(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶制御部は、前記上昇指示の終了時点における前記天板の上昇終了高さが前記前記撮像機構の開口に挿入可能な下限高さよりも高い場合、前記上昇開始高さを前記基準高さとして前記記憶部に記憶させ、前記上昇指示の終了時点における前記天板の上昇終了高さが前記下限高さよりも低い場合、前記記憶部に記憶されている前記上昇開始高さを前記記憶部から消去する、請求項3記載の画像診断装置。
被検体のための天板と、前記天板を移動自在に支持する支持機構と、前記天板を移動させるために前記支持機構に供給される動力を発生する動力発生部と、前記天板への上昇指示を受け付ける第1の操作部と、前記天板への下降指示を受け付ける第2の操作部と、前記上昇指示がなされた時点における前記天板の基準高さを記憶する記憶部と、を具備する医療用寝台装置の制御方法であって、
前記上昇指示がなされた時点における前記天板の基準高さを前記記憶部に記憶させ、
前記下降指示がなされた場合、前記基準高さまで前記天板を下降させる、
ことを具備する寝台制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる画像診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、医療用寝台装置、及び寝台制御方法を説明する。
【0008】
本実施形態に係る画像診断装置は、医療用寝台装置とこの医療用寝台装置に載置された被検体(患者)に関する医用画像データを収集するための撮像機構とを用いる如何なる種類にも適用可能である。例えば、本実施形態に係る画像診断装置としては、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、SPECT装置、PET装置、放射線治療装置等が適用可能である。以下、説明を具体的に行うため本実施形態に係る画像診断装置は、X線コンピュータ断層撮影装置であるものとする。
【0009】
図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示す図である。
図2は、架台10と医療用寝台装置30との斜視図である。架台10と医療用寝台装置30とは、例えば、CT撮影室に設置されている。コンソール50は、例えば、CT撮影室に隣接する制御室等に設置されている。
【0010】
図2に示すように、架台10は、略円筒形状を有する開口部11aが形成された架台筐体11を有している。架台筐体11の内部には、略円筒形状を有する回転リング12が搭載されている。架台筐体11は、回転リング12を回転軸R1回りに回転可能に支持している。回転リング12には、回転軸R1を挟んで対向するようにX線管13とX線検出器14とが取り付けられている。開口部11aの一部空間領域は、FOV(field of view)に設定される。開口部11aには、天板31が挿入される。回転リング12は、回転駆動部15からの駆動信号の供給を受けて回転軸R1回りに一定の角速度で回転する。回転駆動部15は、架台制御部16からの制御信号に従って回転リング12に駆動信号を供給する。
【0011】
また、架台筐体11は、鉛直軸(図示せず)に対して傾斜可能に回転リング12を支持している。回転リング12は、傾斜駆動部17からの駆動信号の供給を受けて鉛直軸に対して傾斜(チルト)する。傾斜駆動部17は、架台制御部16からの制御信号に従って回転リング12に駆動信号を供給する。
【0012】
図2に示すように、架台筐体11の前面には、操作者が手で操作可能な操作パネルを有する操作パネル部18が取り付けられている。操作パネル部18は、架台10及び医療用寝台装置30を操作するための複数のスイッチを有している。操作パネル部18は、操作者の利便性の向上のため、開口部11aを挟んで両側に設けられている。架台10に対する操作のためのスイッチに対応する指示信号は架台制御部16に供給され、医療用寝台装置30に対する操作のためのスイッチに対応する指示信号は寝台制御部34に供給される。
【0013】
X線管13は、高電圧発生部19からの高電圧の印加とフィラメント電流の供給とを受けてX線を発生する。高電圧発生部19は、架台制御部16からの制御信号に従う高電圧をX線管13に印加し、架台制御部16からの制御信号に従うフィラメント電流をX線管13に供給する。
【0014】
X線検出器14は、X線管13から発生されたX線を検出する。X線検出器14は、2次元状に配列された複数の検出素子を搭載する。各検出素子は、X線管13からのX線を検出し、検出されたX線のエネルギーに応じた電気信号を生成する。生成された電気信号は、データ収集部(DAS:data acquisition system)20に供給される。データ収集部20は、架台制御部16による制御に従って、X線検出器14を介して電気信号をビュー(view)毎に収集する。データ収集部20は、収集されたアナログの電気信号をデジタルデータに変換する。デジタルデータは、生データと呼ばれている。生データは、コンソール50に供給される。
【0015】
架台制御部16は、コンソール30から供給された撮像条件や撮像プロトコル、架台操作パネル部18からの指示信号に従って回転駆動部15、傾斜駆動部17、高電圧発生部19、データ収集部20、及び医療用寝台装置30の寝台制御部34を制御する。
【0016】
図2に示すように、架台10の近傍には、医療用寝台装置30が設置されている。医療用寝台装置30は、被検体のための天板31を備えている。天板31は、天板支持機構32により3次元空間内を移動自在に支持されている。天板31に載置された被検体の体軸が回転リング12の回転軸R1に一致するように天板31が位置決めされる。なお、天板31の長軸をZ軸、天板31の短軸をX軸、Z軸及びX軸に直交する鉛直軸をY軸とする。架台筐体11の前面に対して向かい合って立っている操作者から見て正面方向(+Z方向)を奥方向と呼び、背面方向(−Z方向)を手前方向と呼ぶことにする。架台筐体11の前面に対して向かい合って立っている操作者から見て右方向(+X方向)をそのまま右方向と呼び、左方向(−Z方向)をそのまま左方向と呼ぶことにする。また、天板31が上昇する方向(+Y方向)を上方向と呼び、下降する方向(−Y方向)を下方向と呼ぶことにする。
【0017】
