(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と該基材の片面に設けられた粘着剤層とを備え、ガラスをエッチングする際に非エッチング部分に貼り付けて該非エッチング部分をエッチング液から保護するガラスエッチング用保護シートであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が60%以上であり、
前記粘着剤が、アクリル系ポリマー(ただし、側鎖結晶性ポリマーを除く。)を主成分とするアクリル系粘着剤であり、
前記アクリル系ポリマーは、式:
CH2=CR1COOR2
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2はアルキル基を示す)
で表わされるモノマーを主モノマーとして含むモノマー原料を重合して合成されたものであり、
前記主モノマーは、前記式のR2が炭素数6以上のアルキル基であるモノマーを主成分として含み、
前記モノマー原料は、カルボキシル基含有モノマーを、前記主モノマー100質量部に対して1〜10質量部の割合で含み、
ガラスに対する粘着力が3N/20mm以下である、ガラスエッチング用保護シート。
前記基材が、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド(PI)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、エチレン酢酸ビニル(EVA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる層を含む、請求項1から5のいずれかに記載のガラスエッチング用保護シート。
ガラス基板の表面をエッチング処理する前に、前記ガラスエッチング用保護シートの粘着剤層側を該ガラス基板の一方の表面の非エッチング部分に貼り付けることで、該非エッチング部分をエッチング液から保護するガラス基板の表面保護シートとして用いられる、請求項1から7のいずれかに記載のガラスエッチング用保護シート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書における「シート」は、シートより厚さが相対的に薄いとされるフィルムや、一般的に粘着テープと称されるようなテープを包含する。
【0028】
第1態様に係るガラスエッチング用保護シート(以下、保護シートと略すこともある。)について以下説明する。
【0029】
本発明のガラスエッチング用保護シートは、基材と該基材の片面に設けられた粘着剤層とを備え、ガラスをエッチングする際に非エッチング部分に貼り付けて該非エッチング部分をエッチング液から保護するものであって、前記粘着剤層のゲル分率が60%以上であり、前記粘着剤層は、式(1):
CH
2=CR
1COOR
2 (1)
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2は炭素数6以上のアルキル基を示す)で表わされるモノマーを主モノマーとするアクリル系ポリマーであることを特徴とする。
【0030】
粘着剤のゲル分率は60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上である。ゲル分率が低いと、保護シートを剥離する際に糊残り等の汚染が発生する。また、ゲル分率が高い方が保護シート側面からの液浸入を防ぐことができる。
【0031】
本願の粘着剤のポリマーの主モノマーは上記式(1)で表わされるモノマーであって、R
2は炭素数6以上のアルキル基である。R
2の炭素数を増やすことで、疎水性が上がり、エッチング液の浸入を防ぐ効果が期待できる。
【0032】
このようなガラスエッチング用保護シートの粘着剤層中の官能基モノマーには、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基等を含有させることができる。特に、官能基としてカルボキシル基が好ましい。
【0033】
基材は好ましくは、材質がポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド(PI)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等からなり、より好ましくはPP、PE、PETからなるものであり、さらに好ましくは、その可撓性と耐酸性のバランスからPE、PPが好ましい。PPの場合、PEをブレンドしてもよい。可撓性のあるフィルムを用いる方が、ITO膜やFPCの貼り合わせられたガラス面に貼る際に、段差に追従することができ、フッ酸溶液等のエッチング液の浸入経路を作り難い。
【0034】
また、取扱い性やハンドリング、シート表面からのエッチング液浸漬を防止する観点から、基材の厚さは80μm以上が好ましく、より好ましくは100μm以上である。また、粘着剤の投錨性を得るため、粘着剤を塗付する面にはコロナ処理や、アクリルポリマーにイソシアネートを配合した下塗り剤等を用いてプライマー処理をすることが好ましい。さらに、保護シートを巻き戻す際の巻戻し力を軽くするため、粘着剤の接しない反対面に長鎖アルキル系、シリコーン系の剥離処理層を設けてもよい。
【0035】
本願のガラスエッチング用保護シートのガラスに対する粘着力は3N/20mm以下が好ましく、より好ましくは2N/20mm以下である。また、ガラスへのエッチング処理工程中に剥離してしまわないために、本願の保護シートのガラスに対する粘着力は0.05N/20mm以上であることが好ましい。粘着力が高すぎるとエッチング処理後に保護シートを剥離する際に、被着体であるガラスが割れる可能性がある。
【0036】
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤等を使用することができる。貯蔵性等の取扱い性および耐酸性の観点から、カルボキシル基とエポキシ系架橋剤またはイソシアネート系架橋剤による架橋が好ましい。架橋剤の配合量としては、アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部〜7質量部である。架橋剤の配合量がこの範囲である場合、軽剥離性と接着性を両立するという点で好ましい。
【0037】
ポリマーは、式(1):
CH
2=CR
1COOR
2 (1)
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2は炭素数6以上のアルキル基を示す)で表わされる1種以上のモノマー、つまり(メタ)アクリル酸エステルに由来する側鎖を含んでいる。
【0038】
ここで、アルキル基としては、炭素数が6以上である。また、原料の入手容易性、製造の容易性および薬液浸入抑制作用等を考慮して、炭素数30程度以下が適している。具体的には、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、エチルヘキシル、プロピルヘキシル等が例示される。
【0039】
この(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマーとして、ポリマーの主鎖を構成する全モノマーの50mol%以上の割合で重合されていることが適している。ポリマーが、再剥離型粘着剤として後述するような態様で使用される場合に、粘着剤への薬液等の浸入を充分に抑制するのに有効とするためである。
【0040】
ポリマーとしては、粘着性を発現させることができるポリマーであればよいが、分子設計の容易さ等の点からアクリル系ポリマーが好ましい。
【0041】
アクリル系ポリマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えばメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、イソノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状または分岐鎖状のアルキルエステル等)、および(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えばシクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種または2種以上をモノマー成分として含むアクリル系ポリマー等が挙げられる。
【0042】
ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルまたはシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー(またはオリゴマー)をコモノマー単位として含んでいてもよい。
【0043】
このようなモノマー(またはオリゴマー)としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
【0044】
また、モノマー(またはオリゴマー)としては、窒素原子を含有するモノマー、例えばアクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;後述するイソシアネート基含有モノマー等が挙げられる。これらのモノマー成分は1種または2種以上を使用できる。
【0045】
共重合可能な他のモノマー(またはオリゴマー)の使用量は、ポリマーの主鎖を構成する全モノマーの0.1mol%以上が適しており、0.1〜30mol%程度が好ましい。
【0046】
さらに、ポリマーにおいて、架橋処理等を目的として、多官能性モノマー等も必要に応じてコモノマー単位として含んでいてもよい。
【0047】
このようなモノマーとしては、例えばヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種または2種以上を用いることができる。
【0048】
多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、ポリマーの主鎖を構成する全モノマーの30mol%以下が好ましい。
【0049】
ポリマーは、単一モノマーまたは2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等のいずれの方式で行うこともできる。
【0050】
上記粘着剤組成物の形態は特に限定されない。例えば溶剤型、エマルション型、水溶液型、活性エネルギー線(紫外線)硬化型、ホットメルト型等の種々の形態であり得る。典型的には、上記アクリル系重合体を、他の成分(架橋剤、架橋促進剤等)とともに適当な溶媒に溶解または分散させることにより調製される。例えばエマルション重合後、必要に応じてpH調整、塩析、精製等の処理を施して得られたアクリル系重合体を、架橋剤、架橋促進剤、および必要に応じて各種の添加剤等(任意成分)とともに、トルエン、酢酸エチル等の有機溶媒に溶解させて得られる溶剤型粘着剤組成物であってもよい。
【0051】
また、本発明の再剥離型粘着剤(粘着剤層を構成する粘着剤)は、架橋剤等の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0052】
架橋剤としては、当該分野で公知の架橋剤、例えばシアン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤等が挙げられる。
【0053】
本発明の再剥離型粘着シート(ガラスエッチング用保護シート)は、基材フィルム上に上述した再剥離型粘着剤からなる粘着剤層が設けられている。
【0054】
この粘着シートは、例えば基材フィルム上に、再剥離型粘着剤を含む粘着剤組成物を塗付、乾燥することにより作製することができる。
【0055】
また、適当なセパレータ(剥離紙等)上に、再剥離型粘着剤を含む粘着剤組成物を塗付、乾燥して、粘着剤層を形成し、これを基材フィルム上に転写(移着)することにより製造してもよい。
【0056】
基材フィルムとしては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0057】
例えば基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(PE)フィルム、各種軟質ポリオレフィンフィルム等のポリオレフィン系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム;等のプラスチックフィルム、およびこれらのフィルムを含む多層フィルム等が挙げられる。
【0058】
基材フィルムの厚さは、例えば80μm〜300μm程度が例示される。
【0059】
粘着剤層の厚さは適宜調整することができる。一般には1μm〜100μm、好ましくは2μm〜40μm、さらに好ましくは3μm〜30μm程度である。
【0060】
粘着シートの形状は特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。
【0061】
本発明の再剥離型粘着シート(ガラスエッチング用保護シート)は、ガラス基板の所望の部位に貼付して、その部位を保護するための粘着シートとして使用することができる。つまり、この粘着シートに用いられている粘着剤は、エッチング、洗浄等において、液体、特に酸およびアルカリ性の薬液にガラス基板が曝された場合でも、薬液等によって変質または溶解等し難い。また、薬液等に曝すことを意図しない部位において、確実に薬液等の浸入を防止し、その表面を保護することができる。
【0062】
上述した第1態様に係る保護シートについて、さらに詳しく、あるいは異なる側面から説明する。かかる説明は、上述した第1態様に係る保護シートを理解するために必要に応じて参照され得る。
【0063】
ここで開示される保護シートは、基材と該基材の片面に設けられた粘着剤層とを備える。かかる保護シートの典型的な構成例を
図1に模式的に示す。この保護シート10は、樹脂製のシート状基材1と、その一方の面(片面)に設けられた粘着剤層2とを備える。この保護シート10の粘着剤層2側を、被着体(典型的にはガラス基板)をエッチングする前に、被着体の所定箇所(保護対象部分、典型的にはエッチング液の影響を排除したい部分(以下、非エッチング部分ともいう。))に貼り付けて使用する。これによって、上記非エッチング部分をエッチング液から保護する。使用前(すなわち被着体への貼付前)の保護シート10は、典型的には
図2に示すように、粘着剤層2の表面(貼付面)が少なくとも粘着剤層2側が剥離面となっている剥離ライナー3によって保護された形態であり得る。あるいは、基材1の他面(粘着剤層2が設けられる面の背面)が剥離面となっており、保護シート10がロール状に巻回されることにより該他面に粘着剤層2が当接してその表面が保護された形態であってもよい。保護シートの形状はシート状であればよく、ロール状やセパレータ付の単板状等であってもよい。
【0064】
粘着剤層を構成する粘着剤は、ベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、主たる粘着性成分)として、アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤である。ここで「アクリル系ポリマー」とは、典型的には、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、この主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含んでよいモノマー原料(単一モノマーまたはモノマー混合物)を重合することによって合成された重合体(共重合体)である。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0065】
同様に、粘着剤(層)を形成するために用いられる粘着剤組成物も、ベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、主たる粘着性成分)としてアクリル系ポリマーを含有する。
【0066】
上記アクリル系ポリマーを重合するために用いられるモノマー原料は、主モノマーとして、式:
CH
2=CR
1COOR
2
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2はアルキル基を示す)で表わされるモノマーを含む。上記アルキル基は直鎖状または分岐鎖状である。また、上記主モノマーは、上記式のR
2が炭素数6以上のアルキル基であるモノマー(主モノマーA)を主成分として含む。主モノマーAのアルキル基(R
2)の炭素数は、好ましくは7以上(典型的には8)である。かかるアルキル基の炭素数が増加するほど疎水性が上がり、エッチング液の浸入を防ぐ効果が期待できる。また、原料の入手しやすさ、製造しやすさ、耐エッチング液浸入性を考慮して、上記炭素数は凡そ30以下とすることが好ましい。なかでも、R
2がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、プロピルヘキシル基のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。R
2が2−エチルヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。これらのモノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
上記主モノマーは、ガラス転移温度(Tg)の調整や凝集力向上のため、上記式のR
2が炭素数6以上のアルキル基であるモノマー(主モノマーA)以外のモノマー、すなわち炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(主モノマーB)を含有してもよい。そのようなアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
主モノマー中における上記式のR
2が炭素数6以上のアルキル基であるモノマー(主モノマーA)の割合は50質量%を超える。得られる粘着剤の疎水性を向上させ、耐エッチング液浸入性を高める観点から、好ましくは80質量%以上(例えば90質量%以上、典型的には95質量%以上)である。主モノマーとして上記式のR
