(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負荷回路の診断モードを設定する操作スイッチを更に備え、前記電子スイッチ制御手段は、前記操作スイッチが操作された際に、予め設定した導通時間だけ前記電子スイッチをオンとし、前記導通時間の経過後の前記推定温度がゼロである場合に、この負荷回路に接続された負荷に断線故障が発生しているものと診断することを特徴とする請求項1に記載の負荷回路の断線検出装置。
前記スイッチ制御手段にて、前記断線故障が発生していると判定された場合に警報信号を出力する警報手段を更に備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の負荷回路の断線検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来における断線検出装置では、負荷回路の断線を検出するために、多くの部品、検出回路等を設ける必要があり、回路構成が大規模化しコスト高を招くという問題が発生していた。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、回路構成を大規模化することなく負荷回路の断線を検出することが可能な負荷回路の断線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、電源より出力される電力を負荷に供給して駆動する負荷回路の電線温度が上昇した際に、前記負荷回路を遮断する負荷回路の、断線を検出する断線検出装置において、前記負荷回路の電線に流れる電流を検出する電流検出手段(例えば、電流センサ16)と、前記負荷回路のオン、オフを切り替える電子スイッチ(例えば、半導体スイッチQ1)と、前記電子スイッチがオンとされたとき、前記電流検出手段で検出される電流に基づき、所定のサンプリング周期で前記電線の上昇温度を求め、前記電子スイッチがオンとされてから任意の時間経過後の電線温度を推定する温度推定手段(例えば、電線温度演算部24)と、駆動指令に基づいて前記電子スイッチのオン、オフを制御し、且つ、前記温度推定手段により推定される電線温度が予め設定した閾値温度に達した場合に、前記電子スイッチ強制的にオフとするスイッチ制御手段(例えば、制御部22)と、を有し、前記スイッチ制御手段は、前記電子スイッチ
をオンとして前記負荷の通常動作時での電流供給を開始してから、所定時間(P1)が経過した後に、前記温度推定手段にて演算される上昇温度がゼロである場合には、この負荷回路に断線故障が発生していると判定することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、負荷回路の診断モードを設定する操作スイッチ(例えば、スイッチSW2)を更に備え、前記電子スイッチ制御手段は、前記操作スイッチが操作された際に、予め設定した導通時間だけ前記電子スイッチをオンとし、前記導通時間の経過後の前記推定温度がゼロである場合に、この負荷回路に接続された負荷に断線故障が発生しているものと診断することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記スイッチ制御手段にて、前記断線故障が発生していると判定された場合に警報信号を出力する警報手段(例えば、警報器31)を更に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る負荷回路の断線検出装置では、負荷回路に流れる電流を検出し、検出した電流に基づいて電線温度を推定し、推定した電線温度が閾値温度に達した場合に電子スイッチを強制的にオフとする保護装置が設けられる場合に、電子スイッチをオンとして所定時間(P1)が経過しても上昇温度がゼロである場合に、この負荷回路に断線故障が発生しているものと判断する。従って、断線検出のために多くの部品を設ける必要がなく、装置の小規模化を図ることができ、且つコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る断線検出装置を含む保護装置、及び負荷回路の構成を示す回路図である。
図1に示すように、本実施形態に係る保護装置100は、車両に搭載される負荷回路に過電流が流れた際にこれを検出して回路を遮断し、且つ、負荷回路に断線が発生した場合にこれを検出する機能を備えている。
【0013】