天板支持機構32は、天板31をX軸、Y軸、及びZ軸に関して移動自在に支持する。天板支持機構32は、寝台駆動部33からの駆動信号の供給を受けて天板31を移動させる。寝台駆動部33は、寝台制御部34からの制御信号に従って駆動信号を天板支持機構32に供給する。寝台駆動部33は、医療用寝台装置30に内蔵された、サーボモータ等のモータ(動力発生装置)を含んでいる。モータは、天板31の可動軸毎に設けられている。なお、天板支持機構32は、X軸、Y軸、及びZ軸以外にも、横揺れ軸(roll)、縦揺れ角、及び偏揺れ角等の他の次元の可動軸に沿って移動可能に天板31を支持しても良い。ただし、以下の説明を簡単に行うため、天板支持機構32は、X軸、Y軸、及びZ軸に沿って移動可能に天板31を支持するものとする。
【0018】
寝台駆動部33には位置検出部35が取り付けられている。位置検出部35は、XYZ空間における天板31の位置を既存の位置検出機構を利用して繰り返し検出する。位置検出機構としては、典型的には、ロータリーエンコーダが用いられる。ロータリーエンコーダは、モータの回転軸に取り付けられ、モータが一定角度回転する毎に電気パルスを出力する。ロータリーエンコーダは、モータ毎、すなわち、天板31の可動軸毎に取り付けられている。位置検出部35は、各位置検出機構からの電気パルスに基づいて各可動軸に関する天板31の位置を計測する。ここで、天板31の位置を単に天板位置と呼ぶことにする。また、X軸で規定される天板位置をX位置、Y軸で規定される天板位置をY位置(高さ)、Z軸で規定される天板位置をZ位置と呼ぶことにする。計測された天板位置のデータは、寝台制御部34と記憶制御部37とに供給される。
【0019】
医療用寝台装置30には、操作者が足で操作可能な複数のフットスイッチを有するフットスイッチ部36が取り付けられている。押下されたフットスイッチに対応する指示信号は、寝台制御部34に供給される。
【0020】
記憶制御部37は、寝台制御部34による制御に従って天板位置のデータの記憶部38への読み書きを制御する。記憶部38は、医療用寝台装置30に内蔵された記憶デバイスである。記憶部38は、主として、記憶部制御部37から供給された天板位置のデータを記憶する。
【0021】
寝台制御部34は、医療用寝台装置30の中枢として機能する。寝台制御部34は、架台制御部16からの制御信号やフットスイッチ部36及び架台操作パネル部18からの指示信号に従って天板31を移動するように寝台駆動部33に制御信号を供給する。また、寝台制御部34は、フットスイッチ部36または架台操作パネル部18を介して上昇指示がなされたことを契機として記憶制御部37を制御し、上昇指示がなされた時点における天板位置を自動帰還機能に関する自動停止位置(目標帰還位置)として記憶部38に記憶させる。また、寝台制御部34は、フットスイッチ部36または架台操作パネル部18を介して下降指示がなされたことを契機として寝台駆動部33を制御し、天板31を自動停止位置(目標帰還位置)に自動的に配置する。自動帰還機能については後述する。
【0022】
図1に示すように、コンソール50は、架台10に接続されている。架台10は、X線コンピュータ断層撮影装置の中枢として機能する。具体的には、コンソール50は、データ収集部20からの生データに基づいてCT画像データを再構成する。コンソール50は、CT画像データを表示機器70に表示する。また、コンソール50は、操作部(図示せず)を介して入力された撮像条件や撮像プロトコルに従ってX線CT撮像を実行するために架台制御部16を制御する。
【0023】
以下、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の動作例について説明する。まずは、架台10と医療用寝台装置30との位置関係について
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、架台10と医療用寝台装置30とをX軸方向から見た側面図であり、
図4は、架台10と医療用寝台装置30とをZ軸方向から見た側面図である。架台筐体11の開口部11aの最上端の高さはYfmaxであり、最下端の高さはYfminあるとする。挿入可能上限高さYinmaxは開口部11aへ挿入可能な天板31の高さの上限であり、挿入可能下限高さは開口部11aへ挿入可能な天板31の高さの下限でYinminであるとする。この場合、開口部11aへ挿入可能な天板31の高さの範囲は、YinmaxとYinminの間である。Z軸に沿う天板31の最高可動高さは、被検体の体軸を回転軸R1の高さに設定可能であればどの高さでも良い。典型的には、Z軸に沿う天板31の最高可動高さは、中心軸R1の高さよりも若干低い高さに設定される。架台筐体11の前面のZ軸に関する位置はZgfであり、架台筐体11の後面のZ軸に関する位置はZgeとする。天板31のZ方向に関する端部のうちの架台筐体に近い方の端部を奥側端部31e、架台筐体11から遠い方の端部を手前側端部31fと呼ぶことにする。奥側端部31eが架台筐体11の前面Zgfより手前に配置されている場合、天板31は、高さYinminよりも低い位置に降下することができる。天板31が高さYinminよりも高い位置にある場合、天板31は、開口部11a内に進入することができる。すなわち、高さYinminよりも低い高さ範囲は、天板31を開口部11a内に挿入することができない高さ範囲、すなわち、挿入不能範囲である。
【0024】
次に、本実施形態に係る医療用寝台装置30の動作について説明する。医療寝台装置30は、天板31の移動に関する操作機能として、マニュアル操作機能と自動操作機能とを有している。マニュアル操作機能は、操作者がスイッチを押下している期間、天板31を一定方向に移動させ続ける機能である。マニュアル操作機能の場合、操作者がスイッチを解放しない限り天板31は停止しない。自動操作機能は、操作者がスイッチを押下している期間、天板31を目標位置に向けて移動させ、目標位置に到達したことを契機として天板31を自動的に停止させる機能である。自動操作機能の場合、操作者がスイッチを押下していたとしても、天板31が目標位置に到達することを契機として天板31が自動的に停止される。
【0025】
次に、マニュアル操作機能について具体的に説明する。マニュアル操作機能としては、上昇や下降、挿入、退避、右移動、左移動等の操作機能がある。
【0026】
上昇操作機能は、上昇スイッチの押下により実行される。上昇スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をY軸に沿って一定速あるいは可変速で上昇させる。上昇スイッチが操作者により解放されることを契機として、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31の上昇を停止させる。
