(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板に対して第1元素を含むガスを供給することにより、前記第1元素を含む不連続な第1の層、前記第1元素を含む連続的な第1の層、または、前記第1元素を含む不連続な層および前記第1元素を含む連続的な層のうち少なくともいずれかが重なってできる第1の層を形成する工程と、
前記基板に対して前記第1元素とは異なる第2元素を含むガスを供給することにより、前記第1の層の上に前記第2元素を含む不連続な層を形成するか、前記第1の層の前記第2元素を含むガスによる改質反応を飽和させることなく前記第1の層を改質して、前記第1元素および前記第2元素を含む第2の層を形成する工程と、
前記基板に対して前記第1元素および前記第2元素とは異なる第3元素を含むガスを供給することにより、前記第2の層の前記第3元素を含むガスによる改質反応を飽和させることなく前記第2の層を改質して、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素を含む第3の層を形成する工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことにより、前記基板上に、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素を含む薄膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法。
基板に対して第1元素を含むガスを供給することにより、前記第1元素を含む不連続な第1の層、前記第1元素を含む連続的な第1の層、または、前記第1元素を含む不連続な層および前記第1元素を含む連続的な層のうち少なくともいずれかが重なってできる第1の層を形成する工程と、
前記基板に対して前記第1元素とは異なる第2元素を含むガスを供給することにより、前記第1の層の上に前記第2元素を含む不連続な層を形成するか、前記第1の層の前記第2元素を含むガスによる改質反応を飽和させることなく前記第1の層を改質して、前記第1元素および前記第2元素を含む第2の層を形成する工程と、
前記基板に対して前記第2元素とは異なる第3元素を含むガスを供給することにより、前記第2の層の上に前記第3元素を含む不連続な層を形成するか、前記第2の層の前記第3元素を含むガスによる改質反応を飽和させることなく前記第2の層を改質して、前記第1元素、前記第2元素および前記第3元素を含む第3の層を形成する工程と、
前記基板に対して前記第1元素および前記第3元素とは異なる第4元素を含むガスを供給することにより、前記第3の層の前記第4元素を含むガスによる改質反応を飽和させることなく前記第3の層を改質して、前記第1元素、前記第2元素、前記第3元素および前記第4元素を含む第4の層を形成する工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことにより、前記基板上に、前記第1元素、前記第2元素、前記第3元素および前記第4元素を含む薄膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示しており、
図2は本実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を
図1のA−A線断面図で示している。
【0015】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。
【0016】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO
2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0017】
処理室201内における反応管203の下部には、第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dが反応管203を貫通するように設けられている。第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dには、第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232b、第3ガス供給管232c、第4ガス供給管232dが、それぞれ接続されている。このように、反応管203には4本のノズル249a、249b、249c、249dと、4本のガス供給管232a、232b、232c、232dが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは4種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0018】
第1ガス供給管232aには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232eが接続されている。この第1不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル249aが接続されている。第1ノズル249aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル249aはL字型のロングノズルとして構成されている。第1ノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aにより第1ガス供給系が構成される。また、主に、第1不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより、第1不活性ガス供給系が構成される。
【0019】
第2ガス供給管232bには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232fが接続されている。この第2不活性ガス供給管232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル249bが接続されている。第2ノズル249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第2ノズル249bはL字型のロングノズルとして構成されている。第2ノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。ガス供給孔250bは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bにより第2ガス供給系が構成される。また、主に、第2不活性ガス供給管232f、マスフローコントローラ241f、バルブ243fにより第2不活性ガス供給系が構成される。
【0020】
第3ガス供給管232cには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第3不活性ガス供給管232gが接続されている。この第3不活性ガス供給管232gには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241g、及び開閉弁であるバルブ243gが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部には、上述の第3ノズル249cが接続されている。第3ノズル249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第3ノズル249cはL字型のロングノズルとして構成されている。第3ノズル249cの側面にはガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。ガス供給孔250cは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。主に、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cにより第3ガス供給系が構成される。また、主に、第3不活性ガス供給管232g、マスフローコントローラ241g、バルブ243gにより第3不活性ガス供給系が構成される。
【0021】
第4ガス供給管232dには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第4ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第4不活性ガス供給管232hが接続されている。この第4不活性ガス供給管232hには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第4ガス供給管232dの先端部には、上述の第4ノズル249dが接続されている。第4ノズル249dは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。
【0022】
バッファ室237は反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔250eが設けられている。ガス供給孔250eは反応管203の中心を向くように開口している。このガス供給孔250eは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0023】
第4ノズル249dは、バッファ室237のガス供給孔250eが設けられた端部と反対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。第4ノズル249dはL字型のロングノズルとして構成されている。第4ノズル249dの側面にはガスを供給するガス供給孔250dが設けられている。ガス供給孔250dはバッファ室237の中心を向くように開口している。このガス供給孔250dは、バッファ室237のガス供給孔250eと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔250dのそれぞれの開口面積は、バッファ室237内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0024】
本実施形態においては、第4ノズル249dのガス供給孔250dのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔250dのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔250dのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うこととした。
【0025】
すなわち、第4ノズル249dのガス供給孔250dのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237のガス供給孔250eより処理室201内に噴出する。これにより、第4ノズル249dのガス供給孔250dのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237のガス供給孔250eのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0026】
主に、第4ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249d、バッファ室237により第4ガス供給系が構成される。また、主に、第4不活性ガス供給管232h、マスフローコントローラ241h、バルブ243hにより第4不活性ガス供給系が構成される。
【0027】
第1ガス供給管232aからは、例えば、シリコン原料ガス、すなわちシリコン(Si)を含むガス(シリコン含有ガス)が、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に供給される。シリコン含有ガスとしては、例えばジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称:DCS)ガスを用いることができる。
【0028】
第2ガス供給管232bからは、例えばカーボン(C)すなわち炭素を含むガス(炭素含有ガス)が、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給される。炭素含有ガスとしては、例えばプロピレン(C
3H
6)ガスを用いることができる。また、第2ガス供給管232bからは、例えば、水素(H)を含むガス(水素含有ガス)が、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給されるようにしてもよい。水素含有ガスとしては、例えば水素(H
2)ガスを用いることができる。
【0029】
第3ガス供給管232cからは、例えばボロン(B)すなわち硼素を含むガス(硼素含有ガス)が、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。硼素含有ガスとしては、例えば三塩化硼素(BCl
3)ガスを用いることができる。また、第3ガス供給管232cからは、例えば、酸素(O)を含むガス(酸素含有ガス)が、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給されるようにしてもよい。酸素含有ガスとしては、例えば酸素(O
2)ガスや亜酸化窒素(N
2O)ガスを用いることができる。
【0030】
第4ガス供給管232dからは、例えば窒素(N)を含むガス(窒素含有ガス)が、マスフローコントローラ241d、バルブ243d、第4ノズル249d、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。窒素含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH
3)ガスを用いることができる。
【0031】
不活性ガス供給管232e、232f、232g、232hからは、例えば窒素(N
2)ガスが、それぞれマスフローコントローラ241e、241f、241g、241h、バルブ243e、243f、243g、243h、ガス供給管232a、232b、232c、232d、ガスノズル249a、249b、249c、249d、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。
【0032】
なお、例えば各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、第1ガス供給系により原料ガス供給系、すなわちシリコン含有ガス供給系(シラン系ガス供給系)が構成される。また、第2ガス供給系により炭素含有ガス供給系や水素含有ガス供給系が構成される。また、第3ガス供給系により硼素含有ガス供給系や酸素含有ガスが構成される。また、第4ガス供給系により窒素含有ガス供給系が構成される。
【0033】
バッファ室237内には、
