(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る立体形状計測装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係る立体形状計測装置は、2次元配列型の共焦点開口アレイを有する共焦点光学系を用いて被計測体の形状を計測するものである。共焦点開口アレイは、所定の配列周期を持つよう開口板に2次元に配置されて設けられる。計測対象物としては、たとえばICパッケージのような大量生産部品の電極端子(たとえば大きさ数十ミクロン〜数百ミクロン)などが挙げられる。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る立体形状計測装置の一構成例を示す概略的な全体図である。なお、以下の説明では、光軸方向をZ軸、光軸方向に垂直な方向をX軸およびY軸とする場合の例について示す。
【0014】
立体形状計測装置10は、光源11aを有する照明光学系11、主面が光軸方向に垂直となるよう配置された開口板12、対物レンズ13、焦点位置変更部14、被計測体15を載置するための載物台16、被計測体15からの反射光を入射される光検出器17aを複数有する光検出器群17、載物台16をXYZ各方向に移動させるための載物台駆動部18、載物台16および載物台駆動部18を支持する支持基台19、および画像処理装置20を有する。載物台駆動部18は、載物台Z変位部21および載物台XY変位部22を有する。
【0015】
光源11aとしては、たとえばハロゲンランプやレーザなどを用いることができる。光源11aから出射された光は、照明レンズ23を介して面状の照明光束となる。この光は、偏光ビームスプリッタ24を介して開口板12を照明する。
【0016】
図2は、開口板12の一構成例を示す平面図である。開口板12は、複数の共焦点開口部(以下、開口部という)25が、所定の配列周期Δdを持つよう2次元に配置されて設けられる。この開口板12は、開口板変位部26により駆動されて、光軸方向に垂直な所定の方向に変位する。以下の説明では、開口板12がY軸方向の正の向きおよび負の向きに変位する場合の例について示す。
【0017】
一般に、2次元配列型の開口アレイの開口部25同士は、ビーム間のクロストークを小さくするために所定の離間距離をあけて設けられる必要がある。このため、2次元配列型の開口アレイを有する共焦点光学系では、この離間距離のために光軸に垂直な面内方向の分解能が制約されてしまう。一方、近年、固体撮像素子を用いた2次元イメージセンサは、非常に高画素(たとえば、5000×5000など)のものが開発されてきている。
【0018】
そこで、本実施形態では、光検出器群17を露光させつつ開口板12を直線的に走査することにより、1つの開口部25で複数の画素に対応させる。
【0019】
図2に一部拡大して示すように、所定の配列周期(周期間隔)Δdだけ開口板12が変位すると、開口部25によって撮像対象領域27の内部を一様に一回走査することができる。
図2には、光検出器群17を構成する光検出器(画素)17aに対応する位置を仮想的に破線で示した。
【0020】
光検出器17aの露光時間を、配列周期Δdに正整数mを乗じた距離だけ開口板12が移動する時間と一致するように制御すれば、各光検出器17aに対して開口部25を介して光が照射される時間を均一にすることができる。この制御は、画像処理装置20によって実行される。
【0021】
開口板12の開口部25は、それぞれ点光源として機能する。各開口部25を通過した光は、対物レンズ13により、焦点位置変更部14を介して被計測体15に投光されつつ点光源と共役なスポット(物体側集光点)に集光される。各物体側集光点は、Z軸方向の所定の位置の光軸方向に垂直な面(以下、物体側集光面という)上に位置する。なお、対物レンズ13は、たとえば複数のレンズおよび絞りにより構成されて両側テレセントリック光学系を構成されてもよい。
【0022】
開口板変位部26は、開口板12を光軸方向に垂直な方向に変位させる。ただし、開口板12の定速性が悪いと、画像にランダムにムラが発生し、形状計測精度が悪化する。そこで、開口板変位部26は、制御性の高いダイレクトドライブが可能なリニアモータあるいはボイスコイルモータを使用し、クローズドループ制御を行うことが望ましい。
【0023】
載物台Z変位部21は、ステッピングモータやサーボモータ、あるいはピエゾモータなどの一般的な駆動装置により構成され、載物台16を光軸方向に変位させる。この変位の量、方向およびタイミングは、画像処理装置20によりZ軸ドライバ30を介して制御される。載物台Z変位部21は、たとえば測定開始前に載物台16を光軸方向に大まかに変位させる。
