人体の腕部に相当する腕部モデルに所定間隔をおいて並設された一対の溝部の各々に人体血管代替物が配設され、且つ前記人体血管代替物を覆うように人体皮膚代替物が前記腕部モデルに配設された手技シミュレータを用いたシミュレーション方法であって、
前記人体皮膚代替物を切開する切開工程と、
前記人体血管代替物のうち、前記一方の溝部に配設されている部分と前記他方の溝部に配設されている部分とを吻合する吻合工程と、
を行うことを特徴とするシミュレーション方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような従来技術に係る手技シミュレータは、針刺手技を模擬体験させるためのものであり、血管吻合手技を想定したものではないため、当該手技シミュレータを用いたとしても、血管吻合手技を効率的に習得することは困難である。
【0007】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、臨床経験によらなくても、人体による実際の手技に近似した模擬体験をすることができ、血管吻合手技を効率的に習得することが可能な手技シミュレータ及びそれを用いたシミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 本発明に係る手技シミュレータは、血管吻合手技をトレーニングするための手技シミュレータであって、人体の腕部に相当する腕部モデルと、前記腕部モデルを支持する支持台と、を備え、前記腕部モデルには、人体血管代替物が配設可能な一対の溝部が所定間隔をおいて並設され、且つ前記各溝部に配設された前記人体血管代替物を覆うように人体皮膚代替物が配設可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る手技シミュレータによれば、腕部モデルに所定間隔をおいて並設された一対の溝部の各々に人体血管代替物を配設した状態で、前記人体血管代替物を覆う人体皮膚代替物を前記腕部モデルに配設することができるので、例えば、人体皮膚代替物を切開し、人体血管代替物のうち一方の溝部に配設されている部分と他方の溝部に配設されている部分を吻合する手技を好適に行うことができる。また、人体皮膚代替物を用いているので、該人体皮膚代替物を切開する感覚が、実際の人体の皮膚を切開する感覚に近似する。さらに、人体血管代替物を用いているので、人体血管代替物を吻合する感覚が、実際の人体の血管を吻合する感覚に近似する。これにより、臨床経験によらなくても、人体による実際の手技に近似した模擬体験をすることができ、血管吻合手技を効率的に習得することができる。
【0010】
[2] 本発明において、前記人体皮膚代替物を前記支持台に対して係止する係止手段をさらに備えていてもよい。
【0011】
このような手技シミュレータによれば、腕部モデルを支持する支持台に対して人体皮膚代替物を係止手段にて係止することができるので、例えば、人体皮膚代替物を切開する際に、前記人体皮膚代替物が前記腕部モデルに対してずれることを好適に抑えることができる。また、人体皮膚代替物に対して適度なテンションをかけた状態で該人体皮膚代替物を係止手段にて係止することも可能であり、この場合、人体皮膚代替物を実際の人体の皮膚により近似させることができる。
【0012】
[3] 本発明において、前記人体血管代替物の内孔に液体を注入可能な液体注入手段をさらに備えていてもよい。
【0013】
このような手技シミュレータによれば、液体注入手段を備えているので、例えば、人体血管代替物を切開する感覚を実際の人体の血管を切開する感覚に近似することができる。また、人体血管代替物を吻合した後に該人体血管代替物の内孔に液体を注入することにより、血管吻合部が適切に処置されたか(血管吻合部から前記液体が漏れていないか)否かを容易に判断することができる。
【0014】
[4] 本発明において、前記液体は、着色されていてもよい。この場合、液体を着色しているので、前記液体が無色である場合と比較して血管吻合部からの前記液体の漏れを容易に確認することができる。
【0015】
[5] 本発明において、前記一方の溝部の深さ寸法が、前記他方の溝部の深さ寸法よりも大きく設定されていてもよい。
【0016】
このような手技シミュレータによれば、一方の溝部の深さ寸法を他方の溝部の深さ寸法よりも大きく設定しているので、人体血管代替物を前記各溝部に配設した状態で、前記人体血管代替物のうち、前記一方の溝部に配設されている部分(第1人体血管代替物)を前記他方の溝部に配設されている部分(第2人体血管代替物)よりも腕部モデルの内側に位置させることができる。これにより、前記第1人体血管代替物の位置を実際の人体の腕部における動脈の位置に近似させると共に、前記第2人体血管代替物の位置を実際の人体の腕部における静脈の位置に近似させることができる。この場合、血液透析を行うための動静脈吻合手技を効率的に習得することができる。
