特許第5955401号(P5955401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955401
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
   F25B47/02 550F
   F25B47/02 550P
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-541878(P2014-541878)
(86)(22)【出願日】2012年10月18日
(86)【国際出願番号】JP2012076941
(87)【国際公開番号】WO2014061134
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2015年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510048875
【氏名又は名称】ダイキン ヨーロッパ エヌ.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN EUROPE N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭弘
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−010288(JP,A)
【文献】 特開2008−185292(JP,A)
【文献】 特開平07−198187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)と、室外熱交換器(23)と、室内熱交換器(42a、42b)と、冷媒と蓄熱材との間で熱交換を行う蓄熱熱交換器(28)とを有する冷媒回路(10)を備えており、前記蓄熱熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させることで前記蓄熱材への蓄熱を行う蓄熱運転を行い、前記室外熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させることで前記室外熱交換器の除霜を行う除霜運転時に前記蓄熱熱交換器を前記冷媒の蒸発器として機能させることで前記蓄熱材からの放熱を行う蓄熱利用運転及び前記室内熱交換器を前記冷媒の放熱器として機能させる暖房運転を同時に行うことが可能な空気調和装置において、
前記冷媒回路は、前記室内熱交換器を流れる前記冷媒の流量を可変するための室内膨張弁(41a、41b)と、前記室外熱交換器を流れる前記冷媒の流量を可変するための室外膨張弁(24)とをさらに有しており、
前記室内熱交換器及び前記室内膨張弁は、室内ユニット(4a、4b)に設けられており、
前記室内ユニットは、前記暖房運転だけを行う場合に前記室内膨張弁の開度を決定する室内側制御部(48a、48b)を有しており、
前記室外熱交換器及び前記室外膨張弁は、室外ユニット(2)に設けられており、
前記室外ユニットは、前記暖房運転だけを行う場合には前記室外膨張弁の開度を決定し、前記蓄熱利用運転を伴う前記除霜運転において前記暖房運転を行う場合には前記室内膨張弁の開度及び前記室外膨張弁の開度を決定する室外側制御部(38)を有している、
空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記蓄熱利用運転を伴う前記除霜運転において前記暖房運転を行う場合には、前記除霜運転の開始から第1除霜時間を経過するまでは、前記室内膨張弁(41a、41b)の開度が、前記冷媒回路(10)における前記冷媒の凝縮温度と前記室内ユニット(4a、4b)が対象とする空調空間の室内温度との相関関係に基づいて決定される、
請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
前記除霜運転の開始から前記第1除霜時間を経過した後は、前記室内熱交換器(42a、42b)の暖房能力が小さくなり、かつ、前記室外熱交換器(23)の除霜能力が大きくなるように、前記室内膨張弁(41a、41b)及び前記室外膨張弁(24)の開度が変更される、
請求項2に記載の空気調和装置(1)。
【請求項4】
前記第1除霜時間は、前記室外ユニット(2)が配置される外部空間の室外温度に基づいて決定される、
請求項3に記載の空気調和装置(1)。
【請求項5】
前記除霜運転において、前記圧縮機(21)から吐出される前記冷媒の過熱度に基づいて前記室内膨張弁(41a、41b)の開度が過大になっているかどうかを判定する、
請求項2〜4のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置、特に、冷媒と蓄熱材との間で熱交換を行う蓄熱熱交換器とを有する冷媒回路を備えており、蓄熱熱交換器を冷媒の放熱器として機能させることで蓄熱材への蓄熱を行う蓄熱運転を行い、除霜運転時に蓄熱熱交換器を冷媒の蒸発器として機能させることで蓄熱材からの放熱を行う蓄熱利用運転及び暖房運転を同時に行うことが可能な空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開2005−337657号公報)に示すように、圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、冷媒と蓄熱材との間で熱交換を行う蓄熱熱交換器を有する冷媒回路を備えており、蓄熱運転を行い、除霜運転時に蓄熱利用運転及び暖房運転を同時に行うことが可能な空気調和装置がある。ここで、蓄熱運転とは、蓄熱熱交換器を冷媒の放熱器として機能させることで蓄熱材への蓄熱を行う運転である。除霜運転とは、室外熱交換器を冷媒の放熱器として機能させることで室外熱交換器の除霜を行う運転である。蓄熱利用運転とは、蓄熱熱交換器を冷媒の蒸発器として機能させることで蓄熱材からの放熱を行う運転である。暖房運転とは、室内熱交換器を冷媒の放熱器として機能させる運転である。
【発明の概要】
【0003】
上記従来の空気調和装置は、室内熱交換器及び室内熱交換器を流れる冷媒の流量を可変するための室内膨張弁が設けられた室内ユニットと、室外熱交換器及び室外熱交換器を流れる冷媒の流量を可変するための室外膨張弁が設けられた室外ユニットとを有している。そして、通常の暖房運転時(すなわち、蓄熱利用運転や除霜運転を伴わない暖房運転時)において、室内膨張弁の開度が室内熱交換器の出口における冷媒の過冷却度に基づいて制御(室内膨張弁による過冷却度制御)されるようになっており、これにより、室内熱交換器の暖房能力が確保されるようになっている。ここで、この過冷却度制御における室内膨張弁の開度は、室内ユニットに設けられた室内側制御部が決定している。
このような空気調和装置において、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を同時に行う場合においても、室外熱交換器の除霜能力に余裕がある場合には、通常の暖房運転時と同じく、室内側制御部が室内膨張弁の開度制御を行い、室内熱交換器の暖房能力を確保すればよい。
【0004】
しかし、室外熱交換器の除霜能力に余裕がない場合には、室内熱交換器の暖房能力を制限するために、室内膨張弁の開度制御を通常の暖房運転時とは異なるものにする必要がある。ここで、室内膨張弁の開度が室外膨張弁の開度に対して大きすぎると、室内熱交換器の暖房能力の制限が不十分になるとともに室外熱交換器の除霜能力が不十分になるため、室外熱交換器の除霜が不完全な状態で除霜運転が終了してしまう。逆に、室内膨張弁の開度が室外膨張弁の開度に対して小さすぎると、室外熱交換器の除霜能力は十分になるものの室内熱交換器の暖房能力の制限が過剰になるため、蓄熱利用運転を伴う除霜運転によって暖房運転を行うという利点を十分に得ることができなくなってしまう。
本発明の課題は、冷媒と蓄熱材との間で熱交換を行う蓄熱熱交換器を有する冷媒回路を備えており、蓄熱運転を行い、除霜運転時に蓄熱利用運転及び暖房運転を同時に行うことが可能な空気調和装置において、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を同時に行う場合の室内膨張弁及び室外膨張弁の開度を適切に決定できるようにすることにある。
