特許第5955358号(P5955358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955358
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】シトルリン含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-164545(P2014-164545)
(22)【出願日】2014年8月12日
(62)【分割の表示】特願2009-541200(P2009-541200)の分割
【原出願日】2008年11月17日
(65)【公開番号】特開2014-236743(P2014-236743A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2007-297950(P2007-297950)
(32)【優先日】2007年11月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308032666
【氏名又は名称】協和発酵バイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100117743
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 美由紀
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康
(72)【発明者】
【氏名】池田 武史
(72)【発明者】
【氏名】神村 彩子
【審査官】 原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−185113(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/066642(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/023931(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/000985(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/105126(WO,A1)
【文献】 特開昭63−049060(JP,A)
【文献】 特開2004−173504(JP,A)
【文献】 特開2007−274933(JP,A)
【文献】 特開2006−296379(JP,A)
【文献】 特開2002−142677(JP,A)
【文献】 特開平05−246962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
A23L 29/00−29/30
A23L 33/00−33/29
A23F 3/00−5/50
WPIDS/WPIX/CAplus/FSTA/FROSTI(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトルリンおよびクエン酸と、クエン酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムとを含有する飲料であって、該シトルリンが化学的に合成する方法または発酵生産する方法によって製造されたシトルリンであり、
i)該クエン酸と該クエン酸ナトリウムの濃度が合わせて0.1〜3重量%であって、かつ該クエン酸および該クエン酸ナトリウムを重量配合比で5:1〜1:6で含むか、または、
ii)該クエン酸と該リン酸水素二ナトリウムの濃度が合わせて0.1〜4重量%であって、かつ該クエン酸および該リン酸水素二ナトリウムを重量配合比で3:1〜1:5で含み、
該シトルリンの濃度が0.01〜2重量%、
である、120℃で20分間加熱した場合には、該シトルリンのみを含む飲料を120℃で20分間加熱した後よりも悪臭の発生が抑制される、加熱処理された飲料。
【請求項2】
pHが2〜7である請求項1記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シトルリンおよびクエン酸と、クエン酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムとを含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
シトルリンは生体内のタンパク質を構成するアミノ酸ではないが、尿素回路の中間体の一つであり、アルギニンから血管拡張作用を有する物質として知られる一酸化窒素(NO)とともに生成し、さらにアスパラギン酸と縮合してアルギニンに再生される。シトルリンにはアンモニア代謝促進(非特許文献1)や血管拡張による血流改善(非特許文献2)、血圧低下(非特許文献3)、神経伝達(非特許文献4)、免疫賦活(非特許文献5)、活性酸素消去(特許文献1)などの有用な作用が知られている。このため、該作用を期待して、シトルリンを医薬品や機能性食品等の形態で摂取することが行われている。
【0003】
リジン、アルギニン、オルニチン、ヒドロキシリジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸の水溶液において、保存や加熱により悪臭が発生すること、および水溶性還元剤とキレート剤の該水溶液への添加により悪臭が抑制されることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−226370
【特許文献2】特開平5−246962
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「セル バイオケミストリー アンド ファンクション(Cell Biochemistry & Function)」、2003年、第21巻、p.85−91
【非特許文献2】「ヨーロピアン ジャーナル オブ ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)」、2001年、第431巻、p.61−69
