【実施例】
【0029】
図1は、所謂シフト研削やクリップフィード研削と称される連続創成式歯車研削を水溶性研削液GF(
図2参照)を用いて行なう連続創成式歯車研削盤10の一例の要部構成を説明する斜視図である。
【0030】
連続創成式歯車研削盤10は、歯車素材BLに形成する外周歯と同じ断面形状を有する歯が螺旋状に連ねられたねじ状の高気孔率で多孔質のビトリファイド砥石12を、たとえば水平方向のY軸に平行な軸心Cyまわりに回転可能に、そのY軸に平行な軸心C方向すなわちシフト方向に歯車素材BLに対して相対移動可能に、Y軸に直交するZ軸方向に平行なアキシャル送り方向に歯車素材BLに対して相対移動可能に、且つ、Y軸およびZ軸に直交するX軸方向に平行な切込み方向に歯車素材BLに対して相対移動可能に備えている。また、連続創成式歯車研削盤10は、Z軸に平行な軸心Czまわりに回転可能に歯車素材BLを保持している。
【0031】
具体的には、連続創成式歯車研削盤10は、基台14上に固定されたX軸方向案内部材16によりX軸方向に案内され、X軸位置決めモータ18によりX軸方向に位置決めされるX軸テーブル20と、基台14から立設された支持壁22に固定されたZ軸方向案内部材24によりZ軸方向に案内され、Z軸位置決めモータ26によりZ軸方向に位置決めされるZ軸テーブル28と、Z軸テーブル28に形成されたY軸方向案内溝30によりY軸方向に案内され、Y軸位置決めモータ32によりY軸方向に位置決めされるY軸テーブル34と、上記X軸テーブル20上に固設されて歯車素材BLを回転可能に支持し、歯車素材BLをその軸心Czまわりに回転駆動するワーク駆動モータ36を有するワーク回転駆動装置38と、上記Y軸テーブル34上に固設されてビトリファイド砥石12を回転可能に支持し、ビトリファイド砥石12をその軸心Cyまわりに回転駆動する砥石駆動モータ40を有する砥石回転駆動装置42とを、備えている。
【0032】
図2に詳しく示すように、連続創成式歯車研削盤10は、ねじ状の高気孔率で多孔質のビトリファイド砥石12を用いて、歯車素材BLの外周面に連続創成式歯車研削を施す。すなわち、連続創成式歯車研削盤10は、予め記憶されたプログラムに従ってX軸位置決めモータ18、Z軸位置決めモータ26、Y軸位置決めモータ32によりX軸テーブル20、Z軸テーブル28、Y軸テーブル34を駆動することにより、ビトリファイド砥石12を軸心Cyまわりに回転させつつ軸心Cy方向すなわちシフト方向へ送りながら、ワークである歯車素材BLの軸心Czに平行なZ軸方向すなわちアキシャル方向へ所定の研削ストロークで往復研削送りを行ないつつ、それに同期して歯車素材BLをその軸心Czまわりに順次回転させることで、クーラントノズル50から幅広く供給される水溶性研削液GFの存在下で、常に新しい研削面すなわち常に新しい砥粒で歯車素材BLの外周面に斜歯或いは直歯の研削加工を行うようにして、ビトリファイド砥石12の砥石磨耗を抑制し、安定した精度且つ高い加工能率で、歯車素材BLの外周面に連続創成式歯車研削を施す。
【0033】
ビトリファイド砥石12は、熔融アルミナ質砥粒(アランダム)などの比較的細かな一般砥粒がガラス質のビトリファイドボンドにより結合されて成る、多孔質のビトリファイド砥石組織を備えている。このビトリファイド砥石12は、後述するように、45体積%以下の砥粒率を有する高気孔率のビトリファイド砥石である。
【0034】
上記砥粒は、日本工業規格(JIS)「R 6001」或いは国際標準化機構(ISO)「8486−1」のマクログリッドでたとえばF120乃至F180の粒度、すなわち80〜125μm程度の平均砥粒径を有するものであり、たとえば40〜44体積%の割合で上記多孔質のビトリファイド砥石組織を構成している。また、ビトリファイドボンドは、たとえば7〜12体積%の割合で上記多孔質のビトリファイド砥石組織を構成している。そして、残部の気孔は、たとえば47〜50体積%の割合で上記多孔質のビトリファイド砥石組織内に形成されている。
【0035】
ビトリファイドボンドは、たとえばよく知られた珪酸ガラス、棚珪酸ガラス或いは結晶化ガラスから構成される。上記ビトリファイドボンドとして好ましいガラス組成は、たとえば、SiO
