(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
螺旋を描くことで前記管状体の軸心方向に並んで隣接する各々の前記スリットに設けられる前記段差部は、前記管状体の周方向における位置が異なる請求項1〜4のいずれか1項に記載のアブレーションカテーテル。
前記管状体は、前記螺旋傾斜角度が漸次的に変化する部位を有し、当該部位に設けられる複数の前記段差部の軸心方向への長さが、前記螺旋傾斜角度が相対的に小さい部位から大きい部位へ向かって漸次的に長くなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のアブレーションカテーテル。
前記凸部は、先端側または基端側のうち、前記スリットの螺旋傾斜角度が大きくなる側へ突出して形成される請求項1〜6のいずれか1項に記載のアブレーションカテーテル。
前記管状体の内部を通って先端部が前記管状体の先端側に連結され、基端部を牽引することで前記管状体を撓ませることが可能な牽引ワイヤをさらに有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のアブレーションカテーテル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カテーテルのシャフトを構成する管状体に螺旋状のスリットを形成すると、構造の異方性によって回転方向によるトルク伝達性能が異なることになり、カテーテルの操作性が低下する。すなわち、カテーテルの基端部を一方向側へ回転操作すると、スリットの隙間が閉じる方向にトルクが作用するのに対し、その逆方向側へ回転操作すると、スリットの隙間が開く方向、すなわち螺旋が解かれる方向へトルクが作用する。スリットの隙間が閉じる方向へトルクが作用する場合には、スリットがその隙間の幅以上は閉じ得ないことからトルクを良好に伝達できるのに対し、スリットの隙間を開く方向へトルクが作用する場合には、スリットの隙間が必要以上に開いてしまい、トルクを良好に伝達できずに操作性が低下しやすい。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、柔軟性を保持しつつ、回転方向によるトルク伝達性能の異方性を極力抑えて操作性を向上できるアブレーションカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するアブレーションカテーテルは、少なくとも一部に螺旋状のスリットが形成されて軸心方向へ延在する管状体と、前記管状体の生体内へ挿入可能な先端側に設けられて生体組織に熱的影響を与える熱要素と、を有するアブレーションカテーテルであって、前記管状体は、前記軸心方向と直交する断面に対する前記スリットの螺旋の延在方向の角度である螺旋傾斜角度が異なる部位を備えるとともに、前記スリットを構成する対をなす対向面の一方から突出して形成される凸部と、前記対向面の他方に前記凸部が入り込むように形成される凹部と、を有し、前記凸部は、前記螺旋傾斜角度に対して前記スリットの角度が局所的に変化する領域に段差部を有し、前記凹部は、前記スリットの螺旋を解く方向へ前記管状体が捩れた際に前記段差部が当接する当接部を有し、前記段差部の前記軸心方向への長さが、前記螺旋傾斜角度が相対的に大きい部位において小さい部位よりも長くなるアブレーションカテーテルである。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したアブレーションカテーテルは、スリットの螺旋傾斜角度が異なる部位を備えることで、柔軟性を軸心方向の位置によって任意に設定して操作性を向上できるとともに、管状体に、螺旋を解く方向へ捩れた際に当接する段差部および当接部が設けられるため、螺旋を解く方向へ捩れた際にスリットの隙間が開くことが抑制される。さらに、段差部の軸心方向への長さが、スリットの螺旋傾斜角度が相対的に大きい部位において小さい部位よりも長く形成されるため、スリットの螺旋傾斜角度が大きくなることで段差部による引っ掛かりが外れやすい部位ほど、段差部の長さが長くなることで当接部から外れ難くなり、回転方向によるトルク伝達性能の異方性を極力抑えて操作性を向上できる。
【0010】
前記螺旋傾斜角度に対する前記スリットの角度の局所的な変化量が、90度を超えるようにすれば、スリットの螺旋を解く方向へ管状体が捩れる際に、段差部が当接部に引っ掛かりやすくなり、過度の捩れを抑制できる。
【0011】
前記段差部の前記軸心方向に対する傾斜角度が、±5度以内であるようにすれば、段差部が軸心方向と略平行となり、管状体が湾曲する際に凸状に湾曲する側、すなわちスリットの幅が広がる側に設けられる段差部が、当接部に対して相対的に移動できるとともに元の位置に戻りやすくなる。このため、段差部が当接部に対して移動できずに管状体の曲げ剛性が局所的に大きくなることを抑制でき、良好な柔軟性を提供できる。
【0012】
前記スリットは、前記スリットの隙間の幅が一定になるようにすれば、前記スリットを構成する対をなす対向面の一方から突出して形成される段差部と、前記対向面の他方に前記段差部と当接するように形成された当接部の形状がほぼ同一となる。このため、前記スリットの螺旋を解く方向へ前記管状体が捩れた際に、段差部が対向面の当接部に引っ掛かりやすくなり、過度の捩れをより確実に抑制できる。