2が炭素数6以上のアルキル基であるモノマー(主モノマーA)のみを用いることがより好ましい。したがって、主モノマー中における炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(主モノマーB)の割合は、10質量%以下(典型的には5質量%以下)であることが好ましく、このようなアルキル(メタ)アクリレート(主モノマーB)を用いないことがより好ましい。
【0069】
上記アクリル系ポリマーを重合するために用いられるモノマー原料は、非汚染性、軽剥離性、耐熱性等の諸性質の向上を目的として、主モノマーに加えて主モノマーと共重合可能な副モノマーをコモノマー単位として含んでもよい。なお、かかる副モノマーはモノマーだけでなくオリゴマーも含むものとする。
【0070】
上記副モノマーとしては、官能基を有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう。)が挙げられる。かかる官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入し、アクリル系ポリマーの凝集力を高める目的で添加され得るものである。そのような官能基含有モノマーとしては、
例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等の上記エチレン性不飽和ジカルボン酸等の酸無水物等の酸無水物基含有モノマー;
例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の不飽和アルコール類等のヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;
以下に述べるアミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマーおよびシアノ基含有モノマー等の、窒素原子を官能基中に含む官能基含有モノマー、すなわち
例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;
例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;
例えば2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基(グリシジル基)含有モノマー;
例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート等のケト基含有モノマー;
例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;
例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;
例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アクリル系ポリマーに架橋点を好適に導入することができ、また、アクリル系ポリマーの凝集力をより高めることができることから、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の官能基含有モノマーが好ましい。カルボキシル基含有モノマーまたはヒドロキシル基含有モノマーがより好ましい。
【0071】
また副モノマーは、アクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上記官能基含有モノマー以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、
例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;
例えばスチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
例えばアリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;
例えばN−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー;
例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;
例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;
例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、得られるアクリル系ポリマーの凝集力を向上する観点からビニルエステル系モノマーが好ましい。そのなかでも酢酸ビニルがより好ましい。
【0072】
さらに副モノマーは、架橋処理等を目的として、多官能性モノマー等のコモノマー単位を必要に応じて含んでもよい。そのような多官能性モノマーとしては、例えばヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
上記主モノマーは、アクリル系ポリマーの主鎖を構成する全モノマー(主モノマーと副モノマー)のなかで最も多い割合で含有されていればよい。粘着力と軽剥離性とを両立し、良好な耐エッチング液浸入性を得る観点から、主モノマーの含有量は上記全モノマーの50質量%を超えることが好ましく、60質量%以上(例えば70質量%以上99質量%以下、典型的には80質量%以上98質量%以下)であることがより好ましい。副モノマーの割合は、好ましくは上記全モノマーの50質量%未満(例えば1質量%〜40質量%、2質量%〜20質量%)であることが好ましい。なかでも、アクリル系ポリマーの主鎖を構成するモノマーとして上述の官能基含有モノマーを用いる場合、耐エッチング液浸入性と軽剥離性とを両立し、かつ非汚染性と軽剥離性とを向上する観点から、主モノマー(好ましくは上記式中のR
2が炭素数6以上のアルキル基、より好ましくは炭素数8のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート)100質量部に対して官能基含有モノマー(好ましくはカルボキシル基含有モノマー)を1質量部〜10質量部(例えば2質量部〜8質量部、典型的には3質量部〜7質量部)含ませることが好ましい。また、アクリル系ポリマーの主鎖を構成するモノマーとして上記官能基含有モノマー以外のモノマーを用いる場合、良好な耐エッチング液浸入性、非汚染性および軽剥離性を得る観点から、主モノマー(好ましくは上記式中のR
2が炭素数6以上のアルキル基、より好ましくは炭素数8のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート)100質量部に対して、上記官能基含有モノマー以外のモノマー(好ましくは酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー)を1質量部〜100質量部(例えば2質量部〜90質量部、典型的には5質量部〜85質量部)含ませることが好ましい。さらに、アクリル系ポリマーの主鎖を構成するモノマーとして上述の多官能性モノマーを用いる場合、良好な粘着特性(例えば接着力)と耐エッチング液浸入性を得る観点から、主モノマー100質量部に対して、上記多官能性モノマーを30質量部以下(例えば20質量部以下、典型的には1質量部〜10質量部)含ませることが好ましい。
【0074】
上記モノマーまたはその混合物を重合する方法は特に限定されず、従来公知の一般的な重合方法を採用することができる。そのような重合方法としては、例えば溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合が挙げられる。なかでも、耐水性および耐エッチング液浸入性に優れるという理由から溶液重合が好ましい。重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力等)、モノマー以外の使用成分(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜選択して行うことができる。例えばモノマー供給方法としては、全モノマー混合物を一度に反応容器に供給(一括供給)してもよく、徐々に滴下して供給(連続供給)してもよく、何回分かに分割して所定時間ごとに各分量を供給(分割供給)してもよい。上記モノマーまたはその混合物は、一部または全部を、溶媒に溶解させた溶液、もしくは水に乳化させた分散液として供給してもよい。
【0075】
重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、置換エタン系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が例示される。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドが例示される。過酸化物系開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素が挙げられる。置換エタン系開始剤としては、例えばフェニル置換エタンが例示される。レドックス系開始剤としては、例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せが例示される。なかでも、耐エッチング液浸入性の観点からアゾ系開始剤が好ましい。
【0076】
重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類やモノマーの種類(モノマー混合物の組成)等に応じて適宜選択できるが、通常は全モノマー成分100質量部に対して、例えば0.005質量部〜1質量部程度の範囲から選択することが適当である。重合開始剤の供給方法としては、使用する重合開始剤の実質的に全量をモノマー混合物の供給開始前に反応容器に入れておく一括仕込み方式、連続供給方式、分割供給方式等のいずれも採用可能である。重合操作の容易性、工程管理の容易性等の観点から、例えば一括仕込み方式を好ましく採用することができる。重合温度は、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
【0077】
乳化剤(界面活性剤)としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を好ましく使用することができる。アニオン系乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類等が例示される。ノニオン系乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが例示される。また、これらのアニオン系またはノニオン系乳化剤にラジカル重合性基(ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)等)が導入された構造のラジカル重合性乳化剤(反応性乳化剤)を用いてもよい。このような乳化剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の使用量(固形分基準)は、全モノマー成分100質量部に対して例えば凡そ0.2質量部〜10質量部程度(好ましくは凡そ0.5質量部〜5質量部程度)とすることができる。
【0078】
上記重合には、必要に応じて従来公知の各種連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えばドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等のメルカプタン類から選択される1種または2種以上であり得る。連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、例えば全モノマー成分100質量部に対して凡そ0.001質量部〜0.5質量部程度の範囲から選択することが好ましい。連鎖移動剤の使用量が上述の範囲内であることにより、保護シートを剥離した後のガラス表面に糊残りが発生せず、非汚染性がより優れたものとなる。
【0079】
上記粘着剤組成物は、ベースポリマーとしての上記アクリル系ポリマーに加えて架橋剤をさらに含むことができる。架橋剤の種類は特に制限されず、粘着剤分野で通常使用される各種架橋剤のなかから、例えば上記官能基含有モノマーの架橋性官能基に応じて適宜選択して使用することができる。具体例としては、ポリイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤、シラン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤が挙げられる。なかでも、密着性と軽剥離性とを高度に両立できることから、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤は、カルボキシル基と好適に架橋することでき、また貯蔵性に優れるため取扱いがしやすく、耐酸性にも優れるという利点がある。上記粘着剤組成物に含まれる架橋剤の量は特に限定されないが、上記アクリル系ポリマー100質量部に対し、凡そ0.5質量部〜10質量部程度(例えば1質量部〜7質量部、典型的には2質量部〜7質量部)とすることができる。
【0080】
上記粘着剤組成物は架橋促進剤をさらに含んでもよい。架橋促進剤の種類は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜選択することができる。なお、本明細書において架橋促進剤とは、架橋剤による架橋反応の速度を高める触媒を指す。かかる架橋促進剤としては、例えばジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、テトラ−n−ブチル錫、トリメチル錫ヒドロキシド等の錫(Sn)含有化合物;N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミンやトリエチルアミン等のアミン類、イミダゾール類等の窒素(N)含有化合物;が例示される。なかでも、Sn含有化合物が好ましい。これら架橋促進剤の使用は、上記アクリル系ポリマーの主鎖を構成するモノマーが官能基含有モノマーとして水酸基含有モノマーを含み、かつ架橋剤としてイソシアネート系架橋剤が用いられる場合に特に有効である。上記粘着剤組成物に含まれる架橋促進剤の量は、上記アクリル系ポリマー100質量部に対し、例えば0.001質量部〜0.5質量部程度(好ましくは0.001質量部〜0.1質量部程度)とすることができる。
【0081】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて粘着付与剤を含有してもよい。粘着付与剤としては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。例えばテルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着付与剤を用いる場合、その使用量は、アクリル系ポリマーの性質を低下させず、粘着付与剤の効果が充分に得る観点から、アクリル系ポリマー100質量部に対して50質量部以下(典型的には0.1質量部〜30質量部)とすることが好ましい。なお、粘着剤組成物は、密着性や軽剥離性、非汚染性を考慮して粘着付与剤を実質的に含有しない態様であり得る。
【0082】
上記粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー以外に、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んでもよい。これらの粘着剤を用いる場合、その使用量は、アクリル系ポリマーの特性を低下させない観点から、例えばアクリル系ポリマー100質量部に対して10質量部以下程度である。耐エッチング液浸入性、非汚染性および軽剥離性を考慮すると、これらの粘着剤を含有しないことが好ましい。
【0083】
上記粘着剤組成物は、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。この組成物に含有され得る他の任意成分としては、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤、可塑剤、充填材、着色剤(顔料、染料等)、分散剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、粘着剤分野において一般的に使用される各種添加剤が例示される。このような添加剤の配合量は、必要に応じて、当該用途において粘着剤層の形成(保護シートの製造)に用いられる粘着剤組成物の通常の配合量と同程度とすることができる。
【0084】
上記粘着剤組成物中におけるアクリル系ポリマーの含有量は50質量%を超えることが好ましい。ガラスエッチング用途に好適な粘着性を発現させやすく、また分子設計が容易である点を考慮して、より好ましくは70質量%以上(例えば90質量%以上、典型的には95質量%以上)である。
【0085】
上記粘着剤組成物の形態は特に限定されない。例えば溶剤型、エマルション型、水溶液型、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型、ホットメルト型等の種々の形態であり得る。典型的には、上記モノマーまたはその混合物を適当な溶媒中で重合させて得られたアクリル系ポリマー溶液または分散液に、必要に応じて他の成分を配合することにより調製される。あるいは例えば、エマルション重合後、必要に応じてpH調整、塩析、精製等の処理を施して得られたアクリル系ポリマーを、架橋剤および必要に応じて各種の添加剤(任意成分)とともに、トルエン、酢酸エチル等の有機溶媒に溶解させて得られる溶剤型粘着剤組成物であってもよい。
【0086】
粘着剤層を基材上に設ける方法としては、例えば上記粘着剤組成物を基材に直接付与(典型的には塗付)して硬化処理する方法(直接法)や、剥離性を有する適当なセパレータ(剥離紙)の上(表面(剥離面))に上記粘着剤組成物を付与(典型的には塗付)して硬化処理することによりセパレータの表面上に粘着剤層を形成し、この粘着剤層を基材に貼り合わせて粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を用いることができる。上記硬化処理は、乾燥(加熱)、冷却、架橋、追加の共重合反応、エージング等から選択される1または2以上の処理であり得る。例えば溶媒を含む粘着剤組成物を単に乾燥させるだけの処理(加熱処理等)や、加熱溶融状態にある粘着剤組成物を単に冷却する(固化させる)だけの処理も、ここでいう硬化処理に含まれ得る。上記硬化処理が2以上の処理(例えば乾燥および架橋)を含む場合、これらの処理は同時に行ってもよく、多段階に亘って行ってもよい。
