒドロキシル基にカップリングした。樹脂に固定されたリジンのFmoc基を、塩基性条件下で除去し、その後、第二のアミノ酸Fmoc−Arg(PBf)−OHと反応させた。同一の手順を、その後のFmoc−Ser(tBu)−OH、Fmoc−Arg(PBf)−OH、およびFmoc−γ−Abu−OHとのアミノ酸カップリングにおいて繰り返した。ワング樹脂担持ペプチド上の末端Fmoc基を除去し、得られた遊離アミンを還元的にC∧Gアルデヒドにカップリングした。強酸性条件下での脱保護および樹脂からの切断により、所望のモチーフKRSR−(C∧G)
2を得た。
【0082】
図2Aを参照して、より具体的には、第一のアミノ酸を樹脂に固定するために、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、8mL)中の、Fmoc−アミノ酸(4当量)、p−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(1当量)を、ワング樹脂(1当量)を含む使い捨てのプラスチック製シリンジに注ぎ入れた。樹脂を20分間活性化した後、Ν,Ν’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC、4当量)を容器に添加し、反応混合物を6時間(hr)振盪した。次いで樹脂を真空下で濾過し、各10mLのCH
2C1
2、MeOH、DMFで洗浄し、次いで50:50の無水酢酸/ピリジン(5mL、10分間を1回、および20分間を2回)で処理して、未反応のヒドロキシル基をキャップした。次に、樹脂を濾過し、DMF、CH
2C1
2、およびMeOHで洗浄し(10mLで3回)、真空下で乾燥させた。樹脂試料上でフルベン−ピペリジン付加物を301nmで分光学的に定量化することにより、置換度(0.52mmol/g)を決定した。
【0083】
続くアミノ酸を以下の様にカップリングした。20%のピペリジン/DMF中で樹脂をインキュベートすることにより(5mL、5分間を1回、30分間を1回)、Fmoc保護基を除去した。得られたペプチジル樹脂を、各10mLのCH
2C1
2、MeOH、DMFで洗浄した。N−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(DIEA、8当量)を、DMF溶液中の、アミノ酸(樹脂添加量に対して4当量)と2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU、4当量)との混合物に添加し、混合物を3分間(min)振盪することにより活性化した。次に、得られた混合物をペプチジル樹脂に添加し、3時間(h)振盪した。次いでペプチジル樹脂を排水して、各10mLのCH
2CI
2、MeOHおよびDMFで洗浄した。遊離アミノ基が存在しないことを、カイザー試験(Kaiser test)により確認した(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kaiser他、Anal.Biochem、1970、24、595−598を参照のこと)。20%のピペリジン/DMF中で、樹脂をインキュベートすることにより(5mL、5分間を1回、30分間を1回)、Fmoc保護基を除去した。得られたペプチジル樹脂を、各10mLのCH
2C1
2、MeOH、およびDMFで洗浄した。
【0084】
KRSR−(C∧G)
2を調製するために、ワング樹脂担持KRSRペプチドを、C∧Gアルデヒド1(
図2A)にカップリングした。C∧Gアルデヒド1(樹脂添加量に対して4当量)を、1,2−ジクロロエタン(1,2−DCE、5mL)中のペプチジル樹脂に添加し、混合物を4時間振盪した。次いで、NaBH(OAc)
3(2当量)およびDIEA(4当量)を混合物に添加して混合物を36時間振盪し、その後さらに2当量のNaBH(OAc)
3および4当量のDIEAを添加して、さらに36時間振盪した。樹脂を排水し、得られたペプチジル樹脂を、CH
2C1
2、MeOH、およびDMF(各10mLで4回)で洗浄し、真空下で乾燥させた。樹脂からの切断および脱保護は、樹脂を95%のTFA/水で2時間処理することにより達成された。ビーズをセライトで濾過し、得られた濾液を粘稠液に濃縮した(ロータリーエバポレータ)。次いで冷たいEt
2Oを、遠心分離により単離された未精製KRSR−(C∧G)
2の沈殿に添加した。上清液をデカンテーションにより除去した。残った固体をEt
2O中で再懸濁し(15mLを2回)、超音波処理し、遠心分離した。沈殿物を乾燥させて、オフホワイトの粉末である所望のKRSR−(C∧G)
2を得た。
【0085】
C∧Gアルデヒドおよびt−ブチル−4−アミノブチルカルバメートから、2回の連続した還元的アミノ化反応の後にすべての保護基を除去する事によりモジュールAB−(C∧G)
2を調製するために、合成スキーム(
図2B)を行った。具体的には、AB−(C∧G)