【0013】
螺旋を描くことで前記管状体の軸心方向に並んで隣接する各々の前記スリットに設けられる前記段差部は、前記管状体の周方向における位置が異なるようにすれば、隣接するスリットの段差部が管状体の軸心方向に重ならず、管状体の曲げ剛性が周方向位置に依存して偏り難くなり、良好な柔軟性を提供できる。
【0014】
前記管状体が、前記螺旋傾斜角度が漸次的に変化する部位を有し、当該部位に設けられる複数の前記段差部の軸心方向への長さが、前記螺旋傾斜角度が相対的に小さい部位から大きい部位へ向かって漸次的に長くなるようにすれば、螺旋傾斜角度が大きく曲げ剛性が高い部位によって十分な押し込み性を確保できるとともに、螺旋傾斜角度が小さく柔軟な部位によって生体管腔の湾曲部位等をも容易に通過でき、高い到達性および操作性が得られる。さらに、スリットの螺旋傾斜角度が漸次的に変化することで、曲げ剛性が漸次的に減少しているため、管状体が急激に曲がる際にも応力が1カ所に集中することがなく、医療用長尺体におけるキンクの発生を低減させることが可能である。
【0015】
前記凸部が、先端側または基端側のうち、前記スリットの螺旋傾斜角度が大きくなる側へ突出して形成されるようにすれば、スリットの螺旋傾斜角度が変化する部位において、凸部が延在する方向に凸部を形成するための十分な長さを確保できる。
【0016】
前記凸部が、突出方向へ向かって幅が減少するようにすれば、凸部が、凹部から離れることができるとともに凹部に対して元の位置へ戻ることができ、管状体の曲げ剛性が局所的に大きくなることを抑制して、良好な柔軟性を提供できる。
【0017】
前記段差部における前記スリットの角度が局所的に変化する部位が、曲率を有して形成されるようにすれば、レーザー等によりスリットを形成する際に、レーザー等を管体に対して停止させずに常に移動させながら形成することができる。そのため、レーザー加工により発生した熱が管体の材料に不要に入り、管体の材料が変質や変形するのを抑制できる。また、曲率を有して形成されるため、鋭利なエッジがなくなり、安全性が向上する。
【0018】
前記管状体の先端側に温度を計測する測温部をさらに有するようにすれば、熱要素により提供される温度を監視できるとともに、計測させる温度に基づいて熱要素を制御することが可能となり、安全かつ適切なアブレーションを行うことができる。
【0019】
前記管状体の内部を通って先端部が前記管状体の先端側に連結され、基端部を牽引することで前記管状体を撓ませることが可能な牽引ワイヤをさらに有するようにすれば、牽引ワイヤを牽引することで管状体を自在に撓ませて熱要素を望ましい位置に位置決めでき、安全かつ適切なアブレーションを行うことができる。
【0020】
腎動脈に挿入されて腎交感神経をアブレーションするアブレーションカテーテルであれば、腎動脈の周囲に位置する腎交感神経を、腎動脈から効果的にアブレーションし、血圧の降圧効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0023】
本実施形態に係るアブレーションカテーテル10は、経皮的に腎動脈RAへ導入されて、腎動脈RAの周囲を走る腎交感神経RN(
図9を参照)をアブレーション(焼灼)するものであり、
図1〜3に示すように、長尺なシャフト部20と、アブレーションのために加熱を行う加熱部30(熱要素)と、温度を計測する測温部40と、シャフト部20を撓ませるための牽引ワイヤ50と、シャフト部20の基端に設けられて操作を行うための操作部70と、シャフト部20および操作部70の接続部位に設けられる耐キンクチューブ95とを有している。なお、本明細書では、管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
【0024】
シャフト部20は、軸心方向Xへ延在する管状のシャフト本体部60(管状体)と、シャフト本体部60を覆う被覆部67とを備えている。
【0025】
シャフト本体部60は、
図5,6に示すように、螺旋状のスリット61が形成された先端側の柔軟部62と、スリット61が形成されていない基端側の高剛性部63とを備えている。柔軟部62は、最も先端側の第1柔軟部64と、第1柔軟部64の基端側に設けられる第2柔軟部65と、第2柔軟部65の基端側に設けられる第3柔軟部66とを備えている。スリット61は、レーザー加工等の一般的に行われる技術を用いてスパイラルスリット加工することにより形成される。また、
図7のように、
図5、6で示すスリット61とは逆向きにスリット170を形成するようにスパイラルカット加工を施してもよい。
【0026】
第1柔軟部64は、所定のピッチでスリット61が形成されており、第2柔軟部65は、第1柔軟部64よりも広い所定のピッチでスリット61が形成されている。第3柔軟部66は、第2柔軟部65側から基端側へ向かってスリット61のピッチが徐々に広くなるように形成されている。なお、第1柔軟部64、第2柔軟部65および第3柔軟部66に形成されるスリット61は、連続する1つのスリット61として形成されている。ここでピッチとは、管状体に形成された隣接する2つのスリットの間隔をいう。
【0027】
第1柔軟部64、第2柔軟部65および第3柔軟部66は、軸心方向Xと直交する断面に対するスリット61の螺旋の延在方向の角度である螺旋傾斜角度αが、それぞれ異なる。螺旋傾斜角度αは、通常、スリット61のピッチが狭いほど小さくなり、スリット61のピッチが広いほど大きくなる。