【0027】
下降操作機能は、下降スイッチの押下により実行される。下降スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をY軸に沿って一定速あるいは可変速で下降させる。下降スイッチが操作者により解放されることを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31の下降を停止させる。
【0028】
挿入操作機能は、挿入スイッチの押下により実行される。挿入スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をZ軸に沿って一定速あるいは可変速で奥方向にスライドさせる。挿入スイッチが操作者により解放されることを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31のスライドを停止させる。
【0029】
退避操作機能は、退避スイッチの押下により実行される。退避スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をZ軸に沿って一定速あるいは可変速で手前方向にスライドさせる。退避スイッチが操作者により解放されることを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31のスライドを停止させる。
【0030】
右移動操作機能は、右スイッチの押下により実行される。右スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をX軸に沿って一定速あるいは可変速で右方向にスライドさせる。右スイッチが操作者により解放されることを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31のスライドを停止させる。
【0031】
左移動操作機能は、左スイッチの押下により実行される。左スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をX軸に沿って一定速あるいは可変速で左方向にスライドさせる。左スイッチが操作者により解放されることを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31のスライドを停止させる。
【0032】
本実施形態に係る医療用寝台装置30に実装されている自動操作機能としては、自動挿入機能と自動帰還機能とがある。
【0033】
自動挿入機能は、X線CT撮像前に利用される。自動挿入機能は、患者載置位置から開口部内の事前に設定された位置(以下、目標挿入位置と呼ぶ)まで天板31を自動的に移動する機能である。目標挿入位置の高さは、挿入可能上限高さと挿入可能下限高さとの間の任意の高さに設定される。自動挿入機能は、自動挿入スイッチの押下により実行される。自動挿入スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をY軸に沿って上昇させるとともに、天板31をZ軸に沿って奥方向にスライドさせる。そして天板31が目標挿入位置に到達することを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31を自動的に停止する。具体的には、天板31が目標挿入位置の高さに到達することを契機として、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31の上昇を自動的に停止させ、天板31が目標挿入位置のZ位置に到達することを契機として、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31の奥方向へのスライドを自動的に停止させる。なお、天板31が目標挿入位置に到達する前に自動挿入スイッチが解放された場合、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31の上昇とスライドとを停止させる。
【0034】
自動帰還機能は、CT撮像後に利用される。自動帰還機能は、開口部11a内の撮影位置から開口部外の自動停止位置(以下、目標帰還位置と呼ぶ)まで天板31を自動的に移動する機能である。後述のように、目標帰還位置は、患者が降り易い位置、あるいは、降ろし易い位置に設定されている。自動帰還機能は、自動帰還スイッチの押下により実行される。具体的には、自動帰還スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をZ軸に沿って手前方向にスライドさせ、天板31の奥側端部31eが架台筐体11の前面位置Zgfに到達することを契機として、寝台駆動部33を制御して天板31をY軸に沿って下降させる。そして寝台制御部34は、天板31が目標帰還位置に到達することを契機として、寝台駆動部33を制御して天板31を自動的に停止する。具体的には、天板31が目標帰還位置のZ位置に到達することを契機として、寝台駆動部33を制御して天板31の手前方向のスライドを自動的に停止させ、天板31が目標帰還位置の高さに到達することを契機として、寝台駆動部33を制御して天板31の降下を自動的に停止させる。天板31が自動停止位置に到達する前に自動帰還スイッチが解放された場合、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31の下降とスライドとを停止させる。なお、自動帰還機能における天板31の動作はこれに限定されない。例えば、自動帰還スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をZ軸に沿って手前方向にスライドさせるとともに、天板31をY軸に沿って挿入可能下限高さまで下降させても良い。天板31が挿入可能下限高さまで到達すると寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31の降下を自動的に停止し、引き続き天板31をZ軸に沿って手前方向にスライドさせる。そして天板31の奥側端部31eが架台筐体11の前面位置Zgfに到達することを契機として、天板制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をY軸に沿って降下させるとともに、引き続き天板31をZ軸に沿って手前方向にスライドさせる。そして寝台制御部34は、天板31が目標帰還位置に到達することを契機として、寝台駆動部33を制御して天板31を自動的に停止する。
【0035】