【0024】
図3は、焦点位置変更部14の一構成例を示す斜視図である。
【0025】
対物レンズ13の光路中に平行平板形の透明部材31を配置すると、対物レンズ13の物体側集光面の位置がZ方向に移動する。この移動幅は、透明部材31の屈折率および厚さによって制御することができる。
【0026】
このため、
図3に示すように、回転体32に対して回転方向に沿って等間隔に互いに移動幅が異なる透明部材31を配設する。この回転体32をモータなどの駆動部33により所定の速度で連続回転させることにより、透明部材31のそれぞれが対物レンズ13の光軸と交わるごとに離散的に(ステップ的に)対物レンズ13の物体側集光面の位置をZ方向に移動させることができる。
【0027】
回転体32の回転状態はタイミングセンサ34により検知される。タイミングセンサ34の出力は画像処理装置20に与えられる。画像処理装置20は、あらかじめ各透明部材31と物体側集光点のZ軸座標とを関連付けた情報を保持している。画像処理装置20がタイミングセンサ34の出力にもとづいて各透明部材31と光軸とが交わるタイミングで光検出器群17を露光させることを繰り返すことにより、離散的な複数の物体側集光点の位置のそれぞれで、容易かつ高速に撮像を行うことができる。
【0028】
なお、駆動部33は、画像処理装置20により制御可能に構成されてもよい。この場合、画像処理装置20は回転体32の回転速度を制御することができる。
【0029】
被計測体15による反射光のうち特に物体側集光点における反射光は、対物レンズ13により、物体側集光点と光学的共役関係にある点(以下、像側集光点という)に集光される。点光源としての開口部25と物体側集光点とは、1対1に対応する。
【0030】
本実施形態では、像側集光点が点光源としての開口部25に一致する場合の例について説明する。この場合、開口部25を通過した光は物体側集光点に集光されるとともに、この物体側集光点で反射されて開口部25に再度入射することになる。
【0031】
開口部25に再度入射した光は、偏光ビームスプリッタ24により偏向されて結像光学系35に入射し、光検出器群17を構成する光検出器17aに入射する。ここで、結像光学系35は、開口部25の像を光検出器群17の光電変換面に結ぶように構成される。開口部25(像側集光点)とこの開口部25に対応する位置に配設された光検出器17aとは、偏光ビームスプリッタ24および結像光学系35により互いに共役関係となる。
【0032】
光検出器群17は、いわゆる2次元イメージセンサであり、光検出器群17を構成する光検出器17aは、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサにより構成されて、照射された光の強度に応じた信号を画像処理装置20に出力する。また、光検出器群17は、画像処理装置20により光検出のタイミングを制御される。
【0033】
画像処理装置20は、この光検出器群17から受けた信号を、画像(以下、共焦点画像という)を生成するための画像データ(以下、共焦点画像データという)として用いることができる。また、画像処理装置20は、たとえば共焦点画像データにもとづく共焦点画像を露光ごとに生成してもよい。本実施形態では、画像処理装置20が光検出器群17の露光ごとに共焦点画像を生成する場合の例について説明する。なお、画像処理装置20は、露光ごとに光検出器群17の出力信号を得ることができれば、この出力信号にもとづいて立体形状計測を行うことが可能であり、共焦点画像は必ずしも生成せずともよい。
【0034】
載物台駆動部18の載物台XY変位部22は、載物台16を光軸方向に垂直な方向に変位させる。たとえば、載物台XY変位部22は、測定の合間に測定対象領域をXY面内で移動させるために用いられる。
【0035】
この載物台XY変位部22は、載物台16のX軸方向およびY軸方向の位置決めを行うX軸変位機構41およびY軸変位機構42を有する。X軸変位機構41およびY軸変位機構42は、たとえばサーボモータにより構成され、変位の量、方向およびタイミングは、画像処理装置20によりXY軸ドライバ45を介して制御される。
【0036】
図4は、画像処理装置20の内部構成例を概略的に示すブロック図である。画像処理装置20は、たとえばデスクトップ型やノートブック型のパーソナルコンピュータなどにより構成することができる。画像処理装置20は、入力部51、表示部52、記憶部53および主制御部を有する。
【0037】
入力部51は、たとえばキーボード、タッチパネル、テンキーなどの一般的な入力装置により構成され、ユーザの操作に対応した操作入力信号を主制御部に出力する。
