(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955462
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
A47J27/00 103H
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-522717(P2015-522717)
(86)(22)【出願日】2014年6月2日
(86)【国際出願番号】JP2014064649
(87)【国際公開番号】WO2014199858
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2015年7月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-123592(P2013-123592)
(32)【優先日】2013年6月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(74)【代理人】
【識別番号】100166084
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】根岸 和善
(72)【発明者】
【氏名】橋元 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 智也
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−298980(JP,A)
【文献】
特開2012−10925(JP,A)
【文献】
特開2010−75521(JP,A)
【文献】
特開2007−44232(JP,A)
【文献】
特開2007−37634(JP,A)
【文献】
特開2007−325783(JP,A)
【文献】
特開2006−334119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する内ケースを備えた本体と、
前記内ケースの前記開口部の周縁部に載置されるフランジを有し該内ケースに出し入れ自在に収納される内釜と、
前記内釜の前記フランジの下面に当接するように前記内ケースの前記開口部の前記周縁部に配置された熱絶縁性を有するリング状の弾性部材と、
前記弾性部材を保持する保持リングとを備え、
前記弾性部材は、前記内釜の前記フランジの下面に当接するリング状の基部と、該リング状の基部から全周に亘って外向きに張り出す張出部とを備え、該張出部が前記保持リングと前記内ケースとの間に全周に亘って挟まれて固定され、
前記内ケースは、前記開口部の前記周縁部における前記弾性部材よりも外側となる部位に環状の段部を有し、
前記保持リングは、前記弾性部材の前記張出部を押さえる内リング部と、それよりも大径で下部に前記内ケースの前記環状の段部内に嵌入できる嵌入部を有する外リング部と、これら内リング部と外リング部とを結ぶ連結部とを有し、前記嵌入部の肉厚が当該保持リングの他の部分よりも薄くなっている炊飯器。
【請求項2】
前記内ケースにおける前記弾性部材の前記張出部と対向する部位に、弾性部材位置決め用の環状の突条が設けられているとともに、
前記弾性部材の前記張出部における前記内ケースの前記環状の突条と対向する部位に、該突条が嵌入できる環状の溝が設けられており、
前記弾性部材は、前記環状の溝の底部が前記保持リングと前記環状の突条との間に挟まれて固定されている請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記内ケースの前記開口部の内周壁よりも前記弾性部材が外側に配置されている請求項1又は2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記本体の前記内ケースの前記開口部を開閉する蓋体と、前記蓋体と係脱自在に前記本体に設けられたラッチと、前記ラッチを覆うラッチカバーとを更に備え、前記ラッチカバーと前記保持リングとが一体に構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記弾性部材の色と前記保持リングの色とを異ならせた請求項1〜4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記保持リングの連結部が外側に向かって下方に傾斜する斜面で形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内釜とこれを収容する本体の内ケースとの間の隙間から熱が外部へ放出されるのを阻止できる炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器において、内釜とこれを収容する本体の内ケースとの間の隙間から炊飯時及び保温時に熱が外部へ放出されるのを抑制して、省エネルギー化を図るようにしたものがある。例えば、本体の内ケースの開口部の周縁部における左右2個所に、それぞれ2列の円弧状突起によって溝を形成し、これら溝内には、それぞれ熱絶縁性を有する弾性部材を堤状に配置している。そして、弾性部材は、その上部を円弧状突起よりも上方に突出させて内釜のフランジ下面に当接できるようにしている。これによって、内釜と内ケースとの間の隙間から外部への放熱を抑制している。