【0028】
シャフト本体部60の柔軟部62は、スリット61が形成されることで、曲げ剛性が低減されて曲がりやすい柔軟な構造となっている。第1柔軟部64は、最もスリット61のピッチが狭いため、第2柔軟部65および第3柔軟部66よりも曲げ剛性が低い。第2柔軟部65は、第1柔軟部64よりもスリット61のピッチが広く、第3柔軟部66よりもスリット61のピッチが狭いため、第1柔軟部64よりも曲げ剛性が高く、第3柔軟部66よりも曲げ剛性が低い。第3柔軟部66は、先端側へ向かってスリット61のピッチが漸次的に狭くなっているため、先端側ほど曲げ剛性が低い。このように、シャフト本体部60は、基端側には十分な剛性が備えられるとともに、先端側ほど柔軟な構造となっているため、曲げ剛性が高い基端側の部位によってアブレーションカテーテル10の十分な押し込み性を確保できるとともに、曲げ剛性が低く柔軟な先端側の部位によって、アブレーションカテーテル10が生体管腔の湾曲部位をも容易に通過でき、高い到達性および操作性が得られる。また、スリット61のピッチが段階的に変化しており、かつ第3柔軟部66では、曲げ剛性が先端側へ向かって漸次的(傾斜的)に減少しているため、シャフト本体部60が急激に曲がる際にも応力が1カ所に集中することがなく、シャフト部20におけるキンクの発生を低減させることが可能である。
【0029】
スリット61は、対向して配置される対をなす対向面100,110により構成されており、一方の対向面100には、突出して形成される凸部101が複数形成され、他方の対向面110には、凸部101が入り込む凹部111が複数形成されている。凸部101は、螺旋傾斜角度αに対してスリット61の角度が局所的に変化して段差状に形成される段差部102を備えている。段差部102は、
図7に示すように、スリット61の螺旋を解く方向(
図6の矢印側から操作する場合、白抜き矢印を参照)へシャフト本体部60が捩れる際に、段差部102と対向して配置される当接部112と当接し、過度な捩れを抑制する役割を果たす。すなわち、段差部102は、凸部101に形成された螺旋傾斜角度αに対してスリット61の角度が局所的に変化して段差状に形成されている部分であり、かつ、スリット61を有する管状体を螺旋を解く方向に捩じった際に凹部111と当接する部分である。また、
図7のように
図6と逆向きのスリット170を形成してもよい。その場合、スリット170の螺旋を解く方向は
図6と逆方向になる。
【0030】
そして、段差部102の軸心方向Xへの長さL1〜L3は、
図5,6に示すように、スリット61のピッチが相対的に大きい部位において、小さい部位よりも長く形成される。したがって、第1柔軟部64よりもスリット61のピッチが広い第2柔軟部65に設けられる段差部102の長さL2は、第1柔軟部64に形成される段差部102の長さL1よりも長い。また、第2柔軟部65よりもスリット61のピッチが広い第3柔軟部66に設けられる段差部102の長さL3は、第2柔軟部65に形成される段差部102の長さL2よりも長い。そして、ピッチが基端方向へ向かって徐々に広くなる第3柔軟部66に設けられる段差部102の長さL3は、基端側の段差部102ほど長くなっている。すなわち、ピッチが広く螺旋傾斜角度αが大きくなる部位に設けられる段差部102ほど、段差部102の長さL1〜L3が長くなっている。ピッチが広く螺旋傾斜角度αが大きい部位ほど、
図14に示す比較例のように、凸部160が凹部161から完全に離脱して元の位置に戻り難くなるのに対し、本実施形態では、螺旋傾斜角度αが大きくなる部位に設けられる段差部102ほど、段差部102の長さL1〜L3を長くすることで、螺旋傾斜角度αの程度に応じて、凸部101を凹部111から離脱し難くすることができる。ここで、段差部102の軸心方向Xへの長さは、凸部101と接する軸心方向Xと直交する直線と、螺旋傾斜角度αを有するスリット61の対向面100上でスリット61の角度が局所的に変化する部位を通る軸心方向Xと直交する直線との間の距離をいう。
【0031】
また、凸部101は、突出方向の先端部において、突出方向へ向かって幅が減少している。このため、凸部101が、凹部111から抜ける方向へ移動できるとともに凹部111に対して元の位置へ戻ることができ、シャフト本体部60の曲げ剛性が局所的に大きくなることを抑制して、良好な柔軟性を提供できる。
【0032】
また、段差部102は、スリット61の角度の局所的な変化量βが90度を超えることが好ましい。具体的には、螺旋傾斜角度αを有するスリット61の対向面100に対する、凸部61の段差部102が形成する角度が90度を超えるように形成することが好ましい。このように構成することで、スリット61の螺旋を解く方向へ基端シャフト60が捩れる際に、
図4に示すように、凸部101に設けられる段差部102が凹部111に設けられる当接部112に引っ掛かりやすくなり、過度の捩れをより確実に抑制できる。また、螺旋を解く方向へ基端シャフト60を捩じった際に、凸部101が凹部102から抜けるのを抑制できる。この際、より確実に上述の効果を発揮するために、螺旋傾斜角度αを有するスリット61の対向面110に対する、凸部61の当接部112が形成する角度が90度を超えないように形成することが好ましい。なお、スリット61の角度の局所的な変化量βは、90度を超えていなくてもよい。