2を調製するために、市販のアミン2(1.00g、1.57mmol)を、1,2−DCE(10mL)中のC∧Gアルデヒド1(0.148g、0.784mmol)溶液に、窒素下、室温で添加し、30分間撹拌した。NaBH(OAc)
3(0.395g、1.88mmol)を添加し、得られた混合物をさらに15時間撹拌した。反応混合物をCH
2C1
2(50mL)で希釈し、次いで水(10mL)、鹹水(15mL)で洗浄し、Na
2S0
4で乾燥し、濃縮した(ロータリーエバポレータ)。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(0〜10%のMeOH/EtOAc)の後、白色泡状の化合物3(1.36g、93%)が得られた。次いでC∧Gアルデヒド1(0.100g、0.155mmol)を、1,2−DCE(10mL)中のモノマー3(0.126g、0.155mmol)溶液に窒素下、室温で添加し、30分間撹拌した。NaBH(OAc)
3(0.039g、0.186mmol)を添加し、得られた混合物をさらに15時間撹拌した。反応混合物をCH
2C1
2(50mL)で希釈し、水(10mL)、鹹水(15mL)で洗浄し、Na
2S0
4で乾燥し、濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(0〜50%のEtOAc/ヘキサン)の後、白色泡状の化合物4(0.204g、91%)が得られた。化合物4(0.106g、0.074mmol)を、95%のTFA/チオアニソール(10mL)中で72時間撹拌した。次いでEt
2O(60mL)を反応混合物に添加し、生じた沈殿物を遠心分離で沈下させた。残った固体をEt
2O中に再懸濁し、超音波処理し、遠心分離で沈下させた。この手順を、Et
2O洗浄液中にUV活性生成物が(シリカプレート上にスポットすることにより)検出されなくなるまで繰り返した。得られたAB−(C∧G)
2のTFA塩を乾燥させ、次いで1Mの塩酸(10mL)中に溶解し、その後減圧下で溶媒を除去した。この手順を二度繰り返した後、固体を真空下で72時間乾燥させ、定量的収量のオフホワイト粉末のAB−(C∧G)
2のHCl塩を得た。
【0086】
実施例2
水中でのロゼッタナノチューブ(RNT)の自己組織化
機能化ツイン塩基AB−(C∧G)
2から組織化したRNT、およびRSR−(C∧G)
2から組織化したRNT(それぞれAB−RNT
tおよびRSR−RNT
tと呼ぶ)のストック溶液(1mg/mL)は、対応するモチーフ(TFA塩として単離されたAB−(C∧G)
2またはHCl塩として単離されたAB−(C∧G)
2)を脱イオン水(dH
2O)中に溶解することにより調製した。次いでストック溶液を、比較目的のために、0.1mg/mL溶液および0.01mg/mL溶液に希釈した。RGD−C∧GおよびK−C∧Gは、先に報告されているとおりに調製した(各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Fenniri他、J.Am.Chem.Soc.2001;123:3854−3855、およびZhang他、Biomaterials 2009;30(7):1309−1320を参照のこと)。K−RNT
mは、機能化単一塩基K−C∧Gから組織化されたRNTを指す。K
99/RGD
1−RNT
mおよびK
95/RGD
5−RNT
mは、それぞれ99%および95%のモル比で、単一塩基K−C∧Gと単一塩基RGD−C∧Gとから共構築されたRNTを指す。すべてのRNT溶液は、0.22μmシリンジフィルターで濾過した。
【0087】
実施例3
KRSR−(G∧C)
2およびAB−(G∧C)
2の特性解析
KRSR−(C∧G)
2、AB−(C∧G)
2、およびこれらの中間体分子のすべてを、
1H/
13C NMR分光法、高解像度エレクトロスプレーイオン化質量分析法(HR EI−MS)、および元素分析によって特性解析を行った。
1H/
13Cスペクトルは、内部基準として溶媒を用いて、カナダ国立ナノテクノロジー研究所またはアルバータ大学化学科のVarian Inova NMR分光計(500MHzまたは600MHz)で記録した。NMRデータは、以下のように示す。化学シフト値、ピークの帰属、多重度、結合定数、および積分値。質量スペクトルは、アルバータ大学化学科の質量分析研究室から得た。以下の表1および表2に、これらのデータを要約する。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
透過型電子顕微鏡(TEM)画像を用いて、種々の単一塩基RNT形態およびツイン塩基RNT形態の特性解析を行った。前述のとおり(参照により本明細書に組み込まれる、Zhang他、J.Org.Chem.1972;37(22):3404−3409を参照のこと)、炭素コーティングされた400メッシュの銅グリッド(EM Sciences社、ペンシルバニア州)を、各RNT(0.1mg/mLまたは0.01mg/mL)のdH
2O液滴上に2分間浮かべ、RNTを吸収させた。次いでグリッドをdH
