(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955418
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】機械式のクーラントポンプ
(51)【国際特許分類】
F01P 5/10 20060101AFI20160707BHJP
F04D 29/46 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
F01P5/10 B
F04D29/46 A
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-556930(P2014-556930)
(86)(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公表番号】特表2015-507137(P2015-507137A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2012060275
(87)【国際公開番号】WO2013120542
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2012/052525
(32)【優先日】2012年2月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311013845
【氏名又は名称】ピールブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アルノー フルニエ
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ジョルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジル スィモン
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/146609(WO,A1)
【文献】
特開昭48−104103(JP,A)
【文献】
特開平11−002126(JP,A)
【文献】
特開2005−054997(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/095907(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/101019(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/154852(WO,A1)
【文献】
実開昭60−026231(JP,U)
【文献】
実開昭62−078399(JP,U)
【文献】
特開平04−237898(JP,A)
【文献】
特開平10−077837(JP,A)
【文献】
特開2000−034922(JP,A)
【文献】
特開2011−007055(JP,A)
【文献】
米国特許第4103868(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0118066(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0251303(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/00−11/20
F04D 1/00−13/16
F04D 15/00−15/02
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用の機械式のクーラントポンプ(10)であって、
軸方向で流入する液体の冷却剤を半径方向で出口ボリュート(16)内へと圧送するポンプ羽根車(14)と、
出口通路(18)を含む前記出口ボリュート(16)を画成するボリュートハウジング(13)を含むポンプハウジング(12)と、
前記出口通路(18)の経路に設けられた出口弁装置と、を備えており、該出口弁装置は、前記出口通路(18)の弁開口(19)を開いたままにするか、又は閉じるために開放位置と閉鎖位置との間で旋回可能な弁フラップ(30)を有している、内燃機関用の機械式のクーラントポンプにおいて、
前記弁開口(19)は弁座(66)によって取り囲まれて画成されていて、該弁座(66)は弁座平面(60)を規定し、かつ、該弁座平面(60)の真ん中に該弁座平面(60)に対して垂直に対称面(62)を規定しており、
前記弁フラップ(30)には、前記弁フラップ(30)の一方の側に、前記弁座(66)に対応するフラップ座部が設けられており、
