(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような建具は、浴室と脱衣室とが排水孔及び排水経路を介して常に連通されているので、引戸にて開口を閉塞することにより開口を形成している部位と引戸との間が止水されていても、浴室を使用して出入口側に至った水が、排水孔及び排水経路を通って脱衣室側に進入してしまうおそれがあるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一方の空間から他方の空間への水の排水経路をなす流路を備えつつも引戸の閉塞時には流路から一方の空間に水が進入しにくい建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、2つの空間の間に形成される開口を閉塞可能な引戸を備えた建具であって、前記2つの空間の一方の空間と他方の空間とを連通し、前記一方の空間に進入した水を前記他方の空間に排出する連通流路を形成する連通部材を有し、前記連通部材は、見付け方向に沿う前記連通流路を形成する連通部と、前記連通部から排出される水を前記他方の空間側に案内する案内経路部と、を有し、
見込み方向に沿う軸を中心に回動可能に設けられ、前記引戸にて前記開口を閉塞することにより前記連通部の前記一方の空間側の入口を閉塞して前記連通流路を遮断した状態で
回動が規制され、前記引戸を開くことにより前記
回動に対する規制が解除され
て前記連通流路が連通される遮断部材を備えたことを特徴とする建具である。
このような建具によれば、一方の空間と他方の空間とを連通し、一方の空間に進入した水を他方の空間に排出する連通流路は、引戸を閉じることにより連通流路の一方の空間側にて遮断部材により遮断されるので、引戸の閉塞時には一方の空間側に水は進入し難い。このため、引戸により開口が閉塞されていないときには一方の空間に進入した水を他方の空間に排出する連通流路を有しつつも引戸の閉塞時には連通流路から一方の空間に水が進入しにくい建具を提供することが可能である。
【0007】
かかる建具であって、前記遮断部材は、前記引戸に設けられており、前記引戸により前記開口が閉塞されたときに前記遮断部材が前記連通流路を遮断することが望ましい。
このような建具によれば、引戸により開口が閉塞されたときに、引戸に設けられた遮断部材が連通流路を遮断するので、引戸にて開口を閉塞した際には連通流路を確実に遮断することが可能である。また、遮断部材を引戸に設けることにより、特段の機構を設けたり制御することなく、簡単且つ安価に連通流路を遮断することが可能である。
【0008】
かかる建具であって、前記遮断部材は、前記引戸が有する戸車ユニットに設けられており、前記戸車ユニットは、回動して前記引戸を支持するローラーを備えた戸車本体と、前記戸車本体を収容して前記引戸に固定されるハウジングと、前記戸車本体の前記ハウジングに対する上下方向の位置を調整可能な調整部材と、を有し、前記遮断部材は、前記戸車本体に設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、遮断部材は、戸車ユニットの、引戸を支持するローラーを備えた戸車本体に設けられている。すなわち、引戸を支持するローラーとともに戸車本体をなしているので、ローラーと遮断部材との相対位置は不変である。すなわち、ローラーにより引戸が支持されている状態では、常に一定の位置に遮断部材が位置している。このため、調整部材により戸車本体のハウジングに対する位置が調整されたとしても、遮断部材にて連通流路を遮断することが可能である。すなわち、引戸の上下方向の調整機構を備えつつも確実に連通流路を遮断することが可能である。
【0009】
かかる建具であって、前記引戸を見付け方向に案内するレールを備えた下枠を有し、前記下枠は、前記一方の空間に進入した水を収容し、見付け方向に沿って設けられた溝部を有し、前記連通流路は、前記溝部と前記他方の空間とを連通していることが望ましい。