【0087】
粘着剤組成物の塗付は、例えばグラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。該組成物が塗付される支持体の種類にもよるが、例えば凡そ40℃〜150℃程度の乾燥温度を採用することができる。乾燥後、架橋反応がさらに進むように40℃〜60℃程度で保持するエージング処理を施してもよい。エージング時間は、所望の架橋度や架橋反応の進行速度に応じて適宜選択すればよく、例えば12時間〜120時間程度とすることができる。
【0088】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができる。粘着剤層の厚さは、例えば1μm〜100μm程度であり得る。ガラスエッチング用途により好適な厚さは2μm以上、より好ましくは3μm以上(例えば5μm以上、典型的には10μm以上)であり、また、40μm以下(典型的には30μm以下)である。粘着剤層の厚さが厚すぎると粘着力が過剰になる傾向があり、薄すぎると、シール性が低下する傾向がある。
【0089】
保護シートを構成する粘着剤(層)のゲル分率は60%以上であり、好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上である。ゲル分率が60%以上であることにより、充分な凝集力が得られ、保護シートを剥離する際に糊残り等の汚染が発生しない。また剥離も軽くなる。さらに、ガラスエッチング用途に好適な粘着力(すなわち、シール性と軽剥離性とを高度に両立した粘着力)が得られる。そのため、良好な軽剥離性を維持しながら、保護シート側面からのエッチング液の浸入を防ぐことができる。また、ゲル分率の上限は特に限定されるものではないが、好ましくは99%以下、より好ましくは90%以下である。ゲル分率が高すぎると、粘着剤層の構成によっては、粘着力が低下しやすくなることがあり得る。
【0090】
ゲル分率は以下の方法で測定することができる。粘着剤層(架橋後の粘着剤(組成物))を、平均孔径0.2μmのテトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シート(質量:Wa)で包み、この包みの合計質量Wbを測定する。次いで、この包みをトルエンに浸漬して23℃で7日間静置した後、上記包みを取り出して120℃で2時間乾燥させ、乾燥後における包みの質量Wcを測定する。該粘着剤層のゲル分率(%)は、以下の式:
ゲル分率[%]=(Wc−Wa)/(Wb−Wa)×100
により求められる。
【0091】
より具体的には、測定サンプルとしての粘着剤層(架橋後の粘着剤(組成物))約0.1gを、平均孔径0.2μmのテトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートで巾着状に包み、口を凧糸で縛る。テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートと凧糸の合計質量をWa(mg)は予め計測しておく。そして、包みの質量(粘着剤層と包みの合計質量)Wb(mg)を計測する。この包みを容量50mLのスクリュー管に入れ(1個の包みにつきスクリュー管1本を使用する。)、このスクリュー管にトルエンを満たす。これを室温(典型的には23℃)で7日間静置した後、上記包みを取り出して120℃で2時間乾燥させ、その後、トルエン中から包みを引き上げて120℃で2時間乾燥し、乾燥後における包みの質量Wc(mg)を計測する。各値を上式に代入することにより、測定サンプルのゲル分率を算出する。上記テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートとしては、日東電工株式会社製の商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」を使用することができる。後述する実施例においても同様の方法を採用し得る。
【0092】
上述した粘着剤組成物(粘着剤層、粘着剤)は、耐エッチング液浸入性に優れる。かかる粘着剤組成物の耐エッチング液浸入性(エッチング液浸透性)は、以下の方法によって評価することができる。すなわち、ガラス基板上にpH試験紙を載置し、このpH試験紙を完全に被覆するように、粘着剤組成物を塗付し、その後乾燥させることで、ガラス基板上にpH試験紙を封止した粘着剤層(層厚(膜厚):100μm)を形成する。これを水平面に置いた後、粘着剤層上にエッチング液を2cc滴下して、pH試験紙の変色度合を目視で観察し、またその時間を記録する。pH試験紙の変色度合(pH低下)が少なく、また変色に要する時間が長いほど耐エッチング液浸入性に優れる。pH試験紙のサイズは9mm×15mm、粘着剤層の形成面積は40mm×40mmとすることができる。また、使用するエッチング液としては、HF1mol%、H
2SO
42mol%、HNO
33mol%およびHPO
42mol%の混合物を含む水溶液(原液10倍希釈品)を使用することができる。後述する実施例においても同様の方法を採用し得る。
【0093】
保護シートに用いられる基材は特に限定されず、フィルム状、シート状の公知の基材を適宜選択して使用することができる。そのような基材の好適例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリイミド(PI);ポリフェニレンサルファイド(PPS);エチレン酢酸ビニル(EVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の1種を単独で含む樹脂材料からなる基材(プラスチックフィルム)、または2種以上がブレンドされた樹脂材料からなる基材(プラスチックフィルム)が挙げられる。なかでも、適度な可撓性を有するという理由から、上記樹脂材料はPE、PP、PETが好ましい。さらに可撓性と耐酸性のバランスに優れるという理由からPE、PPがより好ましい。PE、PPフィルムは、適度な可撓性を有することから、ITO膜やFPCが形成される等して段差を有する被着体表面に保護シートを貼り付ける際に段差に好適に追従することができる。そのため、エッチング液の浸入経路(空隙)を作り難く、ガラスエッチング用保護シートの基材として特に好適である。また、PE、PPフィルムは、耐酸性に優れることから、フッ酸溶液等の酸性エッチング液が被着体表面から膨潤浸入してくることを防止することができる。
【0094】
上記ポリオレフィンからなるフィルムとしては、例えば2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム、2種以上のポリエチレン(PE)をブレンドしたポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)をブレンドしたPP/PEブレンドフィルム、各種軟質ポリオレフィンフィルム等のポリオレフィン系フィルムが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
また、基材は単層であってもよく、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。つまり、上述したフィルムを含む多層構造の樹脂フィルム(多層フィルム)を基材として用いることができる。多層フィルムにおいて、各層を構成する樹脂材料は、上述のような樹脂の1種類を単独で含む樹脂材料であってもよく、2種以上の樹脂がブレンドされた樹脂材料であってもよい。
【0096】
このような基材(樹脂フィルム)は、従来公知の一般的なフィルム成形方法(押出成形、インフレーション成形等)を適宜採用して製造することができる。基材のうち粘着剤層が設けられる側の表面(粘着剤層側表面、粘着剤を塗付する面)には、該粘着剤層との接着性を向上させるための処理(粘着剤の投錨性を得るための処理)、例えばコロナ放電処理、酸処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)塗付等の表面処理が施されていてもよい。プライマー塗付による表面処理(プライマー処理)としては、アクリルポリマーにイソシアネートを配合した下塗り剤を用いることが好ましい。基材のうち上記粘着剤層側表面とは反対側の面(背面)には、必要に応じて、帯電防止処理、剥離処理等の表面処理が施されていてもよい。剥離処理としては、例えば基材の粘着剤と接しない面(粘着剤層側表面の反対側表面)に長鎖アルキル系、シリコーン系の剥離処理層を設けることで、保護シートの巻戻し力を軽くすることができる。
【0097】
基材の厚さは、使用する樹脂フィルムのコシの強さ(硬度)等に応じて適宜選択することができる。例えば厚さ10μm〜1000μm程度の基材を採用することができる。好ましくは50μm〜300μm程度(例えば80μm〜300μm、典型的には100μm〜200μm)である。基材の厚さが大きくなると、保護シートのコシが強くなる。そのため、保護シートを被着体に貼り付ける際または被着体から保護シートを剥離する際に、該保護シートに皺や浮き、縒れが生じ難くなる傾向がある。また、軽剥離性も向上する傾向があるので、作業性(取扱い性、ハンドリング)がより向上する。さらに、保護シート表面からのエッチング液の膨潤浸入(浸漬)を防ぎやすい傾向がある。
【0098】
基材は、粘着剤層側表面および/または背面の算術平均表面粗さが1μm以下であることが好ましく、0.05μm〜0.75μm(例えば凡そ0.05μm〜0.5μm、典型的には凡そ0.1μm〜0.3μm)であることがより好ましい。かかる構成とすることで、粘着剤(層)表面(貼付面)の平滑性も高くなり、被着体表面から剥離する際の応力の偏りが少なくなり、局部的な応力により粘着剤の一部が切れて被着体側に残る等の事象を回避し得る。また、基材の表面平滑性が向上すると(算術平均表面粗さを上記数値範囲内とすると)、粘着剤層と被着体との間に浮き等の空隙が形成される難くなり、空隙からエッチング液が保護シート内に浸入する虞が低下する。
【0099】
保護シートのガラスに対する粘着力は0.05N/20mm以上(例えば0.1N/20mm以上、典型的には0.2N/20mm以上)であることが好ましい。これによって、良好な粘着力が得られ、例えばエッチング処理工程中に保護シートが剥離してしまうといった不都合をより好適に防止することができる。また、該粘着力は3N/20mm以下(例えば2.5N/20mm以下、典型的には2N/20mm以下)であることが好ましい。これによって、粘着力が高くなりすぎず、エッチング処理後に保護シートを剥離する際に、被着体が破壊される(典型的にはガラスが割れる、ITO膜等が剥がれる)不都合をより好適に防止することができる。
【0100】
ガラスに対する粘着力(180°引き剥がし粘着力)は、以下の方法によって測定することができる。測定に供する保護シートを、MD方向を長手方向とする20mm×60mmの方形状にカットして試験片を作製する。この試験片の粘着剤層側を、ガラス基板に2kgのローラーを1往復させて貼り付ける。これを25℃、RH50%の環境下に30分間保持した後、引張試験機((株)島津製作所製、商品名「テンシロン」)を用い、JIS Z0237に準拠して、25℃、RH50%の環境下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件にて、ガラスに対する180°引き剥がし粘着力を測定する。ガラス基板としては、松浪硝子(株)製「MICROSLIDE GLASS」を用いることができる。後述する実施例においても同様の方法を採用し得る。
【0101】
また、保護シートは耐エッチング液浸入性に優れる。かかる耐エッチング液浸入性は、以下の方法によって評価することができる。なお、後述する実施例においても同様の方法を採用し得る。
(1)保護シート表面からのエッチング液浸入の評価
ガラス基板上にpH試験紙を載置し、このpH試験紙を完全に被覆するように保護シートを貼り合わせ、pH試験紙を封止する。これを水平面に置いた後、保護シート上にエッチング液を2cc滴下して、pH試験紙の変色度合を目視で観察し、またその時間を記録する。封止されたpH試験紙の変色度合(pH低下)が少なく、また変色に要する時間が長いほど耐エッチング液浸入性に優れる。pH試験紙のサイズは9mm×15mm、保護シートのサイズは40mm×40mmとすることができる。また、使用するエッチング液としては、HF1mol%、H
2SO
42mol%、HNO
33mol%およびHPO
42mol%の混合物を含む水溶液(原液10倍希釈品)を使用することができる。
(2)保護シート側面からのエッチング液浸入の評価
上記(1)と同様にしてガラス基板上に保護シートを貼り合わせる。これを容器に収容し、エッチング液に埋没させて1時間浸漬させる。保護シートの貼付け面におけるガラス基板の浸食(変形)の有無を保護シートの表面から目視で観察する。エッチング液は、上記(1)と同様のものを使用することができる。
【0102】
また、保護シートは、剥離作業性(耐破断性、被着体非破壊性)に優れる。かかる剥離作業性は、以下の方法によって評価することができる。すなわち、ガラス基板を用意し、このガラス基板上に保護シート(20mm×60mm(MD方向を長手方向として切断した))を貼り合わせる。貼合せは、2kgローラーで1往復させて行う。これを容器に収容し、保護シートが埋没するまでエッチング液(例えばHF1mol%、H
2SO
42mol%、HNO
33mol%およびHPO
42mol%の混合物を含む水溶液)を加え、エッチング液中に1時間浸漬させる。その後、エッチング液を洗浄により除去し、手でガラス基板から保護シートを引き剥がす。そして、以下に示す基準で剥離作業性を評価する。なお、後述する実施例においても同様の方法を採用し得る。
○:剥離の際に保護シートに変化はなく、また、ガラス基板にも変化はなかった。
×:剥離の際に保護シートが切れたり、ガラス基板に損傷が確認された。
【0103】
第1態様に係る保護シートは、被着体(典型的にはガラス基板)の所望の部位に貼り付け、その部位を保護するための保護シートとして使用することができる。この保護シートに用いられる粘着剤は、エッチング液に曝された場合においても、変質または溶解等し難い。また、エッチング液に曝すことを意図しない部位において、確実にエッチング液の浸入を防止し、その表面を保護することができる。要するに、この保護シートは、耐エッチング液浸入性に優れ、また非汚染性にも優れ、さらに剥離が軽いので、保護シート自体や被着体を破壊しない。したがって、この保護シートは、被着体の表面をエッチング処理する際に、エッチング液の影響を排除したい部分をマスクする用途に好ましく使用され得る。特に、表面にITO膜が形成されているような被着体において、上面と側面のみが露出した被着体表面の一部をエッチング処理する前に、保護シートの粘着剤層側を被着体の一方の表面の非エッチング部分に貼り付ける用途において好適に用いられる。
【0104】
次に、第2態様に係るガラスエッチング用保護シート(以下、保護シートと略すこともある。)について説明する。
【0105】
ここで開示される保護シートは、基材と該基材の少なくとも一方の表面に設けられた粘着剤層とを備える。この保護シートの典型的な構成例を
図1に模式的に示す。この保護シート10は、樹脂製のシート状基材1と、その一方の面(片面)に設けられた粘着剤層2とを備える。この保護シート10の粘着剤層2側を、ガラスをエッチングする前に、被着体(典型的にはガラス基板)の所定箇所(保護対象部分、典型的にはエッチング液の影響を排除したい部分(以下、非エッチング部分ともいう。))に貼り付けて使用する。これによって、上記非エッチング部分をエッチング液から保護する。使用前(すなわち被着体への貼付前)の保護シート10は、典型的には
図2に示すように、粘着剤層2の表面(貼付面)が、少なくとも粘着剤層2側が剥離面となっている剥離ライナー3によって保護された形態であり得る。あるいは、基材1の他面(粘着剤層2が設けられる面の背面)が剥離面となっており、保護シート10がロール状に巻回されることにより該他面に粘着剤層2が当接してその表面が保護された形態であってもよい。また、保護シートは、基材の各面に粘着剤層がそれぞれ設けられた両面粘着シートであってもよい。その場合、各粘着剤層の被着体への貼付面は、それぞれ少なくとも粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナーによって保護された形態であり得る。保護シートの形状はシート状であればよく、ロール状やセパレータ付の単板状等であってもよい。
【0106】
ここで開示される保護シートの温度25℃におけるMDへの10%延伸時の強度T
M25および同温度におけるMDに直交するTDへの10%延伸時の強度T
T25の少なくとも一方が、1N/cm〜25N/cmである。T
M25およびT
T25の両方が、上述した10%延伸時の強度の数値範囲を満たすことがより好ましい。上記10%延伸時の強度は、好ましくは3N/cm以上(例えば5N/cm以上、典型的には8N/cm以上)である。上記10%延伸時の強度(T
M25,T
T25)が1N/cm以上であることにより、保護シートは適度な硬さを有する。そのため、被着体に貼り付ける際に、皺や浮き、縒れが発生し難くなり、貼付けがしやすい。また保護シートは所定以上の強度を有するので、剥離の際に保護シートが切れるといった不都合の発生が防がれる。また軽い剥離が可能となり、作業性に優れる。10%延伸時の強度(T
M25,T
T25)が1N/cm未満では、保護シートが柔らかすぎて、剥離の際に被着体に応力がかかりすぎるため好ましくない。10%延伸時の強度(T
M25,T
T25)は、好ましくは22N/cm以下(例えば20N/cm以下、典型的には18N/cm以下)である。10%延伸時の強度(T
M25,T
T25)が25N/cm以下であることにより、保護シートは硬くなりすぎない。そのため、被着体の表面が段差を有する場合であっても、表面形状に良好に追従することができ、密着性に優れる。したがって、保護シート側面には、エッチング液が浸入するような皺等の空隙が形成されず、シール性も向上する。
【0107】
