(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955649
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】ヒューズおよびヒューズの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 85/11 20060101AFI20160707BHJP
H01H 85/06 20060101ALI20160707BHJP
H01H 85/147 20060101ALI20160707BHJP
H01H 85/153 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
H01H85/11
H01H85/06
H01H85/147
H01H85/153
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-124706(P2012-124706)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-251117(P2013-251117A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 匡司
【審査官】
岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−021488(JP,A)
【文献】
特開2012−033318(JP,A)
【文献】
特開2010−287443(JP,A)
【文献】
実開昭63−069351(JP,U)
【文献】
実開昭56−002563(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00−87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側端子と接続される一対の端子接続部と、一対の前記端子接続部の間に設けられて定格以上の電流を遮断する可溶部とを備え、一対の前記端子接続部と前記可溶部とが導通性のプレートによって一体に形成されたヒューズであって、
前記各端子接続部は、本体面と、この本体面に重なっている折曲面とを備えて構成されており、前記本体面と前記折曲面とは、これらの一方の端の側部を介してつながっており、
前記可溶部は、一対の前記本体面同士を連結する可溶導体部と、前記可溶導体部に設けられて前記可溶導体部よりも融点の低い金属からなる低融点金属と、前記折曲面側に折れ曲がった状態で前記可溶導体部を固定している加締め部とを備えていることを特徴とするヒューズ。
【請求項2】
請求項1に記載のヒューズであって、
前記端子接続部は、前記可溶導体部の延在方向に直交する方向に沿って長尺状に形成され、
前記加締め部は、前記可溶導体部の両側縁から前記端子接続部に沿って突出している加締め片によって形成されており、前記可溶導体部の両側縁から前記低融点金属を包囲していることを特徴とするヒューズ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のヒューズであって、
前記本体面は、前記可溶導体部が連結される内側縁部と、前記内側縁部に対向して前記内側縁部よりも外側に位置する外側縁部とを備え、
前記折曲面は、前記外側縁部に連結されることを特徴とするヒューズ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のヒューズであって、
前記本体面は、前記可溶導体部が連結される内側縁部と、前記内側縁部に対向して前記内側縁部よりも外側に位置する外側縁部と、前記内側縁部と前記外側縁部とを連結する側部とを備え、
前記折曲面は、前記側部に連結されることを特徴とするヒューズ。
【請求項5】
相手側端子と接続される一対の端子接続部と、一対の前記端子接続部の間に設けられて定格以上の電流を遮断する可溶部とを備え、一対の前記端子接続部と前記可溶部とが導通性のプレートによって一体に形成されたヒューズの製造方法であって、
前記各端子接続部は、本体面と、前記本体面から折り曲げられて前記本体面に接触する折曲面とを備え、
前記可溶部は、一対の前記本体面同士を連結する可溶導体部と、前記可溶導体部に設けられて前記可溶導体部よりも融点の低い金属からなる低融点金属と、前記低融点金属を加締めて固定する加締め部とを備え、
前記加締め部は、前記折曲面側に折り曲げられて前記可溶導体部を固定することを特徴とするヒューズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズに関し、特に、車両に搭載されるヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両には、各種電子機器の電気回路を保護するために、複数のヒューズが用いられている。この種のヒューズは、相手側端子と接続される一対の端子接続部と、一対の端子接続部の間に設けられて定格以上(いわゆる、過電流)の電流を遮断する可溶部と、端子接続部の一部を露出した状態で可溶部を覆うカバー部材とを備えている。端子接続部及び可溶部とは、導通性のプレートによって一体に形成されている。
【0003】
一般的に、可溶部は、一対の端子接続部同士を連結する可溶導体部と、可溶導体部に設けられて可溶導体部よりも融点の低い金属(例えば、錫或いはその合金)からなる低融点金属と、低融点金属を加締めて固定する加締め部とを備えている。
【0004】
加締め部は、可溶導体部の両側縁から立ち上げることによって形成されており、いわゆる、オープンバレル型をなしている(例えば、特許文献1参照)。そして、加締め部は、可溶導体部の両側縁から低融点金属を包囲するように加締められることによって、可溶導体部に低融点金属を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−130277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のヒューズでは、加締め部が可溶導体部の両側縁から低融点金属を包囲するように加締められるため、可溶導体部から低融点金属や加締め部が突出してしまい、ヒューズの大型化を招いてしまう。このため、可溶導体部からの低融点金属や加締め部の突出量をできる限り少なくすることが望まれていた。
【0007】
