(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可塑剤が、溶解度パラメータ9.0以下のリン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、アジピン酸エステルから選択される1種又は複数からなることを特徴とする請求項1記載の硬化材料。
前記(b)含金属化合物が、スズ、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルから選択される少なくとも1種の金属を含む化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化材料。
前記可塑剤を含む樹脂が、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂から選択される1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化材料。
導体が絶縁体からなる被覆材により被覆された絶縁電線が複数本束ねられた電線束の前記被覆材の一部を除去して内部の導体を露出させた導体露出部に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化材料を供給し、該硬化材料の表面を可塑剤を含み光透過性を有する樹脂から形成された保護部材により被覆した状態で光照射を行い、前記硬化材料を硬化させて防水部を形成することを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。
前記保護部材が、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂から選択される1種から形成されたシート又はチューブであることを特徴とする請求項9記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の硬化材料の実施例として、紫外線等の光で硬化可能な光硬化材料を例として説明する。光硬化材料は、例えば(A)光硬化性成分、(B)連鎖移動剤、(C)光重合開始剤等の組成物から構成することができる。光硬化材料の溶解度パラメータ(Solubility Parameter;SP値)は、9.4以上である。本発明の溶解度パラメータは、スモール(Small)の方法を用いるものである。すなわちスモールの計算方法を用いて分子構造から溶解度パラメータを推算した数値である。
【0026】
具体的には、以下に示すスモールの計算方法により溶解度パラメータを推算した。
δ=ΣFi/V=ρΣFi/M
(δは溶解度パラメータ、Fiはモル吸引力、Vはモル容積、ρは密度、Mは分子量)
秋山三郎らによる『ポリマーブレンド』(1981年、シーエムシー)P125〜P144参照
【0027】
硬化材料の溶解度パラメータが、9.4未満では硬化材料が可塑剤となじみやすくなり、硬化材料と接する樹脂の可塑剤が硬化材料中に移行し易くなる。可塑剤の移行を更に良好に防止するために、好ましい硬化材料の溶解度パラメータは、10以上である。硬化材料の溶解度パラメータは、硬化材料に配合される硬化性成分、連鎖移動剤等の各成分の分子構造を適宜選択することで、上記範囲となるように調節可能である。
【0028】
(A)光硬化性成分としては、紫外線等の光が照射されることで硬化物が得られる光硬化材料を使用することができる。尚、光硬化材料は、紫外線以外に、可視光、赤外線等により硬化物が得られるものも含まれる。
【0029】
光硬化材料は、例えば紫外線硬化材料を用いることができる。前記紫外線硬化材料としては、既存の紫外線硬化材料を用いることができる。具体的には、(メタ)アクリレート等の硬化性モノマー、オリゴマー等と(C)光重合開始剤と混合物して、紫外線が照射されることで硬化物が得られるものであれば使用することができる。尚、本発明において「(メタ)アクリレート」との記載はアクリレート及び/又はメタクリレートの意味である。
【0030】
紫外線硬化材料の硬化原理としては、紫外線(紫外光)を光重合開始剤が吸収して、ラジカル種等の活性種を発生させ、その活性種が(メタ)アクリレート等の炭素−炭素の2重結合をラジカル重合させ、硬化させるものである。しかし紫外線硬化材料は、通常の紫外線硬化では、紫外線が遮蔽される部分が未硬化になる。これに対し、上記(B)連鎖移動剤を添加することにより、紫外線の照射により発生したラジカルを、紫外線が遮蔽されてラジカル発生のない箇所までラジカルを伝達し、重合反応を開始、進行させて、紫外線が遮蔽される暗部を硬化させることができる。すなわち(B)連鎖移動剤を添加することにより、照射光の届かない部分の硬化が可能な暗部硬化性を持たせることができる。
【0031】
光硬化材料は、常温で流動性を有し可塑剤を含む樹脂に塗布することが可能であり、常温で硬化させることが可能であることが好ましい。光硬化材料が常温で流動性を有し硬化可能であると、ホットメルト接着剤と比較して、高温に加熱する必要がなく、塗布、硬化を容易に行うことができる。
【0032】
前記(メタ)アクリレート化合物としては、分子中に1つ以上の(メタ)アクリレート基を有する化合物であれば特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。前記(メタ)アクリレート化合物の具体例として、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンポリオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンポリオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのEO付加物又はPO付加物のポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加物トリ(メタ)アクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラフルフリルアルコールオリゴ(メタ)アクリレート、エチルカルビトールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、(ポリ)ブタジエン(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