上昇スイッチ、下降スイッチ、挿入スイッチ、退避スイッチ、右移動スイッチ、左移動スイッチ、自動挿入スイッチ、及び自動帰還スイッチは、架台操作パネル部18に搭載されている。上述のように、フットスイッチ部36は、典型的には、操作者により機能を任意に割当可能な2つのフットスイッチが搭載されている。操作者は、上昇操作機能、下降操作機能、挿入操作機能、退避操作機能、右移動操作機能、左移動操作機能、自動挿入機能、及び自動帰還機能のうちの任意の機能をフットスイッチ部36に搭載された各フットスイッチに割り当てることができる。フットスイッチ部36により天板31の開口部11a内への配置と患者降ろし位置への配置との両方を実現するために、二つのフットスイッチには自動挿入スイッチと自動帰還スイッチとがそれぞれ割り当てられると良い。なお、フットスイッチ部36に搭載されるフットスイッチの数は、二つに限定されない。フットスイッチ部36には一つのフットスイッチが搭載されていても良いし、3つ以上のフットスイッチが搭載されていても良い。
【0036】
次に、自動帰還機能についてより詳細に説明する。自動帰還機能は、上述のように、目標帰還位置に自動的に天板31を配置する機能である。目標帰還位置の高さは、初期的には、予め設定されたデフォルト値に設定されている。従って、自動帰還機能により天板31を目標帰還位置に配置された後、操作者は、上昇スイッチや下降スイッチ、挿入スイッチ、退避スイッチ、右移動スイッチ、左移動スイッチ等のマニュアル操作スイッチを操作し、天板31を個々の患者にとって降り易い(または降ろされ易い)高さに配置させる必要がある。
【0037】
本発明者は、患者が載る時の天板31の高さと患者が降りる時の天板31の高さとが略等しいという経験則を見出した。本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、この経験則に基づいて、特別なセンサやインターフェース等の付加機器を搭載することなく、X線CT撮像後において個々の患者に応じた適切な高さに天板31を自動的に停止させることを実現する。
【0038】
以下、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置におけるX線CT撮像時のルーチン作業について説明する。
【0039】
図5は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置のCT検査におけるルーチン作業の典型的な流れを説明する図である。X線CT撮像前において天板31は、初期位置に配置されている。初期位置は、例えば、前回のX線CT撮像の終了時における天板位置である。従って、初期位置が今回のX線CT撮像の患者にとって降り易い(または降ろされ易い)高さではない場合がある。
図5に示すように、X線CT撮像前において操作者は、上昇スイッチや下降スイッチ等のマニュアル操作スイッチを操作して天板31を初期位置から移動して、今回のX線CT撮像の患者に適した患者載置位置に配置する(ステップS1)。患者載置位置は、医療用寝台装置に設定されるパラメータではない。操作者は、例えば、患者の体型や身長、状態等を観察することにより、この患者が降り易い(または降ろし易い)高さを主観的に判断する。例えば、患者が大人の一般男性の場合、患者は歩いてCT撮影室に入り、自ら天板31の上に載る。この場合、操作者は、一般男性の患者が腰掛けやすい高さに天板31をマニュアル操作で降下させる。患者が子供や背の低い高齢者の場合、一般男性よりも低い位置に天板31を降下させる。また、患者が操作者等により補助されながらCT撮影室に入室されたり、ストレッチャーに載せられた状態でCT撮影室に入室されたりする場合、操作者は、開口部11aに挿入可能な程度の高さ、より厳密には、挿入可能な程度の高さより若干低い高さまで天板31を上昇させる。
【0040】
天板31が患者載置位置に配置されると、患者が天板31に載る、あるいは、天板31に載せられる(ステップS2)。患者の天板31への載置が完了すると操作者は、天板31を開口部11a内に挿入するために、フットスイッチ部36あるいは架台操作パネル部18を介して天板31の上昇を指示する(ステップS3)。
【0041】
天板31を開口部11a内に挿入する手段としては、マニュアル操作と自動挿入機能とがある。マニュアル操作の場合、操作者は、主に上昇スイッチと挿入スイッチとを適宜操作することにより天板31を開口部11a内の任意の位置に挿入する。具体的には、操作者は、まず、上昇スイッチを押下する。上昇スイッチが押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31を上昇させる。また、操作者は、天板31が挿入可能下限高さまで上昇したと判断すると、上昇スイッチに加え、挿入スイッチを押下する。挿入スイッチが押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31を奥方向にスライドする。そして、操作者は、患者の体軸の高さが回転軸R1の高さに一致したと判断すると、上昇スイッチを解放する。上昇スイッチが解放されることを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31を停止させる。また、操作者は、天板31が開口部11a内に挿入された判断すると、挿入スイッチを解放する。挿入スイッチが解放されることを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31を停止させる。自動挿入機能を用いる場合、操作者は、自動挿入スイッチを押下する。自動挿入スイッチが押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31をY軸に沿って上昇させるとともに、天板31をZ軸に沿って奥方向にスライドさせる。天板31が移動されている間、位置検出部35は、繰り返し天板位置を検出している。寝台制御部34は、位置検出部35により検出される天板位置をモニタリングし、天板31が目標挿入位置に到達することを検知する。天板31が目標挿入位置に到達したことを検知すると寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31を自動的に停止する。
【0042】
その後、操作者は、被検体の撮像部位の中心が開口部の撮影中心(アイソセンタ)に一致するように、天板位置をマニュアル操作により微調整する。なお、天板31を完全に開口部11a内に挿入する前に、天板31を挿入可能高さで一時停止し、患者固定具の確認や造影剤のルート確保を行う場合もある。
