【文献】
ウィリアム・ブルーグマン他,リアルエステート・ファイナンス,日経BP社/斎野亨,2006年 4月10日,第12版(上),p.371-380
【文献】
中央三井アセットマネジメント,この1冊でわかる不動産の証券化 そのしくみと手法,中央公論新社/中村仁,2000年 3月25日,初版,p.150-160,171-180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不動産ノンリコースローンのリスク評価に関するパラメータを算出するローンリスク評価パラメータ算出装置であって、賃料収入算出手段、キャップレート算出手段、適用賃料収入決定手段、キャッシュフロー生成手段、各種テストを実行するテスト手段、及び前記パラメータを算出するパラメータ算出手段からなる演算処理部と、各種情報を格納した情報格納部とを備え、
前記賃料収入算出手段は、前記情報格納部に格納した賃料収入トレンド及び賃料収入ボラティリティーに基づいて賃料収入を算出し、
前記キャップレート算出手段は、前記情報格納部に格納したキャップレートボラティリティーに基づいてキャップレートを算出し、
前記適用賃料収入決定手段は、前記情報格納部に格納した前記不動産ノンリコースローンにかかる対象物件のテナント形態に基づいて、前記リスク評価に関する前記パラメータの算出に適用する適用賃料収入を決定し、
前記キャッシュフロー生成手段は、前記適用賃料収入を用いてキャッシュフローを生成し、
前記テスト手段は、前記キャッシュフロー及び前記キャッシュフローと前記キャップレートから算出される物件価格を用いて各種テストを実行し、
前記パラメータ算出手段は、デフォルト発生時のロス額に基づいて前記パラメータを算出する、ことを特徴とするローンリスク評価パラメータ算出装置。
前記賃料収入算出手段は、前記賃料収入トレンド、前記賃料収入ボラティリティー及び前記賃料収入の変化率がブラウン運動となる標準正規分布に従って発生する確率変数に基づいて前記賃料収入を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載のローンリスク評価パラメータ算出装置。
前記キャップレート算出手段は、前記キャップレートボラティリティー及び前記キャップレートの変化率がブラウン運動となる標準正規分布に従って発生する確率変数に基づいて前記キャップレートを算出する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のローンリスク評価パラメータ算出装置。
前記キャップレート算出手段は、前記キャップレートボラティリティー及び前記キャップレートの変化率がブラウン運動となる標準正規分布に従って発生する確率変数に基づいて前記キャップレートを算出し、
前記賃料収入算出手段は、前記賃料収入トレンド、前記賃料収入ボラティリティー及び前記賃料収入の変化率がブラウン運動となる標準正規分布に従って発生する確率変数に基づいて前記賃料収入を算出し、
前記キャップレートの変化率がブラウン運動となる標準正規分布と前記賃料収入の変化率がブラウン運動となる標準正規分布とは互いに独立している、ことを特徴とする請求項1に記載のローンリスク評価パラメータ算出装置。
算出される前記リスク評価に関するパラメータは、前記不動産ノンリコースローンのモニタリング開始時点から1年間のリスク評価に関するパラメータである、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のローンリスク評価パラメータ算出装置。
前記適用賃料収入決定手段は、前記テナント形態がマルチテナントの場合、前記賃料収入を前記適用賃料収入として決定する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のローンリスク評価パラメータ算出装置。
コンピュータに不動産ノンリコースローンのリスク評価に関するパラメータを算出させるためのローンリスク評価パラメータ算出プログラムであって、各種情報を格納した情報格納部を備えたコンピュータを、
前記情報格納部に格納した賃料収入トレンド及び賃料収入ボラティリティーに基づいて賃料収入を算出する賃料収入算出手段、
前記情報格納部に格納したキャップレートボラティリティーに基づいてキャップレートを算出するキャップレート算出手段、
前記情報格納部に格納した前記不動産ノンリコースローンにかかる対象物件のテナント形態に基づいて、前記リスク評価に関する前記パラメータの算出に適用する適用賃料収入を決定する適用賃料収入決定手段、
前記適用賃料収入を用いてキャッシュフローを生成するキャッシュフロー生成手段、