負荷回路は、車両に搭載されるバッテリVBと、半導体スイッチQ1(電子スイッチ)と、半導体スイッチQ1に駆動信号を出力するドライバ回路15、及び負荷RLを備えており、これらは電線W1により接続されている。また、図示を省略するが、半導体スイッチQ1と負荷RLとの間には、J/Bやコネクタ等が設けられる場合もある。
【0014】
保護装置100は、負荷回路に過電流が流れて、該負荷回路の電線W1が過熱した際に、半導体スイッチQ1を遮断して、負荷回路全体を過熱から保護する機能を有するものであり、入力I/F11と、ロジック回路12と、内部電源13と、クロック回路14、及び、負荷回路に流れる電流を検出する電流センサ16(電流検出手段)を備えている。
【0015】
入力I/F11は、外部に設けられる負荷駆動用のスイッチSW1がオンとされた場合、或いは負荷を診断する際に用いるスイッチSW2がオンとされた場合に、これを検出してロジック回路12にオン指令信号を出力し、且つ、内部電源13に内部電源起動信号を出力する。なお、スイッチSW1は、負荷RLを駆動させるときに投入されるスイッチであり、該スイッチSW1がオンとされているときに半導体スイッチQ1がオンとなって、負荷RLが駆動する。また、スイッチSW2は、負荷RLが正常に作動するか否かを診断するために投入されるスイッチであり、スイッチをオンとした場合には診断モードとなって、予め設定した導通時間だけ半導体スイッチQ1がオンとされる。
【0016】
内部電源13は、車両に搭載されるバッテリVBより供給される電圧から所望の定電圧を生成して、保護装置100の各機器に駆動用電力を供給する機能を備えており、入力I/F11より内部電源起動信号が供給された場合には、出力電圧を各機器に供給し、ロジック回路12より内部電源を停止させるためのスリープ信号が供給された場合には、電圧の出力を停止する。即ち、内部電源起動信号が与えられた場合には、通常モードで動作し、スリープ信号が供給された場合にはスリープモードとなって電力の出力が停止する。
【0017】
クロック回路14は、ロジック回路12を駆動する際のクロック信号を生成して、ロジック回路12に出力する。
【0018】
電流センサ16は、負荷回路に流れる電流を検出し、検出した電流信号をロジック回路12に出力する。電流の検出方法として、例えば、半導体スイッチQ1としてマルチソースFETを用い、該マルチソースFETで測定される電流を用いる方法等が挙げられる。
図2は、マルチソースFET(T1)を用いた場合の回路図であり、符号「T1」に示す部分が
図1に示す半導体スイッチQ1、及び電流センサ16を示している。そして、負荷回路に電流が流れているときには、マルチソースFET(T1)のサブ側のソース端子に負荷電流に比例した電流が流れるので、検出抵抗R1の両端に生じる電圧を測定することにより、負荷電流を検出することが可能となる。また、電流センサ16は、マルチソースFET(T1)に限定されるものではなく、例えば、シャント抵抗を用いて電流を検出する構成とすることもできる。
【0019】
ロジック回路12は、入力判定部21と、制御部22と、タイマ25と、異常検知部23、及び電線温度演算部24を備えている。入力判定部21は、入力I/F11よりオン指令信号が出力された場合に、このオン指令信号を制御部22に出力し、更に、電線温度演算部24に温度測定指令信号を出力する。
【0020】
電線温度演算部24は、入力判定部21より温度測定指令信号が供給された場合に、電流センサ16で測定される電流、及びクロック回路14より出力されるクロック信号により決定されるサンプリング周期に基づいて、このサンプリング周期毎に電線W1の発熱温度、或いは放熱温度を演算し、現在の電線温度を推定する。なお、電線温度の推定方法については、後述する。そして、電線温度演算部24で演算された電線温度情報は、制御部22、タイマ25、及び異常検知部23に出力される。
【0021】
タイマ25は、電線温度演算部24にて電線温度の演算を開始してからの経過時間を計時し、この経過時間が予め設定した所定時間P1に達した場合に、異常検知部23に計時終了信号を出力する。
【0022】
異常検知部23は、電線温度演算部24で演算された電線温度に基づき、電線温度が予め設定した閾値温度(例えば、150℃)に達した場合に、制御部22に温度異常検知信号を出力する。更に、タイマ25より計時終了信号が与えられた際に、上記の所定時間P1の経過前後で温度上昇が発生しているか否かを判定し、温度上昇が発生していない場合、即ち、半導体スイッチQ1をオンとしてから時間P1が経過するまでの間の電線W1の上昇温度がゼロの場合に、制御部22に断線検知信号を出力する。