2O液滴上に20秒間置いて過剰な未付着RNTを除去し、その後、2%の水性酢酸ウラニルの第二の液滴上に20秒間置いてRNTを陰性染色した。次いでグリッドを濾紙で乾燥させ、120kVの加速電圧下、Philips EM410で画像化した。KRSRペプチド(C∧G塩基にカップリングしていない)もまた、対照実験として画像化した。
【0091】
C∧Gモチーフ上の側鎖に関わらず、得られたすべてのRNTは、高アスペクト比のナノ構造を示した(
図3)。TEM画像により、ツイン塩基外面に結合したより嵩高いKRSR部分に起因して、KRSR−RNT
tの直径が、AB−RNT
t(3.5±0.2nm)(
図3C〜D)と比較してより大きいこと(4.4±0.2nm)(
図3A〜B)が示された。K−RNT
mおよびK
95/RGD
5−RNT
m(
図3E〜F)は、直径が3.4±0.3nmであった。想定どおり、KRSRペプチドを有する対照試料は、いずれの1D形態も示さなかった(
図3G)。
【0092】
走査型電子顕微鏡(SEM)画像化のため、ツイン塩基(0.5mg/mL)を室温で約2分間超音波処理し、dH
2O中に溶解した。溶液を0.25μmワットマン濾過膜で濾過し、(自己組織化を促進するため)沸騰するまで加熱し、一日熟成させた。画像化の前に、溶液をdH
2Oで0.025mg/mLに希釈した。SEM試料は、炭素コーティングされた400メッシュの銅グリッドを、希釈RNT溶液の液滴上に10秒間浮かべることにより調製した。グリッドをブロットし、2%酢酸ウラニルの液滴上に10秒間浮かべた。次いでRNTコーティングされたグリッドを風乾し、ホットプレート(100℃)上で15分間加熱し、その後、高解像度Hitachi S−4800SEMで画像化した。
【0093】
原子間力顕微鏡(AFM)画像化のため、希釈RNT溶液(0.05mg/mL)一滴を、新たに切断した雲母基板(1cm
2)上に10秒間置き、濾紙を使用して余分な溶液をブロットした。Eスキャナーを備えたデジタル・インスツルメンツ社/ビーコ・インスツルメンツ社のMulti Mode Nanoscope IV AFMをタッピングモードで使用して、試料表面を画像化した。4.5N/mの低ばね定数を有するシリコンカンチレバー(米国マイクロマッシュ社)、0.5〜1Hzの走査速度、および1Vの振幅設定値を用いた。
【0094】
SEM画像およびAFM画像により、KRSR−RNT
tおよびAB−RNT
tの両方について、高密度のナノチューブネットワークが明らかになった(
図4)。KRSR−RNT
tの平均長は、AB−RNT
tの平均長より短く、ペプチドの嵩高さがスタッキングの程度に影響を与え、それによりRNTの長さにも影響を与えることが示唆される。
【0095】
実施例4
チタン基板上のRNTコーティングの調製
チタン(Ti)(1cm×1cm×0.05cm)(アルファ・エイサー社、Ti foil)およびカバーガラスを、アセトンに15分間浸し、アセトン中で15分間超音波処理し、dH
2Oですすいだ。次いでこれらを70%エタノール中に浸して超音波処理し、dH
2Oですすいだ。最後に、これらをさらに15分間dH
2O中に浸して超音波処理して、すすいだ。次いでガラスを1MのNaOH中で1時間エッチングし、dH
2Oで完全にすすいだ。すべてのチタンおよびカバーガラスを、一晩オーブンで乾燥させ、滅菌のために高圧滅菌処理した。細胞を播種する前日に、種々のRNT(0.01mg/mL)溶液およびKRSRペプチド(0.01mg/mL)溶液で、清浄したチタン基板を室温で45分間コーティングした。次いでこれらを溶液から取り出し、一晩風乾した。
【0096】
実施例5
骨芽細胞、繊維芽細胞、および内皮細胞の培養
ヒト胎児骨芽細胞株(ATCC、CRL−11372、バージニア州)を、10%ウシ胎児血清(FBS、ハイクロン社、ユタ州)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S、ハイクロン社、ユタ州)を補充した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、インビロジェン社)中、標準的な細胞培養条件下(37℃、加湿、5%CO
2大気中)で培養した。実験では、集団数8〜11までの細胞を、さらに特性解析することなく使用した。
【0097】
ラットの皮膚線維芽細胞株(FR、ATCC、CRL−1213)を、10%FBSを補充した、イーグル最小必須培地(EMEM、ATCC 30−2003)中、標準的な細胞培養条件下で培養した。ラット大動脈内皮細胞(RAEC、ベックテクノロジーズ社(VEC Technologies))を、MCDB−131完全培地(ベックテクノロジーズ社)中、標準的な細胞培養条件下で培養した。培養中、線維芽細胞は、集団数6〜9で使用し、内皮細胞は、集団数6〜11で使用した。細胞培地は、一日置きに交換した。
【0098】
実施例6
骨芽細胞、繊維芽細胞、および内皮細胞の接着
骨芽細胞、線維芽細胞、および内皮細胞を、3500細胞/cm