図2に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、第4ノズル249dと平行に設けられている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波電源273によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。なお、プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。
【0034】
電極保護管275は、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。
【0035】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されており、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ244は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能となっている開閉弁である。主に、排気管231、APCバルブ244、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0036】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、ボートを回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通して、後述するボート217に接続されており、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート217を処理室201内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0037】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なおボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これらを水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
【0038】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a、249b、249c、249dと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0039】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g、241h、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、243g、243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。コントローラ121により、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241f、241g、241hによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、243g、243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節動作、ボートエレベータ115の昇降動作等の制御や、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。
【0040】
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜を成膜する3つのシーケンス例(第1シーケンス、第2シーケンス、第3シーケンス)について説明する。尚、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0041】
なお、従来のCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法では、例えば、CVD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを同時に供給し、また、ALD法の場合、形成する膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを交互に供給する。そして、ガス供給時のガス供給流量、ガス供給時間、プラズマパワーなどの供給条件を制御することによりSiO
2膜やSi
3N
4膜を形成する。それらの技術では、例えばSiO
2膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるO/Si≒2となるように、また例えばSi
3N
4膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるN/Si≒1.33となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。
【0042】
これに対し、本発明の実施形態では、形成する膜の組成比が化学量論組成とは異なる所定の組成比となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。すなわち、形成する膜を構成する複数の元素のうち少なくとも一つの元素が他の元素よりも化学量論組成に対し過剰となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。以下、形成する膜を構成する複数の元素の比率、すなわち、膜の組成比を制御しつつ成膜を行うシーケンス例について説明する。
【0043】
(第1シーケンス)
まず、本実施形態の第1シーケンスについて説明する。
図3は、本実施形態の第1シーケンスにおけるガス供給およびプラズマパワー供給のタイミング図であり、
図6は、本実施形態の第1シーケンスによりウエハ上にシリコン窒化膜を形成する様子を示す模式図であり、
図7は、本実施形態の第1シーケンスのステップ1において、シリコンの供給量を過剰にする様子を示す模式図であり、
図8は、本実施形態の第1シーケンスのステップ2において、窒素の供給量を不足させる様子を示す模式図である。本実施形態の第1シーケンスは、2元素系組成比制御に関するものである。
【0044】
本実施形態の第1シーケンスでは、ウエハ200を収容した処理容器内に第1元素を含むガス(第1元素含有ガス)を供給することで、ウエハ200上に第1元素を含む第1の層を形成する工程と、
処理容器内に第2元素を含むガス(第2元素含有ガス)を供給することで、第1の層を改質して第1元素および第2元素を含む第2の層を形成する工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことで、所定膜厚の第1元素および第2元素を含む薄膜を形成する。
【0045】
その際、第1の層および第2の層のうちの一方の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の一方の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。
または、第1の層および第2の層のうちの他方の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の他方の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。
これにより、化学量論的な組成に対し一方の元素の方が他方の元素よりも過剰となる組成を有する薄膜を形成する。
【0046】
第1の層を形成する工程は、CVD反応が生じる条件下で行う。このときウエハ200上に1原子層未満から数原子層程度の第1元素を含む第1の層として第1元素層を形成する。第1の層は第1元素含有ガスの吸着層であってもよい。なお、第1元素としては、それ単独で固体となる元素を用いるのがよい。ここで、第1元素層とは、第1元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む総称である。なお、第1元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、第1元素含有ガスの吸着層とは第1元素含有ガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。第1元素含有ガスが自己分解する条件下ではウエハ200上に第1元素が堆積することで第1元素層が形成される。第1元素含有ガスが自己分解しない条件下では、ウエハ200上に第1元素含有ガスが吸着することで第1元素含有ガスの吸着層が形成される。なお、ウエハ200上に第1元素含有ガスの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上に第1元素層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0047】
第2の層を形成する工程では、第2元素含有ガスをプラズマまたは熱で活性化させて供給することで、第1の層の一部と第2元素含有ガスとを反応させて、第1の層を改質して第1元素および第2元素を含む第2の層を形成する。例えば第1の層を形成する工程で数原子層の第1元素を含む第1の層を形成した場合は、その表面層の一部と第2元素含有ガスとを反応させてもよいし、その表面層全体と第2元素含有ガスとを反応させてもよい。また、数原子層の第1元素を含む第1の層の表面層から下の数層と第2元素含有ガスとを反応させてもよい。ただし、第1の層が第1元素を含む数原子層の層で構成される場合は、その表面層だけを改質する方が、薄膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。なお、第2元素としては、それ単独では固体とはならない元素を用いるのがよい。第2元素含有ガスはプラズマで活性化させて供給してもよいし、熱で活性化させて供給してもよい。
図3は第2元素含有ガスをプラズマで活性化させて供給する例を示している。なお、第2元素含有ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、改質をソフトに行うことができる。
【0048】
例えば、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第1元素の方が第2元素よりも過剰となるように制御する場合、第1の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第1の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第1の層を形成する工程における第1元素の供給量を過剰にする。そしてこの第1の層を形成する工程における第1元素の過剰供給により、第2の層を形成する工程における第1の層の改質反応を飽和させないようにする。すなわち、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第1の層を形成する工程で与える第1元素の原子の数を過剰にし、これにより、第2の層を形成する工程での第1の層の改質反応を抑制させる。
【0049】
もしくは、第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第2の層を形成する工程における第2元素の供給量を不足させる。そしてこの第2の層を形成する工程における第2元素の不足供給により、第2の層を形成する工程における第1の層の改質反応を飽和させないようにする。すなわち、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第2の層を形成する工程で与える第2元素の原子の数を不足させ、これにより、第2の層を形成する工程での第1の層の改質反応を抑制させる。
【0050】
例えば、SiO
2膜やSi
3N
4膜のO/SiやN/Siのように、飽和結合比が第2元素であるOやNの方が高いものに対しては、このように第2の層を形成する工程における改質反応を飽和させないようにする。
【0051】
以下、本実施形態の第1シーケンスを具体的に説明する。なお、ここでは、第1元素をシリコン(Si)、第2元素を窒素(N)とし、第1元素含有ガスとしてシリコン含有ガスであるDCSガスを、第2元素含有ガスとして窒素含有ガスであるNH
3ガスを用い、
図3のシーケンスにより、基板上に絶縁膜としてシリコン窒化膜(SiN膜)を形成する例について説明する。また、ここでは、シリコン窒化膜の組成比を、化学量論的な組成に対しシリコン(Si)の方が窒素(N)よりも過剰となるように制御する例について説明する。なお、この例では、第1ガス供給系によりシリコン含有ガス供給系(第1元素含有ガス供給系)が構成され、第4ガス供給系により窒素含有ガス供給系(第2元素含有ガス供給系)が構成される。
【0052】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0053】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244が、フィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構267により、ボート217が回転されることで、ウエハ200が回転される(ウエハ回転)。その後、後述する2つのステップを順次実行する。
【0054】
[ステップ1]
第1ガス供給管232aのバルブ243a開き、第1ガス供給管232a内にDCSガスを流す。第1ガス供給管232a内を流れたDCSガスは、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたDCSガスは第1ノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。このとき、同時にバルブ243eを開き、不活性ガス供給管232e内にN
2ガス等の不活性ガスを流す。不活性ガス供給管232e内を流れたN
2ガスは、マスフローコントローラ241eにより流量調整される。流量調整されたN
2ガスはDCSガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0055】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241aで制御するDCSガスの供給流量は、例えば10〜1000sccmの範囲内の流量とする。DCSガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、処理室201内でCVD反応が生じる程度の温度、すなわちウエハ200の温度が、例えば300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、ウエハ200の温度が300℃未満となるとウエハ200上にDCSが吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が650℃を超えるとCVD反応が強くなり、均一性が悪化しやすくなる。よって、ウエハ200の温度は300〜650℃の範囲内の温度とするのが好ましい。