連鎖移動剤は、(a)ポリエーテル構造と、2つ以上のウレタン結合又は2つ以上の尿素結合を分子中に含む含窒素化合物と、(b)含金属化合物とから構成される。上記(a)含窒素化合物のポリエーテル構造は、3個以上の酸素原子を有することが好ましい。
【0034】
上記(a)含窒素化合物は、下記(式1)で示されるウレタン結合部、又は下記(式2)で示される尿素結合部を少なくとも1種を1分子中に2個以上含有し、ポリエーテル構造を有していれば、特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0035】
(式1)
−NH−COO−
(式2)
−NH−CO−NH−
【0036】
上記(a)成分の含窒素化合物の具体例としては、ポリエーテルポリオールを用いたポリウレタン、ポリ尿素化合物等が挙げられる。上記ポリウレタン、ポリ尿素は、含イソシアネート化合物と、ポリエーテルポリオールの水酸基(−OH)含有化合物、アミン(−NH
2)含有化合物等を反応させることで得られるものである。
【0037】
含イソシアネート化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート。水素添加−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)、水素添加−キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水素添加−2,4−トリレンジイソシアネート(水添TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等の脂環族イソシアネート。キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族イソシアネート。1,4−ジフェニルジイソシアネート、2,4又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,4又は4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、O−トリジンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(粗製MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等の芳香族イソシアネート等のポリイソシアネート。含イソシアネート化合物としては、更にこれらポリイソシアネートを水と反応させて得られるビウレット型ポリイソシアネート、トリメチロールプロパン等の多価アルコールと反応させて得られるアダクト型ポリイソシアネート、多価イソシアネートを一部ポリエステルやポリエーテル誘導体と重合させた液状プレポリマー、イソシアヌレート化して得られる多量体等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
各種ポリウレタンを得るために含イソシアネート化合物と反応させるポリエーテルポリオールとしては、両末端に水酸基を有するポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのランダム、ブロック共重合体、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のジオール、3つの水酸基を有するポリオキシアルキレンポリオール等のトリオール等が挙げられる。
【0039】
ポリエーテルポリオールは、一分子中に3個以上の酸素原子を持つものが好ましい。
【0040】
ポリエーテルポリウレタンは、最終的に硬化材料中に混合された場合に溶解もしくは懸濁状態になればよいので、必ずしも液状である必要は無いが、混合のし易さから、液状であることが好ましく、この際に用いられる水酸基含有化合物としては、分子量10万以下の液状化合物である事が好ましい。
【0041】
アミン含有化合物としては、末端に1級又は2級のアミノ基を持つ炭素鎖1〜30のアミン類、末端ジアミンの(ポリ)エチレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)プロピレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)ヘキサメチレングリコール、末端ジアミンの(ポリ)カプロラクトン、末端ジアミンの(ポリ)エステル(ポリ)オール、末端ジアミンの(ポリ)アミド、末端ジアミンの(ポリ)エステル等が挙げられる。
【0042】
また、ポリウレタン、ポリ尿素化合物は、必要に応じて重合後に末端基を(チオ)エーテル、(チオ)エステル、アミド、(チオ)ウレタン、(チオ)尿素、N−アルキル結合等によって、アルキル基や(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキサゾリル基、カルボニル基、チオール基、チオエーテル基、チオエステル基、リン酸(エステル)基、ホスホン酸(エステル)基、カルボン酸(エステル)基等で封止されていても良い。
【0043】
前記、ウレタン結合又は尿素結合は、複数の種類が結合されていても、或いは末端基が組み合わせられること等により分子中に含有されていても良い。
【0044】
(B)連鎖移動剤を構成する(b)成分の含金属化合物の金属としては、スズ、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルの中から選択される1種類、あるいは複数種類の金属が好ましく用いられる。(b)成分の含金属化合物は、1種類又は複数種類の上記金属が、金属塩又は錯体の形で構成分子中に含有されていれば、特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0045】
前記金属塩としては、前記金属種のカルボン酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、(過)(亜)塩素酸塩等の金属塩の形態が挙げられる。
【0046】
前記金属錯体としては、前記金属種と配位結合形成し得る有機配位子と1:1〜1:4(金属:配位子)で配位し安定化されたものであれば特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0047】
