【課題を解決するための手段】
【0015】
器具についての上記課題は、請求項1の前提部分に関連して、顎支持部が複数のバイトブロック及び/又は複数のインターセプタによって形成され、これらバイトブロック及び/又はインターセプタが、歯茎延長部の垂直方向の矯正のために、あらかじめ設定可能な弾性の充填材料によって充填された複数の中空空間を備えていること、基礎モジュールが、少なくとも1つの歯冠を把持する基礎クリップで構成されていること、該基礎クリップが、バイトブロック又はインターセプタの一部として、対向する顎に向けて機能中空体を備えていること、該機能中空体が充填材料で充填されて
いること、及び機能中空体が、覆われた前記歯冠の咬合面へ向けて1つの循環状の圧力伝達リングを備えていることによって解決される。
【0016】
本発明により、歯の移動のアクティブな実行中に寸法に忠実な顎の互いの目標サポートが咬合接触まで可能となるとともに(使用者の対応設定に対応)、咬合補助要素の交換が可能となる。
【0017】
広範にわたる三次元的な歯の位置の矯正を越えて、本発明による器具により実現されるべき空間的にコントロールされた顎関節の不正位置の矯正は4−D器具(四次元器具)としての顎支持部の形成及び設定によって可能であり、この器具は、4番目の次元として、歯列と顎関節の間の空間結合の原理をあらかじめ歯の移動の計画及び機器構成において4−Dソフトウェアを用いて使用している。一方で歯と歯の間と、他方で関節窩に対する顎関節頭の間との空間的な位置関係についての情報は、医学の公知の画像生成・処理方法によって提供され得る。CT(コンピュータ断面撮影法)及びDVT(デジタルボリュームトモグラフィー)は、目下のところ、3D計画ソフトウェアプログラムと組み合わせることが可能なSTLデータセットを提供するものである。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの補足モジュール及び/又は補助部分が設けられている。
【0019】
咬合を補助する複数の要素は、そのモジュール式の構造により、独立して、力及びトルクのアクティブな伝達のために、可逆にも複数の機械装置及び補助部分に結合されることが可能である。これにより、1つ又は複数の器具部分あるいは装置部分の連続した交換により段階的にも、またこれら部分(モジュール)及び補綴の扶助(インプラントも)のような歯へ直接的に固定され得る機械装置及び弾性要素と前記部分の組合せによっても歯列矯正が実行され得る。
【0020】
これにより、そうでなければ患者に連続して適用される必要がある異なる顎整形外科的な治療課題を同時に、したがって効率的に進行させることが可能である。治療者あるいは使用者は、もはや患者が正しい歯牙発生年齢に達するか、又は他の器具技術の適用に必要な機能治療的な成長に達するのを待つ必要がない。ほとんどすべての公知の治療課題は、当該治療課題が治療中に合理的であると思われる場合には、個々のモジュールの交換によって、又はその新たな組合せの範囲内で直接解決される。
【0021】
さらに、咬合のコントロールされつつ変更可能な支持及びこれに伴う顎関節の支持の際の断続的な力の同時の適用の可能性により、医学的な治療の多様性が拡がる。とりわけ、歯茎の延長部の垂直方向の矯正及び顎関節位置の矯正は、大規模な歯列矯正と同時に初めてなされる。セットアップ技術(デジタル、アナログなど)の原理により、モジュールが歯を包囲するように保持するだけでなく、力及びトルクの伝達に直接介入することで、機能治療的な手法が統合され得るとともに、同時に、歯に固定された器具モジュールに統合され得る。
【0022】
強調すべきは、器具自体における、機能治療的な目的に適合した咬合範囲の形態の可能な統合である。この統合は、いままで公知の歯列矯正器具においては知られていない(マルチブラケット器具及び歯列矯正技術)。
【0023】
