特許第5955341号(P5955341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5955341循環系を観察するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955341
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】循環系を観察するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20160707BHJP
   A61B 5/0402 20060101ALI20160707BHJP
   A61B 5/05 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   A61B5/02 AZDM
   A61B5/04 310M
   A61B5/05 B
【請求項の数】26
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-551322(P2013-551322)
(86)(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公表番号】特表2014-507213(P2014-507213A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2012022664
(87)【国際公開番号】WO2012103296
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年12月17日
(31)【優先権主張番号】61/436,740
(32)【優先日】2011年1月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/475,887
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】ワイヤード リチャード エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジョバングランディ ローレント ビー.
(72)【発明者】
【氏名】コヴァクス グレゴリー ティー.
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−009305(JP,U)
【文献】 特開昭57−134141(JP,A)
【文献】 特開平11−155826(JP,A)
【文献】 特開平05−046686(JP,A)
【文献】 特開2008−104667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
A61B 5/0402
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの動脈の剛性に関連する生物的もしくは生理的態様を判定するシステムであって、
身体の動き及びユーザの心臓の機械的な出力の少なくとも一方及び前記ユーザの大動脈を通る血液の機械的な動きを示す心臓に関連する信号を、体重計の上に前記ユーザが起立している間に、立位の前記ユーザから取得するように構成され配置されている第1のセンサを含み、統合する前記体重計と、
前記ユーザが前記体重計の上に起立している間に、末梢動脈位置における、前記ユーザの動脈もしくは器官の体積変化の測定値を含む前記ユーザの特性を検出するように構成され配置されている第2のセンサと、
前記第1のセンサ及び第2のセンサから提供される情報を処理するように構成され配置されている論理回路と、
を備え、
前記論理回路は、前記大動脈の上行部分の圧脈拍、末梢動脈位置での前記ユーザの前記特性及び前記大動脈及び前記末梢動脈位置の間の距離を示す前記心臓に関連する信号の部分に基づいて、動脈の脈波速度を生成するように構成され配置されており、
前記動脈の脈波速度は前記動脈の剛性に関連する生物的もしくは生理的態様を示す、
システム。
【請求項2】
前記第1のセンサの上に前記ユーザが起立している間、前記ユーザの体重を出力するように構成されているディスプレイと、
前記論理回路に、前記体重計をわたる重量配分の指標を提供するように構成されている力センサのセットを含む補助センサと、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のセンサは、前記ユーザの大腿動脈もしくは前記大腿動脈の下にある末梢動脈位置のフォトプレチスモグラフィ特性を取得するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記心臓に関連する信号に含まれる少なくとも1つの雑音の指標を検出するように構成され配置されている補助センサをさらに備え、
前記論理回路は、前記心臓に関連する信号に含まれる前記雑音を除去することによって前記心臓に関連する信号を処理するように構成され配置されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
補助センサは、前記ユーザから心電図信号を検出し、検出された前記心電図信号を特徴付ける出力を提供するように構成され配置されている心電図センサを含み、
前記論理回路は、心弾動図信号を生成するために、前記心臓に関連する信号をフィルタリングし平均化することによって、前記信号に関連する信号を処理することによって、取得した前記心臓に関連する信号を処理するために、前記補助センサの出力を使用するように構成されている、
請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
脈拍タイミングから中心大動脈の剛性及び末梢動脈の剛性を導出するためにT1信号と共に複数のフォトプレチスモグラフィ・センサを使用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
脈拍タイミングから中心大動脈の剛性及び末梢動脈の剛性を導出するためにT1信号と共に複数の圧力センサが使用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
検出されるフォトプレチスモグラフィ信号を用いて検出される前記心臓に関連する信号の集合平均もしくはトリガ移動平均を生成することによって、心弾動図信号を生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記補助センサは、ユーザ環境の雑音を検出するように構成されている雑音センサ及び前記ユーザの心臓の生理的特性を検出するように構成されている心臓特性センサを含み、
前記論理回路は、前記心臓に関連する信号の雑音を軽減するために検出された前記雑音を用いることによって、及び前記心臓に関連する信号を変更するために検出された前記心臓の特性を使用することによって、心弾動図信号を生成するように構成されている、
請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1及び第2のセンサは、前記体重に統合され、
補助センサが前記体重に接続されているハンドグリップ電極に統合され、
前記ハンドグリップ電極及び補助センサは、前記ユーザの心電図もしくはフォトプレチスモグラフィ特性の少なくとも一方を検出するように構成されている、
請求項3に記載のシステム。
【請求項11】
末梢血圧センサをさらに含み、
プロセッサを含む前記論理回路は、
前記プロセッサが中心圧を判定するために前記末梢血圧センサの出力を使用し、
経時的に心弾動図信号を生成し、
動脈の剛性及び中心/末梢圧の差異の少なくとも1つの指標を提供する、
ように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記体重は、RMS心弾動図データ及び集合平均心弾動図振幅データの少なくとも一方を含むベースライン・データを記憶する、メモリを含み、
前記論理回路は、記憶された前記ベースライン・データに基づいて出力心弾動図信号を生成するように構成されている、
請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記論理回路は、前記ユーザの治療法を判定するために有用な期間にわたって、前記ユーザの心血管特性及び/もしくは体重の記録された変化を使用するように構成されている、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1及び第2のセンサは前記体重に統合され、
補助センサが前記体重に接続されている脱着可能なコンポーネントに統合され、前記ユーザのフォトプレチスモグラフィ特性を検出するように構成されており、
前記論理回路は、経時的に心弾動図信号を生成し、動脈の剛性及び中心/末梢圧の差異の少なくとも一方の指標を提供するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ユーザから検出される特性を用いてECG信号を生成するように構成されている補助センサをさらに備え、
前記論理回路は、前記ECG信号に基づいて、心弾動図信号を生成するために使用される変形関数の係数を変更するように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2のセンサは、下行大動脈のT2タイミングを取得するために、足−足ICGセンサを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項17】
T1タイム・ポイントを取得するために、手−手インピーダンス心拍動曲線センサをさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項18】
前記心臓に関連する信号は大動脈弓近傍の力を示し、
前記論理回路は、動脈の老化に前記動脈の脈波速度を関係付けるように構成されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
ユーザが体重計の上に起立している間に、ユーザの手−手インピーダンス心拍動曲線を検出するように構成され配置されている第1のセンサと、
前記ユーザが前記体重計の上に起立している間に、前記ユーザの動脈もしくは器官の体積変化の光学的測定を含む、末梢動脈位置における前記ユーザの特性を検出するように構成され配置されている第2のセンサと、
プロセッサと、
を備え、
前記プロセッサが、
前記手−手インピーダンス心拍動曲線から、前記ユーザの大動脈の上行大動脈の圧脈波を示すT1信号を生成し、
前記T1信号、検出された前記手−手インピーダンス心拍動曲線及び大動脈と末梢動脈位置との間の距離の関数として動脈の脈波速度を判定する、
体重計
を備える、システム。
【請求項20】
センサを統合する体重計を用いて、ユーザが前記体重計の上に起立している間であって、前記ユーザが立位である間、前記ユーザの大動脈を通る血液の機械的な動きを示す心弾動図もしくは手−手インピーダンス心拍動曲線のT1信号を取得し、
動脈の脈波速度を判定することができるように、前記ユーザが体重計の上に起立している間に前記ユーザの大動脈に対して十分末梢である位置で圧脈拍を検出し、
プロセッサが、
前記T1信号に対応するタイミング及び前記圧脈拍のタイミングを用いて前記動脈の脈波速度を判定する、
ことによって、動脈の剛性測定値を生成する、
方法。
【請求項21】
前記圧脈拍を検出することは、前記プロセッサがユーザの四肢で前記圧脈拍を検出することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記心弾動図の信号を取得することは、前記プロセッサが前記ユーザの足に及ぼされる下向きの圧力の変化を測定することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記プロセッサが、脈波速度及び血圧の変化の所定の関係を用いることによって血圧の変化を判定することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ユーザの足に及ぼされる圧力から心弾動図信号を取得し、
前記足の動脈から圧脈拍を取得し、
前記心弾動図信号及び前記圧脈拍に対応するタイミングを比較する、
ことによって、プロセッサが前記ユーザの動脈の脈波速度を判定する、
方法。
【請求項25】
ユーザに循環機能の態様を通信するための統合ディスプレイと、
ケア・ワーカに未処理データ及び計算済みパラメータを提供するように構成されているインターフェイスと、
をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項26】
前記足の動脈から圧脈拍を取得することは、前記ユーザの大腿動脈の下の位置で圧脈拍を検知するセンサを用いることを含む、
請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、循環機能を観察することに関し、特定の例において、動脈硬化及び中心動脈血圧の検出のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧は、総体的に、心血管疾患(CVD)のリスクへの主要な原因である。世界中の卒中の54%及び虚血性心疾患(IHD)の47%のケースが高血圧を原因とする。主に、国民がより高齢になり、より肥満化してきている結果、米国だけでも、高血圧は4分の1を大きく越える人口に影響を及ぼしている。高血圧の適切な管理はCVDリスクを大きく低減することができる。しかし、高血圧の変化を診断するため、及び、観察するために利用可能なテストの数は限られており、慢性的な高血圧の潜在的な原因は多い。
【0003】
高血圧及びCVDリスクに関連する他の循環系の問題は動脈の老化である。動脈の老化は、動脈壁を硬化し、血圧の上昇、左室肥大、心筋梗塞、脳卒中及び腎不全を含む多数の心血管障害と余病の主因と考えられる。
【0004】
以下の非特許文献は、様々なサポートするマテリアル及び教示を提供し、参照によって、全体がここに含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0094147号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】アラメツサ(Alametsa)ら、「座位及び水平位置における心弾動図記録法(Ballistocardiography in sitting and horizontal positions)」、生理学的測定(Physiological (生理学的)Measurement)、2008年、第29巻、頁1071
【非特許文献2】アラメツサ(Alametsa)ら、「加速及び電気機械フィルム・センサによる心弾動図研究(Ballistocardiogaphic studies with acceleration and electromechanical film sensors)」、医用工学及び物理(Medical engineering & physics)、2009年、第31巻、頁1154〜1165