前記キャッシュフロー及び前記キャッシュフローと前記キャップレートから算出される物件価格を用いて各種テストを実行するテスト手段、及び
デフォルト発生時のロス額に基づいて前記パラメータを算出するパラメータ算出手段と
して機能させる、ことを特徴とするローンリスク評価パラメータ算出プログラム。
コンピュータで不動産ノンリコースローンのリスク評価に関するパラメータを算出させるためローンリスク評価パラメータ算出方法であって、各種情報を格納した情報格納部を備えた前記コンピュータが、
前記情報格納部に格納した賃料収入トレンド及び賃料収入ボラティリティーに基づいて賃料収入を算出することと、
前記情報格納部に格納したキャップレートボラティリティーに基づいてキャップレートを算出することと、
前記情報格納部に格納した前記不動産ノンリコースローンにかかる対象物件のテナント形態に基づいて、前記リスク評価に関する前記パラメータの算出に適用する適用賃料収入を決定することと、
前記適用賃料収入を用いてキャッシュフローを生成することと、
前記キャッシュフロー及び前記キャッシュフローと前記キャップレートから算出される物件価格を用いて各種テストを実行することと、
デフォルト発生時のロス額に基づいて前記パラメータを算出することと、
を含むことを特徴とするローンリスク評価パラメータ算出方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明のローンリスク評価パラメータ算出装置の概略構成図である。この装置は、演算処理部であるCPU101、一時記録部であるRAM等のメモリ102、ディスプレイ等の出力装置103、キーボード等の入力装置104が接続されているバスに、データ格納部120、プログラム格納部140及び中間・出力データ格納部160からなる情報格納部100が接続されている。このデータ格納部120、プログラム格納部140及び中間・出力データ格納部160は、ハードディスク等の書き込み読みだし可能な単一又は複数の記録メディアから構成される。
【0021】
データ格納部120には、不動産ノンリコースローンの対象物件である不動産(以下、単に対象物件ともいう。)についての不動産鑑定書に関する情報から不動産鑑定書情報ファイル121と、市場における不動産の賃料収入のトレンド及びボラティリティー並びに市場における不動産のキャップレートのボラティリティー等に関する統計情報からなるヒストリカル情報ファイル122と、例えば賃貸オフィスの一部または全部に入居するテナントに関する情報からなるテナント格付情報ファイル123と、対象物件のテナント形態からなるテナント形態情報ファイル124と、ローン金額、ローン期間、及び元利金支払条件等の情報からなるローン契約条件情報ファイル125と、DSCR(Debt Service Coverage Ratio)テスト及びLTV(Loan to Value)テストを含むテストの条件に関する情報からなるテスト種別・条件情報ファイル126が格納されている。
【0022】
プログラム格納部140には、リスク評価パラメータ(PD(Probability of Default:デフォルト確率),LGD(Loss Given Default:デフォルト時損失率),EAD(Exposure at Default:デフォルト時エクスポージャ))を推計するモデルであるプログラム(PD,LGD,EADを算出するためのアルゴリズム)が格納されており、そのプログラムは、賃料収入を算出する機能、キャップレートを算出する機能、適用賃料収入を決定する機能、キャッシュフローを生成する機能、DS(Debt Service)デフォルトを判定する機能、LTVデフォルトを判定する機能、テスト(DSCR(Debt Service Coverage Ratio)テスト、LTV(Loan to Value)テスト)を実行する機能、及びリスク評価パラメータ(PD,LGD,EAD)を算出する機能を備えている。また、プログラム格納部140に格納されているプログラムは、賃料収入を算出する機能の一部として機能する賃料収入の変動を算出する機能、キャップレートを算出する機能の一部としてキャップレートの変動を算出する機能、適用賃料収入を決定する機能の一部として機能するテナントデフォルト変動を算出する機能、及びキャッシュフローを生成する機能の一部として機能するキャップレートの変動率を算出する機能を備える。
【0023】
中間・出力データ格納部160には、上記プログラムの各種の算出手段で算出された中間データと最終の出力データが格納されている。
【0024】
プログラム格納部140に格納されているプログラムにより処理される、各種機能について以下に具体的に説明する。
【0025】
なお、以下に説明するプログラムは、本発明の実施形態の一例として説明するものであって、このプログラムに限定されるものではない。