器具は、構造的に基本的に、操作者あるいは使用者によってあらかじめ設定される記録バリエーション又は構造噛み合わせバリエーションを考慮する。本発明により、基礎モジュールの三次元的に変更可能な構造によって初めてこの可能性が開かれる。この可能性により、モジュール式の基本コンセプト及びソフトウェアに基づく計画並びに器具におけるRP−生産方法(迅速プロトタイピング(Rapid Prototyping))によって、異なる公知の機器グループのバイオメカニクス的に有利な特性の統合が可能となる。
【0024】
歯列矯正の器具コンセプトの咬合支持部分は、初めに、いわゆる固定されたオクルーザルスプリント又は頭蓋整形外科的な位置決め器具(Copa)のように歯又は補綴器具に接着させる必要がない。したがって、1つの機器シリーズが形成され、この機器シリーズにおいては、個々の治療機器が歯列矯正技術におけるように歯の位置が小さなステップで矯正され、そのとき、上顎と下顎の間の計画された空間的な割り当てが繰り返し一定に受け継がれる。したがって、口腔内で固定されたオクルーザルスプリントを変更又は取外しをする必要なく、初めに、いつでも空間的な顎割り当ての適合が可能である。
【0025】
このとき、基礎モジュールは、使用者の設定に基づく、空間的に規定された顎支持部を備えている。この顎支持部は、あらかじめ設定可能な弾性の充填材料によって充填された中空空間を有するバイトブロック及びインターセプタによって形成される。
【0026】
中空空間の液体状又は気体状の充填剤は、得られた咬合範囲の咀嚼力安定性をほとんど強化しない。これにより、異常機能(歯ぎしり又は押圧)の患者は、健康を脅かしつつ影響を受け、この異常機能は、模写されたバイトブロック形状(通常のフィルム強化の場合)を押圧するものである。したがって、基礎モジュールによって、新たな機能診断上の器具も存在し、この器具は、同時に歯列矯正を適切に実行することが可能なものである。
【0027】
機械的な摩擦又は保持によってバイトブロック中空空間に可逆に結合され得る補足モジュールとしてのゴム弾性的な充填材料の使用時には、恒常的な咀嚼負荷においてその下に位置する歯の押し付けにつながる。
【0028】
極端に硬い充填材料は、敏感な咀嚼反応を生じさせる。この充填材料は、突然の負荷時にいわゆる「チェリーストーン反射」を引き起こし、これにより、顎が無意識的に開放される。このような状況の持続的な負荷時にも、身体的な感覚的な反応により、継続的な咀嚼圧負荷及びこれによる押圧が回避される。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、基礎モジュールが、当該基礎モジュールに結合された機能モジュールを備えており、この機能モジュールは、基礎部分の変更時に再度使用可能である。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、基礎モジュールは、対向する顎に配置可能な補足モジュールと統合可能である。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、基礎モジュール又はその機能のジュールは、弾性的な結合要素を介して補足モジュールに結合されている。
【0032】
歯列矯正的に有効で、したがって多くの場合アクティブな基礎モジュールは、この基礎モジュールが慣用の歯列矯正時のように栄養摂取及び容易な口腔衛生の目的で口から取り出され得る点で傑出している。このとき、より大きな顎間の差異を克服できるよう、追加的な固定されたバイトブロックを必要とすることなく、特にこの基礎モジュールは、同時に、使用者の設定に基づき空間的に規定された顎支持部を自由に使用可能である(機能治療的な咀嚼レールに類似)。これら基礎モジュールは、患者個々に形成されるとともに、安価に標準化されて生産された機能モジュールと組み立てられることが可能である(単純な例はミニ開きボルトであり、その幾何形状は、データセットとして基礎モジュールの3D計画へ組み込まれることが可能である。)。このようにして、わずかな歯の移動の後に、(矯正器具又は位置決め装置のような弾性顎整形外科的な機器におけるように)器具全体を拒否する必要がない。補足モジュールは、保定、固定又は橋台を形成する補助部分であり、これら補助部分は、好ましくは歯の表面又は歯の補充物に接着され、したがって、直接的な接触又は結合要素によって基礎モジュール及び機能モジュールと統合される。潜在的に経済的に、かつエコロジー的に合理的に器具を削減することが可能である。