そこで、本発明は、可溶導体部からの低融点金属や加締め部の突出量を抑制し、小型化を実現できるヒューズの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、相手側端子と接続される一対の端子接続部と、一対の前記端子接続部の間に設けられて定格以上の電流を遮断する可溶部とを備え、一対の前記端子接続部と前記可溶部とが導通性のプレートによって一体に形成されたヒューズであって、前記各端子接続部は、本体面と、前記本体面から折り曲げられて前記本体面に接触する折曲面とを備え、前記可溶部は、一対の前記本体面同士を連結する可溶導体部と、前記可溶導体部に設けられて前記可溶導体部よりも融点の低い金属からなる低融点金属と、前記低融点金属を加締めて固定する加締め部とを備え、前記加締め部は、前記折曲面側に折り曲げられて前記可溶導体部を固定することを要旨とする。
【0009】
かかる特徴によれば、加締め部は、折曲面側に折り曲げられて可溶導体部を固定する。これにより、加締め部が折曲面の反対側に折り曲げられる場合と比較して、端子接続部(本体面及び折曲面)の厚さにできる限り近づけることができる。このため、折曲面からの低融点金属や加締め部の突出量を抑制し、ヒューズの小型化を実現できる。
【0010】
加えて、端子接続部は、本体面と、本体面から折り曲げられて本体面に接触する折曲面とを備える。これにより、ヒューズの製造に使用されるプレートの板厚を薄くしてヒューズの軽量化を実現しても、端子接続部の剛性を確保できる。
【0011】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係るヒューズであって、前記端子接続部は、前記可溶導体部の延在方向に直交する方向に沿って長尺状に形成され、前記加締め部は、前記可溶導体部の両側縁から前記端子接続部に沿って突出した加締め片によって形成され、前記可溶導体部の両側縁から前記低融点金属を包囲するように加締められることを要旨とする。
【0012】
かかる特徴によれば、加締め部は、加締め片によって形成され、可溶導体部の両側縁から低融点金属を包囲するように加締められる。これにより、加締め部が可溶導体部の片側縁から低融点金属を包囲する場合と比較して、低融点金属をより確実に固定できる。
【0013】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係るヒューズであって、前記本体面は、前記可溶導体部が連結される内側縁部と、前記内側縁部に対向して前記内側縁部よりも外側に位置する外側縁部とを備え、前記折曲面は、前記外側縁部に連結されることを要旨とする。
【0014】
かかる特徴によれば、折曲面は、外側縁部に連結される。これにより、ヒューズの製造に使用されるプレートの打ち抜き加工の際、折曲面が上側部や下側部に連結される場合と比較して、プレートを有効に使用することができる。このため、プレートの無駄を削減でき、ヒューズの製造コストを低減できる。
【0015】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係るヒューズであって、前記本体面は、前記可溶導体部が連結される内側縁部と、前記内側縁部に対向して前記内側縁部よりも外側に位置する外側縁部と、前記内側縁部と前記外側縁部とを連結する側部とを備え、前記折曲面は、前記側部に連結されることを要旨とする。
【0016】
かかる特徴によれば、折曲面は、側部に連結される。つまり、相手側端子への端子接続部の挿入方向の先端が曲面に形成される。これにより、相手側端子へ端子接続部を挿入し易くなる。このため、相手側端子への端子接続部の挿入力が低減し、相手側端子へヒューズを取り付け易くなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の特徴によれば、可溶導体部からの低融点金属や加締め部の突出量を抑制し、小型化を実現できるヒューズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るヒューズを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るヒューズを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るヒューズを示す正面・平面・側面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る端子接続部及び可溶部を示す正面・平面・側面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る端子接続部及び可溶部を示す展開図である。
【
図6】
図6は、変更例に係る端子接続部及び可溶部を示す斜視図及び展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係るヒューズの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0020】
(ヒューズの構成)
まず、本実施形態に係るヒューズ1の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るヒューズ1を示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係るヒューズ1を示す分解斜視図である。
図3は、本実施形態に係るヒューズ1を示す正面・平面・側面図である。
図4は、本実施形態に係る端子接続部10及び可溶部20を示す正面・平面・側面図である。
図5は、本実施形態に係る端子接続部10及び可溶部20を示す展開図である。なお、本実施形態に係るヒューズ1は、不図示の相手側端子(例えば、音叉端子)と接続されるものである。
【0021】
図1〜
図3に示すように、ヒューズ1は、相手側端子と接続される一対の端子接続部10と、端子接続部10と一体に形成されて定格以上の電流(いわゆる、過電流)を遮断する可溶部20と、端子接続部10の一部を露出した状態で可溶部20を覆うカバー部材30とを備えている。これらの端子接続部10及び可溶部20は、導通性のプレート(
図5参照)によって一体に形成される。
【0022】
具体的には、各端子接続部10は、上下方向に沿って長尺状に形成されている。各端子接続部10には、カバー部材30に固定される固定孔10A(
図2参照)が形成されている。各端子接続部10は、
