(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他の素子形成領域は、受動素子、能動素子、および前記主表面から前記基板内部領域に達するように延びるp型の基板端子用領域よりなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施の形態に係る半導体装置の概略平面図である。
【
図2】実施の形態1の半導体装置に関して、
図1に示す各形成領域のうち一をエミッタ領域、エミッタ領域と異なる他の一をコレクタ領域と考えた場合の各形成領域の構成を詳細に示す概略断面図である。
【
図3】エミッタ領域の構成の一例を詳細に示す概略断面図である。
【
図4】コレクタ領域の構成の一例を詳細に示す概略断面図である。
【
図5】一実施の形態に係る半導体装置の他素子領域にMISトランジスタが形成された態様を示す概略断面図である。
【
図6】一実施の形態に係る半導体装置の他素子領域にダイオードが形成された態様を示す概略断面図である。
【
図7】一実施の形態に係る半導体装置の他素子領域にn型拡散抵抗が形成された態様を示す概略断面図である。
【
図8】関連技術の第1例に係る半導体装置の概略平面図である。
【
図9】関連技術の第2例に係る半導体装置の概略平面図である。
【
図10】
図8の半導体装置のエミッタに印加される電圧と、Ic/Ieとの関係を示すグラフである。
【
図11】
図9の半導体装置のエミッタに印加される電圧と、Ic/Ieとの関係を示すグラフである。
【
図12】
図2および
図8の半導体装置のエミッタに印加される電圧と、Ic/Ieとの関係を示すグラフである。
【
図13】関連技術の第1例に係る半導体装置の、アクティブバリアのp型不純物領域のポテンシャルバリアの大きさを示すシミュレーション結果である。
【
図14】一実施の形態に係る半導体装置の、アクティブバリアのp型不純物領域のポテンシャルバリアの大きさを示すシミュレーション結果である。
【
図15】実施の形態2に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図16】
図15のXVI−XVI線に沿う部分における概略断面図である。
【
図17】実施の形態3に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図18】
図17のXVIII−XVIII線に沿う部分における概略断面図である。
【
図19】関連技術の第3例に係る半導体装置の概略平面図である。
【
図20】
図19のXX−XX線に沿う部分における概略断面図である。
【
図21】関連技術の第4例に係る半導体装置の概略平面図である。
【
図22】
図21のXXII−XXII線に沿う部分における概略断面図である。
【
図23】実施の形態4に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図24】
図23のXXIV−XXIV線に沿う部分における概略断面図である。
【
図25】実施の形態5に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図26】
図25のXXVI−XXVI線に沿う部分における概略断面図である。
【
図27】実施の形態6に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図28】
図27のXXVIII−XXVIII線に沿う部分における概略断面図である。
【
図29】実施の形態7の第1例に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図30】実施の形態7の第2例に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図31】実施の形態7の第3例に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図32】実施の形態7の第4例に関する半導体装置の概略平面図である。
【
図33】一実施の形態の要点を抽出した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず半導体基板SUBの主表面における各素子形成領域の配置について
図1を用いて説明する。
【0011】
図1を参照して、本実施の形態の半導体装置DEVは、主表面を有する半導体基板SUBに、ドライバの形成領域と、プリドライバの形成領域と、アナログ回路の形成領域と、ロジック回路の形成領域と、入出力回路I/Oの形成領域と、電源回路の形成領域とを有している。これらの形成領域のそれぞれは、たとえばトレンチ分離構造よりなる素子分離構造により半導体基板SUBの主表面において互いに分離されている。
【0012】
図2を参照して、半導体装置DEVは半導体基板SUBの主表面に形成されている。半導体基板SUBの内部には、p型不純物領域PSR(p型の基板内部領域)が形成されている。半導体基板SUBのp型不純物領域PSR上の主表面MSには、エミッタ領域と、コレクタ領域と、アクティブバリア領域と、他素子領域とが形成されている。
【0013】