【0033】
また、段差部102は、軸心方向Xと略平行となるように形成されており、軸心方向Xに対する傾斜角度θが少なくとも±5度以内であることがより好ましい。段差部102が軸心方向Xと±5度以内で略平行となることで、シャフト本体部60が湾曲する際に凸状に湾曲する側、すなわちスリット61の隙間の幅が広がる側に設けられる凸部101が、凹部111内を移動して容易に離れることができるとともに凹部111に対して元の位置へ戻りやすくなる。このため、凸部101が凹部111から離れることができずにシャフト本体部60の曲げ剛性が局所的に大きくなることを抑制でき、良好な柔軟性を提供できる。また、スリット61の隙間の幅が広がる側に設けられる凸部101が凹部111内を移動して容易に離れやすいという点から、段差部102は軸心方向Xに平行となるように形成されていることがよりさらに好ましい。なお、段差部102は、軸心方向Xに対する傾斜角度θが±5度以内でなくてもよい。
【0034】
また、スリット61は、スリット61の隙間の幅が一定に形成されていることが好ましい。そのように構成することで、凸部101と凹部111の外郭の形状がほぼ同一となる。そのため、スリット61の螺旋を解く方向へ基端シャフト60が捩れる際に、
図4に示すように、凸部101に設けられる段差部102が凹部111に設けられる当接部112に引っ掛かりやすくなり、過度の捩れをより確実に抑制できる。
【0035】
また、螺旋を描くことで軸心方向Xに並んで隣接する各々のスリット61に設けられる段差部102は、シャフト本体部60の周方向における位置が異なり、隣接する段差部102同士が軸心方向Xに重ならない。具体的には、少なくとも連続する2つの隣接する段差部102同士が軸心方向Xに重ならない。一例として、段差部102は、螺旋に沿ってシャフト本体部60の周方向に125度、270度、または450度毎に形成することができる。したがって、シャフト本体部60の曲げ剛性が周方向位置に依存して偏らず、良好な柔軟性を提供できる。なお、段差部102は、シャフト本体部60の周方向に同一角度毎に形成されなくてもよい。また、全ての段差部102が、シャフト本体部60の軸心方向Xに全く重ならないようにしてもよい。
【0036】
また、凸部101は、先端側または基端側のうち、スリット61の螺旋傾斜角度αが大きくなる側、すなわちピッチが広がる側である基端側へ突出して形成されている。このため、スリット61のピッチが変化する部位において、凸部101が延在する方向に凸部101を形成するための十分な長さを確保できる。なお、凸部は、先端側または基端側のうち、スリットのピッチが狭くなる方向へ突出して形成されてもよい。また、凸部の向きは、各凸部によって異なってもよい。
【0037】
そして、
図6に示すように、スリット61の角度が局所的に変化する部位、すなわち凸部101のエッジの凸状となる角部101Aおよび凹状となる隅部101B、並びに凹部111のエッジの凸状となる角部111Aおよび凹状となる隅部111Bが、曲率を有するように形成されている。このため、レーザー等によりスリット61を形成する際に、前述の角部101A,111Aおよび隅部101B,111Bを加工するためにレーザー等を材料となる管体に対して停止させる必要がなくなり、レーザー等を管体に対して常に移動させながら形成することができ、角部101A,111Aおよび隅部101B,111Bにレーザー加工により発生した熱が不要に入らず、管体の材料に変質や変形が起こるのを抑制できる。また、角部101A,111Aおよび隅部101B,111Bが曲率を有して形成されることで、鋭利なエッジがなくなり、安全性が向上する。
【0038】
シャフト本体部60には比較的剛性の高い材質、例えばNi−Ti、真鍮、SUS、アルミ等の金属を用いることが好ましい。なお、比較的剛性の高い材質であれば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等の樹脂を用いることもできる。
【0039】
シャフト本体部60の高剛性部63は、寸法は特に限定されないが、外径が約0.5mm〜3.0mm、肉厚が約100μm〜300μmである。
【0040】
シャフト本体部60の第1柔軟部64は、寸法は特に限定されないが、外径が約0.5mm〜3.0mm、肉厚が約100μm〜300μm、ピッチは約0.2mm〜1.0mmである。
【0041】
シャフト本体部60の第2柔軟部65は、寸法は特に限定されないが、外径が約0.5mm〜3.0mm、肉厚が約100μm〜300μm、ピッチは約1.0mm〜2.0mmである。
【0042】
シャフト本体部60の第3柔軟部66は、寸法は特に限定されないが、外径が約0.5mm〜3.0mm、肉厚が約100μm〜300μm、ピッチは約2.0mm〜5.0mmである。
【0043】
スリット61の隙間の幅は、特に限定されないが、約0.01mm〜0.05mmである。
【0044】
被覆部67は、特に限定されないが、絶縁性を備える材料が好ましく、例えばポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0045】
加熱部30は、