【非特許文献3】アレン(Allen)、「臨床生理学的測定におけるフォトプレチスモグラフィ及びその応用(Photoplethysmography and its application in clinical physiological (生理学的)measurement)」、生理学的測定(Physiological (生理学的)Measurement)、2007年、第28巻、頁R1
【非特許文献4】アボリオ(Avolio)ら、「動脈メディアのエラスチンの構造及び機能の変化の定量化(Quantification of alterations in structure and function of elastin in the arterial Media)」、高血圧(Hypertension)、1998年、第32巻、頁170〜175
【非特許文献5】ブラチャー(Blacher)ら、「高血圧患者の心血管リスクのマーカとしての大動脈の脈波速度(Aortic Pulse Wave Velocity as a Marker of Cardiovascular Risk in Hypertensive Patients)」、高血圧(Hypertension)、1999年、第33巻、頁1111〜1117
【非特許文献6】ウィリアムズ(Williams)ら、「中心大動脈圧への血圧低下薬の特異な影響及び臨床成果:導管動脈機能評価(CAFE)研究の主な結果(Differential Impact of Blood Pressure-Lowering Drugs on Central Aortic Pressure and Clinical Outcomes: Principal Results of the Conduit Artery Function Evaluation (CAFE) Study)」、循環(Circulation)、2006年、第113巻、頁1213〜1225
【非特許文献7】ダヴィ(Davies)ら、「脈波分析及び脈波速度:その長所及び短所のクリティカルレビュー(Pulse wave analysis and Pulse wave velocity: a critical review of their strengths and weaknesses)」、高血圧(Hypertension)、2003年、第21巻、頁463〜472
【非特許文献8】デローチ(DeLoach)ら、「血管の剛性:その測定及び疫学的重要性と結果についての研究(Vascular Stiffness: Its Measurement and Significance for Epidemiologic and Outcome Studies)」、腎臓病学米国ソサエティ臨床ジャーナル(Clinical Journal of the American Society of Nephrology)、2008年、第3巻、頁184〜192
【非特許文献9】フィンケルシュタイン(Finkelstein)ら、「血管の柔軟性を判断するための1次及び3次モデル(First- and third-order models for determining arterial compliance)」、高血圧(Hypertension)、1992年、第10巻、頁S11〜S14
【非特許文献10】カプラン(Kaplan)ら、「カプランの臨床高血圧(Kaplan’s Clinical Hypertension)」、第10版、米国ペンシルバニア州フィラデルフィア、リッピンコット&ウィルキンズ(Lippincott Williams & Wilkins)、2010年
【非特許文献11】コッペン(Koeppen)ら、「ベルン&レヴィ生理学(Berne & Levy Physiology)」、第6版、モスビー(Mosby)、2008年
【非特許文献12】マクベイ(McVeigh)、「脈拍波形分析及び動脈壁特性(Pulse waveform analysis and arterial wall properties)」、高血圧(Hypertension)、2003年、第41巻、頁1010〜1011
【非特許文献13】ニコルス(Nichols)ら、「マクドナルドの動脈における血流、理論、実験及び臨床原理(McDonald’s Blood Flow in Arteries, Theoretical, Experimental and Clinical Principles)」、第5版、ホッダー・アーノルド、2005年
【非特許文献14】オリバー(Oliver)ら、「動脈の剛性及びアテローム・イベントのリスクの非侵襲性評価(Noninvasive assessment of arterial stiffness and risk of atherosclerotic events)」、動脈硬化症、血栓症、血管バイオロジー(Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology)、2003年、第23巻、頁554〜566
【非特許文献15】オルーク(O’Rourke)ら、「動脈の剛性の臨床への適用:定義及び参照の値(Clinical applications of arterial stiffness; definitions and reference values)」、高血圧(Hypertension)、2002年、第15巻、頁426〜444
【非特許文献16】サファー(Safar)、「動脈の老化−血行力学の変化及び治療のオプション(Arterial aging - hemodynamic changes and therapeutic options)」、ネイチャー・レビュー心臓学(Nature Reviews Cardiology)、2010年、第7巻、頁442〜449
【非特許文献17】スカボロ(Scarborough)ら、「心弾動図の用語及び規定の提案:改訂及び拡張:心弾動図の用語に関する委員会の報告(Proposals for Ballistocardiographic Nomenclature and Conventions: Revised and Extended: Report of Committee on Ballistocardiographic Terminology)」、循環(Circulation)、1956年、第14巻、頁435〜450
【非特許文献18】スタア(Starr)、「心臓の反跳及び血液の影響から人の心臓出力及び心機能の異常さを推定することに関する研究:心弾動図(Studies on the estimation of cardiac output in man, and of abnormalities in cardiac function, from the heart’s recoil and the blood’s impacts; tha ballistocardiogram(心弾動図))」、米国生理学ジャーナル(The American Journal of Physiology)、1939年、第127巻、頁1〜28
【非特許文献19】スタア(Starr)ら、「検死時の収縮をシミュレートすることによる研究:2.心臓及び末梢のファクタと脈波の起源との関係に関する実験及び心弾動図(Studies Made by Simulating Systole at Necropsy: II. Experiments on the Relation of Cardiac and Peripheral Factors to the Genesis of the Pulse Wave and the Ballistocardiogram(心弾動図))」、循環(Circulation)、1953年、第8巻、頁44〜61
【非特許文献20】スタア(Starr)、「検死時の収縮をシミュレートすることによる研究:12.心弾動図からの初期心臓力の推定(Studies Made by Simulating Systole at Necropsy: XII. Estimation of the Initial Cardiac Forces from the Ballistocardiogram(心弾動図))」、循環(Circulation)、1959年、第20巻、頁74〜87
【非特許文献21】スタア(Starr)、「生理心臓学への前進、心弾動図に関する第2小論(Progress Towards a Physiological (生理学的)Cardiology, a Second Essay on the Ballistocardiogram(心弾動図))」、内科年史(Annals of Internal Medicine)、1965年、第63巻、頁1079〜1105
【非特許文献22】ヴァン・ポペレ(van Popele)ら、「動脈の剛性とアテローム性動脈硬化との関係:ロッテルダムの研究(Association between arterial stiffness and atherosclerosis: The Rotterdam Study)」、卒中(Stroke)、2001年、第32巻、頁454〜460
【非特許文献23】ワン(Wang)ら、「動脈の剛性の評価、血管リスクの評価のための展開医療バイオマーカ・システム(Assessment of Arterial Stiffness, A Translational Medicine Biomarker System for Evaluation of Vascular Risk)」、CVセラピュティクス(CV Therapeutics)、2008年、第26巻、頁214〜223
【非特許文献24】ウィアード(Wiard)ら、「休憩及び運動状態における心弾動図の中心大動脈力の推定(Estimation of central aortic forces in the ballistocardiogram(心弾動図) under rest and exercise conditions)」、第31回IEEE医療及びバイオロジーにおける技術者年次大会(31st Annual IEEE Engineers in Medicine and Biology Conference)、米国ミネソタ州ミネアポリス、2009年
【非特許文献25】ウィアード(Wiard)ら、「改造したバスルームの体重計による心弾動図の動きアーチファクトの自動検出(Automatic detection of motion artifacts in the ballistoardiogram on a modified bathroom scale)」、医療及びバイオロジー・エンジニアリング及びコンピューティング、2010年、頁1〜8
【非特許文献26】アリハンカ(Alihanka)ら、「心弾動図、心拍数及び呼吸を長期間観察するための新規な方法(A new method for long-term monitoring of the ballistocardiogram(心弾動図), heart rate, and respiration)」、米国生理学ジャーナル(The American Journal of Physiology)、1981年
【非特許文献27】チャウドリ(Chaudhry)ら、「心不全で入院する前の体重変化パターン(Patterns of weight change preceding hospitalization for heart failure)」、循環(Circulation)、2007年、頁1549〜1554
【非特許文献28】デュビン(Dubin)、「EKGの迅速な解釈(Rapid interpretation of EKG’s)」、第6版、米国フロリダ州タンパ、カバー・パブリッシング(Cover Publishing Co.)、2000年
【非特許文献29】エテマヂ(Etemadi)ら、「体重計による心収縮の非侵襲性評価(Non-invasive assessment of cardiac contractility on a weighing scale)」、第31回IEEE医療及びバイオロジーにおける技術者年次大会(31st Annual IEEE Engineers in Medicine and Biology Conference)、米国ミネソタ州ミネアポリス、2009年
【非特許文献30】ゲージ(Gage)ら、「静かに起立している場合の倒立振り子モデルの運動学的及び運動の有効性(Kinematic and kinetic validity of the inverted pendulum model in quiet standing)」、歩行姿勢(Gait Posture)、2004年、頁124〜132
【非特許文献31】イナン(Inan)ら、「バスルームの体重計ベースの心弾動図における運動回復時の非侵襲性心拍出量傾向(Non-invasive cardiac output trending during exercise recovery on a bathroom-scale-based ballistocardiograph)」、生理計測(Physiological (生理学的)Measurement)、2009年、頁261〜274
【非特許文献32】イナン(Inan)ら、「家庭観察のためのロバストな心弾動図の取得(Robust ballistocardiogram(心弾動図) acquisition for home monitoring)」、生理計測(Physiological (生理学的)Measurement)、2009年、頁169〜185
【非特許文献33】イナン(Inan)ら、「同時に取得される心電図を用いた心弾動図信号を推定するための新規な方法(Novel methods for estimating the ballistocardiogram(心弾動図) signal using a simultaneously acquired electrocardiogram(心電図))」、第31回IEEE医療及びバイオロジーにおける技術者年次大会(31st Annual IEEE Engineers in Medicine and Biology Conference)、米国ミネソタ州ミネアポリス、2009年、
【非特許文献34】イナン(Inan)ら、「同時に取得される心電図を用いた心弾動図信号を推定するための新規な方法(Novel methods for estimating the ballistocardiogram(心弾動図) signal using a simultaneously acquired electrocardiogram(心電図))」、第31回IEEE医療及びバイオロジーにおける技術者年次大会(31st Annual IEEE Engineers in Medicine and Biology Conference)、米国ミネソタ州ミネアポリス、2009年、