図3は
図2中の点線で囲まれた領域「III」における構成を詳細に示したものである。
図2および
図3を参照して、半導体基板SUBの主表面にはエミッタ領域が形成されており、エミッタ領域にはn型不純物領域NRを有するエミッタEMTが形成されている。エミッタEMTにはエピタキシャル層EPと、高耐圧のMIS(Metal Insulator Semiconductor)トランジスタとが含まれている。なお
図2においては、図示の簡略化のため、エミッタEMTの具体的な構成は省略されており、その具体的構成は
図3に示されている。
【0014】
図3を参照して、p型不純物領域PSRとpn接合を構成するように、n型のエピタキシャル層EP(NR)と、n
-拡散領域NNRと、n型拡散領域N1とを有するn型の領域が形成されている。
【0015】
n型のエピタキシャル層EP上においてn
-拡散領域NNRと隣接するようにp
-拡散領域PPRが形成されており、p
-拡散領域PPR内の半導体基板SUBの主表面には、n型拡散領域N1とp型拡散領域P1とが互いに隣り合って形成されている。
【0016】
エミッタEMTのMISトランジスタの各々は、ソース領域SOとしてのn型拡散領域N1(接地端子GNDと接続)と、ドレイン領域DRとしてのn型拡散領域N1(出力端子と接続)と、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEとを主に有している。
ソース領域SOはp
-拡散領域PPRの内部に形成されており、ドレイン領域DRはn
-拡散領域NNRの内部に形成されている。またソース領域SOはp型拡散領域P1と隣り合うように形成されている。ゲート電極GEは、ソース領域SOとドレイン領域DRとに挟まれる半導体基板SUBの主表面上に、ゲート絶縁膜GIを介在して形成されている。
【0017】
また半導体基板SUBの主表面上には層間絶縁膜FIが形成されており、半導体基板SUBの内部においてMISトランジスタの周囲はトレンチ分離構造TIと呼ばれる素子分離構造に囲まれている。トレンチ分離構造TIは、トレンチTRと呼ばれる溝の内部にたとえばシリコン酸化膜などの埋め込み絶縁層EIが埋め込まれた構成を有する。トレンチ分離構造TIは、MISトランジスタの形成領域を他と電気的に分離する。なお
図2においては層間絶縁膜FIの図示は省略されている。
【0018】
MISトランジスタのソース領域SOにはGND電位が印加可能に構成されており、MISトランジスタのドレイン領域DRは、出力端子(たとえば半導体チップのボンディングパッド)に電気的に接続されている。この出力端子は、外部装置の誘導性負荷と電気的に接続される場合がある。
【0019】
再び
図2を参照して、p型不純物領域PSR上の半導体基板SUBの主表面MSにはコレクタ領域が形成されており、コレクタ領域にはn型不純物領域を有するコレクタCTRが形成されている。
図2および
図4を参照して、コレクタCTRとしてはたとえば
図1のロジック回路などの制御回路が形成されており、たとえば複数のMISトランジスタを含んでいる。なお
図2においては、図示の簡略化のため、コレクタCTRの具体的な構成は省略されており、その具体的構成は
図4に示されている。
図4は
図2中の点線で囲まれた領域「IV」における構成を詳細に示したものである。
【0020】
エミッタCTRとしてのMISトランジスタはソース領域SOと、ドレイン領域DRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEとを主に有している。ソース領域SOとドレイン領域DRとは半導体基板SUBの主表面に互いに距離を隔てて配置されている。ゲート電極GEは、ソース領域SOとドレイン領域DRとに挟まれる半導体基板SUBの主表面上にゲート絶縁膜GIを介在して形成されている。MISトランジスタは、p型不純物領域PSRの上に形成されるn型エピタキシャル層EP(NR)の内部に形成される。ゲート電極GEには制御用電圧CVが印加される。
【0021】
以上に述べたエミッタ領域およびコレクタ領域に関して、
図1〜
図2を参照して、たとえば
図1のドライバの形成領域は、出力トランジスタが形成されており、これは
図2のエミッタ領域に相当する。たとえば
図1のロジック回路の形成領域、I/O回路の形成領域は、
図2のコレクタ領域に相当する。また、その場合、ドライバの形成領域とロジック回路との間に形成されたアナログ回路の形成領域は、
図2の他素子領域に相当する。ただし
図1における各形成領域の配置はあくまで一例であるため、エミッタ領域およびコレクタ領域として、さまざまな組み合わせが存在し得る。またエミッタ領域とコレクタ領域との双方を、隣り合うドライバ形成領域と考えてもよい。
【0022】
p型不純物領域PSR上の半導体基板SUBの主表面MSには、エミッタ領域とコレクタ領域との間に他素子領域(他の素子形成領域)が形成されている。
【0023】