【0038】
表示部52は、たとえば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイなどの一般的な表示出力装置により構成され、主制御部の制御に従って各種情報を表示する。
【0039】
記憶部53は、CPUにより読み書き可能な記憶媒体である。記憶部53は、あらかじめ平行平板形の各透明部材31と物体側集光点のZ軸座標とを関連付けた情報を保持している。
【0040】
主制御部は、CPU、RAMおよびROMをはじめとする記憶媒体などにより構成される。主制御部のCPUは、ROMをはじめとする記憶媒体に記憶された直線走査プログラムおよびこのプログラムの実行のために必要なデータをRAMへロードし、このプログラムに従って、被計測体表面上を直線走査する処理を実行する。
【0041】
主制御部のRAMは、CPUが実行するプログラムおよびデータを一時的に格納するワークエリアを提供する。主制御部のROMをはじめとする記憶媒体は、画像処理装置20の起動プログラム、直線走査プログラムや、これらのプログラムを実行するために必要な各種データを記憶する。
【0042】
なお、ROMをはじめとする記憶媒体および記憶部53は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、CPUにより読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有し、これら記憶媒体内のプログラムおよびデータの一部または全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。ここで電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線LAN(Local Area Network)やインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワークなどを含む。
【0043】
主制御部のCPUは、直線走査プログラムによって、少なくとも撮像制御部54、高さ決定部55、および画像生成部56として機能する。この各部54〜56は、RAMの所要のワークエリアをデータの一時的な格納場所として利用する。なお、これらの機能実現部54〜56は、CPUを用いることなく回路などのハードウエアロジックによって構成してもよい。
【0044】
撮像制御部54は、焦点位置変更部14、光検出器群17および開口板変位部26を制御することにより、開口板変位部26により開口板12がY軸方向に等速に変位している期間において、平行平板形の透明部材31内に撮像対象領域27が含まれる期間ごとに光検出器群17による露光(撮像)を行わせる。このとき、撮像制御部54は、光検出器群17の露光時間が配列周期Δdに正整数mを乗じた距離だけ開口板12が移動する時間と一致するよう、開口板12の移動速度、回転体32の回転速度および光検出器群17の露光時間および露光タイミングを制御する。
【0045】
高さ決定部55は、撮像制御部54から現在の物体側集光点のZ軸座標(現在光軸と交わっている透明部材31の情報)を取得するとともに光検出器群17の出力を取得し、光軸方向に離散的に変更された物体側集光点の位置ごとの光検出器17aの信号にもとづいて、光検出器17aごとに光検出器17aに入射する反射光の強度が最大となる被計測体15の光軸方向の位置を算出する。
【0046】
ここで、たとえば載物台16の中心を原点とする座標系(載物台座標系)を考えると、この載物台座標系における測定対象領域(撮像対象領域27)のXY座標は、載物台XY変位部22の現在の位置から一意に求めることができる。このため、載物台XY変位部22の現在の位置に応じて、各光検出器17aに対応する載物台座標系のXY座標は一意に定まる。
【0047】
共焦点光学系を用いた形状計測技術において光検出器17aの出力から離散的に取得した複数の信号の強度にもとづいて反射光の強度が最大となる被計測体15のZ軸座標を算出する方法は、従来各種の方法が知られており、これらのうち任意のものを使用することが可能である。
【0048】
図5(a)は従来の方法により反射光の強度が最大となる被計測体15のZ軸座標を算出する方法を説明するための図であり、(b)は本実施形態に係る被計測体15のZ軸座標を算出する方法を説明するための図である。
【0049】