このような建具によれば、連通流路は下枠に見付け方向に沿って設けられ、一方の空間に進入した水を収容する溝部と他方の空間とを連通しているので、溝部に収容された一方の空間に進入した水を連通流路を通して他方の空間に効率良く排出することが可能である。
【0010】
かかる建具であって、前記遮断部材は、前記引戸が移動する際に、前記溝部内を移動することが望ましい。
このような建具によれば、引戸に設けられた遮断部材は、引戸が移動する際に、溝部内を移動するので、溝部内に収容された水を引戸の移動とともに連通流路側に移動させることが可能である。このため、より効率良く水を排出することが可能である。
【0011】
かかる建具であって、前記開口と見付け方向に隣接する袖部を形成する縦骨を有し、前記連通流路は、前記縦骨の前記一方の空間側にて見付け方向に沿い、前記縦骨の前記開口側にて見込み方向に沿って前記他方の空間に向かうように形成されていることが望ましい。
このような建具によれば、袖部の一方の空間側に進入した水を、開口と見付け方向に隣接する袖部を形成する縦骨の一方の空間側から開口側を通して他方の空間側に確実に排出することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一方の空間から他方の空間への水の経路をなす連通流路を備えつつも引戸の閉塞時には連通流路から一方の空間に水が進入しにくい建具を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
本実施形態においては、2つの空間を一方の空間としての脱衣室と他方の空間としての浴室とし、脱衣室と浴室との間に形成される開口を閉塞可能な引戸を有する建具としての浴室建具を例に挙げて説明する。
【0015】
本実施形態の浴室建具1は、例えば、
図1、
図2に示すように、脱衣室側から見て左側の領域が引戸5により閉塞可能な開口としての浴室出入口2をなし、右側の領域には壁面21aをなすパネル体21が設けられて袖部3をなし、袖部3より脱衣室側を見付け方向に沿って移動する引戸5が、浴室出入口2を開閉可能に構成された引き込み戸タイプの建具である。
【0016】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた状態の浴室建具1を脱衣室側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、浴室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、浴室建具1が備える各部材は、単体の状態であっても建物等に取り付けられた状態にて奥行き方向、左右方向、上下方向となる方向にて方向を特定して説明する。また、浴室建具1を構成する枠体10や引戸5が有する部材は、単体の状態であっても浴室建具1が建物等に取り付けられた状態で上下方向、見付け方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。
【0017】
浴室建具1は、浴室内外の境界に設けられる枠体10と、枠体10の脱衣室側の部位にて見付け方向に移動可能に設けられ、枠体10における見付け方向の約半分の領域に形成される浴室出入口2を閉塞可能に設けられた引戸5と、枠体10が有する下枠14に見付け方向の全域に亘って設けられ、下枠14と引戸5との間を止水する下シール材22と、袖部3と引戸5との間を止水する縦シール材32と、下枠14の袖部3より脱衣室側と浴室出入口2側とを連通する連通流路50を形成する連通部材51と、下枠14上の浴室出入口2側に設けられ、下枠14に嵌合されるカバー部材40と、を有している。
【0018】
カバー部材40は、
図3に示すように、下枠14上に載置されるカバー本体部40aと、カバー本体部40aの下面から下方に突出されて下枠14に嵌合される嵌合片40bとを有している。カバー本体部40aの上面40cには傾斜が設けられている。
【0019】