アクティブバリア領域には、n型不純物領域NR1(第1領域)とp型不純物領域PR2(第2領域)とを有するアクティブバリアABR(アクティブバリア構造)が形成されており、n型不純物領域NR1およびp型不純物領域PR2はp型不純物領域PSR上の半導体基板SUBの主表面MSに形成されている。アクティブバリアABRは、p型不純物領域PSR上の主表面MSにおいて、エミッタ領域EMTとコレクタ領域CTRとの間に配置されている。n型不純物領域NR1およびp型不純物領域PR2はp型不純物領域PSRに接続されている。
【0024】
n型不純物領域NR1は、他素子領域とエミッタ領域EMTとの間に配置されており、p型不純物領域PR2は、他素子領域とコレクタ領域CTRとの間に配置されている。つまり他素子領域は、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2との間に挟まれるように形成されている。言い換えればアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とは他素子領域を介在して互いに分離されている。
【0025】
アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とは接続配線によりオーミック接続されており、かつフローティング電位となっている。
【0026】
以上よりアクティブバリア領域としては、アクティブバリアABRのうちn型不純物領域NR1が配置されるアクティブバリア領域1と、アクティブバリアABRのうちp型不純物領域PR2が配置されるアクティブバリア領域2との2つの領域に分離されている。そのためn型不純物領域NR1は
図2の主表面MSに沿う方向(左右方向)に関して他素子領域よりもエミッタ領域に近い側に、p型不純物領域PR2は
図2の主表面MSに沿う方向(左右方向)に関して他素子領域よりもコレクタ領域に近い側に、それぞれ配置されている。
【0027】
さらに
図2を参照して、上記の各領域のほかにさらに基板端子領域が形成されている。基板端子領域には、半導体基板SUBの主表面からp型不純物領域PSRに達するようにp型不純物領域PRを含む領域(タップ部ATD)が形成されている。このp型不純物領域PRには、接地端子が接続されており、これにより半導体基板SUBのp型不純物領域PSRに接地電位が印加可能とされている。したがって
図2においては、主表面MSに沿って、基板端子領域、エミッタ領域、アクティブバリア領域1、他素子領域、アクティブバリア領域2、コレクタ領域が、この順に並んでいる。
【0028】
図5を参照して、他素子領域に形成される素子の第1例として、nチャネル型MISトランジスタが挙げられる。このnチャネル型MISトランジスタはn型のエピタキシャル層EPの内部に形成されており、ソース領域SOと、ドレイン領域DRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEとを主に有している。ソース領域SOは半導体基板SUBの主表面MSに形成されたp型拡散領域P1と、p型拡散領域P1内の主表面MSに形成されたn型拡散領域N1とを有している。ドレイン領域DRはn型のエピタキシャル層EP(NR)と、その内部の主表面MSに形成されたn型拡散領域N1とにより形成される。
図5における左側のソース領域SO、ゲート電極GEと右側のソース領域SO、ゲート電極GEとは同一のドレイン領域DRを共有している。
【0029】
図6を参照して、他素子領域に形成される素子の第2例として、ダイオードが挙げられる。このダイオードはn型のエピタキシャル層EPの内部に形成されており、アノードANと、カソードCDとを主に有している。アノードANは半導体基板SUBの主表面MSに形成されたp型拡散領域P1により、カソードCDはn型拡散領域N1により、それぞれ形成される。
図6における左側のアノードANと右側のアノードANとは同一のカソードCDを共有している。
【0030】
図7を参照して、他素子領域に形成される素子の第3例として、n型拡散抵抗が挙げられる。このn型拡散抵抗はp型不純物領域PRと、その内部の半導体基板SUBの主表面MSに形成されたn型拡散領域N1とにより形成され、端子1と端子2とを有している。
【0031】
なお
図5、
図6、
図7においては上記のトランジスタやダイオードなどの左右側にp型不純物領域PRが形成されている。このp型不純物領域PRには主表面MSからp型不純物領域PSRに達するように延びるp型の基板端子用領域が形成される場合と形成されない場合とがある。このp型の基板端子用領域は
図2の他素子領域におけるp型不純物領域PRと同様のものである。ここではp型不純物領域PRと上記のトランジスタやダイオードなどが形成される領域とを併せて他素子領域という。
【0032】
以上の
図5、
図6および
図7に示すように、他素子領域には抵抗などの受動素子、トランジスタやダイオードなどの能動素子、p型不純物領域PR(半導体基板SUBの主表面からp型不純物領域PSRに達するように延びるp型の基板端子用領域)よりなる群から選択される1つ以上が形成されている。このような素子を有する他素子領域がn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2との間に挟まれることにより、他素子領域を配置するレイアウトの自由度を高めることができる。