【0005】
第1の観点にかかる空気調和装置は、圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、冷媒と蓄熱材との間で熱交換を行う蓄熱熱交換器を有する冷媒回路を備えており、蓄熱運転を行い、除霜運転時に蓄熱利用運転及び暖房運転を同時に行うことが可能な空気調和装置がある。ここで、蓄熱運転とは、蓄熱熱交換器を冷媒の放熱器として機能させることで蓄熱材への蓄熱を行う運転である。除霜運転とは、室外熱交換器を冷媒の放熱器として機能させることで室外熱交換器の除霜を行う運転である。蓄熱利用運転とは、蓄熱熱交換器を冷媒の蒸発器として機能させることで蓄熱材からの放熱を行う運転である。暖房運転とは、室内熱交換器を冷媒の放熱器として機能させる運転である。また、冷媒回路は、室内熱交換器を流れる冷媒の流量を可変するための室内膨張弁と、室外熱交換器を流れる冷媒の流量を可変するための室外膨張弁とをさらに有している。ここで、室内熱交換器及び室内膨張弁は、室内ユニットに設けられており、室外熱交換器及び室外膨張弁は、室外ユニットに設けられている。そして、この空気調和装置では、室内ユニットが、暖房運転だけを行う場合に室内膨張弁の開度を決定する室内側制御部を有しており、室外ユニットが、暖房運転だけを行う場合には室外膨張弁の開度を決定し、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合には室内膨張弁の開度及び室外膨張弁の開度を決定する室外側制御部を有している。
【0006】
ここでは、暖房運転だけを行う場合には、室内側制御部が室内膨張弁の開度を決定し、かつ、室外側制御部が室外膨張弁の開度を決定するようにしているが、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合には、室外側制御部が室外膨張弁の開度だけでなく室内膨張弁の開度を決定するようにしている。このため、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合には、室外側制御部が、室外熱交換器の除霜能力と室内熱交換器の暖房能力とのバランスを考慮して、室外膨張弁の開度と室内膨張弁の開度とをまとめて決定することができる。
これにより、ここでは、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合において、室内膨張弁及び室外膨張弁の開度を適切に決定することができる。
【0007】
第2の観点にかかる空気調和装置は、第1の観点にかかる空気調和装置において、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合には、除霜運転の開始から第1除霜時間を経過するまでは、室内膨張弁の開度が、冷媒回路における冷媒の凝縮温度と室内ユニットが対象とする空調空間の室内温度との相関関係に基づいて決定される。
蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合には、室内熱交換器の暖房能力を確実に確保しつつ、室内膨張弁の開度を決定する必要がある。しかし、室外側制御部が室内膨張弁の開度を決定する場合には、室外ユニットと室内ユニットとを接続する冷媒管における冷媒の圧力損失等の影響を考慮することが難しい。
そこで、ここでは、上記のように、除霜運転の開始から第1除霜時間を経過するまでは、室内膨張弁の開度を、冷媒回路における冷媒の凝縮温度と室内ユニットが対象とする空調空間の室内温度との相関関係に基づいて決定するようにしている。例えば、凝縮温度が室内温度から得られる閾温度よりも低い場合には、室外制御部が、室内熱交換器の暖房能力が確保されていないものと判定して、室内膨張弁の開度を大きくして、室内熱交換器の暖房能力が確保されるようにする。しかも、ここでは、上記のように、このような室内膨張弁の開度決定を除霜運転の開始から第1除霜時間を経過するまで行うようにして、除霜運転の初期においては、室内熱交換器の暖房能力の確保を優先しつつ、除霜運転を行うようにしている。
【0008】
これにより、ここでは、室外制御部が、凝縮温度と室内温度との相関関係に基づいて室内膨張弁の開度を適切に決定することによって、室内熱交換器の暖房能力の確保を優先しつつ、除霜運転を行うことができる。
【0009】
第3の観点にかかる空気調和装置は、第2の観点にかかる空気調和装置において、除霜運転の開始から第1除霜時間を経過した後は、室内熱交換器の暖房能力が小さくなり、かつ、室外熱交換器の除霜能力が大きくなるように、室内膨張弁及び室外膨張弁の開度が変更される。
蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合において、室外熱交換器の除霜を確実に終了させるためには、室外熱交換器の除霜能力を大きくする必要がある。
そこで、ここでは、上記のように、除霜運転の開始から第1除霜時間を経過した後は、室内熱交換器の暖房能力が小さくなり、かつ、室外熱交換器の除霜能力が大きくなるように、室内膨張弁及び室外膨張弁の開度を変更するようにしている。例えば、除霜運転の開始から第1除霜時間を経過した後は、室外制御部が、室内膨張弁の開度を小さくし、かつ、室外膨張弁の開度を大きくして、室内熱交換器の暖房能力を小さくし、かつ、室外熱交換器の除霜能力を大きくすることで、暖房を優先する運転から除霜を優先する運転に移行する。
【0010】
これにより、ここでは、室外制御部が、室内膨張弁及び室外膨張弁の開度を適切に決定することによって、暖房を優先する運転から除霜を優先する運転に移行させて、室外熱交換器の除霜を確実に終了させることができる。
【0011】
第4の観点にかかる空気調和装置は、第3の観点にかかる空気調和装置において、第1除霜時間が、室外ユニットが配置される外部空間の室外温度に基づいて決定される。
除霜に要する時間は、冷媒回路を構成する機器や蓄熱材からの放熱ロスが影響するため、室外温度が低くなるほど長くなる傾向にある。このため、暖房を優先した運転を行う時間である第1除霜時間についても、室外温度に基づいて決定することが好ましい。
そこで、ここでは、上記のように、第1除霜時間を室外温度に基づいて決定するようにしている。例えば、室外温度が低くなるほど、暖房を優先した運転の時間を短くして、除霜を優先した運転の時間を長くする必要があるため、室外温度が低くなるほど第1除霜時間が短くなるように決定する。
【0012】
これにより、ここでは、暖房を優先する運転を行う第1除霜時間を室外温度に基づいて決定することによって、除霜を優先する運転が長く行われるようにして、室外熱交換器の除霜を確実に終了させることができる。
【0013】
第5の観点にかかる空気調和装置は、第2〜第4の観点のいずれかにかかる空気調和装置において、除霜運転において、圧縮機から吐出される冷媒の過熱度に基づいて室内膨張弁の開度が過大になっているかどうかを判定する。
蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合において、室内膨張弁の開度が過大になると、室内熱交換器の出口における冷媒が気液二相状態になりやすくなる。そうすると、室内熱交換器の出口側(液側)と冷媒の蒸発器として機能する蓄熱熱交換器の入口側(液側)とを接続する冷媒管にガス状態の冷媒が充満しやすくなる。ここで、冷媒回路において、室内熱交換器の出口側(液側)と冷媒の蒸発器として機能する蓄熱熱交換器の入口側(液側)とを接続する部分にレシーバが設けられていない場合には、液冷媒が蓄熱熱交換器を介して圧縮機に戻る、いわゆる液バックが発生するおそれがある。そして、液バックが発生すると、圧縮機から吐出される冷媒の過熱度が小さくなる傾向が見られる。
【0014】
そこで、ここでは、室外制御部が、圧縮機から吐出される冷媒の過熱度に基づいて室内膨張弁の開度が過大になることによって液バックが発生しているものと判定するようにしている。例えば、圧縮機から吐出される冷媒の過熱度が閾過熱度よりも小さい場合には、室外制御部は、液バックが発生しているものと判定している。そして、必要に応じて、室内膨張弁の開度を小さくするようにしている。