【0026】
I.賃料収入の変動を算出する機能:
従来、賃料収入は、賃料変動及び空室率変動をそれぞれ確率的にシミュレートし、シミュレートした賃料変動及び空室率変動を用いてシミュレートしていた(例えば、特許文献2参照)。また、従来、キャップレートは、ローンの初期から期日までの時間(モニタリング時点)を変数とする関数(例えば、特許文献2では指数関数)として定義されていた。
【0027】
これに対して、本実施形態では、賃料収入の変動それ自体を確率的にシミュレートすることで、賃料収入自体をシミュレートする。また、本実施形態では、キャップレートを確率的にシミュレートする。
【0028】
本実施形態では、賃料収入の変化率は式(1)で定義され、賃料収入の変動を算出する機能は、市場における賃料収入トレンド及びそのボラティリティー(標準偏差)に基づいて賃料収入の変動を算出する。賃料収入を算出する機能は、算出された賃料収入の変動及びノンリコースローンの対象物件についての不動産鑑定書情報を考慮して、当該対象物件の賃料収入を推計する。推計されるキャップレートの変化率は式(2)で定義され、キャップレートの変動を算出する機能は、市場におけるキャップレートのボラティリティー(標準偏差)に基づいてキャップレートの変動を算出する。キャップレートを算出する機能は、算出されたキャップレートの変動及びノンリコースローンの対象物件についての不動産鑑定書情報を考慮して、当該対象物件のキャップレートを推計する。
【0030】
ここで、μ
Bは
図3のヒストリカル情報ファイルに格納されるヒストリカル情報から取得された対象物件の地域・種別に応じた「賃料収入トレンド」である。σ
Bはヒストリカル情報から取得された対象物件の地域・種別に応じた「賃料収入ボラティリティー」(標準偏差)である。σ
Lはヒストリカル情報から取得された対象物件の地域・種別に応じた「キャップレートボラティリティー」(資本収益率、還元利回り、期待利回りの標準偏差)である。あるいは、地域をランク分けして得られる賃料収入トレンド、賃料収入ボラティリティー、及びキャップレートボラティリティーのランク内の中央値や平均値などの代表値を用いてもよい。
【0031】
dz
Bは、標準正規分布に従って発生する確率変数であり、賃料収入の算出過程において賃料収入の変化率がブラウン運動するという仮定を反映させるものである。
【0032】
同様に、dz
Lは、標準正規分布に従って発生する確率変数であり、キャップレートの算出過程においてキャップレートの変化率がブラウン運動するという仮定を反映させるものである。
【0033】
賃料収入とキャップレートの間には、取引参加者の違いから独立性を仮定することが出来ると考えらえれ、したがって、dz
Bとdz
Lは、互いに独立としている。
【0034】
複数の不動産を対象とする不動産ノンリコースローンのリスク評価に関するパラメータの算出に拡張することができる。
【0035】
対象物件が複数の場合、上記式(1)及び(2)をそれぞれ、式(1’)及び(2’)のように拡張する。対象物件の数がm個(mは2以上の整数)の場合、i番目(iは1<i≦mの整数)の対象物件(以下、対象物件iという。)の賃料収入変化率を式(1’)で表し、対象物件iのキャップレート変化率を式(2’)で表すことができる。
【0037】
μ
Biは
図3のヒストリカル情報ファイルに格納されるヒストリカル情報から取得された対象物件iの地域・種別に応じた賃料収入トレンドである。σ
Biはヒストリカル情報から取得された対象物件iの地域・種別に応じた賃料収入変化率のボラティリティー(標準偏差)である。σ
Liはヒストリカル情報から取得された対象物件iの地域・種別に応じたキャップレート変化率のボラティリティー(標準偏差)である。
【0038】
物件iの賃料収入変化率dB
i/B
iと物件jのキャップレート変化率dL
j/L
jの相関係数をρ
Bi,Ljとすると相関行列は行列(A)のように表される。尚、i=jの場合はゼロとなる。
【0040】
行列(A)を対象物件の組み合わせのパターン化により簡単化してもよい。
【0041】
対象物件が複数の場合、簡単化された相関行列をコレスキー分解等により分解して、相関のある2m個の標準正規分布に従う確率変数を発生させることができる。
【0042】
賃料収入算出手段及びキャップレート算出手段の処理フローについては、
図11を参照して後述する。
【0043】
II.適用賃料収入を決定する機能:
適用賃料収入を決定する機能は、リスク評価に関するパラメータの算出に適用する賃料収入(以下、適用賃料収入という。)を決定する機能である。適用賃料収入を決定する機能は、対象物件のテナント形態(シングルテナント、マルチテナント)に応じた適用賃料収入を決定する。