図2,3に示すように、シャフト部20の先端部に固定された単極(モノポーラ)の電極チップ31(熱要素)と、電極チップ31へ電流を供給するリード線32とを備えている。電極チップ31は、基端側がシャフト部20の先端部に接合されており、先端側が半球形状で形成されている。電極チップ31の先端側が半球形状であることで、接触する生体組織の損傷を低減できる。リード線32は、シャフト部20の内部を貫通し、の先端側が電極チップ31に接合されており、基端側が、操作部70に設けられるコネクタ71の端子の1つに接合されている。加熱部30は、腎交感神経RNの線維に熱的神経変調を誘発させることができ、神経線維に、例えば、壊死、熱変質、または剥離等を生じさせる。加熱部30による加熱温度は、摂氏35°〜85°が好ましいが、これに限定されない。
【0046】
測温部40は、加熱部30による加熱を監視および制御するために設けられる。測温部40は、例えば、2本の異なる種類の金属線41,42を備えた熱電対であり、先端の接点43が先端チップ31に固定される。なお、測温部40は、温度を計測できるのであれば熱電対でなくてもよく、例えばサーミスタ等であってもよい。熱電対の金属線41,42の各々の基端部は、操作部70に設けられるコネクタ71の異なる端子に接合されている。
【0047】
なお、図示していないが、アブレーションカテーテル10には側温部40以外にも、電極チップ31と生体組織との接触状態を調べるようなインピーダンスセンサを設けていてもよい。
【0048】
牽引ワイヤ50は、先端側のワイヤ先端部51がシャフト部20の先端部の内壁面の一側に固定され、基端側が、操作部70に設けられるワイヤ固定部81に固定される。したがって、操作部70によって牽引ワイヤ50を牽引することで、シャフト部20のワイヤ先端部51が固定されている側が牽引され、略直線状に延びるシャフト部20の先端部の柔軟部62を含む部位を撓ませることができ、牽引ワイヤ50による牽引を緩めることで、シャフト部20の先端部を、柔軟部62自体の弾性力によって元の略直線状に復帰させることができる。
【0049】
操作部70は、
図1,2に示すように、操作者がアブレーションカテーテル10を操作する部位であり、操作者が保持する操作本体部80と、操作本体部80に対して軸心方向へスライド移動が可能なスライド部90とを備えている。
【0050】
操作本体部80は、略円筒形状であって、スライド部90がスライド可能に接するとともにコネクタ71等を収容する本体内筒部82と、本体内筒部82の外周を覆う本体外筒部83とを備えている。本体外筒部83の先端側の内周面には、ねじ溝85が形成されており、本体内筒部82の先端側の外周面に形成されるねじ山84をねじ溝85に捩じ込むことで、本体外筒部83および本体内筒部82を互いに固定することができる。
【0051】
本体内筒部82の内側には、牽引ワイヤ50の基端側が固定されるワイヤ固定部81が形成されている。また、本体内筒部82の内側の基端部には、コネクタ71が固定されている。コネクタ71は、熱電対の金属線41,42およびリード線32の各々が電気的に接続される端子を備えている。コネクタ71は、外部に設けられるエネルギ供給装置120から延びるケーブル121の供給側コネクタ122を接続可能となっている。したがって、ケーブル121および供給側コネクタ122を介して、コネクタ71に接続されたリード線32に電流を供給でき、かつコネクタ71に接続された熱電対に生じる電圧を計測することができる。
【0052】
本体内筒部82には、スライド部90と摺動する内周面から突出するようにガイドピン86が固定される。
【0053】
スライド部90は、本体内筒部82の先端側の内側にスライド可能に収容されるスライド側内筒部91と、スライド側内筒部91の先端側に形成されて操作者が操作する略円盤形状のスライド側操作部92とを備えている。スライド側操作部92は、操作者が操作本体部80を保持しつつ操作しやすいように、操作本体部80よりも外径が大きく形成されている。
【0054】
スライド部90は、本体内筒部82と摺動する外周面に、軸心方向Xへ延びるガイド溝93が形成されており、このガイド溝93に、本体内筒部82から延びるガイドピン86が軸心方向Xへ移動可能に収容される。したがって、スライド部90は、操作本体部80に対して軸心方向Xへの移動が許容されるとともに、操作本体部80に対して回転方向への移動が規制される。
【0055】
本体内筒部82、本体外筒部83およびスライド部90の構成材料としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の樹脂が好適に使用できる。また、これらの材料を任意に組み合わせたものを用いてもよい。
【0056】
耐キンクチューブ95は、スライド部90の先端付近におけるシャフト部20のキンク(折れ曲がり)を防止するために、スライド側操作部92の先端側およびシャフト部20の外側に載置されている。
【0057】
エネルギ供給装置120は、ケーブル121および供給側コネクタ122を介して、加熱部30へ生体組織をアブレーションするための高周波の電気エネルギを供給可能であり、かつ測温部40の熱電対に生じる電圧を計測できる。エネルギ供給装置120には、コンピュータ等の演算手段が接続または内蔵されて、加熱部30による加熱温度を監視しつつ、加熱温度および加熱時間等を制御することができる。供給される電気エネルギは、0.1W〜8.0Wが好ましいが、これに限定されない。
【0058】