図5の山型のカーブは、共焦点光学系の軸上応答曲線(被計測体15に対して、対物レンズ13の焦点位置(物体側集光点の位置)と被計測体15との光軸方向に平行な方向の相対位置を変化させた場合の光検出器17aの出力)を示す。軸上応答曲線のうち、中央の山のピーク位置は、最もピントが合った位置といえる。このピーク位置は、この光検出器17aに入射する反射光の強度が最大となる相対位置(以下、表面合焦位置という)である。したがって、ピーク位置の情報にもとづいて、この光検出器17aに対応する被計測体15の表面上のXY位置における、光軸方向の位置(表面高さ)の情報を取得することができる。
【0050】
しかし、従来の技術では、
図5(a)に示すように物体側集光点の位置を細かく、必要分解能ステップで移動させて光検出器17aの出力信号をとり、得られた出力信号の中から最大を与える位置を見つけるという方法をとっていた。この方法では、たとえば載物台16をz方向に移動させることにより対物レンズ13の物体側集光点の位置と被計測体15との光軸方向に平行な方向の相対位置を変えながら、1回の計測に200枚を越えるような共焦点画像を得る必要がある。
【0051】
一方、開口板12を直線走査させる場合、これらの多数の共焦点画像のすべてを取得する期間において開口板12を等速移動させておくためには、非常に長い開口板12が必要になってしまう。そこで、本実施形態では、1回の計測に必要な共焦点画像を減らすことができる演算方法を用いる。
【0052】
具体的には、
図5(b)に示すように、必要分解能より大幅に大きいステップ(たとえば中央の山の中において3点程度のデータが得られるようなステップ)で相対位置を変えながら各位置で露光を行い、中央のピーク位置は補間演算を用いて推定する。
【0053】
補間演算方法としては、たとえば山の形をGauss分布であると考える方法などが挙げられる。Gauss関数にフィッティングして求める場合、最大値fpとその前後の各1点fp−1、fp+1の計3点から以下の式(1)から推定できる。
zfocus = zp + (ln(fp+1)-ln(fp-1)) /(2(2ln(fp)-ln(fp-1)-ln(fp+1))) (1)
【0054】
ここで、zfocusは山のピークを与える焦点位置であり、zpは最大値fpを与える焦点位置を示している。
【0055】
このような補間演算を行うことで、高さ決定において必要な光軸方向に離散的に変更された物体側集光点の位置(光軸方向測定位置)の数、すなわち入力共焦点画像の数を、従来法に比べて大幅に少なくすることが可能になる。たとえば、従来200枚必要であった画像を、20枚以下とすることができる。
【0056】
画像生成部56は、高さ決定部55により算出された光検出器17aごとの被計測体15の光軸方向の位置にもとづいて、被計測体15の形状画像を生成し、この形状画像を表示部52に表示させる。
【0057】
なお、1回の計測(1枚の形状画像を生成する処理)に必要な、光軸方向に離散的に変更された物体側集光点の位置(光軸方向測定位置)の数は、回転体32の透明部材31の枚数の正整数分の1(たとえば1/2や1/3など)としてもよい。たとえば、光軸方向測定位置の数が回転体32の透明部材31の枚数と一致する場合、回転体32が1回転すると1回の計測を行うことができる。また、開口板12に設けられる開口部25の周期の数は、開口板12がY軸方向の所定の向き(正の向きおよび負の向きの一方)に等速移動している間に少なくとも1回の計測を行うことができる数とするとよい。
【0058】
また、開口板12がY軸方向の所定の向き(正の向きおよび負の向きの一方)に等速移動している間に少なくとも1回の計測を行い、開口板12の移動向きを反転させて等速状態になってから次の計測を行ってもよい。また、このとき、開口板12の移動向きの反転などに伴う開口板12の加減速期間に、被計測体15をXY移動させて計測対象領域を変更してもよい。この場合、複数回の測定全体にかかる時間を短縮することができる。
【0059】
なお、共焦点「顕微鏡」では、観察が主目的であるため、とぎれることのない撮像が求められる。この点、ニポウディスクを用いた共焦点顕微鏡は、ニポウディスクが回転している限り、共焦点画像がとぎれることなく得られるため便利であるといえる。しかしながら、表面形状計測においては、1回(1視野)の計測という区切りがあることから、とぎれのない撮像は必要不可欠ではなく、ニポウディスクの回転のような終端のないスキャンでなく、本実施形態に係る開口板12の移動を用いる方法のように終端のあるスキャンであっても、開口板12の等速移動中に一回の計測が終了してしまえば問題はない。
【0060】