【0056】
DCSガスの供給により、ウエハ200表面の下地膜上に、第1元素としてのシリコンを含む第1の層が形成される。すなわち、
図6(a)に示すように、ウエハ200上(下地膜上)に1原子層未満から数原子層のシリコン含有層としてのシリコン層(Si層)が形成される。シリコン含有層はDCSの化学吸着層であってもよい。なお、シリコンは、それ単独で固体となる元素である。ここでシリコン層とはシリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。なお、シリコンにより構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、DCSの化学吸着層とはDCS分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ2での窒化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。なお、DCSガスが自己分解する条件下では、ウエハ200上にシリコンが堆積することでシリコン層が形成され、DCSガスが自己分解しない条件下では、ウエハ200上にDCSが化学吸着することでDCSの化学吸着層が形成される。なお、ウエハ200上にDCSの化学吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にシリコン層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0057】
シリコン含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、DCSガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243eは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のDCSガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0058】
シリコン含有ガスとしては、DCSガスの他、テトラクロロシラン(SiCl
4、略称:TCS)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si
2Cl
6、略称:HCD)ガス、モノシラン(SiH
4)ガス等の無機原料だけでなく、アミノシラン系のテトラキスジメチルアミノシラン(Si(N(CH
3)
2))
4、略称:4DMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si(N(CH
3)
2))
3H、略称:3DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si(N(C
2H
5)
2)
2H
2、略称:2DEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH
2(NH(C
4H
9))
2、略称:BTBAS)ガスなどの有機原料を用いてもよい。不活性ガスとしては、N
2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0059】
[ステップ2]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第4ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第4ガス供給管232d内にNH
3ガスを流す。第4ガス供給管232d内を流れたNH
3ガスは、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。流量調整されたNH
3ガスは第4ノズル249dのガス供給孔250dからバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたNH
3ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔250eから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243hを開き、不活性ガス供給管232h内にN
2ガスを流す。N
2ガスはNH
3ガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0060】
NH
3ガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜100Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241dで制御するNH
3ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。NH
3ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ1と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。NH
3ガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度、処理室内圧力では反応しづらいので、プラズマ励起することにより活性種としてから流すようにしており、このためウエハ200の温度は上述のように設定した低い温度範囲のままでよい。また、NH
3ガスを供給する際にプラズマ励起せず、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を例えば50〜3000Paの範囲内の圧力とすることで、NH
3ガスをノンプラズマで熱的に活性化することも可能である。なお、NH
3ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる。
【0061】
このとき、処理室201内に流しているガスはNH
3ガスをプラズマ励起することにより得られた活性種、もしくは処理室201内圧力を高くすることで熱的に活性化されたNH
3ガスであり、処理室201内にはDCSガスは流していない。したがって、NH
3ガスは気相反応を起こすことはなく、活性種となった、もしくは活性化されたNH
3ガスは、ステップ1でウエハ200上に形成された第1の層としてのシリコン含有層の一部と反応する。これによりシリコン含有層は窒化されて、シリコン(第1元素)および窒素(第2元素)を含む第2の層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)へと改質される。
【0062】
このとき、
図6(b)に示すように、シリコン含有層の窒化反応は飽和させないようにする。例えばステップ1で数原子層のシリコン層を形成した場合は、その表面層(表面の1原子層)の少なくとも一部を窒化させる。すなわち、その表面層の一部もしくは全部を窒化させる。この場合、数原子層のシリコン層の全体を窒化させないように、シリコン層の窒化反応が非飽和となる条件下で窒化を行う。なお、条件によっては数原子層のシリコン層の表面層から下の数層を窒化させることもできるが、その表面層だけを窒化させる方が、シリコン窒化膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。また、例えばステップ1で1原子層または1原子層未満のシリコン層を形成した場合は、そのシリコン層の一部を窒化させるようにする。この場合も、1原子層または1原子層未満のシリコン層の全体を窒化させないように、シリコン層の窒化反応が非飽和となる条件下で窒化を行う。なお、窒素は、それ単独では固体とはならない元素である。
【0063】
その後、第4ガス供給管232dのバルブ243dを閉じて、NH
3ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNH
3ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243hは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNH
3ガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0064】
窒素含有ガスとしては、NH
3ガスをプラズマや熱で励起したガス以外に、N
2ガス、NF
3ガス、N
3H
8ガス等をプラズマや熱で励起したガスを用いてもよく、これらのガスをArガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスで希釈したガスをプラズマや熱で励起して用いてもよい。
【0065】
上述したステップ1〜2を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン(第1元素)および窒素(第2元素)を含む薄膜、すなわち、シリコン窒化膜(SiN膜)を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0066】
このとき、ステップ1における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つシリコン窒化膜を形成する場合のステップ1における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つシリコン窒化膜を形成する場合よりも、ステップ1におけるシリコンの供給量を過剰にする(
図7(a)参照)。そしてこのステップ1におけるシリコンの過剰供給により、ステップ2におけるシリコン含有層の窒化反応を飽和させないようにする(
図7(b)参照)。すなわち、化学量論的な組成を持つシリコン窒化膜を形成する場合よりも、ステップ1で与えるシリコン原子の数を過剰にし、これにより、ステップ2でのシリコン含有層の窒化反応を抑制させる。これにより、シリコン窒化膜(SiN膜)の組成比を、化学量論的な組成に対しシリコン(Si)の方が窒素(N)よりも過剰となるように制御する。
【0067】
なお、
図7の上段の図は、化学量論組成のSiN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図7の下段の図は、Si供給量を過剰にして化学量論組成に対しSiの方がNよりも過剰なSiN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図7の(a)、(b)は、それぞれステップ1、ステップ2における反応の状態を示している。なお、上段の図は、ステップ1において連続的なSi層を1層形成し、ステップ2においてこのSi層全体を窒化する例を示しており、下段の図は、ステップ1において連続的なSi層を2層形成し、ステップ2においてこのSi層の表面層を窒化する例を示している。
【0068】
もしくは、ステップ2における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つシリコン窒化膜を形成する場合のステップ2における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つシリコン窒化膜を形成する場合よりも、ステップ2における窒素の供給量を不足させる(
図8(b)参照)。そしてこのステップ2における窒素の不足供給により、ステップ2におけるシリコン含有層の窒化反応を飽和させないようにする。すなわち、化学量論的な組成を持つシリコン窒化膜を形成する場合よりも、ステップ2で与える窒素原子の数を不足させ、これにより、ステップ2でのシリコン含有層の窒化反応を抑制させる。これにより、シリコン窒化膜(SiN膜)の組成比を、化学量論的な組成に対しシリコン(Si)の方が窒素(N)よりも過剰となるように制御する。
【0069】
なお、
図8の上段の図は、化学量論組成のSiN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図8の下段の図は、N供給量を不足させて化学量論組成に対しSiの方がNよりも過剰なSiN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図8の(a)、(b)は、それぞれステップ1、ステップ2における反応の状態を示している。なお、上段の図は、ステップ1において連続的なSi層を1層形成し、ステップ2においてこのSi層全体を窒化する例を示しており、下段の図は、ステップ1において連続的なSi層を1層形成し、ステップ2においてこのSi層の表面層の一部を窒化する例を示している。
【0070】
所定組成を有する所定膜厚のシリコン窒化膜を形成する成膜処理がなされると、N
2等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0071】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0072】
なお、ここでは本実施形態の第1シーケンスの具体例として、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、窒素含有ガスをそれぞれ用い、SiN膜を形成する例について説明したが、本発明は上述の具体例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0073】
例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてアルミニウム含有ガス、窒素含有ガスをそれぞれ用い、アルミニウム窒化膜(AlN膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてチタン含有ガス、窒素含有ガスをそれぞれ用い、チタン窒化膜(TiN膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてボロン含有ガス、窒素含有ガスをそれぞれ用い、ボロン窒化膜(BN膜)を形成する場合等にも適用することができる。また、例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、酸素含有ガスをそれぞれ用い、シリコン酸化膜(SiO膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてアルミニウム含有ガス、酸素含有ガスをそれぞれ用い、アルミニウム酸化膜(AlO膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてチタン含有ガス、酸素含有ガスをそれぞれ用い、チタン酸化膜(TiO膜)を形成する場合等にも適用することができる。また、例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、炭素含有ガスをそれぞれ用い、シリコン炭化膜(SiC膜)を形成する場合等にも適用することができる。