これにより、ここでは、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において、室内膨張弁の開度が過大になっているかどうかを適切に判定しながら暖房運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気調和装置の概略構成図である。
図2】蓄熱熱交換器の概略構成図である。
図3】空気調和装置の制御ブロック図である。
図4】冷房運転における冷媒回路内の冷媒の流れを示す図である。
図5】暖房運転における冷媒回路内の冷媒の流れを示す図である。
図6】蓄熱運転(暖房運転時の蓄熱運転)における冷媒回路内の冷媒の流れを示す図である。
図7】除霜運転(蓄熱利用運転を伴う除霜運転)における冷媒回路内の冷媒の流れを示す図である。
図8】除霜運転(蓄熱利用運転を伴う除霜運転)における室内膨張弁及び室外膨張弁の開度決定のフローチャートである。
図9】除霜運転(蓄熱利用運転を伴う除霜運転)における室内膨張弁及び室外膨張弁の開度の経時変化を示す図である。
図10】変形例2にかかる除霜運転(蓄熱利用運転を伴う除霜運転)における室内膨張弁及び室外膨張弁の開度決定のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる空気調和装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。尚、本発明にかかる空気調和装置の実施形態の具体的な構成は、下記の実施形態及びその変形例に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0017】
(1)空気調和装置の基本構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気調和装置1の概略構成図である。空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル運転を行うことによって、ビル等の屋内の空調に使用される装置である。空気調和装置1は、主として、室外ユニット2と、複数(ここでは、2台)の室内ユニット4a、4bとが接続されることによって構成されている。ここで、室外ユニット2と複数の室内ユニット4a、4bとは、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7を介して接続されている。すなわち、空気調和装置1の蒸気圧縮式の冷媒回路10は、室外ユニット2と、複数の室内ユニット4a、4bとが冷媒連絡管6、7を介して接続されることによって構成されている。
【0018】
<室内ユニット>
室内ユニット4a、4bは、屋内に設置されている。室内ユニット4a、4bは、冷媒連絡管6、7を介して室外ユニット2に接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
次に、室内ユニット4a、4bの構成について説明する。尚、室内ユニット4bは、室内ユニット4aと同様の構成を有するため、ここでは、室内ユニット4aの構成のみ説明し、室内ユニット4bの構成については、それぞれ、室内ユニット4aの各部を示す添字aの代わりに添字bを付して、各部の説明を省略する。
室内ユニット4aは、主として、冷媒回路10の一部を構成する室内側冷媒回路10a(室内ユニット4bでは、室内側冷媒回路10b)を有している。室内側冷媒回路10aは、主として、室内膨張弁41aと、室内熱交換器42aとを有している。
【0019】
室内膨張弁41aは、室内側冷媒回路10aを流れる冷媒を減圧して室内熱交換器42aを流れる冷媒の流量を可変する弁である。室内膨張弁41aは、室内熱交換器42aの液側に接続された電動膨張弁である。
室内熱交換器42aは、例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器からなる。室内熱交換器42aの近傍には、室内熱交換器42aに室内空気を送るための室内ファン43aが設けられている。室内ファン43aによって室内熱交換器42aに対して室内空気を送風することにより、室内熱交換器42aでは、冷媒と室内空気との間で熱交換が行われる。室内ファン43aは、室内ファンモータ44aによって回転駆動されるようになっている。これにより、室内熱交換器42aは、冷媒の放熱器や冷媒の蒸発器として機能するようになっている。
【0020】
また、室内ユニット4aには、各種のセンサが設けられている。室内熱交換器42aの液側には、液状態又は気液二相状態の冷媒の温度Trlaを検出する液側温度センサ45aが設けられている。室内熱交換器42aのガス側には、ガス状態の冷媒の温度Trgaを検出するガス側温度センサ46aが設けられている。室内ユニット4aの室内空気の吸入口側には、室内ユニット4aが対象とする空調空間の室内空気の温度(すなわち、室内温度Tra)を検出する室内温度センサ47aが設けられている。また、室内ユニット4aは、室内ユニット4aを構成する各部の動作を制御する室内側制御部48aを有している。そして、室内側制御部48aは、室内ユニット4aの制御を行うために設けられたマイクロコンピュータやメモリ等を有しており、室内ユニット4aを個別に操作するためのリモートコントローラ49aとの間で制御信号等のやりとりを行ったり、室外ユニット2との間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。尚、リモートコントローラ49aは、ユーザーが空調運転に関する各種設定や運転/停止指令を行う機器である。
【0021】
<室外ユニット>
室外ユニット2は、屋外に設置されている。室外ユニット2は、冷媒連絡管6、7を介して室内ユニット4a、4bに接続されており、冷媒回路10の一部を構成している。
次に、室外ユニット2の構成について説明する。
室外ユニット2は、主として、冷媒回路10の一部を構成する室外側冷媒回路10cを有している。この室外側冷媒回路10cは、主として、圧縮機21と、第1切換機構22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、第2切換機構27と、蓄熱熱交換器28と、蓄熱膨張弁29とを有している。
圧縮機21は、ケーシング内に図示しない圧縮要素及び圧縮要素を回転駆動する圧縮機モータ20が収容された密閉型圧縮機である。圧縮機モータ20は、図示しないインバータ装置を介して電力が供給されるようになっており、インバータ装置の周波数(すなわち、回転数)を変化させることによって、運転容量を可変することが可能になっている。
【0022】
第1切換機構22は、冷媒の流れの方向を切り換えるための四路切換弁である。第1切換機構22は、室外熱交換器23を冷媒の放熱器として機能させる場合に、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器23のガス側とを接続するとともに、蓄熱熱交換器28のガス側と圧縮機21の吸入側とを接続する切り換えが行われる(室外放熱切換状態、図1の第1切換機構22の実線を参照)。ここで、第1切換機構22が室外放熱切換状態に切り換えられると、蓄熱熱交換器28を冷媒の蒸発器として機能させることができる。また、第1切換機構22は、室外熱交換器23を冷媒の蒸発器として機能させる場合に、圧縮機21の吸入側と室外熱交換器23のガス側とを接続するとともに、蓄熱熱交換器28のガス側と圧縮機21の吐出側とを接続する切り換えが行われる(室外蒸発切換状態、図1の第1切換機構22の破線を参照)。ここで、第2切換機構22が室外蒸発切換状態に切り換えられると、蓄熱熱交換器28を冷媒の放熱器として機能させることができる。尚、第1切換機構22は、四路切換弁ではなく、三方弁や電磁弁等を組み合わせて同じ機能を果たすように構成したものであってもよい。
【0023】
室外熱交換器23は、例えば、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器からなる。室外熱交換器23の近傍には、室外熱交換器23に室外空気を送るための室外ファン25が設けられている。室外ファン25によって室外熱交換器23に対して室外空気を送風することにより、室外熱交換器23では、冷媒と室外空気との間で熱交換が行われる。室外ファン25は、室外ファンモータ26によって回転駆動されるようになっている。これにより、室外熱交換器23は、冷媒の放熱器や冷媒の蒸発器として機能するようになっている。