【0033】
図5、
図6、
図7ともに、他素子領域はトレンチ分離構造TIで周囲を囲まれることにより、主表面MSにおいて他素子領域と隣り合うアクティブバリア領域1,2と電気的に分離されている。このように他素子領域とアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1(アクティブバリア領域1)との間、および他素子領域とアクティブバリアABRのp型不純物領域PR(アクティブバリア領域2)との間の少なくともいずれかにトレンチ分離構造TI(分離領域)を有している。
【0034】
他素子領域とアクティブバリア領域1,2との間に形成される分離領域としては、たとえば上記のトレンチ分離構造TIのような、主表面MSからp型不純物領域PSRに達するように延びるトレンチTR(溝)と、トレンチTRの内部に埋め込まれたシリコン酸化膜などの絶縁膜とを含むことが好ましい。このようにすれば、他素子領域とアクティブバリア領域1,2との電気的な分離を確実にすることができる。
【0035】
特に、他素子領域がp型の基板端子用領域を含み、かつこれと隣り合う領域がp型不純物領域である場合には、他素子領域と隣のp型不純物領域とを電気的に絶縁するために、両領域の間にトレンチ分離構造TIのような絶縁分離領域が配置されることが好ましい。このため
図2において、他素子領域とアクティブバリア領域2のp型不純物領域PR2との間にはトレンチ分離構造TIが挟まれている。ただし他素子領域がp型の基板端子用領域を含み、かつこれと隣り合う領域がn型不純物領域である場合には、両領域の間に上記のような絶縁分離領域は配置されなくてもよい。これは後述するように、p型領域とn型領域とが接合する部分において、pn接合による分離領域を形成するためである。したがって
図2において、他素子領域とアクティブバリア領域1のn型不純物領域NR1との間にはトレンチ分離構造TIが挟まれていない。
【0036】
次に、一実施の形態の関連技術としての
図8〜
図9を参照しながら、本実施の形態の作用効果について説明する。まず、アクティブバリア構造の動作原理について説明する。
【0037】
図3を参照して、エミッタEMTにおけるMISトランジスタがスイッチングを行なった場合、出力端子に接続される図示されない負荷が誘導性であれば、逆起電力が生じることがある。この場合、MISトランジスタのドレイン領域NRに負電位が印加される。このため、MISトランジスタ形成領域のn型領域N1、NNR、EPとp型領域PSRとのpn接合に順バイアスが印加され、n型領域N1、NNR、EPからp型不純物領域PSRに電子が注入される。
【0038】
図3を参照して、p型不純物領域PSRにおけるp型不純物の濃度が低いため、p型不純物領域PSRの内部においては、進入した電子はホールと再結合を起こしにくい。したがって、p型不純物領域PSRの内部で拡散された電子の多くは、基板端子領域のタップ部ATDに印加された接地電圧により、基板端子領域の方へ引き寄せられる。これはエミッタEMTのn型領域に印加された電圧が負電位となっているため、この負電位よりもタップ部ATDの接地電圧の方が高くなるためである。電子は高い電位側へ移動しようとするため、エミッタ領域のp型不純物領域PSRへ入った電子の多くは、接地電圧の印加された基板端子領域の方へ移動する。
【0039】
しかしp型不純物領域PSRの内部で拡散された電子の一部は、アクティブバリア領域側へ移動する。アクティブバリア領域1へ移動した電子はアクティブバリアを構成するn型不純物領域NR1に自然に取り込まれる。
【0040】
ここで、アクティブバリア領域のn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とはオーミック接続されているため、n型不純物領域NR1に取り込まれた電子の一部は、配線で短絡したp型不純物領域PR2から供給されるホールと再結合する。するとホールを供給したp型領域は電位が低下する。アクティブバリア領域のp型不純物領域PR2の電位が低下すると、p型不純物領域PSRに注入された電子は電位の低下したp型不純物領域PR2よりもコレクタCTR側(下流側)に進みにくくなる。これにより、アクティブバリア領域からコレクタCTRに電子が到達しにくくなる。したがって、コレクタ領域に形成されるロジック回路などのMISトランジスタに当該電子が進入して、MISトランジスタが誤動作する不具合の発生を抑制することができる。
【0041】
ここでアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1は、p型不純物領域PR2よりもエミッタ領域に近い側に配置されている。このため、n型不純物領域NR1がp型不純物領域PR2側への電子の進入を抑制する効果を高めることができる。
【0042】
次に
図8〜
図9を参照して、一実施の形態の関連技術としての半導体装置について説明する。
【0043】
図8を参照して、関連技術の第1例に係る半導体装置は、