【非特許文献3】「ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)」、1991年、第88巻、p.1559−1567
【非特許文献4】「ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)」、1997年、第112巻、p.1250−1259
【非特許文献5】「ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(The journal ob biological chemistry)」、1994年、第269巻、p.9405−9408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シトルリンを含有し、保存や加熱による悪臭の発生が抑制された飲みやすい飲料の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、シトルリンを含有する飲料において、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、またはクエン酸およびリン酸水素二ナトリウムを存在させることにより、保存や加熱による悪臭の発生が抑制されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(5)に関する。
(1)シトルリンおよびクエン酸と、クエン酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムとを含有する飲料。
(2)シトルリンの濃度が0.01〜2重量%である上記(1)の飲料。
(3)クエン酸とクエン酸ナトリウムの重量配合比が5:1〜1:6、かつクエン酸とクエン酸ナトリウムの濃度が合わせて0.01〜3重量%である上記(1)または(2)の飲料。
(4)クエン酸とリン酸水素二ナトリウムの重量配合比が3:1〜1:5、かつクエン酸とリン酸水素二ナトリウムの濃度が合わせて0.01〜4重量%である上記(1)または(2)の飲料。
(5)pHが2〜7である上記(1)〜(4)のいずれかの飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、シトルリンを含有し、保存や加熱による悪臭の発生が抑制された飲みやすい飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いられるシトルリンとしては、L-シトルリンおよびD-シトルリンがあげられるが、L-シトルリンが好ましい。
シトルリンは、化学的に合成する方法、発酵生産する方法等により取得することができる。また、シトルリンは、市販品を購入することにより取得することもできる。
シトルリンを化学的に合成する方法としては、例えば、J. Biol. Chem. 122, 477 (1938)、J. Org. Chem. 6, 410 (1941)に記載の方法があげられる。
【0010】
L-シトルリンを発酵生産する方法としては、例えば、特開昭53−075387号公報、特開昭63−068091号公報に記載の方法があげられる。
また、L-シトルリンおよびD-シトルリンは、シグマ−アルドリッチ社等より購入することもできる。
本発明では、シトルリンの代りにシトルリンの塩を用いてもよい。
【0011】
シトルリンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。
酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩、アジピン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩があげられる。
【0012】
金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられる。
アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。
有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩があげられる。
【0013】
アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられる。
上記のシトルリンの塩のうち、クエン酸塩、リンゴ酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、または2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明の飲料は、シトルリンおよびクエン酸と、クエン酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムを含有させる以外は、一般的な飲料の製造方法により製造することができる。
【0014】
本発明の飲料は、通常の飲料に加える糖類、酸味料、抗酸化剤等の保存料、着色料、香料や各種添加剤を添加しても良い。また、健康機能の増強を期待して、ビタミンやミネラルや各種の機能成分を添加しても良い。また、二酸化炭素を圧入して、炭酸飲料としてもよい。
糖類としては、飲料の製造に用いられるものであれば特に制限されることもなく、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、糖アルコール、甘味料のいずれでも良い。該糖類としては、例えばブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、トレハロース、キシリトール、エリスリトール、還元水飴、デキストリン、でんぷん、ソルビトール、マルチトール、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、ステビア、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ソーマチンがあげられるが、ブドウ糖、果糖、ショ糖が好ましい。
【0015】
酸味料としては、飲料に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば酒石酸、リンゴ酸があげられる。
