【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板の周端面に当接する保持部材を有する基板保持手段と、前記基板保持手段を所定の回転軸線まわりに回転させる回転手段と、前記基板保持手段に保持されている基板の主面に接して、当該主面をスクラブ洗浄するスクラブ部材と、
前記回転手段によって前記
基板保持手段が回転されることによって当該基板保持手段に保持されている基板の周縁領域
が通るように設定した洗浄対象域を有し、運動エネルギーを付与した液体を前記洗浄対象域に供給することにより、当該液体が持つ運動エネルギーによって前記基板の周縁領域を洗浄する周縁領域洗浄手段と、前記周縁領域洗浄手段によって前記基板の周縁領域を洗浄している期間に、前記基板の回転中心および前記洗浄対象域を通る移動経路に沿って、前記保持部材よりも回転半径方向内方の範囲で、前記スクラブ部材を前記基板の主面に当接させながら、前記基板の回転半径方向に沿って移動するスクラブ部材移動手段と、を含
み、前記スクラブ部材が前記洗浄対象域を通るときに、前記スクラブ部材の前記基板の主面に当接する部分の全体が前記洗浄対象域内に入る、基板処理装置である。
【0007】
この構成によれば、回転手段によって基板保持手段を回転軸線まわりに回転させながら、スクラブ部材移動手段によってスクラブ部材を基板の主面に当接させつつ移動することにより、基板の主面をスクラブ洗浄することができる。基板保持手段は基板の周端面に当接する保持部材を有しているので、基板の主面に物理的に接触するスクラブ部材は、保持部材と干渉しないように、保持部材よりも回転半径方向内方の範囲で移動させられる。一方、基板の周縁領域を洗浄するために、周縁領域洗浄手段が設けられていて、スクラブ部材による基板の主面の洗浄と併行して、基板の周縁領域が洗浄される。周縁領域洗浄手段は、運動エネルギーを付与した液体を洗浄対象域に供給するように構成されており、それによって、基板の周縁領域を洗浄する。したがって、保持部材と物理的に干渉する部材を用いることなく、基板の周縁領域において保持部材が当接している部分の近くの領域をも良好に洗浄をすることができる。このようにして、基板の主面のスクラブ洗浄と、基板の周縁領域の非接触洗浄を同時並行して行うことができるので、短時間で基板表面の全域を隈無く洗浄することができる。
【0008】
さらに、この発明では、スクラブ部材の移動経路は、基板の回転中心と、周縁領域洗浄手段による洗浄対象域とを通るように設定されている。そのため、スクラブ部材が洗浄対象域に達したときに、運動エネルギーが付与された液体にスクラブ部材が接し、それによって、スクラブ部材が洗浄される。すなわち、基板の表面から擦り取られた異物がスクラブ部材に蓄積されたとしても、その異物は、周縁領域洗浄手段の洗浄対象域において、液体の持つ運動エネルギーによってスクラブ部材から離脱する。それによって、スクラブ部材が清浄な状態となる。とくに、スクラブ部材を、基板の回転中心と洗浄対象域との間で複数回繰り返し往復させれば、スクラブ部材を定期的に洗浄できるから、スクラブ部材を清浄な状態に保持しながら、基板の主面をスクラブ洗浄することができる。これにより、清浄度の高い基板洗浄が可能となり、加えて、スクラブ部材の交換周期を長くして、ランニングコストを抑制することができる。しかも、スクラブ部材の洗浄ために専用の洗浄ユニットを必要としないから、基板処理装置の構成を簡単にでき、装置コストも低減することができる。
【0009】
なお、基板の回転中心とは、基板の主面と回転軸線との交点である。回転半径とは、回転軸線まわりに基板が回転するときに当該基板の主面が通過する領域によって定義される円の半径である。回転半径方向とは、回転半径に沿う方向であり、回転中心から基板の主面に沿う放射方向である。回転半径方向内方とは、或る基準点よりも回転中心に近い方向である。逆に、回転半径方向外方とは、或る基準点よりも回転中心から離れる方向である。
【0010】
スクラブ部材等は、基板の主面に直接的に接触して、基板の表面の異物を擦り取る部材であって、スポンジ状のものでもよく、刷毛状のもの(ブラシ)であってもよい。