【0044】
適用賃料収入を決定する機能は、対象物件のテナント形態がシングルテナントかつ定期借家契約が有る場合、定期借家契約に応じた適用賃料を決定する。この場合、適用賃料収入を決定する機能は、テナントデフォルト変動を算出する機能と連動してテナントがデフォルトする確率に応じた適用賃料を決定する。
【0045】
適用賃料収入を決定する機能は、対象物件のテナント形態がシングルテナントかつ定期借家契約の無い場合、または、マルチテナントの場合、賃料収入算出手段により算出された賃料を適用賃料として決定する。
【0046】
適用賃料収入を決定する手段の処理フローについては、
図12を参照して後述する。
【0047】
III.キャッシュフローを生成する機能:
ローンの支払(利払い)に用いられるキャッシュフローを生成する機能は、不動産ノンリコースローンのリスク評価に用いる対象物件のキャッシュフローを、決定した適用賃料収入を用いて生成する機能である。
【0048】
キャッシュフローを生成する手段の処理フローについては、
図8を参照して後述する。
【0049】
IV.DS(Debt Service)デフォルト判定、LTVデフォルト判定、及びテスト(DSCRテスト、LTVテスト)を実行する機能:
テスト(DSCRテスト、LTVテスト)を実行する機能は、生成した対象物件のキャッシュフロー、物件価格に基づいて、DSCRテスト、LTVテストを実行する機能である。DSデフォルト判定、LTVデフォルト判定は、それぞれデフォルトするか否かを判定し、デフォルトする場合には当該デフォルトに関する情報を記録する。
【0050】
V.リスク評価パラメータ(PD,LGD,EAD)を算出する機能:
リスク評価パラメータ(PD,LGD,EAD)を算出する機能は、DSデフォルト判定、LTVデフォルト判定を実行する機能により記録されたデフォルトに関する情報から、リスク評価パラメータ(PD,LGD,EAD)を算出する機能である。
【0051】
次にデータ格納部120に格納される各ファイルについて説明する。
【0052】
図2は、不動産鑑定書情報のデータの一例を示す図である。不動産鑑定書情報の項目は、不動産ノンリコースローンの対象物件について、不動産鑑定士が通常の作成方法により作成した不動産鑑定書に含まれる情報及び当該不動産鑑定書に付属する書類等に含まれる情報の一部または全部である。不動産鑑定書情報は、不動産ノンリコースローンの案件番号が付与され、不動産鑑定書情報ファイル121に格納されている。不動産鑑定書情報ファイル121は、情報格納部100に予め格納されている。不動産鑑定書情報の項目(1)の年間賃料収入(B)と項目(2)の査定空室率(D)とから計算されるB(1−D)が、本実施形態の賃料収入を算出する機能において賃料収入を算出する際の初期値として用いられる。また、不動産鑑定書情報の項目(9)のキャップレートL(0)は、本実施形態のキャップレートを算出する機能においてキャップレートを算出する際の初期値として用いられる。
【0053】
図3は、ヒストリカル情報のデータの一例を示す図である。ヒストリカル情報は、不動産ノンリコースローンの対象物件となり得る物件の地域・種別毎の賃料収入のトレンド、賃料収入のボラティリティー、キャップレートのボラティリティーを含む。
【0054】
ヒストリカル情報を参照すると、A市のオフィスビルの賃料収入のトレンドμ
Bは0.05%で増大する傾向にあり、その分布におけるボラティリティーσ
B(標準偏差)は5%であることがわかる。また、A市のオフィスビルのキャップレートのボラティリティーσ
D(標準偏差)は10%であることがわかる。
【0055】
また、A市、B市、C市のオフィスビルはランクIに分類され、ランクIにおける賃料収入のトレンドの代表値は0.73%、賃料収入のボラティリティーσ
Bの代表値は5.33%、キャップレートのボラティリティーの代表値は8.33%であることがわかる。
【0056】
ヒストリカル情報は、一般に入手可能な統計資料を用いることもできる。本実施形態では、ヒストリカル情報は、ヒストリカル情報ファイル122に格納されている。ヒストリカル情報ファイル122は、情報格納部100に予め格納されている。
【0057】
図4は、テナント格付情報のデータの一例を示す図である。テナント格付情報は、不動産ノンリコースローンの対象不動産のテナントの格付けであり、金融機関や与信機関によって作成される。例えば、対象不動産のテナント形態がシングルテナントかつ定期借家契約である場合には、この格付を考慮した適用賃料の決定が行われる。テナント格付情報は、テナント格付情報ファイル123に格納されている。テナント格付情報ファイル123は、情報格納部100に予め格納されている。
