特許第5955500号(P5955500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955500
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】放熱構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20160707BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
   H05K7/20 E
   H05K7/20 F
   H01L23/36 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-238662(P2010-238662)
(22)【出願日】2010年10月25日
(65)【公開番号】特開2012-94594(P2012-94594A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】395023853
【氏名又は名称】新井 稔之
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(74)【代理人】
【識別番号】100166659
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 和也
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(72)【発明者】
【氏名】新井 稔之
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3138726(JP,U)
【文献】 特開2006−351935(JP,A)
【文献】 特開2003−142639(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3019105(JP,U)
【文献】 特開2005−153296(JP,A)
【文献】 特開2005−332840(JP,A)
【文献】 特開2009−164419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ製のベースプレート(2)を備え、
該ベースプレート(2)の表層側が、ハンダ(H)の濡れ性を向上させるメッキ層によって形成され、
前記ベースプレート(2)の一方の面には基板(4)が密着して設けられるとともに、他方の面には放熱体(3)が設けられ、
基板(4)の熱がベースプレート(2)を介して放熱体(3)に伝導されて放熱されることにより、該基板(4)が冷却される構造とした放熱構造であって、
前記メッキ層には、少なくともニッケル及びスズが含まれ、
前記基板(4)には、取付孔(4a)が穿設され、
該取付孔(4a)部分にハンダ(H)が充填された状態であるとともに前記基板(4)の該取付孔(4a)部分に電子部品(11)が配置され、前記充填されたハンダ(H)によって前記ベースプレート(2)と前記基板(4)とが密着して接合している
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
前記放熱体(3)が波状に成形されたフィンよりなる
請求項1に記載の放熱構造。
【請求項3】
前記波状のフィン(3)が、方形波状のコルゲートフィンである
請求項2に記載の放熱構造
【請求項4】
波状のフィン(3)の山部の側部(9)に通気孔(9a)を穿設し、山部に対して交差する方向に通気性を確保してなる
請求項2又は3の何れかに記載の放熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品や電気回路等からなる対象物から発生する熱を放熱する放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製ベースプレートの一方の面に対象物を密着させて設けるとともに、他方の面に放熱体を設け、対象物及び放熱体の一方又は両方をベースプレートにハンダ付けし、対象物の熱がベースプレートを介して放熱体に伝導されて放熱されることにより、対象物を冷却する放熱構造が従来公知である。
【0003】
