【実施例】
【0023】
以下に本発明の内容を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお以下に示す%は、質量%を示し、使用した資材は各実施例、比較例を通し、同一商品を使用している。
<米粉を使った線状フライ食品の製造>
《実施例1》
粉配合として、米粉(熊本製粉(株)社製、瑞穂パン用米粉)95.0%に、増粘剤としてキサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル(株)社製、エコーガムF)4.0%、セルロース(旭化成ケミカルズ(株)、セオラスST-02)0.8%、タラガム(MRCポリサッカライド(株)社製、タラガムMT120)0.2%を配合した。加水配合として、水49.0%(前記粉配合を100とした質量%で示す。以下加水配合については同様である。)に、食塩1.0%、およびサラダ油((株)Jオイルミルズ社製、さらさらキャノーラ油)1.0%を加えて、縦型のミキサー((株)品川工業所社製、卓上ミキサー5DM型)で10分ミキシングし、そぼろ状生地を作った。前記のそぼろ状生地の配合割合を表1に示し、以下の実施例2、3及び比較例1、2の配合割合も同様に表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
前記そぼろ状生地を、製麺機(大竹麺機社製、大竹式麺機)を使用したロール製法により圧延し、帯状生地を作成した。該帯状生地の最終生地厚を1.0mmとし、製麺用の20番(1.5mm)の切り刃で線状に切断して、線状生地を作成した。前記線状生地を、直ちに160度の大豆油(日清オイリオグループ(株)社製、大豆白絞油)で、50秒間揚げて、実施例1の米粉の線状フライ食品を得た。
【0026】
《実施例2》
実施例2は、実施例1の水の代わりに熱湯を使用して、湯ごねによりそぼろ状生地を作成した以外は、実施例1と同様の粉配合、及び加水配合とし、実施例1と同様の工程で実施例2の米粉の線状フライ食品を得た。
【0027】
《実施例3》
実施例3は、粉配合が実施例1の米粉95%に替えて91%とした以外は実施例1と同様とした。また加水配合は実施例1の水49%に替えて29%とし、米粉4%を20%の熱湯で湯ごねしたものを加水配合に加えた以外は実施例1と同様とし、実施例1と同様の工程で実施例3のそぼろ状生地を得た。該そぼろ状生地を実施例1と同様の工程で実施例3の米粉の線状フライ食品を得た。
【0028】
《比較例1》
比較例1として、これまで皿うどんや即席麺用に一般的に作られている揚げ麺を揚げた。粉配合は、実施例1の米粉及び増粘剤に替えて、小麦粉100.0%とし、加水配合として、食塩0.5%、かんすい0.6%、サラダ油1.0%、及び水34.0%とした以外は実施例1と同様の工程でそぼろ状小麦粉生地を得て、実施例1と同様の工程で線状生地を作成した。該線状生地を通常の皿うどんや即席麺の工程と同様に蒸し工程(95℃、4分)を追加した後に、実施例1と同様の揚げ工程を行い、比較例1の小麦粉の線状フライ食品を得た。前記比較例1の小麦粉の線状フライ食品の製造工程は、工業的に皿うどんや即席麺のような揚げ麺を製造する一般的な配合割合、及び製造工程である。
【0029】
《比較例2》
比較例2として、粉配合が実施例1の米粉及び増粘剤に替えて小麦粉100.0%とし、加水配合が実施例1の水49.0%に替えて水34.0%とした以外は実施例1と同様の工程でそぼろ状小麦粉生地を得て、実施例1と同様の工程で線状生地を作成した。該線状生地について、蒸し工程を行わず、実施例1と同じ工程で線状のフライ食品を得た。
【0030】
実施例1〜3の米粉の線状フライ食品及び比較例1の小麦粉の線状フライ食品について、製造過程の生地の物性を観察、評価した。評価は、帯状生地での切れやすさ、乾燥の程度、帯状生地の端の耳の部分の切れについて観察、評価した。また線状生地を手でひっぱり、強度を確認した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