前記(b)成分の含金属化合物の具体例として、ビス(2,4-ペンタンジオナト)スズ、ジブチルスズビス(トリフルオロメタンスルホナート)、ジブチルスズジアセタート、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズマレアート、フタロシアニンスズ(IV)ジクロリド、テトラブチルアンモニウムジフルオロトリフェニルスズ、フタロシアニンスズ(II)、トリブチル(2-ピリジル)スズ、トリブチル(2-チエニル)スズ、酢酸トリブチルスズ、トリブチル(トリメチルシリルエチニル)スズ、トリメチル(2-ピリジル)スズ、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)銅(II)、ビス(1,3-プロパンジアミン)銅(II)ジクロリド、ビス(8-キノリノラト)銅(II)、ビス(トリフルオロ-2,4-ペンタンジオナト)銅(II)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸銅(II)、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、エチレンジアミン四酢酸銅(II)二ナトリウム、フタロシアニン銅(II)、ジクロロ(1,10-フェナントロリン)銅(II)、フタロシアニン銅、テトラ-4-tert-ブチルフタロシアニン銅、テトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスファート、ナフテン酸銅、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)亜鉛(II)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(1,3-ジチオール-2-チオン-4,5-ジチオラト)亜鉛コンプレックス、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(II)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、フタロシアニン亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(III)ヘキサフルオロホスファート、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]コバルト(II)ジクロリド、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)コバルト(II)、(1R,2R)-N,N'-ビス[3-オキソ-2-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ブチリデン]-1,2-ジフェニルエチレンジアミナトコバルト(II)、(1S,2S)-N,N'-ビス[3-オキソ-2-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ブチリデン]-1,2-ジフェニルエチレンジアミナトコバルト(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(II)、ビス(トリフルオロ-2,4-ペンタンジオナト)コバルト(II)、フタロシアニンコバルト(II)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムコバルト、ヘキサアンミンコバルト(III)クロリド、N,N'-ジサリチラルエチレンジアミンコバルト(II)、[5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)ポルフィリナト]コバルト(II)、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)、ナフテン酸コバルト、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)ジクロリド、ビス(ジチオベンジル)ニッケル(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ニッケル(II)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)ニッケル(II)、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(マレオニトリルジチオラト)ニッケル(II)コンプレックス、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ブロモ[(2,6-ピリジンジイル)ビス(3-メチル-1-イミダゾリル-2-イリデン)]ニッケルブロミド、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムニッケル(II)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(II)、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記(b)成分の含金属化合物の形態としては、光硬化材料と最終的に均一状態になればよいので、必ずしも有機物への溶解性が高い必要は無いが、混合のし易さや保存時の沈殿を防ぐことから、有機酸塩又は金属錯体状であることが好ましい。
【0049】
前記(b)成分の含金属化合物は、前記(a)成分のポリエーテル構造とウレタン結合又は尿素結合を含む化合物と複合化することで連鎖移動剤を構成することができる。
【0050】
前記(a)成分と前記(b)成分を複合化する方法は、両成分を常温、又は加温条件で混合すれば良く、特に限定されないが、上記各成分を、減圧下又は窒素等の不活性ガス雰囲気下で、適当な温度にて、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に攪拌又は混練し、溶解させるか、均一に分散させる方法を用いることが好ましい。
【0051】
(C)光重合開始剤としては、紫外線を吸収してラジカル重合を開始させる化合物であれば特に制限されることなく、従来から公知のものを用いることができる。
【0052】