該構成の放熱構造では、対象物から放熱体に効率的に熱を伝えるために、対象物又は放熱体を直接ベースプレートにハンダ付けしており、このため、ベースプレートには、ハンダ付けが容易な(ハンダの濡れ性が良好な)鉄等を用いることが一般的であったが、近年の情報化社会の到来に伴う電子部品の小型化や、集積回路(LSI)の高密度化によって、冷却効率をさらに向上させることが急務であり、これに対して、鉄よりもさらに熱伝導率の高いアルミ製部材を、ベースプレートとして用いることが多くなった。
【0004】
これに対応して、アルミ製のベースプレートを用いる際、アルミニウム自体が鉄に比べてハンダに濡れ難いことを補うために、ベースプレートの表層を、ハンダの濡れ性を向上させるメッキ層によって形成し、アルミ製ベースプレートへのハンダ付けを容易にした特許文献1に示す放熱構造が開発され、公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−244396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記文献では、銅メッキによってメッキ層を形成しているが、銅メッキによる表面加工では、十分なハンダの濡れ性を確保できないことがあり、対象物又は放熱体をベースプレートに効率的にハンダ付けできない場合がある。
本発明は、アルミ製ベースプレートの一方の面に対象物を設けるとともに他方の面に放熱体を設け、対象物または放熱体をベースプレートにハンダ付けするにあたって、前記ベースプレートの表層側を最適なメッキ層によって形成し、作業を効率的に行うことが可能な放熱構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、アルミ製のベースプレート2を備え、該ベースプレート2の表層側が、ハンダHの濡れ性を向上させるメッキ層によって形成され、前記ベースプレート2の一方の面には基板4が密着して設けられるとともに、他方の面には放熱体3が設けられ、基板4の熱がベースプレート2を介して放熱体3に伝導されて放熱されることにより、該基板4が冷却される構造とした放熱構造であって、前記メッキ層には、少なくともニッケル及びスズが含まれ、前記基板4には、取付孔4aが穿設され、該取付孔4a部分にハンダHが充填された状態であるとともに前記基板4の該取付孔4a部分に電子部品11が配置され、前記充填されたハンダHによって前記ベースプレート2と前記基板4とが密着して接合していることを特徴としている。
【0008】
第2に、前記放熱体3が波状に成形されたフィンよりなることを特徴としている。
【0009】
第3に、前記波状のフィン3が、方形波状のコルゲートフィンであることを特徴としている。
【0010】
第4に、波状のフィン3の山部の側部9に通気孔9aを穿設し、山部に対して交差する方向に通気性を確保してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、ベースプレートの表層に、少なくともニッケル及びスズを含有するメッキ層を形成するため、対象物又は放熱体をベースプレートにハンダ付けする作業を、より効率的に行うことが可能になる。
【0012】
また、放熱体が波状に成形されたフィンよりなり、該波状のフィンの山部の側部に通気孔を穿設し、山部に対して交差する方向に通気性を確保すれば、該フィンによって、より効率的に対象物の冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の放熱構造を適用した放熱器の部分断面図である。
図2】放熱フィンの斜視図である。
図3】基板の製造工程を示す処理手順図である。
図4】コルゲートフィンの変形例を示す斜視図である。
図5】放熱フィンの他例を示す斜視図である。
図6】(A),(B)は、放熱体の一種であるヒートシンクの実施形態を示す側面図及び背面図である。
図7】(A),(B)は取付脚の正面図および平面図であり、(C)は押圧変形部の斜視図である。
図8】ヒートシンクの変形例を示す側面図である。
図9】(A)乃至(C)は、取付脚の他の例を示す正面図、側面図および底面図である。
図10】(A),(B)は、それぞれ突起部の他例を示した要部平面図である。
図11】放熱体の他の実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の放熱構造を適用した放熱器の部分断面図である。同図に示す放熱器(放熱構造体,放熱装置)1は、方形状のアルミ製ベースプレート2を備え、このベースプレート2の一方の面に放熱体の一種である放熱フィン3を半田付け(ハンダ付け)するとともに、他方の面に基板(対象物)4を圧着させている。