【0023】
制御部22は、入力判定部21よりオン指令信号が供給された場合には、ドライバ回路15に駆動指令信号を出力する。これにより、ドライバ回路15は半導体スイッチQ1の制御端子(例えば、MOSFETのゲート)に駆動信号を出力し、該半導体スイッチQ1はオンとなって、負荷RLを駆動させることができる。また、これとは反対に、入力判定部21より供給されるオン指令信号が停止した場合には、駆動指令信号の出力を停止する。これにより、半導体スイッチQ1をオフとして負荷RLを停止させることができる。
【0024】
更に、異常検知部23より温度異常検知信号が供給された場合には、駆動指令信号の出力を停止させて、半導体スイッチQ1を強制的にオフとする。また、異常検知部23より断線検知信号が供給された場合には、外部の警報器31に警報信号を出力する。更に、電線温度演算部24で演算される電線温度が、予め設定したスリープ閾値(周囲温度よりも若干高く設定した温度)まで低下した場合には、内部電源13にスリープ信号を出力する。内部電源13は、該スリープ信号が与えられた場合には、電圧の出力を停止するスリープモードとなる。
【0025】
警報器31は、制御部22より警報信号が供給された場合には、ブザーやランプ等によりユーザに警報を発する。
【0026】
次に、電線温度演算部24における温度推定処理について説明する。電線温度の推定処理については、例えば、特開2009−303394号公報に記載された方式を採用することができる。
【0027】
即ち、電線W1に電流が流れている場合において、電流センサ16で検出される電流を「I」とし、電線W1の単位長さ当たりの電気抵抗を「Ron」とし、サンプリング時間を「Δt」(例えば、Δtは5msec)とした場合に、電線W1の単位長さ当たりの発熱量X1は下記の(1)式で示すことができる。
【0028】
X1=I2×Ron×Δt …(1)
また、電線W1の疑似熱容量(実際の熱容量よりも小さい値に設定した熱容量)を「Cth*」とし、電線W1の単位長さ当たりの熱抵抗を「Rth」とし、電線W1の単位長さ当たりの熱量を「Q」(電線温度にCth*を乗じた値)とした場合に、電線W1の単位長さ当たりの放熱量Y1は下記の(2)式で示すことができる。
【0029】
Y1=Q/(Cth*×Rth/Δt) …(2)
そして、前回のサンプリング時の電線温度をTp(初期的には周囲温度)とすると、今回のサンプリング時の電線温度Tnは下記の(3)式で示すことができる。
【0030】
Tn=Tp+(X1−Y1)/Cth* …(3)
そして、電線W1の発煙温度(例えば、150℃)を半導体スイッチQ1を遮断する条件とする閾値温度に設定し、(3)式で求められる電線温度Tnがこの閾値温度に達した場合に、半導体スイッチQ1を遮断するように制御すれば、電線W1が発煙する前の時点で確実に半導体スイッチQ1を遮断することができる。即ち、疑似熱容量「Cth*」を用いて電線温度Tnを演算しているので、この電線温度Tnが閾値温度に達した場合には、実際の電線W1の温度はこの閾値温度よりも低い温度であるから、電線W1が発煙する前の時点で半導体スイッチQ1を遮断して、電線W1の過熱を防止することができる。
【0031】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る負荷回路の断線検出装置の作用について説明する。以下では、
図3に示すタイミングチャートを参照して、半導体スイッチQ1がオフとされて負荷回路に電流が流れていない場合、負荷回路に正常電流が流れている場合、負荷回路に過電流が流れた場合、及び負荷回路に断線故障が発生している場合についてそれぞれ説明する。
【0032】
(イ)半導体スイッチQ1がオフとされて電線W1に電流が流れていない場合
半導体スイッチQ1がオフとされ、電線W1に電流が流れていない場合には、
図3(a)に示すように電流センサ16で検出される電流はゼロであるから、電線温度演算部24にて演算される上昇温度はゼロとなり、電線温度は周囲温度となる。
【0033】
(ロ)負荷回路に正常電流が流れている場合
半導体スイッチQ1がオンとされ、電線W1に電流が流れて負荷RLが駆動すると、電流センサ16にて電流が検出される。そして、電線温度演算部24では、上述の(1)〜(4)式に示した温度演算ロジックに基づいて、サンプリング周期毎に電線W1の温度を演算する。この際、