【非特許文献35】イナン(Inan)ら、「立位の心弾動図測定のための雑音参照として足から取得される下半身の筋電図の信号を評価する(Evaluating the lower-body electromyogram signal acquired from the feet as a noise reference for standing ballistocardiogram(心弾動図) measurements)」、生物医学における情報技術に関するIEEE議事録(IEEE Transactions on Information Technology in Biomedicine)、2010年、頁1188〜1196
【非特許文献36】イシジマ(Ishijima)、「家庭でバイタル・サインを観察するための控えめなアプローチ(Unobtrusive approaches to monitoring vital signs at home)」、医学及び生物工学及びコンピューティング(Medical & Biological(生物学的) Engineering & Computing)、2007年、頁1137〜1141
【非特許文献37】マソウヂ(Masoudi)ら、「高齢者の慢性うっ血性心不全の負担:方針と研究の大きさ及び含み(The burden of chronic congestive heart failure in older persons: magnitude and implications for policy and research)」、心不全レビュー(Heart Failure Reviews)、2002年、頁9〜16
【非特許文献38】パウカ(Pauca)ら、「橈骨動脈圧波形から上行大動脈圧を推定する方法の前向き評価(Prospective Evaluation of a Method for Estimating Ascending Aortic Pressure From the Radial Artery Pressure Waveform)」、高血圧(Hypertension)、2001年、頁932〜937
【非特許文献39】ピシニ(Piccini)ら、「心不全管理における診断観察戦略(Diagnostic monitoring strategies in heart failure management)」、米国心臓ジャーナル(American Heart Journal)、2007年、頁12〜17
【非特許文献40】ラパポート(Rappaport)ら、「心弾動図:1.物理的考察(Ballistocardiography: I. Physical considerations)」、循環(Circulation)、1953年、頁229〜246
【非特許文献41】ロザモンド(Rosamond)ら、「心臓疾患及び卒中統計−2008年更新:米国心臓学会統計委員会及び卒中統計小委員会からの報告(Heart disease and stroke statistics-2008 update: a report from the American Heart Association Statistics Committee and Stroke Statistics Subcommittee)」、循環(Circulation)、2008年、頁e25〜e146
【非特許文献42】ウィンタ(Winter)ら、「静止立位におけるバランスの剛性制御(Stiffness control of balance in quiet standing)」、神経生理学ジャーナル(Journal of Neurophysiology)、1998年、頁1211〜1221
【非特許文献43】ディビス(Davis)ら、「若年及び老年の健康者の能動的な立位は末梢抵抗の増加の存在における波反射を低減する(Active standing reduces wave reflection in the presence of increased peripheral resistance in young and old healthy individuals)」、高血圧ジャーナル(Journal of Hypertension)、2011年、29号、頁682〜689
【非特許文献44】キム(Kim)ら、「姿勢変更によるPTTの血管変動及び血管特性指標(Vascular Variation of PTT and the Vascular Characteristic Index According to the Posture Change)」、2007年収束情報技術に関する国際会議抄録(Proceedings of the 2007 International Conference on Convergence Information Technology (ICCIT '07))、IEEEコンピュータ・ソサエティ(IEEE Computer Society)、米国ワシントンDC、2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
血管の剛性及び中心血圧を容易に観察できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、血管の剛性及び中心血圧を観察するためのシステム、方法及びアプローチに関する。本開示は、ここに含まれる請求項に見合う、以下に提示される実装及び応用を含む多くの実装及び応用の例示である。
【0009】
本開示の実施形態は、動脈の老化(血管の剛性)及び中心動脈血圧を測定するための、心弾動図、インピーダンス・カルジオグラフィ、フォトプレチスモグラフィ及び末梢血圧測定の使用に関する。動脈の老化は、動脈壁を硬化し、血圧の上昇、左室肥大、心筋梗塞、脳卒中及び腎不全を含む心血管障害と余病の主因と考えられる。本開示の様々な実施形態は、大動脈の剛性と動脈壁の厚さ(アテローム性動脈硬化症)とは、密接に関連するように見えることを認識する。本開示の態様は、各々が、身体の2つの異なる位置にそれらの起源を有する複数の信号を、単一の位置で(例えば、改造されたバスルームの体重計を用いて、足で)、計測することにも関する。これは、動脈の剛性を判断するために特に有用であり得る。例えば、心弾動図のための信号は大動脈弓に起源を有し、フォトプレチスモグラム(PPG)のための信号は足に起源を有してもよい。この態様は、例えば、身体の複数の位置に高感度のプローブを正確に配置する必要がないため、(例えば、動脈の脈波速度を計算するための)これらの2つの信号の相対的なタイミングの測定を促進することができる。このような態様は、例えば、センサのタイプ及び自己測定のためのアレンジメントによって、脈波速度の測定の再現性を改善するために有用であり得る。
【0010】
例示的な実施形態によれば、システムはBCG(心弾動図)のデータをユーザから取得する。システムは、BCG取得装置、補助センサ及び処理回路を含む。BCG取得装置は、ユーザから、物理的動き及びユーザの基部大動脈の機械的出力の少なくとも一方を示すBCG信号を取得する心臓及び血管特性センサを含む。補助センサは、ユーザの末梢動脈の剛性の特性を判断するために、ユーザの足で、血圧脈拍移動時間を検出し、次に、検出された指標を特徴付ける出力を提供する。処理回路は、ユーザの全体的な循環機能の最適な推定値を判断するために、及び、ユーザの動脈の状態を示す出力結果を生成するために、センサ出力を使用する。
【0011】
本開示の他の例示的な実施形態と矛盾せず、システムはユーザからBCG(心弾動図)データを取得する。システムは、BCG取得装置、複数の補助センサ及び処理回路を含む。BCG取得装置は、物理的な動き及びユーザの基部大動脈の機械的な出力の少なくとも一方を示すBCG信号をユーザから取得する心臓及び血管特性センサを含む。補助センサは、ユーザの異なる枝に沿った大動脈の剛性の特異な特性を判断するために、ユーザの足及び手で血圧脈拍移動時間を検出し、次に、検出された指標を特徴付ける出力を提供する。処理回路は、異なる動脈の枝に沿ったユーザの全体的な循環機能の最適な推定値を判断するためにセンサ出力を使用し、ユーザの動脈の状態の結果を示す出力を生成するために、中間セグメントの動脈の剛性を推定する。
【0012】
本開示の他の例示的な実施形態と矛盾せず、システムはインピーダンス・カルジオグラム(ICG)データをユーザから取得する。システムは、ICG取得装置、補助センサ及び処理回路を含む。ICG取得装置は、ユーザから、物理的な動き及びユーザの基部大動脈の機械的な出力の少なくとも一方を示すICG信号を取得するセンサを含む。補助センサは、ユーザの末梢動脈の特性を判断するために、ユーザの足で、血圧脈拍移動時間を検出し、次に、検出された指標を特性付ける出力を提供する。処理回路は、ユーザの全体的な循環機能の最適な推定値を判断し、ユーザの動脈の状態を示す出力結果を生成するために、センサ出力を使用する。
【0013】
本開示の他の例示的な実施形態と矛盾せず、システム/方法は、BCG取得装置に起立しているユーザからの心弾動図(BCG)測定値を(例えば、リアルタイムで)提供する。力センサは、ユーザが装置の上に起立している間、物理的な動き及び/もしくはユーザの心臓の機械的な出力の信号指標を取得するように配置されている。第2の特定のセンサ・タイプ(例えば、ECG、加速度計、ジオホン、変位、筋電図もしくはビデオ取得装置)は取得された信号についての追加的な情報を提供する。追加的な情報は、雑音の指標及び/もしくはBCG測定値に存在する干渉の指標もしくはユーザの他の特性の指標であってよい。プロセッサは取得された信号を処理し(例えば、取得されたBCG記録をフィルタリングもしくはゲーティングし(例えば、重みを付けし、もしくは様相を除去し))、ユーザに診断を提供する。
【0014】
いくつかの実装において、取得されたBCG記録は、利用可能な雑音もしくは干渉レベルより高い雑音もしくは干渉を含む、重みが導出された動き信号もしくは記録の除去セグメントに(例えば、平均化アルゴリズムに)ゲーティングされる。例えば、より高い雑音の範囲が、最大尤度の平均化などの重みづけ集合平均アルゴリズムにおいて、より低い重みに与えられ得る。
【0015】
本開示の態様は、補助センサを用いたBCG信号の動きアーチファクトの検出に関する。いくつかのシチュエーションにおいて、患者の動きはBCGの許容できない数の雑音を含むセグメントを導く。BCG力信号レベルは、数ニュートンのオーダーの大きさである。身体の動きは、容易に同様な大きさ及びより大きなオーダーの大きさの雑音アーチファクトを導入する。BCG信号レベルのオーダーの雑音をBCG信号のみから検出することはおそらく困難である。
【0016】
他の例示的な実施形態は、ユーザからのBCG(心弾動図)データを提供するシステムに関する。システムは、BCG取得装置、補助センサ及び処理回路を含む。BCG取得装置は、物理的な動き及びユーザの心臓の機械的な出力の少なくとも一方を示すBCG信号を、ユーザから、取得する心臓特性センサを含む。補助センサは、BCG信号にある雑音の源及びユーザの生理的特性(例えば、心臓特性及び/もしくは雑音ベース特性)の少なくとも一方を示す指標を検出し、検出された指標を特徴付ける出力を提供する。処理回路は、取得されたBCG信号を処理し、ユーザの心臓の状態を示すBCG信号を出力するために、補助センサの出力を使用する。
【0017】
本開示の態様は、上腕動脈及び大動脈の間の血圧の差異を定量化するシステムにも関する。システムは、BCG取得装置、腕に沿ったポイント(例えば、上腕、橈骨、もしくは指)の補助PPGセンサ、及び下行大動脈の末梢ポイント(例えば、足)の他のPPGセンサを含む。上腕及び中心の圧の差異を判断するために、動脈のトラックに沿った血管の剛性の測定値を使用する。システムは、末梢血圧を測定するための装置(例えば、自動上腕血圧カフ、携帯型血圧モニタ、指血圧計など)を含む。中心大動脈血圧が、システムからの大動脈の剛性測定値と共に末梢血圧測定値を使用して、判断される。
【0018】
本開示の上記サマリは例示の実施形態の各々を説明すること、もしくは、本開示の全ての実装を説明することを意図していない。
【発明の効果】
【0019】
血管の剛性及び中心血圧を容易に観察できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本開示の実施形態と矛盾しない、心弾動図(BCG)及びフォトプレチスモグラフィ(PPG)を取得することができる体重計(例えば、バスルームの体重計)の図を示す。
図1B】本開示の実施形態と矛盾しない、さらに、タイム・ポイントT3を取得するための指PPGセンサを含む体重計(例えば、バスルームの体重計)の図を示す。
図2】本開示の実施形態と矛盾しない、指PPG信号を利用して、BCG及び足PPGの中心測定値及び末梢測定値を結合し、中間的な動脈の剛性値を導出するアルゴリズムを例示する。
図3】本開示の他の実施形態と矛盾しない、市販の体重計からBCG信号を取得する回路を示す。
図4】本開示の実施形態と矛盾しない、手から手へのインピーダンス・カルジオグラム及びフォトプレチスモグラフィ(PPG)信号を取得することができる体重計(例えば、バスルームの体重計)の図を示す。
図5】本開示の実施形態と矛盾しない、大動脈圧の脈拍と中心大動脈力(CAF)との波形のタイミングに関連するコンピュータ・シミュレーション結果を例示する。
図6】本開示の実施形態と矛盾しない、頸動脈の脈拍とBCGとのタイミング関連を示す。
図7】本開示の実施形態と矛盾しない、複数のテスト被験者からの心弾動図のI波と頸動脈の圧脈拍の開始との間の時間差(秒)のヒストグラムを示す。
図8】T1タイミングについて、本開示の実施形態と矛盾しない、4カ月を越える、人のBCG I波と頸動脈の大動脈拍とのECG R波からのタイミングを示す。
図9】本開示の実施形態と矛盾しない、4カ月を越える、頸動脈と人の足でT2が測定されるBCGベース脈拍移動タイミング(PTT=T2−T1)との比較を示す。
図10】本開示の実施形態と矛盾しない、指及び足指でとられた末梢PPG信号とBCGとの相対的なタイミング関連を示す。
図11】座位、立位、臥位の単一の被験者についての姿勢に依存する脈拍移動タイミングを示す。
図12】本開示の実施形態と矛盾しない、複数の被験者の年齢(年)に対する立位での脈波速度のプロットを示す。
図13】本開示の実施形態と矛盾しない、鼓動から鼓動までの収縮期血圧(SBP)(単位:mmHg、上)及び改造されたバスルームの体重計から取得されるBCG及び足PPG信号によって推定される鼓動から鼓動までの立位のPWV測定値(単位:メータ毎秒、下)の例示的なタイム・トレースを示す。
図14A】本開示の他の例示的な実施形態と矛盾しない、BCG信号強調のためにBCG及び補助センサを用いて心血管機能を検出するシステム及びアプローチのブロック図を示す。
図14B】本開示の他の例示的な実施形態と矛盾しない、BCG信号強調のためにBCG及び補助センサとしてハンドルバーECGセンサを用いて心血管機能を検出するシステム及びアプローチのブロック図を示す。