上記10%延伸時の強度(引張張力)とは、JIS K7127に準拠して、温度25℃にて、各測定方向(T
M25,T
T25)に沿って切り出された幅10mmの試験片を引張速度300mm/分の条件で10%延伸したときの引張張力をいう。なお、10%延伸時の強度(引張張力)は、例えば後述する実施例に記載した10%延伸時強度の測定方法にしたがって得られる値を採用することができる。
【0108】
ここで開示される保護シートは、温度25℃におけるMDへの曲げ剛性値D
M25および同温度におけるTDへの曲げ剛性値D
T25の少なくとも一方が、1.5×10
−5Pa・m
3以上(例えば2×10
−5Pa・m
3以上、典型的には3×10
−5Pa・m
3以上)であることが好ましい。また、D
M25およびD
T25の少なくとも一方が、10×10
−5Pa・m
3以下(例えば9.5×10
−5Pa・m
3以下、典型的には9×10
−5Pa・m
3以下)であることが好ましい。D
M25およびD
T25の両方が、上述した曲げ剛性値の数値範囲を満たすことがより好ましい。曲げ剛性値D
M25,D
T25が上記の範囲内であることにより、保護シートは適度な硬度(コシの強さ)を有する。そのため、保護シートを被着体の所定位置に載置する際に、保護シートが縒れたり皺になったりし難くなり、作業性に優れる。また、被着体から保護シートを剥離する際に、保護シート自体の弾性力(曲げ変形に対して元の形状に戻ろうとする力)を剥離力の一部として利用することができるので作業性に優れる。さらに、被着体の側面をエッチング処理するに際して被着体の表面に保護シートを貼り付ける場合に、保護シートは適度な硬度を有するので、保護シート端部で垂れ難い。そのため、保護シートを被着体の表面サイズに厳密に適合させる必要がなくなる。この点においても作業性に優れる。D
M25,D
T25が大きすぎると、保護シートを被着体に貼り付けても、被着体の表面形状に追従させ難くなる傾向があり、保護シートの密着性が不足する場合がある。
【0109】
曲げ剛性値D
M25は、基材の厚さをhおよび該基材のポアソン比をVとし、保護シートの温度25℃におけるMDへの引張弾性率をE
M25とした場合に、式:
D
M25=E
M25h
3/12(1−V
2);
により求められる値である。曲げ剛性値D
T25についても、D
M25の場合と同様にして、TDへの引張弾性率E
T25を用いて求められる。なお、粘着剤層の曲げ剛性値は基材の曲げ剛性値に比べ非常に小さいため、保護シートの曲げ剛性値は基材の曲げ剛性値と略同等となり得る。したがって、保護シートの曲げ剛性値D
M25,D
T25は、保護シートを構成する基材の断面積当たりに換算した値をいうものとする。基材の断面積は基材の厚さに基づき算出される。基材の厚さhは、保護シートの厚さの実測値から粘着剤層の厚さを差し引いた値とする。ポアソン比Vは、基材の材質によって定まる値(無次元数)であって、該材質が樹脂である場合には、通常、Vの値として0.35を採用することができる。より具体的には、曲げ剛性値D
M25,D
T25は、例えば後述する実施例に記載した測定方法にしたがって得られる値を採用することができる。
【0110】
ここで開示される保護シートは、温度25℃におけるMDへの引張弾性率E
M25および同温度におけるTDへの引張弾性率E
T25の少なくとも一方が、好ましくは50MPa以上(例えば100MPa以上、典型的には150MPa以上)である。この保護シートは、常温環境下における取扱性に優れたものとなりやすい。また、保護シートのE
M25,E
T25は、9000MPa以下(例えば8000MPa以下、典型的には4000MPa以下)とすることができる。かかる保護シートは、曲げ剛性値D
M25,D
T25が適度な値となりやすい。そのため、密着性に優れたものとなりやすい。
【0111】
保護シートの引張弾性率E
M25,E
T25は、保護シートからMDまたはTDに沿って所定幅の試験片を切り出し、JIS K7161に準拠して、温度25℃にて試験片を引張速度300mm/分の条件でMDまたはTDに延伸して得られた応力―ひずみ曲線の線形回帰から算出することができる。例えば後述する実施例に記載した引張弾性率測定方法にしたがって所定温度において測定される値を採用することができる。なお、粘着剤層の引張弾性率は基材の引張弾性率に比べ非常に小さいため、保護シートの引張弾性率は、基材の引張弾性率と略同等となり得る。したがって、本明細書において、保護シートの引張弾性率E
M25,E
T25は、その保護シートを構成する基材の断面積当たりに換算した値をいうものとする。基材の断面積は基材の厚さに基づき算出される。基材の厚さは、保護シートの厚さの実測値から粘着剤層の厚さを差し引いた値とする。
【0112】
また、保護シートのたわみ角度は60〜80度(例えば65〜78度、典型的には67〜77度)であることが好ましい。上記たわみ角度が60度以上であることにより、保護シートは適度な硬さ(コシ)が得られる。そのため、保護シートを貼り付ける際に皺や浮き、縒れが発生することが防止されやすい傾向がある。また剥離の際にテープが切れたり、剥離が重くなることが防止されやすい傾向がある。したがって作業性に優れる。また、上記たわみ角度が80度以下であることにより、保護シートはコシが強くなりすぎず、硬くなりすぎない。そのため、ITO膜等の段差が形成された被着体の表面形状に充分に追従させることができ、シール性を向上させることができる。
【0113】
上記たわみ角度は、以下の方法で測定することができる。
図3を参照して、100mm×50mmの保護シート10を用意し、側面から見たときに、保護シート10の長手方向の60mmの部分が水平上面を有する試験台40上に乗り、かつ該長手方向の残りの40mmの部分が試験台40の端面から側方に突出するように保護シート10を試験台40に固定する。固定は、上記長手方向の60mmの部分の下面全体をポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)で貼り付けることによって行ってもよく、上記長手方向の60mmの部分の全体上に錘を乗せることによって行ってもよい。そして、保護シート10の突出した部分の鉛直方向に対する角度A°を測定する。この角度A°をたわみ角度とすることができる。なお、たわみが直線的でなく、曲線的である等の場合、保護シート10の突出した部分の下側末端と試験台40の端面上端とを結ぶ線分と、鉛直方向との間の角度をたわみ角度A°としてもよい。
【0114】
保護シートに用いられる基材は特に限定されず、フィルム状、シート状の公知の基材を適宜選択して使用することができる。そのような基材の好適例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリウレタン樹脂(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、フッ素樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。このような樹脂の1種類を単独で含む樹脂材料からなる基材であってもよく、2種以上がブレンドされた樹脂材料からなる基材であってもよい。なかでも、適度な可撓性を有し、耐酸性に優れるPE、PP等のポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂は、適度な可撓性を有することから、ITO膜が形成される等して段差を有する被着体表面に保護シートを貼り付ける際に、かかる段差に好適に追従することができる。そのため、エッチング液の浸入経路(空隙)を作り難くなり、ガラスエッチング用保護シートの基材として好適である。また、ポリオレフィン樹脂は、耐酸性に優れることから、フッ酸溶液等の酸性エッチング液が被着体表面から膨潤浸入してくることを防止しやすい。この観点からもガラスエッチング用保護シートの基材として好適である。基材は単層であってもよく、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。多層構造の樹脂フィルムにおいて、各層を構成する樹脂材料は、上述のような樹脂の1種類を単独で含む樹脂材料であってもよく、2種以上の樹脂がブレンドされた樹脂材料であってもよい。
【0115】
好ましい一態様において、上記基材は単層または多層のポリオレフィン樹脂フィルムである。ここで、ポリオレフィン樹脂フィルムとは、該フィルムを構成する樹脂成分のうちの主成分がポリオレフィン樹脂(すなわち、ポリオレフィンを主成分とする樹脂)であるフィルムをいう。樹脂成分が実質的にポリオレフィン樹脂からなるフィルムであってもよい。あるいは、樹脂成分として、主成分(例えば樹脂成分中50質量%を超える成分)としてのポリオレフィン樹脂に加えて、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂成分(PA,PC,PU,EVA等)を含む樹脂材料から形成されたフィルムであってもよい。ポリオレフィン樹脂としては、1種類のポリオレフィンを単独で、または2種以上のポリオレフィンを組み合わせて用いることができる。該ポリオレフィンは、例えばα−オレフィンのホモポリマー、2種以上のα−オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα−オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。低密度(LD)ポリオレフィンおよび高密度(HD)ポリオレフィンのいずれも使用可能である。そのようなポリオレフィン樹脂フィルムとしては、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、中密度ポリエチレン(MDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム、2種以上のポリエチレン(PE)をブレンドしたポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)をブレンドしたPP/PEブレンドフィルム、各種軟質ポリオレフィンフィルム等のポリオレフィン樹脂フィルムが挙げられる。これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
上記PPは、プロピレンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50質量%を超える成分)とする種々のポリマー(プロピレン系ポリマー)であり得る。ここでいうプロピレン系ポリマーの概念には、例えば以下のようなポリプロピレンが包含される。
プロピレンのホモポリマー(すなわちホモポリプロピレン)。例えばアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン。
プロピレンと他のα−オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンから選択される1種または2種以上)とのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)。例えばプロピレン96〜99.9モル%と他のα−オレフィン(好ましくはエチレンおよび/またはブテン)0.1モル%〜4モル%とをランダム共重合したランダムポリプロピレン。
プロピレンに他のα−オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンから選択される1種または2種以上)をブロック共重合した共重合体(ブロックポリプロピレン)。かかるブロックポリプロピレンは、副生成物として、プロピレンおよび上記他のα−オレフィンのうち少なくとも1種を成分とするゴム成分をさらに含み得る。例えばプロピレン90モル%〜99.9モル%に他のα−オレフィン(好ましくはエチレンおよび/またはブテン)0.1モル%〜10モル%をブロック共重合したポリマーと、副生成物としてプロピレンおよび他のα−オレフィンのうち少なくとも1種を成分とするゴム成分をさらに含むブロックポリプロピレン。
【0117】
上記PP樹脂は、樹脂成分のうちの主成分が上述のようなプロピレン系ポリマーであり、副成分として他のポリマーがブレンドされた樹脂であり得る。上記他のポリマーは、プロピレン以外のα−オレフィン、例えば炭素数2または4〜10のα−オレフィンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50質量%を超える成分)とするポリオレフィンの1種または2種以上であり得る。上記PP樹脂は、上記副成分として少なくともPEを含む組成であり得る。PEの含有量は、例えばPP100質量部当たり3質量部〜50質量部(典型的には5質量部〜30質量部)とすることができる。樹脂成分が実質的にPPとPEとからなるPP樹脂であってもよい。また、副成分として少なくともPEおよびEPRとを含むPP樹脂(例えば樹脂成分が実質的にPPとPEとEPRとからなるPP樹脂)であってもよい。この場合、EPRの含有量は例えばPP100質量部当たり3質量部〜50質量部(典型的には5質量部〜30質量部)とすることができる。
【0118】
上記PEは、エチレンのホモポリマーであってもよく、主モノマーとしてのエチレンと他のα−オレフィン(例えば炭素数3〜10のα−オレフィン)との共重合体であってもよい。上記α−オレフィンの好適例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のいずれも使用可能である。例えばLDPEおよび/またはLLDPEを好ましく採用することができる。
【0119】
あるいは上記基材として、実質的にハロゲン原子を含まずにポリ塩化ビニル(PVC)並みの柔軟性、耐熱性、難燃性を有するポリオレフィン樹脂フィルムを用いることもできる。かかるポリオレフィン樹脂フィルムとしては、例えばオレフィン系ポリマーアロイと、分子骨格中にカルボニル(C=O)単位を含む熱可塑性樹脂(カルボニル単位含有熱可塑性樹脂)とを含有するものが好適例として挙げられる。
【0120】
オレフィン系ポリマーアロイは、主として基材の熱変形を抑制するための成分であり、エチレン成分とプロピレン成分とを含むポリマーアロイであることが好ましい。ポリマーアロイの形態は特に限定されず、例えば2種以上の重合体が物理的に混合したポリマーブレンド、2種以上の重合体が共有結合で結合したブロック共重合体やグラフト共重合体、2種以上の重合体が互いに共有結合で結合されることなく絡み合ったIPN(Interpenetrating Polymer Network)構造体等、種々の形態のものを用いることができる。また、2種以上の重合体が相溶した相溶性ポリマーアロイ、2種以上の重合体が非相溶で相分離構造を形成している非相溶性ポリマーアロイのいずれであってもよい。
【0121】
そのようなオレフィン系ポリマーアロイとしては、例えばポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン)とポリエチレン(エチレンと少量のα−オレフィンとの共重合体を含む)とのポリマーブレンド、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレンとエチレンとこれら以外の他のα−オレフィンとの3元共重合体(他のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられ、1−ブテンが好ましい。)が挙げられる。
【0122】
上記オレフィン系ポリマーアロイが共重合体の場合は、2段以上の多段重合により重合された多段重合オレフィン共重合体(好ましくはエチレン/プロピレン共重合体)であることが好ましい。かかる多段重合オレフィン共重合体としては、例えば特開2001−192629号公報に記載されているようなポリマーアロイが挙げられる。すなわち、プロピレンを主成分とするモノマー混合物を用いて1段目の重合を行い、次いで、2段目以降においてプロピレンとエチレンを共重合させたポリプロピレン(1段目)/プロピレン−エチレン共重合体(2段目以降)のポリマーアロイである。1段目の重合は、チタン化合物触媒および有機アルミニウム化合物触媒の存在下において行うことが好ましい。2段目以降の重合は、1段目の重合で生成したチタン含有ポリオレフィンと有機アルミニウム化合物触媒の存在下で行うことが好ましい。上記チタン化合物触媒としては、例えば三塩化チタンと塩化マグネシウムとを共粉砕し、オルトチタン酸n−ブチル、2−エチル−ヘキサノール、p−トルイル酸エチル、四塩化ケイ素、フタル酸ジイソブチル等で処理した球状で平均粒子径1〜30μmの固体触媒が挙げられる。有機アルミニウム化合物触媒としては、例えばトリエチルアルミニウム等のアルキルアルミニウムが挙げられる。なお、さらに重合層において、電子供与体としてジフェニルジメトキシシラン等のケイ素化合物を添加したり、ヨウ化エチル等のヨウ素化合物を添加してもよい。
【0123】
上記オレフィン系ポリマーアロイは、熱変形を抑制する観点から、80℃における動的貯蔵弾性率(E’)が40MPa以上、180MPa未満(例えば45MPa〜160MPa)を示し、かつ、120℃における動的貯蔵弾性率(E’)が12MPa以上、70MPa未満(例えば15MPa〜65MPa)を示すものが好ましい。また、室温付近での表面形状追従性および作業性を考慮して、23℃における動的貯蔵弾性率(E’)が200MPa以上、400MPa未満であるのが好ましい。上記動的貯蔵弾性率(E’)は、ポリマーアロイによる試験片(厚さ0.2mm、幅10mm、長さ20mm)を作成し、当該試験片の温度分散による動的粘弾性挙動を、測定機器としてDMS200(セイコーインスツル(株)製)を用いて所定の測定条件(例えば測定法:引張りモード、昇温速度:2℃/分、周波数:1Hz)で測定した値である。そのようなポリマーアロイとしては、例えばサンアロマー(株)製の商品名「キャタロイKS−353P」、「キャタロイKS−021P」、「キャタロイC200F」、「キャタロイQ−200F」が挙げられる。
【0124】