【0058】
図5は、テナント形態情報のデータ構造の一例を示す図である。
図5(a)は、テナント形態とテナント形態識別子の対応関係を示すテーブルである。
図5(b)は、各不動産ノンリコースローンに割り当てられた案件番号とその対象不動産のテナント形態識別子を含むテーブルである。これらのテーブルを参照することにより、案件番号0001の対象物件は複数のテナントが同居するマルチテナント形態であることがわかる。
【0059】
本実施形態では、テナント形態が3つ示されているが、必要に応じて
図5(a)を拡張または縮小することができる。テナント形態情報は、テナント形態情報ファイル125に格納されている。ヒストリカル情報ファイル122は、情報格納部100に予め格納されている。
【0060】
図6は、ローン契約条件情報のデータの一例を示す図である。ローン契約条件情報は、不動産ノンリコースローンにおけるローン金額、ローン期間、ローン条件(金利返済条件、元本返済条件)等を含む。ローン契約条件情報を参照することにより、例えば案件番号0001のローンについて、ローン金額が7億円、ローン期間が5年、ローン条件の金利返済条件が利率3%の均等払、ローン条件の元本返済条件が満期一括払いであること等がわかる。ローン契約条件情報は、ローン契約条件ファイル125に格納されている。ローン契約条件ファイル125は、情報格納部100に予め格納されている。
【0061】
図7は、テスト種別・条件情報のデータの一例を示す図である。テスト種別・条件情報は、賃料収入及び物件価格の算出からテスト(DSCRテスト、LTVテスト)までの繰返回数、及び案件毎のDSCRテスト、LTVテストの各種テスト条件を含む。テスト条件であるAAA、BBB及びCCCは、例えば、対象物件の強制売却条項の有無、エクイティへの配当停止、融資元への打入条項の有無、その他の条項の有無、及びこれらの組み合わせなどとすることができ、案件毎に異なる条件を設定することができる。テスト種別・条件情報は、テスト種別・条件情報ファイル126に格納されている。テスト種別・条件情報ファイル126は、情報格納部100に予め格納されている。
【0062】
図8は、キャッシュフロー情報のデータの一例を示す図である。キャッシュフロー(NCF)を含むキャッシュフロー情報は、キャッシュフロー生成手段9によって生成され、テスト手段2によって参照される。キャッシュフロー情報は、キャッシュフロー情報ファイル167に格納されている。キャッシュフロー情報ファイル167は情報格納部100に格納されている。
【0063】
図9は、本発明のローンリスク評価パラメータ算出装置の機能ブロック図である。演算処理部101によって処理される各機能と、データ格納部120及び中間データ・出力データ格納部160に格納されている各ファイルとの入出力関係が示されている。
【0064】
図10は、本発明のローンリスク評価パラメータ算出装置が処理するフローチャートである。ローンリスク評価パラメータ算出装置は、モンテカルロ法により不動産ノンリコースローンの一年間における対象物件のキャッシュフローを生成し、生成したキャッシュフローに基づいて各種デフォルト判定を実行する。さらにローンリスク評価パラメータ算出装置は、デフォルト判定結果を用いてリスク評価パラメータ(PD,LGD,EAD)を算出する。
【0065】
ローンリスク評価パラメータ算出装置は、ローン初期(t=0)から一年後(t=T)までの間における所定間隔Δtの各時刻(例えばt=0,0.2,0.4,・・・,1)でキャッシュフローを生成して各種デフォルト判定を実行する。
【0066】
また、その客観性を高めるために、所定回数(例えば、100000回)上記シミュレートを繰り返す。
図10においては、繰返回数のカウンタをMONTとしている。
【0067】
図10のステップS100において、不動産鑑定書情報ファイル121及びヒストリカル情報ファイル122を参照して、時刻tにおける賃料収入B(t)を算出し、賃料収入(B(t))ファイル161へ格納する。賃料収入B(t)は、キャッシュフローの生成に適用される適用賃料収入B’(t)の候補となる。
【0068】
図11は、本発明のローンリスク評価パラメータ算出装置の備える賃料収入算出手段11及びキャップレート算出手段15が処理するフローチャートであり、
図10のステップS100及びS400のより詳細なフローを示すフローチャートである。
【0069】
ステップS101において、賃料収入算出手段11は、不動産鑑定書情報ファイル121(
図2)から年間賃料収入(B)、査定空室率(D)及びキャップレート(L(0))を読み込み、ヒストリカル情報ファイル122(