室外膨張弁24は、室外側冷媒回路10cのうち室外熱交換器23を流れる冷媒を減圧して室外熱交換器23を流れる冷媒の流量を可変する弁である。室外膨張弁24は、室外熱交換器23の液側に接続された電動膨張弁である。
【0024】
第2切換機構27は、冷媒の流れの方向を切り換えるための四路切換弁である。第2切換機構27は、室内熱交換器42a、42bを冷媒の蒸発器として機能させる場合に、圧縮機21の吸入側とガス冷媒連絡管7とを接続する切り換えが行われる(室内蒸発切換状態、図1の第2切換機構27の実線を参照)。また、第2切換機構27は、室内熱交換器42a、42bを冷媒の放熱器として機能させる場合に、圧縮機21の吐出側とガス冷媒連絡管7とを接続する切り換えが行われる(室内放熱切換状態、図1の第2切換機構27の破線を参照)。ここで、第2切換機構27の4つのポートのうちの1つ(図1の紙面右寄りのポート)は、キャピラリーチューブ271を介して常時圧縮機21の吸入側に接続されたポート(図1の紙面上寄りのポート)に接続されることによって、実質的には使用されないポートとなっている。尚、第2切換機構27は、四路切換弁ではなく、三方弁や電磁弁等を組み合わせて同じ機能を果たすように構成したものであってもよい。
【0025】
蓄熱熱交換器28は、冷媒と蓄熱材との間で熱交換を行う熱交換器であり、冷媒の放熱器として機能させることで蓄熱材への蓄熱を行い、冷媒の蒸発器として機能させることで蓄熱材からの放熱(蓄熱利用)を行う際に使用される。蓄熱熱交換器28は、主として、蓄熱材が溜められている蓄熱槽281と、蓄熱材に浸漬されるように配置された伝熱管群282とを有している。蓄熱槽281は、ここでは、図2に示すように、略直方体形状の箱体であり、内部に蓄熱材が溜められている。蓄熱材としては、ここでは、相変化によって蓄熱を行う物質が使用されている。具体的には、蓄熱熱交換器28を冷媒の放熱器として使用する際に相変化(溶融)して蓄熱し、蓄熱熱交換器28を冷媒の蒸発器として使用する際に相変化(凝固)して蓄熱利用されるように、30℃〜40℃程度の相変化温度を有するポリエチレングリコールや硫酸ナトリウム水和物、パラフィン等が使用されている。伝熱管群282は、図2に示すように、冷媒の出入口に設けられたヘッダー管283及び分流器284を介して複数の伝熱管285が分岐接続された構造を有している。ここでは、複数の伝熱管285がそれぞれ、上下方向に折り返された形状を有しており、このような複数の伝熱管285の両端がヘッダー管283及び分流器284に接続されることによって伝熱管群282を構成している。そして、蓄熱熱交換器28のガス側(すなわち、伝熱管群282の一端)は、第1切換機構22に接続されており、蓄熱熱交換器28の液側(すなわち、伝熱管群282の他端)は、冷媒回路10(ここでは、室外側冷媒回路10c)の室外膨張弁24と液冷媒連絡管6との間の部分に蓄熱膨張弁29を介して接続されている。ここで、図2は、蓄熱熱交換器28の概略構成図である。
【0026】
蓄熱膨張弁29は、室外側冷媒回路10cのうち蓄熱熱交換器28を流れる冷媒を減圧して蓄熱熱交換器28を流れる冷媒の流量を可変する弁である。蓄熱膨張弁29は、蓄熱熱交換器28の液側に接続された電動膨張弁である。
また、室外ユニット2には、各種のセンサが設けられている。室外ユニット2には、圧縮機21の吸入圧力Psを検出する吸入圧力センサ31と、圧縮機21の吐出圧力Pdを検出する吐出圧力センサ32と、圧縮機21の吸入温度Tsを検出する吸入温度センサ33と、圧縮機21の吐出温度Tdを検出する吐出温度センサ34とが設けられている。室外熱交換器23には、気液二相状態の冷媒の温度Tol1を検出する室外熱交温度センサ35が設けられている。室外熱交換器23の液側には、液状態又は気液二相状態の冷媒の温度Tol2を検出する液側温度センサ36が設けられている。室外ユニット2の室外空気の吸入口側には、室外ユニット2(すなわち、室外熱交換器23や蓄熱熱交換器28)が配置される外部空間の室外空気の温度(すなわち、室外温度Ta)を検出する室外温度センサ37が設けられている。また、室外ユニット2は、室外ユニット2を構成する各部の動作を制御する室外側制御部38を有している。そして、室外側制御部38は、室外ユニット2の制御を行うために設けられたマイクロコンピュータ、メモリや圧縮機モータ25を制御するインバータ装置等を有しており、室内ユニット4a、4bの室内側制御部48a、48bとの間で制御信号等のやりとりを行うことができるようになっている。
【0027】
<冷媒連絡管>
冷媒連絡管6、7は、空気調和装置1を設置する際に、現地にて施工される冷媒管であり、室外ユニット2及び室内ユニット4a、4bの設置条件に応じて種々の長さや管径を有するものが使用される。
【0028】
<制御部>
室内ユニット4a、4bを個別に操作するためのリモートコントローラ49a、49bと、室内ユニット4a、4bの室内側制御部48a、48bと、室外ユニット2の室外側制御部38とは、図1に示すように、空気調和装置1全体の運転制御を行う制御部8を構成している。制御部8は、図3に示されるように、各種センサ31〜37、45a、45b、46a、46b、47a、47b等の検出信号を受けることができるように接続されている。そして、制御部8は、これらの検出信号等に基づいて各種機器及び弁20、22、24、26、41a、41b、44a、44bを制御することによって、空調運転(冷房運転及び暖房運転)を行うことができるように構成されている。ここで、図3は、空気調和装置1の制御ブロック図である。
【0029】
以上のように、空気調和装置1は、複数(ここでは、2台)の室内ユニット4a、4bが室外ユニット2に接続されることによって構成される冷媒回路10を有している。そして、空気調和装置1では、制御部8によって、以下のような運転制御が行われるようになっている。
【0030】
(2)空気調和装置の基本動作
次に、空気調和装置1の冷房運転、暖房運転、蓄熱運転、及び、除霜運転の基本動作について、図4図7を用いて説明する。ここで、図4は、冷房運転における冷媒回路内の冷媒の流れを示す図である。図5は、暖房運転における冷媒回路内の冷媒の流れを示す図である。図6は、蓄熱運転(暖房運転時の蓄熱運転)における冷媒回路内の冷媒の流れを示す図である。図7は、除霜運転(蓄熱利用運転を伴う除霜運転)における冷媒回路内の冷媒の流れを示す図である。
【0031】
<冷房運転>
リモートコントローラ49a、49bから冷房運転の指令がなされると、第1切換機構22が室外放熱切換状態(図4の第1切換機構22の実線で示された状態)、及び、第2切換機構27が室内蒸発切換状態(図4の第2切換機構27の実線で示された状態)に切り換えられるとともに、蓄熱膨張弁29が閉止された状態(すなわち、蓄熱熱交換器28を使用しない状態)にされて、圧縮機21、室外ファン25及び室内ファン43a、43bが起動する。
すると、冷媒回路10内の低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。この高圧のガス冷媒は、第1切換機構22を経由して、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って冷却されることによって凝縮して、高圧の液冷媒となる。この高圧の液冷媒は、室外膨張弁24及び液冷媒連絡管6を経由して、室外ユニット2から室内ユニット4a、4bに送られる。
【0032】
室内ユニット4a、4bに送られた高圧の液冷媒は、室内膨張弁41a、41bによって減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒となる。この低圧の気液二相状態の冷媒は、室内熱交換器42a、42bに送られる。室内熱交換器42a、42bに送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室内熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン43a、43bによって供給される室内空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発して、低圧のガス冷媒となる。この低圧のガス冷媒は、ガス冷媒連絡管7を経由して、室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に送られる。