【0015】
このアルミ製のベースプレート2は、純アルミニウム(Al)、或いは、JIS規格の1000番台、2000番台、3000番台、4000番台、5000番台、6000番台又は7000番台のAl合金を用いる。
【0016】
上記アルミ製のベースプレート2の表層はメッキ層によって形成されている。このベースプレート2の表面(両面の表層)にメッキ層を被膜するメッキ処理工程を説明すると、まず、上記構成のAl板からなるベースプレート2を、脱脂・洗浄し、続いて酸性エッチングし、続いてスマット除去した後、表面に亜鉛(Zn)を置換メッキする。その後、Zn層上にニッケル(Ni)をメッキし、続けて、Ni層上にスズ(Sn)をメッキすることにより、ベースプレート2の表面に、ZnとNiとSnとが順次積層化されたメッキ層が形成される。
【0017】
その後、このメッキ層上に合成樹脂であるウレタン樹脂をコーティングすることにより半田Hの濡れ性が良好なアルミ製のベースプレート2が形成される。さらに、このようにして製造されたベースプレート2の表面にオイルコーティングを行うことにより、上記メッキ層等が保護される。
【0018】
上述のZnの置換メッキは、従来公知に手段により行う。例えば、まず硝酸浸漬処理の工程→第一Zn置換処理の工程→硝酸亜鉛剥離処理の工程→第二Zn置換処理の工程を経て、Znの置換メッキを行う。この場合には、Znの皮膜量は、処理液中のZnイオン濃度、又は、第二Zn置換処理時の処理液への浸漬時間を調整することにより、適宜変更可能である。
【0019】
また、上記Niのメッキ処理及びSnのメッキ処理は、電気メッキ法や無電解メッキ法等の従来公知の手段により行う。さらに、ウレタン樹脂のコーティングは、塗布等によって行う。ちなみに、ウレタン樹脂層を輻射塗布によって、さらにコーティングし、放熱効果を向上させる表面保護を施しても良い。
【0020】
このメッキ層において、ベースプレート2全体に占めるZnの重量比率(ベースプレート2全体の重量を100とした場合におけるZnの重量)は0.16〜0.24%(さらに好ましくは0.18〜0.22%)に設定され、ベースプレート2全体に占めるNiの重量比率(放熱体の重量を100とした場合における放熱に含まれるNiの重量)は0.18乃至0.48%に設定され、ベースプレート2全体に占めるSnの重量比率(放熱体の重量を100とした場合における放熱に含まれるSnの重量)は0.10乃至0.38%で、且つSn層の厚みが0.35〜1.25μmになるように設定される。ちなみに、Sn層を、0.35〜1.25μmにすることによって、ベースプレート2の半田Hの濡れ性をより向上させることが可能になる。
【0021】
ウレタン樹脂のコーティングにおいて、ベースプレート2全体に占めるウレタン樹脂の重量比率(放熱体の重量を100とした場合における放熱に含まれるウレタン樹脂の重量)は0.01〜0.08%で、層の厚みは0.01m又はそれに近い厚みとなるように設定される。
【0022】
また、オイルコーティングに用いる油としては、15℃時における密度が0.76g/cmで、引火温度が52℃で、且つ、40℃時における動粘度が1.26mm/sの工作油か、又は、15℃時における密度が0.77g/cmで、引火温度が61℃で、且つ、40℃時における動粘度が1.41mm/sの工作油を用いることが好ましいが、このような構成の工作油に限定されるものではない。
【0023】
ちなみに、上述のメッキ層は、Al板によって上述のベースプレート2を成形した後にメッキ処理を施す後メッキによって形成してもよいし、Al板によって上述のベースプレート2を成形する前にメッキ処理を施す前メッキによって形成してもよい。例えば、Al板からプレス加工等により切抜き形成することにより該ベースプレート2を成形し、その後、該ベースプレート2に後メッキを行えば、切抜き破断面の半田Hの濡れ性も良好にすることができる。
【0024】
図2は、放熱フィンの斜視図である。空気との接触面積を大きくして放熱効果が向上させた上記放熱フィン3は、一枚の金属板を方形波状に屈曲形成することにより構成された波状フィンの一種であるコルゲートフィンであって、半田(ハンダ)Hによって、ベースプレート2に接着させている。ちなみに、放熱フィン3を方形波状ではなく、湾曲した波状に成形してもよい。
【0025】