このようなものにおいて、弾性部材の固定は、この弾性部材の複数個所に設けたアンカー部を、溝の底部の複数個所に形成した取り付け孔に差し込むことで行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4822915号公報(
図5〜
図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来は、熱絶縁性を有する弾性部材が、この弾性部材の複数個所に設けたアンカー部を、溝の底部の複数個所に形成した取り付け孔に差し込むことで、内ケースに固定されるようになっている。つまり、弾性部材は、全長に亘って固定されるものではなかった。そのため、弾性部材は、外れやすく、さらにアンカー部以外の部位が浮き上がりやすいという難点があった。
【0005】
また、溝と弾性部材とは、内ケースの開口部の周縁部における左右2個所に設置されている。つまり、溝と弾性部材は、内ケースの開口部の周縁部の全周に亘って設置されたものではなかった。そのため、内釜と内ケースとの間の隙間から弾性部材が設置されていない部位を通して熱が外部へ放出されるのを阻止できなかった。
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、弾性部材の浮き上がりを防止でき、かつ内釜と内ケースとの間の隙間から外部への放熱を阻止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、上部に開口部を有する内ケースを備えた本体と、内ケースの開口部の周縁部に載置されるフランジを有し内ケースに出し入れ自在に収納される内釜と、内釜のフランジの下面に当接するように内ケースの開口部の周縁部に配置された熱絶縁性を有するリング状の弾性部材と、弾性部材を保持する保持リングとを備え、弾性部材は、内釜のフランジの下面に当接するリング状の基部と、このリング状の基部から全周に亘って外向きに張り出す張出部とを備え、張出部が保持リングと内ケースとの間に全周に亘って挟まれて固定され
、内ケースは、開口部の周縁部における弾性部材よりも外側となる部位に環状の段部を有し、保持リングは、弾性部材の張出部を押さえる内リング部と、それよりも大径で下部に内ケースの環状の段部内に嵌入できる嵌入部を有する外リング部と、これら内リング部と外リング部とを結ぶ連結部とを有し、嵌入部の肉厚が保持リングの他の部分よりも薄くなっているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炊飯器によれば、内ケースの開口部の周縁部に、内釜のフランジの下面に当接するリング状の弾性部材を設けているので、炊飯時及び保温時に内釜と内ケースとの間の隙間から外部への放熱を阻止できる。このため、炊飯器が炊飯時及び保温時に消費するエネルギーを減少させることができる。
また、弾性部材は、内釜のフランジの下面に当接するリング状の基部と、このリング状の基部から全周に亘って外向きに張り出す張出部とを備え、張出部が保持リングと内ケースとの間に全周に亘って挟まれて固定されるので、弾性部材の浮き上がりを防止できる。
また、内ケースは、開口部の周縁部における弾性部材よりも外側となる部位に環状の段部を有し、保持リングは、弾性部材の張出部を押さえる内リング部と、それよりも大径で下部に内ケースの環状の段部内に嵌入できる嵌入部を有する外リング部と、これら内リング部と外リング部とを結ぶ連結部とを有し、嵌入部の肉厚が保持リングの他の部分よりも薄くなっているので、内ケ−スの上面側から見た時に、環状の段部と嵌入部との間に組立て易くするために設けられている隙間を、保持リングによって覆い隠し見え難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る炊飯器の全体構成を示す側面視の断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る炊飯器の全体構成を示す正面視の断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る炊飯器を内釜を収納して蓋体を開けた状態で示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る炊飯器を内釜を取り出して蓋体を開けた状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る炊飯器を説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。
なお、以下の説明において、理解を容易にするために位置を表す用語(例えば「上」、「下」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものではない。
【0011】
実施形態.