図14C】本開示の他の例示的な実施形態と矛盾しない、BCG信号強調のために改造された体重計に含まれるBCG及び埋め込み動きセンサ及びECGを用いて心血管機能を検出するシステム及びアプローチのブロック図を示す。
図15】本開示の実施形態と矛盾しない、末梢血圧測定値、脈波速度測定値及びユーザの情報を用いて中心圧を推定する方法を示す。
図16A】(アトコア・メディカルのシグモコア動脈トノメータによって取得される)複数の被験者の中心収縮期血圧を示す。
図16B】(アトコア・メディカルのシグモコア動脈トノメータによって取得される)複数の被験者の中心収縮期血圧に対する(本開示の実施形態と矛盾しない)立位の脈波速度のプロットである。
図17A】(アトコア・メディカルのシグモコア動脈トノメータによって取得される)複数の被験者の中心脈圧を示す。
図17B】(アトコア・メディカルのシグモコア動脈トノメータによって取得される)複数の被験者の中心脈圧に対する(本開示の実施形態と矛盾しない)立位の脈波速度のプロットである。
図18A】本開示の実施形態と矛盾しない、末梢血圧及び大動脈中心圧の計測された収縮期の差異を示す。
図18B】本開示の実施形態によって取得される計測された中心収縮期圧の差異及び本開示の実施形態と矛盾しない、アトコア・メディカルのシグモコア動脈トノメータによって取得される中心圧測定値によって取得される計測された中心収縮期圧の差異を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
開示は様々な変更された形態に変形可能であり、その例示は図に示され、詳細に説明される。しかしながら、示される及び/もしくは説明される特定の実施形態に開示を限定する意図はないことが理解されるべきである。反対に、全ての変更、同等のものが本開示の思想及び範囲でカバーされることを意図する。
【0022】
本開示は、図面と関連する以下の様々な実施形態の詳細な説明を考慮すると、より完全に理解することができる。
【0023】
本開示の様々な実施形態は、患者による家庭での使用を促進するような心血管機能を観察する(例えば、患者の心血管疾患を判断する)ことに関連して特に有用であることがわかっている。本開示は、そのような適用に限定される必要はなく、本開示の様々な態様を、このコンテキストを用いた様々な例の説明によって認識することができる。
【0024】
本開示の態様は、ユーザの体重及び/もしくは体重変動を検出するセンサによって、ユーザの心血管機能を検出することに関する。処理アレンジメントもしくは処理回路は、検出された体重及び/もしくは体重変動に基づいて、ユーザの心血管機能特性を判定するように(例えば、アルゴリズム/変換によって)構成される。処理アレンジメントは、アルゴリズム/変換のパラメータとして、1つもしくは複数の追加されたセンサからのデータを使用する。これらの例示的な態様に関連して、予想外に実用的で信頼できる中心血圧及び血管の剛性の測定値を生成するために、そのような実装が、特に有用であり得ることが発見された。
【0025】
本開示の実施形態は、立位での動脈硬化の測定値が、臥位及び座位で取得される測定値と比較して有益であることを認識することに関する(図11)。立位は、ほぼ全身の長さの動脈の剛性の測定の測定値を示すと考えられる。すなわち、心臓への圧力波の影響のもっとも大きな原因に関連する人体の多くの部分を特徴付ける。
【0026】
本開示の実施形態は、動脈の老化(血管の剛性)を測定するためのBCG測定の使用に関する。動脈の老化は、動脈壁を硬化し、血圧の上昇、左室肥大、心筋梗塞、脳卒中及び腎不全を含む多数の心血管障害と余病の主因と考えられる。本開示の様々な実施形態は、大動脈の剛性と、動脈壁の厚さ(アテローム性動脈硬化症)とは、密接に関連するように見えることを認識する。
【0027】
本開示の態様は、各々が、身体の2つの異なる位置にそれらの起源を有する複数の信号を、単一の位置で(例えば、改造されたバスルームの体重計を用いて、足で)、測定することに関する。例えば、心弾動図のための1つの信号は大動脈弓に起源を有し、足指PPGのための1つの信号は足に起源を有することができる。この態様は、例えば、圧平眼圧測定の場合のように、身体の複数の場所に、感度が高いプローブを正確に配置する必要がないので、(例えば、脈波の速度を計算するために、)これらの2つの信号の相対的なタイミングの測定を促進することができる。このような態様は、例えば、測定セットアップ手順の容易さによって、脈波の速度の測定値の再現性を改善するためにも有用であり得る。
【0028】
本開示の態様は、動脈の老化(血管の剛性)を測定するために、BCG測定値を使用することに関する。非特許文献15に記載されているように、動脈の老化は、動脈壁を硬化し、血圧の上昇、左室肥大、心筋梗塞、脳卒中及び腎不全を含む多数の心血管障害と余病の主因と考えられる。非特許文献22に記載されているように、大動脈の剛性と、動脈壁の厚さ(アテローム性動脈硬化症)とは、密接に関連するように見える。
【0029】
慢性的に増加する血圧(高血圧)は、治療されないならば、多くの心血管疾患及び高い死亡率と直接的にリンクする状態である。高血圧は、制御されることが可能であり、正常者レベルの血圧は、血流、心収縮における圧波の影響の低減、もしくは、収縮性のために血管抵抗を低減するように、特定の経路に作用し、心血管疾患の余病を低減し、寿命を延ばすことができるかもしれない医薬品(例えば、ベータ受容体遮断薬、カルシウム・チャネル・ブロッカー、ACE阻害薬及び利尿剤)によって達成されることができる。抗高血圧療法の成功、そして、おそらく、心血管疾患のリスク管理の成功は、従来、抗高血圧療法の成功を判断するための主なパラメータとして拡張期及び収縮期の値を評価する、末梢血圧(例えば、腕の上腕血圧もしくは手首の橈骨血圧)の測定値によって判断されてきた。
【0030】
非特許文献16、非特許文献5に記載されるように、心血管研究は、中心血圧(大動脈圧の脈拍)が、末梢血圧の測定値よりも心血管疾患のリスクをより確実に階層化することを示唆している。大動脈は心臓と主要な器官との間に配置されており、末梢の圧脈拍ではなく、大動脈圧の脈波が当該器官によって最終的に経験される力である。中心圧は、器官に課される負荷及びその結果であるダメージをよりよく示すことができる。動脈の老化、及び、その結果である心血管の硬化(動脈の血管の剛性)からしばしば現れる異常な中心血行力学特性は、最終的には、心血管によって誘発される器官のダメージ及び故障につながることがある。心血管疾患を発症するリスクを有する人は、心血管のリスクを適切に管理する可能性を向上させるために、しばしば観察される必要がある。
【0031】
動脈の弾力及びその他の血行力学特性の変化の検出は、既に高血圧である、及び/もしくは、抗高血圧治療中である人へ治療に関する利益を提供するためだけでなく、まだ、高いと考えられるレベルまで血圧が達していないが、心血管イベントについてリスクが増加してきている人への予後の利益及び診断の利益を提供するために有用である。
【0032】
本開示の態様は、医療スタッフの管理もしくは技術的な支援を必要とせず、シンプルで、信頼でき、かつ、迅速に、彼らの中心血行力学特性を測定し、観察するために、正常血圧及び高血圧である人の双方に有用である装置及び方法に関する。
【0033】
cfPWV(大腿頸動脈脈波速度)の測定値を大動脈の剛性を定量化するために使用することができる。頸動脈は、上行大動脈の圧脈波を示す第1タイム・ポイント(T1)として使用され、大腿動脈は、動脈の終点を示す第2タイム・ポイント(T2)として使用される。時間ΔT=T2−T1を、速度の値を取得するために、測定位置間の距離(D)で除す。
【0034】
ここで説明される実施形態と矛盾せず、タイム・ポイントT1はBCG計測「BCG T1」によって提供されてもよく、中心のもしくは頸動脈のタイム・ポイントT1に対応し、タイム・ポイントT2はPPG測定「PPG足指T2」によって提供されてもよく、末梢動脈のタイム・ポイントT2に対応する。タイム・ポイントBCG T1及びPPG足指T2は、動脈の血管の剛性を計算するために使用されてもよい。
【0035】
動脈の剛性は、直接、剛性の測定を実行することによってではなく、動脈に沿って、脈波速度(PWV)を計測することによって推定することができる。Moens−Korteweg方程式は、血管壁弾力率(E)、壁圧(t)、直径(D)及び血液密度(ρ)に、波速度(c)を関連付ける。
【数1】
【0036】
動脈のPWVは動脈の剛性の増加と共に増加する、動脈の剛性を定量化するための非侵襲性の測定である。脈拍が移動する線に沿った2つの記録サイトの間の差異及び(圧のもしくは流れの)波上の対応するポイントの間の遅延として、脈波速度は計測される。波面が2つの波形の通常の基準ポイントである(非特許文献15)。頸動脈及び大腿動脈が、大動脈の剛性を推定するための計測ポイントとして使用されてもよい。動脈の脈波は、中心の上行大動脈を代表する頸動脈、及び、より末梢の動脈としての大腿動脈で記録される。頸動脈の表面的な位置及び大腿動脈は、非侵襲性の圧平測定を可能にする。
【0037】
これらの2つの参照点での、脈波の、足のような、所定の部分の到着(鋭い最初の収縮期のアップストローク)の間の時間遅延を、同時測定もしくは心電図(ECG)のR−波のピークへのゲート制御のいずれかによって取得することができる。脈波によって移動する距離は身体表面にわたって計測され、脈波速度は、次に、距離/時間として計算される(非特許文献15、非特許文献23)。
【0038】
感圧トランスデューサもしくはセンサ(ピエゾ抵抗素子、圧電、容量)、圧脈波及び流脈波が同じ速度で伝播するという原理に基づくドップラー超音波、もしくは、動脈につけられている小型マイクロ圧力計の圧力が動脈内の圧力と同等である圧平眼圧測定を用いて、圧抵抗動脈の脈波を検出することができる(非特許文献15)。
【0039】
動脈の剛性を低減する医薬である抗高血圧の薬剤の有効性を評価するために、抗高血圧治療中の観察ツールとして、cfPWVを使用することができる(非特許文献6)。
【0040】
圧脈波分析と比較して、脈波速度は補助的な(例えば、上腕の)血圧測定を必要としない。さらに、脈波速度は、心血管障害(特に、55歳を越える人々の高血圧)の有用な臨床指標を提供することが報告されている。
【0041】
本開示の態様は、動脈の剛性のような中心血行力学特性の信頼できる連続的な評価が、予後、診断、心血管疾病への治療アプローチ、及び、心血管リスクの全体的な管理に重要な入力及びガイダンスを提供することを認識する。動脈が徐々に硬化することによる、動脈の脈管系の機能的及び構造的変化(例えば、リモデリング)は 、血圧の上昇につながる。血圧は、心血管疾病の主なリスクの因子となる。血圧が正常範囲内であったとしても、動脈の剛性は、心血管リスクの独立したマーカである。
【0042】
臨床測定に加えて、信頼でき、実行容易な、人の動脈の剛性及び他の中心血行力学特性の家庭での観察は、(比較的まれな)臨床通院によって提供されるよりもかなり高い頻度で、有用な観察データの縦軸を提供する傾向を有し、治療の介在及び心血管リスク管理の双方を促進する
【0043】
本開示の様々な実施形態は、非侵襲性の心弾動図及びフォトプレチスモグラフィ法を用いた脈波速度測定によって、人の動脈の剛性/弾性を判断することによって、人の心血管リスクを評価するシステム及び方法に関する。本開示のある態様は、特に、家庭及び/もしくは臨床設定での観察を促進することに、特に、貢献する。
【0044】
本開示の態様は、大動脈圧による血流インタラクションによって生成される力が、BCG信号の起源に結びつけられていることを認識する。図5に示されるように、この力(中心大動脈力(CAF))は、BCGの振幅と同様であることが発見された。CAFを以下の式によって決定することができる。
【数2】
【0045】
血管の示力図は、液体−個体インタラクションによって血管境界に存在する力を描写する。血流は、圧力(p)及び壁せん断応力(τ)の成分を有する力を壁に働かせる。運動のニュートンの第3法則によって、力は、対で作用する。小さい表面領域(dS)にわたって、液体(t)は作用力であり、血管壁の動弾性的反応(t)は反作用力を提供する。その半円の弓(図5)である大動脈の血管壁の幾何学的形状は、その中で対の力が反作用する3次元システムを提供する。シミュレーションの結果は、大動脈圧(p)が(数ニュートンのオーダーで、)CAFに主に貢献していることを示唆している。BCG力の生成における大動脈の役割の例示において、大動脈のセグメントのシミュレーション(図5)は、大動脈の部分の半円の弓が中心圧誘起力へ貢献している重要な(主要でないならば)領域であることを表している。BCG及び身体におけるその空間的なソース位置の間の生理学的な関係の確立は、脈波速度計算における圧脈拍の開始についての参照及び頸動脈への有効な指標/系として、BCG特徴(例えば、I波)を使用することをサポートする。
【0046】
BCG参照を用いた中心大動脈力の推定及び検出の詳細は、引用される参照と共に、参照によって全体が本明細書に組み込まれる添付の付録2(休憩および運動状況下での心弾動図の中心大動脈力の評価)で説明されている。
【0047】
本開示の実施形態は、頸動脈の脈波測定の代わりに、初期収縮期の大動脈の脈圧を示す血行力学タイム・ポイントを取得するために、心弾動図(BCG)測定を使用することに関する。BCG測定の詳細については、参照によって、本開示に含まれる、2009年10月14日に出願された特許文献1を参照することができる。したがって、本開示の態様は、頸動脈の脈波の触診及び検出などのような、熟練した技術者によってしばしば実行されるタスクに代えて(もしくは、共に)、BCG測定を使用することができることを認識する。
【0048】
心弾動図(BCG)測定に加えて、本開示の実施形態は、フォトプレチスモグラフィ(PPG)測定の使用にも関する。BCG信号は大動脈への血液の駆出により、末梢のPPG信号(例えば、収縮期の鋭いアップストローク)は、圧脈波が足への動脈ツリーを下って移動した後、開始する。BCGのI及びJ波は、前駆出期(PEP)が終了した後、収縮期に生じ、BCG波は、心臓及び大動脈の血流によって誘起された加圧に機械的に関連する。BCG波は、初期収縮期に生じるので、これらのBCG波を、図1A及び図1Bに示されるように、PTT判断の第1のタイム・ポイント(T1)として使用することができ、足のPPGは第2のタイム・ポイント(T2)として供される。心臓/足へ下る大動脈弓の間の計測された距離を、次に、速度(例えば、速度=距離/時間)を決定するためのスケーリング・ファクタとして使用することができる。
【0049】