【0043】
このように、患者載置位置から開口部11a内まで天板31を移動させる場合、上昇スイッチまたは自動挿入スイッチにより、天板31の上昇指示がなされる。記憶制御部37は、上昇指示がなされたことを契機として、上昇指示がなされた時点における天板位置を目標帰還位置として記憶部38に記憶させる(ステップS4)。すなわち、目標帰還位置は、患者が天板31に載る時、あるいは、患者が天板31に載せられた時の天板31の高さに設定される。なお、目標帰還位置の設定アルゴリズムの詳細については後述する。
【0044】
目標帰還位置として、天板31の上昇指示がなされた時点における天板31の高さ、Z位置、及びX位置が互いに関連付けて記憶されると良い。なお、本実施形態において目標帰還位置は、少なくとも高さの次元を有していれば良く、Z次元及びX次元は、上昇指示がなされた時点におけるZ位置及びX位置ではなく、デフォルト値に設定されても良い。目標帰還位置のZ位置がデフォルト値に設定される場合、Z位置のデフォルト値は、目標帰還位置のZ位置は手前方向に関する天板31の可動範囲の限界値に設定されると良い。また、目標帰還位置のX位置がデフォルト値に設定される場合、X位置のデフォルト値は、中心X位置(アイソセンタのX位置)に設定されると良い。また、目標帰還位置として、上昇指示がなされた時点における回転リング12の傾斜角や架台筐体11のZ位置が関連付けられても良い。なお、以下の説明においては、説明の簡単のため、患者載置位置の高さ以外の次元はデフォルト値であるものとする。すなわち、以下の説明においては、説明の簡単のため、目標帰還位置の高さは、患者が天板31に載った高さ(あるいは、天板31に載せられた高さ)であり、その他の次元はデフォルト値であるとする。
【0045】
患者を開口部11a内に配置し終わると、操作者は、架台操作パネル部18等に搭載された撮影開始ボタンを押下する。撮影開始ボタンが押下されると架台10によりX線CT撮像が実行される(ステップS5)。X線CT撮像時においては、回転リング12が回転軸R1回りに回転しながらX線管13から繰り返しX線が放射される。必要であれば、回転リング12は、鉛直軸に対して傾けられても良い。データ収集部20は、X線検出器14から被検体に関する生データを収集する。収集された生データは、コンソール50に伝送される。コンソール50は、生データに基づいてCT画像データを再構成する。表示機器70は、CT画像データを表示する。
【0046】
X線CT撮像の終了後、操作者は、天板31を開口部11a内から開口部11a外の目標帰還位置まで移動するために、フットスイッチ部36あるいは架台操作パネル部18を介して天板31の下降を指示する(ステップS6)。
【0047】
天板31を目標帰還位置に配置する方法としては、マニュアル下降操作を利用する方法と自動帰還機能を利用する方法とがある。マニュアル下降操作の場合、操作者は、主に下降スイッチと退避スイッチとを適宜操作することにより天板31を開口部11a外の目標帰還位置に配置する。具体的には、操作者は、まず、X線CT撮像後、退避スイッチと下降スイッチとを同時に押下する。下降スイッチが押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31を下降する。寝台制御部34は、位置検出部35により繰り返し検出される天板位置をモニタリングし、天板31が挿入可能下限高さまで到達することを検知する。天板31が挿入可能下限高さに到達したことを検知すると寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31を自動的に停止する。退避スイッチが押下されている期間、寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31をZ軸に沿って手前側にスライドさせる。操作者は、天板31の奥側端部が架台筐体11の前面から十分離れたと判断すると、退避スイッチを解放する。退避スイッチが解放されることを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御し、天板31を停止させる。また、寝台制御部34は、天板31のZ軸に沿う移動中、位置検出部35により繰り返し検出される天板位置をモニタリングし、天板31の奥側端部31eが架台筐体11の前面位置Zgfに到達することを検知する。奥側端部31eが前面位置Zgfに到達することを検知すると、天板制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31をY軸に沿って降下させるとともに、引き続き天板31をZ軸に沿って手前方向にスライドさせる。そして寝台制御部34は、天板31が目標帰還位置に到達することを契機として、寝台駆動部33を制御して天板31を自動的に停止する。
【0048】
自動帰還機能を用いる場合、操作者は、X線CT撮像後、自動帰還スイッチを押下する。自動帰還スイッチが操作者により押下されている期間、寝台制御部34は、位置検出部35により検出される天板位置をモニタリングし、天板31の奥側端部が架台筐体11の前面位置に到達することを検知する。天板31の奥側端部が架台筐体11の前面位置に到達することを契機として寝台制御部34は、寝台駆動部33を制御して天板31を引き続きZ軸に沿って手前方向にスライドさせるとともに、天板31をY軸に沿って下降する。そして寝台制御部34は、天板31が目標帰還位置に到達することを契機として寝台駆動部33を制御して天板31を自動的に停止する。
【0049】
天板31が目標帰還位置に配置されたことを契機として記憶制御部37は、後述のアルゴリズムに従って目標帰還位置を初期化する(ステップS7)。すなわち、目標帰還位置は、デフォルト値に戻される。
【0050】
天板31が目標帰還位置に配置されると、患者は自力で天板31から降りる、あるいは、操作者等の補助を受けて天板31から降ろされる(ステップS8)。
【0051】
このように本実施形態によれば操作者が下降スイッチあるいは自動帰還スイッチを押下し続けるだけで天板31を個々の患者に適した降り易い(または降ろされ易い)高さに自動的に配置することができる。従って本実施形態は、従来に比して、患者が降り易い(または降ろされ易い)高さへの天板31の移動を容易に行うことができる。これにより、操作者は、患者の介護等の天板31の移動以外の作業に集中することができる。
【0052】