上記光重合開始剤は、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、エチルアントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
また光重合開始剤は、市販品として、例えば、IRGACURE184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61;Darocure1116、1173,LucirinTPO(以上、BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等を用いることができる。
【0054】
連鎖移動剤を光硬化材料に添加する場合の混合方法としては特に限定されず、減圧下又は窒素等の不活性ガス雰囲気下で、適当な温度にて、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に攪拌又は混練し、溶解させるか均一に分散させる方法が好ましい。
【0055】
光硬化材料に対する連鎖移動剤の配合量は、特に限定されず、光硬化材料の種類や、必要とする暗部硬化性等に応じて、適宜、添加すればよい。
【0056】
光硬化材料には、必要に応じて各種の添加剤を含有することができる。前記添加剤としては、例えば、安定化剤、軟化剤、顔料、染料、耐電防止剤、難燃剤、増感剤、分散剤、溶剤、抗菌抗カビ剤等が挙げられる。各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0057】
組成物は、上記各成分を混合することで得られる。混合方法としては特に限定されず、減圧下又は窒素等の不活性ガス雰囲気下で、適当な温度にて、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に攪拌又は混練し、溶解させるか均一に分散させる方法が好ましい。
【0058】
本発明の硬化材料が接する状態で用いられる可塑剤を含む樹脂としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂と記載することもある)、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0059】
上記可塑剤としては、特に限定されず、公知の可塑剤を用いることができる。可塑剤としては例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸誘導体、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ブチルジグリコールアジペート等のアジピン酸誘導体、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート等のセバシン酸誘導体、ジオクチルアゼレート等のアゼライン酸誘導体、トリクレジルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリブトキシエチルフォスフェート等のリン酸誘導体、エポキシ脂肪酸エステル類、エポキシ油脂類、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ誘導体、セバシン酸ポリエステル類、アジピン酸ポリエステル類、フタル酸系ポリエステル類などのポリエステル誘導体、塩素化パラフィン、トリオクチルトリメリテート、トリブチルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート等のトリメリット酸誘導体等が挙げられる。
【0060】
本発明の硬化材料が接する樹脂の可塑剤としては、トリブトキシエチルフォスフェート(SP値8.6)、ジオクチルセバケート(SP値8.7)、トリオクチルトリメリテート(SP値8.7)、フタル酸系ポリエステル(SP値9.0)等が、溶解度パラメータが9.4よりも低く、離れている理由から好ましい。
【0061】
本発明の硬化材料は、自動車部材、電機・電子機器、航空機部材等の、接着材料、コーティング材料、封止材料、モールド成型材料等において、可塑剤と含む樹脂と接する用途に用いた場合に、樹脂からの可塑剤が硬化材料の硬化物等に移行するのを防止できるという効果を発揮できる。特に硬化材料はワイヤーハーネスに好適に用いることができる。
【0062】
ワイヤーハーネスは、被覆電線の端末に端子が接続された端子付き電線が1本、或いは複数本組み合わされて構成される。ワイヤーハーネスの被覆電線は、導体の周囲が被覆材により被覆されている。被覆電線の被覆材は、軟質塩化ビニル樹脂等の可塑剤入りの樹脂が用いられる。更にワイヤーハーネスには、被覆電線と接する部分に上記光硬化材料を用いて硬化された硬化物からなる部材が、配置されている。
【0063】
ワイヤーハーネスに用いられる光硬化材料を用いた部材としては、防水剤、防食剤、外装品の固定部材、経路規制部材、接着剤等が挙げられる。
【0064】
ワイヤーハーネスは、複数本の被覆電線が、テープ巻きにより結束されていても良いし、あるいは、丸チューブ、コルゲートチューブ、プロテクタ等の外装部品により外装されていても良い。
【0065】
上記被覆電線の電線導体は、複数の素線が撚り合わされてなる撚線又は単線が用いられる。この場合、撚線は、1種の金属素線から構成されていても良いし、2種以上の金属素線から構成されていても良い。また、撚線は、金属素線以外に、有機繊維からなる素線等を含んでいても良い。なお、1種の金属素線から構成されるとは、撚線を構成する全ての金属素線が同じ金属材料からなることをいい、2種以上の金属素線から構成されるとは、撚線中に互いに異なる金属材料からなる金属素線を含んでいることをいう。また撚線中には、被覆電線を補強するための補強線(テンションメンバ)等が含まれていても良い。
【0066】
上記導体を構成する金属素線の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、もしくはこれらの材料に各種めっきが施された材料などを例示することができる。また、補強線としての金属素線の材料としては、銅合金、チタン、タングステン、ステンレスなどを例示することができる。また、補強線としての有機繊維としては、ポリ−(p−フェニレンテレフタルアミド)等の芳香族ポリアミド繊維などを挙げることができる。
【0067】