【0033】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、基礎モジュールが、その内側において、基礎モジュールに固定された歯列弓拡大弧線の形態の補足モジュールを備えている。これにより、基礎モジュールが材料を削減して形成され得るとともに、歯列弓拡大弧線によって追加的な拡開力が歯の表面へ伝達され得る。
【0034】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、基礎モジュールは、その内側とは反対の外側において、補助部分用の複数の収容部を備えている。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、収容部が、歯の外側に配置された付属部品として形成されつつモジュール接合される弾性部材用の1つの溝収容部を備えた複数の補助部材用の収容ポケットを形成している。
【0036】
器具は、構造的に基本的に、操作者あるいは使用者によってあらかじめ設定される記録バリエーション又は構造噛み合わせバリエーションを考慮する。この設定によって、基礎モジュールにおける咬合支持的な部分の寸法が規定される。基礎モジュールは、顎側の咬合支持的な部分上で延在しているとともに、他の顎側の基礎モジュールに結合されることが可能である。生産に応じて、この基礎モジュールは、更に緊張力を歯列弓全体にわたって配分することができるよう、歯に装着された支持フィルム(ここでは補足モジュールバリエーション)に結合することも可能である。さらに、セットアップ(アナログ、デジタル又はこれに相当するものにかかわらず)は、基礎モジュールを基礎としている。これにより、顎関節支持のほかに歯列矯正もなされ、これにより、基礎モジュールがミニ合成樹脂レールに対してバイトブロックレール及び矯正器具を画成する。機能顎整形外科的な機器(例えばバイオネイター)におけるように純粋にパッシブな歯の移動を可能とするために、あらかじめ考慮に入れられた歯の移動を中空空間として設定することが可能である。
【0037】
上述の基礎モジュールが上顎と下顎の間の空間的な支持及び歯科矯正的な歯の移動のほかに別の機能を実施することができるように、これら基礎モジュールを別のモジュールに結合することが可能である。
【0038】
歯に固定されたモジュールと相互作用し、補足モジュールの別の有利な実施形態を表す頬支持部及び口唇支持部及びテンターフックは、基本器具との異なる機械的な結合によってその治療的な能力が補足されている。
【0039】
はめ込み接続などによる可逆の結合の場合には、これら補足モジュールは、各歯列矯正的な歯の移動ステップに対して基礎モジュールによって交換される必要がない。むしろ、これら補足モジュールは、後述の接続要素によって除去されるとともに、繰り返し再使用されることが可能である。
【0040】
歯及び歯茎の骨への器具の力及びトルクを強化することができるよう、歯及び歯の補充物への様々な接着結合により固定され得る補助部分が必要である。矯正器具及びマルチブラケット器具に対して変更されるバイオメカニカルな特性及び使用可能性により、いわゆる付属部品の他の好ましい実施も要求される。例えば、歯の表面への接着及によって基礎モジュールの歯の表面への保定が強化され、また、はめ込まれたガイドへの弾性部材の懸吊によって、所定の力が移動すべき歯へ直接伝達され得る実施である。
【0041】
本発明による器具は、第1のステップにおいて空間的に三次元に規定された上顎と下顎の間の位置関係が歯の表面形状の変更によって成長技術を用いて咬合器においてなされること、及び第2のステップにおいて、物理的又は光学的な印象によるバイトブロック及びインターセプタによって新たに形成されたモデル幾何形状の型取りがなされることによって製造される。
【0042】
