(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップ(1)でのエタノール水溶液の濃度は、55〜65%、最も好ましくは60%であり;ステップ(3)でのエタノール水溶液の濃度は、55〜65%、最も好ましくは60%である、請求項1に記載の方法。
ステップ(1)において、抽出は1〜8回、好ましくは2〜4回行われ、各還流抽出の時間は0.5〜5時間、好ましくは0.5〜2時間である、請求項1または請求項2に記載の方法。
ステップ(2)において、エタノールを除去する方法は減圧下であり;ステップ(4)において、濃縮する方法は減圧下であり、乾燥させる方法は真空乾燥である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
ステップ(3)において、多孔質樹脂カラムの直径と長さの比は1:3〜10、好ましくは、1:4〜7、最も好ましくは1:6であり、多孔質樹脂と苦丁茶冬青の葉の重量比は5〜15:1、好ましくは6〜10:1である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年に至って、本発明の発明者らは、系統的比較研究の後に、モチノキ(Ilex)属の植物である苦丁茶冬青の葉にのみ、血中脂質低下およびアテローム性動脈硬化抑制についての特有の効果があることを見出した。これに関しては、有効成分はサポニンであり、苦丁茶冬青のサポニンのアグリコンは他の苦丁茶品種のものとはかなり異なる。有効成分および薬理学的効果についての系統的研究の後に、本発明者らは、苦丁茶冬青のサポニンは、コレステロールの低下およびアテローム性動脈硬化抑制に対して重要な効果を有し、その効果はスタチン系薬剤の効果と等しいが、苦丁茶冬青のサポニンの機構はスタチン系薬剤のものとは全く異なることを見出した。加えて、そのようなサポニンは、トリグリセリド低下、耐酸化性、腎臓保護および血液レオロジー改善などの効用も有する。作用機構についての研究により、苦丁茶冬青のサポニンによる脂質低下の機構は、腸管および肝臓でのアシル補酵素Aコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)の活性の阻害を通じたものであり、その結果として、コレステロールの腸管吸収は抑制され得るということが示されている。しかしながら、従来の抽出方法により抽出された苦丁茶冬青の抽出物ではサポニンの含量よりもイソクロロゲン酸の含量がずっと高い。さらに、本発明者らは、イソクロロゲン酸は血中脂質を増加させ得ることも見出した。
【0005】
よって、本発明の1つの目的は、苦丁茶冬青の葉の抽出方法を提供することである。その方法は、総サポニンと総イソクロロゲン酸を分離することができるため、高含量のサポニンを含有する抽出物と高含量の総イソクロロゲン酸を含有する抽出物それぞれを得るこ
とができる。本発明のもう1つの目的は、本発明の方法を用いることにより抽出された苦丁茶冬青の葉の総サポニンを提供することである。その抽出物は80%を超えるサポニンを含み、血中脂質低下、アテローム性動脈硬化抑制ならびに肝臓および腎臓の保護のために使用することができる。本発明の第3の目的は、コレステロールおよび血中脂質の低下ならびにアテローム性動脈硬化抑制のための薬物の調製における上記総サポニンの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上に記載した本発明の目的のために、本発明は下の技術的解決法を提供する。
【0007】
本発明は苦丁茶冬青の葉の抽出方法を提供し、その方法は、以下のステップ:(1)苦丁茶冬青の葉を50〜70%エタノール水溶液での還流抽出に付し、抽出液を得るステップ;(2)該抽出液を濾過し、該抽出液からエタノールを除去するステップ;(3)ステップ(2)で得られた溶液を多孔質樹脂カラムに吸着させ、該樹脂カラムから、H
2O、10〜30%アルカリ性エタノール水溶液(pH9〜11)、10〜30%エタノール水溶液および50〜70%エタノール水溶液で順次溶出させるステップ;(4)50〜70%エタノール水溶液の溶出液を回収し、濃縮し、乾燥させ、苦丁茶冬青の葉の抽出物を得るステップを含む。
【0008】
本発明の抽出方法では、ステップ(1)でのエタノール水溶液の濃度は、好ましくは55〜65%、最も好ましくは60%であってよく;ステップ(3)でのエタノール水溶液の濃度は、好ましくは55〜65%、最も好ましくは60%であってよい。本発明において、エタノール水溶液の濃度とは、エタノール水溶液中のエタノールの体積百分率を意味する。