【0017】
[6] 本発明において、前記腕部モデルは、軟質な材料で構成されていてもよい。この場合、前記腕部モデルの感触を実際の人体の腕部の感触に近似させることができる。
【0018】
[7] 本発明において、前記人体血管代替物は、人以外の哺乳類動物の血管であってもよい。
【0019】
このような手技シミュレータによれば、人体血管代替物が人以外の哺乳類動物の血管であるので、該人体血管代替物を実際の人体の血管に一層近似させることができる。これにより、感覚的に実際の手技に近いトレーニングを行うことが可能になる。
【0020】
[8] 本発明において、前記人体皮膚代替物は、人以外の哺乳類動物又は鳥類動物の皮膚であってもよい。
【0021】
このような手技シミュレータによれば、人体皮膚代替物が人以外の哺乳類動物又は鳥類動物の皮膚であるので、該人体皮膚代替物を実際の人体の皮膚に一層近似させることができる。これにより、感覚的に実際の手技に近いトレーニングを行うことが可能になる。
【0022】
[9] 本発明に係るシミュレーション方法は、人体の腕部に相当する腕部モデルに所定間隔をおいて並設された一対の溝部の各々に人体血管代替物が配設され、且つ前記人体血管代替物を覆うように人体皮膚代替物が前記腕部モデルに配設された手技シミュレータを用いたシミュレーション方法であって、前記人体皮膚代替物を切開する切開工程と、前記人体血管代替物のうち、前記一方の溝部に配設されている部分と前記他方の溝部に配設されている部分とを吻合する吻合工程と、を行うことを特徴とする。
【0023】
本発明に係るシミュレーション方法によれば、切開工程を行うため、実際の人体の皮膚を切開する感覚に近似した感覚を模擬体験することができる。また、吻合工程を行うため、実際の人体の腕部における血管を吻合する感覚に近似した感覚を模擬体験することができる。これにより、臨床経験によらなくても、人体による実際の手技に近似した模擬体験をすることができ、血管吻合手技を効率的に習得することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、腕部モデルに所定間隔をおいて並設された一対の溝部の各々に人体血管代替物を配設した状態で、前記人体血管代替物を覆う人体皮膚代替物を前記腕部モデルに配設することができるので、臨床試験によらなくても、人体による実際の手技に近似した模擬体験をすることができ、血管吻合手技を効率的に習得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る手技シミュレータについて、それを用いたシミュレーション方法との関係で好適な実施形態例を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0027】
本発明の一実施形態に係る手技シミュレータ10は、血管吻合手技(シャント造設手技)をトレーニングするためのものであって、
図1〜
図3に示すように、直方体状に形成された支持台(固定台)12と、支持台12に載置され、且つ人体の腕部に相当する腕部モデル14と、腕部モデル14に設けられる第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18と、これら第1及び第2人体血管代替物16、18に液体を注入するための液体注入具(液体注入手段)20と、腕部モデル14、第1人体血管代替物16、及び第2人体血管代替物18を覆う人体皮膚代替物22と、人体皮膚代替物22を支持台12に対して係止するための複数(例えば、6個)の係止具(係止手段)24とを備える。
【0028】
支持台12は、任意の材料で構成してよいが、例えば、発泡プラスチック等で構成するのが好ましい。支持台12を発泡プラスチック等で構成すると、腕部モデル14等を好適に支持することができると共に複数の係止具24を支持台12に保持し易くすることが可能となるからである。また、支持台12は、平面視で腕部モデル14よりも一回り大きく形成されている。
【0029】
腕部モデル14は、例えば、比較的軟質で適度な弾力を有するスチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等の樹脂材料やアルジネート印象材等で構成することができる。腕部モデル14をこれらの材料で構成することで、該腕部モデル14の感触を実際の人体の腕部の感触に近似させることができる。なお、腕部モデル14は、任意の材料で構成してよい。
【0030】