【0074】
なお、アルミニウム含有ガスとしては、例えばトリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3、略称:TMA)ガスを用いることができる。チタン含有ガスとしては、例えば四塩化チタン(TiCl
4)ガスやテトラキスジメチルアミノチタン(Ti[N(CH
3)
2]
4、略称:TDMAT)ガスを用いることができる。硼素含有ガスとしては、例えば三塩化硼素(BCl
3)ガスやジボラン(B
2H
6)ガスを用いることができる。炭素含有ガスとしては、例えばプロピレン(C
3H
6)ガスやエチレン(C
2H
4)ガスを用いることができる。酸素含有ガスとしては、例えば酸素(O
2)ガス、オゾン(O
3)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(N
2O)ガス、水蒸気(H
2O)を用いることができる。
【0075】
なお、第2元素含有ガスとして酸素含有ガスを用いる場合、酸素含有ガスと一緒に水素含有ガスを供給するようにしてもよい。大気圧未満の圧力(減圧)雰囲気下にある処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給すると、処理容器内で酸素含有ガスと水素含有ガスとが反応し酸素を含む酸化種(原子状酸素等)が生成され、この酸化種により第1の層を酸化することができる。この場合、酸素含有ガス単体で酸化するよりも高い酸化力にて酸化を行うことができる。この酸化処理はノンプラズマの減圧雰囲気下で行われる。水素含有ガスとしては、例えば水素(H
2)ガスを用いることができる。
【0076】
以上のように、本実施形態の第1シーケンスでは、第1元素としては、例えばシリコン(Si)や硼素(B)等の半導体元素や、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の金属元素を用いることができ、第2元素としては、窒素(N)や炭素(C)や酸素(O)等の元素を用いることができる。
【0077】
(第2シーケンス)
次に、本実施形態の第2シーケンスについて説明する。
図4は、本実施形態の第2シーケンスにおけるガス供給のタイミング図であり、
図9は、本実施形態の第2シーケンスによりウエハ上にシリコン炭窒化膜を形成する様子を示す模式図であり、
図10は、本実施形態の第2シーケンスのステップ2において、炭素の供給量を過剰にする様子を示す模式図であり、
図11は、本実施形態の第2シーケンスのステップ3において、窒素の供給量を不足させる様子を示す模式図である。本実施形態の第2シーケンスは、3元素系組成比制御に関するものである。
【0078】
本実施形態の第2シーケンスでは、ウエハ200を収容した処理容器内に第1元素を含むガス(第1元素含有ガス)を供給することで、ウエハ200上に第1元素を含む第1の層を形成する工程と、
処理容器内に第2元素を含むガス(第2元素含有ガス)を供給することで、第1の層の上に第2元素を含む層を形成するか、第1の層を改質して、第1元素および第2元素を含む第2の層を形成する工程と、
処理容器内に第3元素を含むガス(第3元素含有ガス)を供給することで、第2の層を改質して第1元素、第2元素および第3元素を含む第3の層を形成する工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことで、所定膜厚の第1元素、第2元素および第3元素を含む薄膜を形成する。
【0079】
その際、第1の層、第2の層および第3の層のうちの一つの層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の一つの層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。
または、第1の層、第2の層および第3の層のうちの他の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の他の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。
これにより、化学量論的な組成に対し一つの元素の方が他の元素よりも過剰となる組成を有する薄膜を形成する。
【0080】
なお、2元素系の薄膜の場合、化学量論組成は1通りだけである。例えば、SiN膜の化学量論組成は、Si:N=3:4の1通りだけである。しかしながら、3元素系の薄膜の場合、化学量論組成は2元素系の薄膜のように1通りではなく、何通りかある。本実施形態の第2シーケンスでは、そのいずれの化学量論組成とも異なる組成を有する薄膜を形成する。
【0081】
第1の層を形成する工程は、第1シーケンスにおける第1の層を形成する工程と同様である。すなわち、第1の層を形成する工程での処理条件、生じさせる反応、形成する層、形成する層の厚さ、第1元素の例、第1元素含有ガスの例、第1の層の例等は、第1シーケンスにおける第1の層を形成する工程でのそれらと同様である。
【0082】
第2の層を形成する工程では、第2元素含有ガスをプラズマまたは熱で活性化させて供給することで、第1の層の上に1原子層未満から数原子層程度の第2元素を含む層を形成するか、もしくは、第1の層の一部と第2元素含有ガスとを反応させて第1の層を改質する。これにより、第1元素および第2元素を含む第2の層を形成する。
【0083】
第1の層の上に第2元素を含む層を形成することで第2の層を形成する場合、第2元素を含む層は、第2元素層であってもよいし、第2元素含有ガスの吸着層であってもよい。第2元素含有ガスの吸着層は、第2元素含有ガスが分解した物質の吸着層をも含む。ここで、第2元素層とは、第2元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む総称である。なお、第2元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、第2元素含有ガスの吸着層とは、第2元素含有ガスや第2元素含有ガスが分解した物質の分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、第2元素を含む層は、第2元素含有ガスや第2元素含有ガスが分解した物質の分子の不連続な化学吸着層、すなわち、1原子層未満の化学吸着層とする方が、薄膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。
【0084】
第1の層を改質することで第2の層を形成する場合の第1の層の改質方法は、第1シーケンスにおける第2の層を形成する工程での第1の層の改質方法と同様である。
【0085】
第2元素含有ガスはプラズマで活性化させて供給してもよいし、熱で活性化させて供給してもよい。
図4は第2元素含有ガスを熱で活性化させて供給する例、すなわち、ソフトな反応を生じさせる例を示している。
【0086】
第3の層を形成する工程では、第3元素含有ガスをプラズマまたは熱で活性化させて供給することで、第2の層を改質して第1元素、第2元素および第3元素を含む第3の層を形成する。例えば第2の層を形成する工程で数原子層の第1元素および第2元素を含む第2の層を形成した場合は、その表面層の一部と第3元素含有ガスとを反応させてもよいし、その表面層全体と第3元素含有ガスとを反応させてもよい。また、数原子層の第1元素および第2元素を含む第2の層の表面層から下の数層と第3元素含有ガスとを反応させてもよい。ただし、第2の層が第1元素および第2元素を含む数原子層の層で構成される場合は、その表面層だけを改質する方が、薄膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。なお、第3元素としては、それ単独では固体とはならない元素を用いるのがよい。第3元素含有ガスはプラズマで活性化させて供給してもよいし、熱で活性化させて供給してもよい。
図4は第3元素含有ガスを熱で活性化させて供給する例、すなわち、ソフトな反応を生じさせて、改質をソフトに行う例を示している。
【0087】
薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第1元素の方が第2元素よりも過剰となるように制御する方法等は、第1シーケンスの方法と同様である。
【0088】
薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第2元素の方が第3元素よりも過剰となるように制御する場合や、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第3元素の方が第2元素よりも過剰となるように制御する場合は、一方の元素を基準として組成比制御を行う。
【0089】
例えば、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第2元素の方が第3元素よりも過剰となるように制御する場合、第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第2の層を形成する工程における第2元素の供給量を過剰にする。そしてこの第2の層を形成する工程における第2元素の過剰供給により、第3の層を形成する工程における第2の層の改質反応が生じ得る領域を縮小させる。すなわち、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第2の層を形成する工程で与える第2元素の原子の数を過剰にし、これにより、第3の層を形成する工程での第2の層の改質反応を抑制させる。
【0090】
もしくは、第3の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第3の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第3の層を形成する工程における第3元素の供給量を不足させる。そしてこの第3の層を形成する工程における第3元素の不足供給により、第3の層を形成する工程における第2の層の改質反応を抑えるようにする。すなわち、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第3の層を形成する工程で与える第3元素の原子の数を不足させ、これにより、第3の層を形成する工程での第2の層の改質反応を抑制させる。
【0091】
また例えば、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第3元素の方が第2元素よりも過剰となるように制御する場合、第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第2の層を形成する工程における第2元素の供給量を不足させる。そしてこの第2の層を形成する工程における第2元素の不足供給により、第2元素を含む層が形成される領域を縮小させるか、第1の層の改質反応を抑制させる。この結果、化学量論的な組成に対し第3元素の方が第2元素よりも相対的に過剰となる。
【0092】
なお、第2の層を形成する工程において第2元素の供給量を不足させると、第3の層を形成する工程において第2の層の改質反応が生じ得る領域が拡大することとなる。このとき、第3の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第3の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くすることで、第3の層を形成する工程における第3元素の供給量を過剰にすることができ、化学量論的な組成に対し第3元素の方が第2元素よりも、より一層過剰となるように制御することができる。すなわち、第2の層を形成する工程における第2元素の不足供給と、第3の層を形成する工程における第3元素の過剰供給と、のコンビネーションにより、第3の層を形成する工程における第2の層の改質反応を促進させることができようになり、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第3元素の方が第2元素よりも、より一層過剰となるように制御することができるようになる。
【0093】
以下、本実施形態の第2シーケンスを具体的に説明する。なお、ここでは、第1元素をシリコン(Si)、第2元素を炭素(C)、第3元素を窒素(N)とし、第1元素含有ガスとしてシリコン含有ガスであるDCSガスを、第2元素含有ガスとして炭素含有ガスであるC
3H
6ガスを、第3元素含有ガスとして窒素含有ガスであるNH
3ガスを用い、
図4のシーケンスにより、基板上に絶縁膜としてシリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成する例について説明する。また、ここでは、シリコン炭窒化膜の組成比を、化学量論的な組成に対し炭素(C)が窒素(N)よりも過剰となるように制御する例について説明する。なお、この例では、第1ガス供給系によりシリコン含有ガス供給系(第1元素含有ガス供給系)が構成され、第2ガス供給系により炭素含有ガス供給系(第2元素含有ガス供給系)が構成され、第4ガス供給系により窒素含有ガス供給系(第3元素含有ガス供給系)が構成される。
【0094】
ウエハチャージ、ボートロード、圧力調整、温度調整、ウエハ回転までは、第1シーケンスと同様に行う。その後、後述する3つのステップを順次実行する。
【0095】
[ステップ1]
ステップ1は第1シーケンスのステップ1と同様に行う。すなわち、ステップ1での処理条件、生じさせる反応、形成する層、形成する層の厚さ、第1元素の例、第1元素含有ガスの例、第1の層の例等は、第1シーケンスにおけるステップ1でのそれらと同様である(
図9(a)参照)。
【0096】
[ステップ2]
ステップ1が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを開き、第2ガス供給管232b内にC
3H
6ガスを流す。第2ガス供給管232b内を流れたC
3H
6ガスは、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整されたC
3H
6ガスは第2ノズル249bのガス供給孔250bから処理室内へ供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243fを開き、不活性ガス供給管232f内にN
2ガスを流す。N
2ガスはC
3H
6ガスと一緒に処理室201内へ供給されつつガス排気管231から排気される。
【0097】
このときAPCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば50〜3000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241bで制御するC
3H
6ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。C
3H
6ガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ1と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、C
3H
6ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する炭素含有層の形成が容易となる。
【0098】
このとき、処理室201内に流しているガスは熱的に活性化されたC
3H
6ガスであり、処理室201内にはDCSガスは流していない。したがって、C
3H
6ガスは気相反応を起こすことはなく、活性化された状態でウエハ200に対して供給され、このとき、
図9(b)に示すように、ステップ1でウエハ200上に形成されたシリコン含有層の上に1原子層未満の炭素含有層、すなわち不連続な炭素含有層が形成される。これによりシリコン(第1元素)および炭素(第2元素)を含む第2の層が形成される。なお、条件によってはシリコン含有層の一部とC
3H
6ガスとが反応して、シリコン含有層が改質(炭化)されてシリコンおよび炭素を含む第2の層が形成される場合もある。
【0099】
シリコン含有層の上に形成する炭素含有層は、炭素層(C層)であってもよいし、C
3H
6の化学吸着層や、C
xH
y(C
3H
6が分解した物質)の化学吸着層であってもよい。ここで、炭素層は炭素により構成される不連続な層とする必要がある。また、C
3H
6やC
xH
yの化学吸着層はC
3H
6分子やC
xH
y分子の不連続な化学吸着層とする必要がある。なお、シリコン含有層の上に形成する炭素含有層を連続的な層とした場合、例えばC
xH
yのシリコン含有層上への吸着状態を飽和状態として、シリコン含有層上にC
xH
yの連続的な化学吸着層を形成した場合、シリコン含有層の表面が全体的にC
xH
yの化学吸着層により覆われることとなる。この場合、第2の層の表面にシリコンが存在しなくなり、後述するステップ3での第2の層の窒化反応が困難となる。窒素はシリコンとは結合するが、炭素とは結合しないからである。後述するステップ3で所望の窒化反応を生じさせるためには、C
xH
yのシリコン含有層上への吸着状態を非飽和状態として、第2の層の表面にシリコンが露出した状態とする必要がある。
【0100】
その後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを閉じて、C
3H
6ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは炭素含有層形成に寄与した後のC
3H
6ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243fは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは炭素含有層形成に寄与した後のC
3H
6ガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0101】
炭素含有ガスとしては、C
3H
6ガス以外に、C
2H
4ガス等を用いてもよい。
【0102】
[ステップ3]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第4ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第4ガス供給管232d内にNH
3ガスを流す。第4ガス供給管232d内を流れたNH
3ガスは、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。流量調整されたNH
3ガスは第4ノズル249dのガス供給孔250dからバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電力を印加しない。これにより、バッファ室237内に供給されたNH
3ガスは熱で活性化されて、ガス供給孔250eから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243hを開き不活性ガス供給管232h内にN
2ガスを流す。N
2ガスはNH
3ガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気
される。
【0103】
NH
3ガスを熱で活性化して流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば50〜3000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241dで制御するNH
3ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。NH
3ガスにウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ1と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。NH
3ガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度では反応しづらいので、処理室201内の圧力を上記のような比較的高い圧力とすることにより熱的に活性化することを可能としている。なお、NH
3ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる
。
【0104】
このとき、処理室201内に流しているガスは熱的に活性化されたNH
3ガスであり、処理室201内にはDCSガスもC
3H
6ガスも流していない。したがって、NH
3ガスは気相反応を起こすことはなく、活性化されたNH
3ガスは、ステップ2でウエハ200上に形成された第2の層としてのシリコンおよび炭素を含む層の一部と反応する。これにより第2の層は窒化されて、シリコン(第1元素)、炭素(第2元素)および窒素(第3元素)を含む第3の層、すなわち、シリコン炭窒化層(SiCN層)へと改質される。
【0105】
このとき、
図9(c)に示すように、第2の層の窒化反応は飽和させないようにする。例えばステップ1で数原子層のシリコン層を形成し、ステップ2で1原子層未満の炭素含有層を形成した場合は、その表面層(表面の1原子層)の一部を窒化させる。すなわち、その表面層のうちの窒化が生じ得る領域(シリコンが露出した領域)の一部もしくは全部を窒化させる。この場合、第2の層の全体を窒化させないように、第2の層の窒化反応が非飽和となる条件下で窒化を行う。なお、条件によっては第2の層の表面層から下の数層を窒化させることもできるが、その表面層だけを窒化させる方が、シリコン炭窒化膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。また、例えばステップ1で1原子層または1原子層未満のシリコン層を形成し、ステップ2で1原子層未満の炭素含有層を形成した場合も、同様にその表面層の一部を窒化させる。この場合も、第2の層の全体を窒化させないように、第2の層の窒化反応が非飽和となる条件下で窒化を行う。
【0106】
その後、第4ガス供給管232dのバルブ243dを閉じて、NH
3ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNH
3ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243hは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNH
3ガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0107】
窒素含有ガスとしては、NH
3ガス以外に、N
2ガス、NF
3ガス、N
3H
8ガス等を用いてもよい。
【0108】
上述したステップ1〜3を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン(第1元素)、炭素(第2元素)および窒素(第3元素)を含む薄膜、すなわち、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0109】
このとき、ステップ2における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つシリコン炭窒化膜を形成する場合のステップ2における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つシリコン炭窒化膜を形成する場合よりも、ステップ2における炭素の供給量を過剰にする(
図10(b)参照)。そしてこのステップ2における炭素の過剰供給により、ステップ3における第2の層の窒化反応が生じ得る領域(シリコンが露出する領域)を縮小させる。すなわち、化学量論的な組成を持つシリコン炭窒化膜を形成する場合よりも、ステップ2で与える炭素原子の数を過剰にし、これにより、ステップ3での第2の層の窒化反応を抑制させる。これにより、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)の組成比を、化学量論的な組成に対し炭素(C)が窒素(N)よりも過剰となるように制御する。
【0110】
なお、
図10の上段の図は、化学量論組成のSiCN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図10の下段の図は、C供給量を過剰にして化学量論組成に対しCの方がNよりも過剰なSiCN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図10の(a)、(b)、(c)は、それぞれステップ1、ステップ2、ステップ3における反応の状態を示している。
【0111】
もしくは、ステップ3における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つシリコン炭窒化膜を形成する場合のステップ3における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つシリコン炭窒化膜を形成する場合よりも、ステップ3における窒素の供給量を不足させる(
図11(c)参照)。そしてこのステップ3における窒素の不足供給により、ステップ3における第2の層の窒化反応を抑えるようにする。すなわち、化学量論的な組成を持つシリコン炭窒化膜を形成する場合よりも、ステップ3で与える窒素原子の数を不足させ、これにより、ステップ3での第2の層の窒化反応を抑制させる。これにより、シリコン炭窒化膜(SiCN膜)の組成比を、化学量論的な組成に対し炭素(C)が窒素(N)よりも過剰となるように制御する。
【0112】
なお、
図11の上段の図は、化学量論組成のSiCN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図11の下段の図は、N供給量を不足させて化学量論組成に対しCの方がNよりも過剰なSiCN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図11の(a)、(b)、(c)は、それぞれステップ1、ステップ2、ステップ3における反応の状態を示している。
【0113】
所定組成を有する所定膜厚のシリコン炭窒化膜を形成する成膜処理がなされると、ガスパージ、不活性ガス置換、大気圧復帰、ボートアンロード、ウエハディスチャージが、第1シーケンスと同様に行われる。
【0114】
なお、ここでは本実施形態の第2シーケンスの具体例として、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、炭素含有ガス、窒素含有ガスを用い、SiCN膜を形成する例について説明したが、本発明は上述の具体例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0115】
例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、窒素含有ガス、酸素含有ガスを用い、シリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、硼素含有ガス、窒素含有ガスを用い、シリコン硼窒化膜(SiBN膜)を形成する場合等にも適用することができる。また例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガスとして硼素含有ガス、炭素含有ガス、窒素含有ガスを用い、ボロン炭窒化層(BCN膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガスとしてアルミニウム含有ガス、硼素含有ガス、窒素含有ガスを用い、アルミニウム硼窒化膜(AlBN膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、炭素含有ガス、酸素含有ガスを用い、シリコン酸炭化層(SiOC膜)を形成する場合等にも適用することができる。さらには、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガスとしてチタン含有ガス、アルミニウム含有ガス、窒素含有ガスを用い、チタンアルミニウム窒化膜(TiAlN膜)を形成する場合や、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、アルミニウム含有ガス、窒素含有ガスを用い、シリコンアルミニウム窒化膜(SiAlN膜)を形成する場合等にも適用することができる。なお、ガス種としては第1シーケンスで例示したガス種と同様なガス種を用いることができる。
【0116】
以上のように、本実施形態の第2シーケンスでは、第1元素としては、例えばシリコン(Si)や硼素(B)等の半導体元素や、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の金属元素を用いることができ、第2元素としては、窒素(N)や硼素(B)や炭素(C)や酸素(O)等の元素の他、アルミニウム(Al)等の金属元素を用いることができ、第3元素としては、窒素(N)や酸素(O)等の元素を用いることができる。
【0117】
(第3シーケンス)
次に、本実施形態の第3シーケンスについて説明する。
図5は、本実施形態の第3シーケンスにおけるガス供給のタイミング図であり、
図12は、本実施形態の第3シーケンスによりウエハ上にシリコン硼炭窒化膜を形成する様子を示す模式図であり、
図13は、本実施形態の第3シーケンスのステップ2において、炭素の供給量を過剰にする様子を示す模式図であり、
図14は、本実施形態の第3シーケンスのステップ4において、窒素の供給量を不足させる様子を示す模式図である。本実施形態の第3シーケンスは、4元素系組成比制御に関するものである。