以上により、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置のCT検査におけるルーチン作業の流れの説明を終了する。次に、ステップS4において記憶制御部37により実行される目標帰還位置の設定アルゴリズムの詳細について説明する。
図6は、記憶制御部37による目標帰還位置の設定アルゴリズムを示す図である。
図6に示すように、目標帰還位置の設定アルゴリズムは、自動挿入スイッチの操作に係る判定条件CoAと上昇スイッチの操作に係る判定条件CoBとから構成される。判定条件CoAと判定条件CoBとの少なくとも一方が満足された場合(OR1:真)、記憶制御部37は、動作指示時の天板位置を目標帰還位置として記憶する。判定条件CoAと判定条件CoBとの両方が満足されなかった場合(OR1:偽)、記憶制御部37は、動作指示時の天板位置を目標帰還位置として記憶せず、デフォルト値を目標帰還位置に設定する。
【0053】
自動挿入スイッチの操作に係る判定条件CoAは、判定条件CoA1のみを有している。判定条件CoAは、自動挿入動作指示がなされた場合、真であり、自動挿入動作指示がなされなかった場合、偽であると規定される。具体的には、自動挿入スイッチが押下された場合、記憶制御部37は、条件CoA1が満足された(真)であると判定する。この場合、判定条件CoAまたは判定条件CoBとの少なくとも一方が満足されるので(OR1:真)、記憶制御部37は、自動挿入動作指示時において位置検出部35により検出された天板位置を目標帰還位置として記憶する。すなわち、自動挿入動作指示時において位置検出部35により検出された天板位置が目標帰還位置に設定される。
【0054】
上昇スイッチの操作に係る判定条件CoBは、判定条件CoB1、判定条件CoB2、及び判定条件CoB3を有している。判定条件CoB1は、マニュアル上昇動作指示がなされた場合、真であり、マニュアル上昇動作指示がなされなかった場合、偽であると規定される。具体的には、上昇スイッチが押下された場合、記憶制御部37は、判定条件CoB1が満足された(真)と判定する。上昇スイッチが押下されていない場合、記憶制御部37は、判定条件CoB1が満足されていない(偽)であると判定する。判定条件CoB2は、マニュアル上昇動作指示がなされた時点の天板位置が開口部11aに挿入可能な下限高さ(挿入可能下限高さ)より低い場合、真であり、高い場合、偽であると規定される。具体的には、上昇スイッチが押下された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも低い場合、記憶制御部37は、条件CoB2が満足された(真)と判定する。上昇スイッチが押下された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも高い場合、記憶制御部37は、条件CoB2が満足されていない(偽)と判定する。判定条件CoB3は、マニュアル上昇動作指示が完了した時点の天板位置が挿入可能下限高さより高い場合、真であり、低い場合、偽であると規定される。具体的には、上昇スイッチが解放された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも高い場合、記憶制御部37は、条件CoB3が満足された(真)と判定する。上昇スイッチが解放された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも低い場合、記憶制御部37は、条件CoB3が満足されていない(偽)と判定する。
【0055】
条件CoB1、条件CoB2、及び条件CoB3の全てが満足された場合(AND1:真)、判定条件CoAまたは判定条件CoBとの少なくとも一方が満足されるので(OR1:真)、記憶制御部37は、自動挿入動作指示時において位置検出部35により検出された天板位置を目標帰還位置として記憶する。
【0056】
マニュアル上昇操作に係る設定アルゴリズムを利用する場合の記憶制御部37の動作の流れについて以下に説明する。上昇スイッチが押下される毎に記憶制御部37は、上昇スイッチが押下された時点の天板位置を記憶部38に記憶させる。そして、記憶制御部37は、上昇スイッチが押下された時点の天板位置の高さが、挿入可能下限高さよりも低いか否か、すなわち、条件CoB2を満足するか否かを判定する。条件CoB2を満足しないと判定した場合、記憶制御部37は、記憶部38に記憶された天板位置のデータを消去する。条件CoB2を満足すると判定した場合、記憶制御部37は、天板位置のデータを記憶部38に保持させておく。次に、記憶制御部37は、上昇スイッチが解放されることを待機している。上昇スイッチが解放されたことを契機として記憶制御部37は、上昇スイッチが解放された時点の天板位置の高さが挿入可能下限高さよりも高いか否か、すなわち、条件Co3を満足するか否かを判定する。条件CoB3を満足しないと判定した場合、記憶制御部37は、記憶部38に記憶された天板位置のデータを消去する。条件CoB3を満足すると判定した場合、記憶制御部37は、記憶部38に記憶された天板位置を目標帰還位置として記憶させる。
【0057】
このように記憶制御部37は、上昇スイッチが押下された時点の天板位置を直ちに目標帰還位置に設定することはしない。この原因としては、X線CT撮像前において次の二つの操作が頻繁に行われることが挙げられる。第1の原因としては、患者の身長等に合わせて天板31を天板載置位置に配置するために天板位置を微調整する場合があることが挙げられる。この場合、挿入可能下限高さより低い位置において上昇スイッチが押下されたり、上昇スイッチが解放されたりする。第2の原因としては、天板31を撮影位置に配置するために天板位置を微調整する場合があることが挙げられる。この場合、挿入可能下限高さより高い位置において上昇スイッチが押下されたり、上昇スイッチが解放されたりする。これら微調整のために上昇スイッチが押下された時点の天板位置の高さは、患者が降り易い、あるいは、患者を降ろし易い高さではない。この微調整のために上昇スイッチが押下された時点において、この押下された時点の天板位置の高さが目標帰還位置として設定されることを除外するために、前述の条件CoB2及びCoB3が設けられている。
【0058】
なお、上記の条件AND1または条件OR1が満足されずにX線CT撮像が開始された場合、記憶制御部37は、デフォルト値を目標帰還位置に設定する。
【0059】
前述したように、天板31を患者載置位置に配置するために天板位置の微調整が行われる。天板位置の微調整は、上昇スイッチや下降スイッチの操作のみならず、自動挿入スイッチの操作により実行される場合がある。