具体的な説明をすると、放熱フィン3は、ベースプレート2から離間するように膨出した山と、ベースプレート2に向かって窪んだ谷とを交互に有することにより全体が波状に形成される。山の頂部(山部の頂部)7及び谷の底部(谷部の底部)8は、ベースプレート2に対して平行な水平板状に形成され、この山の頂部7と谷の底部8とを連接させる山の側部(山部の側部)9は、ベースプレート2に対して垂直なフラットな板状に形成され、これらの形状によって、放熱フィン3が、方形波形状を有する。この各山の底部8側を、ベースプレート2に面状に当接させて半田付けすることにより、放熱フィン3がベースプレート2に取付固定される。
【0026】
なお、放熱フィン3の材質は、半田Hの濡れ性が良好な金属である鉄(Fe)や銅(Cu)等を採用してもよいが、熱伝導効率を有線してAlを採用してもよい。なお、Al板によってフィン3を構成する場合には、放熱フィン3の表面の全体、或いは少なくともベースプレート2に半田付けされる箇所(具体的には、谷の底部8におけるベースプレート2側面)に、メッキ層を形成させる。このメッキ層は、ウレタン樹脂コーティング及びオイルコーティングを含め、上述のものと同一構成の表面加工処理を行ってもよいが、これに限定されるものでは無く、従来公知のCuメッキ処理等を施しもよい。
【0027】
上記基板4の一方面には、電気回路(図示しない)が形成されるとともに、他方面に、ベースプレート2を面状に接触された状態で両者を圧着固定させている。この基板4には、一方面から他方面に至る取付孔4aが複数穿設され、この取付孔4aを介して、トランジスタやダイオードや照明用LED等の半導体素子からなる電子部品(対象物)11が半田付けされる。
【0028】
具体的には、取付孔4aに予め半田Hを充填又はペーストし、電気回路の取付孔4a部分に電子部品11を配置し、その後加熱することによりリフロー半田付けを行い、電子部品11を電気回路に設ける。溶融した半田Hはベースプレート2にまで至り、基板4とベースプレート2とを接合させる機能を発揮する。言換えると、取付孔4a内の溶融した半田Hによって、基板4がベースプレート2に半田付けされる。なお、電子部品11の電気回路への半田付けは、手作業やフロー半田付けによって行ってもよい。
【0029】
図3は、基板の製造工程を示す処理手順図である。まず、ベースプレート2と基板4とを面状に当接させた後、加熱及び加圧することにより、両者を圧着させる。続いて、複数回リフロー処理を行い、電子部品11を基板4に半田付けする。ちなみに、リフロー処理は1回で済ませてもよいが、上述のように構成されるベースプレート2は、加圧及び加熱を繰返しても、半田Hの濡れ性を良好に保持されるため、このようにリフロー処理を複数回に分けることが可能になる。
【0030】
なお、半導体層(図示しない)及び一対の電極層(図示しない)を有するソーラーパネル自体を、基板4として採用してもよく、この場合には、電気回路が半導体回路用(さらに具体的には太陽電池用の回路)となり、この太陽電池用の回路は、ITO等の透明電極膜よりなる一対の電極層から電力を取出す電力取出用回路となる。
【0031】
以上のように構成される放熱器1は、ベースプレート2や放熱フィン3の半田Hの濡れ性が良好なため、効率的な半田付け作業を可能になる他、Alの良好な熱伝動効率等によって基板4の電気回路や電子部品11から発生する熱を効率的に放熱できる。
【0032】
なお、図4は、コルゲートフィンの変形例を示す斜視図であるが、同図に示すように、コルゲートフィン3の各山の側部9に、山の膨出方向に延びるスリット状の通気孔9aを複数穿設しており、さらに詳しくは、この複数の通気孔9aが山及び谷の形成方向に沿って並列配置されている。コルゲートフィン3は、谷の形成方向に通気性が確保されるが、この構成によって、山及び谷の形成方向に対して交差する方向(さらに具体的には直交する方向)にも、通気性が確保される。
【0033】
また、図5は、放熱フィンの他例を示す斜視図である、同図に示すように、放熱フィン3を、複数の同一形状の分割フィン12によって構成してもよい。分割フィン12は、方形状板材の対向する長辺部同士を、互いが近づくように屈曲させることにより、チャネル状に形成されており、該一対の屈曲部がスペーサ部13となり、このスペーサ部13以外の部分が放熱部14となる。このスペーサ部13の放熱部14側端部である基端部には、複数の係合孔13aに穿設され、スペース部13の先端部には、係合孔13aと同数の係合突起13bが突出形成されている。ちなみに、この係合孔13aと係合突起13bは、分割フィン12長手方向における形成位置を一致させている。