本開示の実施形態は、動脈もしくは器官の体積の変化を光学測定するフォトプレチスモグラフィ(PPG)を使用することに関する(非特許文献3)。PPGを、動脈の圧力波形を測定するため、もしくは、血液の酸素飽和(パルスオキシメトリ)を定量化するために使用することができる。光源、例えば、LED及び光検出器を、指先、額、足指、もしくは、耳に配置されるセンサと共に、血管を膨張させる圧脈波の結果である血管の膨張を測定するために使用する。放射源の光の波長は、血液中で高い吸光感度を有するように特定される(例えば、血液中で600〜900nmの範囲の吸光度はPPGセンサの光路のヘモグロビン含有量に敏感である)。PPGセンサは、反射タイプもしくは伝達タイプの構成であってよく、導管動脈などの血管もしくは指、足指、耳の細い動脈の微小循環上に配置される。血管が加圧されると、その直径は増加し、光路の吸光物質(例えば、血液)の量は増加し、光検出器の信号は減少する。圧力が低下すると、逆の現象が生じる。結果として得られる脈波からの光信号の形状は、圧力センサを使用して得られたものと、形状及びタイミングについて、相互に強い関連を有する。
【0050】
本開示のある実施形態は、脈波のタイミングを取得する可能性を向上することができ、複数の鼓動を共に平均化することによって、脈波速度(PWV)の正確な推定を取得するために有用であり得る。例えば、脈波速度は、各々が複数の鼓動を含む信号を生成する、2つの信号、心弾動図(BCG)及びフォトプレチスモグラフィ(PPG)を使用することによって決定され得る。平均化は、BCG及び足指で取得されるPPG信号の開始の最適なタイミングから初期収縮期の基準タイミング(一般的には、I波)を検出するために使用され得る。例えば、平均化は、人の鼓動から、記録から、もしくは、集合平均された波形から、抽出されるタイミングに適用され得る。鼓動のタイミング情報を提供する別個の信号(例えば、心電図)は、集合平均のための参照タイミングを提供するために使用されてもよいし、使用されなくてもよい。
【0051】
本開示の実施形態は、大動脈の脈拍を示すタイム・ポイントを取得するために、頸動脈圧平で使用されるような、他の様々な方法と共に、心弾動図記録法(BCG)を使用することができる。
【0052】
本開示の態様は、各々が身体の2つの異なる位置に起源を有する複数の信号を、単一の位置で(例えば、改造されたバスルームの体重計を用いて、足で)、測定することに関する。例えば、1つの信号は心弾動図のために大動脈弓に起源を有し、1つの信号は、(例えば、足指PPGのために、)下腿、足などのひざ下に起源を有していてもよい。
【0053】
この態様は、例えば、身体の複数の位置に高感度のプローブを正確に配置する必要がないため、(例えば、脈波速度を計算するために、)これらの2つの信号の相対的なタイミングの測定を促進することができる。このような態様は、例えば、測定セットアップ手順の容易さによって、脈波速度の測定の再現性を向上するためにも有用であり得る。
【0054】
本開示の態様は、改造されたバスルームの体重計などの、単一の装置に、これらの2つの測定を統合することに関する。被験者が体重計の上に起立すると、BCG及び足PPGが同時に記録される。2つの信号は、身体の2つの異なる信号位置及び時間的なタイミングを代表する単一の点(足)で、記録される。足で記録されるBCGは、大動脈の圧脈拍及びそのタイミングに関連する情報を含む。PPGは、到着圧波を示すために、放出手段及び検出手段の光路内(例えば、足で)ローカル波動を記録する。この構成は、従来の圧平法、及び、T1及びT2タイム・ポイントを取得するために、身体の異なる領域にセンサを配置することに依存する方法と比較して測定を単純化する。
【0055】
本開示の実施形態は、測定値が他の場所から取得されることも許容する。例えば、PPGは被験者の手から測定値を取得してもよいし、及び/または、BCGは、圧力センサによって、椅子に座っている被験者から測定値を取得してもよい。
【0056】
本開示の実施形態において、BCG取得装置は、ユーザからの信号も取得することができる(例えば、改造された)バスルームにある体重計などのように、体重計としても動作する。この実施形態において、脈波速度(PWV)は、データを取得するために体重計に統合されているPPGセンサによって、バスルームの体重計(図1A参照)を用いて、推定される。バスルームの体重計は、足からの心弾動図(BCG)及びフォトプレチスモグラフ(PPG)を測定するように構成されている。BCG及び足PPG(経路がより長い)の間の時間間隔を測定する際に一貫性を提供するために、これは特に有用であり、速度の推定の正確さを改善することができる。例えば、速度は時間によって除された距離と等しいので、動脈の長さの1cmの測定誤差は、心臓から足に比べて、頸動脈から大腿骨への速度推定でより大きな誤差を示す。より短い長さでの測定は、測定誤差への感度がより高いからである。
【0057】
本開示の様々な実施の形態と矛盾せず、改造されたバスルームの体重計などのBCG装置はECG電極を含む。ECG電極は、BCGに別個のタイミング参照を提供し、PPGにも同様のことができる。このような電極は、便宜的に、(有線もしくは無線の)ハンドルに統合されてもよい。
【0058】
本開示の他の実施形態によれば、システムは、関連する末梢の脈波速度(脚の筋動脈の速度)及び中心脈波速度(大動脈及び下行大動脈の速度)についての情報を提供するために、さらに、指PPGセンサを含む。脈波の開始としてBCGタイミングを使用すると、指脈波のタイミングは、末梢の動脈(腕)を通る速度に主に関連する。一方、足PPGは、中心(下行)大動脈及び末梢四肢(脚)を通る伝播を反映する。直接(単純な比率)であろうと、一般的もしくは患者特有のモデルの使用を介そうと、指及び足の両方の測定は、両方の速度の分離を許容する。中心大動脈の速度及び末梢の動脈の速度の両方を推定する能力を、大動脈の血管の剛性の変化をより詳細に評価するために、及び、血管緊張に作用する抗高血圧薬(例えば、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体遮断薬)の効果を評価するために、使用することができる。
【0059】
ここに記載されている実施形態と矛盾せずに、T1タイム・ポイントをBCG測定「BCG T1」によって提供することができ、T1タイム・ポイントは中心、すなわち、T1頸動脈タイム・ポイントに対応し、T2タイム・ポイントを脚から脚へのインピーダンスの心拍動曲線(ICG)「ICG−大腿骨 T2」によって提供することができ、T2タイム・ポイントはT2の末梢動脈時点に対応する。BCG T1及びICG−大腿骨T2タイム・ポイントを、大動脈の血管の剛性を計算するために使用することができる。このシステムは、末梢の動脈のタイム・ポイント[上記「PPG−足指T2」]のタイム・ポイントをさらに取得するために、PPG−足指信号をさらに測定してもよく、大動脈及び脚の間の速度の分離を大腿骨及び脚の両方の測定が許容する。中心大動脈の速度及び末梢の動脈の速度の両方を推定する能力を、大動脈の血管の剛性の変化をより詳細に評価するために、及び、血管緊張に作用する抗高血圧薬(例えば、ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体遮断薬)の効果を評価するために、使用することができる。
【0060】
本開示の様々な実施形態と矛盾せずに、末梢の動脈(腕、脚)及び中心(下行)大動脈からの別個の速度もしくは脈拍の到着時間を、上腕の動脈及び大動脈の圧力差を定量化するために使用することができる(一般に、圧力増幅として参照される。)。脈波の開始としてBCGタイミングを使用することによって、末梢及び中心の血管の剛性が測定され、動脈の圧力が適合しない期間が判定される。中心血圧を決定するために、圧力増幅期間を上腕の血圧測定と共に使用する。血管の剛性及び中心血圧の両方を推定するための能力は、高血圧の管理及び動脈の老化についての心循環系のリスクを識別するための能力を向上する。
【0061】
本開示の他の実施形態において、両足で圧脈拍を測定するために、複数のPPGセンサが改造されたバスルームの体重計に統合される。この複数のPPGセンサの配置は、複数の異なる応用に、特に、有用であり得る。例えば、複数のセンサを、両足のタイミングを平均化することによって、脈拍の到着時間のよりロバストな測定を提供するために、もしくは、冗長さによってロバストさを向上するために、異なる脚の末梢の動脈の疾病(例えば、閉塞、硬化または狭窄)を診断するための方法を提供するために、使用してもよい。
【0062】
本開示の他の実施形態において、PPGセンサは、酸素飽和測定をさらに可能にするように構成されている。
【0063】
本開示の実施形態に矛盾せず、PPG及びBCGのタイミングは、記録全体から採られる鼓動のサブセットから導出される。このサブセットを、雑音測定基準(固定のもしくは患者特有の閾値を用いる信号対雑音比など)に基づいて、もしくは、集合平均ベースの雑音測定基準の必要性を否定するために、スケールの埋め込み雑音参照(例えば、非特許文献25)を使用して、選択することができる。計算されたPWV値の信頼性を示す良質な測定基準を、これらの雑音測定基準もしくは運動測定基準から導出することもできる。
【0064】
本開示の実施形態は、PWVについての情報及びBCG及びPPG信号を利用する脈波解析(PWA)についての情報を提供するシステムに関する。PPG波形の解析は、起立している/直立している場合のPWVが判断されている間の心周期のタイミングに関して、心臓に戻る波反射についての情報を提供する。PWV及び波反射タイミングについての情報を同時に提供するための能力は、血圧は毛細血管床の反射の程度によって変化するかもしれないが、PWVが大幅には変化していない小動脈床で作用する抗高血圧薬の効果を評価するために使用され得る。
【0065】
以下では、まず、BCG(心弾動図)システム及び方法の様々な実施形態を説明し、次に、(特に、)動きセンサ及びフィルタを用いる動脈の老化の測定及び単一の位置での複数の信号の測定に関する実施形態を説明する。説明の順番は、説明される対象の主旨を限定するものではなく、ここで説明される様々な実施形態を結合するための、及び、補うための能力を限定するものではない。
【0066】
他の例示的な実施形態では、BCG(心弾動図)システムは、物理的な動き及びユーザの心臓の機械的な出力の少なくとも一方を示す、ユーザからの、BCG信号を取得する心臓特性センサを含むBCG取得装置を含む。補助センサは、BCG信号に関連する補助的な特性を検出し、検出された指標を特徴付ける出力を提供する。例えば、補助センサは、BCG信号に存在する雑音及びユーザの生理的特性の指標の1つもしくは複数を提供するために、ユーザ及び/またはユーザの環境の特性を検出してもよい。処理回路は、取得したBCG信号を処理するために、及び、ユーザの心臓及び上行大動脈(例えば、大動脈弓)の状態を示す出力BCG信号を生成するために、補助センサの出力を使用する。
【0067】
いくつかの実装において、BCG取得装置は、体重計を含み、補助センサはユーザからのECG信号を検出する心電図(ECG)センサ、もしくは、ユーザの血流の脈拍を検出するフォトプレチスモグラフ・センサを含む。この検出された信号は、BCG取得装置を介して取得される信号を処理するために使用される。
【0068】
他の実装において、補助センサは、ユーザ及び関連するBCG信号の取得の特性を示すか、もしくは、判断するために有用である、ユーザからのECG信号を検出するECGセンサを含む。処理回路は、取得したBCG信号を処理するために、及び、BCG信号を処理するためのアルゴリズムへの入力として検出されたECG信号を用いて、出力BCG信号を生成するために、アルゴリズムを使用する。あるアプリケーションでは、処理回路は、検出されたECG信号を介して生成される検出されたBCG信号の集合平均に基づいて、出力BCG信号を生成する。この平均化は、(単一の集合平均化されたBCG鼓動を提供するように、)静的でも(同期移動平均もしくは指数加重トリガ平均のように)動的でもあり得る。
【0069】
いくつかの実装において、ここで説明されるような体重計に実装することができるストリップ型センサもしくはハンドルバー型センサを用いたBCGベース解析及びECGベース解析の両方について、データが検出される。1つもしくは複数のこのようなセンサは、BCG及びECG解析データの両方を生成するために、引き続いて処理される、ユーザからの信号を効果的に取得するために使用される。ある実装において、検出される及び/もしくは、生成されるECGデータは、物理的な移動及びユーザの心臓の機械的な出力の1つもしくは複数の再現を促進するために取得した信号をフィルタリングすることなどによって、BCG解析データの生成において使用される。例えば、信号対雑音比及びBCG記録の一貫性を向上させるために、BCG及びECG(もしくはフォトプレチスモグラフ)信号を、適応的にフィルタリングすること、もしくは、ECG R波(もしくはフォトプレチスモグラフのタイミング)トリガ集合平均またはECG R波(もしくはフォトプレチスモグラフのタイミング)トリガ移動平均によって処理することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記ストリップ型もしくはハンドルバー型センサは、ユーザの手に接触するように構成されている2電極ECG回路を含む。いくつかの実装において、2電極ECG回路は、アンプ飽和問題を低減するために一方の電極にアクティブな電流のフィードバックを使用し、ECG記録についてより高い信号品質を提示する。検出されたECG特性は、次に、BCGの信号品質を向上するように、適応的なフィルタリング、集合平均、さもなければ、体重計の力センサから測定されるBCG信号の処理に使用され得る。
【0071】
ある実装において、ECGもしくはフォトプレチスモグラフ(もしくは、他の参照信号)は、ピークの検出または鼓動のセグメンテーションの要件もしくは必要性、あるいは、R波検出手段の使用を軽減するように、BCGを推定するために適応的にフィルタリングされる。ある実装において、ECGもしくはフォトプレチスモグラフ信号は、直接的に、適応フィルタに供給される。当該フィルタは、ECGもしくはフォトプレチスモグラフのピーク検出をまったく必要とせずに信号の最適な最小二乗推定を形成するために、所望される応答として未処理のBCG信号である出力を有する。ある実装において、最小二乗アルゴリズムは適応フィルタの重みを適応するために使用される。装置のユーザのための最適な解へフィルタが収束するように、遅い収束速度が選択され得る。
【0072】