図6の設定アルゴリズムが実行された場合、微調整のために自動挿入スイッチが押下された場合においても、自動挿入スイッチが押下かされた時点の天板位置が目標帰還位置として記憶されてしまう。微調整のための自動挿入スイッチの押下時点の天板位置は、患者が天板31に載る(あるいは、天板に載らされた)位置ではないため、患者が天板31から降り易い(あるいは、降ろし易い)位置ではない。このことを防止するため記憶制御部37は、
図6の目標帰還位置の設定アルゴリズムよりも堅牢な設定アルゴリズムを実行しても良い。
【0060】
図7は、
図5のステップS4において記憶制御部37により実行される目標帰還位置の他の設定アルゴリズムを示す図である。
図7に示す設定アルゴリズムは、
図6の設定アルゴリズムに判定条件CoA2が追加されている。判定条件CoA2は、自動挿入動作指示が完了した時点の天板位置が挿入可能下限高さより高い場合、真であり、低い場合、偽であると規定される。具体的には、自動挿入スイッチが解放された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも高い場合、記憶制御部37は、条件CoA2が満足された(真)と判定する。自動挿入スイッチが解放された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも低い場合、記憶制御部37は、条件CoA2が満足されていない(偽)と判定する。記憶制御部37は、判定条件CoA1と判定条件CoA2との両方が満足された場合(AND2:真)、判定条件CoAまたは判定条件CoBとの少なくとも一方が満足されるので(OR1:真)、記憶制御部37は、自動挿入動作指示時において位置検出部35により検出された天板位置を目標帰還位置として記憶する。
【0061】
図7の自動挿入機能に係る設定アルゴリズムを利用する場合の記憶制御部37の動作の流れについて以下に説明する。自動挿入スイッチが押下される毎に記憶制御部37は、自動挿入スイッチが押下された時点の天板位置を記憶部38に記憶させる。そして、記憶制御部37は、自動挿入スイッチが解放されることを待機している。自動挿入スイッチが解放されたことを契機として記憶制御部37は、自動挿入スイッチが解放された時点の天板位置の高さが挿入可能下限高さよりも高いか否か、すなわち、判定条件CoA2を満足するか否かを判定する。判定条件CoA2を満足しないと判定した場合、記憶制御部37は、記憶部38に記憶された天板位置のデータを消去する。判定条件CoA2を満足すると判定した場合、記憶制御部37は、記憶部38に記憶された天板位置を目標帰還位置として記憶させる。
【0062】
このように、
図7の自動挿入機能に係る設定アルゴリズムにより記憶制御部37は、自動挿入スイッチが挿入可能下限高さよりも低い位置で解放された場合において、自動挿入スイッチが押下された時点の天板位置のデータを記憶部38から消去する。従って記憶制御部37は、天板31の微調整のための自動挿入スイッチの押下時点の天板位置が目標帰還位置として記憶されることが防止することができる。
【0063】
以上で
図5のステップS4において記憶制御部37により実行される目標帰還位置の記憶アルゴリズムについての説明を終了する。
【0064】
次に、
図5のステップS7において記憶制御部37により実行される目標帰還位置の消去アルゴリズムについて説明する。
図8は、目標帰還位置の消去アルゴリズムを示す図である。目標帰還位置の消去アルゴリズムは、
図8に示すように、自動帰還スイッチの操作に係る判定条件CoCと下降スイッチの操作に係る判定条件CoDとから構成される。判定条件CoCと判定条件CoDとの少なくとも一方が満足された場合(OR2:真)、記憶制御部37は、記憶部38から目標帰還位置のデータを消去する。判定条件CoCと判定条件CoDとの両方とも満足されなかった場合、記憶制御部37は、記憶部38から目標帰還位置のデータを消去せず、記憶部38に保存させておく。
【0065】
自動帰還スイッチの操作に係る判定条件CoCは、判定条件CoC1と判定条件CoC2とを有している。判定条件CoC1は、自動帰還動作指示がなされた場合、真であり、自動帰還動作指示がなされなかった場合、偽であると規定される。具体的には、自動帰還スイッチが押下された場合、記憶制御部37は、条件CoC1が満足された(真)と判定する。自動帰還スイッチが押下されでいない場合、記憶制御部37は、条件CoC1が満足されていない(偽)と判定する。判定条件CoC2は、自動帰還位置にて天板31が自動停止された場合、真であり、自動帰還位置にて天板31が自動停止されなかった場合、偽であると規定される。判定条件CoC1と判定条件CoC2との両方が満足された場合(AND3:真)、判定条件CoCと判定条件CoDとの少なくとも一方が満足されているので(OR2:真)、記憶制御部37は、記憶部38から目標帰還位置のデータを消去する。
【0066】
下降スイッチの操作に係る判定条件CoDは、判定条件CoD1と判定条件CoD2とを有している。判定条件CoD1は、マニュアル下降動作指示がなされた場合、真であり、マニュアル下降動作指示がなされなかった場合、偽であると規定される。具体的には、下降スイッチが押下された場合、記憶制御部37は、条件CoD1が満足された(真)と判定する。下降スイッチが押下されでいない場合、記憶制御部37は、条件CoD1が満足されていない(偽)と判定する。判定条件CoD2は、自動帰還位置にて天板31が自動停止された場合、真であり、自動帰還位置にて天板31が自動停止されなかった場合、偽であると規定される。判定条件CoD1と判定条件CoD2との両方が満足された場合(AND4:真)、判定条件CoCと判定条件CoDとの少なくとも一方が満足されているので(OR2:真)、記憶制御部37は、記憶部38から目標帰還位置のデータを消去する。
【0067】
以下、自動帰還スイッチの操作に係る消去アルゴリズムを用いた記憶制御部37の動作の流れを説明する。X線CT撮像後において操作者は、自動帰還スイッチまたはマニュアル下降スイッチを押下する。記憶制御部37は、位置検出部35により繰り返し検出される天板位置をモニタリングし、天板31が目標帰還位置に到達した時点において寝台制御部34により自動停止されることを検知する。天板31が目標帰還位置にて停止されたことを検知すると記憶制御部37は、記憶部38から目標帰還位置のデータを消去する(Re2)。その後、記憶制御部37は、目標帰還位置をデフォルト値に設定する。
【0068】
なお、上記の条件AND3、条件AND4、または条件OR2が満足されずにX線CT検査が終了された場合、記憶制御部37は、目標帰還位置にデフォルト値を設定する。