抗酸化剤としては、飲料に使用できるものであれば特に制限されないが、例えばトコフェロール、アスコルビン酸、塩酸システイン、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルがあげられる。
【0016】
着色料としては、飲料に使用できるものであれば特に制限はされないが、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号、カロチノイド色素、トマト色素があげられる。
香料としては、飲料に使用できるものであれば特に制限されないが、例えばレモンフレーバー、レモンライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、アップルフレーバーがあげられる。
【0017】
また、本発明の飲料のpHとしては、通常は2〜7、好ましくは3〜7、特に好ましくは3〜6であり、有機酸、無機酸等のpH調整剤で飲料のpH調整を行う。
有機酸および無機酸としては、飲料の製造に用いられるものであれば特に制限されない。また、有機酸および無機酸の代りにそれらの塩を用いてもよい。有機酸および無機酸の塩としては飲料の製造に用いられるものであれば特に制限されない。
【0018】
本発明の飲料に含まれるシトルリンの濃度としては、通常は0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。
本発明の飲料にクエン酸ナトリウムを使用する場合、飲料に含まれるクエン酸およびクエン酸ナトリウムの重量配合比としては、通常は5:1〜1:6、好ましくは4:1〜1:5、より好ましくは3:1〜1:4である。クエン酸およびクエン酸ナトリウムの濃度としては、両者の濃度を合わせて通常は0.01〜3重量%、好ましくは0.05〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。上記の場合、飲料中のクエン酸イオン濃度としては、通常は0.0078〜2.9重量%、好ましくは0.039〜1.9重量%、より好ましくは0.078〜0.95重量%である。
【0019】
本発明の飲料にリン酸水素二ナトリウムを使用する場合、飲料に含まれるクエン酸およびリン酸水素二ナトリウムの重量配合比としては、通常は3:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:4、より好ましくは1:1〜1:3である。クエン酸およびリン酸水素二ナトリウムの濃度としては、両者の濃度を合わせて通常は0.01〜4重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。
【0020】
なお、本発明において、例えばシトルリンの代りにシトルリンクエン酸塩を使用する場合、上記のクエン酸にはシトルリンクエン酸塩由来のクエン酸を包含する。
飲料中のシトルリン、クエン酸、クエン酸ナトリウムまたはリン酸水素二ナトリウムを上記の濃度とすることにより、保存や加熱による悪臭の発生を抑えた飲みやすい飲料を提供することができる。
【0021】
以下に、本発明のシトルリン含有飲料における悪臭の抑制効果について調べた試験例を示す。
試験例1(クエン酸およびクエン酸ナトリウムによる悪臭抑制効果)
実施例1、2および比較例1の飲料をそれぞれ蓋付きの瓶に入れ、120℃、20分加熱した後、被験者6名による官能試験を実施した。評価の基準は、比較例1で生じた悪臭と比較して、1;消臭効果あり、2;消臭効果ややあり、3;あまり消臭効果はない、4;消臭効果はない、で判定した。結果を表1に示す。
【0022】
(表1)
評価の平均値
実施例1 1.8
実施例2 1.3

表1より、クエン酸およびクエン酸ナトリウムを含有する実施例1、2の飲料では、明確な消臭効果が得られることが明らかとなった。
試験例2(クエン酸およびリン酸水素二ナトリウムによる悪臭抑制効果)
実施例3、4および比較例1の飲料をそれぞれ蓋付きの瓶に入れ、120℃、20分加熱した後、被験者5名による官能試験を実施した。評価の基準は、比較例1で生じた悪臭と比較して、1;消臭効果あり、2;消臭効果ややあり、3;あまり消臭効果はない、4;消臭効果はない、で判定した。結果を表2に示す。
【0023】
(表2)
評価の平均値
実施例3 1.5
実施例4 1.4

表2より、クエン酸およびリン酸水素二ナトリウムを含有する実施例3、4の飲料では、明確な消臭効果が得られることが明らかとなった。
【0024】
以下に、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0025】
シトルリンを含有する飲料(1)
成分 量(g)
L−シトルリン(協和醗酵工業社製) 1.00
クエン酸(キシダ化学社製) 0.75
クエン酸ナトリウム(キシダ化学社製) 0.25
以上の成分を超純水に溶解して全体を100mlとした。
【実施例2】
【0026】
シトルリンを含有する飲料(2)
成分 量(g)
L−シトルリン(協和醗酵工業社製) 1.00
クエン酸(キシダ化学社製) 0.20
クエン酸ナトリウム(キシダ化学社製) 0.80
以上の成分を超純水に溶解して全体を100mlとした。
【実施例3】
【0027】
シトルリンを含有する飲料(3)
成分 量(g)
L−シトルリン(協和醗酵工業社製) 1.00
クエン酸(キシダ化学社製) 1.00
リン酸水素二ナトリウム(和光純薬社製) 1.00
以上の成分を超純水に溶解して全体を100mlとした。
【実施例4】
【0028】
シトルリンを含有する飲料(4)
成分 量(g)
L−シトルリン(協和醗酵工業社製) 1.00
クエン酸(キシダ化学社製) 0.50
リン酸水素二ナトリウム(和光純薬社製) 1.50
以上の成分を超純水に溶解して全体を100mlとした。
比較例1
超純水にL−シトルリンを1重量%含有する飲料を作製した。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、シトルリンを含有し、保存や加熱による悪臭の発生が抑制された飲みやすい飲料を提供することができる。