実施例1の帯状生地は、比較例1に比較して、麺帯の強度が弱く、乾燥しやすく、また、帯状生地の端の耳の部分も切れやすかった。それに対し、実施例2では麺帯の強度が強く切れにくく、乾燥もしにくかった。線状強度も強く、比較例1と変わらない程度であった。実施例3も比較例1よりはやや帯状生地の強度が弱かったが、実施例1よりも改善されていた。そのため製造時の作業性は、実施例1は比較例1と比較してロスが多かったが、実施例3はやや改善さており、実施例2では格段に改善され、比較例1と同程度となり、ロスが少ない製品となった。
【0033】
実施例1〜3の米粉の線状フライ食品及び比較例1、2の小麦粉の線状フライ食品について、6人のパネラーによる官能検査を行った。官能検査は、比較例1の小麦粉の線状フライ食品を標準として、外観、サクミ、軽さ、吸油感について行った。外観は見た目の色調の好ましさ(明るさ、白さ)、サクミは食べたときの歯切れ感、軽さは噛み砕くときの硬さ感、吸油感は油っぽさを評価した。官能検査は標準の点数を3点とし、悪い、やや悪い、同等、やや良い、良いの5段階評価としている。結果を表3に示す。また実施例1〜3、及び比較例1、2の外観写真を
図1に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3より、外観は、比較例1が茶色である一方で、実施例1〜3はいずれも揚げ色が白く、実施例1〜3の間に大きな差異はなかった。なお実施例1〜3、及び比較例1、2の外観の写真を
図1に示す。またサクミは、比較例1がガリガリした食感になるのに対し、実施例1〜3はいずれも、軽い食感で、口に刺さるような硬さのない、さっくりした食感であったが、実施例1〜3の間では実施例1が若干優れていた。また軽さについても、比較例1が芯の残るような硬い食感であるのに対し、実施例1〜3は非常に軽い食感であり、実施例1〜3の間に大きな差異はなかった。さらに吸油感も比較例1の揚げ麺に対し、実施例1〜3はいずれも油っぽさを感じにくく、吸油感は少なかったが、実施例1〜3の間では実施例2、3がすぐれていた。
【0036】
前記の通り、実施例1〜3の間では、サクミは実施例1が優れ、吸油感は実施例2、3がすぐれるが、総合的には、1〜3は同程度の評価であった。
【0037】
比較例1と実施例1の揚げ麺を2cm〜5cmに軽く砕き、サラダにかけて、サラダとの組み合わせという観点からも評価を行った。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
表4より、比較例1の揚げ麺は、がりがりして口に刺さるような感じがあるのに対し、実施例1の揚げ麺は非常に軽く、サラダと合わせて食べたときの口当たりが軽く、バランスの良い食感となっており、通常サラダとあわせて食べるクルトンと比較しても食感が軽く、食べやすく、野菜と同時に食べたときの口当たりが軽いため、評価が高かった。
【0040】
<他のでん粉を使用したフライ食品の製造>
《実施例4》
粉配合として、米粉93.0%に、増粘剤としてキサンタンガム5.6%、セルロース1.12%、タラガム0.28%を配合し、加水配合として、水49.0%に、食塩1.0%、およびサラダ油2.0%を実施例4の粉配合及び加水配合とした。実施例4の粉配合と加水配合を表5に示し、実施例5〜8も同様に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
粉配合と加水配合の配合割合を前記の通りとした以外は、その後の工程は実施例1と同様にして実施例4の線状フライ食品を得た。
【0043】
《実施例5》
実施例4の米粉に替えて、米でん粉(上越スターチ(株)社製、ファインスノー)を用いた以外は実施例4と同様にして、実施例5の線状フライ食品を得た。
【0044】
《実施例6》
実施例4の米粉に替えて、アセチル化処理されたタピオカでん粉(ベダン社製、V-110AA)を用いたい外は実施例4と同様にして、実施例6の線状フライ食品を得た。
【0045】
《実施例7》
実施例4の米粉に替えて、コーンスターチ(日本澱粉工業(株)社製、コーンスターチY(IP))を用いた以外は実施例4と同様にして、実施例7の線状フライ食品を得た。
【0046】
《実施例8》
実施例4の米粉に替えて、米粉を50%、馬鈴薯でん粉(清里町農業協同組合製、きよさとでんぷん)を43%用いた以外は実施例4と同様にして、実施例8の線状フライ食品を得た。