【0069】
目標帰還位置に到達する前に天板31が停止され患者が天板31から降りたり、患者が天板31から降ろされたりする場合がある。この場合、患者が天板31に載置されていないので、目標帰還位置が記憶部38から消去されるべきある。しかしながら、上述の消去アルゴリズムによれば、目標帰還位置に到達する前に天板31が停止された場合、目標帰還位置のデータは記憶部38から消去されずに保存され続ける。このような事象に対処するために、記憶制御部37は、
図8の目標帰還位置の消去アルゴリズムよりも堅牢な消去アルゴリズムを実行しても良い。
【0070】
図9は、
図5のステップS7において記憶制御部37により実行される目標帰還位置の他の消去アルゴリズムを示す図である。
図9の消去アルゴリズムは、
図8の消去アルゴリズムに判定条件CoC3と判定条件CoD3とが追加されている。
【0071】
判定条件CoC3は、自動帰還動作指示が完了した時点の天板位置が挿入可能下限高さより低い場合、真であり、高い場合、偽であると規定される。具体的には、自動帰還スイッチが解放された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも低い場合、記憶制御部37は、条件CoC3が満足された(真)と判定する。自動帰還スイッチが解放された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも高い場合、記憶制御部37は、条件CoC3が満足されていない(偽)と判定する。記憶制御部37は、判定条件CoC2と判定条件CoC3との少なくとも一方が満足された場合(OR3:真)、判定条件CoCと判定条件CoDとの少なくとも一方が満足されているので(OR2:真)、記憶制御部37は、記憶部38から目標帰還位置のデータを消去する。
【0072】
判定条件CoD3は、マニュアル下降動作指示が完了した時点の天板位置が挿入可能下限高さより低い場合、真であり、高い場合、偽であると規定される。具体的には、下降スイッチが解放された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも低い場合、記憶制御部37は、条件CoD3が満足された(真)と判定する。下降スイッチが解放された時点の天板位置が挿入可能下限高さよりも高い場合、記憶制御部37は、条件CoD3が満足されていない(偽)と判定する。記憶制御部37は、判定条件CoD2と判定条件CoD3との少なくとも一方が満足された場合(OR4:真)、判定条件CoCと判定条件CoDとの少なくとも一方が満足されているので(OR2:真)、記憶制御部37は、記憶部38から目標帰還位置のデータを消去する。
【0073】
このように、
図9の自動帰還機能に係る消去アルゴリズムにより記憶制御部37は、下降動作指示が挿入可能下限高さよりも低い位置で下降動作指示が完了された場合においても、目標帰還位置のデータを記憶部38から消去する。従って記憶制御部37は、目標帰還位置に到達する前に天板31が停止された場合に記憶部38に目標帰還位置が保存される続けることを防止することができる。
【0074】
以上で
図5のステップS7において記憶制御部37により実行される目標帰還位置の消去アルゴリズムについての説明を終了する。
【0075】
上記説明により、本実施形態に係る画像診断装置は、天板31、天板支持機構32、寝台駆動部33、上昇指示スイッチ、下降指示スイッチ、記憶部38、及び寝台制御部34を有する。天板31は、被検体が載置される。天板支持機構32は、天板31を移動自在に支持する。寝台駆動部33は、天板31を移動させるために天板支持機構32に供給される動力を発生する。撮像機構10は、天板31に載置された被検体に関する医用画像データを収集するための機構を装備する。上昇指示スイッチは、天板31への上昇指示を受け付ける。下降指示スイッチは、天板31への下降指示を受け付ける。上昇指示スイッチと下降指示スイッチとは、架台操作パネル操作部18とフットスイッチ部36との少なくとも一方に搭載される。記憶部38は、上昇指示がなされた時点における天板31の高さを目標帰還位置として記憶する。寝台制御部34は、下降指示がなされた場合、記憶部38に記憶された目標帰還位置まで天板31を下降させるように寝台駆動部33を制御する。
【0076】
上記構成により記憶部38は、被検体が自力で天板31に載った時点(あるいは、被検体が天板31に載せられた時点)の天板31の高さを目標帰還位置として記憶することができる。このように目標帰還位置は、個々の患者の体型や状態等に応じた個々の患者に最適な高さであるといえる。寝台制御部34は、操作者からの下降指示がなされた場合、この目標帰還位置まで天板31を移動させる。従って操作者は、被検体が自力で天板31に載った時点(あるいは、被検体が天板31に載せられた時点)の高さから降りる(または、降ろされる)ことが出来る。このように本実施形態によれば、操作者は、天板位置の微調整をすること無く、ワンタッチ操作で天板31を被検体が降り易い(または降ろされ易い)高さに配置することができる。また、記憶部38は、天板31を開口部11a内に挿入するために通常行われる上昇指示がなされた時点の天板31の高さを目標帰還位置として記憶することができる。すなわち、本実施形態は、天板31の高さを記憶するための追加の操作を操作者に要求することなく、天板31の高さを記憶することができるアルゴリズムを有している。また、上記説明の通り、本実施形態は、この効果を実現するために特別なセンサやインターフェース等のハードウェアを必要としない。従って、本実施形態は、安価な構成で、天板31を個々の患者に適した高さに配置することができる。
【0077】
かくして本実施形態によれば、撮像後における操作者による天板の移動の手間を削減することを可能とする画像診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、医療用寝台装置、及び寝台制御方法を提供することが実現する。
【0078】
なお、本実施形態において寝台制御部34、記憶制御部37、及び記憶部38は、医療用寝台装置30に搭載されるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、寝台制御部34、記憶制御部37、及び記憶部38は、架台10に設けられても良いし、あるいは、コンソール50に設けられても良い。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。