図2に示す一実施の形態の半導体装置と比較して、アクティブバリア領域の構成において異なっている。すなわちアクティブバリア領域を構成するn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とが互いに接するように隣り合っており、アクティブバリア領域の全体が他素子領域よりもエミッタ領域に近い側に配置されている。
【0044】
アクティブバリアABRのp型不純物領域PR2と他素子領域のp型不純物領域PRとの間には、両者を主表面において互いに電気的に分離するためのトレンチ分離構造TIが形成されている。その他の点においては
図2と基本的に同様であるため、
図8において同一の構成要素に対しては同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0045】
図9を参照して、関連技術の第2例に係る半導体装置は、
図2に示す一実施の形態の半導体装置と比較して、アクティブバリア領域の構成において異なっている。すなわちアクティブバリア領域を構成するn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とが互いに接するように隣り合っており、アクティブバリア領域の全体が他素子領域よりもコレクタ領域に近い側に配置されている。その他の点においては
図2と基本的に同様であるため、
図9において同一の構成要素に対しては同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0046】
次に
図10〜
図12を参照しながら、一実施の形態の半導体装置の作用効果について説明する。
【0047】
図10、
図11のグラフの横軸はそれぞれ
図8(関連技術の第1例)、
図9(関連技術の第2例)に示す半導体装置のエミッタEMTに印加される(負の)電位を示し、縦軸のIc/Ieはエミッタ電流の大きさに対するコレクタ電流の大きさの比を示している。すなわち縦軸が示す値が小さいほど、コレクタへの電子の流入を抑制する効果が高く、アクティブバリアABRの効果が大きいことを意味している。また各グラフ中の「GND電位」はアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とを接続する配線の電位を0Vに固定した場合のデータを示しており、「フローティング電位」はアクティブバリアABRの同電位をフローティング電位とした場合のデータを示している。なおアクティブバリアABRの電位が0Vの場合は、アクティブバリアとしての効果は得られないが、「フローティング電位」とした場合のアクティブバリアの効果との比較の為に、記載している。
【0048】
また
図12のグラフの横軸、縦軸についてはそれぞれ
図10および
図11のグラフの横軸、縦軸と同様であり、上記の「フローティング電位」のデータを示している。なお
図10〜
図12のいずれのデータにおいても、コレクタCTRおよびタップ部ATDの電位は0Vに固定されている。
【0049】
図10を参照して、
図8のようにアクティブバリアABRの全体が他素子領域よりもエミッタ領域に近い側に配置された場合、アクティブバリアABRに接地電位が固定された場合のグラフGG1と、アクティブバリアABRがフローティング電位である場合のグラフGF1との、縦軸の示す値の差が比較的小さい。その結果グラフGF1において、横軸の値にかかわらず縦軸の値が0.01以上と比較的大きくなっている。これはアクティブバリアABRのp型不純物領域PRがコレクタCTRから離れているため、コレクタCTRへの電子の流入を抑制する効果が弱くなるためと考えられる。
【0050】
図11を参照して、
図9のようにアクティブバリアABRの全体が他素子領域よりもコレクタ領域に近い側に配置された場合、
図10と比較してアクティブバリアABRに接地電位が固定された場合のグラフGG2と、アクティブバリアABRがフローティング電位である場合のグラフGF2との、縦軸の示す値の差が大きくなっている。その結果グラフGF2において、横軸の値が大きくなったときに縦軸の値が0.002程度まで下がっている。このことは
図9の構成においては
図8の構成に比べてアクティブバリアABRが有効に作用していることを意味する。
【0051】
図12を参照して、
図2の一実施の形態の半導体装置のアクティブバリアABRをフローティング電位とした場合のグラフGF3と、
図10のグラフGF1とを比較することにより、一実施の形態の半導体装置は各関連技術の半導体装置に比べてアクティブバリアABRの作用効果が非常に大きいことが分かる。縦軸の値は最小で約2×10
-5程度にまで低下している。
【0052】
たとえば
図8に示す関連技術の第1例のように、アクティブバリアABRの全体をエミッタEMTの近くに配置すれば、n型不純物領域NR1が電子を取り込む効果は高められるが、コレクタCTRから離れているために、p型不純物領域PR2の電子に対するポテンシャルバリアとしての効果が弱くなる。一方、たとえば
図9に示す関連技術の第2例のように、アクティブバリアABRの全体をエミッタEMTの近くに配置すれば、p型不純物領域PR2の電子に対するポテンシャルバリアとしての効果は高められるが、エミッタEMTから離れているために、n型不純物領域NR1が電子を取り込む効果が弱くなる。電子を取り込む効果が弱くなるため、p型不純物領域PR2のポテンシャルバリアの電位低下が不十分になる。このように他素子領域の存在がアクティブバリアABRとエミッタEMTまたはコレクタCTRとを引き離すことにより、アクティブバリアの効果が弱くなることがある。