【0118】
本実施形態の第3シーケンスでは、ウエハ200を収容した処理容器内に第1元素を含むガス(第1元素含有ガス)を供給することで、ウエハ200上に第1元素を含む第1の層を形成する工程と、
処理容器内に第2元素を含むガス(第2元素含有ガス)を供給することで、第1の層の上に第2元素を含む層を形成するか、第1の層を改質して、第1元素および第2元素を含む第2の層を形成する工程と、
処理容器内に第3元素を含むガス(第3元素含有ガス)を供給することで、第2の層の上に第3元素を含む層を形成するか、第2の層を改質して、第1元素、第2元素および第3元素を含む第3の層を形成する工程と、
処理容器内に第4元素を含むガス(第4元素含有ガス)を供給することで、第3の層を改質して第1元素、第2元素、第3元素および第4元素を含む第4の層を形成する工程と、
を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことで、所定膜厚の第1元素、第2元素、第3元素および第4元素を含む薄膜を形成する。
【0119】
その際、第1の層、第2の層、第3の層および第4の層のうちの一つの層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の一つの層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。
または、第1の層、第2の層、第3の層および第4の層のうちの他の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の他の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。
これにより、化学量論的な組成に対し一つの元素の方が他の元素よりも過剰となる組成を有する薄膜を形成する。
【0120】
なお、4元素系の薄膜の場合、化学量論組成は2元素系の薄膜のように1通りではなく、3元素系の薄膜と同様、何通りかある。本実施形態の第3シーケンスでは、そのいずれの化学量論組成とも異なる組成を有する薄膜を形成する。
【0121】
第1の層を形成する工程は、第2シーケンスにおける第1の層を形成する工程と同様である。すなわち、第1の層を形成する工程での処理条件、生じさせる反応、形成する層、形成する層の厚さ、第1元素の例、第1元素含有ガスの例、第1の層の例等は、第2シーケンスにおける第1の層を形成する工程でのそれらと同様である。
【0122】
第2の層を形成する工程は、第2シーケンスにおける第2の層を形成する工程と同様である。すなわち、第2の層を形成する工程での処理条件、ガス活性化方法、生じさせる反応、形成する層、第2元素の例、第2元素含有ガスの例、第2の層の例等は、第2シーケンスにおける第2の層を形成する工程でのそれらと同様である。
【0123】
第3の層を形成する工程では、第3元素含有ガスをプラズマまたは熱で活性化させて供給することで、第2の層の上に1原子層未満から数原子層程度の第3元素を含む層を形成するか、もしくは、第2の層の一部と第3元素含有ガスとを反応させて第2の層を改質する。これにより、第1元素、第2元素および第3元素を含む第3の層を形成する。
【0124】
第2の層の上に第3元素を含む層を形成することで第3の層を形成する場合、第3元素を含む層は、第3元素層であってもよいし、第3元素含有ガスの吸着層であってもよい。第2元素含有ガスの吸着層は、第2元素含有ガスが分解した物質の吸着層をも含む。ここで、第3元素層とは、第3元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む総称である。なお、第3元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、第3元素含有ガスの吸着層とは、第3元素含有ガスや第3元素含有ガスが分解した物質の分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、第3元素を含む層は、第3元素含有ガスや第3元素含有ガスが分解した物質の分子の不連続な化学吸着層、すなわち、1原子層未満の化学吸着層とする方が、薄膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。
【0125】
第2の層を改質することで第3の層を形成する場合の第2の層の改質方法は、第2シーケンスにおける第3の層を形成する工程での第2の層の改質方法と同様である。
【0126】
第3元素含有ガスはプラズマで活性化させて供給してもよいし、熱で活性化させて供給してもよい。
図4は第2元素含有ガスを熱で活性化させて供給する例、すなわち、ソフトな反応を生じさせる例を示している。
【0127】
第4の層を形成する工程では、第4元素含有ガスをプラズマまたは熱で活性化させて供給することで、第3の層を改質して第1元素、第2元素、第3元素および第4元素を含む第4の層を形成する。例えば第3の層を形成する工程で数原子層の第1元素、第2元素および第3元素を含む第3の層を形成した場合は、その表面層の一部と第4元素含有ガスとを反応させてもよいし、その表面層全体と第4元素含有ガスとを反応させてもよい。また、数原子層の第1元素、第2元素および第3元素を含む第3の層の表面層から下の数層と第4元素含有ガスとを反応させてもよい。ただし、第3の層が第1元素、第2元素および第3元素を含む数原子層の層で構成される場合は、その表面層だけを改質する方が、薄膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。なお、第4元素としては、それ単独では固体とはならない元素を用いるのがよい。第4元素含有ガスはプラズマで活性化させて供給してもよいし、熱で活性化させて供給してもよい。
図5は第4元素含有ガスを熱で活性化させて供給する例、すなわち、ソフトな反応を生じさせて、改質をソフトに行う例を示している。
【0128】
薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第1元素の方が第2元素よりも過剰となるように制御する方法等は、第1シーケンスや第2シーケンスの方法と同様である。
【0129】
薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第2元素の方が第3元素よりも過剰となるように制御する方法や、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第3元素の方が第2元素よりも過剰となるように制御する方法等は、第2シーケンスの方法と同様である。
【0130】
薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第2元素や第3元素の方が第4元素よりも過剰となるように制御する場合や、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第4元素の方が第2元素や第3元素よりも過剰となるように制御する場合は、いずれか1つの元素を基準として組成比制御を行う。
【0131】
例えば、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第2元素の方が第4元素よりも過剰となるように制御する場合、第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第2の層を形成する工程における第2元素の供給量を過剰にする。そしてこの第2の層を形成する工程における第2元素の過剰供給により、第4の層を形成する工程における第3の層の改質反応が生じ得る領域を縮小させる。すなわち、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第2の層を形成する工程で与える第2元素の原子の数を過剰にし、これにより、第4の層を形成する工程での第3の層の改質反応を抑制させる。
【0132】
もしくは、第4の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第4の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第4の層を形成する工程における第4元素の供給量を不足させる。そしてこの第4の層を形成する工程における第4元素の不足供給により、第4の層を形成する工程における第3の層の改質反応を抑えるようにする。すなわち、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第4の層を形成する工程で与える第4元素の原子の数を不足させ、これにより、第4の層を形成する工程での第3の層の改質反応を抑制させる。
【0133】
また例えば、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第4元素の方が第2元素よりも過剰となるように制御する場合、第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第2の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合よりも、第2の層を形成する工程における第2元素の供給量を不足させる。そしてこの第2の層を形成する工程における第2元素の不足供給により、第2元素を含む層が形成される領域を縮小させるか、第1の層の改質反応を抑制させる。この結果、化学量論的な組成に対し第4元素の方が第2元素よりも相対的に過剰となる。
【0134】
なお、第2の層を形成する工程において第2元素の供給量を不足させると、第4の層を形成する工程において第3の層の改質反応が生じ得る領域が拡大することとなる。このとき、第4の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つ薄膜を形成する場合の第4の層を形成する工程における処理容器内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くすることで、第4の層を形成する工程における第4元素の供給量を過剰にすることができ、化学量論的な組成に対し第4元素の方が第2元素よりも、より一層過剰となるように制御することができる。すなわち、第2の層を形成する工程における第2元素の不足供給と、第4の層を形成する工程における第4元素の過剰供給と、のコンビネーションにより、第4の層を形成する工程における第3の層の改質反応を促進させることができようになり、薄膜の組成比を、化学量論的な組成に対し第4元素の方が第2元素よりも、より一層過剰となるように制御することができるようになる。
【0135】
以下、本実施形態の第3シーケンスを具体的に説明する。なお、ここでは、第1元素をシリコン(Si)、第2元素を炭素(C)、第3元素を硼素(B)、第4元素を窒素(N)とし、第1元素含有ガスとしてシリコン含有ガスであるDCSガスを、第2元素含有ガスとして炭素含有ガスであるC
3H
6ガスを、第3元素含有ガスとして硼素含有ガスであるBCl
3ガスを、第4元素含有ガスとして窒素含有ガスであるNH
3ガスを用い、
図5のシーケンスにより、基板上に絶縁膜としてシリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)を形成する例について説明する。また、ここでは、シリコン硼炭窒化膜の組成比を、化学量論的な組成に対し炭素(C)が窒素(N)よりも過剰となるように制御する例について説明する。なお、この例では、第1ガス供給系によりシリコン含有ガス供給系(第1元素含有ガス供給系)が構成され、第2ガス供給系により炭素含有ガス供給系(第2元素含有ガス供給系)が構成され、第3ガス供給系により硼素含有ガス供給系(第3元素含有ガス供給系)が構成され、第4ガス供給系により窒素含有ガス供給系(第4元素含有ガス供給系)が構成される。
【0136】
ウエハチャージ、ボートロード、圧力調整、温度調整、ウエハ回転までは、第2シーケンスと同様に行う。その後、後述する4つのステップを順次実行する。
【0137】
[ステップ1]
ステップ1は第2シーケンスのステップ1と同様に行う。すなわち、ステップ1での処理条件、生じさせる反応、形成する層、形成する層の厚さ、第1元素の例、第1元素含有ガスの例、第1の層の例等は、第2シーケンスにおけるステップ1でのそれらと同様である(
図12(a)参照)。
【0138】
[ステップ2]
ステップ2は第2シーケンスのステップ2と同様に行う。すなわち、ステップ2での処理条件、ガス活性化方法、生じさせる反応、形成する層、第2元素の例、第2元素含有ガスの例、第2の層の例等は、第2シーケンスにおけるステップ2でのそれらと同様である(
図12(b)参照)。
【0139】
[ステップ3]
ステップ2が終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、第3ガス供給管232cのバルブ243cを開き、第3ガス供給管232c内にBCl
3ガスを流す。第3ガス供給管232c内を流れたBCl
3ガスは、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたBCl
3ガスは第3ノズル249cのガス供給孔250cから処理室201内へ供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243gを開き、不活性ガス供給管232g内にN
2ガスを流す。N
2ガスはBCl
3ガスと一緒に処理室201内へ供給されつつガス排気管231から排気される。
【0140】
このときAPCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば50〜3000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241cで制御するBCl
3ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。BCl
3ガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ1と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、BCl
3ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する硼素含有層の形成が容易になる。
【0141】
このとき、処理室201内に流しているガスは熱的に活性化されたBCl
3ガスであり、処理室201内にはDCSガスもC
3H
6ガスも流していない。したがって、BCl
3ガスは気相反応を起こすことはなく、活性化された状態でウエハ200に対して供給され、このとき、
図12(c)に示すように、ステップ2でウエハ200上に形成された第2の層としてのシリコンおよび炭素を含む層の上に1原子層未満の硼素含有層、すなわち不連続な硼素含有層が形成される。これによりシリコン(第1元素)、炭素(第2元素)および硼素(第3元素)を含む第3の層が形成される。なお、条件によっては第2の層の一部とBCl