枠体10は、左右の縦枠11、12、上枠13、下枠14、及び、左右の縦枠11、12のほぼ中央に設けられ浴室出入口2側と袖部3側とを仕切る縦骨20を有している。縦骨20は、見込み方向において左の縦枠11の幅のほぼ半分の幅を有し、浴室側に設けられており、右の縦枠12は見込み方向において左の縦枠11の幅のほぼ半分の幅を有し、脱衣室側に設けられている。
【0020】
そして、
図2に示すように、縦骨20の脱衣室側の部位と右の縦枠12の浴室側の部位とは、見込み方向における中央近傍にて、見付け方向に対向するように配置されており、この対向する部位にて端部が支持されて、袖部3の脱衣室側の壁面21aをなすパネル体21が設けられている。
【0021】
下枠14は、躯体(不図示)に支持されるとともに、脱衣室側に設けられた額縁30と浴室に設けられた防水パン(不図示)との間に架け渡されている。下枠14は、下枠14の基となる基材としての下枠基材141が押出成形にて形成され、下枠基材141(
図4)に加工が施されて形成されている。
【0022】
下枠基材141は、押出成形された部材なので、
図4(a)に示すように、同一の断面形状をなす部位が所定方向(本願では見付け方向)に繋がった形状をなしている。下枠基材141は、最も脱衣室側に位置して額縁30の上部に配置される、下枠14における額縁覆部19と、浴室と脱衣室とを繋ぐ、下枠14における下枠本体部17を含む基材本体部170と、額縁覆部19と基材本体部170との間に設けられ下シール材22が嵌合される、下枠14における下シール材嵌合部18と、が一体に形成されている。下枠基材141は、基材本体部170に、後述する加工が施されて
図4(b)に示すような下枠14となる。
【0023】
基材本体部170は、下シール材嵌合部18と繋がって浴室側に向かって低くなる傾斜面を有する基材傾斜部171と、基材傾斜部171から上方に突出し引戸5を案内するレール17aと、基材傾斜部171から上方に突出し袖部3のパネル体21を保持するパネル下保持部15となる保持部加工部141aと、を有している。そして、パネル下保持部15は、下枠本体部17の見込み方向におけるほぼ中央に形成されており、レール17aは、下シール材嵌合部18とパネル下保持部15との間にて、見込み方向における中央より脱衣室側に、上方に突出させて設けられている。
【0024】
保持部加工部141aは、基材傾斜部171から上方に立ち上がり、見付け方向に沿う面を有し鉛直板部15aとなる部位と、鉛直板部15aの上端から浴室側に延出されて上延出部15bとなる部位と、上延出部15bの浴室側に設けられ下方に窪みパネル体21の下端が収容されるパネル体収容部15cとなる部位とを有している。以下の説明では、保持部加工部141aの説明であっても、鉛直板部15aとなる部位を鉛直板部15a、上延出部15bとなる部位を上延出部15b、パネル体収容部15cとなる部位をパネル体収容部15c、と称して説明する。
【0025】
下枠本体部17のパネル下保持部15の脱衣室側には、パネル下保持部15の鉛直板部15aがその一部をなす第1溝部17bが下方に窪ませて設けられており、パネル下保持部15の浴室側には、第1溝部17bの底部17cと同じ高さをなす浴室側平面部17dが設けられている。浴室側平面部17dには、下方に窪む第2溝部17eが設けられている。第2溝部17eは、浴室側平面部17dに設けられた開口部17fが下方に位置する内部空間より狭く形成されており、カバー部材40の嵌合片40bが嵌合されるように形成されている。第1溝部17bの底部17cには、見付け方向に沿う凹凸部が設けられている。
【0026】
開口部17fを形成する脱衣室側の縁部17kより僅かに脱衣室側の位置から上方に突出させて鉛直板部15a、すなわちパネル下保持部15が形成されている。すなわち、第1溝部17bと第2溝部17eとは、パネル下保持部15(切除された部位では切断面14a)の、見込み方向における両側に隣接させて設けられている。
【0027】