室外ユニット2に送られた低圧のガス冷媒は、第2切換機構27を経由して、再び、圧縮機21に吸入される。
【0033】
<暖房運転>
リモートコントローラ49a、49bから暖房運転の指令がなされると、第1切換機構22が室外蒸発切換状態(図5の第1切換機構22の破線で示された状態)、及び、第2切換機構27が室内放熱切換状態(図5の第2切換機構27の破線で示された状態)に切り換えられるとともに、蓄熱膨張弁29が閉止された状態(すなわち、蓄熱熱交換器28を使用しない状態)にされて、圧縮機21、室外ファン25及び室内ファン43a、43bが起動する。
【0034】
すると、冷媒回路10内の低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。この高圧のガス冷媒は、第2切換機構27及びガス冷媒連絡管7を経由して、室外ユニット2から室内ユニット4a、4bに送られる。
室内ユニット4a、4bに送られた高圧のガス冷媒は、室内熱交換器42a、42bに送られる。室内熱交換器42a、42bに送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室内熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン43a、43bによって供給される室内空気と熱交換を行って冷却されることによって凝縮して、高圧の液冷媒となる。この高圧の液冷媒は、室内膨張弁41a、41bによって減圧される。室内膨張弁41a、41bによって減圧された冷媒は、ガス冷媒連絡管7を経由して、室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に送られる。
【0035】
室外ユニット2に送られた冷媒は、室外膨張弁24に送られ、室外膨張弁24によって減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒となる。この低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発して、低圧のガス冷媒となる。この低圧のガス冷媒は、第1切換機構22を経由して、再び、圧縮機21に吸入される。
【0036】
<蓄熱運転(暖房運転時の蓄熱運転)>
暖房運転時においては、蓄熱熱交換器28を冷媒の放熱器として機能させることで蓄熱材への蓄熱を行う蓄熱運転が行われる。すなわち、室外熱交換器23を冷媒の蒸発器として機能させ、かつ、室内熱交換器42a、42bを冷媒の放熱器として機能させる暖房運転時において、蓄熱熱交換器28を冷媒の放熱器として機能させることで蓄熱材への蓄熱を行う蓄熱運転(暖房運転時の蓄熱運転)が行われる。この暖房運転時の蓄熱運転は、切換機構22、27を暖房運転と同じ切換状態に切り換えた上で、蓄熱膨張弁29を開けることによって行われる(図6参照)。
【0037】
すると、冷媒回路10内の低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。この高圧のガス冷媒の一部は、暖房運転時と同様に、第2切換機構27及びガス冷媒連絡管7を経由して、室外ユニット2から室内ユニット4a、4bに送られる。この室内ユニット4a、4bに送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室内熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン43a、43bによって供給される室内空気と熱交換を行って冷却されることによって凝縮して高圧の液冷媒となる。この高圧の液冷媒は、室内膨張弁41a、41bによって減圧される。室内膨張弁41a、41bによって減圧された冷媒は、ガス冷媒連絡管7を経由して、室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に送られる。
また、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒の残りは、第1切換機構22を経由して、蓄熱熱交換器28に送られる。蓄熱熱交換器28に送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器として機能する蓄熱熱交換器28において、蓄熱材と熱交換を行って冷却されることによって凝縮して、高圧の液冷媒となる。この高圧の液冷媒は、蓄熱膨張弁29によって減圧される。ここで、蓄熱熱交換器28の蓄熱材は、冷媒との熱交換によって加熱されることによって相変化(溶融)して蓄熱する。
【0038】
蓄熱膨張弁29によって減圧された冷媒は、室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に送られた冷媒と合流して、室外膨張弁24に送られ、室外膨張弁24によって減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒となる。この低圧の気液二相状態の冷媒は、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する室外熱交換器23において、室外ファン25によって供給される室外空気と熱交換を行って加熱されることによって蒸発して、低圧のガス冷媒となる。この低圧のガス冷媒は、第1切換機構22を経由して、再び、圧縮機21に吸入される。このように、暖房運転時の蓄熱運転において、蓄熱熱交換器28は、室内熱交換器42a、42bと並列の冷媒の放熱器として機能するようになっている。すなわち、冷媒回路10は、暖房運転時の蓄熱運転において、圧縮機21から吐出される高圧のガス冷媒を、室内熱交換器42a、42b及び蓄熱熱交換器28に並列に送ることが可能に構成されている。
【0039】
<除霜運転(蓄熱利用運転を伴う除霜運転)>
暖房運転時においては、室外熱交換器23を冷媒の放熱器として機能させることで室外熱交換器の除霜を行う除霜運転が行われる。そして、除霜運転時においては、蓄熱熱交換器28を冷媒の蒸発器として機能させることで蓄熱材からの放熱を行う蓄熱利用運転が行われる。すなわち、室外熱交換器23を冷媒の放熱器として機能させ、かつ、蓄熱熱交換器28を冷媒の蒸発器として機能させる蓄熱利用運転(除霜運転時の蓄熱利用運転、蓄熱利用運転を伴う除霜運転)が行われる。しかも、ここでは、室内熱交換器42a、42bを冷媒の放熱器として機能させることで暖房運転も同時に行われるようになっている。すなわち、ここでは、除霜運転時に蓄熱利用運転及び暖房運転が同時に(又は、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転が同時に)行われるようになっている。この除霜運転時の蓄熱利用運転(又は、蓄熱利用運転を伴う除霜運転)は、第1切換機構22を室外放熱切換状態に切り換え、かつ、第2切換機構27を室内放熱切換状態に切り換えた上で、蓄熱膨張弁29を開けることによって行われる(図7参照)。また、除霜運転時は、室外ファン25を停止させる。
【0040】
すると、冷媒回路10内の低圧のガス冷媒は、圧縮機21に吸入されて圧縮されて高圧のガス冷媒となる。この高圧のガス冷媒の一部は、暖房運転時と同様に、第2切換機構27及びガス冷媒連絡管7を経由して、室外ユニット2から室内ユニット4a、4bに送られる。この室内ユニット4a、4bに送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室内熱交換器42a、42bにおいて、室内ファン43a、43bによって供給される室内空気と熱交換を行って冷却されることによって凝縮して高圧の液冷媒となる。この高圧の液冷媒は、室内膨張弁41a、41bによって減圧される。室内膨張弁41a、41bによって減圧された冷媒は、ガス冷媒連絡管7を経由して、室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に送られる。