上記被覆電線の被覆材の材料としては、軟質塩化ビニル樹脂以外に、例えば、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、その他の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の絶縁電線の被覆材として用いられる樹脂であれば、特に限定されず用いることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。被覆材は、可塑剤を含む樹脂又は可塑剤を含まない樹脂のいずれでもよい。被覆材の材料中には、適宜、各種添加剤が添加されていても良い。添加剤としては、難燃剤、充填剤、着色剤等を挙げることができる。被覆材が、軟質塩化ビニル樹脂等のように可塑剤を含む樹脂であっても、防水剤が可塑剤の移行防止効果を有するため、防水剤が被覆材と接触した場合でも可塑剤の移行による密着性の低下等を防止して、良好な防水性を得ることができる。
【0068】
光硬化材料を硬化させる際の紫外線照射の条件は、光硬化材料の組成等に応じて適宜、選択することができる。紫外線照射に用いられる照射装置としては、公知の装置を用いることができる。照射装置は、例えば、Hg、Hg/Xeやメタルハライド化合物等を封入したバルブ式のUVランプ、LED−UVランプ等の光源を用いることができる。また紫外線照射装置は、上記光源からの光を反射ミラーによって集光して照射する集光型UV照射装置を用いてもよい。
【0069】
本発明のワイヤーハーネスは、自動車等の車両に配索されるものとして好適である。
【0070】
図1は本発明のワイヤーハーネスの一例を示す外観斜視図であり、
図2は
図1におけるA−A線水平断面図である。硬化材料はワイヤーハーネスの中間スプライス部の防水剤として用いることができる。
図1及び
図2に示すようにワイヤーハーネス1は、芯線からなる導体2の周囲が絶縁体からなる被覆材3により被覆された4本の絶縁電線4が束ねられている電線束から構成されている。
【0071】
ワイヤーハーネス1の中間スプライス部20は、電線束の絶縁電線3が剥離除去されて、内部の導体2が露出した導体露出部5を有する。導体露出部5では、複数(4本)の絶縁電線4、4、4、4の導体2、2、2、2どうしが接合されて、絶縁電線どうしが電気的に接続されている。
【0072】
中間スプライス部20は、導体露出部5が、防水剤40により被覆されている。更に該防水剤40の表面が、光硬化材料を硬化させるための照射光に対し、光透過性を有する保護シート30により覆われて、防水部10として構成されている。防水剤40は、防水剤の組成物として上記した光硬化材料を用いて硬化させたものである。保護シート30は防水部10の防水剤40を硬化させるまでの間、所定の箇所に保持するための保護部材として用いられる。保護部材は保護シート30のようなシート材料に限定されず、例えば後述する保護チューブのようなチューブ状に形成されていてもよい。
【0073】
上記保護シート30は、前記防水部10の防水剤40の表面の変形に対して追随して変形可能な柔軟性を有する。保護シート30は、防水剤40の表面に密着した状態で、該防水剤40の周囲を覆っている。防水部10の防水剤40は、絶縁電線4の導体露出部5の内部に浸透し、浸透した内部の照射光が届かない部分まで硬化している。
【0074】
また防水部10の防水剤40は、
図2に示すように導体露出部5に隣接する絶縁電線4の被覆材3の表面と密着した状態で硬化している。更に防水部10は、防水剤40が絶縁電線4の導体露出部5に隣接する導体
2の前後の被覆部6を被覆している。このように防水剤40が被覆部6を被覆していることにより、被覆材3の中間スプライス部20側の端部と導体2の隙間から水分が侵入するのを防止して、防水効果を得ることができる。
【0075】
図3(a)〜(c)は本発明のワイヤーハーネスの製造方法を説明するためのスプライス部付近を示す工程図である。
図3(a)〜(c)に示すように、光硬化材料から構成される防水剤の組成物40aは、加熱した際にスプライス部20に浸透して、絶縁電線4の絶縁体3同士の間、導体2を構成する素線の間、導体2同士の間等の間隙に行渡り、間隙を充填することが可能な流動性を有していることが好ましい。
【0076】
保護シート30は、防水剤40の表面に密着した状態で、防水剤40の表面を被覆している。保護シート30は、防水剤40の光硬化材料を硬化させる際の紫外線等の照射光に対する透過性(光透過性)を有する。保護シート30の光透過性は、例えば紫外線透過率が50%以上であることが好ましく、さらに好ましい紫外線透過率は90%以上である。保護シート30の厚みは、100μm以下が好ましく、更に好ましくは5〜50μmである。
【0077】
保護シート30は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン及びポリフッ化ビニリデン等のオレフィン系樹脂のラップシート、或は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどの汎用樹脂のラップシートを用いることができる。保護シート30としては可塑剤を含む樹脂が用いられる。保護シート30は、特に自己密着(粘着)のよいポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂のシートが好適である。
【0078】
また保護シート30は、ヤング率(JIS−K7113に準じた測定方向における室温での値)が、厚みが50μm未満の場合50〜500MPaの範囲であり、厚みが50μm〜100μmの場合10〜100MPaの範囲であり、厚みが100μmを超える場合、10MPa未満であるのが好ましい。また保護シート30は、破断時の伸びが、好ましくは20%以上、更に好ましくは50%以上である。
【0079】
保護シート30は、剥離粘着力(JIS−Z0237やJIS−K6854に準じた測定方法における室温での値)で表わされる自己密着力が、0.5〜10N/mの範囲であることが好ましい。防水部10は、防水剤40の表面の変形に追随して保護シート30が変形して、防水剤40表面と保護シート30が密着した状態で、防水剤40が硬化されている。保護シート30は、自己密着力が高いと、保護シート30を中間スプライス部20及び防水剤40の周囲に巻付ける際に、被覆が容易であり、作業性に優れる。
【0080】