2が40〜70重量%、Al
2O
3が10〜20重量%、B
2O
3が0〜20重量%、ROやR
2Oなどのアルカリ土類金属の酸化物が2〜10重量%である。
【0036】
図3は、ビトリファイド砥石12の製造工程を説明する工程図である。
図3において、先ず、原料調合攪拌工程P1では、ビトリファイド砥石12の砥石原料が用意される。たとえば、F120乃至F180(平均粒径Dが80〜125μm)の粒度を有し、アルミナ砥粒として知られるAl
2O
3系などの一般砥粒と、ZrO
2−B
2O
3系、B
2O
3−Al
2O
3−SiO
2系、R
2O−Al
2O
3−SiO
2系などのガラス質のビトリファイドボンド(無機結合剤)と、成形時においてある程度の相互粘結力を発生させるためのデキストリンやカルボキシルメチルセルロースなどの成形用有機バインダ(粘結剤或いは糊量)などの成形助剤と、平均粒径Pが砥粒の平均粒径Dの等倍よりも小さい径を有する気孔形成材とを、予め設定された割合で秤量して、それぞれ混合し、砥石原料を用意する。表1は、原料調合攪拌工程P1における砥石原料の調合割合の一例を示している。
【0037】
【表1】
【0038】
上記気孔形成材は、後述の焼成工程P4における焼成処理後にビトリファイド砥石組織内で実質的に気孔(空間)を人工的或いは積極的に形成させる材質、たとえば中空或いは中実のナフタリン、DMT、アルミナバルーン(アルミナ中空体)、胡桃の粉体、ポリスチレン、架橋アクリルなどである。
【0039】
成型工程P2では、所定の成形金型の成形キャビティ内に上記混合された砥石原料を充填し、プレス装置でその砥石原料を加圧することにより、
図2に示すビトリファイド砥石12と同様の形状の成形体を形成する。次いで、成形体を乾燥する乾燥工程P3を経て、焼成工程P4では、上記成形体をたとえば900〜1050℃の温度で2時間焼成することにより、
図2に示すビトリファイド砥石12が得られる。そして、仕上げ工程P5において寸法仕上げが行なわれ、検査工程P6において製品検査が行なわれる。
【0040】
図4は、評価用コンピュータによるビトリファイド砥石12の組織における均質性を砥粒面積率の度数分布の評価方法を説明する工程図である。
図4において、断面撮像工程P11では、ビトリファイド砥石12の断面が、顕微鏡を通して拡大された状態で撮像された画像が入力される。
【0041】
次いで、画像処理工程P12では、断面撮像工程P11で得られた顕微鏡写真にコンピュータによる画像処理を用いて、その所定の焦点深度位置での画像を二値化処理することにより、白黒の断面画像が生成される。この断面画像において、黒色部分は空間すなわち気孔を示し、白色部分は固形物たとえば砥粒とビトリファイドボンドを示す。
【0042】
続く度数分布図算出工程P13では、上記断面画像が、一辺をたとえば300〜600μmとした桝目で分割される。続いて、各分割領域毎に、白色部分の固形物の面積割合(砥粒面積率)Sg(%)が算出され、その面積割合Sgの大きさを横軸とし、分割領域の累計数を縦軸とする度数分布図が、
図5に示すように作成される。
【0043】
そして、変動係数算出工程P14では、作成された上記度数分布図に示される砥粒面積率の度数分布からその砥粒面積率度数の標準偏差σおよび平均値が算出される。この標準偏差σを平均値で除算して百分率表示したものが変動係数であり、その変動係数が小さいほど、ビトリファイド砥石組織の均質性を評価する評価値が高くされる。
【0044】
なお、上記分割領域の桝目の一辺が300μmより小さいと、F120では一つの桝目内に砥粒が5個以下となる可能性があり、600μmを超えると、F150より細かいものでは、一つの桝目内に30個以上の砥粒が入り込んで標準偏差σが必要以上に小さくなってばらつきを正確に評価できなくなる。精度の高い度数分布図の作成のために断面画像は100以上の分割数が必要であり、より好ましくは200以上の分割が望ましい。
【0045】
以下において、本発明者等が行なった実験例を説明する。まず、
図6の実施例1〜3と比較例1に示す試験砥石を、前述の
図3に示すように作成した。