また、圧縮機21から吐出された高圧のガス冷媒の残りは、第1切換機構22を経由して、室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23に送られた高圧のガス冷媒は、冷媒の放熱器として機能する室外熱交換器23において、室外熱交換器23に付着している霜や氷と熱交換を行って冷却される。この高圧の冷媒は、室外膨張弁24よって減圧される。ここで、室外熱交換器23に付着している霜や氷は、冷媒との熱交換によって加熱されることによって融解して室外熱交換器23の除霜が行われる。
【0041】
室外膨張弁24によって減圧された高圧の冷媒は、室内ユニット4a、4bから室外ユニット2に送られた冷媒と合流して、蓄熱膨張弁29に送られ、蓄熱膨張弁29によって減圧されて、低圧の気液二相状態の冷媒となる。この低圧の気液二相状態の冷媒は、蓄熱熱交換器28に送られる。蓄熱熱交換器28に送られた低圧の気液二相状態の冷媒は、冷媒の蒸発器として機能する蓄熱熱交換器28において、蓄熱材と熱交換を行って加熱されることによって蒸発して、低圧のガス冷媒となる。この低圧のガス冷媒は、第1切換機構22を経由して、再び、圧縮機21に吸入される。ここで、蓄熱熱交換器28の蓄熱材は、冷媒との熱交換によって冷却されることによって相変化(凝固)して蓄熱利用される。このように、蓄熱利用運転を伴う除霜運転(又は、除霜運転時の蓄熱利用運転)において暖房運転が同時に行われる場合には、室内熱交換器42a、42bは、室外熱交換器23と並列の冷媒の放熱器として機能するようになっている。すなわち、冷媒回路10は、蓄熱利用運転を伴う除霜運転(又は、除霜運転時の蓄熱利用運転)において暖房運転が同時に行われる場合には、圧縮機21から吐出される高圧のガス冷媒を、室外熱交換器23及び室内熱交換器42a、42bに並列に送ることが可能に構成されている。
【0042】
<冷房運転、暖房運転、及び、蓄熱運転の制御>
【0043】
−冷房運転時−
上記の冷房運転において、制御部8は、各室内熱交換器42a、42bの出口における冷媒の過熱度SHra、SHrbが目標過熱度SHras、SHrbsになるように、各室内膨張弁41a、41bの開度を決定して制御している(以下、この制御を「室内膨張弁による過熱度制御」とする)。ここで、過熱度SHra、SHrbは、吸入圧力センサ31によって検出される吸入圧力Ps、及び、ガス側温度センサ46a、46bによって検出される室内熱交換器42aのガス側の冷媒の温度Trga、Trgbから算出される。より具体的には、まず、吸入圧力Psを冷媒の飽和温度に換算して、冷媒回路10における蒸発圧力Peに等価な状態量である蒸発温度Te(すなわち、蒸発圧力Peと蒸発温度Teは、文言自体は異なるが、実質的に同じ状態量を意味する)を得る。ここで、蒸発圧力Peとは、冷房運転時において、室内膨張弁41a、41bの出口から室内熱交換器42a、42bを経由して圧縮機21の吸入側に至るまでの間を流れる低圧の冷媒を代表する圧力を意味している。そして、各室内熱交換器42a、42bのガス側の冷媒の温度Trga、Trgbから蒸発温度Teを差し引くことによって過熱度SHra、SHrbを得る。
【0044】
尚、冷房運転において、室内膨張弁41a、41bを含めた室内ユニット4a、4bの各機器の制御は、制御部8の室内側制御部48a、48bによって行われる。また、室外膨張弁24を含めた室外ユニット2の各機器の制御は、制御部8の室外側制御部38によって行われる。
【0045】
−暖房運転時−
上記の暖房運転において、制御部8は、各室内熱交換器42a、42bの出口における冷媒の過冷却度SCra、SCrbが目標過冷却度SCras、SCrbsになるように、各室内膨張弁41a、41bの開度を決定して制御している(以下、この制御を「室内膨張弁による過冷却度制御」とする)。ここで、過冷却度SCra、SCrbは、吐出圧力センサ32によって検出される吐出圧力Pd、及び、液側温度センサ45a、45bによって検出される室内熱交換器42aの液側の冷媒の温度Trla、Trlbから算出される。より具体的には、まず、吐出圧力Pdを冷媒の飽和温度に換算して、冷媒回路10における凝縮圧力Pcに等価な状態量である凝縮温度Tc(すなわち、凝縮圧力Pcと凝縮温度Tcは、文言自体は異なるが、実質的に同じ状態量を意味する)を得る。ここで、凝縮圧力Pcとは、暖房運転時において、圧縮機21の吐出側から室内熱交換器42a、42bを経由して室内膨張弁41a、41bに至るまでの間を流れる高圧の冷媒を代表する圧力を意味している。そして、凝縮温度Tcから各室内熱交換器42a、42bの液側の冷媒の温度Trla、Trlbを差し引くことによって過冷却度SCra、SCrbを得る。
【0046】
尚、暖房運転において、室内膨張弁41a、41bを含めた室内ユニット4a、4bの各機器の制御は、制御部8の室内側制御部48a、48bによって行われる。また、室外膨張弁24を含めた室外ユニット2の各機器の制御は、制御部8の室外側制御部38によって行われる。
【0047】
−蓄熱運転時−
上記の蓄熱運転において、制御部8は、蓄熱熱交換器28の蓄熱材への蓄熱が終了した場合には、蓄熱運転を終了して、暖房運転に移行する。そして、蓄熱運転の開始から所定のインターバル時間Δtbetが経過した場合には、除霜運転に移行するようになっている。すなわち、インターバル時間Δtbetは、除霜運転間のインターバル時間を意味する。そして、基本的には、インターバル時間Δtbetの間は、暖房運転時の蓄熱運転及び蓄熱運転終了後の暖房運転が行われ、インターバル時間Δtbetが経過する毎に、除霜運転が行われることになる。
【0048】
以上のように、空気調和装置1では、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行うことができるようになっている。そして、暖房運転時に蓄熱運転を行うことで、暖房運転を継続しながら蓄熱材への蓄熱を行い、除霜運転時に蓄熱利用運転を行うことで、蓄熱材の蓄熱を利用して除霜運転を行うことができるようになっている。
【0049】
(3)除霜運転時の制御
上記の蓄熱利用運転を伴う除霜運転時において、室外熱交換器23の除霜能力に余裕がある場合には、通常の暖房運転時(すなわち、蓄熱利用運転や除霜運転を伴わない暖房運転時)と同様に、室内側制御部48a、48bが室内膨張弁41a、41bの開度制御(ここでは、室内膨張弁41a、41bによる過冷却度制御)を行い、室内熱交換器42a、42bの暖房能力を確保すればよい。しかし、室外熱交換器23の除霜能力に余裕がない場合には、室内熱交換器42a、42bの暖房能力を制限するために、室内膨張弁41a、41bの開度制御を通常の暖房運転時とは異なるものにする必要がある。ここで、室内膨張弁41a、41bの開度が室外膨張弁24の開度に対して大きすぎると、室内熱交換器42a、42bの暖房能力の制限が不十分になるとともに室外熱交換器23の除霜能力が不十分になるため、室外熱交換器23の除霜が不完全な状態で除霜運転が終了してしまう。逆に、室内膨張弁41a、41bの開度が室外膨張弁24の開度に対して小さすぎると、室外熱交換器23の除霜能力は十分になるものの室内熱交換器41a、41bの暖房能力の制限が過剰になるため、蓄熱利用運転を伴う除霜運転によって暖房運転を行うという利点を十分に得ることができなくなってしまう。
【0050】
そこで、ここでは、暖房運転だけを行う場合には、室内側制御部48a、48bが室内膨張弁41a、41bの開度を決定し、かつ、室外側制御部38が室外膨張弁24の開度を決定するようにしているが、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合には、室外側制御部38が室外膨張弁24の開度だけでなく室内膨張弁41a、41bの開度を決定するようにしている。
このため、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合には、室外側制御部38が、室外熱交換器24の除霜能力と室内熱交換器42a、42bの暖房能力とのバランスを考慮して、室外膨張弁24の開度と室内膨張弁41a、41bの開度とをまとめて決定することができる。