【0047】
前記実施例4〜8の線状フライ食品について、実施例4の線状フライ食品を標準とした以外は実施例1〜3と同様の方法で官能検査を実施した。結果を表6に示す。また実施例4〜8の外観写真を
図2に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
米粉以外のいずれのでん粉を用いた場合も、増粘剤を配合することにより、問題なく各段階の生地、及びフライ食品を作ることが可能であった。表6より、外観は米粉よりも実施例5の米でん粉、実施例6のタピオカ澱粉、及び実施例8の米粉と馬鈴薯でん粉を用いたものが、さらに白い色となり、評価が高かった。
【0050】
またサクミは、実施例4の米粉に対し、実施例5の米でんぷん及び実施例8の米粉と馬鈴薯を使用したものが、よりサクサクした食感で評価が高く、実施例6のタピオカ澱粉はややサクミが足りない食感で、実施例7のコーンスターチはガリガリとした食感であった。軽さは実施例5の米でんぷん及び実施例8の米粉と馬鈴薯を使用したものが、実施例4の米粉に対し評価が高かった。吸油感は実施例4の米粉に対し、いずれも吸油感が少ない傾向にあり、特に実施例6のタピオカ澱粉は吸油感が少なかった。
【0051】
総合的な評価としては、実施例4の米粉、実施例5の米でん粉、及び実施例8の米粉と馬鈴薯を使用したものの評価が高かった。
【0052】
<フレーク状フライ食品の製造>
《実施例9》
実施例1と同様の粉配合、及び加水配合により、実施例1と同様の工程によりそぼろ状生地、及び生地厚1.0mmの帯状生地を作製し、該帯状生地をナイフでカットし、3mm×3mm×1.0mmの四角い形状のフレーク状生地を作成した。該フレーク状生地を大豆油(日清オイリオグループ(株)社製、大豆白絞油)で160度、50秒揚げて、実施例9の米粉のフレーク状フライ食品を得た。
【0053】
《比較例3》
粉配合が小麦粉100.0%であり、加水配合が塩1.0%、サラダ油1.0%、及び水34%である以外は、実施例9と同様の工程により比較例3のフレーク状フライ食品を得た。
【0054】
実施例9のフレーク状フライ食品について、比較例3のフレーク状フライ食品を標準とする以外は実施例1〜3と同様の方法により、官能評価を行った。結果を表7に示す。また実施例9、及び比較例3の外観写真を
図3に示す。
【0055】
【表7】
【0056】
表7の結果から、比較例3は揚げると色調が茶色になるのに対し、実施例9は揚げ後の色が白く、食感も引きがない、サクサクとした食感となった。また、触ったとき、及び食べたときの吸油感も少なく、油っぽさが少なかった。
【0057】
前記実施例9及び比較例3のフレーク状フライ食品をコーンポタージュスープに食感のアクセントを与える食材として加え、スープに入れたときのサクミとスープとの相性について、比較例3を標準とする官能検査を行った。結果を表8に示す。
【0058】
【表8】
【0059】
表8の結果から、スープに入れた官能評価でも、実施例9のフレーク状フライ食品は、比較例3と比較して、サクサクとした軽い食感で、また、その食感がスープ中でも長続きするとの評価であった。このように、形状にはこだわらず、どのような形状でも軽い、さっくりした食感のフライ食品を得ることができた。
【0060】
<キサンタンガムの適正添加量の検討>
《実施例10〜13 》
粉配合における米粉とキサンタンガムの配合割合を下記の通りとし、加水配合はいずれも、塩1.0%。サラダ油1.0%、水49.0%とし、粉配合及び加水配合の割合を替えた以外は実施例1と同様の製法で実施例10〜13の線状フライ食品を得た。各実施例の粉配合は表9に示すように、米粉98.0%、キサンタンガム2.0%(実施例10)、米粉96.0%、キサンタンガム4.0%(実施例11)、米粉93.0%、キサンタンガム7.0%(実施例12)、米粉90.0%、キサンタンガム10.0%(実施例13)とした。
【0061】
【表9】
【0062】
前記線状フライ食品の製造工程における作業性は、実施例10はやや麺線のつながりが悪く、作業性が悪かった。実施例11、12に関しては問題なくフライ食品を作ることができた。実施例13で作ったものは麺線にしたとき麺同士のべたつきが生じ、ほぐれが悪く、揚げる作業がやりにくい結果となった。