本実施形態に係る立体形状計測装置10は、開口板12を直線走査することができる。このため、光検出器群17を露光させつつ開口板12を直線的に走査することにより、1つの開口部25で複数の画素に対応させることができ、高分解能を実現することができる。また、物体側集光点の走査軌跡を厳密な直線とすることができ、被計測体15の表面上の走査領域(計測対象領域)を矩形とすることができるため、ニポウディスクを用いる場合に比べ、二次元イメージセンサとの相性を向上させることができる。
【0061】
なお、本実施形態では開口板12が複数のピンホール(開口部25)が設けられたピンホールアレイ型である場合の例について示したが、所定の配列周期Δdを持つように開口していればよく、たとえばスリットアレイ型であってもよい。開口板12をスリットアレイ型とする場合は、開口板12の移動方向に直交する方向に長辺を持つスリットが、移動方向にスリット中心間隔がΔdの正整数分の1となるように複数並べて設けると、所定の配列周期をΔdとして扱うことが可能である。
【0062】
このようなスリットを持つ開口板12を用いる場合には、共焦点画像を得るのに必要な最低限のスキャン幅はスリット中心間隔(ピッチ
)に等しい。つまり、スリットのピッチ分だけ開口板12が移動すれば、光検出器群17を構成する全ての光検出器17aで共焦点データが得られることになる。このため、スリットアレイ型の開口板12を用いる場合、ピンホールアレイ型の開口板12を用いる場合に比べて1枚の共焦点画像を得るために必要な開口板12の移動距離は少なくすることが可能である。
【0063】
次に、開口板12の詳細な構成および開口板12の防塵方法について説明する。
【0064】
開口部25は、直径1〜数μmのサイズで開口板12に設けられる。このため、開口板12のうち、少なくとも複数の開口部25が設けられた領域(以下、開口領域という)は、防塵対策を施されることが好ましい。開口領域の防塵方法として、立体形状計測装置10の光学系全体を筐体で密閉する方法や、開口板12および開口板変位部26を筐体で密閉する方法を採用する場合、いずれも大掛かりになってしまうほか、開口板変位部26などの駆動部より塵が発生し開口アレイ領域に付着してしまう可能性がある。
【0065】
そこで、本実施形態に係る立体形状計測装置10は、開口板12を防塵するためのカバー部材60を備える。カバー部材60は、開口板12の開口領域を両側から防塵するために用いられる。
図1には、カバー部材60の構成の一例を概略的に示してある。また、
図6(a)は、
図1に示す一例に係るカバー部材60が設けられた開口板12の側面図であり、(b)はその斜視図である。
【0066】
図1および
図6に示すカバー部材60の一構成例は、開口板12が透明基板12aで構成され、この透明基板12aの光源側の側面がクロムエッチングされて開口部25が形成される場合に好適である。この場合、開口領域の対物レンズ側の側面は透明基板12aで防塵される。このため、カバー部材60は、開口領域の光源側の側面を防塵すればよい。したがって、
図1および
図6に示すように、カバー部材60は、開口板12の光源側(開口部25が形成された側面)に開口部25を覆うように着脱自在に設けられて、開口領域の光源側の側面を防塵すればよい。この場合の開口板12およびカバー部材60の構成の詳細について、以下さらに説明する。
【0067】
カバー部材60は、透明体61、透明体61の支持部材62および中間板63を有する。一方、開口板12は、透明基板12aの光源側の側面に複数の開口部25が形成された開口領域を有する。
【0068】
支持部材62および中間板63には、光源11aの光を透過するための開口が設けられる。透明体61は、支持部材62の開口の内側または外側に全周接着される。支持部材62は、支持部材62の開口中心と中間板63の開口中心とがほぼ一致するように中間板63にネジ止めされる。なお、支持部材62と中間板63の接触面には、中間板63の開口を囲むようにOリングなどのパッキン64を入れておくと、防塵効果をより高めることができる。
【0069】
また、中間板63の支持部材62固着側の反対側の側面には、開口部25の形成面65と中間板63の開口とが対向するよう、開口板12が全周接着される。この結果、開口板12と透明体61と支持部材62と中間板63とで形成される密閉空間内に、複数の開口部25が形成された開口領域を収めることができる。また、開口板12とカバー部材60とは開口板変位部26により一体的にY軸方向に変位することになる。
【0070】
なお、開口板12は、中間板63に対して全周接着されずともよく、たとえば中間板63に対して着脱自在となるようOリングなどのパッキンを介してネジ止めされてもよい。この場合、カバー部材60は開口板12に対して着脱自在となる。開口板12がカバー部材60に対して着脱自在に圧着される場合、開口板12の交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0071】