図6に示す実施例1〜3と比較例1とは、外径300mm×内径150mm×長さ(厚み)125mm、螺旋溝が5条のねじ状の研削砥石であって、アルミナ砥粒、結合度H、組織10を有し、変動係数が17%以下であるビトリファイド砥石である点で、共通している。しかし、比較例1の砥粒の粒度がF80であるのに対して、実施例1〜3の砥粒がF120,F150,F180である点で、相違している。
【0046】
本発明者等は、
図6に示されるように、砥粒の粒度を細かくすることで、変動係数が小さくなることを発見した。一粒あたりの磨減面積を小さくできる上、その発生頻度も均質にできる。次いで、それら実施例1〜3と比較例1の試験砥石を用いて、以下に示す試験条件で連続創成式歯車研削を実施した。
【0047】
〈連続創成式歯車研削試験条件A〉
・研削液:水溶性研削液(試料No.7)
・ワーク
モジュール:2.4
圧力角:17.5
歯数:53
材料:SCM420
硬さ:58(HRC)
・連続創成式歯車研削盤:三菱重工業株式会社製 ZE−24B型
【0048】
【表2】
【0049】
図6は、上記研削試験結果の焼けの評価も示している。上記実施例1〜3の試験砥石では、40個/ドレスの連続研削において焼けの発生がなかったが、比較例1の試験砥石では、16個目に焼けが発生した。
【0050】
図7は、上記研削試験結果の砥石軸負荷を示している。この砥石軸負荷は、切れ味に対応するものであって砥石軸の駆動電力KW(定格電力に対する百分率で示す)であるが、比較例1を100とした場合の相対値を示している。
図7によれば、比較例1の試験砥石に対して、実施例1,2,3の試験砥石では、8〜12%程度負荷が低くなり、切れ味が向上している。
【0051】
図8は、実施例1の試験砥石による40カットまでの加工精度の変化を示している。歯形圧力角誤差、歯形バイアス、歯形丸み、歯すじ角度誤差、クラウニングにおいて、それぞれ十分に規格内の数値が得られ、高精度の歯研加工が得られた。
【0052】
さらに、以下において、本発明者等が行なった実験例を説明する。まず、以下に示す試験砥石を、前述の
図3に示すように作成した。この試験砥石は、外径300mm×内径150mm×長さ(厚み)125mm、螺旋溝が5条のねじ状の研削砥石であって、アルミナ砥粒、粒度F120、結合度H、組織10を有し、変動係数が17%であるビトリファイド砥石である。次いで、上記試験砥石を用いて、以下に示す試験条件で連続創成式歯車研削を実施した。
【0053】
〈連続創成式歯車研削試験条件B〉
・研削液:水溶性研削液(試料No.7)
・ワーク
モジュール:2.12
圧力角:20
歯数:77
材料:SCM20
硬さ:720〜850(HV)
個数:2個
・連続創成式歯車研削盤:三菱重工業株式会社製 ZE−24B型
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
表4は、上記研削試験結果の泡立ち及び焼けの評価も示している。なお、泡立ちは、上記条件でワークを実際に加工せずに空運転(15分間)した後の研削液の貯留タンク内の泡立ち状態を目視して確認した。
【0057】
表4に示したように、試験No.1,7,13においては、研削液の貯留タンク内に泡立ちが発生しなかったものの、焼けを生じるようになってしまった(正確には、加工中に火花が多く発生し、焼けが生じる前に加工を中止)。他方、試験No.6,12,18においては、焼けを生じることがなかったものの、研削液の貯留タンク内に泡立ちを生じ、研削液の液面が低下して研削液の吐出量の低下を引き起こすおそれを生じてしまった。これに対し、試験No.2〜5,8〜11,13〜17においては、泡立ち及び焼けが共に発生しなかった。よって、水溶性研削液を流量150〜200L/min、吐出圧0.6〜3kg/cm
2で供給することにより、泡立ち及び焼けを抑制した研削加工が可能であることを確認できた。
【0058】
前記水溶性研削液GFは、金属加工液組成物の2.5質量%以上の水溶液である。この金属加工液組成物は、砥石表面の洗浄性を高めてビトリファイド砥石の研削面の溶着を防止するための非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類、および砥石表面の潤滑性を高めて砥石磨耗を低減させるための極圧添加剤を含むものである。