カルボニル単位含有熱可塑性樹脂は、基材に適度な柔軟性と良好な伸長性を与えるために用いられるものであり、分子骨格中にカルボニル(C=O)単位を含む熱可塑性樹脂である。ポリオレフィン樹脂フィルムが無機系難燃剤を含有する場合には、無機系難燃剤による難燃性付与作用を活性化させる成分ともなり得る。かかる熱可塑性樹脂としては、分子骨格中にカルボニル単位を含む軟質ポリオレフィン系樹脂が好適であり、例えばモノマーまたはコモノマーとして、ビニルエステル化合物および/またはα,β−不飽和カルボン酸もしくはその誘導体を用いて合成されたエチレン/ビニルエステル系共重合体、エチレン/不飽和カルボン酸系共重合体およびそれらの金属塩が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂の融点は特に限定されないが、120℃以下(典型的には40〜100℃)であることが好ましい。上記融点は示差走査熱量計(DSC)によって測定することができる。
【0125】
上記エチレン系共重合体またはその金属塩におけるビニルエステル化合物としては、例えば酢酸ビニル等のビニルアルコール低級アルキルエステルが挙げられる。また、α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、マレイン酸1−メチル、マレイン酸1−エチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸1−メチル、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類が挙げられる。これらは1種を単独で2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、エチルアクリレートがより好ましい。
【0126】
エチレン/ビニルエステル系共重合体およびエチレン/不飽和カルボン酸系共重合体の好適例としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−エチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体およびこれらの金属塩が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0127】
また、上記ポリオレフィン樹脂フィルムには無機系難燃剤を含有させることが好ましい。そのような無機系難燃剤としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ドロマイト等の金属炭酸塩;ハイドロタルサイト、硼砂等の金属水和物(金属化合物の水和物);メタホウ酸バリウム、酸化マグネシウム等の無機金属化合物が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物や、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトが好ましい。
【0128】
無機系難燃剤はまた、シラン系カップリング剤による表面処理を施されていることが好ましい。これによって、柔軟性、耐熱性、難燃性等の諸特性をさらに向上させることができる。そのようなシラン系カップリング剤の具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリル(2−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0129】
シラン系カップリング剤による無機金属化合物の表面処理の方法は、特に限定されず、例えば乾式処理法、湿式処理法等の従来公知の方法が適宜採用され得る。シラン系カップリング剤の無機金属化合物表面への付着量は、カップリング剤の種類、無機金属化合物の種類、比表面積等によって異なり得るため一概に言えないが、無機金属化合物100質量部に対して通常0.1質量部〜5.0質量部(例えば0.3質量部〜3.0質量部)程度である。
【0130】
上述のオレフィン系ポリマーアロイとカルボニル単位含有熱可塑性樹脂の配合比は、質量基準で90:10〜20:80とすることが、耐熱性と難燃性とを両立する観点から好ましい。また無機系難燃剤を配合する場合、その配合量は、難燃性向上と柔軟性維持の観点から、ポリマー成分(多段重合オレフィン共重合体とカルボニル単位含有熱可塑性樹脂の合計)100質量部に対して10質量〜200質量部(例えば20質量部〜100質量部)程度とすることが好ましい。
【0131】
上記基材には、保護シートの用途に応じた適宜の成分を必要に応じて含有させることができる。例えばラジカル捕捉剤や紫外線吸収剤等の光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を適宜配合することができる。光安定剤の例としては、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類、ベンゾエート類等を有効成分とするものが挙げられる。酸化防止剤の例としては、アルキルフェノール類、アルキレンビスフェノール類、チオプロピレン酸エステル類、有機亜リン酸エステル類、アミン類、ヒドロキノン類、ヒドロキシルアミン類等を有効成分とするものが挙げられる。このような添加剤は、それぞれ1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。添加剤の配合量は、保護シートの用途(例えばメッキマスキング用)に応じて、当該用途において基材として用いられる樹脂フィルムの通常の配合量と同程度とすることができる。
【0132】
このような基材(樹脂フィルム)は、従来公知の一般的なフィルム成形方法(押出成形、インフレーション成形等)を適宜採用して製造することができる。基材のうち粘着剤層が設けられる側の表面(粘着剤層側表面、粘着剤を塗付する面)には、該粘着剤層との接着性を向上させるための処理(粘着剤の投錨性を得るための処理)、例えばコロナ放電処理、酸処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)塗付等の表面処理が施されていてもよい。プライマー塗付による表面処理(プライマー処理)としては、アクリルポリマーにイソシアネートを配合した下塗り剤を用いることが好ましい。基材のうち上記粘着剤層側表面とは反対側の面(背面)には、必要に応じて帯電防止処理、剥離処理等の表面処理が施されていてもよい。剥離処理としては、例えば基材の粘着剤と接しない面(粘着剤層側表面の反対側表面)に長鎖アルキル系、シリコーン系の剥離処理層を設けることで、保護シートの巻戻し力を軽くすることができる。
【0133】
基材の厚さは、使用する樹脂フィルムのコシの強さ(硬度)等に応じて適宜選択することができる。例えば厚さ10μm〜1000μm程度の基材を採用することができる。基材の厚さは、好ましくは50μm〜300μm程度(例えば100μm〜300μm、典型的には120μm〜200μm)である。基材の厚さが大きくなると、保護シートは、コシが強くなる。そのため、保護シートを被着体に貼り付ける際または被着体から保護シートを剥離する際に、保護シートに皺や浮き、縒れが生じ難くなる傾向がある。また、軽剥離性も向上する傾向があるので、作業性(取扱い性、ハンドリング)がより向上する。さらに、被着体の側面をエッチング処理するに際して被着体の表面に保護シートを貼り付ける場合に、保護シートは適度な厚さを有するので、保護シート端部で垂れ難い。さらに、保護シート表面からのエッチング液の膨潤浸入を防ぎやすい傾向がある。保護シートの厚さが大きすぎると、保護シートを被着体に貼り付けても、被着体の表面形状に追従させ難くなる傾向がある。そのため、保護シートの密着性が不足する場合がある。
【0134】
基材は、粘着剤層側表面および/または背面の算術平均表面粗さが1μm以下であることが好ましく、0.05μm〜0.75μm(例えば凡そ0.05μm〜0.5μm、典型的には凡そ0.1μm〜0.3μm)であることがより好ましい。かかる構成とすることで、粘着剤(層)表面(貼付面)の平滑性も高くなり、被着体表面から剥離する際の応力の偏りが少なくなり、局部的な応力により粘着剤の一部が切れて被着体側に残る等の事象を回避し得る。また、基材の表面平滑性が向上すると(算術平均表面粗さを上記数値範囲内とすると)、粘着剤層と被着体との間に浮き等の空隙が形成される難くなり、空隙からエッチング液が保護シート内に浸入する虞が低下する。
【0135】
基材の10%延伸時の強度、所定温度における曲げ剛性値および引張弾性率は、上述のように保護シートの10%延伸時の強度、所定温度における曲げ剛性値および引張弾性率と略同等であり得る。したがって、上記特性の各々を満たす保護シートは、例えば基材の種類(例えば配合成分および配合割合)、厚さ等を選定することにより得ることができる。
【0136】
上記基材上に設けられる粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されず、例えばアクリル系粘着剤(アクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分)とする粘着剤をいう。以下同様。)、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んで構成された粘着剤層であり得る。なかでも、エッチング液に対する耐性に優れるという理由からアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましい。同様に、粘着剤(層)を形成するために用いられる粘着剤組成物も特に限定されず、上述した粘着剤を構成するポリマーを配合し、その配合割合を適宜選定したものを用いることができる。
【0137】
なかでも、粘着剤層を構成する粘着剤は、ベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、主たる粘着性成分)として、アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤であることが好ましい。ここで「アクリル系ポリマー」とは、典型的には、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、この主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含んでよいモノマー原料(単一モノマーまたはモノマー混合物)を重合することによって合成された重合体(共重合体)である。なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルおよびメタクリロイルを、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0138】
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば式:
CH
2=CR
1COOR
2
で表わされる化合物を好適に用いることができる。
ここで、上記式中のR
1は水素原子またはメチル基である。また、R
2は炭素原子数1〜20のアルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C
1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
2がC
1−14(例えばC
1−10)のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートであってもよい。なお、上記アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状である。
【0139】
上記C
1−20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。例えばこれらの1種または2種以上が合計50質量%を超える(例えば60質量%以上99質量%以下、典型的には70質量%以上98質量%以下の)割合で共重合されたアクリル系ポリマーとすることができる。
【0140】
また、上記主モノマーとして、上記式のR
2が炭素数6以上(例えば7以上、典型的には8)のアルキル基であるモノマーを用いることがより好ましい。かかるアルキル基の炭素数が増加するほど疎水性が上がり、エッチング液の浸入を防ぐ効果が期待できる。原料の入手しやすさ、製造しやすさ、耐エッチング液浸入性を考慮して、上記炭素数は凡そ30以下とすることが好ましい。なかでも、R
2がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、プロピルヘキシル基等のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、R
2が2−エチルヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。これらのモノマーは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0141】
かかる場合、すなわち上記主モノマーとして、上記式のR
2が炭素数6以上(例えば7以上、典型的には8)のアルキル基であるモノマーを用いる場合、上記主モノマーは、上記式のR
2が炭素数6以上のアルキル基であるモノマー以外のモノマー、すなわち炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含有してもよい。そのようなモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0142】
主モノマー中における上記式のR
2が炭素数6以上のアルキル基であるモノマーの割合は50質量%を超える。得られる粘着剤の疎水性を向上させ、耐エッチング液浸入性を高める観点から、好ましくは80質量%以上(例えば90質量%以上、典型的には95質量%以上)である。主モノマーとして上記式のR
2が炭素数6以上のアルキル基であるモノマーのみを用いることがより好ましい。したがって、主モノマー中における炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの割合は、10質量%以下(典型的には5質量%以下)であることが好ましく、このようなアルキル(メタ)アクリレートを用いないことがより好ましい。
【0143】
上記アクリル系ポリマーを重合するために用いられるモノマー原料は、非汚染性、軽剥離性、耐熱性等の諸性質の向上を目的として、主モノマーに加えて主モノマーと共重合可能な副モノマーをコモノマー単位として含んでいてもよい。なお、かかる副モノマーはモノマーだけでなくオリゴマーも含むものとする。
【0144】
上記副モノマーとしては、官能基を有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう。)が挙げられる。かかる官能基含有モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入し、アクリル系ポリマーの凝集力を高める目的で添加され得るものである。そのような官能基含有モノマーとしては、
例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸等のカルボキシル基含有モノマー;
例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等の上記エチレン性不飽和ジカルボン酸等の酸無水物等の酸無水物基含有モノマー;
例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の不飽和アルコール類等のヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;
以下に述べるアミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマーおよびシアノ基含有モノマー等の窒素原子を官能基中に含む官能基含有モノマー、すなわち
例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;
例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;
例えば2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基(グリシジル基)含有モノマー;
例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート等のケト基含有モノマー;
例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;
例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;
例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、アクリル系ポリマーに架橋点を好適に導入することができ、また、アクリル系ポリマーの凝集力をより高めることができることから、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の官能基モノマーが好ましく、カルボキシル基含有モノマーまたはヒドロキシル基含有モノマーがより好ましい。
【0145】
また副モノマーは、アクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上記官能基含有モノマー以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、
例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;
例えばスチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
例えばアリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;
例えばN−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー;
例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;
例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;
例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、得られるアクリル系ポリマーの凝集力を向上する観点からビニルエステル系モノマーが好ましい。そのなかでも酢酸ビニルがより好ましい。