【0034】
複数の分割フィン12は、放熱部14同士が所定間隔を介して平行になるように並列配置されており、隣接して放熱部14が対向する分割フィン12同士は、それぞれ一方の分割フィン12の係合突起13bを、他方の分割フィン12の係合孔13aに係合挿入させ、互いを連結固定している。以上の構成によって、複数の平行な放熱部14の間に、スペーサ部13分の放熱スペースが形成された放熱フィン3が成形される。この放熱フィン3におけるスペース部13が連ねられて一面をなす側を、ベースプレート2に半田付けして取付けている。なお、この放熱フィン3を、図示しない取付具等を介して、ベースプレート2に取付固定してもよい。
【0035】
次に、図6及び10に基づき、放熱体3の他の実施形態について、上述の例と異なる点を説明する。
図6(A),(B)は、放熱体の一種であるヒートシンクの他の実施形態を示す側面図及び背面図である。同図に示す通り、ヒートシンク3は、プレート状の基部16と、基部16から垂直に板状に突出する複数の放熱部17とを備えている。基部16には、電子部品11等を密着して設置させる円形の設置孔16aが一又は複数(図示する例では2つ)穿設されている。
【0036】
複数の放熱部17同士は、互いに平行な状態で、所定間隔を介して並列配置され、その形成方向は、基部16の長手方向に設定されている。さらに、このヒートシンク3は、放熱部17の長手方向に垂直な面で切断すると、各位置で同一形状となる。このため、該ヒートシンク3は、押出成形によって一体形成している。
【0037】
また、最も外側に位置する放熱部(最外端側放熱部)17の内側には、平行に対向する一対の固定溝18,18が一体形成されている一方で、ベースプレート2には、取付孔2aが穿設されている。この一対の固定溝18,18の間に差込まれて嵌合固定された状態の取付脚(取付具)19を、取付穴2aに挿入して固定することにより、放熱フィン3をベースプレート2に取付固定している。ちなみに、この際、最外端側放熱部16と、ベースプレート2との間には、所定の間隔が形成され、各放熱部16はベースプレート2に対して略平行な状態になる。
【0038】
図7(A),(B)は取付脚の正面図および平面図であり、(C)は押圧変形部の斜視図である。取付脚19は、側面視L字状に屈曲されて半田Hの濡れ性が良好な金属性の板状部材であって、このL字状の一方は、一対の固定溝18,18に嵌合挿入されて固定される固定片21になるとともに、他方は、取付孔2aに挿通されて取付固定される取付片22となる。
【0039】
取付片22は、図6(A)に示すように、ベースプレート2側である先端側に向かって二股に分かれて一対の挿入部22a,22aを形成しており、この取付片22の二股に分岐する箇所にはベースプレート2に当接させる当接部22bが形成されている。挿入部22aの先端部は、コーキング加工を施して円弧状の面取りしている他、当接部22bと、一対の挿入部22a,22aとが接する箇所が、円弧状に切欠かれた円弧面22cを形成しているが、この円弧面22にコーキング加工を施して面取りしている。これらの面取りによって、その箇所での半田Hの濡れ性を向上させている。
【0040】
取付片23が有する複数の挿入部22aと同数の取付孔2aが、挿入部22a同士と同一間隔で、ベースプレート2に穿設されており、ベースプレート2の一方の面から、各取付孔2aに、対応する各挿入部22aを挿通させ、ベースプレート2の他方の面から突出させると、当接部22bがベースプレート2に当接され、挿入部22aをそれ以上取付孔2aに挿入できない状態になる。この各挿入部22aの突出した部分を、ベースプレート2に半田付けする他、必要に応じて当接部22bもベースプレート2に半田付けすることにより、取付脚19を、ベースプレート2に固定している。
【0041】
図7に示すように、固定片21における固定溝18に対する抜差し方向差込側部には、一対の係止爪23が設けられ、抜差し方向抜取り側部には、一対の突起部24が設けられている。係止爪23は、固定片21の差込幅(抜差し方向に対して直交する方向)の両端部にそれぞれ設けられ、抜取り側に向かって厚み方向に膨出するように湾曲形成されている。突起部24の説明をすると、固定片21における差込幅の各端部を、厚み方向に押圧変形させることにより、凹状の押圧変形部21aを設け、この押圧変形部21aの凹設によって、固定片21が押し潰されて差込幅方向外側に拡大されることにより、突起部24が形成されている。この突起部24は、上述の構成により、固定片21の差込幅の両端側にそれぞれ設けられている。ちなみに、押圧変形部21aは、方形状に凹設されているため、この突起部24も方形状をなしている。