また、エネルギ供給装置120には、電極チップ31と対極をなし、体表面に張り付けられて電流を分散しつつ回収可能な対極板130が接続される。なお、アブレーションは、必ずしも電気エネルギにより実施されなくてもよく、例えば、マイクロ波エネルギ、超音波エネルギ、レーザー等のコヒーレント光、インコヒーレント光、加熱された流体、冷却された流体等によって実施されてもよい。アブレーションは、加熱のみならず冷却によって行われてもよい。
【0059】
次に、本実施形態に係るアブレーションカテーテル10の使用方法を説明する。
【0060】
まず、エネルギ供給装置120から延びるケーブル121の供給側コネクタ122をコネクタ71に接続し、対極板130を患者の体表面に張り付ける。そして、スライド部90を操作本体部80に近接させて牽引ワイヤ50を緩め、アブレーションカテーテル10の先端部を略直線状とする。
【0061】
次に、大腿部において大腿動脈を露出させ、周知の技法によって大腿動脈に経皮的にシース(図示せず)を取り付ける。次に、シースを介してガイドワイヤ(図示せず)を大腿動脈内へ挿入し、大腿動脈から腸骨動脈を経て大動脈Aの腎動脈RAの近傍まで導入する。この後、ガイドワイヤに沿ってガイディングカテーテル140を挿入し、
図9に示すように、ガイディングカテーテル140の先端開口部141を腎動脈RAの入口まで導く。この後、ガイドワイヤを抜去する。なお、ガイドワイヤは、例えば橈骨動脈、上腕動脈、腋窩動脈等の大腿動脈以外の血管から導入されてもよい。
【0062】
次に、ガイディングカテーテル140の基端側からガイディングカテーテル140の内部にアブレーションカテーテル10のシャフト部20を挿入し、ガイディングカテーテル140の先端開口部141からシャフト部20を突出させ、腎臓Rへ向かう腎動脈RA内へ挿入する。このとき、シャフト本体部60に、スリットが形成されない高剛性部63が設けられることで高い押込み性およびトルク伝達性を得つつ、柔軟な柔軟部62によって、血管の湾曲部位等をも容易に通過でき、高い到達性および操作性が得られる。特に、大動脈Aから腎動脈RAへの入口は大きく屈曲しているが、この部位には、シャフト本体部60の主に第3柔軟部66が位置し、シャフト部20が柔軟に撓みつつ、先端側へトルクを伝達可能に挿通される。
【0063】
次に、操作本体部80およびスライド部90を操作して電極チップ31の軸心方向位置を調整しつつ、スライド部90を操作本体部80に対して先端側へ移動させ、または操作本体部80をスライド部90に対して基端側へ移動させて、牽引ワイヤ50を牽引する。これにより、シャフト部20の先端側の主に第1柔軟部64および第2柔軟部65が設けられる部位が柔軟に湾曲し、腎交感神経RNが隣接する第1の目的位置P1に、電極チップ31が接触する。
【0064】
次に、エネルギ供給装置120から電極チップ31へ高周波の電気エネルギを供給すると、対極板130が体表面に設けられているために、電極チップ31の近傍の生体組織が加熱される。これにより、電極チップ31の近傍に位置する腎交感神経RNの線維に、例えば、壊死、熱変質、または剥離を生じさせる。
【0065】
この後、操作部70を操作して、
図10,11に示すように、電極チップ31を腎動脈RAの長手方向軸に沿って異なる位置へ移動させるとともに、円周方向へも異なる位置へ移動させ、腎交感神経RNが隣接する第2の目的位置P2に、電極チップ31を接触させる。電極チップ31を移動させる際には、スライド部90を操作本体部80に近接させて牽引ワイヤ50を緩め、シャフト部20の先端を略直線状とした後、操作部70全体を軸心方向Xへ移動させることで、電極チップ31を腎動脈RAの長手方向軸に沿って移動させる。そして、操作部70を中心軸に沿って回転させることで、シャフト部20により伝達されるトルクによって電極チップ31を回転させる。そして、スライド部90を操作本体部80に対して先端側へ移動させ、または操作本体部80をスライド部90に対して基端側へ移動させることで、牽引ワイヤ50を牽引する。これにより、シャフト部20の先端側の主に第1柔軟部64および第2柔軟部65が設けられる部位が、柔軟に湾曲し、腎交感神経RNが隣接する第2の目的位置P2に、電極チップ31を接触させる。この後、エネルギ供給装置120から電極チップ31へ高周波の電気エネルギを再び供給し、電極チップ31の近傍に位置する腎交感神経RNの線維に壊死、熱変質、または剥離を生じさせる。このように、腎動脈RAの長手方向軸に沿って異なる位置へ移動させるとともに、円周方向へも異なる位置へ移動させることで、腎動脈外膜及び外膜外に局在する腎交感神経RNを腎動脈RA内において空間的に全周で壊死、熱変質、または剥離を生じさせることができる。この際、腎動脈RAが腎動脈RN内の断面において全周的な損傷を受けないため、血管狭窄のリスクを低減できる。
【0066】
そして、電極チップ31を腎動脈RAの長手方向軸に沿って異なる位置であって円周方向へも異なる位置P3、P4・・・へ順次移動させつつ、電極チップ31へ高周波の電気エネルギを再び供給し、電極チップ31の近傍に位置する腎交感神経RNの線維に、壊死、熱変質、または剥離を生じさせる。本実施形態では、電極チップ31を腎動脈RAの長手方向軸に沿って約0.3〜1.0mm毎に移動させつつ、円周方向に約90〜270度毎に回転させて、腎動脈RAの内壁面に螺旋を描くようにスポット的に約4〜6箇所の損傷部位を形成する。なお、加熱する位置や数は、上記の範囲内でなくてもよい。