【0053】
これらに対して
図2に示す一実施の形態においては、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2との間に他素子領域を配置し、n型不純物領域NR1をエミッタEMTの近くに、p型不純物領域PR2をコレクタCTRの近くに、それぞれ配置している。このようにすれば、他素子領域が存在する場合であってもそのことに起因してアクティブバリアABRの効果が弱められることなく、アクティブバリアABRの効果をより高めることができる。これはn型不純物領域NR1がエミッタEMTに近いために電子を取り込む効果が高められ、かつp型不純物領域PR2がコレクタCTRに近いためにポテンシャルの電位を低下し、電子のコレクタCTR側への移動を抑制する効果を高めることができるためである。
【0054】
図13および
図14を参照して、一実施の形態においては、関連技術と比較して、アクティブバリアABRのp型不純物領域PR2が形成するポテンシャルバリア(電位が低く電子の侵入を抑える領域)が大きく広がっていることが分かる。これは、
図13の構成の場合は、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1がp型不純物領域PR2に隣り合うように接しており、両者の距離が非常に近いため、ポテンシャルバリアによりn型不純物領域NR1への電子の流入が抑制され、その結果p型不純物領域PR2のポテンシャルの低下が抑制されているためと考えられる。
【0055】
(実施の形態2)
図15および
図16を参照して、本実施の形態は、
図2の実施の形態1と比較して、基板端子領域およびタップ部ATDの位置において異なっている。具体的には、基板端子領域およびタップ部ATDが、エミッタ領域とアクティブバリア領域1との間に配置されており、実施の形態1と比較して、エミッタ領域と基板端子領域との配置が逆転している。
【0056】
なおアクティブバリア領域のn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とが配置される領域は、少なくとも
図15の左右方向に関してエミッタ領域(コレクタ領域)と対向する領域の全体を含むことが好ましい。すなわち
図15のn型不純物領域NR1の図の上下方向の長さL1は、エミッタ領域EMTの図の上下方向の長さL2以上であることが好ましく、
図15のp型不純物領域PR2の図の上下方向の長さL3は、コレクタ領域CTRの図の上下方向の長さL4以上であることが好ましい。
【0057】
本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成と比較して以上の点において異なっており、他の点においては実施の形態1の構成と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付しその説明を繰り返さない。このことは以下の各実施の形態の説明においても同様である。
【0058】
本実施の形態の半導体装置においても、実施の形態1と同様に、エミッタEMTへの負電位の印加によりp型不純物領域PSRの内部に進入した電子は基板端子領域の方へ引き寄せられ、その一部が自然にアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1に取り込まれる。その結果、アクティブバリアABRのp型不純物領域PR2の電位が低下することにより、アクティブバリア領域2よりもコレクタ領域側へ、p型不純物領域PSR内の電子が移動することが妨げられる効果を有する。
【0059】
(実施の形態3)
図17および
図18を参照して、本実施の形態は、
図15の実施の形態2と比較して、アクティブバリアABRの構成において異なっている。具体的には、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1は平面視においてエミッタ領域を取り囲んでおり、アクティブバリアABRのp型不純物領域PR2は平面視においてコレクタ領域を取り囲んでいる。アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1はエミッタ領域を取り囲むことにより、エミッタ領域とコレクタ領域との間の領域にも配置されている。同様にアクティブバリアABRのp型不純物領域PR2はコレクタ領域を取り囲むことにより、エミッタ領域とコレクタ領域との間の領域にも配置されている。
【0060】
なお以下の各実施の形態を示す各図においては、基板端子領域およびタップ部ATDは実施の形態1に示す位置および実施の形態2に示す位置を含む任意の位置に配置可能であるため、その図示を省略している。
【0061】