【0063】
実施例10〜13の揚げ麺について、実施例10を標準とした以外は実施例1〜3と同様の方法で官能検査を実施した。結果を表10に示す。
【0064】
【表10】
【0065】
表10の結果から、外観については実施例10〜13のいずれも白く、大きな差は認められなかった。キサンタンガムの添加量が増えると、サクミ及び軽さが増し、食感が軽くなる傾向が見られるが、多すぎると吸油感の上昇、食べたときのべたつきが感じられた。総合的には実施例12がやや優れる。
【0066】
<増粘剤の検討>
《実施例14〜16》
各種の増粘剤を検討するため、粉配合における米粉とキサンタンガムの配合割合を下記の通りとし、加水配合はいずれも、塩1.0%。サラダ油2.0%、水49.0%とし、粉配合及び加水配合の割合を替えた以外は実施例1と同様の製法で実施例14〜16の線状フライ食品を得た。各実施例の粉配合は表11に示すように、米粉70.0%、タピオカ澱粉24.0%、キサンタンガム3.2%、α化澱粉(上越スターチ社製、商品名;マイアルファK)2.0%、セルロース0.64%、タラガム0.16%(実施例14)、米粉70.0%、タピオカ澱粉19.7%、キサンタンガム2.0%、リン酸架橋でん粉(松谷化学社製、商品名;プリジェルVA70T)8.0%、アルギン酸エステル(太陽化学社製、商品名;ネオソフトAL-31)0.3%(実施例15)、米粉70.0%、タピオカ澱粉23.3%、キサンタンガム4.0%、α化澱粉2.5%、メチルセルロース(信越化学社製、商品名;メトローズSFE−4000)0.2%(実施例16)とした。
【0067】
【表11】
【0068】
実施例14〜16のフライ食品について、実施例1を標準として実施例1〜3と同様の方法で官能検査を実施した。結果を表12に示す。
【0069】
【表12】
【0070】
表12の結果から、外観については実施例14〜16のいずれも揚げ色が白く、複数の増粘剤や加工でん粉、食物繊維等を併用しても、大きな差は認められなかった。いずれも食感が軽く、吸油の少ない揚げ麺を得ることができた。
【0071】
<着色フライ食品の検討>
《実施例17〜19》
実施例4の加水配合に、各実施例ともに下記の天然の着色料を0.3%添加した以外は、実施例4と同様の粉配合、及び加水配合として、実施例17〜19の線状フライ食品を得た。実施例17にはクチナシ緑色素(グリコ栄養食品製、クチナグリーンカラーP2)を、実施例18にはコチニール色素(グリコ栄養食品製、クリエーションカラーRC)を、実施例19にはクチナシ黄色素(グリコ栄養食品製、クチナカラー750GS)をそれぞれ添加した。実施例17〜19の配合を表13に示す。
【0072】
【表13】
【0073】
実施例17では緑色のフライ食品、実施例18ではピンク色のフライ食品、実施例19では黄色のフライ食品を得ることができた。実施例17〜19の外観写真を
図4に示す。実施例17〜19の食味は、実施例4同様、非常に軽くて油っぽさが少なかった。
【0074】
《実施例20〜22》
実施例4の粉配合の米粉3%を、各実施例ともに下記の天然の有色の食品素材に置き換えた以外は、実施例4と同様の粉配合、及び加水配合として、実施例20〜22の米粉の線状フライ食品を得た。実施例20にはかぼちゃパウダー(アスザックフーズ社製、パンプキンパウダー)を、実施例21には紫芋パウダー(熊本製粉社製、アヤムラサキMKパウダー新)を、実施例22には抹茶(伊藤園社製、手軽に抹茶)をそれぞれ添加した。実施例20〜22の配合を表14に示す。
【0075】
【表14】
【0076】
実施例20では黄色のフライ食品、実施例21では紫色のフライ食品、実施例22では緑色のフライ食品を得ることができた。実施例20〜22の外観写真を
図5に示す。また実施例4を標準とした以外は実施例1〜3と同様の方法で官能検査を実施した。結果を表15に示す。
【0077】
【表15】
【0078】
表15の結果から、実施例20〜22の食感は、実施例4同様、非常に軽くて油っぽさが少なかった。鮮やかな色がついたことから、概観の評価が高くなった。また、抹茶添加品については抹茶の風味と苦味が残っていた。