中間板63は、L字治具66の開口に開口板12が収まるように、L字治具66の縦部にネジ止めされる。L字治具66の横部は、開口板載置部67にネジ止めされる。開口板載置部67は、撮像制御部54を介してリニアモータ68によりリニアガイド68aに沿ってY軸方向に変位する。リニアモータ68による駆動制御は、リニアガイド68aの近傍に設けられた各種のセンサ群69の出力信号を利用して行われる。センサ群69には、原点センサやリミットセンサなどが含まれる。
【0072】
カバー部材60は、開口板12の光源側の開口部25の形成面65に、開口領域を覆うように設けられて開口領域の光源側を防塵する。このため、開口板変位部26ごと覆う場合や立体形状計測装置10の光学系全体を覆う場合に比べ、非常に軽量かつ簡単な構成で防塵することができるとともに、モータの発塵による弊害を未然に防ぐことができる。
【0073】
透明体61あるいは透明基板12aは開口板12の開口領域に塵埃が付着することを防ぐ機能を有するが、透明体61あるいは透明基板12aそれ自身に付着する塵埃は防ぐことはできない。しかし、透明体61あるいは透明基板12aの厚さが十分厚ければ、透明体61あるいは透明基板12aの表面に付着する塵埃は、結像光学系35あるいは対物レンズ13の結像位置である開口板12の位置から離れることになり、結像光束が太い位置であるため結像光束を完全に塞いでしまうことは無くなるため計測への影響は小さくてすむ。
【0074】
しかし、光路中に厚い透明体61を挿入すると結像光学系35の結像性能への影響を無視できなくなる。そのため、結像光学系35はこの透明体61の厚みを考慮して設計されるべきである。もちろん、透明体61は、脈理がなく面精度および平行度が十分高い光学ガラスを用いる必要がある。
【0075】
なお、
図1および
図6には、透明基板12aの光源側に開口部25が形成されるとともにカバー部材60が開口領域の光源側を防塵する場合の例について示したが、開口板12およびカバー部材60は光路上で全体として反転して配置されてもよい。すなわち、透明基板12aの対物レンズ側に開口部25が形成されるとともにカバー部材60が開口領域の対物レンズ側を防塵してもよい。
【0076】
また、カバー部材60は、開口板12の開口領域が両側から防塵されるために必要な構成を有すればよく、
図1および
図6に示すような構成に限られない。
図1および
図6に示した構成例では、開口板12の開口領域の一側面が透明基板12aで防塵されるため、カバー部材60は、開口領域の他の側面を防塵可能に構成されればよい。一方、たとえば開口板12が、遮光性の高い板(金属板のほか、遮光性塗料を塗布されたプラスチック板等を含む)により構成され、この板に孔を設けることにより開口部25が形成されている場合は、カバー部材60は、開口板12の開口領域を光源側および対物レンズ側の両側から覆うよう構成されるとよい。このとき、たとえばカバー部材60は
図1に示す透明体61および支持部材62からなる組を2組有し、各組を遮光性の高い板により構成された開口板12の開口領域の光源側および対物レンズ側にそれぞれ着脱自在に設けるとよい。
【0077】
次に、撮像制御部54による撮像制御方法について説明する。
【0078】
撮像制御部54は、焦点位置変更部14、光検出器群17および開口板変位部26を制御することにより、光検出器群17の露光時間が配列周期Δdに正整数mを乗じた距離だけ開口板12が移動する時間と一致するよう、開口板12の移動速度、回転体32の回転速度および光検出器群17の露光時間および露光タイミングを制御する。たとえば、開口部25の配列周期Δdが100μmであり、開口板12の定速移動の速度vが10mm/sである場合、配列周期Δdの移動に要する時間Δtは10msである。この場合、光検出器群17の露光時間Δt1は、正確にΔt=10msに正整数mを乗じた時間に一致するように制御される。
【0079】
しかし、たとえ露光時間Δt1が正確にm・Δtに一致していても、露光時間Δt1に微妙な誤差があると、画像にパターンが発生することになる。そのパターンは、露光開始時における開口部25の位置によって決まる。つまり、露光開始時の開口部25の位置付近の画素に露光不足もしくは露光過剰が発生し、パターンとなって表れることになる。他にも、開口部25の配列方向と開口板12の移動方向とが正確に一致せず互いに傾いている場合、傾きが微小であっても同じようなパターンが表れることになる。これらのパターンもまた露光の開始時の開口部25の位置で決まる。したがって、露光の開始時の開口部25の位置がランダムであると、パターンもランダムに変動することになる。