図1は本発明の実施形態に係る炊飯器の全体構成を示す側面視の断面図である。
図2は
図1のA部の拡大断面図である。
図3は本発明の実施形態に係る炊飯器の全体構成を示す正面視の断面図である。
図4は
図3のB部の拡大断面図である。
実施形態に係る炊飯器100は、
図1及び
図3に示すように、本体1と、本体1にヒンジ2で結合されてラッチ3と解除ボタン4とによって開閉される蓋体5とを備えている。また、炊飯器100は、本体1内に、上部に開口部6aを有し、底部にコイル台が固定されている樹脂製の内ケース6を備えており、内ケース6には、内釜7が出し入れ自在に収容される。コイル台の底部外周には、内釜7を電磁誘導加熱する加熱コイル8が配置されている。また、コイル台には、その底部中央に、貫通穴が形成され、この貫通穴に、内釜7の下面に接触して内釜7の温度を検出する温度センサー9が出没自在に設置されている。加熱コイル8は、電源基板11に実装された駆動部によって高周波電力が供給され内釜7を電磁誘導加熱する。すなわち、駆動部は、商用交流電源からの交流電圧を、図示しない整流部で一旦直流に変換し、その後、スイッチング素子のスイッチングによって高周波に変換し、この高周波電流を加熱コイル8に供給する。
【0012】
内釜7は、その上端にフランジ7aが形成され、このフランジ7aが内ケース6への収納時に、内ケース6の開口部6aの周縁部に載置されて支持されるようになっている。また、内釜7は、内ケース6の開口部6aの周縁部に載置される際、この開口部6aの周縁部に配置された熱絶縁性を有するシリコンゴム製のリング状の弾性部材20がフランジ7aの下面に当接し、内ケース6の内周面と内釜7の外周面との間の隙間gが閉塞されるようになっている。つまり、炊飯時及び保温時には、隙間gが蓄熱空間として構成される。さらに、内釜7は、蓋体5の閉時に、蓋体5側に設けたパッキン12がフランジ7aの上面に押圧されることによって密閉される。
【0013】
弾性部材20は、
図2及び
図4に示すように、内ケース6の開口部6aの内周壁6bよりも外側に配置されている。弾性部材20は、内釜7のフランジ7aの下面に当接するリング状の基部20aと、リング状の基部20aから全周に亘って外向きに張り出す張出部20bとを有する。弾性部材20の外側には、これを保持する保持リング21が配置されており、弾性部材20は、張出部20bが保持リング21と内ケース6との間に全周に亘って挟まれて固定される。
【0014】
これを更に詳述すると、内ケース6における弾性部材20の張出部20bと対向する部位には、弾性部材位置決め用の環状の突条6cが設けられている。一方、弾性部材20における内ケース6の環状の突条6cと対向する張出部20bには、環状の突条6cが嵌入できる環状の溝20cが設けられている。つまり、弾性部材20は、環状の溝20cの底部が保持リング21と環状の突条6cとの間に挟まれて固定される。
【0015】
内ケース6は、開口部6aの周縁部における弾性部材20よりも外側となる部位に環状の段部6dを有している。
【0016】
保持リング21は、弾性部材20の張出部20bを押さえる内リング部21aと、それよりも大径で下部に内ケース6の環状の段部6d内に圧入できる嵌入部21dを有する外リング部21bと、これら内リング部21aと外リング部21bとを結ぶ連結部21c,21eとを有する。また、保持リング21は、嵌入部21dの肉厚が当該保持リング21の他の部分よりも薄くなっていて、内ケ−スの上面側から見た時に、環状の段部6dと嵌入部21dとの間に組立て易くするために設けられている隙間が、保持リング21によって覆い隠され見え難くなっている。
【0017】
また、保持リング21は、奥側に位置する連結部21e(
図2)以外の連結部21c(
図4)が、外側に向かって下方に傾斜する斜面に形成され、これによって内釜7のフランジ7aの下方に指を挿入できる空間が形成されるので、内釜7の出し入れが容易となっている。
【0018】
図5は本発明の実施形態に係る炊飯器を内釜を収納して蓋体を開けた状態で示す斜視図である。
図6は、本発明の実施形態に係る炊飯器を内釜を取り出して蓋体を開けた状態で示す斜視図である。
図5及び