下枠本体部17のレール17aより脱衣室側は、ほぼ水平な面をなしており、下枠本体部17のレール17aと第1溝部17bとの間、及び、浴室側平面部17dより浴室側は、脱衣室側から浴室側に向かって漸次低くなるような傾斜を有する、脱衣室側傾斜面17gと浴室側傾斜面17hとが設けられている。
【0028】
下枠基材141は、
図4(a)に示すように、基材本体部170の見付け方向における中央付近にて第1溝部17bより浴室側の部位のうち鉛直板部15aの一部を残して切除され縦骨20が組み込まれる切取凹部141bが設けられ、切取凹部141bより袖部3側では第2溝部17eより浴室側の部位が切除され、切取凹部141bより浴室出入口2側では保持部加工部141aが鉛直板部15aの下端から切除されて
図4(b)に示すような下枠14となる。すなわち、保持部加工部141aは、切取凹部141bが設けられたときに、切取凹部141bを挟んで浴室出入口2側と袖部3側とに分断され、残った保持部加工部141aのうちの浴室出入口2側が切除されることにより残った部位がパネル下保持部15となる。下枠14には、切取凹部141bより浴室出入口2側に、カバー部材40及び連通部材51が取り付けられて、縦骨20が接合される。
【0029】
縦骨20は、
図2に示すように、水平断面が長方形状をなす中空の縦骨本体20aと、縦骨本体20aの浴室出入口2に臨む面が脱衣室側に延出され、その先端が右の縦枠12側に延出された脱衣室側壁部20bと、脱衣室側壁部20bの右の縦枠12側に設けられてパネル体21の左側端部を収容するパネル体保持部20cと、脱衣室側壁部20bから脱衣室側に突出して縦シール材32が嵌合される縦シール材嵌合部20dと、縦シール材嵌合部20dの脱衣室側の端部から右縦枠方向に延出された引き寄せ片20gとを有している。
【0030】
縦骨本体20aの浴室に臨む面20hは、浴室の内壁33、及び、下枠14の浴室側の端面17iとほぼ同一平面を形成するように構成されている。
【0031】
脱衣室側壁部20bに設けられた縦シール材嵌合部20dは、脱衣室側壁部20bの浴室出入口2側の端部に、上下方向に沿って、引戸5が有する戸尻框5aの浴室側の面に当接される縦シール材32が嵌合される嵌合溝部20eが、脱衣室側壁部20bから脱衣室側に延出された延出部20fを介して設けられている。
【0032】
パネル体保持部20cは、パネル体21の浴室側の面21bが当接される面材当接部20iと、面材当接部20iの浴室出入口2側に設けられパネル体21を脱衣室側から支持する押縁24が嵌合される押縁嵌合部20jと、を有している。このパネル体保持部20cは、右縦枠12に設けられて左右方向が反転した対称形状に形成された面材支持部12aとともに、押縁24が嵌合されてパネル体21を支持している。
【0033】
縦骨20は、下端において、縦骨本体20a、及び、パネル体保持部20cが、嵌合溝部20e、及び、引き寄せ片20gより下方に長く形成されている。そして、下枠14には縦骨20がシール材(不図示)を介して接合されている。また、縦骨20の脱衣室側壁部20bより脱衣室側の部位の下端、すなわち、縦シール材嵌合部20d、延出部20f、引き寄せ片20gの下端は、第1溝部17bの上方に間隔を隔てて配置されており、袖部3側の脱衣室側に進入した水が第1溝部17bに至った際に、第1溝部17bの水を浴室出入口2側に排出するように構成されている。
【0034】
そして、縦骨20の縦シール材嵌合部20d、延出部20f、引き寄せ片20gの下には、第1溝部17bの水を浴室出入口2側に案内し、袖部3の脱衣室側と浴室出入口2側とを連通する連通流路50を形成する連通部材51が、切取凹部141bに残された鉛直板部15aの脱衣室側から浴室出入口2の浴室側平面部17dの縦骨20の脇にわたって設けられている。また、浴室側平面部17dの連通部材51と左の縦枠11との間にはカバー部材40が設けられている。
【0035】