図3)から賃料収入トレンド(μ
B)、賃料収入ボラティリティー(σ
B)及びキャップレートボラティリティー(σ
L)を読み込む。
【0070】
次いでステップS102において、式(1)及び(2)に基づいて、時刻t(0≦t≦1)における賃料収入B(t)及びキャップレートL(t)を算出し、各々を賃料収入(B(t))ファイル161及びキャップレート(L(t))ファイル163へ格納する。
【0071】
より詳細には、時刻tにおける賃料収入B(t)は、
図2の対象物件の不動産鑑定書情報ファイルから取り出した年間賃料収入(B)及び査定空室率(D)と、式(1)で算出した賃料収入変化率とに基づいて算出される。より具体的には、不動産鑑定書情報ファイルから取り出した年間賃料収入(B)に(1−査定空室率(D))を乗じた値に算出した賃料収入変化率を乗じることで、時刻tにおける賃料収入B(t)を算出する。算出した賃料収入B(t)は、中間データ・出力データ格納部160内の賃料(B(t))ファイル161に格納される。
【0072】
同様に、キャップレートは、不動産鑑定書情報ファイルから取り出したL(0)と、式(2)で算出したキャップレート変化率に基づいて算出する。より具体的には、不動産鑑定書情報ファイルから取り出したキャップレートL(0)に算出したキャップレート変化率を乗じることで、時刻tにおけるキャップレート(t)を算出する。算出したキャップレートL(t)は、中間データ・出力データ格納部160内のキャップレート(L(t))ファイル163に格納する。
【0073】
再び
図10を参照すると、ステップS200において、キャッシュフローの生成に適用される適用賃料B’(t)が決定される。適用賃料B’(t)は、キャッシュフローの生成に適用される。
【0074】
図12は、本発明のローンリスク評価パラメータ算出装置の備える適用賃料収入決定手段12が処理するフローチャートであり、
図10のステップS200のより詳細なフローを示すフローチャートである。
【0075】
ステップS201において、テナント形態情報ファイル124(
図5)からリスク評価の対象となっている案件のテナント形態を読み込む。
【0076】
ステップS202において、当該案件の対象物件におけるテナント形態がシングルテナントであるか否かを判定する。テナント形態がシングルテナントではない場合、すなわちマルチテナントである場合には、ステップS207へ進む。
【0077】
テナント形態がシングルテナントである場合、ステップS203において、定期借家契約が有るか否かを判定する。定期借家契約が無い場合には、ステップS207へ進む。
【0078】
定期借家契約が有る場合には、ステップS204において、テナント格付情報ファイル123(
図4)から定期借家契約にかかるテナントの格付を読み出し、当該格付けに基づいて、定期借家契約にかかるテナントがデフォルトする確率であるテナントデフォルトを算出する。テナントデフォルトは、格付毎にあらかじめ定められた確率にしたがって発生される。
【0079】
ステップS205において、算出したテナントデフォルトにより、定期借家契約にかかるテナントがデフォルトするか否かを判定する。定期借家契約にかかるテナントがデフォルトする場合には、ステップS207へ進む。
【0080】
定期借家契約にかかるテナントがデフォルトしない場合、ステップS206へ進み、不動産鑑定書情報ファイル121(
図2)の賃料収入Bを適用賃料収入B’(t)と決定し、不動産鑑定書情報ファイル121から賃料収入Bを読み込む。これは、定期借家契約にかかるテナントがデフォルトしなければローン初期の賃料が定期借家契約期間中継続する可能性が高い(空室が生じる可能性及び賃料収入が変動する可能性は低い)ので、定期借家契約にかかる賃料収入、すなわち不動産鑑定書に含まれた賃料収入Bでリスク評価が行われるようにするための処理である。
【0081】
テナント形態がマルチテナントである場合、定期借家契約の無いシングルテナントである場合、及び定期借家契約が有るシングルテナントでテナントがデフォルトする場合には、ステップS207において、ステップS100で算出した賃料収入B(t)を適用賃料収入B’(t)と決定し、賃料収入(B(t))ファイル161から賃料収入(B(t))が読み込まれる。
【0082】
次いで、ステップS208において、決定した適用賃料収入B’(t)を適用賃料収入B’(t)ファイル164に格納する。
【0083】
以上、テナント形態がシングルテナントかつ定期借家契約有り、シングルテナントかつ定期借家契約無し、及びマルチテナントの3つ場合を例として、これらの3つのテナント形態に応じて適用賃料収入を決定する処理フローを説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