2の密度で基板上に播種し、細胞培養培地(具体的には、骨芽細胞については、FBSおよびP/Sを補充したDMEM、線維芽細胞については、FBSを補充したEMEM、内皮細胞については、MCDB−131完全培地)中で4時間インキュベートした。次いで、リン酸緩衝食塩水(PBS)で、基板を3回すすぎ、未接着の細胞を除去した。残った細胞を、10%標準緩衝ホルムアルデヒド(フィッシャーサイエンティフィック社)を10分間、0.1%TritonX−100(シグマアルドリッチ社、ミズーリ州)を5分間使用して固定した。次いで、細胞伸展を調べるため、細胞をローダミン・ファロイジン(F−アクチンフィラメントを染色、モレキュラープローブ社)で染色し、さらにDAPI(インビトロジェン社)で染色した。蛍光顕微鏡(Axiovert 200M、ツァイス社)を使用して細胞を観察し、各試料について5つの異なる領域を画像化した。次いでImage Pro Analyzerを用いて細胞を計測して細胞密度を決定した。全ての細胞実験は、各基板について三重測定で3回繰り返した。
【0099】
データは、平均値±平均値の標準誤差で表し、スチューデントt検定で分析してペアワイズ比較を行った。p<0.1で統計的有意性があるとした。
【0100】
実施例7
骨芽細胞の接着は、コーティングされていない基板上と比べて、コーティングされた基板上でより大きい
チタン上にコーティングされたRNTは全て、コーティングされていないチタンと比較して、4時間後、有意に骨芽細胞の接着を増強した(p<0.01)(
図5)。ナノチューブKRSR−RNT
tは、K−RNT
m、AB−RNT
t、およびコーティングされていないチタンと比較して、骨芽細胞の接着を大きく改善した。コーティングされていないチタンと比較して、0.01mg/mLのKRSR−RNT
tでコーティングされたチタンおよびK
95/RGD
5−RNT
mでコーティングされたチタンは、骨芽細胞の接着をそれぞれ122%および124%改善した。実際、KRSR−RNT
tおよびK
95/RGD
5−RNT
mは、チタン上で骨芽細胞密度を最も大きく促進した。さらに、チタン上のKRSRペプチドのみでも、コーティングされていないチタンと比較して、骨芽細胞の細胞接着が促進された。AB−RNT
t、K
99/RGD
1−RNT
m、およびK−RNT
mの間に、統計的有意差はなかった。
【0101】
さらに、チタンがKRSR−RNT
tでコーティングされた場合、KRSRでコーティングされた場合より多くの骨芽細胞がチタンに接着した。具体的には、KRSR−RNT
tでコーティングされたチタン上の骨芽細胞の接着は、KRSRペプチドのみでコーティングされたチタン上の骨芽細胞の接着よりも、84.4%高かった。さらに、骨芽細胞は、RNTコーティングされたチタン上で、コーティングされていないチタンと比較して、より伸張した糸状仮足を伴いより伸展した(
図6)。
【0102】
実施例8
コーティングされた基板は、繊維芽細胞の接着を増大しない
コーティングされていないチタンと比較して、KRSR−RNT
t、K
99/RGD
1−RNT
m、K−RNT
m、およびAB−RNT
tは、4時間後の繊維芽細胞の接着を変化させなかった(
図7)。AB−RNT
tを、HClおよびAB−(C∧G)
2のTFA塩から構築した。これらの2つの型のRNTによる線維芽細胞の接着における差異は、これらの対イオンが異なることと関係している可能性がある。骨芽細胞の接着に対する影響とは対照的に、KRSRペプチドは、チタン上の線維芽細胞の接着を増強しなかった。本発明のある態様によれば、KRSRを取り込んだナノチューブは、細胞選択性および整形外科用途における有用性をもたらす。最後に、全ての基板上において、円形の線維芽細胞からの多くの小さな糸状仮足の伸長が見られ、チタンコーティングに関わらず、線維芽細胞が伸展することを示す(
図8)。
【0103】
実施例9
ある種のRNTは、内皮細胞の接着を増大する
図9に示されるように、RNT(KRSR−RNT
tを除く)コーティングされたチタン上で、コーティングされていないチタンと比較して、4時間後、有意に内皮細胞密度が高くなった。また、AB−RNT
t(HCl)でコーティングされたチタンは、他のすべての基板と比較して、内皮細胞の接着を大きく促進した。さらに、KRSR−RNT
tでコーティングされたチタンと比較して、K−RNT
mでコーティングされたチタンおよびB−RNT
t(HCl)でコーティングされたチタン上に、より多くの内皮細胞が接着した。KRSR−RNT
tでコーティングされたチタンおよびKRSRペプチドでコーティングされたチタンは、内皮細胞の接着を増強しなかった。本発明のある態様によれば、KRSRを取り込んだナノチューブは、選択的に骨芽細胞の接着を促進する。内皮細胞の伸展した形態を
図10に示す。
図10により、K−RNT
mおよびRGD−RNT
mの内皮細胞接着に対する優れた細胞適合特性、ならびにKRSR−RNT