3ガスとが反応して、第2の層が改質(硼化)されてシリコン、炭素および硼素を含む第3の層が形成される場合もある。
【0142】
第2の層の上に形成する硼素含有層は、硼素層(B層)であってもよいし、BCl
3の化学吸着層や、B
xCl
y(BCl
3が分解した物質)の化学吸着層であってもよい。ここで、硼素はシリコンとは結合するが、炭素とは結合しないので、硼素層は硼素により構成される不連続な層となり、BCl
3やB
xCl
yの化学吸着層はBCl
3分子やB
xCl
y分子の不連続な化学吸着層となる。
【0143】
その後、第3ガス供給管232cのバルブ243cを閉じて、BCl
3ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは硼素含有層形成に寄与した後のBCl
3ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243gは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは硼素含有層形成に寄与した後のBCl
3ガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0144】
硼素含有ガスとしては、BCl
3ガス以外に、B
2H
6ガス等を用いてもよい。
【0145】
[ステップ4]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第4ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第4ガス供給管232d内にNH
3ガスを流す。第4ガス供給管232d内を流れたNH
3ガスは、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。流量調整されたNH
3ガスは第4ノズル249dのガス供給孔250dからバッファ室237内に供給される。このとき、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電力を印加しない。これにより、バッファ室237内に供給されたNH
3ガスは熱で活性化されて、ガス供給孔250eから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。この時同時にバルブ243hを開き不活性ガス供給管232h内にN
2ガスを流す。N
2ガスはNH
3ガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気
される。
【0146】
NH
3ガスを熱で活性化して流すときは、APCバルブ244を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば50〜3000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241dで制御するNH
3ガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。NH
3ガスにウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば2〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ1と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。NH
3ガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度では反応しづらいので、処理室201内の圧力を上記のような比較的高い圧力とすることにより熱的に活性化することを可能としている。なお、NH
3ガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる
。
【0147】
このとき、処理室201内に流しているガスは熱的に活性化されたNH
3ガスであり、処理室201内にはDCSガスもC
3H
6ガスもBCl
3ガスも流していない。したがって、NH
3ガスは気相反応を起こすことはなく、活性化されたNH
3ガスは、ステップ3でウエハ200上に形成された第3の層としてのシリコン、炭素、および硼素を含む層の一部と反応する。これにより第3の層は窒化されて、シリコン(第1元素)、炭素(第2元素)、硼素(第3元素)および窒素(第4元素)を含む第4の層、すなわち、シリコン硼炭窒化層(SiBCN層)へと改質される。
【0148】
このとき、
図12(d)に示すように、第3の層の窒化反応は飽和させないようにする。例えばステップ1で数原子層のシリコン層を形成し、ステップ2で1原子層未満の炭素含有層を形成し、ステップ3で1原子層未満の硼素含有層を形成した場合は、その表面層(表面の1原子層)の一部を窒化させる。すなわち、その表面層のうちの窒化が生じ得る領域(シリコンが露出した領域)の一部もしくは全部を窒化させる。この場合、第3の層の全体を窒化させないように、第3の層の窒化反応が非飽和となる条件下で窒化を行う。なお、条件によっては第3の層の表面層から下の数層を窒化させることもできるが、その表面層だけを窒化させる方が、シリコン硼炭窒化膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。また、例えばステップ1で1原子層または1原子層未満のシリコン層を形成し、ステップ2で1原子層未満の炭素含有層を形成し、ステップ3で1原子層未満の硼素含有層を形成した場合も、同様にその表面層の一部を窒化させる。この場合も、第3の層の全体を窒化させないように、第3の層の窒化反応が非飽和となる条件下で窒化を行う。
【0149】
その後、第4ガス供給管232dのバルブ243dを閉じて、NH
3ガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNH
3ガスを処理室201内から排除する。なお、この時バルブ243hは開いたままとして、N
2ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNH
3ガスを処理室201内から排除する効果を高める。
【0150】
窒素含有ガスとしては、NH
3ガス以外に、N
2ガス、NF
3ガス、N
3H
8ガス等を用いてもよい。
【0151】
上述したステップ1〜4を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン(第1元素)、炭素(第2元素)、硼素(第3元素)および窒素(第4元素)を含む薄膜、すなわち、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0152】
このとき、ステップ2における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つシリコン硼炭窒化膜を形成する場合のステップ2における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも大きく、または、長くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つシリコン硼炭窒化膜を形成する場合よりも、ステップ2における炭素の供給量を過剰にする(
図13(b)参照)。そしてこのステップ2における炭素の過剰供給により、ステップ4における第3の層の窒化反応が生じ得る領域(シリコンが露出する領域)を縮小させる。すなわち、化学量論的な組成を持つシリコン硼炭窒化膜を形成する場合よりも、ステップ2で与える炭素原子の数を過剰にし、これにより、ステップ4での第3の層の窒化反応を抑制させる。これにより、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)の組成比を、化学量論的な組成に対し炭素(C)が窒素(N)よりも過剰となるように制御する。
【0153】
なお、
図13の上段の図は、化学量論組成のSiBCN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図13の下段の図は、C供給量を過剰にして化学量論組成に対しCの方がNよりも過剰なSiBCN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図13の(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれステップ1、ステップ2、ステップ3、ステップ4における反応の状態を示している。
【0154】
もしくは、ステップ4における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を、化学量論的な組成を持つシリコン硼炭窒化膜を形成する場合のステップ4における処理室201内の圧力、または、圧力およびガス供給時間よりも小さく、または、短くする。このように処理条件を制御することで、化学量論的な組成を持つシリコン硼炭窒化膜を形成する場合よりも、ステップ4における窒素の供給量を不足させる。そしてこのステップ4における窒素の不足供給により、ステップ4における第3の層の窒化反応を抑えるようにする。すなわち、化学量論的な組成を持つシリコン硼炭窒化膜を形成する場合よりも、ステップ4で与える窒素原子の数を不足させ、これにより、ステップ4での第3の層の窒化反応を抑制させる。これにより、シリコン硼炭窒化膜(SiBCN膜)の組成比を、化学量論的な組成に対し炭素(C)が窒素(N)よりも過剰となるように制御する。
【0155】
なお、
図14の上段の図は、化学量論組成のSiBCN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図14の下段の図は、N供給量を不足させて化学量論組成に対しCの方がNよりも過剰なSiBCN膜を形成する過程における各ステップでの反応の状態を示すウエハ断面の一部の模式図である。
図14の(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれステップ1、ステップ2、ステップ3、ステップ4における反応の状態を示している。
【0156】
所定組成を有する所定膜厚のシリコン硼炭窒化膜を形成する成膜処理がなされると、ガスパージ、不活性ガス置換、大気圧復帰、ボートアンロード、ウエハディスチャージが、第2シーケンスと同様に行われる。
【0157】
なお、ここでは本実施形態の第3シーケンスの具体例として、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガス、第4元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、炭素含有ガス、硼素含有ガス、窒素含有ガスを用い、SiBCN膜を形成する例について説明したが、本発明は上述の具体例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0158】
例えば、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガス、第4元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、炭素含有ガス、酸素含有ガス、窒素含有ガスを用い、SiOCN膜を形成する場合等にも適用することができる。この場合、第3元素含有ガス、第4元素含有ガスとして、それぞれ窒素含有ガス、酸素含有ガスを用いるようにしてもよい。さらには、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガス、第4元素含有ガスとしてシリコン含有ガス、アルミニウム含有ガス、チタン含有ガス、窒素含有ガスを用い、SiAlTiN膜を形成する場合等にも適用することができる。更には、第1元素含有ガス、第2元素含有ガス、第3元素含有ガス、第4元素含有ガスとして、シリコン含有ガス、炭素含有ガス、シリコン含有ガス、窒素含有ガスを用い、SiCN膜を形成する場合等、3元素系の薄膜を形成する場合にも適用することができる。このように、例えば第1元素含有ガスと第3元素含有ガスとを同じガスとすることで、第3シーケンスを3元素系薄膜の形成に適用することもできる。なお、ガス種としては第1シーケンスで例示したガス種と同様なガス種を用いることができる。
【0159】
本実施形態の第3シーケンスでは、第1元素としては、例えばシリコン(Si)や硼素(B)等の半導体元素や、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の金属元素を用いることができ、第2元素、第3元素としては、窒素(N)や硼素(B)や炭素(C)や酸素(O)等の元素の他、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)等の金属元素を用いることができ、第4元素としては、窒素(N)や酸素(O)等の元素を用いることができる。
【0160】
ところで、従来のCVD法の場合、形成する薄膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを同時に供給する。この場合、形成する薄膜の組成比を制御するには、例えばガス供給時のガス供給流量比を制御することが考えられる。なお、この場合にガス供給時の基板温度、処理室内圧力、ガス供給時間などの供給条件を制御しても形成する薄膜の組成比を制御することはできない。
【0161】
また、ALD法の場合、形成する薄膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを交互に供給する。この場合、形成する薄膜の組成比を制御するには、例えば各ガス供給時のガス供給流量、ガス供給時間を制御することが考えられる。なお、ALD法の場合、原料ガスの供給は、原料ガスの基板表面上への吸着飽和を目的としているため、処理室内の圧力制御が必要ではない。すなわち原料ガスの吸着飽和は、反応温度に対して原料ガスが吸着する所定圧力以下で生じ、処理室内の圧力をその所定圧力以下としさえすれば、どのような圧力値としても原料ガスの吸着飽和を実現できる。そのため通常、ALD法により成膜する場合、処理室内の圧力はガス供給量に対する基板処理装置の排気能力に任せた圧力となっている。処理室内圧力を変化させるようにする場合、原料ガスの基板表面上への化学吸着を阻害したり、CVD反応に近づくことも考えられ、ALD法による成膜を適切に行うことができなくなる。またALD法により所定の膜厚の薄膜を形成するためにはALD反応(吸着飽和,表面反応)を繰り返し行うため、それぞれのALD反応が飽和するまでそれぞれのALD反応を十分に行わなければ、堆積が不十分となり、十分な堆積速度が得られなくなってしまうことも考えられる。よって、ALD法の場合、処理室内の圧力制御により薄膜の組成比を制御することは考えにくい。
【0162】