カバー部材40は、縦骨20より左側に形成された保持部加工部141aが鉛直板部15aの下端から切除された部位に取り付けられる。下枠14のパネル下保持部15が切除された部位は、第1溝部17bの底部17cと浴室側平面部17dとが平面をなしており、カバー本体部40aは、下面から下方に突出された嵌合片40bが第2溝部17eに嵌合されたときに、第1溝部17bと第2溝部17eとに跨るとともに切断面14aを覆うように配置される。このとき、カバー本体部40aの上面40cは、脱衣室側傾斜面17gと浴室側傾斜面17hとが繋がるような傾斜をなしている。
【0036】
連通部材51は、前述したように縦骨20の脱衣室側壁部20bより脱衣室側の部位の下から浴室出入口2側にわたって設けられる樹脂製の部材である。連通部材51は、
図5に示すように、縦骨20の縦シール材嵌合部20d、延出部20f、引き寄せ片20gの下に設けられて第1溝部17bの底部17cに被せるように配置される連通部52と、連通部52の浴室出入口2側の端部から延出されて連通部52から排出される水を浴室出入口2側にて浴室に案内する案内経路部53と、連通部52の浴室出入口2側の端部と一体をなし、縦骨20の、浴室出入口2に臨む面に当接される縦骨当接部54と、を有している。すなわち、連通部材51にて形成され連通流路50は、縦骨20の脱衣室側にて見付け方向に沿い、縦骨20の浴室出入口2側にて見込み方向に沿って浴室に向かうように形成されている。
【0037】
連通部52は、見込み方向に互いに間隔を隔てた一対の側壁部52aと一対の側壁部52aの上端を繋いで一対の側壁部52a間を覆う上面部52bとを有し、見込み方向に沿う縦断面が、下方に開放されたコ字状をなす、見付け方向に沿ったトンネル形状をなしている。この連通部52の、見込み方向の幅は第1溝部17bの見込み方向の幅とほぼ同じ幅に形成されており、連通部52が第1溝部17bに配置されると、一対の側壁部52a52aの外面が、第1溝部17bの内面(一方の内面は鉛直板部15a)に当接される。連通部52の、見付け方向における一方の端部は、縦骨20が有する引き寄せ片20gより右の縦枠12側に位置しており、他方の端部は、縦骨当接部54に設けられる切欠部54aをなしている。
【0038】
案内経路部53は、切欠部54aの脱衣室側の縁からは浴室出入口2側に延出するとともに、一対の側壁部52aの間隔とほぼ同じ間隔を、縦骨当接部54との間に水の通路を確保して浴室側に延出されたガイド部53aと、ガイド部53aと縦骨当接部54とを連結するともに、第2溝部17eに挿入される連結部53bとを有している。
【0039】
連通部材51は、第1溝部17b及び第1溝部17bと同一面をなす浴室側平面部17dの上に載置される。このため、連通部52、縦骨当接部54、案内経路部53の連結部53bを除く部位は、下端が同一平面に形成されており、連結部53bが第2溝部17eに挿入されると、連結部53bの上面53cが、第2溝部17eの脱衣室側の上面と浴室側の上面とを平坦に繋ぐように構成されている。このため、連通部材51は、袖部3の脱衣室側に至り第1溝部17bに収容された水を連通部52から案内経路部53を通して浴室出入口2側に移動させ、浴室出入口2側にて第1溝部17bから第2溝部17eを覆う連結部53b上を通して浴室側に移動させて排水する連通流路50を形成している。
【0040】
連通部材51の連通部52が有する上面部52bの上面には、縦骨20に設けられた縦シール材嵌合部20d、延出部20f、引き寄せ片20g、及び、縦シール材32の下端が当接されている。
【0041】
引戸5は、戸先框5bと戸尻框5aと、戸先框5bと戸尻框5aとの間に介在されて戸先框5bと戸尻框5aとの上端部同士及び下端部同士をそれぞれ接合する上框5c及び下框5dとが、面材5eを囲むように框組みされて構成されている。引戸5の下框5d内には、浴室側から脱衣室側に向かって突出し、レール17aの浴室側の部位に当接されるシール材23が設けられ、引戸5の戸先框5b及び戸尻框5aの下端には、レール17aに支持されつつ転動するローラー61を有する戸車ユニット60がそれぞれ設けられている。