【0009】
本発明の抽出方法では、ステップ(1)での還流抽出の操作は当業者には公知であり、該操作でのエタノール水溶液の量は原料の量に応じて決定することができる。例えば、エタノール水溶液と原料の重量比は、2〜20:1、好ましくは5〜15:1であってよい。抽出回数は、1〜8回、好ましくは2〜4回であってよく;各還流抽出の時間は、0.5〜5時間、好ましくは0.5〜2時間であってよい。各還流抽出の時間は同じであっても異なっていてもよく、各還流抽出用のエタノール水溶液の濃度も同じであっても異なっていてもよく、各還流抽出用のエタノール水溶液の量も同じであっても異なっていてもよい。例えば、本発明の好ましい実施形態では、最初に、1時間の還流に原料重量の10倍量の60%エタノールを使用し;濾過後、該材料を原料重量の8倍量の60%エタノールで1時間還流し;次に、濾過後、原料重量の8倍量の60%エタノールで1時間還流し、3回の還流抽出により得られた濾液を合わせる。
【0010】
本発明の抽出方法では、ステップ(2)でのエタノールの除去方法およびステップ(4)の溶出液(eluent)の濃縮方法は当業者には公知である。例えば、それらの2つの方法はどちらの場合も減圧下での濃縮であってよい。ステップ(4)での乾燥方法は、好ましくは、真空乾燥である。エタノールの量を節約するために、本発明の方法に、ステップ(2)で分離されたエタノールおよび/またはステップ(4)で分離されたエタノールを回収し、ステップ(1)での還流抽出に再使用することをさらに含めてもよい。
【0011】
本発明の抽出方法では、ステップ(3)で使用される多孔質樹脂カラムは、当技術分野で一般的に使用されている樹脂カラムである。本発明において好ましいのは、D101、HPD100、HPD400A、AB−8およびNKAなどのスチレン系多孔質吸着樹脂である。多孔質樹脂カラムの直径と長さの比は、1:3〜10、好ましくは1:4〜7、最も好ましくは1:6であってよい。該樹脂と苦丁茶冬青の葉の重量比は、5〜15:1、好ましくは6〜10:1、最も好ましくは7:1であってよい。
【0012】
好ましくは、高力価の総サポニン抽出物を得るために、ステップ(3)での溶出プロセスに、糖類が検出されなくなるまでカラム体積の4〜10倍量の水で樹脂カラムから溶出させ、次に、カラム体積の5〜10倍量の10〜30%アルカリ性エタノール水溶液(pH9〜11)で該樹脂カラムから溶出させること;さらに、カラム体積の2〜5倍量の10〜30%エタノール水溶液で該樹脂カラムから溶出させること;最後に、カラム体積の3〜6倍量の50〜70%エタノール水溶液で該樹脂カラムから溶出させることを含めてもよい。例えば、本発明の好ましい実施形態では、ステップ(3)は、ステップ(2)で得られた溶液をHPD400A多孔質樹脂カラム(該樹脂カラムの直径と長さの比は1:4であり、該樹脂と薬草の重量比は7:1である)に30分間静的吸着させ、上のプロセスを3回繰り返すこと;吸着後、糖類が検出されなくなるまで水で該樹脂カラムから溶出させ、次に、カラム体積の8倍量の25%アルカリ性エタノール水溶液(pH=10)で該樹脂カラムから溶出させること;さらに、該樹脂カラムが中性になるまでカラム体積の3倍量の25%中性エタノール水溶液で該樹脂カラムから溶出させること;最後に、カラム体積の4倍量の60%エタノール水溶液で該樹脂カラムから溶出させること;60%エタノール水溶液の溶出液(eluent)を回収し、濃縮し、乾燥させ、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの抽出物を得ることを含む。
【0013】
本発明の抽出方法では、ステップ(3)でのアルカリ性エタノール水溶液のpHは、最も好ましくは10である。
【0014】
本発明の方法は、ステップ(5):10〜30%アルカリ性エタノール水溶液(pH9〜11)の溶出液と10〜30%エタノール水溶液の溶出液を合わせ、合わせた溶液のpHをpH2〜3に調整し、その後、該溶液を濃縮し、乾燥させ、総イソクロロゲン酸を得るステップをさらに含んでよい。
【0015】
本発明はまた、上記方法を用いることにより抽出された、苦丁茶冬青の葉の総サポニンも提供する。これに関しては、総サポニンの含量は80%を上回り得る。本発明の総サポニンは、血中脂質を低下させることができ、アテローム性動脈硬化症を抑制することができ、肝臓および腎臓に対する保護作用もある。
【0016】