本実施の形態のように、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1がエミッタENTを取り囲むことにより、エミッタEMTの近傍におけるn型不純物領域NR1の平面視における面積が大きくなる。このため、たとえばn型不純物領域NR1がエミッタEMTとコレクタCTRとの間の領域のみに配置される場合に比べて、エミッタEMTからp型不純物領域PSRの内部に拡散された電子がより高い割合でアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1に取り込まれる。
【0062】
また本実施の形態のように、アクティブバリアABRのp型不純物領域PR2がコレクタCTRを取り囲むことにより、コレクタCTRの近傍におけるp型不純物領域PR2の平面視における面積が大きくなる。このため、たとえばp型不純物領域PR2がエミッタEMTとコレクタCTRとの間の領域のみに配置される場合に比べて、p型不純物領域PR2がp型不純物領域PSR内部の電子のコレクタCTRへの進入を抑制する効果が高められる。
【0063】
参考として、
図19〜
図20には、関連技術の第3例として、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とが互いに接するように隣り合い、かつn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2との双方がエミッタEMTを取り囲むように形成される半導体装置の平面図および断面図を示している。また
図21〜
図22には、関連技術の第4例として、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とが互いに接するように隣り合い、かつn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2との双方がコレクタCTRを取り囲むように形成される半導体装置の平面図および断面図を示している。
【0064】
(実施の形態4)
図23および
図24を参照して、本実施の形態は、
図17および
図18の実施の形態3と比較して、アクティブバリアABRのp型不純物領域PR2を取り囲むトレンチ分離構造TIの代わりにn型不純物領域NRが形成されている点において異なっている。このn型不純物領域NRは、p型不純物領域PR2と互いに接するように隣り合っており、n型不純物領域NRとp型不純物領域PR2とはpn接合を形成している。このpn接合は空乏層を形成することにより、分離領域SEPとして機能する。
【0065】
このように本実施の形態においては、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域NR2との少なくともいずれかとpn接合SEPを形成するためのn型またはp型の不純物領域が形成されている。
【0066】
なお
図2の実施の形態1のトレンチ分離構造TIの代わりに、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2との少なくともいずれかに互いに接しpn接合を構成するn(p)型不純物領域を形成してもよい。
【0067】
以上のように分離領域としては、溝の内部に絶縁膜が形成されたトレンチ分離構造であってもよいが、p(n)型不純物領域と互いに接することによりpn接合を構成するn(p)型不純物領域であってもよい。この場合においても、トレンチ分離構造TIを用いた場合と同様に、他素子領域とアクティブバリア領域1,2との電気的な分離を確実にすることができる。
【0068】
(実施の形態5)
図25および
図26を参照して、本実施の形態においては、
図17および
図18の実施の形態3と比較して、コレクタCTRとp型不純物領域PR2との間にトレンチ分離構造TIが形成されていない点において異なっている。すなわちコレクタCTRのn型不純物領域NR2とアクティブバリアABRのp型不純物領域PR2とが互いに接することによりpn接合を形成している。
【0069】
コレクタCTRのn型不純物領域NR2とアクティブバリアABRのp型不純物領域PR2とが互いに接することによりpn接合(分離領域SEP)を形成するため、両不純物領域の間にはトレンチ分離構造TIが介在しなくてもよい。
【0070】
(実施の形態6)
図27および
図28を参照して、本実施の形態においては、
図23および
図24の実施の形態4と比較して、p型不純物領域PR2を取り囲むn型不純物領域がアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1およびp型不純物領域PR2とをオーミック接続する接続配線により併せてオーミック接続されている点において異なっている。
【0071】
すなわちp型不純物領域PR2を取り囲むn型不純物領域はアクティブバリアABRを構成するn型不純物領域NR3(第3領域)であり、アクティブバリア領域3に形成されている。n型不純物領域NR3は、少なくとも主表面MSにおける他素子領域とp型不純物領域PR2との間に形成されているが、特に
図27および
図28に示すように、n型不純物領域NR3は、平面視においてコレクタ領域を取り囲むように形成されることが好ましい。
【0072】