【0042】
戸車ユニット60は、
図6に示すように、ローラー61と、ローラー61を回動自在に保持するホルダー62とを有する戸車ユニットとしてのローラーユニット63と、戸先框5bと戸尻框5aの下端に嵌合され保持され、ローラーユニット63が上下方向に移動可能に収容されるハウジング68と、を有している。
【0043】
ハウジング68は、戸先框5bと戸尻框5aの小口を覆うように嵌合され、下方に開放されたローラーユニット収容部68aを備え、ローラーユニット収容部68aには上部に備わられ、戸先框5bと戸尻框5aの外側から回動可能なビス68bによりローラーユニット63を引戸5に対して上下方向に移動させることが可能な、ローラーユニット63の調整部材としての位置調整機構69が設けられている。このため、引戸5がレール17aに支持された状態で位置調整機構69のビス68bを回動させることにより、引戸5の下枠14に対する上下方向の位置を調整することが可能である。
【0044】
戸尻框5aに設けられる戸車ユニット60には、ローラーユニット63のホルダー62の下端に、レール17aより浴室側であって、第1溝部17bより脱衣室側に位置する脱衣室側傾斜面17gに当接される軟質樹脂製の脱衣室側シール材62aと、見込み方向に沿う軸を中心に回動可能に設けられ、第1溝部17bに挿入される揺動部材64が設けられている。また、ホルダー62には、揺動部材64がほぼ鉛直をなす姿勢から浴室出入口2と反対方向への回動を規制するストッパー62bが設けられている。
【0045】
揺動部材64は、回動軸をなし硬質樹脂でなる軸部64aと、第1溝部17bに挿入される軟質樹脂でなる遮断部材としての挿入片64bとが一体に二色成型されている。挿入片64bは、第1溝部17bと交差する方向に沿って配置されるヒレ状の部位であり、その周縁が第1溝部17bの内面、すなわち見込み方向において対向する2つの側面と底部17cとに接触するように構成されている。
【0046】
揺動部材64は、引戸5とともに、挿入片64bの周縁が第1溝部17bの内面に摺接しつつ見付け方向に移動する。そして、
図7、
図8に示すように、引戸5にて浴室出入口2を閉塞した際に、挿入片64bが連通部材51の脱衣室側の端、すなわち、連通部52の脱衣室側の入口51aに当接して、連通部52の脱衣室側の入口51aを閉塞して連通流路50を遮断するように構成されている。引戸5が浴室出入口2を閉塞し、挿入片64bが連通部52を閉塞した状態では、揺動部材64はストッパー62bに規制されて回動しないように構成されている。このため、引戸5が浴室出入口2を閉塞した状態では、挿入片64bにより連通部52が閉塞されて連通流路50が遮断された状態が維持される。
【0047】
本実施形態の浴室建具1によれば、浴室と脱衣室とを連通し、脱衣室側に進入した水を浴室に排出するは、引戸5にて浴室出入口2を閉じることにより連通部材51の連通部52の脱衣室側の入口51aが挿入片64bにより閉塞されて連通流路50が遮断されるので、引戸5の閉塞時には脱衣室側に水は進入し難い。このため、脱衣室側に進入した水を浴室に排出する連通流路50を有しつつも引戸5の閉塞時には連通流路50から脱衣室側に水が進入しにくい浴室建具1を提供することが可能である。
【0048】
また、引戸5により浴室出入口2が閉塞されたときに、引戸5に設けられた挿入片64bが連通部52の脱衣室側の入口51aを閉塞するので、引戸5にて浴室出入口2を閉塞した際には連通部52の脱衣室側の入口51aを確実に閉塞して連通流路50を遮断することが可能である。また、挿入片64bを引戸5に設けることにより、特段の機構を設けたり制御することなく、簡単且つ安価に連通部52の脱衣室側の入口51aを閉塞して連通流路50を遮断することが可能である。
【0049】