図3(b)に示すように、時間の経過と共に電線W1の温度が上昇し、飽和温度(周囲温度+上昇温度)で安定する。そして、この飽和温度は閾値温度よりも低いので、半導体スイッチQ1のオン状態とされ、負荷RLの駆動が継続される。
【0034】
(ハ)負荷回路に過電流が流れた場合
半導体スイッチQ1がオンとされ、電線W1に流れる電流が過電流と
なり、
図3(c)に示すように、電線温度演算部24で演算される電線W1の推定温度が閾値温度を上回った場合には、異常検知部23はこれを検知し、制御部22に温度異常検知信号を出力する。制御部22はドライバ回路に出力する駆動指令信号を停止させ、半導体スイッチQ1を強制的にオフとする。従って、電線W1が発煙する前の時点で負荷回路を遮断して負荷回路を保護することができる。
【0035】
(ニ)負荷回路に断線故障が発生している場合
負荷回路に断線故障が発生していることにより、半導体スイッチQ1がオンとされても電線W1には電流が流れず、従って、電線温度演算部24で演算される上昇温度はゼロである。そして、タイマ25にて計時される時間がP1となった際に電線W1の上昇温度がゼロであることが異常検知部23で検知されると、該異常検知部23は、制御部22に断線検知信号を出力する。その後、制御部22は、警報器31に警報信号を出力するので、警報器31より警報が発せられ、負荷回路に断線故障が発生したことをユーザに通知することができる。
【0036】
更に、スイッチSW2を操作することにより、診断モードとすることができる。即ち、ユーザがスイッチSW2を投入することにより、予め設定した導通時間(例えば、上記の時間P1よりも長い時間)だけ半導体スイッチQ1をオンとする駆動指令信号が入力され、この場合には、制御部22は、この導通時間だけ半導体スイッチQ1をオンとする。すると、負荷回路が正常に作動すれば、電線温度演算部24では、この導通時間に応じた発熱が発生して電線W1の温度が上昇する。また、負荷回路に断線故障が発生している場合には、導通時間が経過しても電線W1の上昇温度はゼロのままである。そして、上昇温度がゼロである場合には、上記の処理と同様に警報器31にて警報が発せられるので、該負荷回路に断線故障が発生していることユーザに報知することができる。即ち、スイッチSW2を投入することにより、負荷回路を構成する電線W1、及び負荷RLが正常に作動しているか否かの診断を行うことができる。
【0037】
なお、
図1では、断線故障の発生を警報器31により報知する例について説明したが、断線故障の発生を示す信号を車両に搭載されるLIN(Local Interconnect Network)、或いはCAN(Controller Area Network)等を用いて、ダイアグ信号として上位システムに送信するように構成することも可能である。
【0038】
このようにして、本実施形態に係る負荷回路の断線検出装置では、電流センサ16で検出される電流に基づいて電線温度を推定し、推定した温度が閾値温度に達した場合に半導体スイッチQ1を遮断して回路を過熱から保護する保護装置100を用いる場合に、半導体スイッチQ1をオンとしているにも関わらず、所定時間P1の経過後において、電線温度演算部24で推定される電線W1の上昇温度がゼロである場合に、この負荷回路に断線故障が発生しているものと判定する。
【0039】
従って、従来のように、断線検出回路やシャント抵抗を別途設けることなく、極めて簡素な構成で負荷回路の断線検出が可能となる。このため、装置の小規模化を図ることができ、更にコストダウンを図ることができる。
【0040】
また、実際に負荷回路を駆動しない場合であっても、スイッチSW2を投入することにより、予め設定した導通時間だけ半導体スイッチQ1をオンとして断線検出を行うことができるので、動作確認が困難な負荷に対して、容易に断線故障の診断を行うことができる。
【0041】
更に、断線故障が発生している場合には、警報器31により断線故障の発生がユーザに通知されるので、ユーザは負荷回路に断線が発生していることを即時に認識することができ、メンテナンス作業に取りかかることができる。
【0042】
以上、本発明の負荷回路の断線検出装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、電子スイッチとしてMOSFET等の半導体スイッチを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、リレーコイルとリレー接点を有するリレー回路を用いることも可能である。