言い換えれば本実施の形態においては、アクティブバリアABRのn型不純物領域NR1,NR3およびp型不純物領域PR2が、エミッタ領域とコレクタ領域との間に挟まれている。n型不純物領域NR1は
図28の主表面MSに沿う方向(左右方向)に関して他素子領域よりもエミッタ領域に近い側に、p型不純物領域PR2およびn型不純物領域NR3は
図28の主表面MSに沿う方向(左右方向)に関して他素子領域よりもコレクタ領域に近い側に、それぞれ配置されている。
【0073】
本実施の形態のようにアクティブバリアABRが2つのn型不純物領域NR1,NR3を有することにより、1つのn型不純物領域NR1のみを有する場合に比べて、p型不純物領域PSRの内部で拡散された電子をより多く取り込むことができ、その結果p型不純物領域PR2の電位が低下しコレクタCTRへの電子の進入を抑制する効果がより高められる。
【0074】
また本実施の形態のようにアクティブバリアABRのn型不純物領域NR3がコレクタCTRを取り囲むことにより、コレクタCTRの近傍におけるn型不純物領域NR3の平面視における面積が大きくなる。このため、たとえばn型不純物領域NR3がエミッタEMTとコレクタCTRとの間の領域のみに配置される場合に比べて、エミッタEMTからp型不純物領域PSRの内部に拡散された電子がより高い割合でアクティブバリアABRのn型不純物領域NR3に取り込まれる。
【0075】
(実施の形態7)
上記に述べた各実施の形態のほかに、各実施の形態の変形例として以下の各態様が考えられる。いずれの場合も上記の本実施の形態の基本的な作用効果、すなわちアクティブバリアABRのn型不純物領域が電子を取り込み、かつp型不純物領域の電位が低下して電子の進入を妨げることにより、エミッタEMTからp型不純物領域PSR内部に拡散した電子のコレクタCTRへの進入を抑制する効果を奏する。
【0076】
図29を参照して、たとえばアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1はエミッタ領域を取り囲むが、p型不純物領域PR2はエミッタ領域とコレクタ領域との間の領域のみに配置されてもよい。このときのp型不純物領域PR2が配置される領域は、少なくとも図の左右方向に関してコレクタ領域と対向する領域の全体を含むことが好ましい。すなわち
図29のp型不純物領域PR2の図の上下方向の長さは、コレクタ領域CTRの図の上下方向の長さ以上であることが好ましい。
【0077】
図30を参照して、たとえばアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1はエミッタ領域とコレクタ領域との間の領域のみに配置されるが、p型不純物領域PR2はコレクタ領域を取り囲むように配置されてもよい。
【0078】
図31を参照して、アクティブバリアABRがエミッタ領域を取り囲む1つのn型不純物領域NR1と、2つのコレクタ領域のそれぞれを取り囲む2つのp型不純物領域PR2とを互いにオーミック接続した構成であってもよい。また
図32を参照して、アクティブバリアABRが2つのエミッタ領域のそれぞれを取り囲む2つのn型不純物領域NR1と、コレクタ領域を取り囲む1つのp型不純物領域PR2とを互いにオーミック接続した構成であってもよい。また図示されないが、さらに別の例として、アクティブバリアABRが2つのエミッタ領域のそれぞれを取り囲む2つのn型不純物領域NR1と、2つのコレクタ領域のそれぞれを取り囲む2つのp型不純物領域PR2とを互いにオーミック接続した構成であってもよい。
【0079】
図31、
図32のいずれにおいても、アクティブバリアABRの各領域はエミッタEMT、コレクタCTRを取り囲んでいるが、実施の形態1などのようにエミッタEMT、コレクタCTRを取り囲まない構成であってもよい。すなわち本実施の形態と、実施の形態1〜6で説明した各構成上の特徴とを適宜組み合わせてもよい。
【0080】
また
図29〜
図32のいずれにおいても、アクティブバリアABRが上記のn型不純物領域NR3をさらに有してもよい。
【0081】
最後に、一実施の形態の要点について説明する。
図33を参照して、一実施の形態の半導体装置は、主表面MSを有する半導体基板SUBに形成されている。半導体基板SUBの内部にはp型不純物領域PSRが形成されている。主表面MSにはエミッタ領域と、コレクタ領域と、他素子領域と、アクティブバリア領域1,2とが形成されている。エミッタ領域にはn型のエミッタEMTが、コレクタ領域にはn型のコレクタCTRが形成されている。アクティブバリアABRはエミッタEMTとコレクタCTRとの間に形成され、n型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2とを有している。他素子領域はアクティブバリアABRのn型不純物領域NR1とp型不純物領域PR2との間に挟まれている。他素子領域とn型不純物領域NR1との間、および他素子領域とp型不純物領域PR2との間の少なくともいずれかに分離領域(トレンチ分離構造TIまたはpn接合分離)を有している。
【0082】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。