本発明はまた、コレステロールおよび血中脂質の低下ならびにアテローム性動脈硬化症の抑制のための薬物の調製における、上記方法を用いることにより抽出された、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの使用も提供する。苦丁茶冬青の葉の総サポニンは、単独で使用することができ、または効力を高め、スタチン系薬剤の毒作用および副作用を減少させるためにスタチン系薬剤と組み合わせて使用することもできる。
【0017】
本発明はまた、本発明において提供される、苦丁茶冬青の葉の総サポニンを用いることによるコレステロールおよび血中脂質の低下ならびにアテローム性動脈硬化抑制のための方法も提供する。
【0018】
本発明により提供される、苦丁茶冬青の葉の総サポニンは、コレステロールの低下およびアテローム性動脈硬化抑制に対して著しい効果を有し、その効果はスタチン系薬剤の効果と等しいが、苦丁茶冬青のサポニンの機構はスタチン系薬剤のものとは全く異なる。加えて、本発明における総サポニンの抽出物は、トリグリセリド低下、耐酸化性、腎臓保護および血液レオロジー改善などの効用も有する。作用機構についての研究により、苦丁茶冬青の葉のサポニンによる血中脂質低下の機構は次の通りであることが示された:苦丁茶冬青の葉のサポニンは、腸管および肝臓でのアシル補酵素Aコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)の活性を阻害することができ、その結果として、腸管でのコレ
ステロールの吸収は抑制され得る。
【0019】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
具体的な実施形態と合わせて本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施形態は単に本発明を例示するために用いるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。実施形態に記載している様々な百分率濃度のエタノールは、対応する体積百分率濃度のエタノール水溶液を意味することに留意されたい。
【0022】
実施例1
本実施例を用いることにより、本発明において提供される、苦丁茶冬青の葉の抽出方法を説明する。
【0023】
抽出:苦丁茶冬青の医療用材料0.5kgを秤量し、次に、60%エタノール5Lを用いて0.5時間、60%エタノール4Lを用いて1時間それぞれ還流抽出を行い、濾過後に濾液を合わせた。
【0024】
エタノールの除去:抽出した濾液を、アルコールがなくなるまで減圧下で濃縮して、エタノールを回収した。その際、濃縮した溶液の相対密度は1.06〜1.08であった(室温)。
【0025】
吸着:濃縮した溶液をHPD400A多孔質樹脂カラムに適用し、溶離剤を樹脂カラムに再度3回流し込んだ。その際、樹脂カラムには樹脂5kgを充填し、樹脂カラムの直径と長さの比は1:4である。流し込みを行ったカラムは30分間静置した。
【0026】
不純物の洗浄:糖類が検出されなくなるまでカラム体積の4倍量の脱イオン水で樹脂カラムから溶出させ、次に、カラム体積の8倍量の20%アルカリ性エタノール(NaOH、pH=10)で溶出させ、さらに、中性になるまでカラム体積の3倍量の20%エタノールで溶出させた。
【0027】
溶出:樹脂に吸着した抽出物をカラム体積の6倍量の60%エタノールでさらに溶出させた。
【0028】
濃縮および乾燥:溶出液を減圧下で濃縮してエタノールを回収し、その後、真空乾燥させた。乾燥させた固体を粉砕し、100メッシュのスクリーンで選別し、苦丁茶冬青の葉の抽出物65.35gを得た。この抽出物をA1と示し、抽出収率は13.07%であった。
【0029】
実施例2
本実施例を用いることにより、本発明において提供される、苦丁茶冬青の葉の抽出方法を説明する。
【0030】
抽出:苦丁茶冬青の医療用材料0.5kgを秤量し、次に、65%エタノール4Lを用いて2時間、60%エタノール3Lを用いて1時間、50%エタノール3Lを用いて0.5時間それぞれ還流抽出を順次行い、濾過後に濾液を合わせた。
【0031】
エタノールの除去:抽出した濾液を、アルコールがなくなるまで減圧下で濃縮して、エタノールを回収した。その際、濃縮した溶液の相対密度は1.06〜1.08であった(室温)。
【0032】
吸着:濃縮した溶液をAB−8多孔質樹脂カラムに付した。その際、樹脂カラムには樹脂3.5kgを充填し、樹脂カラムの直径と長さの比は1:8である。
【0033】