これにより、ここでは、まず、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合において、室内膨張弁41a、41b及び室外膨張弁24の開度を適切に決定することができる。
【0051】
また、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合には、室内熱交換器42a、42bの暖房能力を確実に確保しつつ、室内膨張弁41a、41bの開度を決定する必要がある。しかし、室外側制御部38が室内膨張弁41a、41bの開度を決定する場合には、室外ユニット2と室内ユニット4a、4bとを接続する冷媒管(ここでは、主として、液冷媒連絡管6及びガス冷媒連絡管7)における冷媒の圧力損失等の影響を考慮することが難しい。しかも、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転を行う場合において、室外熱交換器23の除霜を確実に終了させるためには、室外熱交換器23の除霜能力を大きくする必要もある。
そこで、ここでは、除霜運転の開始から第1除霜時間tajを経過するまでは、室内膨張弁41a、41bの開度を、冷媒回路10における冷媒の凝縮温度Tcと室内ユニット4a、4bが対象とする空調空間の室内温度Tra、Trb(総称してTrとする)との相関関係に基づいて決定するようにしている。また、除霜運転の開始から第1除霜時間tajを経過した後は、室内熱交換器42a、42bの暖房能力が小さくなり、かつ、室外熱交換器24の除霜能力が大きくなるように、室内膨張弁41a、41b及び室外膨張弁24の開度を変更するようにしている。
【0052】
具体的には、ここでは、図8のフローチャートに示すステップST1〜ST5にしたがって、室外側制御部38による室内膨張弁41a、41b及び室外膨張弁24の開度決定が行われる。
まず、暖房運転時の蓄熱運転及び蓄熱運転終了後の暖房運転が終了して除霜運転(蓄熱利用運転を伴う除霜運転)が開始されると、ステップST1において、室内膨張弁41a、41bの開度が除霜運転時の初期開度MVrd1に設定されるとともに、室外膨張弁24の開度が除霜運転時の初期開度MVod1に設定される。ここで、室内膨張弁41a、41bの開度及び室外膨張弁24の開度の決定は、上記のように、室外側制御部38によって行われる。
そして、除霜運転が暖房/除霜優先開始条件を満たす場合には、ステップST2の処理を経由してステップST3〜ST5の処理に移行して、暖房を優先する運転や除霜を優先する運転が行われるように、室内膨張弁41a、41bの開度及び室外膨張弁24の開度を決定する制御が開始される。ここで、暖房/除霜優先開始条件は、室内膨張弁41a、41bの開度及び室外膨張弁24の開度の変更を行うことによって暖房を優先する運転や除霜を優先する運転を行うことが許容される状態にあるかどうかを判定するための条件である。そして、ここでは、除霜運転の開始から第2除霜時間tah以内であり、かつ、除霜運転の開始から所定の時間tdef1が経過しており、かつ、凝縮温度Tcが室内温度Trから得られる所定の閾温度Trdef(例えば、室内温度Trに所定の温度を加えた値)より小さい場合には、暖房/除霜優先開始条件を満たすものとする。ここで、第2除霜時間tahは、除霜運転の開始から暖房を優先する運転や除霜を優先する運転を行う時間である。また、時間tdef1は、除霜運転の開始から暖房を優先する運転や除霜を優先する運転に移行するまでの待ち時間であり、第2除霜時間tahに比べて非常に短い時間である。
【0053】
次に、ステップST2からステップST3に移行した除霜運転が暖房優先条件を満たす場合には、ステップST4の処理に移行して、暖房を優先する運転が行われるように、室内膨張弁41a、41bの開度及び室外膨張弁24の開度を決定する制御が行われる。ここで、暖房優先条件は、室内熱交換器42a、42bの暖房能力が確保されていない状態にあるかどうかを判定するための条件である。そして、ここでは、除霜運転の開始から第1除霜時間taj(第2除霜時間tahよりも短い時間)以内であり、かつ、ステップST3への移行から所定の時間tdef2が経過しており、かつ、凝縮温度Tcが室内温度Trから得られる閾温度Trdef(上記の暖房/除霜優先開始条件における閾温度Trdefと同じ)よりも低い場合には、暖房優先条件を満たすものとする。ここで、時間tdef2は、ステップST3の開度保持状態を維持するための待ち時間である。そして、ステップST3の処理時において暖房優先条件を満たす場合には、ステップST4の処理に移行して、室内膨張弁41a、41bの開度を大きくする(ここでは、開度ΔMVrd2だけ大きくする)とともに、室外膨張弁24の開度を小さくして(ここでは、開度ΔMVod2だけ小さくする)、ステップST3の処理に戻る。ここで、暖房優先条件(閾温度Trdefによる判定を含む)を満たすかどうかの判定や室内膨張弁41a、41bの開度及び室外膨張弁24の開度の決定は、上記のように、室外側制御部38によって行われる。すなわち、ここでは、除霜運転の開始から第1除霜時間tajを経過するまで(除霜運転の初期)は、室内膨張弁41a、41bの開度を、凝縮温度Tcと室内温度Trとの相関関係に基づいて適切に決定するようにしている。このようなステップST3、暖房優先条件の判定、及び、ステップST4の処理を繰り返すことによって、図9に示すように、除霜運転の開始から第1除霜時間tajを経過するまで(すなわち、除霜運転の初期において)は、室内膨張弁41a、41bの開度を大きくするとともに、室外膨張弁24の開度を小さくして、室内熱交換器42a、42bの暖房能力の確保を優先しつつ、除霜運転を行うことができるようになる。
【0054】
次に、ステップST2からステップST3に移行した除霜運転が除霜優先条件を満たす場合には、ステップST5の処理に移行して、除霜を優先する運転が行われるように、室内膨張弁41a、41bの開度及び室外膨張弁24の開度を決定する制御が行われる。ここで、除霜優先条件は、室外熱交換器23の除霜の能力が確保されていない状態にあるかどうかを判定するための条件である。そして、ここでは、除霜運転の開始から第1除霜期間tajが経過しており、かつ、ステップST3への移行から所定の時間tdef3が経過しており、かつ、室外熱交換器23の出口の冷媒の温度である室外熱交出口温度Tol2が所定の除霜運転中間温度Tdefm(除霜運転が終了したかどうかを判定するための除霜運転終了温度Tdefe以下の温度)より低い場合には、除霜優先条件を満たすものとする。ここで、時間tdef3は、ステップST3の開度保持状態を維持するための待ち時間である。そして、ステップST3の処理時において除霜優先条件を満たす場合には、ステップST5の処理に移行して、室内膨張弁41a、41bの開度を小さくする(ここでは、開度ΔMVrd3だけ小さくする)とともに、室外膨張弁24の開度を大きくして(ここでは、開度ΔMVod3だけ大きくする)、ステップST3の処理に戻る。ここで、除霜優先条件を満たすかどうかの判定や室内膨張弁41a、41bの開度及び室外膨張弁24の開度の決定は、上記のように、室外側制御部38によって行われる。すなわち、ここでは、除霜運転の開始から第1除霜時間tajを経過した後(すなわち、暖房を優先する除霜運転が終了した後)は、室内膨張弁41a、41bの開度を、室外熱交出口温度Tol2に基づいて適切に決定するようにしている。このようなステップST3、除霜優先条件の判定、及び、ステップST5の処理を繰り返すことによって、図9に示すように、除霜運転の開始から第1除霜時間tajを経過した後は、室内膨張弁41a、41bの開度を小さくするとともに、室外膨張弁24の開度を大きくして、室内熱交換器42a、42bの暖房能力を小さくし、かつ、室外熱交換器23の除霜能力を大きくすることで、暖房を優先する運転から除霜を優先する運転に移行することができる。
【0055】
次に、ステップST2からステップST3に移行した除霜運転(暖房を優先する運転や除霜を優先する運転も含む)が、除霜運転の開始から第2除霜期間tahが経過した場合には、ステップST1の処理に戻り、室内膨張弁41a、41bの開度が除霜運転時の初期開度MVrd1に戻されるとともに、室外膨張弁24の開度が除霜運転時の初期開度MVod1に戻される。このため、ステップST4、ST5の処理による室内膨張弁41a、41bの開度及び室外膨張弁24の開度の変更に比べて、室内膨張弁41a、41bの開度が急激に小さくなり、かつ、室外膨張弁24の開度が急激に大きくなるため、所定の除霜運転終了温度Tdefe以上になること、又は、所定の除霜運転終了時間tdefeが経過することによって除霜運転が終了するまで、除霜を優先する運転がさらに促進されることになり、室外熱交換器23の除霜を確実に終了させることができる。