図4及び
図5に示すように、可溶部20(後述する可溶導体部21)に連なる本体面11と、本体面11から折り曲げられて本体面11に接触する折曲面12とを備えている。
【0023】
本体面11は、可溶部20(後述する可溶導体部21)が連結される内側縁部11Aと、内側縁部11Aに対向して内側縁部11Aよりも外側(図面の左側或いは右側)に位置する外側縁部11Bと、内側縁部11Aと外側縁部11Bとを連結する側部(上側部11C及び下側部11D)とを備えている。
【0024】
折曲面12は、本体面11とほぼ同様の形状を有している。
図5に示すように、折曲面12は、本体面11の外側縁部11Bに連結されている。
【0025】
可溶部20は、
図4及び
図5に示すように、一対の本体面11同士を連結する可溶導体部21と、可溶導体部21に設けられて可溶導体部21よりも融点の低い金属(例えば、錫或いはその合金)からなる低融点金属22と、低融点金属22を加締めて固定する加締め部23とを備えている。
【0026】
加締め部23は、
図4及び
図5に示すように、折曲面12側に折り曲げられて可溶導体部21を固定する。加締め部23は、可溶導体部21の両側縁から端子接続部10の延在方向に沿って突出した加締め片によって形成されている。そして、加締め部23は、可溶導体部21の両側縁から低融点金属22を包囲するように加締められる。
【0027】
カバー部材30は、
図1〜
図3に示すように、略T字状に形成されている。カバー部材30は、アッパーカバー31と、アッパーカバー31に取り付けられるロワーカバー32とを備えている。アッパーカバー31の側縁(上下の側縁)には、係止凹部31Aがそれぞれ形成されている。アッパーカバー31の端子接続部10側の面には、端子接続部10の固定孔10Aに挿入される突起部31Bが形成されている。一方、ロワーカバー32の側縁(上下の側縁)には、係止凹部31Aに係止される係止爪部32Aがそれぞれ形成されている。係止爪部32Aの間には、可溶部20を目視可能な目視窓32Bが形成されている。
【0028】
(作用・効果)
以上説明した本実施形態では、加締め部23は、折曲面12側に折り曲げられて可溶導体部21を固定する。これにより、加締め部23が折曲面12の反対側に折り曲げられる場合と比較して、端子接続部10(本体面11及び折曲面12)の厚さにできる限り近づけることができる。このため、折曲面12からの低融点金属22や加締め部23の突出量を抑制し、ヒューズ1の小型化を実現できる。
【0029】
加えて、端子接続部10は、本体面11と、本体面11から折り曲げられて本体面11に接触する折曲面12とを備える。これにより、ヒューズ1の製造に使用されるプレートの板厚を薄くしてヒューズ1の軽量化を実現しても、端子接続部10の剛性を確保できる。
【0030】
本実施形態では、加締め部23は、加締め片によって形成され、可溶導体部21の両側縁から低融点金属22を包囲するように加締められる。これにより、加締め部23が可溶導体部21の片側縁から低融点金属22を包囲する場合と比較して、低融点金属22をより確実に固定できる。
【0031】
本実施形態では、折曲面12は、外側縁部11Bに連結される。これにより、ヒューズ1の製造に使用されるプレートの打ち抜き加工の際、折曲面12が上側部11Cや下側部11Dに連結される場合と比較して、プレートを有効に使用することができる。このため、プレートの無駄を削減でき、ヒューズ1の製造コストを低減できる。
【0032】
加えて、各端子接続部10が上下方向に沿って長尺状に形成されることに伴い、折曲面12は、上側部11Cや下側部11Dよりも長い外側縁部11Bに連結される。このため、本体面11と折曲面12との固定強度が増大し、端子接続部10の剛性を確実に向上できる。
【0033】
(変更例)
次に、上述した実施形態に係る端子接続部10の変更例について、図面を参照しながら説明する。
図6は、変更例に係る端子接続部10及び可溶部20を示す斜視図及び展開図である。なお、上述した実施形態に係る端子接続部10と同一部分には同一の符号を付して、相違する部分を主として説明する。
【0034】
上述した実施形態では、端子接続部10の折曲面12は、本体面11の外側縁部11Bに連結されている。これに対して、変更例では、
図6に示すように、端子接続部10の折曲面12は、本体面11の下側部11Dに連結されている。
【0035】
このような変更例であっても、上述した実施形態と同様に、ヒューズ1の小型化を実現できるとともに、ヒューズ1の製造に使用されるプレートの板厚を薄くしてヒューズ1の軽量化を実現した場合であっても、端子接続部10の剛性を確保できる。
【0036】
加えて、変更例では、折曲面12は、本体面11の下側部11Dに連結される。つまり、相手側端子への端子接続部10の挿入方向の先端が曲面に形成される。これにより、相手側端子へ端子接続部10を挿入し易くなる。このため、相手側端子への端子接続部10の挿入力が低減し、相手側端子へヒューズ1を取り付け易くなる。
【0037】
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0038】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、加締め部23は、可溶導体部21の両側縁から端子接続部10の上下方向に沿って突出した加締め片によって形成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、端子接続部10の片側に突出した加締め片によって形成されていてもよい。
【0039】
また、端子接続部10の折曲面12は、外側縁部11B或いは下側部11Dに連結されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、上側部11Cに連結されていてもよい。
【0040】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0041】
1…ヒューズ
10…端子接続部
10A…固定孔
11…本体面
11A…内側縁部
11B…外側縁部
11C…上側部
11D…下側部
12…折曲面
20…可溶部
21…可溶導体部
22…低融点金属
23…加締め部
30…カバー部材
31…アッパーカバー
31A…係止凹部
31B…突起部
32…ロワーカバー
32A…係止爪部
32B…目視窓