特定の実装は、BCG信号を取得し、処理するためにカスタマイズされた電子回路を有する体重計の使用を含む。体重計のユーザは、体重計の上に載る。重さが計測され、時間の関数として記録される。測定の感度は、生成された/記録された信号が所望されるBCG信号を含むように、重さ及びサンプル速度の両方に適合する。(呼吸、ユーザの動き、振動及び/もしくは電気的な雑音などの力の分散のいくつかの他のソースと比較して、)比較的小さいBCG信号のために、本開示の態様は、上記ソースの1つもしくは複数に関連して、BCGを検出することに関する。いくつかの実装において、BCG信号の振幅は、ユーザの体重に基づいて、運動エネルギーの移転に基づいて、修正される。様々な体重計は、市販のものであろうが、カスタマイズされたものであろうが、BCG信号を取得するように、様々な例示的な実施形態と共に実装され得る改造がされてよい。例えば、イリノイ州バノックバーンのオムロン・ヘルスケア株式会社のオムロンHBF−500体組成モニタ/体重計を1つもしくは複数の例示的な実施形態と共に実装してもよい。
【0073】
他の例示的な実施形態は、体重計のプラットフォームに統合されている、取り外し可能なユニットである、もしくは、体重計に接続されている別個のユニットである、ECG及び/もしくはフォトプレチスモグラフ・センサを有する体重感知計を含む、上記BCGシステムに関する。ある実装において、BCG取得装置は体重感知計に統合され、補助センサはハンドルバーの電極に統合される。電極及び補助センサは、ユーザの心電図(ECG)もしくはフォトプレチスモグラフィ特性の少なくとも一方を検出する。処理回路は、ユーザの滴定ケア(例えば、(医師の診察による)薬剤の投与量の調整もしくは臨床通院の必要性の通知と共に、)などのユーザの治療の必要性を判断するために、心拍出量及び心拍血液量の少なくとも一方の使用を提供するために、所定の時間、出力BCG信号を生成する。
【0074】
ある実装において、BCG取得装置は体重感知計に統合されており、補助センサは、体重計のプラットフォーム、取り外し可能なモジュール、もしくは有線または無線によって体重計に接続されている別個のモジュールの少なくとも1つに統合されている。補助センサは、ユーザのフォトプレチスモグラフィ特性を検出する。本開示のある実施形態と矛盾せず、取り外し可能なPPGを足首に使用することができる。これは、ユーザの足からの信号が弱い(例えば、真性糖尿病による微小血管障害)場合に、特に、有用であり得る。したがって、足首はT2測定の代替的なサイトを提供することができる。
【0075】
図を参照すると、図1A及び図1Bに描画されているユーザは、体重計ベースのシステムの上に位置している。体重計は、力/重さセンサを含む(図14A)。このセンサは、処理アレンジメントに送信される電気信号に変換される体重の変動を検出するように構成されており(図3)、従来の体重計によって提供されるような、ユーザの体重を提供するためにも使用され得る。
【0076】
補助入力(図14A)は、力の感知を限定するための追加情報を提供する。これらの入力は、システムにさらに組み込まれてもよい、例えば、鼓動センサ、足から足へのインピーダンス心拍動曲線センサ、ユーザ動きセンサなどによって提供される信号を含む。いくつかの実装において、インピーダンスのプレチスモグラフィもしくはフォトプレチスモグラフィのセンサを信号の処理を改善するために使用してもよい。
【0077】
他の実装は、相関を有する心臓関連情報及び相関を有さない身体の動き雑音を測定し、動きアーチファクトを除去するための補助的な非接触変位センサを用いることなどによって、動きのアーチファクトに対処することに関する(図14C)。心臓の信号を改善するために、身体の動きの絶対的なもしくは相対的な変化を測定するために、光もしくは音響放出手段/検出手段を有するセンサなどの変位変換手段を用いることを、そのような実装は含む。動きアーチファクトを除去するための他のアプローチは、個別の歪みゲージに、もしくは、異なる動き軸を取得するためにブリッジ回路を切り替えることによって、マルチチャンネル・サンプリングを用いることを含む。
【0078】
処理アレンジメントは、外部からの雑音もしくはセンサからの信号への干渉を除去するために、補助入力及び様々なフィルタリング・アルゴリズムを使用するために、構成されている。この処理/フィルタリングの結果は、LCDディスプレイもしくはローカル・メモリなどの出力に送信されてもよい。この情報は、システムを用いて患者が記録する、遠隔地の医師によるアクセスのためにアップロードする、などのために、記録可能な形態で提示されてもよい。いくつかの例において、出力は、体重計からの出力データを受信する1つもしくは複数の記憶装置に接続されているネットワーク(例えば、イーサネットもしくはワイヤレス)に出力を提供するネットワーク・インターフェイス・タイプの装置を含む。他の例においては、出力は1つもしくは複数のユニバーサル・シリアル・バス(USB)接続、ポイント・ツー・ポイント(非ネットワーク)無線リンク、リムーバブル・メモリ・カード・デバイス、非接触カード・デバイス、もしくは、異常な心機能が検出されたことを示す(例えば、医師に連絡するよう患者に警告する)比較的シンプルな表示手段を含む。
【0079】
ある実装によれば、ECG信号(単一もしくは複数の誘導)は、体重関連検出(例えば、上記体重変動)によって同時に記録され、検出された体重関連状態と共に補助的な入力状態として使用される。これらの記録からの信号は、未処理の体重測定波形からBCG信号の最適な最小二乗推定を判断するために、補助信号を適応的にフィルタリングすることなどによる、適応フィルタリングを使用して組み合わされる。このアプローチは、これらの波形の雑音成分は統計的に独立であるが、ECG及びBCG信号は、時間的に、相互に関連を有するという事実を活用する。
【0080】
他の実装において(図14B)、鼓動(例えば、ECGもしくはフォトプレチスモグラム)トリガ集合平均がBCG信号の品質及び一貫性を強化するために使用される。このような技術は、複数の異なる技術のいずれかを使用して、心臓の収縮を容易に検出する能力を補強する。検出された心臓の収縮は、次に、集合平均を使用するために検出されたBCG測定の関連する部分を選択するために使用される。例えば、集合平均はBCG信号の雑音を低減するために使用されてもよい。
【0081】
様々な実装において、平均最小二乗アルゴリズムを用いた適応フィルタリング・アプローチが、参照としてECG信号を使用して、BCG信号から雑音を除去するために使用される。BCG信号は、トリガとしてECG R波を使用した集合平均である。この集合平均は静的であっても(いずれかのデータセットの1つの平均であっても)よいし、動的であっても(同期移動平均であっても)よい。さらに、呼吸信号は、BCGからの呼吸の適応的な雑音除去のための参照として使用されてもよい。あるアプリケーションにおいて、図14Aのシステムは、BCG信号を取得するために使用される他の装置を、体重計による信号の機械的なフィルタリングと切り離すために、計装共振を取り除く自己較正のために構成される。
【0082】
図14Aは、本開示の他の例示的な実施形態と矛盾しない、ECG及びBCG検出の両方を含む心機能を検出するシステムのブロック図を示す。システムは、図1と関連して上記したものと同様に、さらに、ユーザの心臓の状態を検出するために、ECG及びBCGの両方を用いた上記例と共に、使用し得る。体重計型のBCGセンサ装置は、体重計型装置で検出されたBCG特性と関連して使用されるECG特性を検出するECG型ハンドヘルド・センサを含む。BCGセンサ装置からの出力は、ユーザの心臓ベースの状態を判断するために、出力及びそこで検出されたECG及びBCG特性を処理するプロセッサに送信される。様々な実装において、ブロックで示される、1つもしくは複数のセンサ(例えば、BCGベース信号及びECGベース信号の一方もしくは両方の雑音を除去するために使用される振動センサなど)もプロセッサに接続されている。プロセッサは、心臓ベースの状態の判断の部分として入力を使用する。
【0083】
様々な実施形態と関連して、ここに記載される取得された信号は、様々な異なるタイプの情報を導出/観察する際に使用される。情報は、心拍数、(心拍出量と相互に関連を有する)心臓からの血液の放出力、電気的な脱分極から心室の機械的な収縮までの時間遅延、(興奮収縮連関に関連する)心臓の電気的なアクティビティと機械的なアクティビティとの間の関係、上行大動脈の加圧、将来の心臓の健康状態の傾向の予測、及び/または、非侵襲性血流及び血圧測定を含むが、これらに限定されるものではない。
【0084】
本開示の様々な態様は、手が空いている訓練された技術者もしくは医師がいることが現実的ではない、家庭もしくは他の場所での使用に関する。ある実装において、市販されているバスルームの体重計もしくは椅子から同時に取得されるBCG及びECG記録は、信頼できるBCG取得のためのコンパクトで安価なプラットフォームで、心血管疾病の家庭での観察を促進するために使用される。BCG測定を家庭での高血圧患者の長期にわたる管理のために実装し得る。
【0085】
図3は、本開示の他の例示的な実施形態と矛盾しない、市販の体重計からBCG信号を取得する回路を示す。回路は、体重計からBCGを取得する。オムロンHBF−500などのような市販の体重計の歪みゲージは、ホイートストン・ブリッジの構成でアレンジされている。ブリッジは+/−9VのDC電圧によって励起され、ブリッジをわたる差動電圧は、組み込みフィードバック(LT1014C)を用いてDCを遮蔽する計装アンプ(LT1167)によって増幅される。このDCを遮断する計装アンプのステージからの出力は、次に、バンドパス・フィルタによってフィルタリングされ、さらに、増幅される。回路の利得は90dBであり、高解像BCG取得に十分なバンド幅を有する。
【0086】
図3によって描写される特定の回路は、同様の機能を提供するために使用され得る複数の異なる実装の例示である。本開示の他の態様と同様に、様々な機能が、専用のソフトウェア、プログラマブル・ロジック・デバイス、ディスクリート回路及びこれらの組み合わせによって構成される汎用目的コンピュータの組み合わせによって実装され得る。
【0087】
以下の記載は、様々な例示的な実施形態に関連して、ここに添付される様々な付録を参照する。付録の各々は、参照によってここに完全に含まれる。
【0088】
2009年10月14日に出願された米国特許出願第12/579,264号に添付されている付録B(IEEE EMBS 2009 議事録)を参照する、本開示の態様は以下の例示的な実施形態の1つもしくは複数に適用されるような、BCG信号推定及びBCGを用いた心収縮評価に関する。
1.BCG「脈拍応答」は、単一の鼓動よりも長い期間存続することができる被験者の各々のBCG特性として定義される。脈拍応答は、例えば、心臓によって放出された血液の脈拍に対する動脈及び身体の機械的応答を含むことができる。これらの機械的構造は、血液のこの最初の脈拍の後、長く振動を継続し得る。これにより、平均的なBCG応答は、単一の鼓動よりも長い期間を有する。この背景において、脈拍応答は、BCG応答が取得される被験者の態様を特徴付ける際に使用される。
2.ECG R波のタイミングは、BCGの「短窓」の集合平均を計算するためのタイミング参照として使用される。この短窓の平均は、次に、全記録のBCG鼓動の各々の振幅を推定するために使用される。BCG鼓動は、次に、「長窓」処理によってECGタイミング参照を用いて、再度、セグメント化される。これらの長窓の鼓動は、次に、BCG鼓動の各々から周辺鼓動を差し引いた後、平均化され、干渉除去長窓BCG脈拍応答が取得される。
3.ECG R波及びBCG J波の間の間隔(R−J間隔)は、心収縮の変化と逆相関を有する。R−J間隔は、より収縮が大きいとR−J間隔はより小さくなり、より収縮が小さいとR−J間隔はより大きくなる。
4.鼓動の各々の信号対雑音比(SNR)は、正規化された集合の相関を用いて検出され、いくつかの実装において、R−J間隔は比較的低いSNRを有する鼓動については無視される。
5.対象の各々の前駆出期(PEP)及びR−J間隔の間の間隔時間は、動脈の柔軟さを特徴付けるために使用される。(例えば、柔軟なパイプより早く音波を伝播する硬質なパイプに類似するように、)柔軟な動脈が少ないことは、被験者の心臓での血液の放出と足で検出される機械的な波との間の短い伝播遅延によって、検出され、識別される。
【0089】
2009年10月14日に出願された米国特許出願12/579,264号に添付された付録D(家庭観察のためのロバストなBCG取得)を参照して、本開示の態様は以下の例示的な実施形態の1つもしくは複数に適用されるように、家庭でのBCG取得に関する。
1.BCG信号は、家庭で心不全である患者の健康状態を観察するために使用される体重計の体重測定値と共に使用される。BCG信号は、心拍出量の変化を推定することによって、潅流の変化の測定を提供するために使用される。体重計測値は、体液貯留による体重変換を推定することによる滞留の推定を(例えば、同時に)提供することができる。被験者は潅流なしの滞留、滞留なしの潅流を有し得るので、人の心臓の健康状態の所望される評価を提供するために、これらの測定値の両方を組み合わせてもよい。
2.フォトプレチスモグラフ及びECG信号は、ここで取得されるようなBCG信号を平均化するため、もしくは、フィルタリングするために使用される。
3.鼓動毎のBCG振幅(J波)は、波が適用される特定の鼓動について、一回拍出量を特徴付けるために使用される。
4.ECG R波のタイミングは、「短窓」集合平均BCGを計算するためにタイミング参照として使用される。短窓平均は、次に、全記録のBCG鼓動の各々の振幅を推定するために使用される。BCG鼓動は、次に、「長窓」処理によって、ECGタイミング参照を使用して、再度、セグメント化される。これらの長窓鼓動は、次に、BCG鼓動の各々から周辺鼓動を差し引いた後平均化され、干渉除去長窓BCG脈拍応答が取得される。
【0090】
2009年10月14日に出願された米国特許出願第12/579,264号の付録F(Valsalvaの論文)を参照すると、本開示の態様は、以下の例示的な実施形態の1つもしくは複数に適用可能なバルサルバ法を用いることに関する。
1.BCG測定値は、心血管系から様々な期待される反射を引き出すために、バルサルバ操作の間に、取得される。バルサルバ操作に対する応答は、疾病もしくは状態を診断するために使用されてもよい。例えば、以前心筋梗塞であった患者は、緊張から解放された後、BCG振幅が増加しないかもしれないが、健康な被験者であれば、BCG振幅が増加する。BCG振幅は、このように、観察され、そのような状態を識別するために使用されてもよい。
2.同時にECGを利用することができない場合、BCG J波の立ち上がり時間が、心収縮の変化の指標として使用される。
3.BCG信号の周波数領域分析が実行され、BCGのパワー・スペクトル密度の高周波パワー対低周波パワーの比率を調べることによって、心収縮の状態の指標を提供するために使用される。
【0091】
2009年10月14日に出願された米国特許出願第12/579,264号に添付されている付録G(ECG計測のための2電極のバイオ信号アンプ)を参照する、本開示の態様は、以下の例示的な実施形態の1つもしくは複数に適用可能なECGの測定に関する。ECGは、差異が低い入力インピーダンスに導き、取得の間のケーブルの動きによって生じ得るマイクロホンのケーブル雑音を軽減する、トランスインピーダンス・アンプの前端を使用して、「電流モード」で計測される。