【0056】
(4)変形例1
上記の実施形態において、除霜に要する時間は、冷媒回路10を構成する機器や蓄熱材からの放熱ロスが影響するため、室外温度Taが低くなるほど長くなる傾向にある。このため、暖房を優先した運転を行う時間である第1除霜時間tajについても、室外温度Taに基づいて決定することが好ましい。
そこで、ここでは、第1除霜時間tajを室外温度Taに基づいて決定するようにしている。
具体的には、まず、第2除霜時間tahは、次式1に示すような室外温度Taの関数として決定される。
tah=Ta+tah0 ・・・(式1)
ここで、tahは、第2除霜時間tahの基準値である。式1によれば、第2除霜時間tahは、室外温度Taが低くなるほど短くなることになる。これにより、除霜運転は、上記のステップST3、ST5による除霜を優先する運転の時間が短くなり、上記のステップST1における室内膨張弁41a、41bの開度(=MVrd1)及び室外膨張弁24の開度(=MVod1)に設定される運転(第2除霜時間tah経過から除霜運転終了まで)の時間が長くなる。
【0057】
そして、第1除霜時間tajは、式1によって決定された第2除霜時間tah及び次式2を用いて決定される。
taj=tah−tah1 ・・・(式2)
ここで、tah1は、上記のステップST3、ST5による除霜を優先する運転を行う時間に相当する。式1、2によれば、第1除霜時間tajは、室外温度Taが低くなるほど短くなることになる。これにより、除霜運転は、上記のステップST3、ST4による暖房を優先する運転の時間が短くなる。
これにより、ここでは、暖房を優先する運転を行う第1除霜時間tajを室外温度Taに基づいて決定することによって、除霜を優先する運転が長く行われるようにして、室外熱交換器23の除霜を確実に終了させることができる。
【0058】
尚、ここでは、第1除霜時間tajだけでなく第2除霜時間tahについても、室外温度Taに基づいて決定されているが、第1除霜時間tajだけを室外温度Taに基づいて決定するようにしてもよい。
【0059】
(5)変形例2
上記の実施形態及び変形例1においては、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において暖房運転が行われる。そして、この場合において、室内膨張弁41a、41bの開度が過大になると、室内熱交換器42a、42bの出口における冷媒が気液二相状態になりやすくなる。そうすると、室内熱交換器42a、42bの出口側(液側)と冷媒の蒸発器として機能する蓄熱熱交換器28の入口側(液側)とを接続する冷媒管(ここでは、液冷媒連絡管6等)にガス状態の冷媒が充満しやすくなる。ここで、冷媒回路10のように、室内熱交換器42a、42bの出口側(液側)と冷媒の蒸発器として機能する蓄熱熱交換器28の入口側(液側)とを接続する部分にレシーバが設けられていない場合には、液冷媒が蓄熱熱交換器28を介して圧縮機21に戻る、いわゆる液バックが発生するおそれがある。そして、液バックが発生すると、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度SHdが小さくなる傾向が見られる。
【0060】
そこで、ここでは、室外制御部38が、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度SHdに基づいて室内膨張弁41a、41bの開度が過大になることによって液バックが発生しているものと判定するようにしている。ここで、圧縮機21から吐出される冷媒の過熱度SHdは、吐出圧力センサ32によって検出される吐出圧力Pd、及び、吐出温度センサ34によって検出される吐出温度Tdから算出される。より具体的には、まず、吐出圧力Pdを冷媒の飽和温度に換算して凝縮温度Tcを得る。そして、吐出温度Tdから凝縮温度Tcを差し引くことによって過熱度SHdを得る。
具体的には、ここでは、図10に示すように、上記の除霜運転時の制御において、過熱度SHdが閾過熱度よりも小さい場合には、室外制御部24が、液バックが発生しているものと判定している。そして、必要に応じて、室内膨張弁41a、41bの開度を小さくするようにしている。
【0061】
まず、ステップST1からステップST2に移行するための条件である暖房/除霜優先開始条件において、過熱度SHdが所定の第1閾過熱度SHd1以上であることをステップST1からステップST2に移行するための条件としてさらに加えるようにしている。これにより、ステップST1の処理時、すなわち、室内膨張弁41a、41bの開度を初期開度MVrd1に設定し、かつ、室外膨張弁24の開度を初期開度MVod1に設定した状態において、室内膨張弁41a、41bの開度が過大になるおそれのある暖房を優先する運転(ステップST3、ST4の処理)に移行することを防ぐことができる。
また、ステップST1の処理時において、除霜運転の開始から所定の時間tdef4(除霜運転の開始から次の処理に移行するまでの待ち時間)が経過しており、かつ、過熱度SHdが所定の第3閾過熱度SHd3よりも小さい場合には、圧縮機21に液バックが発生しているものと判定して、ステップST6の処理に移行する。ここで、第3閾過熱度SHd3は、第1閾過熱度SHd1よりも低い値に設定される。そして、ステップST6において、室内膨張弁41a、41bの開度が液バック解消開度MVrd4(初期開度MVrd1よりも小さい開度)に設定され、室外膨張弁24の開度が液バック解消開度MVod4(ここでは、初期開度MVod1と同じ開度)に設定される。これにより、圧縮機21における液バックを解消する。そして、圧縮機21における液バックが解消されて、過熱度SHdが所定の第3閾過熱度SHd3以上になった場合には、再び、ステップST1の処理、すなわち、室内膨張弁41a、41bの開度を初期開度MVrd1に設定し、かつ、室外膨張弁24の開度を初期開度MVod1に設定した状態に戻す。
【0062】
さらに、ステップST2〜ST5の処理時において、過熱度SHdが所定の第2閾過熱度SHd2より小さくなった場合には、圧縮機21に液バックが発生しているものと判定して、除霜運転の開始から第2除霜時間tahが経過していなくても、ステップST2〜ST5の処理を中断して、ステップST1の処理、すなわち、室内膨張弁41a、41bの開度を初期開度MVrd1に設定し、かつ、室外膨張弁24の開度を初期開度MVod1に設定した状態に戻す。これにより、圧縮機21における液バックを解消する。
これにより、ここでは、蓄熱利用運転を伴う除霜運転において、室内膨張弁41a、41bの開度が過大になっているかどうかを適切に判定しながら暖房運転を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、冷媒と蓄熱材との間で熱交換を行う蓄熱熱交換器とを有する冷媒回路を備えており、蓄熱熱交換器を冷媒の放熱器として機能させることで蓄熱材への蓄熱を行う蓄熱運転を行い、除霜運転時に蓄熱熱交換器を冷媒の蒸発器として機能させることで蓄熱材からの放熱を行う蓄熱利用運転及び暖房運転を同時に行うことが可能な空気調和装置に対して、広く適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 空気調和装置
2 室外ユニット
4a、4b 室内ユニット
10 冷媒回路
21 圧縮機
23 室外熱交換器
24 室外膨張弁
28 蓄熱熱交換器
38 室外側制御部
41a、41b 室内膨張弁
42a、42b 室内熱交換器
48a、48b 室内側制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2005−337657号公報
図1
図2
図3
図4
図5
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図10