再び
図10を参照すると、ステップS400において、キャッシュフローの生成に適用されるキャップレートL(t)が算出される。キャップレート算出手段15は、
図11を参照して上述した処理フローにしたがってキャップレートL(t)を算出する。
【0085】
ステップS500において、時刻tにおけるキャッシュフローが生成される。
図8は、ステップS500において生成されるキャッシュフローの一例である。
図8のキャッシュフロー(NCF)を含むキャッシュフロー情報は、案件番号0001(
図6)について生成された例を示し、ローン金額が7億円、ローン期間が5年、金利が3%、金利返済条件が均等払い、元本返済条件が満期(ローン終期)一括払いの不動産ノンリコースローンについて、時刻t=0,0.2,0,4,・・・,1の各キャッシュフローが格納されている。
【0086】
項番(1)の適用賃料収入(B’(t))は、適用賃料収入(B’(t))ファイル164から読み出される。
項番(2)の賃貸可能面積(A)は、不動産鑑定書情報ファイル121から読み出される。
項番(3)の賃料収入は、適用賃料B’(t)×賃貸可能面積A(項番(2))により算出される。
項番(4)の経費額は、不動産鑑定書情報ファイル121の実効総収入(F)(当初の年間賃料収入)の30%として計算される。経費の割合(30%)は一例であり、固定値とする必要は無い(案件毎に異なる値を設定しても良い)。
項番(5)の純収入額(NOI)は、賃料収入(項番(3))−経費額(項番(4))により算出される。
項番(6)の修繕積立額は、不動産鑑定書情報ファイル121から読み出される。
項番(7)のネットキャッシュフロー(NCF)は、NOI−修繕積立額により算出される。NCFは、ローンの支払(利払い)に用いられるキャッシュフローであり、項番12の鑑定評価額(すなわち、物件価格)の算出に用いられる。また、キャッシュフローは項番(15)のDSCRの算出に用いられる。
項番(8)のローン利払い額は、ローン契約条件情報ファイル125から読み出される。
項番(9)のデッドサービス後余剰金残高は、NCF−ローン利払い額により算出される。
項番(10)の配当額は、デッドサービス後余剰金残高(項番(9))である。
項番(11)のキャップレートは、キャップレートファイル(L(t))163から読み出される。
項番(12)の収益直接還元法による鑑定評価額は、NCF/キャップレートにより算出される。鑑定評価額は、対象物件の物件価格である。鑑定評価額は、項番(7)のキャッシュフローと項番(11)のキャップレートから算出される。物件価格(鑑定評価額)は、項番(14)のLTVの算出に用いられる。さらに各種テストにおいてデフォルトと判定されたときのロス損失(物件を売却しても回収されない額)
項番(13)のローン残高は、(ローン金額−元本返済額)として算出される。
項番(14)のLTVは、ローン残高/収益直接還元法による鑑定評価額により算出される。LTVは、LTVテストに用いられる。
項番(15)のDSCRは、NCF/ローン利払い額により算出される。DSCRは、DSCRテストに用いられる。
【0087】
再び
図10を参照すると、ステップS600において時刻tにおけるDSデフォルト判定が実行され、ステップS700において時刻tにおけるDSCRテストが実行され、ステップS800において時刻tにおけるLTVテストが実行される。
【0088】
DSデフォルト判定、DSCRテスト及びLTVテストは周知の手法にしたがって実行される。例えば、DSデフォルト判定では、キャッシュフロー情報ファイル167からデッドサービス後余剰金残高を読み出し、デッドサービスを実行できるか否かを判定する。デッドサービスが実行できない(ローンの支払ができない)と判定した場合にはデフォルトが発生したと認定し、デフォルトカウンタ情報ファイル168にデフォルト時刻、ロス額等を記録する。
【0089】
また、DSデフォルト判定及びLTVデフォルト判定ではそれぞれ、キャッシュフロー情報ファイル167からキャッシュフォロー(NCF)及びローン支払額(ローン利払い額)を読み出してDSの可否を判定し(デフォルト判定を実行し)、及び、キャッシュフロー情報ファイル167からLTVを読み出して予め設定されたしきい値(例えば100%)と比較してデフォルト判定を実行する。デフォルトが発生したと認定した場合には、デフォルトカウンタ情報ファイル168にデフォルト時刻、ロス額等を記録する。
【0090】