tの骨芽細胞接着のみに対する選択性が示される。したがって、多数のK側鎖またはRGD側鎖を有するナノ構造のRNTコーティングの薄膜により、通常のチタンの表面化学および表面粗さが改変され、内皮細胞の接着強化に有利な環境がもたらされる。本発明のある態様によれば、内皮細胞の接着および整形外科用インプラント周囲に形成される骨内の新生血管の成長を促進する、K側鎖またはRDG側鎖を含んでナノチューブが形成される。ナノチューブはまた、骨芽細胞の接着を促進するKRSR側鎖を含んでいてもよい。K側鎖、RDG側鎖およびKRSR側鎖の組み合わせを有するナノチューブは、骨芽細胞および内皮細胞の選択的な接着を促進し、整形外科用途において有用な新しい骨組織の形成をもたらす。
【0104】
実施例10
ヒドロキシアパタイトナノ粒子の合成
ヒドロキシアパタイト(HA)ナノ粒子を、以下の式に従って、NH
4OH溶液(pH>10)中で(NH
4)
2HPO
4およびCa(NO
3)
2を撹拌することにより合成した。
10Ca(NO
3)
2+6(NH
4)
2HPO
4+8NH
4OH=Ca
10(PO
4)
6(OH)
2+6H
2O+20NH
4NO
3
【0105】
サイズ分布を狭くするため、反応を4℃で行った。まず、30mLの0.6Mリン酸アンモニウム溶液を、NH
4OHにより調整した300mLの塩基性の水(pH>10)に添加した。次いで30mLの0.6Mカルシウム硝酸塩を3mL/分で滴加した。10分間撹拌した後、沈殿物を5000rpmで5分間遠心分離することにより、3回洗浄した。次いで、HA沈殿物をテフロンライナー中で、200℃で20時間水熱処理した。水熱処理後、沈殿物を脱イオン水で1回洗浄し、80℃のオーブンに一晩置いた。
【0106】
実施例11
ナノチューブを含有複合物の合成
ナノチューブ複合物、機械的強度および/または表面粗さを与えるための化合物、ならびにポリマーマトリックスを、以下のように調製した。様々なHAナノ粒子濃度(2%、10%、20%)の複合物の重合プロセスを、超音波処理または60℃のオーブンによって、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)により開始した。具体的には、5mLのHEMA、脱イオン水、およびHAナノ粒子粉末の混合物を、20分間超音波処理し、その後、0.01mg/mLの式IIのTBL分子(Xは、窒素、R
1は、メチル、R
2は、存在せず、Yは、存在しない)、および3mg/mLのAIBN開始剤を添加した。最後に、試料が完全に固化するまで、超音波処理器または60℃のオーブンで複合物を加熱した。
【0107】
オーブン、水浴、超音波処理、またはマイクロ波を含む4つの加熱方法による、TBL/HA/pHEMA複合物(100%HEMA、2%HA、3mg/mLのAIBN、0.01mg/mLの式IIのTBL分子(Xは、窒素、R
1は、メチル、R
2は、存在せず、Yは、存在しない))の重合時間を比較した。次いで、超音波処理(60℃、強度5)を使用した試料(チューブあたり400μL)、およびマイクロ波処理(700W、50秒、出力5)を使用した試料(チューブあたり400μL)の温度プロファイルを、デジタル温度計を使用して試験した。
【0108】
表1に示されるように、従来のオーブンおよび水浴と比較して、超音波処理およびマイクロ波処理は、迅速な熱伝導プロセスにより、固化時間を40分超から数分へと減少させることができる。
【表3】
【0109】
図11に示されるように、超音波処理(
図11a)またはマイクロ波加熱(
図11b)による試料の温度プロファイルは、60〜70℃の類似した温度範囲にある。水を含まない複合物に関しては、開始段階から固化までのウィンドウ時間は、非常に短い(約1分間)。
【0110】
時間および最終形態を含む固化特性は、複合物中の1つの成分(AIBN開始剤または水の濃度)を変化させて調べることにより調べた。試料(400μL)をBDシリンジに入れ、水浴超音波処理器中、60℃で加熱した。次いで固化時間および注入形態を記録した。
【0111】
図12は、水の量(
図12a)およびAIBN開始剤の濃度(
図12b)の関数としての固化時間の結果を示す。固化時間は、水の含有量の増加またはAIBN開始剤濃度の減少に伴って長くなった。さらに、低AIBN濃度と高水含有量の組み合わせにより、複合物の機械的強度が減少し、ウィンドウ時間が増加した。
【0112】
実施例12
AFMによる走査
AFM実験のため、実施例11のTBLを、メタノール中で0.025mg/mLに希釈した。清浄な雲母基板を準備し、0.05〜0.25mg/mLの溶液を2000rpmで20秒間回転塗布することにより、試料を基板上に被覆した。試料表面を、Eスキャナーを備えたデジタル・インスツルメンツ社/ビーコ・インスツルメンツ社のMulti Mode Nanoscope IV AFMを使用して観察した。本実験における最適高さプロファイルを得るため、4.5N/mの低ばね定数を有するシリコンカンチレバー(米国マイクロマッシュ社)をタッピングモードで使用した(TM−AFM)。表面からの明瞭な画像を得るため、測定の間、低い走査率(0.5〜1Hz)および振幅設定点(1V)が選択された(Moralez他、2005)。