また、挿入片64bは、戸車ユニット60の、引戸5を支持するローラー61を備えたローラーユニット63に設けられている。すなわち、引戸5を支持するローラー61とともにローラーユニット63をなしているので、ローラー61と挿入片64bとの相対位置は不変である。このため、ローラー61により引戸5が支持されている状態では、常に一定の位置に挿入片64bが位置している。このため、位置調整機構69によりローラーユニット63のハウジング68に対する位置が調整されたとしても、挿入片64bにて連通部52の脱衣室側の入口51aを閉塞して連通流路50を遮断することが可能である。すなわち、引戸5の上下方向の位置調整機構69を備えつつも確実に連通部52の脱衣室側の入口51aを閉塞して連通流路50を遮断することが可能である。
【0050】
また、連通部52は下枠14に見付け方向に沿って設けられ、脱衣室側に進入した水を収容する第1溝部17bと浴室とを連通しているので、第1溝部17bに収容された脱衣室側に進入した水を、連通部52を通して浴室に効率良く排出することが可能である。
【0051】
また、引戸5に設けられた挿入片64bは、引戸5が移動する際に、第1溝部17b内を移動するので、第1溝部17b内に収容された水を引戸5の移動とともに連通部52側に移動させることが可能である。このため、より効率良く水を排出することが可能である。
【0052】
また、連通流路50は、縦骨20の脱衣室側にて見付け方向に沿い、縦骨20の浴室出入口2側にて見込み方向に沿って浴室に向かうように形成されているので、袖部3の脱衣室側に進入した水を、浴室出入口2と見付け方向に隣接する袖部3を形成する縦骨20の脱衣室側から浴室出入口2側を通して浴室側に確実に排出することが可能である。
【0053】
上記実施形態においては、連通部52の脱衣室側の入口51aを閉塞する挿入片64bを引戸5側に設けた例について説明したが、
図9に示すように、連通部52の脱衣室側の入口51aを閉塞して連通流路50を遮断する遮断部材としての閉塞部材65を連通部材51側に設けてもよい。この場合には、連通部52の脱衣室側の入口51aを閉塞する閉塞部材65を、連通部52の脱衣室側の入口51aに開閉自在に設け、引戸5が開かれている状態では、遮断部材65が入口51aを開放した状態をなすように設けておく。一方、引戸5が有する戸車ユニット60のローラーユニット63に、引戸5にて浴室出入口2を閉塞した際に、閉塞部材65と接触して閉塞部材65を連通部52の脱衣室側の入口51aに押圧させて入口51aを閉塞して連通流路50を遮断するような押圧部66を設けておくことにより、引戸5にて浴室出入口2を閉塞した際には連通部52の脱衣室側の入口51aを確実に閉塞して連通流路50を遮断することが可能である。
【0054】
上記実施形態においては、脱衣室側から見たときに、左側の領域に出入口が設けられ、右側の領域に袖部が設けられている例について説明したが、出入口が右側の領域に設けられ、袖部が左側の領域に設けられていてもよい。
【0055】
上記実施形態においては、袖部を有し、枠体が縦骨によって仕切られた領域に形成される開口を閉塞可能な1枚の引戸を備えた建具を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、複数枚の引戸によって開口を閉塞する建具であっても構わない。また、片引き戸に限らず、引き違い引戸であっても構わない。この場合には、一方の引戸を閉じた状態、すなわち戸先框が縦枠に当接された状態にて、この引戸の召合せ框と枠体とにて形成される開口を閉塞可能な引戸が備えられていればよい。
【0056】
上記実施形態においては、連通流路50を、上面部52bを有する連通部材にて形成する例について説明したが、連通流路50は、上方が塞がれていなくともよい。
【0057】
上記実施形態においては、浴室建具を例に挙げて説明したが、建具を備える場所は浴室に限らず、例えば、玄関、勝手口や、サービスヤード、サンルーム、テラスの出入口を備える部位であっても構わない。
【0058】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。