これに対し、本実施形態では、第1シーケンス、第2シーケンス、第3シーケンスのいずれのシーケンスにおいても、CVD反応が生じる条件下で、形成する薄膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスを、交互に供給して、各ステップにおける処理室内の圧力、または、圧力およびガス供給時間を制御することにより、薄膜の組成比を制御するようにしている。
【0163】
各ステップにおける処理室内の圧力を制御することにより、薄膜の組成比を制御する場合、異なる基板処理装置間での機差の影響を少なくすることができる。すなわち、異なる基板処理装置間でも、同様な制御により、同様に薄膜の組成比を制御することが可能となる。この場合に、各ステップにおけるガス供給時間をも制御するようにすれば、薄膜の組成比を微調整でき、薄膜の組成比制御の制御性を上げることができる。また、各ステップにおける処理室内の圧力を制御することにより、成膜レートを上げつつ、薄膜の組成比を制御することも可能となる。すなわち、処理室内の圧力を制御することにより、例えば各シーケンスにおけるステップ1で形成するシリコン含有層の成長レートを上げつつ、薄膜の組成比を制御することも可能となる。このように、本実施形態によれば、異なる基板処理装置間でも、同様な制御により、同様に薄膜の組成比を制御できるだけでなく、薄膜の組成比制御の制御性を上げることもでき、さらには成膜レート、すなわち生産性を向上させることもできる。
【0164】
一方、例えばALD法による成膜において、各ステップにおけるガス供給流量やガス供給時間を制御することにより、薄膜の組成比を制御する場合、異なる基板処理装置間での機差の影響が大きくなる。すなわち、異なる基板処理装置間で、同様な制御を行っても、同様に薄膜の組成比を制御することができなくなる。例えば、異なる基板処理装置間で、ガス供給流量、ガス供給時間を同じ流量値、時間に設定した場合であっても、機差により処理室内の圧力は同じ圧力値にはならない。よって、この場合、処理室内の圧力が基板処理装置毎に変わり、所望の組成比制御を異なる基板処理装置間で同様に行うことができなくなる。さらには、処理室内の圧力が基板処理装置毎に変わることで、原料ガスの基板表面上への化学吸着を阻害したり、CVD反応に近づくことも考えられ、ALD法による成膜を適切に行うことができなくなる場合もある。
【実施例】
【0165】
(第1実施例)
次に第1実施例について説明する。
第1元素をシリコン(Si)とし、第2元素を窒素(N)とし、本実施形態の第1シーケンスにより組成比を制御しつつシリコン窒化膜(SiN膜)を形成し、その組成比を測定した。第1元素含有ガスとしてはDCSガスを、第2元素含有ガスとしてはNH
3ガスを用いた。組成比制御は、組成比を制御する因子である、圧力またはガス供給時間(照射時間)を調整することで行った。なお、圧力が大きい(高い)ほど、またガス供給時間が長いほど反応が高くなり、その工程で形成される層が厚くなる。すなわちその工程で与えられる物質の量(原子の数)が多くなる。ただし、吸着や反応に飽和するような反応種を用いる場合、例えば1原子層以上に厚くならない場合もある。
【0166】
まず、基本となる化学量論的な組成(N/Si≒1.33)を持つシリコン窒化膜(Si
3N
4膜)をウエハ上に形成した。そのときの処理条件は次のように設定した。
【0167】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:532Pa(4Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:24秒
【0168】
この処理条件を基準とし、各処理条件を調整することで組成比がN/Si≒1であるシリコン窒化膜(Si
4N
4膜)の形成を試みた。
【0169】
結果、第1ステップにおけるDCSガス照射時間を12秒から48秒とすることで、シリコン比率の高いSi
4N
4膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、第1ステップにおけるDCSガス照射時間を基準の処理条件よりも長くすることで、シリコン比率の高いSi
4N
4膜の形成が可能となることを確認した。なお、第1ステップにおけるDCSガス照射時間以外の処理条件は、基準の処理条件と同一とした。すなわち、そのときの処理条件は次のように設定した。
【0170】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:48秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:532Pa(4Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:24秒
【0171】
また、第1ステップにおける処理室内圧力を133Pa(1Torr)から266Pa(2Torr)とすることでも、シリコン比率の高いSi
4N
4膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、第1ステップにおける処理室内圧力を基準の処理条件よりも高くすることでも、シリコン比率の高いSi
4N
4膜の形成が可能となることを確認した。なお、第1ステップにおける処理室内圧力以外の処理条件は、基準の処理条件と同一とした。すなわち、そのときの処理条件は次のように設定した。
【0172】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:266Pa(2Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:532Pa(4Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:24秒
【0173】
また、第2ステップにおけるNH
3ガス照射時間を24秒から6秒とすることでも、窒素比率が下がり、相対的にシリコン比率の高いSi
4N
4膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、第2ステップにおけるNH
3ガス照射時間を基準の処理条件よりも短くすることでもシリコン比率の高いSi
4N
4膜の形成が可能となることを確認した。なお、NH
3ガス照射時間以外の処理条件は、基準の処理条件と同一とした。すなわち、そのときの処理条件は次のように設定した。
【0174】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:532Pa(4Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:6秒
【0175】
また、第2ステップにおける処理室内圧力を532Pa(4Torr)から133Pa(1Torr)とすることでも、同様にシリコン比率の高いSi
4N
4膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、第2ステップにおける処理室内圧力を基準の処理条件よりも低くすることでも、シリコン比率の高いSi
4N
4膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、そのときの処理条件は次のように設定した。
【0176】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:24秒
【0177】
本実施例のように、シリコン窒化膜のSi/N組成比を変えることにより、膜特性として電荷密度を制御することができ、このような制御がなされて得られたシリコン窒化膜は、フラッシュメモリーの電荷トラップ膜として使用することができる。また、本実施例のように、シリコン窒化膜のSi/N組成比を変えることにより、光学的な屈折率や吸収係数を制御することができ、このような制御がなされて得られたシリコン窒化膜は、リソグラフィー工程での反射防止膜として使用することもできる。
【0178】
(第2実施例)
次に第2実施例について説明する。
第1元素をシリコン(Si)とし、第2元素を炭素(C)とし、第3元素を窒素(N)とし、本実施形態の第2シーケンスにより組成比を制御しつつシリコン炭窒化膜(SiCN膜)を形成し、その組成比を測定した。第1元素含有ガスとしてはDCSガスを、第2元素含有ガスとしてはC
3H
6ガスを、第3元素含有ガスとしてはNH
3ガスを用いた。組成比制御は、組成比を制御する因子である、圧力またはガス供給時間(照射時間)を調整することで行った。なお、2元素系組成比制御と同様、3元素系組成比制御においても、圧力が大きい(高い)ほど、また、ガス供給時間が長いほど反応が高くなり、その工程で形成される層が厚くなる。すなわちその工程で与えられる原子の数が多くなる。ただし、吸着や反応に飽和するような反応種を用いる場合、例えば1原子層以上に厚くならない場合もある。
【0179】
まず、基本となる組成を持つ炭素濃度が8atoms%のシリコン炭窒化膜をウエハ上に形成した。そのときの処理条件は次のように設定した。
【0180】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
C
3H
6ガス供給流量:1slm
C
3H
6ガス照射時間:8秒
(第3ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:931Pa(7Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:18秒
【0181】
この処理条件を基準とし、各処理条件を調整することで炭素濃度が16atoms%のシリコン炭窒化膜(SiCN膜)の形成を試みた。
【0182】
結果、第2ステップにおけるC
3H
6ガス照射時間を8秒から16秒とすることで、炭素比率の高いSiCN膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、第2ステップにおけるC
3H
6ガス照射時間を基準の処理条件よりも長くすることで、炭素比率の高いSiCN膜の形成が可能となることを確認した。また、炭素濃度が上昇した分、窒素濃度が減少していることも確認した。なお、第2ステップにおけるC
3H
6ガス照射時間以外の処理条件は、基準の処理条件と同一とした。すなわち、そのときの処理条件は次のように設定した。
【0183】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
C
3H
6ガス供給流量:1slm
C
3H
6ガス照射時間:16秒
(第3ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:931Pa(7Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:18秒
【0184】
また、第2ステップにおける処理室内圧力を133Pa(1Torr)から266Pa(2Torr)とすることでも、炭素比率の高いSiCN膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、第2ステップにおける処理室内圧力を基準の処理条件よりも高くすることでも、炭素比率の高いSiCN膜の形成が可能となることを確認した。また、炭素濃度が上昇した分、窒素濃度が減少していることも確認した。なお、第2ステップにおける処理室内圧力以外の処理条件は、基準の処理条件と同一とした。すなわち、そのときの処理条件は次のように設定した。
【0185】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:266Pa(2Torr)
C
3H
6ガス供給流量:1slm
C
3H
6ガス照射時間:8秒
(第3ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:931Pa(7Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:18秒
【0186】
また、第3ステップにおけるNH
3ガス照射時間を18秒から6秒とすることでも、窒素比率が下がり、相対的に炭素比率の高いSiCN膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、第3ステップにおけるNH
3ガス照射時間を基準の処理条件よりも短くすることでも炭素比率の高いSiCN膜の形成が可能となることを確認した。なお、NH
3ガス照射時間以外の処理条件は、基準の処理条件と同一とした。すなわち、そのときの処理条件は次のように設定した。
【0187】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
C
3H
6ガス供給流量:1slm
C
3H
6ガス照射時間:8秒
(第3ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:931Pa(7Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:6秒
【0188】
また、第3ステップにおける処理室内圧力を931Pa(7Torr)から266Pa(2Torr)とすることでも、同様に炭素比率の高いSiCN膜の形成が可能となることを確認した。すなわち、第3ステップにおける処理室内圧力を基準の処理条件よりも低くすることでも、炭素比率の高いSiCN膜の形成が可能となることを確認した。なお、処理室内圧力以外の処理条件は、基準の処理条件と同一とした。すなわち、そのときの処理条件は次のように設定した。
【0189】
(第1ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
DCSガス供給流量:1slm
DCSガス照射時間:12秒
(第2ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:133Pa(1Torr)
C
3H
6ガス供給流量:1slm
C
3H
6ガス照射時間:8秒
(第3ステップ)
処理室内温度:630℃
処理室内圧力:266Pa(2Torr)
NH
3ガス供給流量:9slm
NH
3ガス照射時間:18秒
【0190】
本実施例のように、シリコン炭窒化膜のC/N組成比を変えることにより、膜特性としてエッチング耐性を向上させることができ、このようにして得られたシリコン炭窒化膜は、エッチングストッパー膜として使用することができる。
【0191】
なお、第1元素をシリコン(Si)とし、第2元素を酸素(O)とし、第3元素を窒素(N)とし、本実施形態の第2シーケンスにより組成比を制御しつつシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成する場合、シリコン酸窒化膜のO/N組成比を変えることにより、Si
3N
4膜よりも低い誘電率で、且つSiO
2膜よりもエッチング耐性を向上させることができるなど、幅広い用途が見込まれている。