【0113】
図13は、実施例11のツイン塩基リンカーから形成されたナノチューブの原子間力顕微鏡画像である。
【0114】
実施例13
SEM画像化
試料表面(100%HEMA、3mg/mLAIBN、0.01mg/mLの実施例11のTBL、HA(2%、10%、20%))をまず、金層でコーティングした。次いで、複合物の表面特性解析および孔径を、200nmおよび100μmのスケールで、SEM(LEO 1530−VP)により観察した。
【0115】
図14に示されるように、複合物中のHA比率が増加すると、より多くのHAナノ粒子が表面にクラスター化し、その結果、ナノ粗さがより大きくなる。表面トポグラフィーは、タンパク質および細胞の接着、細胞移動、配向性、形態、および遺伝子発現にさえ関連するため、HAナノ粒子によりもたらされるナノ粗さにより、骨とインプラントとの間の骨結合が促進される。
【0116】
図15に示されるように、複合物は、多孔性を示し、これにより、移植された複合物中への組織成長、および移植された複合物を介した組織成長が促進される。孔径は、直径約1オングストローム〜約999ミクロンであってもよい。孔の密度は、約0.0001%〜約99.9999%であってもよい。
【0117】
実施例14
機械的特性
圧縮特性および引っ張り特性を、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、ASTM規格のD695−10:硬質プラスチック圧縮特性の標準試験方法、およびD638−10:プラスチック引っ張り特性の標準試験方法に従って試験した。固化複合物試料は、上記の方法に従って調製した。Instron 5882機械的試験システムを使用して、1.3mm/分のスピードで、シリンダー試料(直径12.7mmおよび高さ25.4)の圧縮曲線を試験した。
【0118】
図16に示されるように、実施例11のTBLから形成されたナノチューブを含む複合物の機械的特性は、HA成分により調整可能であり、HAの重量比率に伴って圧縮強度が増大した。20%HA複合物は、最高強度42.7MPaを有し、これは、成形外科の耐荷重性用途において好適である。ある態様によれば、複合物の圧縮強度は、約0.001MPa〜約1000GPaである。TEM画像化による複合物の平均孔径は、90.1μmである。
【0119】
実施例15
細菌調査
細菌試験のため、PMMAおよび純粋pHEMAを対照群とし、3種類の細菌株(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、および緑膿菌)を、96ウェルプレート中の試料表面において、37℃で1時間、5%CO
2のインキュベータでインキュベートした。インキュベート後、試料を脱イオン水ですすぎ、次いで細菌増殖アッセイを3時間行った。
【0120】
図17に示されるように、細菌調査において、PMMAおよび純粋pHEMA試料と比較して、実施例11のTBLから形成されたTBLナノチューブおよびHAナノ粒子の添加は、細菌の接着を変化させなかった。また、pHEMA、TBL、HAまたはPMMA群間で、識別可能な差異はなかった。
【0121】
実施例16
分解
3mg/mLのAIBNを有する100%HEMA溶液、実施例11のTBL(無し、0.01mg/mL)、およびHAナノ粒子(2%、20%)を、上記のように調製した。最初に、乾燥固化試料の重量を記録した。次に、各群の4つの試料を、50mL遠心分離チューブに脱イオン水とともに入れ、37℃のインキュベータ中に、7日間、30日間、および60日間置いた。所定時間の後、試料を乾燥させて再度測定し、重量の減少を算出した
【0122】
図18および
図19に示されるように、7日目および30日目の分解度試験により、すべての試料におけるわずかな重量減少が示された。30日後、実施例11のTBL分子のナノチューブとともに2%HAを含む試料は、最も大きく重量が減少した。
【0123】
実施例17
細胞培養
ヒト胎児骨芽細胞株(ATCC、CRL−11372、バージニア州)を、10%ウシ胎児血清(FBS、ハイクロン社、ユタ州)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S、ハイクロン社、ユタ州)を補充した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、インビロジェン社)中、標準的な細胞培養条件(37℃、加湿、5%CO
2/95%大気)下で培養した。実験では、集団数3までの細胞を、さらに特性解析することなく使用した。
【0124】
標準的な毒性調査のために、ラット皮膚線維芽細胞株(FR、ATCC、CRL−1213)を、10%FBSを補充したイーグル最小必須培地(EMEM、ATCC、30−2003)中、標準的な細胞培養条件下で培養した。ラット大動脈内皮細胞(RAEC、ベックテクノロジーズ社)は、MCDB−131完全培地(ベックテクノロジーズ社)中、標準的な細胞培養条件下で培養した。線維芽細胞は、集団数6〜9で使用した。繊維芽細胞および内皮細胞の毒性は、使用した濃度では影響を受けず、これにより、組成物が種々の濃度において毒性がないことが実証される。