第3のステップにおいては、咬合器においてあらかじめ伝達された患者の顎関係が、アナログ式又はデジタル式の方法で生成されたセットアップモデルへ伝達され得る。
【0043】
歯のインクリメンタル式の移動のために、器具が適合され得るとともに、対応した異なるモジュールが製造され得る。
【0044】
個々のモジュールと補助部分の間の可逆の結合部の製造には、公知の摺動式、差込式又はその他の着脱自在のロックの細密機構が必要である。
【0045】
取外し可能な顎整形外科的な器具はいままでほとんど手によってのみ、散乱可能なアクリラート、異なる熱可塑性の深絞りフィルム又は位置決め装置の場合にはシリコンから形成されるため、結合要素の手作業の統合が多くを要求される形態となっている。
【0046】
実際の3D形状ソフトウェアにより、あらかじめ規定された個々のデータセット及び個々に開発された記録形状へのその統合の仮想的な結合が可能となる。
【0047】
このために、仮想的な歯列矯正のためのプログラムを複数のソフトウェア提供者が提供しており、これらプログラムは、仮想的な歯の表面に固定された補助部分をシミュレーションすることが可能なものである。
【0048】
上述の器具及びこの器具の使用に関連した歯の移動の仮想的な計画のために必要な別の開発ステップには、例えばボルト締めによってその寸法について変化し得る複雑な形状及び機構の統合が必要である。したがって、仮想的な歯の移動のシミュレーションも、器具のバイオメカニカルな特性と、これに付随して現れる、支持する歯の表面に対する器具の相対移動とがシミュレーション可能である必要がある。
【0049】
あらかじめ生産可能な基礎モジュールの単純な構造においては、初期的に空間的に三次元で規定された上顎と下顎の間の位置関係が、咬合器における成長技術を用いた歯の表面形状の変更によってなされ得る。このような位置割り当ての1つは、常に、頭蓋骨に関連した上顎位置及び方法に依存した下顎位置記録の形態に基づいている。
【0050】
バイトブロック及びインターセプタによって新たに形成されたモデル幾何形状の物理的又は光学的な印象による型取りの後、バイトブロック及びインターセプタの形状を含む新たなモデルのための土台が生じる。このようにして、まずはあらかじめ咬合器へ伝達される患者の顎関係がセットアップモデルへ伝達される。全ての製造ステップは、ここで説明するように、アナログ式又はデジタル式の方法によって生成され得る。
【0051】
交換可能な機能的な補足モジュールは、深絞りフィルムと被覆する咬合面との間の中空空間の充填によって実現される。基礎モジュール体の製造のための深絞り方法が使用される場合には、咬合支持範囲におけるフィルム材料強度の損害により、記録に関する顎間支持部の寸法の忠実さが再び形成されるべきである。これにより、その下に位置する補足モジュールと対向する歯列の間の接触が追加的に開始される。したがって、垂直方向の治療的な効果への所望の散乱効果もより直接的となる。充填剤及びその垂直方向の拡張部の交換により、ゴム弾性的なはめ込みにより進行する歯の押し付けが生じ得る。
【0052】
前方の側方歯範囲におけるインターセプタの幾何形状及び後ろの顎間の支持部の範囲における支持面によっても、咀嚼負荷時の弾性的な抵抗がコントロールされ得る。
【0053】
顎関係の一定の保持が同時の歯列矯正学的な歯列矯正中に同時に行われ、特に支持部によって直接負荷されない歯の選択的なセットアップによって行われる。所望の歯列矯正の過程は、この歯に対して同一の原理に基づき作り上げられることが可能である。ただし、このとき、矯正移動に関連する歯の周囲があらかじめ解放されることが必要である。
基礎クリップの挿入方向についての最大の周囲長さは、この範囲のために、すなわち歯の移動のために負荷を受けない。歯科矯正的に有効な必要な力は、好ましくは(好都合かつ機器削減のため)補助部分を介して、弾性部材の顎間の緊張の下で作用され、これら弾性部分は、矯正されるべき歯において、付属部品の切り込み部へ懸吊される。
【0054】
本発明の他の詳細は、以下の詳細な説明と、本発明の好ましい実施形態を例示的に示す添付図面から明らかである。