1.電流のフィードバックは、出力信号の低周波変動を検知する非反転積分器を用いて入力端子に送信され、入力の同相電圧を安定化し、アンプ飽和及び(一般的な3電極とは異なる)2電極のECG記録が一般に遭遇する他の所望されない問題を避けるために使用される。
2.マイクロパワー・オペアンプは、バッテリが数年の間継続的に装置を動作させることができるように、所望される電流(例えば、3.9マイクロアンペア)の消費を促進するために、複合アンプ設計によって押し上げられるバンド幅で使用される。
3.リードコンデンサは、信号のアナログデジタル変換でサンプリングするナイキスト周波数の減衰の程度がより大きくなるように、回路の全体的な閉ループ応答に二次的によりシャープなロールオフを設定するために、複合アンプの第1段において使用される。
4.抵抗が入力オペアンプの非反転端子に配置され、この端子をグランドに接続し、2つの入力端子の同相モード入力インピーダンスを適合させる。このアプローチは、例えば、最適化されている(例えば、所望される)同相モードの除去率を促進するために、使用され得る。
5.ECG回路は、BCG信号の平均化のためのR波タイミング参照を提供するために、市販の体重計のハンドルバーの電極に埋め込まれる。
6.ECG回路は、頭皮からの脳波図(EEG)などの、他のバイオメディカル信号を取得するために使用されてもよい。
【0092】
本開示の態様は、BCG体重計の上に起立している間、動きを体系的に識別するために使用され得る雑音信号参照に関連する。シチュエーションのいくつかにおいて、患者の動きは、許容できない数の雑音を含むBCGのセグメントに導く。BCG力信号レベルは、数ニュートンのオーダーの大きさである。身体の動きは、同様の大きさ及びより大きなオーダーの雑音アーチファクトを容易に生成する。BCG信号レベルのオーダーの雑音は、BCG信号だけから検出することは困難であり得る。例えば、体重計に起立している間に、身体の動きを計測するために、歪みゲージの補助セット及びアナログ・アンプを使用することができる。
【0093】
本開示の実施形態と矛盾せず、動き信号は、重量配分の変動を測定する補助歪みゲージを使用して、BCG体重計から取得されてもよい。本開示の実施形態と矛盾せず、動き信号は、重量配分の変動を計測している間、患者の体重を計測するためにセンサ・サーバを使用してBCG体重計から取得されてもよい。
【0094】
起立している被験者の動きを倒立振り子としてモデル化してもよい。身体の動きは、前後の重量配分変化に強い相関を有し、起立してBCGを測定する場合に、雑音参照技術として使用することができる。
【0095】
本開示の特定の実施形態と矛盾せず、4つの荷重計を、BCG及び動き測定値を同時に提供するために使用することができる。荷重計の各々は、機械的な片持ちビームに取り付けられている金属製の歪みゲージ(例えば、タニタの歪みゲージ)を含む。他の歪みゲージ(例えば、350 X オメガ メタリック SGD−7350−LY13、オメガ エンジニアリング株式会社、コネチカット州スタンフォード)を使用してもよい。例えば、片持ちビームの、オリジナルの歪みゲージとは反対の側に、他の歪みゲージを配置してもよい。このように、ビームの偏差は、一方の歪みゲージ・セットの引張歪み及び他方の歪みゲージ・セットの圧縮歪みを表す。
【0096】
本開示の様々な実施形態では、補助歪みゲージが、BCGを記録するために、詳細には、ホイートストン・ブリッジを構成する歪みゲージに追加される。センサは、片持ちビームに搭載するために利用可能な物理的空間に関連するサイズにしたがって、選択し得る。
【0097】
本開示の実施形態によれば、他の歪みゲージのための動き検知回路は、1000倍の利得を有する計装アンプ及びサレンキー・ローパス・フィルタ(2次、24Hzカットオフ)を含む。他の歪みゲージは、前後の動きを検出するためにハーフブリッジ配置に配線されることができ、出力は、適切な(例えば、1kHz)サンプリング・レートで、BCG及び心電図(ECG)によって同時に記録され得る。
【0098】
図14Cは、本開示と矛盾しない、測定セットアップ全体のブロック図を示す。ユーザが起立している図示の装置は、専用に設計されてもよいし、BCG及び身体の動きを示す信号を測定するために改造されたバスルームの体重計であってもよい。人間のバランスは、フォース・プレートを用いた前後平面における質量中心(COM)の位置の変化を測定することによって定量化され得る。真のCOMの動きは、COMと方向及び振幅を共に追跡する重量シフト信号とを示す、フォース・プレートの圧力信号の変化と相関性を有し得る。この相関についてのさらなる詳細については、参照によってここに完全に組み込まれている非特許文献42を参照することができる。
【0099】
(詳細を以下に記載する)実験的なセットアップについて、改造されたバスルームの体重計は、動き信号を示すために前後COM重量シフトを測定するために構成されていた。
【0100】
本開示の態様は、システムがBCG記録システムの周波数応答全体について特徴付けられ得ることを認識する。一般的に、データ・バンド幅は、回路によって限定され、機械的なバンド幅は体重計の剛性及び制動によって限定される。較正は、記録システムの応答(例えば、システムが線形性を提供するか否か)を決定するために使用され得る。体重計及び歪みゲージの機械的な周波数応答は、(例えば、負荷を変えた)一連のインパルス応答測定値によって推定される。体重計プラットフォームのバンド幅はBCGを測定するために十分であるべきである。
【0101】
本開示の実施形態は、過剰な動きによって破壊されるBCGのセグメントにフラグを立てる動き信号導出雑音計量に関する。この実施形態は、以下のように計算される雑音指標を使用することができる。:まず、ベースライン記録を、動き信号の「通常」のRMSレベルを設定するために使用する。この「通常」レベルを、被験者特定の閾値(例えば、「通常」レベルの2倍)として設定するために使用することができる。閾値より高くなると、BCGのトレースが雑音によって破壊されると考えられる。結果として、動きが閾値よりも大きいBCGの期間は、雑音指標について「高」と考えられ、それ以外の場合、「低」と考えられる。
【0102】
本開示の他の実施形態と矛盾せず、被験者特定でない、固定された閾値をベースライン記録を使用せずに全ての記録について設定してもよい。例えば、固定閾値は、すべての被保険者について測定された平均的な被験者特定の閾値として設定されてもよい。被験者特定の両方を使用して、雑音を含む鼓動を雑音指標及びSNR改善に基づいて除去することができる。
【0103】
実験の結果及び様々な特定の実施形態のさらなる詳細については、参照によってここに完全に含まれる添付の付録1(改造されたバスルームの体重計で測定される心弾動図における動きアーチファクトの自動検出)を参照することができる。付録1の様々な実験結果、実施形態及び説明は、限定を意図するものではない。
【0104】
以下の実験的な方法及びマテリアルが以下でさらに記載される例で使用される。
【0105】
データは複数の鼓動を取得するために十分な期間(通常は、5秒間〜30秒間)にわたって取得される。このデータは、タイム・トレースとして知られている。タイム・トレースは、BCG、PPG、及び心電図(ECG)について取得される。
【0106】
BCG及びPPG信号は、略0〜20Hzのバンド幅の関連情報を含み、タイム・トレースは、この範囲の及びこの範囲の上の情報を含む。この範囲の外側の周波数成分(例えば、AC電源の60Hz雑音)は雑音とみなされ、除去されてもよい。体重計の機械的な周波数応答は、その合成の関数であり、BCGの機械的な動作を変換するためにフロアに接続されている。デジタルFIRフィルタが、低周波数成分だけを残すために、25Hzでタイム・トレースをフィルタリングするローパス・フィルタに使用される。
【0107】
体重計の機械的な剛性は、0〜20HzのBCG信号を収集する能力にリンクすることが発見された。体重計の構造及び/もしくは床との接触が十分な剛性を有しない場合、アナログFIRフィルタが適切に設定されていたとしても、BCGは弱められるかもしれないし、歪められるかもしれない。体重計が表面と適切に結合されているか否かは、BCGを取得するための能力に影響を与える。例えば、絨毯には問題がある。したがって、本開示の態様は、体重計及び絨毯の間に剛性を有するプレートを配置することは有効であり得ることを認識している。
【0108】
ECGは、BCG及びPPGタイム・トレースを個別の鼓動にセグメント化するべき場所を識別するためのタイミング参照信号として使用される。ECGは、BCG及びPPGにおける雑音の存在にあまり影響されず、ECG R波のタイミングは、ソフトウェア・アルゴリズムによって容易に識別することができる。R波のタイミングが検出されると、BCG及びPPG信号を個別の鼓動にセグメント化するためにそれらのタイミングを使用することができる。鼓動は、固定されたフレームが鼓動の周囲に描画される「窓」によってセグメント化される。例えば、我々は1秒間を1つの窓の長さとして選択することができる。R波のタイミング・ポイントの各々について、(集合として参照される)複数の鼓動毎にタイム・トレースを「切断」するために、1秒間の窓がBCG及びPPGタイム・トレースの上のR波タイミング・ポイントに配置される。集合の各々について、どの程度の鼓動情報が要求されるかに応じて、より短い窓もしくはより長い窓を使用することができる。
【0109】
鼓動識別のための代替方法は、異常な身体の動きを検出するために体重計に埋め込まれている参照センサに基づいて雑音を含む鼓動を識別することである。この方法は、ECGを必要としない。鼓動は、BCGのタイミング特徴を抽出するための固定フレームを提供するために足PPG信号タイミングを用いて、「リバース窓」によってセグメント化される。鼓動が窓に分割されると、雑音を含む鼓動(BCG及び/またはPPG)は、所定の閾値を越える信号レベル及び身体動き参照信号のタイミングに基づいて、分析から除去されてもよい。体重計の動きセンサは、集合平均方法から導出され得る雑音の量と高い相関を有し、代わりの雑音参照であることが確認されるように、信号を測定するための手法で構成される。この手法において、PWV判断は、体重計のみによる実施形態から取得されてもよい。体重計に起立することによって、分析の鼓動を選択し、及び、除外するために必要な全てのデータを収集する。
【0110】
BCGもしくはPPG集合(例えば、BCG I波)のキー・タイム・ポイントの推定を取得するために、BCG及びPPG鼓動は、(一方は、BCGについて、他方はPPGについて、)集合平均を生成するために平均化される。
【0111】
BCG鼓動からI波タイミングを抽出するために、BCGのJ波の最初の左側極小値が検討される。J波の正確な検出は、期待されるJ波の位置に最も近い極大値を検出することによって達成される。期待される位置は、BCG鼓動の集合平均における最大の極大値の位置として定義される。
【0112】
PPGについて、PPGの裾はPPG鼓動のピーク、その左側に立ち上がる圧力波の傾斜、立ち上がる傾斜の左側の最初の極小値におけるゼロ傾斜を検出することによって識別される。これらの2つのラインの交差は、圧力がPPG波形において上昇し始めるときを示す。他の実施形態では、信号の派生バージョンに基づく方法などの、圧力上昇の開始を抽出するための様々な他の方法を使用することができる。
【0113】
正確さを改善するために、特徴識別は、個々の鼓動について実行され、次に、全ての鼓動にわたって平均化される。代替的に、特徴識別は、集合平均されたPPGもしくはBCGで実行される。
【0114】
BCG I波及びPPG足タイミングの両方が取得されると、それらの差異(PPG−BCG)がPTTを取得するために計算される。大動脈と足との間の距離が測定される。次に、PWVが、PWV=距離/PTTによって計算される。
【0115】
PWVもPTTも、(圧力対圧力タイミングではなく、圧脈拍時間へのR波である)PATと同一ではないことに留意されたい。
【0116】
指に取り付けられている第2のPPGセンサが使用されるならば、下行大動脈に沿った脈波速度及び四肢末梢の脈波速度の推定が提案され得る。大動脈と指との間の距離(Larm)、大動脈と骨盤との間の距離(Ltrunk)、骨盤と足との間の距離(Lleg)が既知であると仮定すると、指までの脈拍移動時間(PPTfinger)及び足までの移動時間(PPTfoot)が上記された方法を用いて測定され、以下の導出がなされる。
【数3】
【0117】
腕及び足の脈波速度の関係は、関数fTFによって与えられる。一次近似において、これらの2つの速度は等しい(均一な末梢の速度)とみなされ、中心速度(PWVtrunk)は以下のように書き直すことができる。
【数4】

腕及び足の脈波速度の関係fTFは同一のものに限定されず、腕及び足の血管の差異を考慮するようにより複雑であってもよく、平均直径、脈圧、もしくは相対的な柔軟さなどのパラメータを考慮してもよい。このようなモデルは、一般的であってもよいし、患者特定であってもよい。
【0118】
以下の実験的な例示は、本開示の範囲を限定することを意図しない。例えば、特定の値、測定値は限定することを必要とせず、一般的に、変更することが可能であることが理解されるだろう。
【0119】
BCGが大動脈弓で作用する圧力によって生成される力のピークに関連するので(非特許文献24)、心弾動図(BCG)が最初のタイム・ポイント参照(例えば、頸動脈圧の代わりの測定値)として使用される。この関係は、BCG及び頸動脈の脈波を同時に測定することによって経験的に導出されてもよい。
【0120】
図10は、指及び足指でBCGの末梢PPG信号に対するタイミングの関係を示す。ECGは心臓の拍動の1サイクルの動作の開始を示す。BCGは、初期収縮の心臓駆出の直後に開始し、末梢の圧波はPPGによって記録される。BCG及びPPG足指信号の開始の間の遅れは、圧脈波時間を定量化する。
【0121】