【0042】
この固定片21を平行に向かい合う一対の固定溝18に嵌入させると、一対の突起部24が、対応する固定溝18の底面(底側)にそれぞれ押接されて嵌合されるとともに、各係止爪23が固定溝18の幅方向両端に嵌り込んで、一対の固定溝18からの固定片21の抜出しが規制される。このように、一対の係止爪23及び一対の突起部24によって、安定した姿勢で、取付脚19が一対の固定溝18,18に嵌合固定される。
【0043】
ちなみに、従来は、特開2006−245223号公報等に示されているように、係止爪23のみによって、固定片21を一対の固定溝18,18に嵌合固定させていたが、上述のような一対の突起部24,24も併せて設けることにより、固定片21の固定溝18への取付強度が大幅に向上する他、この突起部24は、押圧変形部21aを凹設する簡易な工程のみで突出形成可能であるため、構成が複雑化することや、コストが高くなることも防止される。
【0044】
また、図8は、ヒートシンクの変形例を示す側面図であるが、同図に示す通り、最外端側放熱部17の外面側に上記一対の固定溝18,18を形成してもよい。
【0045】
この他、図9(A)乃至(C)は、取付脚の他の例を示す正面図、側面図および底面図であるが、同図に示す取付脚19は、取付片22の先端から中途部に至る範囲を幅狭に形成することにより、単一の挿入部22aを形成しており、この挿入部22aの両脇に当接部22bを形成し、固定片21は、図7に示す係止爪23を省いて、一対の突起部24,24のみによって、固定溝18,18に取付脚19を嵌合固定させている。
【0046】
ちなみに、図7に示した押圧変形部21aは、全体を均等に、固定片21の厚み方向の陥没させているが、図9に示す押圧変形部21aは、抜差し方向に傾斜するように押圧変形され、押圧変形部21aの抜差し方向一端に対して他端が深くなっている(図示するでは、差込方向側端に対して抜取方向側端が深くなっている)。これによって、より簡易に、押圧変形部21aを凹設できる他、取付脚19の構成もより簡略化される。
【0047】
なお、図10(A),(B)は、それぞれ突起部の他例を示した要部平面図であるが、同図に示すように、突起部24を、半円または突出方向に拡大する台形状に切抜き形成してもよい。
【0048】
次に、図11に基づき、放熱体3の他の実施形態について、上述の例と異なる点を説明する。
図11は、放熱体の他の実施形態を示す部分断面図である。同図に示す通り、放熱体3は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなる板材によって構成される。この放熱体3には、方形状の凹部3aが形成され、この凹部3aに、ベースプレート2が嵌め込み固定されている。この状態では、ベースプレート2の基板4を取付ける側の面のみが凹部3aから露出した状態になるとともに、ベースプレート2の少なくと一部(図示する例ではベースプレート2の凹部3a側面全体)が放熱体3に密着された状態になる。
【0049】
軽量で、強度が高く、熱伝導効率が高いCFRPを、放熱体3として利用すれば、このCRFPによって別の部材を兼ねることも可能になり、構成が簡略化される。
【0050】
なお、CFRPよりなる放熱体3の凹部3aを形成すること無く、放熱体3の面にベースプレート2を密着させ、直接、取付固定してもよい。取付固定の際には、ボルト等の固定具を用いてもよいし、熱伝導率の高い接着剤等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 放熱器(放熱構造体,放熱装置)
2 ベースプレート
2a 取付孔
3 放熱体(放熱フィン,コルゲートフィン,CFRP)
3a 凹部
4 基板
9 山の側部(山部の側部)
9a 通気孔
11 電子部品
18 固定溝
19 取付脚(取付具)
21 固定片
22 取付片
24 突起部
H 半田(ハンダ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11