【0125】
実施例18
骨芽細胞および繊維芽細胞の接着密度
骨芽細胞および線維芽細胞を、3500細胞/cm
2の密度で基板上に別々に播種し、細胞培養培地(具体的には、骨芽細胞については、FBSおよびP/Sを補充したDMEM、線維芽細胞については、FBSを補充したEMEM)中で4時間インキュベートした。次いで上述のように作成した基板を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で3回すすぎ、未接着の細胞を除去した。残った細胞を、10%標準緩衝ホルムアルデヒド(フィッシャーサイエンティフィック社)を10分間、0.1%TritonX−100(シグマアルドリッチ社、ミズーリ州)を5分間使用して、固定した。次いで、細胞伸展を調べるため、細胞をローダミン・ファロイジン(F−アクチンフィラメントを染色、モレキュラープローブ社)で染色し、さらにDAPI(インビトロジェン社)で染色した。蛍光顕微鏡(Axiovert 200M、ツァイス社)を使用して細胞を観察し、各試料について5つの異なる領域を画像化した。Image Pro Analyzerを使用して細胞を計測して細胞密度を決定した。全ての細胞実験は、各基板について三重測定で3回繰り返した。全ての細胞実験は、各基板について三重測定で3回繰り返した。
【0126】
図20は、実施例11のツイン塩基リンカーモジュールから形成されたナノチューブと組み合わせたヒドロキシアパタイトの増加に伴う、骨芽細胞密度の増加と線維芽細胞密度の減少を示す。
【0127】
実施例19
骨芽細胞の増殖
骨芽細胞を上述のように調製し、基板表面にランダムに播種し、標準的な細胞培養条件下でより長期間(1日間、3日間、および5日間)培養した。骨芽細胞の増殖は、Hoeschst33258染料(シグマ社)および蛍光分光光度計(ミルトン・ロイ社、Fluorospectronic)を使用して、パパイン消化物中のDNA量を測定することにより評価した。実験試料中の細胞数は、既知数の細胞(アッセイ感度は、約1,000個)あたりのDNA量と相関する標準曲線から決定した。このような長期間における増殖を、細胞密度(単位表面積あたりの細胞)として記録した。
【0128】
図21は、実施例11のツイン塩基リンカーモジュールから形成されたナノチューブと組み合わせたヒドロキシアパタイトの含有量増加に伴う、骨芽細胞増殖の増大を示す。
【0129】
実施例20
骨芽細胞の分化
骨芽細胞を上述のように調製し、基板表面上にランダムに播種し、標準的な細胞培養条件下で、より長期間(1日間、3日間、および5日間)培養した。骨芽細胞の増殖は、Hoeschst 33258染料(シグマ社)および蛍光分光光度計(ミルトン・ロイ社、Fluorospectronic)を使用して、パパイン消化物中のDNA量を測定することにより評価した。実験試料中の細胞数は、既知数の細胞(アッセイ感度は、約1,000細胞)あたりのDNA量と相関する標準曲線から決定した。このような長期間における増殖を、細胞密度(単位表面積あたりの細胞)として記録した。
【0130】
細胞内の全タンパク質含有量:骨芽細胞(100,000細胞/cm
2)を基板上に播種し、完全DMEM(すなわち、10%FBS、1%P/S、50μg/mLのアスコルビン酸塩(シグマ社)および10mMのβ−グリセロリン酸(シグマ社)を補充したDMEM)中、標準的な細胞培養条件下で、7日間、14日間、および21日間培養した。培地は、一日置きに交換した。所定期間の終わりに、最初に基板をトリス緩衝生理食塩水(TBS;42mMのトリス−HCl、8mMのトリス塩基、および0.15MのNaClから成り、pH7.4に調整された溶液;化学物質は、全てシグマ社製)で3回すすぎ、次に蒸留水および3回の凍結融解サイクルにより骨芽細胞を溶解した。細胞可溶化物中の全タンパク質含有量は、BCAタンパク質アッセイ試薬キット(ピアスケミカル社)を使用し、製造業者の指示に従って分光光度法で決定した。具体的には、25μLの各試料可溶化液を、200μLの使用試薬(硫酸銅およびビシンコニン酸を含む)とともに、37℃で30分間インキュベートした。次いでこれら試料の吸光度を、分光光度計(SpectroMAX;モレキュラーデバイス社)により、562nmで測定した。基板上で培養された骨芽細胞により合成された細胞内全タンパク質は、実験試料と並行して測定された既知濃度のアルブミンに対する吸光度の標準曲線から決定した。細胞内の全タンパク質合成は、基板表面積により標準化した。
【0131】