また、保護シート30の表面に、厚み10μm以下の弱い粘着剤からなる粘着剤層を形成しておいてもよい。粘着剤層の厚みは、好ましくは5μm以下である。
【0081】
以下、
図1のワイヤーハーネスの製造方法について説明する。
図3(a)に示すように、先ず、予め複数の絶縁電線を用いて中間スプライス部20を形成した電線束7を準備する。電線束7は絶縁電線4の被覆材3が除去されて内部の導体2が露出した導体露出部5を有している。
【0082】
そして
図3(a)に示すように、中間スプライス部20を被覆できる程度の大きさの保護シート30を準備して、上記電線束
7の中間スプライス部20を保護シートの上に載置する。次に中間スプライス部20の上に上記した防水剤の組成物40aを供給する。防水剤の組成物40aは、光の届かない箇所の硬化が可能であり、光硬化性樹脂と連鎖移動剤を含有してなるものである。防水剤の組成物40aは、吐出装置のノズル60から、所定量、吐出して供給する。防水剤の組成物40aの供給は、常温で行っても、加熱した状態でもいずれでもよい。
【0083】
また、防水剤の組成物40aの供給は、中間スプライス部20ではなく、保護シート30の表面に供給した後、電線束の中間スプライス部20を防水剤の組成物40a上に載置するようにしてもよい。
【0084】
次に、
図3(b)に示すように、保護シート30の折り返し部側が中間スプライス部20及び防水剤の組成物40aに巻付くと共に、中間スプライス部20のない部分では保護シート30同士が重なる重ね合わせ部32となるように、保護シート30を折り曲げる。保護シート30の重ね合せ部32は、保護シート30の自己密着性によって、重ね合わせた状態が保持される。
【0085】
次に、中間スプライス部20の防水剤の組成物40aの表面に保護シート30を巻付けて、保護シート30の内部に防水剤の組成物40aが充填された状態にする。保護シート30を二つ折りにした後、保護シート30の重ね合せ部分を、ロール51でしごくようにして、重ね合せ部32の防水剤の組成物40aを中間スプライス部20に向けて押込む。次いで保護シート30の重ね合せ部分32を防水部10に巻き回して密着させる。
【0086】
次に
図3(c)に示すように、保護シート30の重ね合せ部分を中間スプライス部20及び防水剤40の周囲に巻付ける。保護シート30を引張り、張力を加えた状態で巻付けると、保護シート30の外方から防水部10が押圧された状態で中間スプライス部20及び防水剤の組成物40aの周囲に巻付けられる。
【0087】
その結果、中間スプライス部20の周りに局所的に存在していた防水剤の組成物40aが、押出されて中間スプライス部20の外周部と保護シート30の間に行渡り、中間スプライス部20の外側周囲の全体を覆う。保護シート30は、自己密着性によって、防水部10の周囲に巻付けた状態が維持される。また、防水部10は、保護シート30の外側から押圧された状態も維持される。
【0088】
次に、
図3(c)に示すように、紫外線照射装置52を用いて、中間スプライス部20と防水剤の組成物40aの外側周囲に保護シート30が巻付けられた状態で、中間スプライス部20に紫外線53を照射して防水剤の組成物40aを硬化させて防水剤40とする。
【0089】
中間スプライス部20に照射された紫外線53は、保護シート30を透過して防水剤の組成物40aに照射される。このとき、紫外線の照射は、防水剤の組成物40aが硬化可能な照射条件で行う。防水剤の組成物40aは、連鎖移動剤を含有するため、照射光の届く部分が硬化するとともに、照射光の届かない箇所を硬化させることが可能であり、防水剤40が内部まで硬化した状態となっている防水部10が得られる。このように、紫外線等の光照射のみで、防水部10全体を硬化させることができるために、光照射後に加熱して後硬化させる工程等が不要である。
【0090】
尚、防水剤の組成物40aを塗布する際に、加熱装置等を用いて、中間スプライス部20を加熱して、防水剤の組成物40aの粘度を低下させ、導体2の素線同士の隙間や絶縁電線4同士の隙間等に浸透し易くしてもよい。このような加熱装置としては、例えば、セラミックヒータ、熱風ジェットヒータ、パイプ電磁ヒータ、ハロゲンランプヒータ、接触式ゴムヒータ等を用いることができる。
【0091】
上記形態は、硬化材料を中間スプライス部の防水剤に適用した例であるが、硬化材料を端末スプライスの防水剤として適用してもよい。以下端末スプライス部の防水について説明する。
図4は端末スプライス部を有するワイヤーハーネスの一例を示す説明図である。
【0092】
図4に示すように、防水部を形成する前のワイヤーハーネス1は、4本の絶縁電線
4の電線束11を有し、各絶縁電線
4の端末部分の被覆材13が除去されて、導体12が露出している導体露出部15を有する。更に導体露出部15は、導体12の端末どうしが接合された端末スプライス部21を有する。端末スプライス部21により電線束11の絶縁電線どうしが互いに電気的に接続されている。端末スプライス部21は、圧着、溶接等の公知の接合方法によって接合されている。
【0093】
導体露出部15は、上記硬化材料から形成された防水剤により被覆されている。更に防水剤の表面は光透過性の保護材料としての保護チューブ31により被覆されていて、防水部10を構成している。保護チューブ31は、可塑剤を含む樹脂から形成されていいる。保護チューブ31は、上記した保護シートと同様の樹脂を用いることができる。保護チューブ31は一方の端部が閉鎖され、他方の端部が開口したキャップ状に形成されている。
【0094】
導体露出部15は、端末スプライス部21以外の箇所は、導体12どうしの間に隙間が存在している。この隙間にも防水剤40が充填されている。また、防水剤40と保護チューブ31は、導体露出部15から電線束11の端部の被覆材13の表面まで被覆している。
【0095】
図5は端末スプライス部を有するワイヤーハーネスの製造方法の説明図である。ワイヤーハーネス1に防水部10を形成するには、まず
図5(a)に示すように、絶縁電線が複数本束ねられた電線束11の端部の被覆材を皮剥ぎして除去し、絶縁電線の内部の導体を露出させた導体露出部15を形成し、導体の端部を接合して端末スプライス部21を形成する。次いで、