不純物の洗浄:糖類が検出されなくなるまでカラム体積の8倍量の脱イオン水で樹脂カラムから溶出させ、次に、カラム体積の10倍量の30%アルカリ性エタノール(NaOH、pH=10.5)で溶出させ、さらに、中性になるまでカラム体積の4倍量の30%エタノールで溶出させた。
【0034】
溶出:樹脂に吸着した抽出物をカラム体積の3倍量の65%エタノールでさらに溶出させた。
【0035】
濃縮および乾燥:溶出液を減圧下で濃縮し、その後、真空乾燥させ、乾燥させた固体を粉砕し、100メッシュのスクリーンで選別し、苦丁茶冬青の葉の抽出物50.31gを得た。この抽出物をA2と示し、抽出収率は10.06%であった。
【0036】
比較例1
本比較例を用いることにより、不純物洗浄ステップでの溶出を水のみ用いて行った、苦丁茶冬青の葉の抽出方法を説明する。
【0037】
抽出、エタノール除去および吸着のプロセスは、実施例1と同じ方法を用いることにより行った。
【0038】
不純物の洗浄:糖類が検出されなくなるまでカラム体積の4倍量の脱イオン水で樹脂カラムから溶出させた。
【0039】
溶出:樹脂に吸着した抽出物をカラム体積の4倍量の60%エタノールでさらに溶出させた。
【0040】
濃縮および乾燥:溶出液を減圧下で濃縮し、その後、真空乾燥させ、乾燥させた固体を
粉砕し、100メッシュのスクリーンで選別し、苦丁茶冬青の葉の抽出物150gを得た。この抽出物をC1と示し、抽出収率は30.00%であった。
【0041】
比較例2
本比較例を用いることにより、不純物洗浄ステップでの溶出を水とエタノールのみ用いて行った、苦丁茶冬青の葉の抽出方法を説明する。
【0042】
抽出、エタノール除去および吸着のプロセスは、実施例1と同じ方法により行った。
【0043】
不純物の洗浄:糖類が検出されなくなるまでカラム体積の4倍量の脱イオン水で樹脂カラムから溶出させ、次に、カラム体積の5倍量の10%エタノールで溶出させた。
【0044】
溶出:樹脂に吸着した抽出物をカラム体積の4倍量の60%エタノールでさらに溶出させた。
【0045】
濃縮および乾燥:溶出液を減圧下で濃縮し、その後、真空乾燥させ、乾燥させた固体を粉砕し、100メッシュのスクリーンで選別し、苦丁茶冬青の葉の抽出物110.23gを得た。この抽出物をC2と示し、抽出収率は22.05%であった。
【0046】
比較例3
本比較例を用いることにより、不純物洗浄ステップでの溶出を水とエタノールのみ用いて行った、苦丁茶冬青の葉の抽出方法を説明する。
【0047】
抽出、エタノール除去および吸着のプロセスは、実施例1と同じ方法により行った。
【0048】
不純物の洗浄:糖類が検出されなくなるまでカラム体積の4倍量の脱イオン水で樹脂カラムから溶出させ、次に、カラム体積の11倍量の20%エタノールで溶出させた。
【0049】
溶出:樹脂に吸着した抽出物をカラム体積の4倍量の60%エタノールでさらに溶出させた。
【0050】
濃縮および乾燥:溶出液(eluent)を減圧下で濃縮し、その後、真空乾燥させ、乾燥させた固体を粉砕し、100メッシュのスクリーンで選別し、苦丁茶冬青の葉の抽出物102.8gを得た。この抽出物をC3と示し、抽出収率は20.56%であった。
【0051】
成分の測定
1.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定
クロマトグラフィーカラム:Kromasil C18(4.6×250mm、5μm);
流速:0.8ml/分;
検出波長:226nm;
カラム温度:30℃;
移動相:アセトニトリル−0.1%リン酸溶液、勾配溶出;
溶出条件を表1に示す:
【0053】
図1は、実施例1で調製したサンプルA1のクロマトグラムであり、
図2は、比較例1で調製したサンプルC1のクロマトグラムであり、
図3は、比較例2で調製したサンプルC2のクロマトグラムであり、
図4は、比較例3で調製したサンプルC3のクロマトグラムである。
図1〜
図4において、スペクトルピークKc、KaおよびKdはそれぞれ、苦丁茶冬青の3つの主要なサポニン[イレクジノシドC(KDC−C)、イレクジノシドA(KDC−A)およびイレクジノシドD(KDC−D)]を示しており;スペクトルピークIa、IbおよびIcはそれぞれ、3つのイソクロロゲン酸成分(イソクロロゲン酸B、イソクロロゲン酸Aおよびイソクロロゲン酸C)を示している。
【0054】
実施例1および実施例2で調製したサンプルA1およびA2、ならびに比較例1、比較例2および比較例3で調製したサンプルC1、C2およびC3についてのHPLC検出結果を表2に挙げた。