【0059】
上記非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類は、好適には、たとえば、多価アルコール型、エステル型、エステル・エーテル型など、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどが付加されたものが挙げられ、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックポリマ、ポリオキシフェニルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが好適に用いられる。
【0060】
また、上記極圧添加剤は、好適には硫黄系、たとえば、硫化鉱油、硫化油脂、硫化エステル、ポリスルフィドなどが用いられる。
【0061】
以下に、本発明者等が行なった、上記金属加工液組成物GFに含まれる非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類および極圧添加剤の含有率とその金属加工液組成物水溶液の分散性との関係を評価する評価試験を説明する。
【0062】
先ず、
図9〜11に示す金属加工液組成物の試料No.1〜24を作成した。試料No.1,9,17には、31質量%の濃度の鉱物油および/またはエステル化合物が含まれるが、非イオン界面活性剤またはポリアルキレングリコール類が含まれていない。試料No.2〜8には、30.8〜6質量の濃度の鉱物油および/またはエステル化合物と、0.2〜25質量%の濃度のポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤とが含まれている。試料No.10〜16には、30.8〜6質量%の濃度の鉱物油および/またはエステル化合物と、0.2〜25質量%の濃度のポリオキシエチレンフェニルエーテル型界面活性剤とが含まれている。試料No.18〜24には、30.8〜6質量%の濃度の鉱物油および/またはエステル化合物と、0.2〜25質量%の濃度のポリオキシプロピレングリコール型界面活性剤とが含まれている。
【0063】
次に、上記各金属加工液組成物の5質量%水溶液(水溶性研削液)を共栓付メスシリンダ内に100ml採り、研削切粉を0.3g添加して上下に軽く振とうし、1時間放置して切粉を試料液になじませる。次いで、上下に振とうして静置し、約1分後の切粉の分散状態を目視で観察する。分散状態は、×(切粉が分散せずに沈降、浮上および壁面に付着し、液が比較的透明)、△(切粉が沈降および浮上するがやや分散)、○(切粉が分散して液が不透明)の3段階で評価した。
【0064】
図9〜11に示すように、試料No.1,2,9,10,17,18の5質量%水溶液は、切粉の分散性が低いが、試料No.3〜8,11〜16,19〜24は良好な分散性が得られた。すなわち、非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類の含有量が金属加工液組成物の0.5〜20質量%の範囲においてその金属加工液組成物の5質量%水溶液である水溶性研削液の良好な分散性が得られた。
【0065】
金属加工液組成物に含まれる非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類は、金属加工液組成物中に0.5〜20質量%含まれ、さらに好適には2〜15質量%含まれる。この非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類は、0.5質量%を下回るとその効果の発現が難しく、20質量%以下であれば他の成分の適切な配合量を確保して潤滑性を確保できるが、20質量%を超えると、そのような配合量を確保することが困難となり、潤滑性を得ることが困難となる。
【0066】
次に、本発明者等は、極圧添加剤の濃度が異なる複数種類の金属加工液組成物につき、その20質量%水溶液を用いて、以下の付着滑り試験条件で砥石の摩擦磨耗試験および付着滑り試験を行うために、先ず、