また、腕部モデル14は、人体の前腕部を模して形成されており、一方向に延びた円柱部材を軸線方向に沿って弦状に切断したような形状をなしている。すなわち、腕部モデル14には、支持台12に接触する平坦面26と、平坦面26に連なる湾曲面28とが形成されている(
図4参照)。このような腕部モデル14は、小児用、成人用で区別して寸法を適宜設定することができる。
【0031】
湾曲面28には、第1人体血管代替物16が配設される第1溝部30と、第2人体血管代替物18が配設される第2溝部32とが形成されている。第1溝部30と第2溝部32とは、腕部モデル14の延在方向に沿ってその全長に亘って延びている。すなわち、第1溝部30と第2溝部32とは、腕部モデル14の幅方向に沿って所定間隔をおいて並設されている。
【0032】
図4に示すように、第1溝部30の深さ寸法d1は、第2溝部32の深さ寸法d2よりも大きく形成されている。これにより、第1溝部30に配設される第1人体血管代替物16を第2溝部32に配設される第2人体血管代替物18よりも腕部モデル14の内側(平坦面26側又は支持台12側)に位置させることができる。換言すれば、第1人体血管代替物16を第2人体血管代替物18よりも人体皮膚代替物22から離間する方向に位置させることができる。
【0033】
本実施形態では、第1人体血管代替物16は、第1溝部30に配設された状態でその全部が該第1溝部30内に位置する一方、第2人体血管代替物18は、第2溝部32に配設された状態でその一部が該第2溝部32から突出している。すなわち、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18の各々は、腕部モデル14に埋設されている。なお、第1人体血管代替物16は、その一部が第1溝部30から突出していても構わない。第1溝部30の幅寸法w1は、第2溝部32の幅寸法w2よりも若干広く形成されている。
【0034】
第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18としては、例えば、豚、牛等の人以外の哺乳類動物の血管を用いることができる。これにより、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18を実際の人体の血管に近似させることができる。
【0035】
また、第1人体血管代替物16としてこれら動物の動脈を用い、且つ第2人体血管代替物18としてこれら動物の静脈を用いてもよい。通常、動脈と静脈の構造(血管壁の厚みや弾力性等)は異なっているため、このように動脈と静脈を用いることで動静脈吻合手技のシミュレーションの模擬体験を好適に行うことが可能となる。
【0036】
そして、このような動静脈吻合手技のシミュレーションを行う場合には、第1人体血管代替物16として豚の頚動脈を用い、且つ第2人体血管代替物18として豚の頚静脈を用いるのが好ましい。豚の頚動脈と頚静脈は、安価で、入手性に優れ、しかもその構造及び組織が実際の人体の前腕部における動脈(橈骨動脈)と静脈(橈側皮静脈)に近似しているからである。なお、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18の各々は、例えば、人工血管で形成しても構わない。
【0037】
本実施形態では、第1人体血管代替物16の外径は、第2人体血管代替物18の外径よりも僅かに大きく形成されている。ただし、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18の外径は任意に設定可能である。
【0038】
図1及び
図3から諒解されるように、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18の各々の一端部は、糸材34、36等を用いて結紮することによりその内孔が閉塞されている。なお、前記内孔の閉塞は、任意の方法により行うことが可能である。例えば、血管クリップ等の閉塞部材を用いることにより該内孔を閉塞してもよい。
【0039】
液体注入具20は、第1人体血管代替物16の他端に縫合糸38によって接続された第1チューブ40と、第1チューブ40の他端に設けられた第1コネクタ42に装着可能な第1シリンジ(第1ポンプ)44と、第2人体血管代替物18の他端に縫合糸46によって接続された第2チューブ48と、第2チューブ48の他端に設けられた第2コネクタ50に装着可能な第2シリンジ(第2ポンプ)52とを有する。
【0040】
第1コネクタ42には、第1シリンジ44が装着されていない状態で該第1コネクタ42の内孔を閉塞する一方、前記第1シリンジ44が装着された状態で該第1コネクタ42の内孔を閉じる図示しない弁体が設けられている。第2コネクタ50は、第1コネクタ42と同様の構成を有しているため、その詳細な説明を省略する。
【0041】