図6に示すように、本体1の内ケース6の開口部6aを開閉する蓋体5と、蓋体5と係脱自在に本体1にラッチ3が設けられており、保持リング21には、ラッチ3の係合部を覆うラッチカバー21fが一体に設けられている。ラッチカバー21fは、これまでは内ケース6側に設けられ、又は別体で構成されていた。そのため、金型構造が複雑となったり、部品点数が増える要因となっていた。ラッチカバー21fを保持リング21に一体に設けることで、部品点数を増やさず、かつ金型構造の簡素化を図ることができる。なお、保持リング21は、
図5及び
図6のように手前側の左右2個所と奥側の左右2個所で、それぞれねじ30によって内ケース6に固定されるようになっている。
【0019】
また、本発明の実施形態に係る炊飯器100においては、シリコンゴム製の弾性部材20の色と樹脂製の保持リング21の色とを異ならせており、これによって組立時に弾性部材20の付け忘れを防止できるようにしている。
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る炊飯器100の動作を
図1〜
図6に基づき説明する。
【0021】
使用者によって操作部からの設定に基づく炊飯指示等の加熱開始の指示がなされると、制御部は、駆動部の制御を開始する。駆動部は、商用交流電源からの交流電圧を、整流部で一旦直流に変換し、その後、スイッチング素子のスイッチングによって高周波に変換し、この高周波電流が加熱コイル8に供給される。加熱コイル8に高周波電流が流れると、加熱コイル8からは交番磁界が発生し、内釜7に磁束が与えられる。これによって内釜7には渦電流が発生し、この渦電流と内釜7の電気抵抗によってジュール熱が発生し、内釜7が加熱され、炊飯が行われる。
【0022】
炊飯動作中は、弾性部材20で覆われている内釜7の内側と、内釜7の外側、つまり内ケース6の内周面と内釜7の外周面との間の隙間gも相当の高温となる。従来は、弾性部材が内ケース6の開口部6aの周縁部における左右2個所に分かれて配置されていたので、隙間gから弾性部材が設置されていない部位を通して熱が外部へ放出されるのを阻止できなかった。このため、隙間g内の熱を有効利用することができず、外部に放散されており、炊飯効率やその後の保温性能があまり高くはなかった。
【0023】
本発明の実施形態に係る炊飯器100は、内ケース6の開口部6aの周縁部に、内釜7のフランジ7aの下面に当接するリング状の弾性部材20を設けているので、炊飯時及び保温時に内釜7と内ケース6との間の隙間gから外部への放熱を阻止できる。このため、炊飯器100が炊飯時及び保温時に消費するエネルギーを減少させることができる。
【0024】
また、弾性部材20は、内釜7のフランジ7aの下面に当接するリング状の基部20aと、リング状の基部20aから全周に亘って外向きに張り出す張出部20bとを備え、張出部20bが保持リング21と内ケース6との間に挟まれて固定されるので、弾性部材20の浮き上がりを防止できる。
【0025】
また、内ケース6における弾性部材20の張出部20bと対向する部位には、弾性部材位置決め用の環状の突条6cを設け、弾性部材20における内ケース6の環状の突条6cと対向する張出部20bには、環状の突条6cが嵌入できる環状の溝20cを設けているので、製造時の組立作業が容易となる。
【0026】
また、弾性部材20は、環状の溝20cの底部が保持リング21と環状の突条6cとの間に挟まれて固定されるので、保持リング21は、小さな押付力(保持力)で弾性部材20を保持することができる。
【0027】
また、樹脂製の内ケース6の開口部6aの内周壁6bよりも摩擦力の高いシリコンゴム製の弾性部材20が外側に配置され、内釜7の出し入れ時に内釜周面が接触する部分には樹脂製の内周壁6bが配置されるので、内釜7の出し入れが容易となる。
【0028】
また、弾性部材20としてシリコンゴムを用いることで、耐久性、耐熱性の確保が容易となり、長寿命化が図れる。
【符号の説明】
【0029】
1 本体、2 ヒンジ、3 ラッチ、4 解除ボタン、5 蓋体、6 内ケース、6a 開口部、6b 内周壁、6c 環状の突条、6d 環状の段部、7 内釜、7a フランジ、8 加熱コイル、9 温度センサー、11 電源基板、12 パッキン、20 弾性部材、20a リング状の基部、20b 張出部、20c 環状の溝、21 保持リング、21a 内リング部、21b 外リング部、21c,21e 連結部、21d 嵌入部、21f ラッチカバー、30 ねじ、100 炊飯器、g 隙間。