【0056】
図1〜
図4の結果と表2のデータの比較により、水および/または低濃度のエタノールを用いた場合にはイソクロロゲン酸(isocholrogenic acids)成分は除去されないが、一方、溶出を行うために低濃度のアルカリ性エタノールを用いた場合にはイソクロロゲン酸(isocholrogenic acids)成分は除去され、結果として、高純度の総サポニンを含有する苦丁茶冬青抽出物を得ることができることが分かる。
【0057】
2.UV吸収による総サポニンの測定
抽出物約10mgを正確に秤量し(合計3バッチ)、次に、25mlメスフラスコに入れ、メタノールで定容に希釈し、その後、0.8ml溶液を正確に計量し、10mlガラス製共栓試験管に移し、水浴中80℃で蒸発乾固させ、3バッチのサンプルを得た。イレクジノシドA(0.535mg/ml)を標準溶液として用い、0.1mL、0.2mL
および0.4mLの標準溶液それぞれを10mlガラス製共栓試験管に移し、水浴中80℃で蒸発乾固させた。
【0058】
バニリン0.1gを秤量し、10mlガラス製共栓試験管に入れ、そのガラス製試験管に氷酢酸2mlを加え、次に、バニリンが溶解したらそのガラス製試験管に過塩素酸8mlを加え、その後、混合物を振盪し、その結果として、金色発色物質を得た。
【0059】
その後、発色物質1mlを、乾燥サンプルの入ったガラス製試験管と標準サンプルの入ったガラス製試験管それぞれに入れた。それらのガラス製試験管を水浴中60℃で15分間加熱したらすぐに冷却し、次に、上記ガラス製試験管に氷酢酸5mlを加え、その後、混合物を振盪した後UV吸収値を538nmで検出した。
【0060】
実施例1および実施例2で調製したサンプルA1およびA2、ならびに比較例1、比較例2および比較例3で調製したサンプルC1、C2およびC3についての総サポニン含量の測定結果を表3に挙げる。
【0062】
表3に示したデータを比較することにより、サンプルA1およびA2の総サポニン含量は、サンプルC1、C2およびC3の総サポニン含量よりも著しく高いことが分かる。これにより、総サポニン含量は不純物を除去することによって大幅に増加し得ることが示される。しかしながら、UV法による含量測定に一部誤りがあることが分かった。例えば、UV法により測定したサンプルC2およびC3中の総サポニン含量は高いが、HPLC検出によりサンプルC2およびC3中にまだ多量のイソクロロゲン酸が存在することが分かった。これは、氷酢酸−バニリン比色定量は特異度が低く、グリコシドに類似した多くの化合物が全て上記呈色反応を示し、その結果、測定結果が不正確なものとなることが理由である。
【0063】
有効性試験
実施例1で調製した、苦丁茶冬青の葉の抽出物の治療効果を検証するために、次の実験を行った。
【0064】
ApoE−/−マウスを体重により無作為に4群に分けた。
(1)陰性対照群(CG):この群のマウスには通常の食餌を7週間与え、生理食塩水を胃内投与した。
(2)高脂肪対照群(HG):この群のマウスには0.2%コレステロールを含有する高脂肪食を7週間与え、同時に毎日生理食塩水を胃内投与した。
(3)アトルバスタチン(Ator)治療群(AG):この群のマウスには高脂肪食を1週間与え、その後、毎日6週間アトルバスタチン(50mg/kg/日)を胃内投与し
、同時に連続して高脂肪食を与えた。
(4)苦丁茶冬青総サポニン治療群(SG):治療過程はAGの場合と同様であるが、SGとAGとでは、苦丁茶冬青の総サポニンの用量が300mg/kg/日であるという点のみ異なる。
【0065】
1.血漿中の総コレステロール(TC)レベルに対する、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの効果
ApoE−/−マウス血漿中の総コレステロール(TC)レベルに対する、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの効果を
図5に示している。ApoE−/−マウスに高脂肪食を1週間与えた後、血漿中のTCレベルは300〜400mg/dLから約800mg/dLまで上昇し、その結果、高コレステロール血症が生じ、その後、マウスに薬物を胃内投与した。結果は、HGのマウスと比べ、全ての投与群でマウスの血漿TCレベルが低下していることを示した。AG群およびSG群のマウスの血漿TCレベルは双方30%〜35%低下しており、それら2群の有効性は実質的に同じであり、有意差はない。薬物の有効性は6週間持続し、安定に保たれた。