図12の表に示す金属加工液組成物の試料No.25〜30を作成した。
【0067】
試料No.25〜30には、51〜0質量%の6段階の濃度の鉱物油および/またはエステル化合物が含まれるが、試料No.25には非イオン界面活性剤またはポリアルキレングリコール類および極圧添加剤が含まれていない。試料No.26〜30には、0〜50質量%の5段階の濃度の硫黄系極圧添加剤が含まれている。
【0068】
〈付着滑り試験条件〉
試験機:神鋼造機株式会社製の付着滑り試験機
試験鋼:SPCC−SB
試験鋼球:SUJ−2(球径:3/16インチ)
負荷:4kg
摺動速度:4mm/s
【0069】
次に、各試料の20質量%水溶液(水溶性研削液)を用いて、上記付着滑り試験条件下で一対の試験片を一定の荷重および速度の下で摺動させ、このときの摩擦力を歪ゲージで測定し、摩擦係数を求めた。この摩擦係数が小さい程、水溶性研削液の潤滑性が高く、焼け防止効果が高いと評価される。
【0070】
図12の表に示すように、試料No.25,26の20質量%水溶液(水溶性研削液)は、摩擦係数が高くて潤滑性が低いが、試料No.27〜30の20質量%水溶液(水溶性研削液)は、摩擦係数が低く、高い潤滑性が得られた。すなわち、極圧添加剤の含有量が金属加工液組成物の5〜50質量%の範囲においてその金属加工液組成物の20質量%水溶液(水溶性研削液)では良好な潤滑性が得られた。
【0071】
金属加工液組成物に含まれる極圧添加剤は、5質量%未満ではその効果が発現し難く、50質量%以下であれば、他の成分の適切な配合量を確保し、洗浄性を始めとした他の性能を確保することができるが、50質量%を超えるとそのような配合量を確保することが困難となり、洗浄性などが得られ難くなる。
【0072】
上述のように、本実施例の連続創成式歯車研削方法によれば、気孔が砥粒の間に形成された状態でその砥粒がビトリファイドボンドにより結合されたビトリファイド砥石12であって、その砥粒の粒度はF120乃至F180であることから、ねじ状のビトリファイド砥石12に対する歯車素材(ワーク)BLの接触円弧長さが長く、長い切粉が発生する傾向がある連続創成式歯車研削において、その切粉の長さが短縮されると共に、水溶性研削液を流量150〜200L/min、吐出圧0.6〜3kg/cm
2で供給するので、水溶性研削液の泡立ちを抑制しながらも、切粉の排出性が高くなって切粉がビトリファイド砥石12の表面のチップポケットに目詰まり難くなり、研削焼けが好適に改善される。このため、連続創成式歯車研削において水溶性研削液GFを用いても、不水溶性研削液に劣らない歯車の研削加工性が得られる。
【0073】
また、本実施形態のビトリファイド砥石12は、40〜44体積%の砥粒体積率、より好ましくは42〜44体積%の砥粒体積率を備える高気孔率のビトリファイド砥石12であることから、F120乃至F180という比較的細かな粒度の砥粒を用いるという条件下で、砥粒面積率が適切な値に維持されるので、研削能率が維持されながら、砥石の研削抵抗の増加が防止され、局所的な目詰まりおよび目つぶれと脱落、および被削材の焼けが好適に抑制される高気孔率のビトリファイド砥石12が得られる。砥粒体積率が40体積%を下まわると研削能率が低くなり、砥粒体積率が44体積%を超えると研削抵抗が高くなって焼けが発生し易くなる。
【0074】
また、本実施例のビトリファイド砥石12は、砥石断面における複数個所の単位面積当たりの前記砥粒を含む固形物の割合である砥粒面積率の度数分布図において、その砥粒面積率の標準偏差を砥粒面積率の平均値で除算した変動係数が17以下の値を有する均質性を備える。これにより、高い均質性を有し、砥石の局所的な目詰まりおよび目つぶれと脱落、および被削材の焼けが好適に抑制される高気孔率のビトリファイド砥石12が得られる。
【0075】
また、本実施例のビトリファイド砥石12に含まれる砥粒は、A系(アルミナ系)の多結晶砥粒であるので、歯車の歯面である研削加工面の粗さが小さくなり、歯車の加工品質が高められる。
【0076】