第1人体血管代替物16と第1チューブ40との接続と第2人体血管代替物18と第2チューブ48との接続は、これら接続部の内孔を閉塞しなければどのような方法を用いてもよい。
【0042】
第1シリンジ44と第2シリンジ52の各々には、着色された液体が収容されている。このような液体としては、例えば、生理食塩水に任意の着色剤(着色料)を混合したものを用いることができる。具体的には、前記着色剤として食紅等の赤色着色剤を用いれば、第1人体血管代替物16、第2人体血管代替物18、又は血管吻合部60(
図7B参照)から流出する液体を人体の血液のように視認させることができる。ただし、前記着色剤は、前記血管吻合部60とは異なる色彩の着色剤であっても構わない。この場合、該血管吻合部60からの液漏れを確認し易くなる。
【0043】
また、前記液体注入具20は、例えば、第2チューブ48、第2コネクタ50、及び第2シリンジ52を設けずに構成してもよい。この場合、前記血管吻合部60において、第1人体血管代替物(動脈)16から第2人体血管代替物(静脈)18に向けて流れる液体(実際の人体の血流に沿って流れる液体)の漏れを確認することができ、液体注入具20の構成を簡素化することができる。
【0044】
人体皮膚代替物22は、人体の皮下に相当する人体皮下代替物54と、人体の表皮に相当する人体表皮代替物56とを有する。このような人体皮膚代替物22としては、例えば、豚、牛等の人以外の哺乳類動物又は鶏等の鳥類動物の皮膚を用いることができ、好ましくは、豚の皮膚、さらに好ましくは、豚の腹部の皮膚を用いるのがよい。豚の皮膚は、安価で入手性に優れ、しかもその構造及び組織が人体の皮膚と近似しているからである。なお、人体皮膚代替物22は、人工皮膚で形成しても構わない。
【0045】
各係止具24は、例えば、針部材やピン部材等で構成されている(
図1参照)。この場合、各係止具24を人体皮膚代替物22の外面側から支持台12の側面に突き刺すことにより、該人体皮膚代替物22と腕部モデル14との相対位置を容易に保持することができる。なお、本実施形態では、各係止具24は、例えば、前記人体皮膚代替物22を係止可能なように支持台12に一体的に設けられていてもよい。
【0046】
複数の係止具24は、支持台12の長辺を含む側面に3つずつ等間隔に設けられる。すなわち、これら係止具24は左右対称に配置される。この場合、人体皮膚代替物22をバランスよく且つ強固に支持台12に固定することができる。また、本実施形態では、人体皮膚代替物22に適度なテンションをかけた状態で複数の係止具24を支持台12に突き刺している。これにより、人体皮膚代替物22を実際の人体の皮膚に一層近似させることができる。なお、人体皮膚代替物22を支持台12に対して係止した後で、支持台12が人体皮膚代替物22に対して可動することにより適度なテンションをかけるように構成してもよい。
【0047】
本実施形態に係る手技シミュレータ10は、基本的に以上のように構成されるものであって、次に、該手技シミュレータ10を用いたシミュレーション方法について
図5〜
図7Bを参照しながら説明する。
【0048】
本実施形態では、血管吻合手技のトレーニングを行う前段階において、第1コネクタ42に第1シリンジ44を装着して該第1シリンジ44に収容されている液体を該第1人体血管代替物16の内孔に注入し、第2コネクタ50に第2シリンジ52を装着して該第2シリンジ52に収容されている液体を該第2人体血管代替物18の内孔に注入している。これにより、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18とを実際の人体の血管に近似させることができる。
【0049】
先ず、
図6Aに示すように、使用者等は、電気メス等によって人体表皮代替物56を切開する(
図5のステップS1:切開工程)。そうすると、人体皮下代替物54が露出する。
【0050】
続いて、鉗子100、102等を用いて人体皮下代替物54を剥離する(ステップS2)。これにより、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18とが露出する(ステップS3、
図6B参照)。
【0051】
次いで、第1人体血管代替物16の一部を第1溝部30から引き出し、第2人体血管代替物18の一部を第2溝部32から引き出す。そして、
図7Aに示すように、血管クリップ104a、104bを第1人体血管代替物16に装着し、血管クリップ106a、106bを第2人体血管代替物18に装着する(ステップS4)。これにより、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18とが所定の位置に保持される。
【0052】