【0080】
一方、露光の開始タイミングは、焦点位置変更部14のタイミングセンサ34のトリガのタイミングに応じて決定されることになる。このため、たとえば開口板変位部26とは全く独立で回転体32の回転数を決定している場合、取込画像毎に上記パターンはほぼランダムに変動し、計測演算に用いる軸上応答曲線にノイズ成分として反映されてしまうため、計測精度が低下することになる。
【0081】
これを回避するためには、ランダムなタイミングで露光を開始するのを禁止し、開口板12が配列周期Δd分移動する時間(上記の例では10ms)の倍数のインターバルでしか露光開始を認めないことで、パターンのランダム発生を防ぎ、より鮮明な画像を得ることができる。
【0082】
図7は、鮮明な画像を得るためのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【0083】
図7に示すように、撮像制御部54は、回転体32の透明部材31が光軸と交差するごとに光検出器群17を露光させる。このとき、撮像制御部54は、光検出器群17の露光時間Δt1が配列周期Δdの移動に要する時間Δtに正整数mを乗じた時間m・Δtだけに一致させる。このとき、撮像制御部54は、開口板12の移動速度vをv=Δd/Δtとなるように制御する。また、撮像制御部54は、隣り合う露光の開始時刻どうしの間隔をΔtに正整数n(ただしn>m)を乗じた時間n・Δtに一致させる。
【0084】
たとえば、上記の例において、m=1、n=2である場合について考える。この場合、カメラの最高撮像速度が60fps(約17ms/枚)であるとして、計測の開始の1枚目の画像の露光開始タイミング(これはランダムでも良い)で露光を実行した後、この露光開始タイミングから20ms間隔で次の画像の露光を開始するようにして画像を得ることにする。もちろん露光時間は正確に10msであるとする。この場合、得られる全ての画像に表れるパターンは、最初の1枚目の画像のパターンと全く同じ位置に表れることになる。露光の開始時の開口部25がランダムである場合、軸上応答曲線にノイズとして混入することから精度に影響することになるが、パターンの位置が変動せず固定である場合は、軸上応答曲線にノイズとして表れず単に曲線全体の高さ(強度)の違いとして表れる形となり、精度にはほとんど影響しない。
【0085】
また、回転体32に設けられた透明部材31の枚数に対応する数の画像により1回の測定が終了する場合には、回転体32の回転速度は、露光(画像入力)周期×透明部材31の枚数の逆数に一致させるとよい。たとえば、透明部材31の枚数が10枚とすると、上記の例では20ms×10枚=200msであるから1/200ms=5rpsで回転させる。回転体32の速度が正確で、かつタイミングセンサ34の精度が高く、正確に(無視できる程度の誤差で)20ms間隔でタイミング信号を発生できるのであれば、上記の目的は達せられる。また、回転体32のタイミング信号が正確でない場合は、計測開始指示後、最初のタイミングセンサ34の信号をトリガとして露光を開始し、後は正確に20ms間隔で露光を開始するようにして10枚の画像を取得すればよい。このようにすると、高々1回転だけの間、大きなズレが発生しなければ良いだけであるから、回転速度精度的には厳しくない。
【0086】
次に、開口板12の加減速にともない生じる力の影響を低減させる方法について説明する。
【0087】
開口板12は、できるだけ素早く等速状態まで加速されることが好ましい。しかし、強い加減速を行うと、加減速にともなう力の発生により振動が発生し精度を低下させる可能性が考えられる。このような加減速にともない生じる力の影響低減させるため、反力機構を設けるとよい。
【0088】
図8は、反力機構70の一構成例を示す斜視図である。反力機構70は、リニアモータ68によりリニアガイド68aに沿ってY軸方向に変位する移動体71と、移動体71に設けられ移動体71と一体的に変位する調整部材72とを有する。
【0089】
移動体71は、開口板12の加減速にともない生じる力の影響を低減させる(打ち消す)ように、撮像制御部54を介してリニアモータ68により駆動される。たとえば、開口板載置部67を含む開口板載置部67の載置物の重量と反力機構70の重量とが一致するよう調整部材72の重さを選択した場合、これらの重心は開口板載置部67と移動体71の中間に存在する。この場合、移動体71は、たとえば開口板載置部67と重心対称に、反対方向に同じ大きさで加減速運動させることにより開口板12の加減速にともない生じる力の影響を低減させることができる。