【0146】
さらに副モノマーは、架橋処理等を目的として、多官能性モノマー等のコモノマー単位を必要に応じて含んでもよい。そのような多官能性モノマーとしては、例えばヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0147】
上記主モノマーは、アクリル系ポリマーの主鎖を構成する全モノマー(主モノマーと副モノマー)のなかで最も多い割合で含有されていればよい。粘着力と軽剥離性とを両立し、良好な耐エッチング液浸入性を得る観点から、主モノマーの含有量は上記全モノマーの50質量%を超えることが好ましく、60質量%以上(例えば70質量%以上99質量%以下、典型的には80質量%以上98質量%以下)であることがより好ましい。副モノマーの割合は、好ましくは上記全モノマーの50質量%未満(例えば1質量%〜40質量%、2質量%〜20質量%)であることが好ましい。なかでも、アクリル系ポリマーの主鎖を構成するモノマーとして上述の官能基含有モノマーを用いる場合、耐エッチング液浸入性と軽剥離性とを両立し、かつ非汚染性と軽剥離性とを向上する観点から、主モノマー(好ましくは上記式中のR
2が炭素数6以上のアルキル基、より好ましくは炭素数8のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート)100質量部に対して官能基含有モノマー(好ましくはカルボキシル基含有モノマー)を1質量部〜10質量部(例えば2質量部〜8質量部、典型的には3質量部〜7質量部)含ませることが好ましい。また、アクリル系ポリマーの主鎖を構成するモノマーとして上記官能基含有モノマー以外のモノマーを用いる場合、良好な耐エッチング液浸入性、非汚染性および軽剥離性を得る観点から、主モノマー(好ましくは上記式中のR
2が炭素数6以上のアルキル基、より好ましくは炭素数8のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート)100質量部に対して、上記官能基含有モノマー以外のモノマー(好ましくは酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー)を1質量部〜100質量部(例えば2質量部〜90質量部、典型的には5質量部〜85質量部)含ませることが好ましい。さらに、アクリル系ポリマーの主鎖を構成するモノマーとして上述の多官能性モノマーを用いる場合、良好な粘着特性(例えば接着力)と耐エッチング液浸入性を得る観点から、主モノマー100質量部に対して、上記多官能性モノマーを30質量部以下(例えば20質量部以下、典型的には1質量部〜10質量部)含ませることが好ましい。
【0148】
上記モノマーまたはその混合物を重合する方法は特に限定されず、従来公知の一般的な重合方法を採用することができる。そのような重合方法としては、例えば溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合が挙げられる。なかでも、耐水性および耐エッチング液浸入性に優れるという理由から溶液重合が好ましい。重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力等)、モノマー以外の使用成分(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜選択して行うことができる。例えばモノマー供給方法としては、全モノマー混合物を一度に反応容器に供給(一括供給)してもよく、徐々に滴下して供給(連続供給)してもよく、何回分かに分割して所定時間ごとに各分量を供給(分割供給)してもよい。上記モノマーまたはその混合物は、一部または全部を、溶媒に溶解させた溶液、もしくは水に乳化させた分散液として供給してもよい。
【0149】
重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、置換エタン系開始剤、過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が例示される。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライドが例示される。過酸化物系開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素が挙げられる。置換エタン系開始剤としては、例えばフェニル置換エタンが例示される。レドックス系開始剤としては、例えば過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せが例示される。なかでも、耐エッチング液浸入性の観点からアゾ系開始剤が好ましい。
【0150】
重合開始剤の使用量は、重合開始剤の種類やモノマーの種類(モノマー混合物の組成)等に応じて適宜選択できるが、通常は全モノマー成分100質量部に対して、例えば0.005質量部〜1質量部程度の範囲から選択することが適当である。重合開始剤の供給方法としては、使用する重合開始剤の実質的に全量をモノマー混合物の供給開始前に反応容器に入れておく一括仕込み方式、連続供給方式、分割供給方式等のいずれも採用可能である。重合操作の容易性、工程管理の容易性等の観点から、例えば一括仕込み方式を好ましく採用することができる。重合温度は、例えば20℃〜100℃(典型的には40℃〜80℃)程度とすることができる。
【0151】
乳化剤(界面活性剤)としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を好ましく使用することができる。アニオン系乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類等が例示される。ノニオン系乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーが例示される。また、これらのアニオン系またはノニオン系乳化剤にラジカル重合性基(ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)等)が導入された構造のラジカル重合性乳化剤(反応性乳化剤)を用いてもよい。このような乳化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の使用量(固形分基準)は、全モノマー成分100質量部に対して例えば凡そ0.2質量部〜10質量部程度(好ましくは凡そ0.5質量部〜5質量部程度)とすることができる。
【0152】
上記重合には、必要に応じて従来公知の各種連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えばドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール等のメルカプタン類から選択される1種または2種以上であり得る。連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、例えば全モノマー成分100質量部に対して凡そ0.001質量部〜0.5質量部程度の範囲から選択することが好ましい。連鎖移動剤の使用量が上述の範囲内であることにより、保護シートを剥離した後のガラス基板表面に糊残りが発生せず、非汚染性がより優れたものとなる。
【0153】
上記粘着剤組成物は、ベースポリマーとしての上記アクリル系ポリマーに加えて架橋剤をさらに含むことができる。架橋剤の種類は特に制限されず、粘着剤分野で通常使用される各種架橋剤のなかから、例えば上記官能基含有モノマーの架橋性官能基に応じて適宜選択して使用することができる。具体例としては、ポリイソシアネート等のイソシアネート系架橋剤、シラン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤が挙げられる。なかでも、密着性と軽剥離性とを高度に両立できることから、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤は、カルボキシル基と好適に架橋することができ、また貯蔵性に優れるため取扱いがしやすく、耐酸性にも優れるという利点がある。上記粘着剤組成物に含まれる架橋剤の量は特に限定されないが、上記アクリル系ポリマー100質量部に対し、凡そ0.5質量部〜10質量部程度(例えば1質量部〜7質量部、典型的には2質量部〜7質量部)とすることができる。
【0154】
上記粘着剤組成物は架橋促進剤をさらに含んでもよい。架橋促進剤の種類は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜選択することができる。なお、本明細書において架橋促進剤とは、架橋剤による架橋反応の速度を高める触媒を指す。かかる架橋促進剤としては、例えばジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、テトラ−n−ブチル錫、トリメチル錫ヒドロキシド等の錫(Sn)含有化合物;N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミンやトリエチルアミン等のアミン類、イミダゾール類等の窒素(N)含有化合物;が例示される。なかでも、Sn含有化合物が好ましい。これら架橋促進剤の使用は、上記アクリル系ポリマーの主鎖を構成するモノマーが官能基含有モノマーとして水酸基含有モノマーを含み、かつ架橋剤としてイソシアネート系架橋剤が用いられる場合に特に有効である。上記粘着剤組成物に含まれる架橋促進剤の量は、上記アクリル系ポリマー100質量部に対し、例えば0.001質量部〜0.5質量部程度(好ましくは0.001質量部〜0.1質量部程度)とすることができる。
【0155】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて粘着付与剤を含有してもよい。粘着付与剤としては、従来公知のものを特に限定なく使用することができる。例えばテルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着付与剤を用いる場合、その使用量は、アクリル系ポリマーの性質を低下させず、粘着付与剤の効果が充分に得る観点から、アクリル系ポリマー100質量部に対して50質量部以下(典型的には0.1質量部〜30質量部)とすることが好ましい。なお、粘着剤組成物は、密着性や軽剥離性、非汚染性を考慮して粘着付与剤を実質的に含有しない態様であり得る。
【0156】
上記粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー以外に、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含んでもよい。これらの粘着剤を用いる場合、その使用量は、アクリル系ポリマーの特性を低下させない観点から、例えばアクリル系ポリマー100質量部に対して10質量部以下程度である。耐エッチング液浸入性、非汚染性および軽剥離性を考慮すると、これらの粘着剤を含有しないことが好ましい。
【0157】
上記粘着剤組成物は、pH調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有するものであり得る。この組成物に含有され得る他の任意成分としては、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤、可塑剤、充填材、着色剤(顔料、染料等)、分散剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、粘着剤分野において一般的に使用される各種添加剤が例示される。このような添加剤の配合量は、必要に応じて、当該用途において粘着剤層の形成(保護シートの製造)に用いられる粘着剤組成物の通常の配合量と同程度とすることができる。
【0158】
上記粘着剤組成物中におけるアクリル系ポリマーの含有量は50質量%を超えることが好ましい。ガラスエッチング用途に好適な粘着性を発現させやすく、また分子設計が容易である点を考慮して、より好ましくは70質量%以上(例えば90質量%以上、典型的には95質量%以上)である。
【0159】
上記粘着剤組成物の形態は特に限定されない。例えば溶剤型、エマルション型、水溶液型、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型、ホットメルト型等の種々の形態であり得る。典型的には、上記モノマーまたはその混合物を適当な溶媒中で重合させて得られたアクリル系ポリマー溶液または分散液に、必要に応じて他の成分を配合することにより調製される。あるいは、例えばエマルション重合後、必要に応じてpH調整、塩析、精製等の処理を施して得られたアクリル系ポリマーを、架橋剤および必要に応じて各種の添加剤等(任意成分)とともに、トルエン、酢酸エチル等の有機溶媒に溶解させて得られる溶剤型粘着剤組成物であってもよい。
【0160】
また、エッチング処理時のシール性と処理後の剥離性とを両立するため、保護シートを貼り付けた後、粘着剤の粘着力が放射線・熱等により事後的に低下する粘着剤組成物を用いてもよい。そのような粘着剤組成物としては、例えばアクリル系ポリマーの側鎖、主鎖中または主鎖末端に炭素−炭素二重結合を導入した内在型の放射線・熱硬化型粘着剤組成物が挙げられる。かかる放射線・熱硬化型粘着剤組成物は、該組成物を用いて形成した粘着剤層を備える保護シートを被着体に貼り付け、その後、放射線照射・加熱により硬化させることで粘着力を低下させることができる。また、紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤組成物も挙げられる。かかる放射線硬化型(典型的には紫外線硬化型)の粘着剤組成物には、光重合開始剤を含有させることが好ましい。さらに、加熱により発泡または膨張する成分を含有させ、所定の温度で粘着剤を膨張させ粘着力を低下させるような粘着剤組成物も好適例として挙げられる。そのような粘着剤組成物としては、例えばイソブタン、プロパン等の加熱により容易にガス化する物質を、弾性を有する殻内に内包させた熱膨張性微小球(例えば商品名:マイクロスフィア、松本油脂製薬(株)製等)を配合したものが挙げられる。さらに、アクリル系ポリマーの主鎖を構成する主モノマーとして炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することにより、粘着剤を結晶化させて加熱により粘着力を低減するような構成を採用することも可能である。
【0161】
粘着剤層を基材上に設ける方法としては、例えば上記粘着剤組成物を基材に直接付与(典型的には塗付)して硬化処理する方法(直接法)や、剥離性を有する適当なセパレータ(剥離紙)の上(表面(剥離面))に上記粘着剤組成物を付与(典型的には塗付)して硬化処理することによりセパレータの表面上に粘着剤層を形成し、この粘着剤層を基材に貼り合わせて粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を用いることができる。上記硬化処理は、乾燥(加熱)、冷却、架橋、追加の共重合反応、エージング等から選択される1または2以上の処理であり得る。例えば溶媒を含む粘着剤組成物を単に乾燥させるだけの処理(加熱処理等)や、加熱溶融状態にある粘着剤組成物を単に冷却する(固化させる)だけの処理も、ここでいう硬化処理に含まれ得る。上記硬化処理が2以上の処理(例えば乾燥および架橋)を含む場合、これらの処理は同時に行ってもよく、多段階に亘って行ってもよい。
【0162】
粘着剤組成物の塗付は、例えばグラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。該組成物が塗付される支持体の種類にもよるが、例えば凡そ40℃〜150℃程度の乾燥温度を採用することができる。乾燥後、架橋反応がさらに進むように40℃〜60℃程度で保持するエージング処理を施してもよい。エージング時間は、所望の架橋度や架橋反応の進行速度に応じて適宜選択すればよく、例えば12時間〜120時間程度、典型的には12時間〜72時間程度とすることができる。
【0163】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができる。粘着剤層の厚さは、例えば1μm〜100μm程度であり得る。ガラスエッチング用途により好適な厚さは2μm以上、より好ましくは3μm以上(例えば5μm以上、典型的には10μm以上)であり、また、40μm以下(典型的には30μm以下)である。粘着剤層の厚さが厚すぎると粘着力が過剰になる傾向があり、薄すぎると、シール性が低下する傾向がある。
【0164】
上記基材上に設けられる粘着剤層は、100℃における貯蔵弾性率G’が0.230×10
6Pa〜10×10
6Paの範囲にあることが好ましい。G’は、0.230×10
6Pa〜1.0×10
6Pa(例えば0.3×10
6Pa〜0.5×10
6Pa)の範囲にあることがより好ましい。上記貯蔵弾性率G’の測定周波数は1Hzとする。この貯蔵弾性率は、例えば厚さ2mmの粘着剤層サンプルを、一般的な粘弾性測定装置のパラレルプレート(直径7.9mm)と平板との間にセットして、上記周波数にて剪断モードで測定することができる。測定温度域および昇温速度は、粘弾性測定装置の機種等に応じて適切に設定すればよい。例えば、測定温度としては少なくとも50℃〜130℃の範囲を含む温度域(例えば15℃〜150℃)とすることができ、昇温速度は0.5℃〜15℃/分(例えば5℃/分)程度とすることができる。
【0165】
保護シートを構成する粘着剤(層)のゲル分率は特に限定されないが、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上である。粘着剤層のゲル分率が高くなることにより、充分な凝集力が得られ、保護シートを剥離する際に糊残り等の汚染が発生しない。また剥離も軽くなる。さらに、ガラスエッチング用途に好適な粘着力(すなわち、シール性と軽剥離性とを高度に両立した粘着力)が得られるので、良好な軽剥離性を維持しながら、保護シート側面からのエッチング液の浸入を防ぐことができる。また、ゲル分率の上限は特に限定されるものではないが、好ましくは99%以下、より好ましくは90%以下である。ゲル分率が高すぎると、粘着剤層の構成によっては粘着力が低下しやすくなることがあり得る。