【0066】
2.血漿マロンジアルデヒド(MDA)レベルに対する、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの効果
図6に示されるように、ApoE−/−マウスの血漿MDAレベルは苦丁茶冬青の葉の総サポニンの影響を受けた。マウスに毎日高脂肪食を与えたため、6週間投与後のHG群のマウスの血漿MDAレベルは、投与前のマウスのレベルの約5倍を超えていた。HG群のマウスと比べて、AG群およびSG群のマウスでの血漿MDAレベルの上昇は投与2週目(W2)以降に大幅に抑制され、有効性は投与終了まで保たれた。AG群のマウスの血漿MDAレベルは投与4週目(W4)以降に上昇し始め、投与6週目(W6)に16.5nmol/Lに達し、この値は、投与前のマウスのレベルよりほぼ1.5倍高い値であった。しかしながら、SG群のマウスの血漿MDAレベルは投与開始から実験終了までほとんど上昇しなかった。上記結果は、アトルバスタチンと苦丁茶冬青の葉のサポニンは双方とも血漿脂質の酸化を抑制することができることを示しているが、SG群のマウスの血漿MDAレベルの上昇は投与5週目(W5)以降も苦丁茶冬青の葉の総サポニンによってAG群のマウスよりはるかに効果的に抑制され、それら2群の間での有効性の差は有意であった。
【0067】
3.動脈硬化症に対する、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの効果
ApoE−/−マウス大動脈流出路の動脈硬化部位に対する、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの効果を
図7に示している。CG群とHG群との間に有意差があり(p<0.05)、そのモデルは成功したことが示される。また、SG群およびHG群との間と、AG群とHG群との間にも有意差があり(p<0.01)、アトルバスタチンと苦丁茶冬青の葉の総サポニンは双方とも大動脈流出路のアテローム斑形成を有意に抑制することができ、抑制率が約40%に達することが示される。
【0068】
4.糞便中の総コレステロール含量に対する、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの効果
苦丁茶冬青の葉の総サポニンによる血漿コレステロール低下についての考えられる機構を調査するために、ApoE−/−マウス糞便中の総コレステロール含量を測定し、マウスにおけるコレステロール吸収に対する薬物の効果を判定した。
図8に示されるように、SG群とCG群との間に有意差があり(
#P<0.05)、SG群とHG群との間にも有意差がある(
*P<0.05)。結果は、マウスにおけるコレステロールの排泄は、マウスに高コレステロール食を与えた後に75%増加し、それはCG群のマウスの場合と有意に異なることを示している。SGを投与したマウスの糞便中へのコレステロールの排泄は
HG群のマウスと比べて約40%増加し、これら2群の間での差は有意であった。
【0069】
5.Caco−2細胞における肝臓ACAT2 mRNAの発現に対する、苦丁茶冬青の葉の総サポニンの効果
これまでの調査は、苦丁茶冬青の葉の総サポニンはコレステロールの排泄を増加させ、小腸でのTC含量を低下させることができることを示したため、関連遺伝子のmRNA発現レベルを検出した。結果によれば、ACAT2のmRNAの発現レベルは苦丁茶冬青の葉の総サポニンの影響を受けることが示され、その結果は
図9に示している。
図9では、TSは苦丁茶冬青の総サポニンを表し、Atorはアトルバスタチンを表している。CGとの比較では有意差がある(
#p<0.05)。結果から、10μg/mLおよび100μg/mLの総サポニンそれぞれによりACAT2のmRNA発現は50%低下したことが認められ、それはCG群の場合と有意に異なる。しかしながら、苦丁茶冬青の総サポニンは他のスクリーニングされた遺伝子の発現に対して全く効果がなかった。この調査によれば、苦丁茶冬青の葉の総サポニンによる血中脂質低下の機構は、苦丁茶冬青の葉の総サポニンが腸管および肝臓でのACATの活性を阻害し、その結果として、腸管でのコレステロールの吸収が抑制され得ることにより、血中脂質を低下させ得るという機構であり得ることが示される。
【0070】
有効性検出の結果から、本発明により調製された、苦丁茶冬青の葉の抽出物は、コレステロールおよび血中脂質の低下ならびにアテローム性動脈硬化症の抑制に対して重要な効果を有し、スタチン系薬剤と類似した効果を有することが分かる。