また、本実施例の水溶性研削液GFは、非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類および極圧添加剤を含む金属加工液組成物(水で希釈する前の「原液」、以下特に明記しない場合は同様)が、2.5質量%以上となるように水に希釈されたものである。好適には、2.5〜20質量%水溶液である。水溶性研削液GFはこのように希釈されるので、原液の取り扱いが容易となる。金属加工液組成物が2.5質量%を下まわる場合は、効果を得ることが困難となる。金属加工液組成物が20質量%を上まわる場合はその効果が飽和する。
【0077】
また、本実施例の水溶性研削液GFに含まれる金属加工液組成物は、0.5〜20質量%の非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類を含む。さらに好適には、2〜15質量%の非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類が含まれる。この非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類は、0.5質量%を下回るとその効果の発現が難しくなる。この非イオン界面活性剤および/またはポリアルキレングリコール類は、20質量%以下であれば他の成分の適切な配合量を確保して潤滑性を確保できるが、20質量%を超えると、そのような配合量を確保することが困難となり、潤滑性を得ることが困難となる。
【0078】
また、本実施例の水溶性研削液GFに含まれる金属加工液組成物は、5〜50質量%の極圧添加剤を含む。この極圧添加剤は、5質量%未満ではその効果が発現し難い。また、50質量%以下であれば、他の成分の適切な配合量を確保し、洗浄性を始めとした他の性能を確保することができるが、50質量%を超えるとそのような配合量を確保することが困難となり、洗浄性などが得られ難くなる。
【0079】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0080】
たとえば、前述の実施例で用いられている連続創成式歯車研削盤10は、基台14上に固定されたX軸方向案内部材16によりX軸方向に案内され、X軸位置決めモータ18によりX軸方向に位置決めされるX軸テーブル20と、基台14から立設された支持壁22に固定されたZ軸方向案内部材24によりZ軸方向に案内され、Z軸位置決めモータ26によりZ軸方向に位置決めされるZ軸テーブル28と、Z軸テーブル28に形成されたY軸方向案内溝30によりY軸方向に案内され、Y軸位置決めモータ32によりY軸方向に位置決めされるY軸テーブル34と、上記X軸テーブル20上に固設されて歯車素材BLを回転可能に支持し、歯車素材BLをその軸心Czまわりに回転駆動するワーク駆動モータ36を有するワーク回転駆動装置38と、上記Y軸テーブル34上に固設されてビトリファイド砥石12を回転可能に支持し、ビトリファイド砥石12をその軸心Cyまわりに回転駆動する砥石駆動モータ40を有する砥石回転駆動装置42とを、備えている。
【0081】
しかし、ワーク回転駆動装置38が載置されたX軸テーブル20に替えて、支持壁22をX軸方向に位置決めするX軸テーブルが設けられたり、ビトリファイド砥石12をY軸方向に位置決めするY軸テーブル34に替えて、ワーク回転駆動装置38をY軸方向に位置決めするY軸テーブルが設けられたり、ビトリファイド砥石12をZ軸方向に位置決めするZ軸テーブル28に替えて、ワーク回転駆動装置38をZ軸方向に位置決めするZ軸テーブルが設けられたりしてもよい。
【0082】
要するに、ビトリファイド砥石12を、たとえば水平方向のY軸に平行な軸心Cyまわりに回転可能に、そのY軸に平行な軸心C方向すなわちシフト方向に歯車素材BLに対して相対移動可能に、Y軸に直交するZ軸方向に平行なアキシャル送り方向に歯車素材BLに対して相対移動可能に、且つ、Y軸およびZ軸に直交するX軸方向に平行な切込み方向に歯車素材BLに対して相対移動可能に備えていればよいのである。
【0083】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。