【0166】
ゲル分率は以下の方法で測定することができる。粘着剤層(架橋後の粘着剤(組成物))を、平均孔径0.2μmのテトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シート(質量:Wa)で包み、この包みの合計質量Wbを測定する。次いで、この包みをトルエンに浸漬して23℃で7日間静置した後、上記包みを取り出して120℃で2時間乾燥させ、乾燥後における包みの質量Wcを測定する。該粘着剤層のゲル分率(%)は、以下の式:
ゲル分率[%]=(Wc−Wa)/(Wb−Wa)×100
により求められる。
【0167】
より具体的には、測定サンプルとしての粘着剤層(架橋後の粘着剤(組成物))約0.1gを、平均孔径0.2μmのテトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートで巾着状に包み、口を凧糸で縛る。テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートと凧糸の合計質量をWa(mg)は予め計測しておく。そして、包みの質量(粘着剤層と包みの合計質量)Wb(mg)を計測する。この包みを容量50mLのスクリュー管に入れ(1個の包みにつきスクリュー管1本を使用する。)、このスクリュー管にトルエンを満たす。これを室温(典型的には23℃)で7日間静置した後、上記包みを取り出して120℃で2時間乾燥させ、その後、トルエン中から包みを引き上げて120℃で2時間乾燥し、乾燥後における包みの質量Wc(mg)を計測する。各値を上式に代入することにより、測定サンプルのゲル分率を算出する。上記テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートとしては、日東電工株式会社製の商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」を使用することができる。後述する実施例においても同様の方法を採用し得る。
【0168】
粘着剤層の貼付面の算術平均表面粗さは、1μm以下であることが好ましく、凡そ0.05μm〜0.75μm(例えば凡そ0.05μm〜0.5μm、典型的には凡そ0.1μm〜0.3μm)の範囲にあることがより好ましい。上記貼付面の算術平均表面粗さは、転写シートの剥離面の算術平均表面粗さと同様にして測定することができる。このように平滑性の高い粘着剤層は、被着体表面から剥離する際の応力の偏りが少ないので、局部的な応力により粘着剤の一部が切れて被着体側に残る等の事象を回避し得る。したがって、かかる粘着剤層を基材上に有する保護シートは、被着体表面に糊残り等の汚染を生じることなく、被着体からスムーズに剥離できるものとなり得る。また、算術平均表面粗さが大きくなると、粘着剤層と被着体との間に浮き等の空隙が形成される場合があり、その空隙からエッチング液が保護シート内に浸入する虞がある。なお、基材のうち少なくとも粘着剤層が設けられる側の表面は、粘着剤層の表面状態(貼付面の表面粗さ)に影響を及ぼさない程度(すなわち、剥離面の算術平均表面粗さを上昇させる要因とならない程度)の平滑性を有することが好ましい。
【0169】
保護シートは、粘着剤層の貼付面上に剥離ライナーが配置された形態であり得る。一般に保護シートは被着体の保護範囲に応じた形状に打ち抜かれた上で被着体に貼り付けられる。そのため、粘着剤層上に剥離ライナーを有する形態の保護シート(剥離ライナー付き保護シート)によれば上記打抜き操作を効率よく行い得るためである。打ち抜かれた剥離ライナー付き保護シートは、その後、剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させ、該粘着剤層(貼付面)を被着体に圧着して使用される。また、剥離ライナーが貼付面上に配置されており、その貼付面に対向する表面(剥離面)が平滑性に優れる場合、保護シートの使用時まで粘着剤表面(貼付面)の平滑性をより安定して維持し得る。そのため、粘着剤(層)表面(貼付面)は平滑性が高くなり、被着体表面から剥離する際の応力の偏りが少なくなる。したがって、局部的な応力により粘着剤の一部が切れて被着体側に残る等の事象を回避し得る。また、平滑性が低下すると(算術平均表面粗さが大きくなると)、粘着剤層と被着体との間に浮き等の空隙が形成される場合がある。かかる場合、その空隙からエッチング液が保護シート内に浸入する虞がある。そのため、剥離ライナーは、貼付面に対向する表面(剥離面)の算術平均表面粗さが1μm以下であることが好ましく、0.05μm〜0.75μm(例えば凡そ0.05μm〜0.5μm、典型的には凡そ0.1μm〜0.3μm)であることがより好ましい。
【0170】
上記剥離ライナーとしては、転写シートと同様の材質および構成を有する各種の紙(表面に樹脂がラミネートされた紙であり得る)、樹脂フィルムを好ましく使用することができる。転写シートおよび剥離ライナーに同じものを用いてもよい。例えば、転写シートの剥離面上に形成された粘着剤層に基材を貼り合わせて基材に粘着剤層を転写し、この転写シートをそのまま粘着剤層上に残して剥離ライナーとして利用することができる。このように転写シートが剥離ライナーを兼ねる態様は、生産性向上、材料コスト低減、廃棄物量削減の観点から好ましい。あるいは、転写シート上の粘着剤層に基材を貼り合わせた後、基材に転写された粘着剤層から上記転写シートを剥離し、この転写シートとは別の剥離ライナーを新たに粘着剤層(貼付面)上に配置して粘着剤層を保護してもよい。
【0171】
剥離ライナーの厚さは特に限定されず、凡そ5μm〜500μm(例えば凡そ10μm〜200μm、典型的には凡そ30μm〜200μm)であり得る。剥離ライナーの剥離面(粘着面に接して配置される面)には、必要に応じて従来公知の剥離剤(例えば一般的なシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等)による剥離処理が施されていてもよい。上記剥離面の背面は、剥離処理されていてもよく、剥離処理以外の表面処理が施されていてもよい。
【0172】
第2態様に係る保護シートは、被着体(典型的にはガラス基板)の所望の部位に貼付して、その部位を保護するための保護シートとして使用することができる。かかる保護シートは適度な硬さを有する。そのため、被着体に貼り付ける際に、皺や浮き、縒れが発生し難くなり、貼付けがしやすい。また保護シートは所定以上の強度を有するので、剥離の際に保護シートが切れるといった不都合は生じない。また軽い剥離が可能となり、作業性に優れる。さらに被着体表面が段差を有する場合であっても、保護シートは被着体の表面形状に良好に追従することができ、密着性に優れる。そのため、保護シート側面には、エッチング液が浸入するような皺等の空隙が形成されず、シール性が向上する。そのゆえ、この保護シートは、被着体の表面をエッチング処理する際に、エッチング液の影響を排除したい部分をマスクする用途に好ましく使用され得る。
【0173】
特に、第2態様に係る保護シートは、
図4および
図5に示すように、表面にITO膜30が形成されているようなガラス基板20の一部をエッチング処理する前に、保護シート10の粘着剤層側をガラス基板20の表面に貼り付けることで、ガラス基板20の表面(ITO膜30が形成された表面)をエッチング液から保護するガラス基板20の表面保護シートとして好適に用いられる。また、
図6に示すように、表面にITO膜30が形成されているようなガラス基板20の切断面である側面をエッチング処理する前に、2枚の保護シート10の各々の粘着剤層側をガラス基板20の両表面に貼り付けることで、ガラス基板20の両表面をエッチング液から保護するガラス基板20の両表面保護シートとして好適に用いられる。かかる構成は、ガラス基板20の側面のエッチング処理に特に好適に用いられ得る。
図4、
図5および
図6に示すような用途では、通常、ガラス基板表面には数十nm厚(例えば10nm〜90nm厚)のITO膜が形成されており(場合によっては、ITO膜を保護する樹脂製保護層がさらに形成されており)、上述した保護シートは、かかるガラス基板とITO膜等との段差に良好に追従することができる。また、上記段差部分は、ガラス表面の中央近傍の一部に形成されるものである(つまり、段差部分がガラス基板表面の端部に至っていない)ので、保護シート10は、
図4に示すように、段差部分を完全に覆うように貼り付けられる。ここで開示される保護シートは、このような使用形態において、剥離時にガラス基板表面のITO膜等が剥がれる等、ITO膜に悪影響を与えず、かつシール性と作業性とを高度に両立することができる。
【0174】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。なお、特に限定されるものではないが、試験1は、本発明の第1態様に関する実施例であり、試験2は、第2態様に関する実施例として把握され得る。
【0175】
<<試験1>>
実施例1
基材としてPEフィルムを用いて保護シートを作製した。低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名「ペトロセン180」)をインフレーション成形機によりダイス温度160℃の条件で100μm厚に成膜し、片面にコロナ放電処理を施してPEフィルムを作製した。このフィルムのコロナ処理面にアクリル系粘着剤組成物aを塗付し、80℃で1分間乾燥させて、厚さ3μmの粘着剤層を形成した。さらにこの粘着剤層を同フィルムの非コロナ処理面を貼り合わせ、50℃条件下で2日間エージングして、保護シートを作製した。
【0176】
なお、上記アクリル系粘着剤組成物aとして、以下の方法で製造したものを使用した。冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート100部、酢酸ビニル80部、アクリル酸5部および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO,日油(株)製「ナイパー(登録商標)BW」)0.3部を、所望の固形分になるよう配合したトルエン中で共重合させてアクリル系共重合ポリマーを得た。さらにこのアクリル系ポリマー100部に対し、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斬化学(株)製「TETRAD(登録商標)−C」)2部を加え、所望の固形分になるようトルエンを加えてアクリル系粘着剤組成物aとした。
【0177】
実施例2
架橋剤としてエポキシ系架橋剤(三菱瓦斬化学(株)製「TETRAD(登録商標)−C」)4部を加え(言い換えると、エポキシ系架橋剤の使用量を2部とし)、粘着剤層の厚さが10μmとなるように形成したこと以外は実施例1と同様に保護シートを作製した。
【0178】
実施例3
実施例1と同様の基材を150μm厚に製膜し(言い換えると、基材の厚さを150μmとした他は実施例1と同様にして基材を製膜し)、粘着剤層の厚さが10μmとなるようにアクリル系粘着剤組成物bを塗付して保護シートを作製した。アクリル系粘着剤組成物bとして、以下の方法で製造したものを使用した。冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート100部、酢酸ビニル80部、アクリル酸5部および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO,日油(株)製「ナイパー(登録商標)BW」)0.3部を、所望の固形分になるよう配合したトルエン中で共重合させてアクリル系共重合ポリマーを得た。さらにこのアクリル系ポリマー100部に対し、キシレン樹脂(三菱瓦斬化学(株)製「ニカノール(登録商標)H−80」)20部、ブチル化メラミン架橋剤(DIC(株)製「スーパーベッカミン(登録商標)J−820−60N」)2部、アルキルリン酸エステル(東邦化学工業(株)製「フォスファノール(登録商標)RL−210」)0.7部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、「コロネート(登録商標)L」)5部を加え、所望の固形分になるようトルエンを加えてアクリル系粘着剤組成物bとした。
【0179】
実施例4
基材として、60μm厚に製膜したこと以外(言い換えると、基材の厚さを60μmとした他)は実施例1と同様に保護シートを作製した。
【0180】
比較例1
実施例1と同様の基材を55μm厚に製膜し(言い換えると、基材の厚さを55μmとした他は実施例1と同様にして基材を製膜し)、粘着剤層の厚さが5μmとなるようにアクリル系粘着剤組成物cを塗付して保護シートを作製した。アクリル系粘着剤組成物cとして、以下の方法で製造したものを使用した。冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、ブチルアクリレート58部、n−ブチルメタクリレート40部およびアクリル酸2部からなる単量体混合物100部に対し、界面活性剤(第一工業製薬(株)製「アクアロン(登録商標)BC−2020」)1.65部、アルキルリン酸エステル(東邦化学工業(株)製「フォスファノールRE−410」0.6部、重合開始剤として過硫酸アンモニウム(キシダ化学(株)製「1級ペルオキソニ硫酸アンモニウム」)0.23部を、所望の固形分になるように配合して水中で乳化重合し、10%アンモニウム水によりpH8に調整して、ポリマーエマルションを得た。重合開始剤は所定量の水で希釈し、滴下しながら加えた。さらにこのポリマーエマルションの固形分100部に対し、オキサゾリン系架橋剤((株)日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS−500」)2部を混合して、アクリル系粘着剤組成物cとした。
【0181】
比較例2
実施例1と同様の基材を60μm厚に製膜し(言い換えると、基材の厚さを60μmとした他は実施例1と同様にして基材を製膜し)、粘着剤層の厚さが3μmとなるようにアクリル系粘着剤組成物dを塗付して保護シートを作製した。アクリル系粘着剤組成物dとして、以下の方法で製造したものを使用した。冷却管、窒素導入管、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート95部、アクリル酸5部および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO,日油(株)製「ナイパー(登録商標)BW」)0.15部を、所望の固形分になるように配合してトルエン中で共重合させてアクリル系共重合ポリマーを得た。さらにこのアクリル系ポリマー100部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネート(登録商標)L」)3部を加え、所望の固形分になるようにトルエンを加えてアクリル系粘着剤組成物dを作製した。
【0182】
[ゲル分率]
粘着剤組成物の約0.1g(W1)をテフロン(登録商標)膜に包み、秤量した。これを溶媒(トルエン)に浸漬し、室温で1週間放置した。試料を乾燥した後、不溶解分の質量(W2)を測定し、ゲル分率(%)=100×W2/W1により求めた。
【0183】
[エッチング液浸入]
(1)保護シート表面からのエッチング液浸入
ガラス基板上にpH試験紙を載置し、このpH試験紙を完全に被覆するように、保護シートを貼り合わせた。この保護シートの上にエッチング液を2cc滴下し、pH試験紙が変色するか否かを観察した。変色しなかった場合は○、変色した場合は×とした。エッチング液は、HF:1%、H
2SO
4:2%、HNO
3:3%およびHPO
4:2%の混合物を含む水溶液(原液10倍希釈品)を使用した。
pH試験紙のサイズ:9mm×15mm
テープのサイズ:40mm×40mm
(2)保護シート側面からのエッチング液浸入
ガラス基板上に保護シートを貼り合わせ、エッチング液に1時間浸漬させ、保護シートの表面から観察し、浸食の有無を確認した。
上記(1)および(2)のエッチング液浸入の評価を行い、保護シート表面からのエッチング液浸入および保護シート側面からの液浸入が起こらなかったものをAとした。保護シート側面からの液浸入は起こらなかったが、保護シート表面からのエッチング液浸入が一部見られたものをBとした。保護シート表面からのエッチング液浸入は起こらなかったが、保護シート側面からの液浸入が一部見られたものをCとした。保護シート表面からのエッチング液浸入および保護シート側面からの液浸入が共に見られたものは×とした。
【0184】
[剥離作業性]
ガラス基板上に保護シートを貼り合わせ、エッチング液に1時間浸漬させた後で、保護シートを剥離する際の作業性を評価した。重剥離により被着体が破壊した場合は×、被着体に影響がなかった場合は○とした。
【0185】
[ガラスに対する粘着力]
測定温度:25℃
試験片の幅:20mm
引張速度:300mm/min
引き剥がし方向:180°
保護シートのサイズ:20mm×60mm(MD方向を長手方向として切断した)
ガラス:松浪硝子工業(株)製「MICROSLIDE GLASS」1.3mm×65mm×165mm
貼合せ方法:2kgローラーで1往復させて貼り合わせた。
【0186】
表1に実施例1〜4および比較例1〜2の評価結果を示す。
【0188】
表1の結果から明らかなように、ゲル分率が60%以上であり、かつアクリル系ポリマーの主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基(R
2)の炭素数が6以上のものを用いた実施例1〜4では、エッチング液浸入の評価がAまたはBであり、エッチング後に保護シートを剥離する際の剥離作業性に優れたことがわかる。一方、ゲル分率が60%以上未満であるか、アクリル系ポリマーの主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基(R
2)の炭素数が4のものを用いた比較例1〜2では、エッチング液浸入の評価がCまたは×となり、保護シート側面からのエッチング液浸入が一部見られた。以上より、ゲル分率が60%以上であり、アルキル基(R
2)の炭素数が6以上のアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして用いたアクリル系ポリマーを含有する粘着剤層は、耐エッチング浸入性および剥離作業性に優れることがわかる。