前記弁フラップ(30)は、前記対称面(62)に対して平行な、前記対称面(62)から横方向の偏心距離(E)を置いて位置している旋回軸線(31)を中心として回転可能であって、前記横方向の偏心距離(E)は、前記弁座平面(60)と前記旋回軸線との間の距離(D)の1/20〜1/1であることを特徴とする、内燃機関用の機械式のクーラントポンプ。
【請求項2】
前記旋回軸線(31)は、前記弁座(66)の投影平面内に位置していて、前記偏心距離(E)は、前記弁座投影平面の幅(W)の半分よりも小さい、請求項1記載の機械式のクーラントポンプ。
【請求項3】
前記弁フラップの少なくとも一方の軸方向端部は、前記旋回軸線(31)に対して垂直に配置されたベース板(34)に位置固定されており、該ベース板(34)の近位面は、前記出口通路(18)の平面に位置している、請求項1又は2記載の機械式のクーラントポンプ。
【請求項4】
前記ボリュートハウジング(13)には、前記弁フラップ(30)を開放位置で収容する凹部(24)が設けられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の機械式のクーラントポンプ。
【請求項5】
前記弁フラップ(30)は金属から成っていて、前記フラップ座部にはゴム被覆(40)が施されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の機械式のクーラントポンプ。
【請求項6】
前記出口ボリュートハウジング(13)は、前記出口弁装置によって影響されない第2の出口通路(17)を画成している、請求項1から5までのいずれか1項記載の機械式のクーラントポンプ。
【請求項7】
前記弁フラップ(30)は、ニューマチック式アクチュエータ又は電気式アクチュエータ又はサーモスタット式アクチュエータ(50)によって操作される、請求項1から6までのいずれか1項記載の機械式のクーラントポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関用の機械式のクーラント(冷却液)ポンプに関する。機械式のクーラントポンプは、例えばポンプの駆動車を駆動する駆動ベルトを使用することによって内燃機関により駆動され、従って、クーラントポンプの回転速度は内燃機関の回転速度に比例する。内燃機関が低温である場合には、最小量のクーラント流量しか必要とされない。従って、機械式のクーラントポンプには、クーラントポンプから出るクーラント流量を制御する出口弁装置が設けられている。内燃機関が低温である場合には、出口弁が閉じられているので、潤滑剤の循環は減じられ、又は最小限にされ、又は完全にストップされ、その結果、内燃機関の暖機段階が短縮される。
【0002】
WO2011/101019A1号特許明細書には、羽根車型のクーラントポンプが開示されていて、このクーラントポンプは出口通路の基部に出口弁装置を備えている。出口弁装置には弁フラップが設けられており、この弁フラップの旋回軸は、フラップボディの一方の端部に配置されていて、弁座の表面に設けられている。弁フラップは、高い流体圧力が弁フラップに対して閉鎖方向でも開放方向でも起こり得るようなポンプロータの高回転速度であっても旋回可能でなければならない。しかしながら全ての回転速度で完全な機能性を保証するためには、高い作動力が必要である。
【0003】
本発明の課題は、比較的低い作動力のための出口弁装置を備え、閉鎖した出口弁の良好な密閉性を長期間にわたって有するような内燃機関用の機械式のクーラントポンプを提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1記載の特徴を備えた機械式のクーラントポンプにより解決される。
【0005】
請求項1記載の機械式のクーラントポンプには、軸方向で流入する液体の冷却剤を半径方向外側に向かって出口ボリュート内へと圧送するポンプ羽根車が設けられている。出口ボリュートは、ポンプの出口通路に通じている。出口通路の経路には出口弁装置が設けられており、該出口弁装置は、前記出口通路の弁開口を開いたままにするか、又は閉じるために開放位置と閉鎖位置との間で移動可能な弁フラップを有している。
【0006】
出口通路の弁開口は、弁座によって取り囲まれて画成されている。弁座は、弁の閉鎖位置における、弁開口と、弁フラップの対応するフラップ座部との閉じた接触線である。弁座は主要な弁座平面を規定する。弁座のいくつかの部分が幾分、湾曲しているために弁座が完全に1つの平面内に位置していない場合には、弁座平面は、形状的に概ね中間的な平面によって規定される。対称面は、弁開口の真ん中かつ弁座平面の真ん中に設けられている。対称面は、弁座平面に対して正確に垂直で、弁フラップの旋回軸線に対して平行である。
【0007】