【0067】
そして、上記の処置を左右両側の腎動脈RAで施し、アブレーションカテーテル10、ガイディングカテーテル140およびシースを除去して、手技が完了する。
【0068】
また上記の実施形態では、シャフト本体部60が、
図5のような高剛性部63、第1柔軟部64、第2柔軟部65、第3柔軟部66から構成されており、かつ、第1柔軟部64、第2柔軟部65、第3柔軟部66に本発明に係る螺旋状のスリットが施されている形態について説明したが、これに限られない。例えば、
図5に示されるシャフト本体部60は、第1柔軟部64がどの方向に対しても柔軟性を有しているため、牽引ワイヤ50を牽引することにより、第1柔軟部64がどの方向に湾曲するかが予想できず、電極チップ31が腎動脈RA内のどの位置と接触するのかを予想しにくい。そのため、
図12に示すように、管状体の片側のみに湾曲し易い加工を施すことにより、第1柔軟部64’が一定の方向にのみ湾曲するように構成した方がより好ましい。このように構成することで、操作本体部80をスライド部90に対して基端側へ移動させて牽引ワイヤ50を牽引する際、電極チップ31をより確実に湾曲させたい方向に曲げることができる。そのため、電極チップ31を腎交感神経RN内の目的部位に接触させやすい。
【0069】
具体的に説明すると、
図12の構成は、第1柔軟部64’の構成を除き、
図5の高剛性部63、第2柔軟部65、第3柔軟部66と同様の構成を備える。例えば、
図12の第1柔軟部64’は、
図13のように管状体の片側のみにスリット180が形成されている。そのスリット180の隙間の幅は、特に限定されないが、約0.05mm〜0.3mmである。また、このシャフト本体部の柔軟部は、寸法は特に限定されないが、外径が約0.5mm〜3.0mm、肉厚が約50μm〜300μmであり、スリット180の間隔は約0.2mm〜1.0mmである。このように構成することにより、牽引ワイヤを牽引した際、スリット180がある片側が収縮されるように内側となって湾曲する。また、第1柔軟部64’にスリット180を設ける場合、第1柔軟部64’に設けるスリット180の形状や幅を調節することにより、第1柔軟部64’がシャフト本体部の軸心に対して湾曲する角度を調節することが可能である。第1柔軟部64’がシャフト本体部の軸心に対して湾曲する角度は、腎動脈の内壁面に接触し易いように、45度〜90度未満の範囲で設定することが好ましい。ここで、第1柔軟部64’が90度以上に湾曲すると、第1湾曲部64’の先端にある電極チップ(図示せず)よりも基端側が腎動脈の内壁面に接触する可能性が高くなるため、電極チップが腎動脈に接触しにくくなり、腎交感神経のアブレーションを行いにくくなる。
【0070】
以上のように、本実施形態に係るアブレーションカテーテル10は、シャフト本体部60(管状体)が、スリット61の螺旋傾斜角度αが異なる部位を備えることで、軸心方向Xの位置によって柔軟性を任意に設定して操作性を向上できる。そして、シャフト本体部60のスリット61を構成する対をなす対向面100,110の一方の対向面100に、螺旋傾斜角度αに対する角度が局所的に変化する段差部102が形成され、他方の対向面110に、スリット61の螺旋を解く方向へシャフト本体部60が捩れた際に段差部102が当接する当接部112が形成されるため、螺旋を解く方向へ捩れた際に段差部102が当接部112に当接し、スリット61の隙間が開くことが抑制される。さらに、段差部102の軸心方向Xへの長さL1〜L3が、スリット61の螺旋傾斜角度αが相対的に大きい部位において小さい部位よりも長く形成されるため、スリット61の螺旋傾斜角度αが大きくなることで段差部102の当接部112に対する引っ掛かりが外れやすい部位ほど、段差部102の長さが長くなって当接部112から外れ難くなり、回転方向によるトルク伝達性能の異方性を極力抑えて操作性を向上できる。
【0071】
また、例えばスリットを構成する対向面を部分的に接続するように、スリットをこま切れ状態とすることでスリットの開きを抑制することもできるが、この場合には、対向面が接続する部位に応力が集中し、材料が疲労して変形や破断、予期しない動作が生じ得る。これに対し、本実施形態では、スリット61が途切れることなく連続して形成されているため、材料の疲労による変形や破断、予期しない動作が抑制される。
【0072】
また、螺旋傾斜角度αに対するスリット61の角度の局所的な変化量βが90度を超えるため、スリット61の螺旋を解く方向へシャフト本体部60が捩れる際に、段差部102が当接部112に引っ掛かりやすくなり、過度の捩れをより確実に抑制できる。
【0073】
また、段差部102の軸心方向Xに対する傾斜角度θが±5度以内であるため、段差部102が軸心方向Xと略平行となり、シャフト本体部60が湾曲する際に凸状に湾曲する側、すなわちスリット61の幅が広がる必要がある側に設けられる段差部102が、凹部111内で移動できるとともに凹部111に戻りやすくなる。このため、凸部101が凹部111から移動できずにシャフト本体部60の曲げ剛性が局所的に大きくなることを抑制でき、良好な柔軟性を提供できる。
【0074】