図5(b)に示すように、上記の光硬化材料40aを内部に入れた保護チューブ31を準備する。そして同図(c)に示すように、この保護チューブ31の内部の硬化材料40a中に電線束11を浸漬して、電線束に防水剤の組成物40aを供給する。上記端末スプライス部21と導体露出部15の全体と電線束11の被覆材13の一部が被覆される。光硬化材料の表面が、可塑剤を含み光透過性を有する樹脂から形成された保護部材(保護チューブ31)により被覆されたた状態で光照射を行い、硬化材料を硬化させて防水部を形成する。同図(d)に示すように、端末スプライス部21が防水剤40により被覆され、防水剤の表面が保護チューブ31により被覆されている防水部を有するワイヤーハーネスが得られる。
【0096】
ワイヤーハーネスは、端末スプライス部21が上記の光硬化材料を用いた防水剤の組成物を硬化させた防水剤により被覆されていて、防水剤と接触している保護チューブ31が可塑剤を含む樹脂から形成され、保護チューブ31の可塑剤が防水剤40に移行するのを抑制可能になっている。
【実施例】
【0097】
以下に本発明の実施例、比較例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0098】
(A)(メタ)アクリレート(光硬化材料)、(B)連鎖移動剤、(C)光重合開始剤の各成分を、表1、表2に示す組成(質量部)で配合し、攪拌機を用いて混合し、溶解又は分散させ、実施例1〜6、比較例1〜5の光硬化材料を得た。光硬化材料のSP値を表1、表2に併せて示した。
【0099】
表中の略称は以下の通りで、特にメーカーの表示がないものは、東京化成社製の試薬グレードのものを用いた。
(A)(メタ)アクリレート
・IBA:イソボルニルアクリレート
・HPGA:ヘプタプロピレングリコールジアクリレート
・HPA:ヒドロキシプロピルジアクリレート
・TEGA:テトラエチレングリコールジアクリレート
・UP−1:ポリプロピレングリコールを用いて合成したウレタンアクリレート(合成品、合成法は後述する。)
・UP−2:1,10−デカンジオールを用いて合成したウレタンアクリレー(合成品、合成法は後述する)
【0100】
(合成例1)UP−1の合成
攪拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が400のポリプ口ピレングリコール80g(200mmol)、ヘキサメチレンジイソシアネー卜40g(238mmol)
とジブチルスズジラウレート0.05gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネー卜基の吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネー卜基の含有量を計算し、反応前と比較して約15%まで減少して変化が無くなった時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。更に2−ヒドロキシエチルアクリレート9.84g(84.8mmol)、ジブチルスズジラウレート0.05g、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]0.02gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネー卜基の吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネー卜基の含有量見積り、その吸収が消失した時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−1とする。両末端がアクリレートでポリエーテル構造を持つウレタンアクリレートである。
【0101】
(合成例2)UP−2の合成
攪拌機を備えた反応容器に、分子量が174.28の 1,10デカンジオール35g(200mmol)、ヘキサメチレンジイソシアネー卜40g(238mmol)
とジブチルスズジラウレート0.05gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から80℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネー卜基の吸収を確認しながら、80℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネー卜基の含有量を計算し、反応前と比較して約15%まで減少して変化が無くなった時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。更に2−ヒドロキシエチルアクリレート9.84g(84.8mmol)、ジブチルスズジラウレート0.05g、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]0.02gを仕込み、攪拌しながら液温度を室温から50℃まで1時間かけて上げた。その後少量をサンプリングしFT−IRを測定して2300cm
−1付近のイソシアネー卜基の吸収を確認しながら、50℃にて攪拌を続けた。FT−IRの吸収面積から残留イソシアネー卜基の含有量見積り、その吸収が消失した時を反応終了とし、無色透明粘調性液体を得た。これをUP−2とする。両末端がアクリレートで、ポリエーテル構造を持たないウレタンアクリレートである。
【0102】
(B)連鎖移動剤
・CT−1:ウレタンアクリレートUP−1、100gを撹拌しながら50℃に加温し、含金属化合物として亜鉛アセチルアセトンを0.3g加え、50℃を保ったまま30分間撹拌分散させた。
・CT−2:上記CT−1の亜鉛アセチルアセトンの代わりに銅アセチルアセトンを0.3g用いた。
・CT−3:ウレタンアクリレートUP−2、100gを撹拌しながら50℃に加温し、含金属化合物として亜鉛アセチルアセトンを0.3g加え、50℃を保ったまま30分間撹拌分散させた。
・CT−4:上記CT−3の亜鉛アセチルアセトンの代わりに銅アセチルアセトンを0.3g用いた。
【0103】
(C)光重合開始剤
・HCHPK: 1−ヒド口キシシク口ヘキシルフェニルケトン
【0104】
実施例、比較例の硬化材料について、可塑剤移行性評価と非照射部硬化性評価を行った。評価結果を表1及び表2に併せて示す。評価方法は下記の通りである。
【0105】
[可塑剤移行性評価]
・引裂き強度測定
可塑剤としてトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(TOTM)を含む直径3mmのPVC樹脂2本を被覆材が接触した状態で平行に並べ、その上に硬化材料を塗布し、UVランプ(SEN特殊光源社製、100mW/cm