「スクラブ部材を回転半径方向に沿って移動する」とは、スクラブ部材の回転半径方向位置を変更することをいい、スクラブ部材の移動軌跡が一つの回転半径に厳密に一致することを意味しているわけではない。より具体的には、スクラブ部材の基板主面上における移動経路は、基板の回転中心を通る円弧状の軌跡を描いてもよい。このような円弧状の軌跡に沿ってスクラブ部材を移動させる場合に、スクラブ部材の移動範囲は回転中心の一方側の範囲に制限されてもよいし、回転中心の両側の範囲に渡ってもよい。
【0011】
周縁領域洗浄手段によって洗浄を受ける基板の周縁領域は、基板の回転中心からその回転半径の半分よりも外側に設定されていてもよく、少なくとも基板の周縁を含む。周縁領域洗浄手段の洗浄対象域は、このような周縁領域を専ら洗浄するように設定されていてもよい。外周部(半径の二分の1よりも外側)をスキャンしてもよいし、エッジ部のみのスキャンでもよい。
【0012】
スクラブ部材の移動および基板の回転によって洗浄を受ける基板主面上のスクラブ洗浄領域は、基板の回転中心を中心とし基板の回転半径の半分よりも大きな半径を有する円形の領域である。スクラブ洗浄領域は、周縁領域洗浄手段によって洗浄される周縁領域と接していることが好ましく、回転半径方向に関して重複部分を有していることがより好ましい。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記周縁領域が、前記保持部材に当接している領域を含む、請求項1に記載の基板処理装置である。この構成によれば、周縁領域洗浄手段によって、基板表面の保持部材に当接している領域に、運動エネルギーが付与された液体が供給されるので、保持部材に当接している領域の洗浄が可能になる。それにより、基板表面の全域を、洗い残しを生じることなく隈無く洗浄できる。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記周縁領域が、基板の周端面を含む、請求項1または2に記載の基板処理装置である。この構成によれば、周縁領域洗浄手段によって、基板の周端面の領域まで洗浄することができる。それにより、基板の周端面に異物を残すこと無く、基板の表面を隈無く洗浄することができる。基板は、互いに平行な一対の主面(表面および裏面)を有し、これらの一対の主面が周端面を介して結合されている。すなわち、周端面とは、基板の一対の主面の周縁同士の間を全周に渡って結合する面(側面)である。周端面は、回転軸線に平行な面であってもよいし、回転軸線に対して湾曲した湾曲面(たとえば回転半径方向外方に膨出した湾曲面)であってもよい。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記周縁領域洗浄手段が、液体を前記洗浄対象域にスプレーするスプレーノズルを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、スプレーノズルから洗浄対象域に液体(液滴)を吹きつけることによって、基板の周縁領域を洗浄することができる。さらに、スクラブ部材が洗浄対象域に達したときに、スクラブ部材に対して液体(液滴)がスプレーされ、それによって、スクラブ部材に付着した異物が除去される。これにより、スクラブ部材を洗浄することができる。
【0016】
「液体をスプレーする」とは、液滴となった液体が気体流によって洗浄対象域に運ばれることをいう。より具体的には、微小な液滴が気体中にほぼ均一に分散した気液混合流体を洗浄対象域に吹き付けることをいう。
スプレーノズルの一つの具体例は、気体と液体とを混合することによって気液混合流体を生成し、気液混合流体を噴射(液滴を噴射)する二流体ノズルである。二流体ノズルとしては、ノズルボディ内で気体と液体とを混合して液滴を生成する内部混合型と、ノズルボディ外で気体と液体とを衝突させてそれらを混合して液滴を生成する外部混合型とがある。いずれの型の二流体ノズルも適用可能である。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記スプレーノズルが、前記基板保持手段に保持されている基板の周端面よりも回転半径方向外方に吐出口を有している、請求項4に記載の基板処理装置である。この構成によれば、スプレーノズルは、基板の周端面よりも回転半径方向外方に設けられた吐出口から、基板の周縁領域に設定された洗浄対象域に向けて液体をスプレーする。