弁フラップは、対称面に対して平行な旋回軸線を中心として旋回可能又は回転可能であるが、旋回軸線は対称面には位置していない。旋回軸線は、対称面から横方向の偏心距離を置いて配置されており、該横方向の偏心距離は、前記弁座平面と前記旋回軸線との間の距離の1/20〜1/1である。弁フラップは平らなものとして形成することができるが、好適には円筒状のものとして形成される。弁フラップが回転して閉鎖位置へと入ると、フラップ座部は、閉鎖運動の極めて最後の瞬間でのみ弁座に接触する。弁フラップの閉鎖運動中、弁座とフラップ座部とは全く接触しないので、フラップ座部と弁座には大きな摩耗は生じ得ない。これにより閉鎖された弁の良好な密封性が長期にわたって保証される。
【0008】
本発明の好適な態様によれば、旋回軸線は、弁座の投影平面内に位置していて、前記偏心距離は、前記弁座投影平面の幅の半分よりも小さい。横方向の偏心距離は、旋回軸線に対して垂直方向でのフラップの延在である弁フラップの幅の1/2を越えるものではない。弁座の投影平面内に旋回軸線が配置されていることにより、液体の冷却剤の流出圧力が比較的高いことにより生じるポンプ車の高回転速度の場合であっても、弁フラップを開閉するための作動力は比較的低い。
【0009】
好適には、弁フラップの少なくとも1つの軸方向端部は、旋回軸線に対して垂直に配置されたベース板に位置固定されている。好適な態様によれば、2つのベース板が弁フラップの両軸方向端部にそれぞれ設けられている。ベース板はそれぞれ、ポンプハウジングに設けられた対応する凹部に設けられており、ベース板の近位面は出口通路の内壁面の平面に位置している。換言すれば、ベース板は、特に弁フラップの開放位置で、ボリュートハウジングの面に継続的に延在している。ベース板は部分的に、旋回軸線に関して円形であるので、出口通路の内面には段部はない。
【0010】
本発明の好適な態様では、ボリュートハウジングには、弁フラップを開放位置で収容する凹部が設けられている。弁の開放位置では、弁フラップは実質的にこの凹部に収容されているので、弁フラップは出口ボリュート又は出口通路内には実質的に突出しない。従って、弁フラップにより生じる流れ抵抗は最小限に減じられる。
【0011】
好適な態様によれば、弁フラップには弁フラップボディが設けられており、フラップ座部はゴム被覆されている。フラップ座部をゴム被覆することにより、閉じられた弁フラップの密なシール性が向上する。
【0012】
好適な態様によれば、出口ボリュートハウジングは、前記出口弁装置によって影響されない第2の出口通路を画成していて、この第2の出口通路は常に開放状態に維持されているので、最小限のクーラント流量は、ポンプ車が内燃機関によって駆動される限りは常に保証されている。特に、例えばトラックエンジンのような、ハイパフォーマンスな内燃機関は、熱ポケット(heat pockets)を回避するために最小限のクーラント流量によって常に冷却されなければならない。いかなる弁も有さない第2の出口通路は、最小限のクーラント流量を考慮した完全なフェールセーフ機能である。
【0013】
好適にはフラップボディは、ニューマチック式の、又は電気式の、又はサーモスタット式のアクチュエータによって操作される。作動力源に関わらず、弁の確実な機能を保証するのに必要な作動力は比較的低い。
【0014】
本発明の好適な態様によれば、弁フラップボディの近位面は、フラップボディの開放位置で、ボリュートハウジング壁面又は通路壁面に継続的に延在している。これは、フラップボディの開放状態では、フラップボディの近位面は、ボリュート面又は出口通路に滑らかに、かつ段部なく続いていて、流れ抵抗は最小となることを意味する。
【0015】
以下に、本発明の実施態様を添付の図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ハウジングカバーを外した状態で、弁フラップの開放位置で機械式のクーラントポンプを示した斜視図である。
【
図2】弁フラップの閉鎖位置で
図1のクーラントポンプを示した図である。
【
図3】弁フラップの開放位置で
図1のクーラントポンプの弁装置を示した断面図である。
【
図4】弁フラップの閉鎖位置で
図1のクーラントポンプの弁装置を示した断面図である。
【
図5】弁フラップの閉鎖位置で
図1の機械式のクーラントポンプを示した別の斜視図である。
【
図6】
図1の機械式のクーラントポンプのアクチュエータと共に弁フラップを示した図である。
【0017】
図1〜
図6には、内燃機関用の冷却液を循環させるための機械式のクーラントポンプ10が示されている。内燃機関のエンジンブロックにクーラントポンプ10を直接取り付けることができる。クーラントポンプ10には、内燃機関によって直接駆動される駆動ベルトによって駆動することができる駆動車(図示せず)が設けられている。クーラントポンプ10の回転速度は内燃機関の回転速度に比例する。
【0018】