その後、第1人体血管代替物16の血管壁と第2人体血管代替物18の血管壁の各々を切開して孔をあける(ステップS5)。このとき、前記第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18の各々から液体が流出するので、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18の各々を切開する感覚を実際の人体の血管を切開する感覚に近似することができる。
【0053】
そして、これら孔が連通するように第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18とを縫合糸等を用いて吻合する(ステップS6:吻合工程)。これにより、血管吻合部(動静脈吻合部)60が形成されるに至る(
図7B参照)。
【0054】
次に、第1コネクタ42に第1シリンジ44を装着し、第2コネクタ50に第2シリンジ52を装着する(ステップS7)。続いて、第1シリンジ44に収容されている液体を第1人体血管代替物16の内孔に注入し、第2シリンジ52に収容されている液体を第2人体血管代替物18の内孔に注入することにより、前記血管吻合部60の内孔を前記液体で満たす。
【0055】
このとき、血管吻合部60から前記液体が漏れているか否かを確認することにより、血管吻合の処置が適切に行われたか否かを容易に判断することができる。その後、切開した人体皮膚代替物22を縫合して、今回のシミュレーションが終了する。
【0056】
本実施形態に係る手技シミュレータ10によれば、腕部モデル14に所定間隔をおいて並設された第1溝部30と第2溝部32の各々に第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18を配設した状態で、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18とを覆う人体皮膚代替物22を腕部モデル14に配設している。そのため、人体皮膚代替物22を切開して第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18とを吻合する手技(血管吻合手技)を好適に行うことができる。
【0057】
また、人体皮膚代替物22を用いているので、該人体皮膚代替物22を切開する感覚が、実際の人体の皮膚を切開する感覚に近似する。さらに、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18を用いているので、第1人体血管代替物16と第2人体血管代替物18とを吻合する感覚(孔をあけたり縫合したりする感覚)が、実際の人体の血管を吻合する感覚に近似する。これにより、臨床経験によらなくても、人体による実際の手技に近似した模擬体験をすることができ、血管吻合手技を効率的に習得することができる。
【0058】
本実施形態では、第1及び第2人体血管代替物16、18の各々が人以外の哺乳類動物の血管であり、人体皮膚代替物22がこれら動物の皮膚であるので、感覚的に実際の手技に近いトレーニングを行うことができる。
【0059】
また、人体皮膚代替物22に適度なテンションをかけた状態で、各係止具24を人体皮膚代替物22の外面側から支持台12の側面に突き刺すことにより、該人体皮膚代替物22と腕部モデル14との相対位置を保持している。これにより、人体皮膚代替物22を実際の人体の皮膚により近似させることができる。
【0060】
さらに、第1溝部30の深さ寸法d1を第2溝部32の深さ寸法d2よりも大きく設定することにより、第1人体血管代替物16を第2人体血管代替物18よりも腕部モデル14の内側に位置しているので、該第1人体血管代替物16の位置を実際の人体の腕部における動脈(橈骨動脈)の位置に近似させると共に、第2人体血管代替物18の位置を実際の人体の腕部における静脈(橈側皮静脈)の位置に近似させることができる。これにより、血液透析を行うための動静脈吻合手技を効率的に習得することができる。
【0061】
本実施形態は、上述した形態に限定されない。例えば、手技シミュレータ10は、第1人体血管代替物16、第2人体血管代替物18、及び人体皮膚代替物22を含まない構成としてもよい。
【0062】
本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【0063】
例えば、本発明に係る手技シミュレータは、例えば、1本の人体血管代替物をU字状に湾曲させた状態で第1溝部と第2溝部に配設しても構わない。この場合であっても、前記人体血管代替物のうち第1溝部に配設されている部分と第2溝部に配設されている部分とを吻合することができるので、血管吻合手技のトレーニングを好適に行うことが可能である。