また、スリット61の隙間の幅が一定になるため、スリット61を構成する対をなす対向面100,110の一方から突出して形成される段差部102と、対向面100,110の他方に段差部102と当接するように形成された当接部112の形状がほぼ同一となる。このため、スリット61を構成する対をなす対向面100,110の一方から突出して形成される凸部101と、対向面100,110の他方に凸部101が入り込むように形成される凹部111の外郭の形状がほぼ同一となる。このため、スリット61の螺旋を解く方向へシャフト本体部60(管状体)が捩れた際に、凸部101に設けられる段差部102が凹部111に設けられる当接部112に引っ掛かりやすくなり、過度の捩れをより確実に抑制できる。
【0075】
また、螺旋を描くことでシャフト本体部60(管状体)の軸心方向Xに並んで隣接する各々のスリット61に設けられる段差部102は、シャフト本体部60の周方向における位置が異なるため、段差部102がシャフト本体部60の軸心方向Xに重ならない。このため、シャフト本体部60の曲げ剛性が周方向位置に依存して偏らず、シャフト20に良好な柔軟性を提供できる。
【0076】
また、シャフト本体部60(管状体)は、螺旋傾斜角度αが漸次的に変化する部位を有し、当該部位に設けられる複数の段差部102の軸心方向Xへの長さL3が、螺旋傾斜角度αが相対的に小さい部位から大きい部位へ向かって漸次的に長くなるため、シャフト本体部60の螺旋傾斜角度αが大きい部位の高い剛性によって十分な押し込み性を確保できるとともに、螺旋傾斜角度αが小さい部位の高い柔軟性によって、生体管腔の湾曲部位等をも容易に通過でき、高い到達性および操作性が得られる。さらに、螺旋傾斜角度αが漸次的に変化することで、曲げ剛性が漸次的に減少しているため、シャフト本体部60が急激に曲がる際にも応力が1カ所に集中することがなく、アブレーションカテーテル10におけるキンクの発生を低減させることが可能である。
【0077】
また、凸部101は、先端側または基端側のうち、螺旋傾斜角度αが大きくなる方向である側(本実施形態では基端側)へ突出して形成されているため、螺旋傾斜角度αが変化する部位において、凸部101が延在する方向に凸部101を形成するための十分な長さを確保できる。
【0078】
また、凸部101は、突出方向へ向かって幅が減少しているため、凸部101が、凹部111から離れることができるとともに凹部111に対して元の位置へ戻ることができ、シャフト本体部60の曲げ剛性が局所的に大きくなることを抑制して、良好な柔軟性を提供できる。
【0079】
また、段差部102におけるスリット61の角度が局所的に変化する部位が、曲率を有するように形成されるため、レーザー等によりスリット61を形成する際に、レーザー等を管体に対して停止させずに常に移動させながら形成することができる。そのため、レーザー加工により発生した熱が管体の材料に不要に入り、管体の材料が変質や変形するのを抑制できる。また、曲率を有するように形成されているため、鋭利なエッジがなくなり、安全性が向上する。
【0080】
また、シャフト本体部60(管状体)の先端側に測温部40を有するため、加熱温度を監視できるとともに、計測させる温度に基づいて加熱部30(熱要素)を制御することが可能となり、安全かつ適切なアブレーションを行うことができる。
【0081】
また、シャフト本体部60(管状体)の内部を通って先端部がシャフト本体部60の先端側に連結され、基端部を牽引することでシャフト本体部60を撓ませることが可能な牽引ワイヤ50を有するため、牽引ワイヤ50を牽引することで管状体を自在に撓ませて加熱部40(熱要素)を望ましい位置に位置決めでき、安全かつ適切なアブレーションを行うことができる。
【0082】
また、本実施形態に係るアブレーションカテーテル10が、腎動脈RAに挿入されて腎交感神経RNをアブレーションするものであるため、腎動脈RAの周囲に位置する腎交感神経RNを、腎動脈RAから効果的にアブレーションし、血圧の降圧効果を良好に得ることができる。
【0083】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、本実施形態では、電極チップ31はモノポーラ電極であるが、アブレーションカテーテルをバイポーラ電極になるように構成してもよい。
【0084】
また、本実施形態に係るアブレーションカテーテル10は、シャフト本体部60(管状体)が、スリット61の螺旋傾斜角度αが異なる3つの第1柔軟部64,第2柔軟部65,および第3柔軟部66を備えているが、螺旋傾斜角度αが異なる部位が存在するのであれば、構成は限定されない。したがって、例えば第3柔軟部66のようなスリット61の螺旋傾斜角度αが漸次的に変化する部位がなくてもよく、または、第3柔軟部66のようなスリット61の傾斜角度αが漸次的に変化する部位のみで形成されてもよい。また、本実施形態に係るアブレーションカテーテル10は、先端側ほどスリット61の螺旋傾斜角度αが小さくなるが、スリットの螺旋傾斜角度αが異なる部位の位置関係は、特に限定されず、例えば先端側ほど螺旋傾斜角度αが大きくなってもよく、または、螺旋傾斜角度αの大きい部位と小さい部位が交互に配置されてもよい。また、スリットの螺旋の向きは限定されず、または、スリットを複数有する多重螺旋構造であってもよい。
【0085】
また、本実施形態に係るアブレーションカテーテル10は、腎交感神経RNをアブレーションするものであるが、腎交感神経RN以外の生体組織のアブレーションに用いられてもよい。