【0189】
参考例1
粘着剤組成物として、アクリル系粘着剤組成物dを使用した。
【0190】
参考例2
架橋剤として、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斬化学(株)製「TETRAD(登録商標)−C」)0.6部を加えたこと以外(言い換えると、イソシアネート系架橋剤3部に代えてエポキシ系架橋剤(三菱瓦斬化学(株)製「TETRAD(登録商標)−C」)0.6部を用いたこと以外)は、参考例1と同様にしてアクリル系粘着剤組成物eを作製した。
【0191】
参考例3
架橋剤として、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斬化学(株)製「TETRAD(登録商標)−C」)1.2部を加えたこと以外(言い換えると、イソシアネート系架橋剤3部に代えてエポキシ系架橋剤(三菱瓦斬化学(株)製「TETRAD(登録商標)−C」)1.2部を用いたこと以外)は、参考例1と同様にしてアクリル系粘着剤組成物fを作製した。
【0192】
表2に示す参考例1〜3のアクリル系粘着剤組成物について、下記のエッチング液の浸透性試験を行い、結果を表3および
図7に示す。
【0193】
[粘着組成物のエッチング液浸透性試験]
ガラス基板上にpH試験紙を載置し、このpH試験紙を完全に被覆するように、粘着剤組成物を100μmの膜厚で積層した。この粘着剤組成物の上にエッチング液を2cc滴下し、pH試験紙が変色するまでの時間を観察した。エッチング液は、HF:1%、H
2SO
4:2%、HNO
3:3%およびHPO
4:2%の混合物を含む水溶液(原液10倍希釈品)を使用した。
pH試験紙のサイズ:9mm×15mm
テープ(粘着剤層)のサイズ:40mm×40mm
【0196】
表3および
図7に示すように、アクリル系粘着組成物d(参考例1),e(参考例2),f(参考例3)につき、エッチング液浸透性試験を行ったところ、参考例1(ゲル分率60%未満)では経過時間とともに、pH試験紙が変色していく様子が観察されたが、参考例2,3(ゲル分率60%以上)ではpH試験紙の変色は参考例1に比べると緩やかであった。なお、参考例2および3のゲル分率は、上述の実施例1と同様の方法で測定し、参考例2および3ともにゲル分率は60%以上であった。以上より、アクリル系粘着剤組成物(粘着剤、粘着剤層)のゲル分率が60%以上であることにより耐エッチング液浸入性が向上することがわかる。
【0197】
<<試験2>>
[粘着剤組成物の調製]
<調製例1>
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、重合溶媒としてトルエン100部、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート100部、副モノマーとしてアクリル酸5部、酢酸ビニル80部、過酸化物系重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO,日油(株)製「ナイパー(登録商標)BW」)0.3部を入れ、窒素還流を室温にて1時間行った。次に、容器内容物の温度を63℃に昇温し、窒素気流中で重合を4時間行った。その後、さらに容器内容物の温度を80℃に昇温して2時間熟成し、アクリル系ポリマーAの溶液を得た。このアクリル系ポリマーAの重合率は99.5重量%であった。このようにして得たアクリル系ポリマーA100部(固形分)に対し、架橋剤としてエポキシ系架橋剤(三菱瓦斬化学(株)製「TETRAD(登録商標)−C」)2部(固形分)を配合して、粘着剤組成物Aとした。
【0198】
<調製例2>
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、重合溶媒として酢酸エチル100部、主モノマーとしてn−ブチルメタクリレート95部、副モノマーとしてアクリル酸5部、アゾ系重合開始剤として2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)0.1部を入れ、窒素還流を室温にて1時間行った。次に、容器内容物の温度を63℃に昇温し、窒素気流中で重合を4時間行った。その後、さらに容器内容物の温度を80℃に昇温して2時間熟成し、アクリル系ポリマーBの溶液を得た。このアクリル系ポリマーBの重合率は99.5重量%であった。このようにして得たアクリル系ポリマーB100部(固形分)に対し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業(株)製「コロネート(登録商標)L」))2部(固形分)を配合して、粘着剤組成物Bとした。
【0199】
<調製例3>
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、重合溶媒として酢酸エチル100部、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート95部、副モノマーとしてアクリル酸5部、アゾ系重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部を入れ、窒素還流を室温にて1時間行った。次に、容器内容物の温度を60℃に昇温し、窒素気流中で重合を4時間行った。その後、さらに容器内容物の温度を75℃に昇温して2時間熟成し、アクリル系ポリマーCの溶液を得た。このアクリル系ポリマーCの重合率は99.9重量%であった。このようにして得たアクリル系ポリマーC100部(固形分)に対し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネート(登録商標)L)3部(固形分)を配合して、粘着剤組成物Cとした。
【0200】
<調製例4>
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、重合溶媒としてトルエン65部、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート100部、副モノマーとして2−ヒドロキシエチルアクリレート9.3部、過酸化物系重合開始剤としてBPO0.2部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、質量平均分子量約58万のアクリル系ポリマーDを得た。このアクリル系ポリマーDに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)10.0部(2−ヒドロキシエチルアクリレートに対して80mol%)を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーの溶液を得た。次に、得られたアクリル系ポリマー100部(固形分)に対し、イソシアネート系架橋剤(商品名:コロネート(登録商標)L)8部と光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア250」)5部を加えて、粘着剤組成物Dを得た。
【0201】
<調製例5>
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、重合溶媒として酢酸エチル100部、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート50部およびエチルアクリレート50部、副モノマーとして2−ヒドロキシエチルアクリレート5部、アゾ系重合開始剤としてAMBN0.1部を入れ、窒素還流を室温にて1時間行った。次に、容器内容物の温度を63℃に昇温し、窒素気流中で重合を4時間行った。その後、さらに容器内容物の温度を80℃に昇温して2時間熟成し、アクリル系ポリマーEの溶液を得た。このアクリル系ポリマーEの重合率は99.5重量%であった。このようにして得たアクリル系ポリマーE100部(固形分)に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名:コロネート(登録商標)L)2部と、アルキルフェノール樹脂(荒川化学工業(株)製「タマノル100S」)10部と、熱膨張性微小球(松本油脂製薬(株)「マツモトマイクロスフェアーF50D」、発泡開始温度:120℃、平均粒子径:14μm):40部を加えて粘着剤組成物Eを得た。
【0202】
<調製例6>
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、重合溶媒としてトルエン100部、主モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート100部、副モノマーとしてアクリル酸5部、酢酸ビニル80部、過酸化物系重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド(BPO,日油(株)製「ナイパー(登録商標)BW」)0.3部を入れ、窒素還流を室温にて1時間行った。次に、容器内容物の温度を63℃に昇温し、窒素気流中で重合を4時間行った。その後、さらに容器内容物の温度を80℃に昇温して2時間熟成し、アクリル系ポリマーFの溶液を得た。このアクリル系ポリマーFの重合率は99.5重量%であった。このようにして得たアクリル系ポリマーA100部(固形分)に対し、架橋剤としてエポキシ系架橋剤(三菱瓦斬化学(株)製「TETRAD(登録商標)−C」)1.5部(固形分)を配合して、粘着剤組成物Fとした。
【0203】
[基材の作製]
<製造例1>
低密度ポリエチレン(東ソー(株)製「ペトロセン(登録商標)186R」)をTダイ押出機を用いて成形することによって、厚さ150μmのフィルム状基材Aを得た。基材Aの片面にはコロナ放電処理を施した。
【0204】
<製造例2>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(東ソー(株)製「ウルトラセン(登録商標)635」)30部、多段重合エチレン/プロピレン共重合体(サンアロマー(株)製「キャタロイQ−200F」)70部、アミノシランカップリング処理焼成カオリン(BASF社製「TRANSLINK445」)35部、フェノール系酸化防止剤((株)ADEKA製「アデカスタブ(登録商標)AO−60」0.5部をドライブレンドし、加圧ニーダーにて180℃で混練してペレット化した。このペレットを、カレンダー押出機を用いて成形することによって、厚さ150μmのフィルム状基材Bを得た。基材Bの片面にはコロナ放電処理を施した。
【0205】
<製造例3>
エチレン酢酸ビニル(三井・デュポン・ポリケミカル(株)製「エバフレックス(登録商標)EV270」)をTダイ押出機を用いて成形することによって、厚さ115μmのフィルム状基材Cを得た。基材Cの片面にはコロナ放電処理を施した。
【0206】
<製造例4>
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製「ルミラー(登録商標)S-10」を基材Dとして用いた。
た。
【0207】
<製造例5>
フィルムの厚さを100μmに変更した他は、製造例1と同様にして基材Eを作製した。基材Eの片面にはコロナ放電処理を施した。
【0208】
<例1〜例10>
得られた粘着剤組成物A〜Fを、アプリケータを用いて、シリコーン処理が施された厚さが38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に付与し、温度120℃で3分間乾燥することによって表4に示す厚さの粘着剤層を形成した。粘着剤組成物A〜Fから形成された粘着剤と基材A〜Eとが表4に示す組合せとなるように、粘着剤層のPETフィルム側とは反対側の表面に基材のコロナ放電処理面を貼り合わせて、例1〜例10に係る保護シートを作製した。各例で作製した保護シートにつき、下記の評価試験を行った。
【0209】
[10%延伸時強度]
各保護シートにつき、以下の方法で10%延伸時強度を測定した。すなわち、粘着剤層上に剥離ライナーが配置された形態(剥離ライナー付き保護シートの形態)で、基材のMD方向に沿って幅10mm×長さ150mmの短冊状に保護シートを切り出し、剥離ライナーを除去したものを試験片として用いた。JIS K7127に準拠して、上記試験片をMDへ10%延伸したときの強度T
M25(N/cm)を以下の条件で測定した。
10%延伸時強度の測定条件:
測定温度 25℃(当該温度に試験片を30分以上保持した後に測定を開始した。);
引張速度 300mm/分;
チャック間距離 100mm;
各保護シートにつき、TDを長手方向として幅10mmの短冊状に切り出した試験片を用い、上記と同様にしてTDへ10%延伸したときの強度(引張張力)を測定し、TDへの10%延伸時の強度T
T25(N/cm)を求めた。
また、測定されたT
M25,T
T25から、これらの合計値T
S25を求めた。
【0210】
[25℃引張弾性率]
各保護シートを、MDを長手方向として幅10mmの短冊状にカットして試験片を作製した。この試験片を、JIS K7161に準拠して、下記条件で延伸することにより応力−ひずみ曲線を得た。
延伸条件:
測定温度 25℃;
引張速度 300mm/分;
チャック間距離 50mm;
MD引張弾性率E
M25は、規定された2点のひずみε1=1およびε2=2の間の曲線の線形回帰によって求めた。異なる箇所から切り出した3つの試験片を用いて上記測定を行い、それらの平均値を25℃におけるMDへの引張弾性率E
M25(MPa)とした。また、各保護シートを、TDを長手方向として幅10mmの短冊状にカットして試験片を作製した。この試験片を用い、上記と同様にして、25℃におけるTDへの引張弾性率E
T25(MPa)を求めた。測定されたE
M25,E
T25から、これらの合計値E
S25(MPa)を求めた。なお、E
M25,E
T25は、各保護シートの厚さの実測値から粘着剤層の厚さを差し引いた厚さの値、または基材そのものの厚さを測定して得た値に基づいて、基材の断面積当たりの値に換算して求めた。
【0211】
[25℃曲げ剛性値]
上記で測定したE
M25,E
T25、各基材の厚さh、および式:
D=Eh
3/12(1−V
2);
から、曲げ剛性値D
M25,D
T25(Pa・m
3)を各々算出し、それらの合計値D
S25を求めた。ここで、上記式におけるポアソン比Vの値としては0.35を採用した。
【0212】
[たわみ角度の評価]
図3に示すように、100mm×50mmにカットした各例の保護シート10を用意し、側面から見たときに、保護シート10の長手方向の60mmの部分が水平上面を有する試験台40上に乗り、かつ該長手方向の残りの40mmの部分が試験台40の端面から側方に突出するように保護シート10を試験台40に固定した。この保護シート10の試験台40から側方に突出した部分の鉛直方向に対する角度A°を測定した。この角度A°をたわみ角度として記録した。
【0213】
[シール性の評価]
100mm×100mmのガラス板に、テープ総厚53μmで70mm×70mmのポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を前記ガラス板の中央に貼り付け、ガラス面に段差を設けた。このポリエステル粘着テープを完全に覆い、かつ前記ガラス板に重なるように、例1〜例10で作製した保護シートを100mm×100mmにカットしたものをハンドローラーで貼り付け、これを試験サンプルとした。各試験サンプルを水中に24時間放置した後、取り出し、保護シートをガラス板から剥がし、保護シートの貼付け部分への水の浸入状況を目視で確認した。保護シート内への水の浸入が全く認められなかったものを◎、保護シート内への水の浸入がわずかに認められたものを○、水の浸入が認められたものを×とした。なお、シール性と次に説明する剥離性について、紫外線硬化型粘着剤を用いた例5の保護シートは、粘着剤層に紫外線を照射(照射積算光量:50〜500mJ/cm
2)した後に評価を行った。また、粘着剤に熱膨張性微小球を含有させた例6の保護シートは、粘着剤層に120℃で5分間の加熱処理を行った後に評価を行った。
【0214】
[剥離性の評価]
上記シール性の評価において、保護シートをガラス板から剥がす際の作業性を評価した。スムーズに剥離することができ、保護シートの伸び、切れ、ポリエステル粘着テープの剥がれがなかったものを○、剥離が重く、保護シートの伸びが認められたものを×とした。
【0216】
表4に示すように、各方向(MDまたはTD)への10%延伸時の強度(T
M25,T
M25)が1N/cm〜25N/cmの範囲内であった例1〜例8,例10の保護シートは、シール性に優れることがわかる。一方、上記10%延伸時の強度(T
M25,T
M25)が25N/cmを超えた例9の保護シートは良好なシール性を得ることができなかった。その原因として、10%延伸時の強度が高すぎるためにガラスの表面形状に充分に追従できなかったことが挙げられる。
【0217】
また、MD方向への曲げ剛性値D
M25が1.5×10
−5〜10×10
−5Pa・m
3の範囲内であった例1〜例8の保護シートは、シール性と剥離性の両方に優れることがわかる。一方、曲げ剛性値D
M25,D
T25が10×10
−5Pa・m
3より大きかった例9の保護シートは、良好なシール性を得ることができなかった。また、曲げ剛性値D
M25,D
T25が1.5×10
−5Pa・m
3未満となった例10の保護シートは剥離性が劣った。なお、紫外線硬化型粘着剤を用いた例5の保護シートは、紫外線照射により粘着剤層のガラスに対する粘着力が低下し、剥離が容易になり、その結果、ガラスを損傷することなく軽い剥離が可能であった。また、熱膨張性微小球を粘着剤に含有させた例6の保護シートは、粘着剤層を加熱処理することにより熱膨張したため、粘着剤層のガラスに対する粘着力が低下し、ガラスからの剥離が容易になり、その結果、ガラスを損傷することなく軽い剥離が可能であった。
【0218】
さらに、シール性および剥離性の両方が良好であった例1〜例8の保護シートは、いずれもたわみ角度が60°〜80°の範囲内であった。これらの結果から、たわみ角度が上記の範囲内である保護シートは、シール性および剥離性を両立しやすい傾向があることが推察される。
【0219】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。