【0090】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る立体形状計測装置の第2実施形態について説明する。
【0091】
図9は、本発明の第2実施形態に係る立体形状計測装置10Aの一構成例を示す概略的な全体図である。
【0092】
この第2実施形態に示す立体形状計測装置10Aは、焦点位置変更部14が対物レンズ13の開口板12側に設けられる点で第1実施形態に示す立体形状計測装置10と異なる。他の構成および作用については
図1に示す立体形状計測装置10と実質的に異ならないため、同じ構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0093】
顕微鏡では対物レンズを交換することでより拡大して(観察)精度を上げたり、逆に精度は低いが広い視野で全体を観察したりと、目的に応じて最適な拡大倍率を選ぶことができるため汎用性が高い。
【0094】
計測でも同様な汎用性を持つことが望まれるが、第1実施形態に係る立体形状計測装置10のように回転体32を含む焦点位置変更部14が被計測体15側(被計測体15と対物レンズ13との間)に挿入されると、このような汎用性は得られない。これは、回転体32上の透明部材31の厚さピッチは、共焦点の軸上応答曲線(Z移動した場合の検出器変化の曲線)の中央の山内で3点以上の値をサンプリングできるように決定される一方、対物レンズ13を交換するということは、対物レンズ13の被計測体15側のNA(開口数)が変化することになるためである。
【0095】
中央の山の幅は、被計測体15側のNAによって決定される。このため、対物レンズ13が交換されると、回転体32の透明部材31のピッチも変えなければならなくなる。つまり、対物レンズ13だけでなく回転体32自体も交換する必要が生じてしまう。
【0096】
図10は、第2実施形態に係る被計測体のZ軸座標を算出する方法を説明するための図である。
【0097】
対物レンズ13の被計測体15側のNAは、像側(対物レンズ13の開口板12側)のNAが変化しない(つまり像側の結像レンズを交換しない。通常の顕微鏡はこの形で対物レンズ13を交換する)のであれば、像側NA×倍率で決まる。また、中央の山の幅は被計測体15側のNAの二乗に反比例する。つまり倍率の二乗に反比例する。
【0098】
したがって、
図9に示すように回転体32が像側(開口板12側)空間にある場合には、透明部材31の厚さピッチで決まる像側空間でのサンプリングピッチは、被計測体15側の空間ではレンズ縦倍率(横倍率の二乗)に反比例することになる。このため、
図5(b)と
図10とを比較すると明らかなように、対物レンズ13を交換して倍率を変えても、中央の山の幅だけでなく、被計測体15側のサンプリングピッチも横倍率の二乗に反比例して同じように自動的に変化することになる。したがって、
図9に示すように回転体32が像側(開口板12側)空間にある場合には、対物レンズ13を交換しても回転体32を交換する必要はないことになる。もちろん実際に計測できる光軸方向の物体空間(Z計測レンジ)も横倍率の二乗に反比例して変化するが、通常高倍率であるほど、より小さいものを観察することになるから合理的である。
【0099】
したがって、第2実施形態に係る立体形状計測装置10Aによれば、対物レンズ13の倍率変更を容易に行うことができる。また、焦点位置変更部14を被計測体15側に設ける場合にくらべ、被計測体15側の空間のワーキングディスタンスを十分に確保することができ、作業性を向上させることができるともに、斜入射照明のような付属の照明を容易に設けることができる。
【0100】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0101】
たとえば、焦点位置変更部14は、対物レンズ13の物体側集光点の位置をZ方向に移動させることができれば
図3に示した構成に限られず、たとえば所定の屈折率を有する透明体により形成されるとともに透明体の光軸方向の厚さが可変な光路長調節部材と、透明体の光軸方向の厚さを変更する調節部材駆動部と、により構成されてもよい。この場合、焦点位置変更部14は、光軸と交わる透明体の光軸方向の厚さを変更して光路長調節部材を光線が貫く光路長を変更することにより、物体側集光点の位置を光軸方向に変更することができる。光路長調節部材は、たとえば互いに平行に設置された2枚の平行平板ガラスと、これらのガラスの間に充填された液体とにより構成することができる。この場合、調節部材駆動部は、この液体の体積を変更することで光路長を変更することが可能である。