ステップS900において時刻tが所定時間単位(Δt)だけ進められ、ステップS1000において時刻tが時刻T(=1年)に達しているか否かの判定が行われる。時刻tが時刻Tに達していない場合には、ステップS100からS900が繰り返される。本実施形態は、所定時間単位Δtが0.2年の場合を例示するが、本発明は、所定時間単位Δtは1年以下のいずれの時間であっても良い。
【0091】
時刻tが時刻Tに達している場合には、ステップS1050において、上述したLTVデフォルト判定を実行し、ステップS1100において、繰返回数のカウンタMONTをインクリメントする。ステップS1200において、カウンタMONTが所定回数に達しているか否かの判定が行われる。カウンタMONTが所定回数に達していない場合には、ステップS1201において、時刻tがゼロにセットされ、ステップ100へ戻る。カウンタMONTが所定回数に達している場合には、ステップS1300,S1400,S1500へ順次進む。本実施形態は所定回数が10万回の場合を例示するが、本発明は、これに限定されるものではなく、他の回数であっても良い。
【0092】
ステップS1300,S1400,S1500の各ステップにおいて、不動産ノンリコースローンのリスク評価に関するパラメータの一つであるPD,LGD,EADが算出される。
【0093】
PD,LGD,EADはそれぞれ、PD算出手段19、LGD算出手段20、EAD算出手段21によって算出される。
【0094】
PD算出手段19は、デフォルト情報記録ファイル168及びテスト種別・条件情報ファイル126から、デフォルト回数及び繰返回数をそれぞれ読み出し、繰返回数に対するデフォルト回数の割合を計算することにより、PDを算出し、PDファイル169へ格納する。
【0095】
EAD算出手段21は、キャッシュフロー情報ファイル167、デフォルト情報記録ファイル168、ローン契約条件情報ファイル125からデフォルト発生時のローン額、当初ローン金額を読み出し、式(4)に基づいてEADを算出し、EADファイル170へ格納する。
【0097】
LGD算出手段20は、デフォルト情報記録ファイル168、ローン契約条件情報ファイル125からデフォルト発生時のロス額、当初ローン金額を読み出し、デフォルト時の残高に対するデフォルト発生時のロス額の割合を計算することにより、LGDを算出し、LGDファイル170へ格納する。
【0098】
上記のとおり、本発明によれば、モニタリング時点から期日までの長さの影響を低減した、個別の不動産の特性を取り込んだ不動産ノンリコースローンのリスク評価に関する客観性の高いパラメータを算出するローンリスク評価パラメータ算出装置を提供することが可能となる。
【0099】
つまり、従来の方法がローンの初期から期日までをシミュレートの期間とするのに対して、本実施形態では、シミュレートの期間をモニタリング時点から1年とする。したがって、本実施形態では、モニタリング時点から期日までの長さの影響を低減できる
また、キャップレートは、ローンの初期から期日までの時間(モニタリング時点)を変数とする関数(指数関数)として定義する従来の方法(例えば、特許文献2参照)に対して、本実施形態の方法では、キャップレートについても確率的にシミュレートする。これにより、1年間のシミュレートの期間において種々の事象が確率的に発生し得るようにしている。
【0100】
さらに、本実施形態では、賃料収入の変動それ自体を確率的にシミュレートするため、従来、賃料変動及び空室率変動をそれぞれ確率的にシミュレートした結果を用いて賃料収入をシミュレートする従来の方法(例えば、特許文献2参照)に比べて、計算量及び時間等の計算コストが少なくなる。また、空室率変動を確率的にシミュレートする従来の方法では、0≦対象物件の空室率≦1となるように空室率変動を制御(設計)する必要があったのに対して、本実施形態では、賃料収入の変動それ自体を確率的にシミュレートするため、すなわち、賃料収入の変動が、賃料変動及び空室率変動のいずれに起因するものかを考慮しないため、したがって、本実施形態では、空室率変動を制御(設計)する必要は無くなる。
【解決手段】各種情報を格納した情報格納部120、160と、情報格納部に格納した賃料収入トレンド及びボラティリティーに基づいて賃料収入を算出する機能11と、情報格納部に格納したキャップレートボラティリティーに基づいてキャップレートを算出する機能15と、情報格納部に格納した不動産ノンリコースローンにかかる対象物件のテナント形態に基づいて、リスク評価に関するパラメータの算出に適用する適用賃料収入を決定する機能12と、適用賃料収入を用いてキャッシュフローを生成する機能9と、キャッシュフローとキャップレートから算出される物件価格及びキャッシュフローを用いて各種テストを実行し、デフォルト発生時のロス額に基づいてパラメータを算出するパラメータ算出機能3とを備える。