したがって、スプレーされた液体は、基板主面の周縁付近の領域だけでなく、基板の周端面にも達して、この周端面に付着している異物を脱落させる。これによって、基板の周端面まで洗浄することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記スプレーノズルが、前記基板保持手段に保持されている基板の周端面に吐出口を向けて配置されている、請求項4または5に記載の基板処理装置である。この構成によれば、スプレーノズルの吐出口が、基板の周端面に向けられているので、基板の周端面に付着した異物を確実に洗浄して除去することができる。すなわち、基板の周端面に付着している異物に対して、液滴の運動エネルギーを効率的に伝達できるので、異物の脱落を促進できる。
【0019】
請求項7記載の発明は、前記基板保持手段が、基板を水平に保持するように構成されており、前記スプレーノズルの吐出プロファイルの中心軸が、前記基板の回転半径方向外方から内方に向かうように傾斜している、請求項5または6に記載の基板処理装置である。この構成により、スプレーノズルの吐出口から吐出された液滴は、基板の周端面に比較的大きな角度で入射し、基板の周端面に付着している異物に対して大きな運動エネルギーを与える。これにより、基板の周端面に付着している異物が脱落しやすくなるから、基板の周端面を効果的に洗浄することができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記周縁領域洗浄手段が、超音波振動が付与された液体を前記洗浄対象域に供給する超音波振動液供給手段を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。この構成によれば、超音波振動が付与された液体が洗浄対象域に供給されることにより、基板の周縁領域に付着している異物に対して超音波振動を与えることができる。それによって、異物を基板から脱落させて、非接触で基板の周縁領域を洗浄できる。
【0021】
請求項9記載の発明は、前記超音波振動液供給手段が、超音波振動が付与された液を吐出するノズルを含む、請求項8に記載の基板処理装置である。この構成によれば、超音波振動が付与された液体がノズルから吐出され、その液体が基板の周縁領域に達して、この周縁領域に付着している異物を基板表面から脱落させる。
請求項10記載の発明は、前記超音波振動液供給手段が、前記洗浄対象域に液体を供給する液供給手段と、前記洗浄対象域に供給された液体に前記基板の主面上で超音波振動を付与する超音波振動付与手段とを含む、請求項8に記載の基板処理装置である。
【0022】
この構成によれば、基板主面上の周縁領域に設定された洗浄対象域に液体が供給され、この液体に対して、基板主面上で超音波振動が付与される。より具体的には、基板の周縁領域に液膜が形成されて、この液膜に対して超音波振動が付与されてもよい。この超音波振動が、液膜を介して基板表面の異物に伝搬し、その異物を基板表面から脱落させる。
請求項11記載の発明は、基板の周端面に当接する保持部材を有する基板保持手段で基板を保持し、前記基板保持手段を所定の回転軸線まわりに回転させることによって前記基板を回転させる基板回転工程と、前記基板回転工程と並行して実行され、運動エネルギーを付与した液体を、前記
基板保持手段が回転されることによって当該基板保持手段に保持されている基板の周縁領域
が通るように設定した洗浄対象域に供給することにより、当該液体が持つ運動エネルギーによって前記基板の周縁領域を洗浄する周縁領域洗浄工程と、前記周縁領域洗浄工程と並行して実行され、前記基板の回転中心および前記洗浄対象域を通る移動経路に沿って、前記保持部材よりも回転半径方向内方の範囲で、スクラブ部材を、前記基板の主面に当接させながら前記基板の回転半径方向に沿って移動することにより基板の主面をスクラブ洗浄するスクラブ洗浄工程とを含
み、前記スクラブ部材が前記洗浄対象域を通るときに、前記スクラブ部材の前記基板の主面に当接する部分の全体が前記洗浄対象域内に入る、基板処理方法である。
【0023】
この発明により、請求項1の発明と同様の作用効果を奏することができる。
基板処理方法の発明についても、基板処理装置の発明と同様な変形を施すことができる。