図10に示されているタイミングの関係は、指及び足のフォトプレチスモグラム(PPG)の両方に先立ってBCG脈拍が開始されることを示している。この例では、BCGのI波は、PPG指及び足信号のベースに、各々、10m秒及び120m秒先立って開始する。BCGのJ波は、指PPG及び足信号のピークに、各々、30m秒及び280m秒先立って開始する。指PPGへの大動脈弓の動脈の長さは、概ね、PPG足信号への大動脈弓の距離の半分であるが、指PPG信号は10倍以上速い。これは、PPG脈拍は柔軟な大動脈、その後、腸骨分岐を越えて伸びる筋性動脈を通って下に移動するのに対し、指PPGが主要な上方の枝血管を横切るという事実によると考えられる。柔軟な大動脈はより遅い波速度を有する。したがって、PPG足脈拍の到着時間は、指PPGと比較して、移動する経路長さの差異に直接比例しない。しかしながら、指PPGは主に末梢の速度(筋性動脈の速度)を反映するので、下行大動脈の特定の速度を推定するために、直接的にもしくは間接的に、使用することができる。実際、指PPGから導出される末梢の速度は、下方の四肢(末梢速度)での移動に使用された足PPGと下行大動脈(中心速度)での移動に使用された足PPGとの対比と共に、どの程度の時間、脈拍が記録されたかを評価するために使用されてもよい。上記したように、腕及び足の脈波速度の関係は同一であってもよいし、比例してもよいし、平均直径、脈圧、もしくは相対的な柔軟さなどのパラメータを考慮したより複雑な血管モデルに基づいていてもよい。このようなモデルは一般的であってもよいし、患者特定であってもよい。
【0122】
タイム・ポイントT1のより近接した観察を図6に示す。頸動脈の脈波は、PPGセンサの反射率によって測定され、起立状態でのBCG測定は同時に取得され、駆出の開始時に相互にたいへん近接して(円によって境界を確定されているT1)開始する。非特許文献24に記載されているように、BCGは2つの重要な特徴を有する:(1)BCG力は大動脈壁に働く圧力に概ね全体的に関連し、(2)BCG力のピークの生成は大動脈弓で検出される。したがって、BCG T1タイム・ポイントは、従来T1タイム・ポイントが登録される頸動脈に十分近い大動脈弓の圧力に関連すると考えられる。結果的に、図5に示されるT1のBCGタイミング及び距離の関係は、頸動脈の脈圧開始ポイントを示すために適切であると考えられる。
【0123】
BCGベースの脈波法は血管の剛性が調整される手法で確認される。このセットアップにおいて、BCGは改造されたバスルームの体重計で記録され、継続的な血圧測定が、バルサルバ操作を実行する対象によってポータプレスの携帯型血圧モニタを用いて記録される。操作は、(1)休憩、(2)負荷、(3)解放の3つのインターバルによって区分される。休憩フェーズは通常の血圧を示す。負荷の間、対象は、収縮血圧の減少として現れる心臓へ戻る静脈及び心臓からの血液の放出を圧縮する息を止める。この低い圧力負荷フェーズにおいて、動脈の剛性は低く、脈波速度は減少する。解放の間、流れは心臓に戻され、心室充満は増加し、心臓は、急速にベースラインに戻る短期間の高い収縮期圧により強められた力によって縮小する。高い収縮期圧の間、動脈ツリーの剛性はより高くなり、脈波速度は増加する。図15に示すように、バスルームの体重計のPWV(下)測定は、継続的な血圧取得(上)と共に傾く。この例では、バルサルバ操作が実行されている。これらのタイム・トレースの間の最大の相互相関は0・73である。
【0124】
高血圧を管理するために、本開示の実施形態は、図15に示されるように血圧の変化の傾向を観察するためのプラットフォームを提供する。動脈の剛性は血管の弾性係数及び血管の圧力に関連し、以下のラプラスの法則によって説明されてもよい。壁張力(T)は圧力(P)に関連し、血管の半径及び血管壁の応答はその剛性に依存する。したがって、PWVはBCG及びPPG信号に基づく血圧変化の相関パラメータとして使用されてもよく、上記したように、剛性の測定における固有の再現性によって、相関は、その正確さについて利益を得る。中心速度は四肢の速度に比較して血管緊張による影響をあまり受けないので、図2に示されるように、末梢速度に対して中心速度を切り離す能力は、方法の正確さをさらに改善することができる。
【0125】
家庭で観察に使用する場合の安定性
人の動脈の剛性/弾性を判断するために、人は改造されたバスルームの体重計の上に起立し、BCG、ICG及びPPGが動脈の剛性/弾性などの中心血行力学特性を判断するために足で同時に取得される。最初の信号としてBCGが大動脈弓で生じるが、足で測定される場合、伝送遅延は無視してよい。したがって、足で測定されたBCGは首の頸動脈の脈拍と同様にタイミング参照として供されてもよい。このように、血管の剛性を判断するために頸動脈を測定する必要性は除去される。両方のセンサは、人が保持するシンプルなハンドルバーに容易に統合され得るので、測定の間いくつかの実施形態におけるECGのさらなる使用及び第2指PPGは、システム全体の利便性及び簡便性を変えない。
【0126】
図1A及び図1Bに示すように、PPGは光センサであり、足の局所的な脈拍による血管の伸びを示す信号を記録する。正確な圧脈波形は、被験者がその上で起立している間、バスルームの体重計から取得され得る。人が改造されたバスルームの体重計の上に起立している間に、動脈の剛性/弾性を判断するためのBCG及びPPGの両方の測定値は、足で同時に取得される。動脈を検出したり触診したり、プローブを適用したりする必要はないので、熟練した技術者による医療監督及び/もしくは支援の必要はない。
【0127】
ここで記載されている体重計ベースのシステムは、循環機能に関連するいくつかの関連信号を統合し、収集され分析されたデータはスタンドアロン・デバイス、もしくは、患者のケア・ワーカにデータを伝送するホーム・ヘルス・ネットワークのネットワーク化されている/統合されているデバイス部分としてシステムに含まれるディスプレイを経由してユーザに表示されてもよい。
【0128】
マッピングされる関連動脈経路
心臓から足までの経路は動脈ツリーの比較的長い部分であり、高血圧薬によって変化する経路と一致する。一般に、抗高血圧は、脚の筋性動脈の剛性を低減するために血圧を下げる。これにより、圧脈波の速度が遅くなり、引き続いて、その心臓への反射戻りが遅くなる。上記したように、必須ではないが、下行大動脈及び脚の両方に沿った速度を推定する能力は、システムの観察能力を拡張する。
【0129】
動脈剛性測定の安定性
起立して動脈剛性を測定する能力は、本開示の実施形態と矛盾せず、T1タイム・ポイントとして頸動脈のタイミングを使用する方法と比較することができる。図8に示されるように、人のBCG I波タイミング及び頸動脈タイミングを同時に取得する4カ月にわたる継続的調査が行われた。各々30秒間のデータ収集について、ECG R波に関連するタイミングは、頸動脈及びBCGが同様の平均タイミング及び同様の測定値変動性を有していることを示している。1日目の測定値について、この実験における人はベータ遮断薬を服用し、タイミングは服用の前後で測定され、頸動脈の平均タイミング及びBCG I波脈到着タイミング(PAT)には大きな変化があった。継続的な脈拍移動時間(PTT=T2−T1)は、次に、T1のBCG及び頸動脈タイミングの両方を用いて判断され、図9に示されるように、同様であることが示されている。T2タイミングは本開示と矛盾しない実施形態を用いて足で取得される。図12は、時間が経過するにしたがって増加する、人の年齢に対する起立している場合の脈波速度を示す。これは、動脈の剛性とも一致する。図16Aは人のグループにシグモコアの動脈トノメータを使用して取得した中心収縮期圧のグラフである。図16Bは、中心収縮血圧に対する本開示の実施形態と矛盾しない起立している場合の脈波速度のグラフである。起立している場合の脈波速度に対する中心収縮の関係は、3.333e0.0114xの指数フィットについて0.55のR−2乗値を有する。増加している中心収縮期圧を有する波の速度における非線形増加は、動脈壁の生理的な負荷に基づいて期待される。動脈の剛性は独立した中心測定値であるため、データは高血圧を管理するための手法として心血管機能の2つの指標(例えば、動脈の剛性及び中心圧)を提供する。図17Aは人のグループにシグモコアのトノメータを使用して取得された中心脈圧(例えば、中心収縮期圧−中心拡張期圧)のグラフである。図17Bは、中心脈圧に対する本開示の実施形態と矛盾しない起立している場合の脈波速度のグラフである。起立している場合の脈波速度に対する中心脈圧の関係は、線形フィット(傾き0.2241、切片4.4975)について0.56のR−2乗値を有する。増加する中心圧による波速度の線形増加は動脈壁の生理的な負荷に基づいて期待される。動脈の剛性は独立した中心測定値であるため、データは高血圧を管理するための手法として心血管の機能の2つの指標(例えば、動脈の剛性及び中心圧)を提供する。驚くべきことに、座位及び臥位と比較して、上記観察及び相関の全てが識別される立位はこのような手法において動脈への血行力学負荷を変化させる。それゆえ、いくつかのシステムが存在し、かつ、頸動脈の脈波タイミングと時間的に関連するT1信号を生成することができ、一方、次の動脈の剛性の測定値は、記録がとられる姿勢に基づいて変化する。したがって、このようなシステムは循環機能の同等の測定を判断しない。
【0130】
中心血圧を判断するための適切さ
起立している場合の測定値を用いて、中心血圧の測定値(もしくは推定値)を起立している場合の動脈の剛性の測定値(及び年齢、性別などの患者の情報)と組み合わせると、有用で驚くべき相関が生成される。例えば、中心収縮及び中心脈圧は、高血圧の潜在的な原因を示すために、起立している場合の動脈の剛性測定及び患者の情報に関して階層化され得る。これにより診断及び治療の改善を促進する。本開示は、較正され、正確な手法において、末梢血圧を所望される中心血圧と関連付けることが有用であり得ることも認識している(図15〜18)。較正された(修正された)末梢の測定値は、次に、図15及び図18に示されるように、動脈のトノメータもしくは内圧カテーテルを使用する必要なく、相関を取得するために、使用されてもよい。
【0131】
理論によって限定されることなく、立位は座位及び臥位と比較して、動脈への血行力学負荷を変化させる。この負荷の変化は、脈拍移動時間、すなわち、動脈の剛性の測定を大きく変化させる(図11)。したがって、本開示の態様は、記録をとる姿勢によって変化する動脈の剛性のタイミングの特性を利用するBCGベース・システムに関する。立位は、また、動脈の剛性の測定について、異なる及び特定の関連する生理的な負荷を提供する。ここで説明される予期しない相関関係によって、循環機能及び血圧の診断及び管理を促進することができる。
【0132】
立位と比較した、座位のための血管特性指標の様々な他の差異も患者を観察し、もしくは診断するためにシステムによって使用される。臥位もしくは座位と比較した場合の、立位において取得される計測値との差異に関するさらなる情報については、非特許文献43及び非特許文献44を参照することができる。これらの各々は、参照によってここに完全に含まれる。
【0133】
シンプルで費用効率のよい手法における中心血圧を測定するための能力については、努力がされている最中であり、中心測定値の使用を主流とすることは臨床高血圧の次の進歩であると考えられる(非特許文献10、頁37)。動脈トノメータ(もしくはカテーテル)などの装置から取得される中心圧測定値がなければ、動脈の剛性の測定値は心血管機能の1つの次元を提示するだけである。そのような装置からの抗高血圧薬の効果の評価は、収縮のための20mmHg(もしくはより多くの)及び拡張のための1〜2mmHgによる利益を過少に評価するかもしれないので、中心圧測定値と比較して、末梢圧測定値は抗高血圧管理のための多くのユーティリティを提供しない(非特許文献13、頁362)。過少に評価された利益は、下肢の脈波速度、放出期間及び波反射の複雑なインタラクションである、動脈の圧波の増幅の結果である(非特許文献13、頁360〜363)。図15は、末梢の血圧測定(例えば、上腕血圧カフ)、ユーザ情報及び本開示と矛盾しない実施形態を用いて、中心圧を決定する方法を示す。増幅効果は重量計ベース・システムによって定量化され、次に、末梢測定値を修正するために使用される。図18Aは、シグモコアの動脈トノメータを用いて取得される中心測定値及び末梢上腕血圧測定値の間の収縮期圧の差異を示すグラフであり、圧力差が大きいことを示している。図18Bは、シグモコアの動脈トノメータを用いて取得された中心測定値及び増幅修正末梢測定値の間の収縮期圧の差異を示す。増幅修正は、本開示と矛盾しない実施形態を用いて決定される。20〜79歳の人々の集合について、平均的な圧力の差異は0mmHgであり、標準的な偏差は3.18mmHgである。このアプローチを用いて、人は、実用的な手法で中心圧及び血管の剛性の測定値の両方を取得することができ、これにより、高血圧の管理が可能となる。
【0134】
上記様々な実施形態は例示のためのものであり、開示を限定するものと解釈されるべきではない。上記に基づいて、当業者は、例示的な実施形態、例示された応用に厳格にしたがうことなく、様々な変更を本開示に行うことができるであろうことを理解するだろう。例えば、このシステムのために開発されるアルゴリズム、較正及び検証方法を、ベッド及び台を含むBCG測定システムのために使用することができる。体重計による他の体重測定の構成は縦方向もしくは他の相対的な角度(座位構成もしくは臥位構成など)であってもよい。カスタマイズされた歪みゲージが、ここで記述されるのと同様の電子機器と接続される体重計の代わりに使用されてもよい。様々な実施形態のためにいくつかの代替的な電子機器の構成が使用され、それらのいくつかがロックイン・ベース回路を含んでもよい。椅子ベース回路の脚の各々の下に配置可能な体重計を配置すること、もしくは、より大きなブリッジ回路を構築することなどによって、雑音を軽減もしくは除去するために複数の体重計を使用することができる。例示的な及び実験的な実装のいくつかが参照する仮出願に添付された付録に詳細に説明されており、それらはここに完全に含まれる。この開示の教示は、例示的な実施形態の上記の多くのために付録A〜Gで見つけることができる教示を含み、様々な教示を単独でもしくは他のものと組み合わせて実装することができる。当業者であれば、例えば、技術的な説明の重複の観点から、付録で見つけることができる教示の熟慮されているコンテキストを理解するだろう。これらの及び他の変更は本開示の真の思想及び範囲から乖離するものではない。
【0135】
[関連文献]
この特許出願は、2011年1月27日に出願された「動脈の剛性の評価及び高血圧症の管理のためのシステム及び方法」という名称の米国特許仮出願第61/436,740号及び2011年4月15日に出願された「循環系を観察するためのシステム及び方法」という名称の米国特許仮出願第61/475,887号に基づいて、35 U.S.C. § 119(e)による優先権を主張する。この特許出願は、2009年10月14日に出願された「心臓機能を観察するシステム及び方法」という名称の米国特許出願第12/579,264号に関連し、米国特許出願第12/579,264号は、2008年10月15日に出願された米国仮出願第61/105,696号に基づいて、優先権を主張する。米国仮出願第61/105,696号は、本開示の様々な実施形態で使用するための例及び実験結果を提供する(A〜Eの)5つの付録を含む。これらの出願及び文献は、これらの文献が様々な参照を引用する範囲で、参照によってここに全てが含まれる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B