クーラントポンプ10にはポンプ羽根車14を収容するポンプハウジング12が設けられている。ポンプ羽根車14は軸方向で流入する液体の冷却剤を半径方向で出口ボリュート16内へと圧送する。出口ボリュート16は、ポンプハウジング12の一部であるボリュートハウジング13によって画成されている。軸方向のクーラントポンプ入口は、
図1及び
図2に示されたクーラントポンプ10の底面に設けられている。
【0019】
出口ボリュート16は、第1の出口通路18と、分離壁20によって第1の出口通路18から分離された第2の出口通路17とを有している。クーラントポンプ10には、第1の出口通路18の始点に配置された弁開口19に出口弁装置が設けられている。出口弁装置には弁フラップ30が設けられており、弁フラップ30は、
図2及び
図1又は
図4及び
図3に示された閉鎖位置と開放位置との間で旋回可能である。弁フラップ30は、第1の出口通路18の弁開口19を開閉するが、第2の出口通路17へのクーラント流量及び第2の出口通路17を通るクーラント流量には影響を与えない。
【0020】
組み込まれた金属弁フラップ30には円形のフラップボディ32が設けられていて、その主たる弁座平面は軸方向に延在している。フラップボディ32は近位面33と遠位面35とを有している。フラップボディ32は、中空円筒壁の円周壁の一区分と言える。
【0021】
フラップボディ32は軸方向で、フラップボディ32の両軸方向端部にそれぞれ位置する第1の円形ベース板34と、同形の第2の円形ベース板38との間に配置されている。弁フラップ30は両軸方向端部でピボットベアリングによって支持されているので、弁フラップ30は、出口ボリュート16内に配置された軸方向の弁旋回軸線31を中心として旋回可能である。
【0022】
図1及び
図3に示したような弁フラップ30の開放位置では、フラップボディ32は、ボリュートハウジング13のハウジング凹部24内に収容されているので、フラップボディ32の近位面33は、ボリュートハウジング13の内壁面に続いていて、又は連続的に延在していて、面段部は実質的に存在しない。従って、開放位置でフラップボディ32によって生じる流れ抵抗は、クーラント流量が高い場合であっても低い。
図3に示したように、弁フラップ30の開放位置では、フラップボディ32の近位面33が出口ボリュート16に向けられていて、フラップボディ32の遠位面35は、フラップボディ32を収容するハウジング凹部24に向けられている。フラップボディ32の遠位面35には、フラップ座
部全体にわたってゴム被覆40が設けられている。ゴム被覆40は、
図4及び
図5に示されたように、弁の閉鎖位置でフラップボディ32のシール性を極めて改善する。
【0023】
第1のベース板34と第2のベース板38とは両者とも完全に、ボリュートハウジング13の対応するハウジング凹部42,44内に収容されている。従って、両ベース板34,38は、弁の開放位置においてクーラント流量が高い場合であっても、実質的な流れ抵抗を生ぜしめることはない。弁には一方のベース板38に固定された弁シャフト52が設けられている。弁シャフト52は旋回軸線31を規定する。弁シャフト52には、
図5及び
図6に示したようなニューマチック式アクチュエータ50によって操作されるレバーアーム54が設けられている。
【0024】
弁装置の形状的な構造は
図3及び
図4により最も良く判る。弁開口19は弁座
66によって取り囲まれており、この弁座
66は弁フラップ30のフラップ座
部に対応する。弁座
66とフラップ座
部とは、
図4に示したように閉鎖位置で互いに完全に接触している。弁座
66は弁座平面60を規定し、弁座平面60は、弁座
66全体の主平面60である。弁座
66は、互いに平行な2つの直線的な横の座部分と、この横の部分に続いている2つの円形の座部分とによって画成されている。円形の座部分の径は、フラップボディ32の径にほぼ等しい。横の座部分は旋回軸線31に対して平行である。弁座
66は幅Wを有しており、この幅Wは、2つの直線的な横の座部分の間の横方向距離である。対称面62は、弁座平面60の真ん中に規定されている。対称面62は、弁座平面60に対して垂直である。
【0025】
弁フラップ30の旋回軸線31は、対称面62に対して平行であり、弁座平面60に対して平行である。旋回軸線31は弁座平面60に対して距離Dを有している。弁座平面60までの旋回軸線31の距離Dは、弁座幅Wの1/2〜1/3である。旋回軸線31は対称面62に位置しておらず、対称面62に間隔を置いていて偏心距離Eを有している。偏心距離Eは、弁座平面60からの旋回軸線31の距離Dの1/20〜1/1である。本実施態様では、偏心距離Eは、旋回軸線31の距離Dの約1/3である。この形状的な配置により、弁座
66とフラップ座
部とは、弁の閉鎖位置でのみ互いに接触することが保証される。