2)を用いて紫外線照射を25秒間行った。その後、20分間室温で放置して室温にし、裏側にも同様に硬化材料を塗布し硬化させ、引裂き試験用サンプルを作製した。このサンプルを20mm/分で引裂き試験を行い、引裂き強度を測定した。引裂き時の応力をPVC樹脂の円周の半分で割った値を引裂き強度、単位N/mとした。試験は試験用サンプル作製時(初期)と、120℃5日間熱処理した後(耐熱後)について行って、引裂き強度を比較した。
【0106】
・可塑剤移行量測定
FT−IRを用いて、可塑剤の移行量を測定した。先ず合成した上記ウレタンアクリレートUP−1に可塑剤としてトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(TOTM)を所定量加えた硬化材料を数点調製し、硬化材料を硬化させた硬化物のFT−IR測定を行い、可塑剤ピーク面積と可塑剤含有量の関係を示す検量線を作成した。775cm
−1付近のウレタンのNHの吸収を基準とし、752cm
−1付近のTOTMの芳香環の吸収を比較して求めた。前記引裂き強度測定の際に用いた120℃5日間熱処理後の硬化物について、FT−IRを測定し、上記検量線を基に、可塑剤移行量(%)を算出した。
【0107】
[非照射部硬化性評価]
実施例、比較例の各硬化材料を、内径5mm、高さ50mmのガラス管に、液面の高さが20mmになるように入れ、内容物の上部半分(10mm)をアルミ箔で包み、遮光部分を作成した。その後、側面からUVランプ(SEN特殊光源社製100mW/cm
2)で25秒環紫外線照射を行った。その後、室温まで戻すため20分間室温で放置した後、上部から1.5mm径のガラス棒を挿入し、指触にて判断できる硬化部の確認を行うことによって、紫外線照射面と遮光面の境界から上部(非照射部)に進んだ硬化部の距離を計測した。
【0108】
実施例、比較例の材料を防水剤として用いたワイヤーハーネスの防水性能試験を行った。試験は、
図1に示す防水中間スプライス部を形成したワイヤーハーネスを作製して、防水性能を評価した。試験の詳細は以下の通りである。
【0109】
[防水中間スプライス部の作製]
外径4.4mmのポリ塩化ビニル(PVC)被覆電線を本線とし、外径3.6mmのPVC被覆電線2本を枝線とする中間スプライスワークを作製した。上記PVC被覆電線は、被覆材のPVCは可塑剤としてトリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)(TOTM)を全体の20質量部含有するものである。
【0110】
[防水剤の充填]
図3(a)に示すように、紫外線透過率94%の透明なPVC製のラップフィルム(PVCラップフィルム)を保護シートとし、該PVCラップフィルム上の中央に、防水剤として実施例、比較例の硬化材料の組成物を1.1g塗布し、上記中間スプライスワークの中間スプライス部を載せた後、PVCラップフィルムを貼り合わせて絞り込み、更に貼り合わせたPVCラップフィルムを巻き込んで、中間スプライス部と被覆材表面の約16mm長を覆う形に形成した。上記PVCラップフィルムは、可塑剤として、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOP)を全体の30質量部含有するものである。
【0111】
[防水剤の硬化]
中心波長が385nmのLED照射機(LED−UVランプ)を用い、上記PVCラップフィルムで巻き込んだ防水剤の組成物に、紫外線を照射して硬化させて防水部を形成して、ワイヤーハーネスを作製した。
【0112】
[耐圧試験による防水性能の評価]
耐圧試験は、ワイヤーハーネスの防水中間スプライス部全体を水中に浸漬した状態で、このハーネスの両端の電線全てからエアー圧200kPaの圧力を1分間加え、エアリークの有無を観察して初期の防水性能を評価した。評価基準は、エアリークがなかった場合を良好(○)とし、エアー圧200kPaを1分間加圧する途中でエアリークが確認された場合を不良(×)とした。また、防水中間スプライス部全体を120℃の恒温槽に入れて240時間加熱した後のワイヤーハーネスについても上記耐圧試験を行って、耐熱後の防水性能を評価した。評価基準は初期の試験と同じである。防水性能試験の結果を表1、表2に合わせて示す。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表1に示すように、実施例1〜6は、可塑剤移行性評価での引裂き強度は、初期、耐熱後のいずれも良好であり、耐熱後の強度低下もなく、可塑剤移行量も5%以下であり、可塑剤移行を抑制することが可能となっている。また非照射部硬化距離も3mm以上であり暗部硬化が確認でき、防水性能も初期、耐熱後のいずれも良好であった。このように実施例のワイヤーハーネスは、PVCからの可塑剤の移行を抑制し、且つ紫外線の届かない箇所での硬化が可能であって、良好な防水性能が得られた。
【0116】
これに対し比較例1〜3は表2に示すように、連鎖移動剤の(a)成分がポリエーテル構造を有するものではなく、SP値が9.4未満であるため、可塑剤移行性評価で、耐熱後の引裂き強度の強度低下が大きく、可塑剤の移行量も10%以上であった。また比較例4はSP値が9.4であり、可塑剤の移行は抑制可能となっているが、連鎖移動剤を含まないため、非照射部が未硬化で暗部硬化性を有していない。また比較例5は、SP値が9.4未満であるため、可塑剤の移行を抑制することができなかった。その為、耐熱後の引裂き強度の強度低下が大きく、可塑剤の移行量も10%を超えて、耐熱後の防水性能が不良であった。比較例4は可塑剤の移行を抑制することが可能となっているが、連鎖移動剤を含まないので非照射部の硬化性がない。その為、初期の防水性能が不良であった。
【0117】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0118】
例えば上記実施例の光硬化材料は、(A)硬化材料と(B)連鎖移動剤を用いているが、(B)連鎖移動剤が硬化性を有する材料であれば、上記(A)硬化材料を用いなくてもよい。
【0119】
また上記実施例のワイヤーハーネスでは、4本の電線を束ねられた電線束を例として説明したが、電線束は複数の電線であればよく、4本以外の電線を用いてもよい。