細胞内の全コラーゲン含有量:コラーゲンは、骨の細胞外マトリックスに含まれる周知のタンパク質である。これらの量を決定するため、上述のように細胞可溶化物を調製した。96ウェルプレート(コーニング社)の1ウェルあたり、50μLの骨芽細胞可溶化液を添加した。コラーゲンは、37℃で16時間インキュベートし、次いで乾燥剤(W.A.ハモンド・ドライエライト社(W.A.Hamond Drierite Company LTD.))の存在下、37℃で24時間インキュベートすることにより、プレート上で乾燥させた。その後、96ウェルプレートを蒸留水で3回すすいだ(1回の洗浄あたり1分間、および1ウェルあたり200μL)。100μLの0.1%シリウスレッド染色液(ピクリン酸中のシリウスレッド粉末;シグマ社)を各ウェルに分注し、室温で1時間静置した。その後、各ウェルを、200μLの0.01MのHCl(シグマ社)を用いて、各洗浄あたり10秒間で5回洗浄した。200μLの0.1M NaOH(シグマ社)を各ウェル中に添加し、5分間静置した。最後に、各ウェル中の溶液を混合し、第二のプレートに移し、分光光度計(SpectroMAX;モレキュラーデバイス社)により、540nmでの吸光度を測定した。基板上で培養された骨芽細胞により合成された細胞内全コラーゲンは、実験試料と並行して測定された既知濃度のコラーゲンに対する吸光度の標準曲線から決定した。細胞内全コラーゲンは、基板表面積により標準化した。
【0132】
図22は、実施例11のツイン塩基リンカーモジュールから形成されたナノチューブと組み合わせたヒドロキシアパタイトの含有量増加に伴う、骨芽細胞による骨芽細胞コラーゲン合成の増加を示す。
【0133】
アルカリホスファターゼ活性:アルカリホスファターゼは、その合成が、非カルシウム沈着性細胞からカルシウム沈着性細胞への骨芽細胞分化を示す酵素である。アルカリホスファターゼ活性を試験するため、細胞可溶化物を前述のように調製し、市販のアルカリ/酸性ホスファターゼ・アッセイキット(アップステート社)を使用し、製造業者の指示に従って、これらの細胞可溶化物中のアルカリホスファターゼ濃度を決定した。蒸留水上清の一定分量を、まず40mMのNiCl
2、5mg/mLのBSA、1mMのリンペプチド溶液、およびPnpp Ser/Thr アッセイバッファーと混合し、37℃で10〜15分間インキュベートした。次いでこれらをマラカイトグリーン溶液とともに、室温で15〜20分間インキュベートした。分光光度計(SpectroMAX;モレキュラーデバイス社)により、650nmで吸光度を測定した。基板上で培養された骨芽細胞により合成されたアルカリホスファターゼは、実験試料と並行して測定された既知濃度の第一リン酸カリウムに対する吸光度の標準曲線から決定した。アルカリホスファターゼ活性は、基板表面積により標準化した。
【0134】
図23は、実施例11のツイン塩基リンカーモジュールから形成されたナノチューブと組み合わせたヒドロキシアパタイトの含有量増加に伴う、骨芽細胞によるアルカリホスファターゼ合成の増加を示す。
【0135】
細胞外カルシウムの定量:骨芽細胞分化の尺度としてのカルシウム沈着を定量した。上述のように細胞を溶解した後、基板(および基板上の残りのカルシウム沈着物)を、0.6NのHCl(シグマ社)とともに、37℃で一晩インキュベートした。カルシウム定量キット(シグマ社)を使用して、製造業者の指示に従い、酸性の上清に存在するカルシウムの量を定量した。試料の吸光度は、分光光度計(SpectroMAX;モレキュラーデバイス社)を使用して、575nmで測定した。全カルシウム(mg/dL)は、実験試料と並行して測定された既知濃度のカルシウムに対する吸光度の標準曲線から算出した。カルシウム濃度は、基板表面積により標準化した。
【0136】
図22は、実施例11のツイン塩基リンカーモジュールから形成されたナノチューブと組み合わせたヒドロキシアパタイトの含有量増加に伴う、骨芽細胞による骨芽細胞カルシウム沈着の増加を示す。
【0137】
上記開示および例示的な実施形態の記載の利益を考慮すると、本明細書で開示される本発明の原則から外れることなく、様々な代替的実施形態および異なる実施形態が可能であることが、当業者には明らかになるだろう。そのような種々の改変および代替的実施形態すべてが、本発明の真の範囲および趣旨に含まれることを、当業者は理解するだろう。本発明は、図および前述の説明において詳細に説明および記載されているが、このような説明および記載は、性質を限定するものではなく例示的なものであるとみなされ、好ましい実施形態のみが示されて記載されていること、および本発明の趣旨の範囲内にある全ての変更および改変の保護が望まれるということが理解されるだろう。添付の請求の範囲は、このような改変実施形態および代替的実施形態の全体を含むよう意図される。本開示および以下の請求の範囲における単数の不定冠詞または定冠詞(例えば、「a」、「an」、「the」など)の使用は、特定の場合においてその用語が明確に唯一を意味すると意図されていることが文脈から明らかでない限り、「少なくとも1つの」を意味する特許における従来の考え方に従うと理解されるべきである。同様に、「含む」という用語は非限定的であり、追加の項目、特徴、構成要素などを除外するものではない。本明細書で特定される参考文献は、特に明記がない限り、その全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる。