特許第5955667号(P5955667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5955667建設機械の排気装置及び排気装置を備える建設機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955667
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】建設機械の排気装置及び排気装置を備える建設機械
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/20 20100101AFI20160707BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20160707BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20160707BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   F01N13/20 E
   F01N1/00 D
   F01N13/08 Z
   F01N13/08 D
   E02F9/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-148933(P2012-148933)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-9665(P2014-9665A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 皓也
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−024623(JP,U)
【文献】 実開平02−145620(JP,U)
【文献】 特開2008−067634(JP,A)
【文献】 実開昭60−160229(JP,U)
【文献】 特開2012−057414(JP,A)
【文献】 特開平10−266852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00 − 1/24
F01N 13/00 −99/00
E02F 9/00
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気を外部に且つ上方に向けて排出する建設機械の排気装置であって、
前記エンジンから排出された気体が流入するマフラーと、
前記マフラーの上方を覆うカバーに取り付けられ、前記マフラーから流出する気体を前記外部に排出する排気部材と
を有し、
前記排気部材は、前記マフラーから流出した気体が流入する流入部と、前記流入部を通過した気体が流入する流出部と、前記マフラーと常時離間して固定された状態で配置された逆流防止部材とを備え、
前記逆流防止部材は、テーパー部と前記テーパー部の下方に配置された環状の還流部材とで構成され、前記流入部に流入した気体で、該前記流出部に流入しない漏洩気体の流れ方向を前記テーパー部と前記還流部材とにより変更することによって、該漏洩気体を前記マフラーから流出した気体の流れに還流する、
ことを特徴とする建設機械の排気装置。
【請求項2】
エンジンの排気を外部に且つ上方に向けて排出する建設機械の排気装置であって、
前記エンジンから排出された気体が流入するマフラーと、
前記マフラーの上方を覆うカバーに取り付けられ、前記マフラーから流出する気体を前記外部に排出する排気部材と
を有し、
前記マフラーの上端は、前記カバーと略同一高さに配置され、
前記排気部材は、前記マフラーから流出した気体が流入する流入部と、前記流入部を通過した気体が流入する流出部と、前記マフラーと常時離間して固定された状態で配置された環状の還流部材を有する逆流防止部材とを備え、
前記逆流防止部材の前記還流部材は前記カバーと略同一高さに形成され、前記流入部に流入した気体で、前記流出部に流入しない漏洩気体の流れ方向を前記還流部材により変更することによって、該漏洩気体を前記マフラーから流出した気体の流れに還流する、
ことを特徴とする建設機械の排気装置。
【請求項3】
前記流入部は、略円筒形状を有し、
前記略円筒形状の内径は、該流入部に対向する前記マフラーの出口部の外径よりも大きい、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の建設機械の排気装置。
【請求項4】
前記逆流防止部材は、前記流入部と前記流出部とを接続する略円錐面形状の接続部材と、該接続部材の内部に配置された円板形状の前記還流部材とを備え、
前記還流部材は、中央部に略円形の開口部を有し、
前記開口部の直径は、前記マフラーの出口部の内径より大きい、
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の建設機械の排気装置。
【請求項5】
前記還流部材は、前記漏洩気体の流れ方向を該還流部材の表面に沿う方向、且つ、該還流部材の中心方向に向かう方向に変更する、ことを特徴とする、請求項に記載の建設機械の排気装置。
【請求項6】
前記還流部材は、前記マフラーの出口部と所定の距離を離間した位置に配置されている、ことを特徴とする、請求項又は請求項に記載の建設機械の排気装置。
【請求項7】
前記マフラーは、前記エンジンのエキゾーストパイプに接続され、
前記排気部材は、前記エンジンのカバー部材に取り付けられている、
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の建設機械の排気装置を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の排気装置及び排気装置を備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械には、上部旋回体にエンジン及びエンジンに関する補機などを搭載しているものがある。また、建設機械には、メンテナンス時の利便性を図るために、エンジン及びマフラーの上方に配置するカバーを開閉可能なカバーとしたものがある。更に、開閉可能なカバーを用いた建設機械では、マフラーから排出される排ガスを建設機械の外部に排出する排ガス管(排気装置のテールパイプ)をエンジンカバーに取り付けているものがある。この場合、エンジンカバーの開閉時にマフラーと排ガス管とが干渉することを防止するために、又は、排ガスの排気効率を向上させるために、排ガス管の直径をマフラーの出口部の直径よりも大きくしているものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、排ガス管とマフラー(出口部)との間に隙間がある場合でも、所謂エジェクタ効果によって、排気時にこの隙間から気体が吸引されるため、排ガスはこの隙間から漏れない。
【0005】
しかしながら、建設機械では、作業時に排ガスの排出量(エンジンの出力又は負荷など)が変動する場合があり、排ガス管内の圧力が上昇し、この隙間から排ガスが漏洩する場合があった(例えば図8のe5)。このとき、漏洩した排ガスはエンジンルームなどに侵入するため、エンジン、ラジエータ若しくはオイルクーラ等の温度上昇、又は、エンジンルームを介して予定をしていない場所に排ガスが排出されるなどの問題が発生する場合があった。
【0006】
本発明は、このような事情の下に為され、排気部材(排ガス管)とマフラーの出口部との間に隙間がある場合でも、この隙間から排ガスが漏れることを防止することができる建設機械の排気装置又はその排気装置を備えた建設機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、エンジンの排気を外部に且つ上方に向けて排出する建設機械の排気装置であって、前記エンジンから排出された気体が流入するマフラーと、前記マフラーの上方を覆うカバーに取り付けられ、前記マフラーから流出する気体を前記外部に排出する排気部材とを有し、前記排気部材は、前記マフラーから流出した気体が流入する流入部と、前記流入部を通過した気体が流入する流出部と、前記マフラーと常時離間して固定された状態で配置された逆流防止部材とを備え、前記逆流防止部材は、テーパー部と前記テーパー部の下方に配置された環状の還流部材とで構成され、前記流入部に流入した気体で、該前記流出部に流入しない漏洩気体の流れ方向を前記テーパー部と前記還流部材とにより変更することによって、該漏洩気体を前記マフラーから流出した気体の流れに還流する、ことを特徴とする建設機械の排気装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の態様によれば、エンジンの排気を外部に排出する建設機械の排気装置であって、前記エンジンから排出された気体が流入するマフラーと、前記マフラーから流出する気体を前記外部に排出する排気部材とを有し、前記排気部材は、前記マフラーから流出した気体が流入する流入部と、前記流入部を通過した気体が流入する流出部と、前記流入部と前記流出部との間隙に配置された逆流防止部材とを備え、前記逆流防止部材は、前記流入部に流入した気体で、前記流出部に流入しない漏洩気体の流れ方向を変更することによって、該漏洩気体を前記マフラーから流出した気体の流れに還流する、ことを特徴とする建設機械の排気装置であって、前記逆流防止部材は、前記流入部と前記流出部とを接続する略円錐面形状の接続部材と、該接続部材の内部に配置された円板形状の還流部材とを備え、前記還流部材は、中央部に略円形の開口部を有し、前記開口部の直径は、前記マフラーの出口部の内径より大きい、ことを特徴とする、建設機械の排気装置が提供される。また、前記還流部材は、前記漏洩気体の流れ方向を該還流部材の表面に沿う方向、且つ、該還流部材の中心方向に向かう方向に変更する、ことを特徴とする、建設機械の排気装置が提供される。更に、前記還流部材は、前記マフラーの出口部と所定の距離を離間した位置に配置されている、ことを特徴とする、建設機械の排気装置が提供される。
【0009】
更に、本発明のその他の態様によれば、上記マフラーは、前記エンジンのエキゾーストパイプに接続され、上記排気部材は、前記エンジンのカバー部材に取り付けられている、ことを特徴とする、上記排気装置のいずれか一つを備える建設機械が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る建設機械の排気装置又はその排気装置を備えた建設機械によれば、排気部材とマフラーの出口部との間に隙間がある場合でも、この隙間から排ガスが漏れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る建設機械の一例を説明する概略外観図である。
図2】本発明の実施形態に係る建設機械の排気装置の取り付け位置を説明する概略断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る建設機械の排気装置の排気部材の一例を説明する説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る建設機械の排気装置のマフラー及び排気部材の配置の一例を説明する拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る建設機械の排気装置の排気部材の内部の気体の流れを説明する説明図である。
図6】建設機械の排気装置のその他の例を説明する説明図である。
図7】建設機械の排気装置のその他の例のマフラー及び排気部材の配置を説明する拡大断面図である。
図8】建設機械の排気装置のその他の例の排気部材の内部の気体の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。なお、添付の全図面の中の記載で、同一又は対応する部材又は部品には、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的としない。したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定することができる。
【0013】
以後に、本発明の実施形態に係る排出装置を備える建設機械100を用いて、本発明を説明する。なお、本発明は、本実施形態以外でも、エンジンを搭載した建設機械であって、エンジンから排出される排ガスを建設機械外部に排出するものあれば、いずれの建設機械にも用いることができる。また、本発明を用いることができる建設機械には、油圧ショベル、クレーン車、ブルドーザ、ホイールローダ及びダンプトラック、並びに、杭打ち機、杭抜き機、ウォータージェット、泥排水処理設備、グラウトミキサ、深礎工用機械及びせん孔機械などが含まれる。
【0014】
(建設機械の構成)
本発明を用いることができる建設機械100の概略構成を、図1及び図2を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る建設機械100は、油圧アクチュエータとして、上部旋回体10Upに基端部を軸支されたブーム11と、ブーム11の先端に軸支されたアーム12と、アーム12の先端に軸支されたバケット13とを備える。また、建設機械100は、上部旋回体10Upに、動力源であるエンジンEng(図2)を搭載している。更に、建設機械100は、上部旋回体10Upに、エンジンの動力を用いて駆動される油圧ポンプ(不図示)を搭載している。
【0016】
なお、以後の説明において、建設機械100のフロント作業機側(図1のブーム11等を搭載した側)を前方という。また、建設機械100のカウンタウェイト側(前方の反対側)を後方という。
【0017】
また、本実施形態に係る建設機械100は、上部旋回体10Upの前部に運転室が設けられ、運転室の後方にエンジンルームが設けられている。
【0018】
建設機械100は、油圧ポンプから吐出される圧油(作動油)を用いて、ブーム11のブームシリンダ11cに作動油を供給する。これにより、建設機械100は、ブームシリンダ11cを長手方向に伸縮することができる。このとき、ブーム11は、ブームシリンダ11cの伸縮によって、上下方向に移動する。また、建設機械100は、ブーム11の場合と同様に、アームシリンダ12c及びバケットシリンダ13cの伸縮によって、アーム12及びバケット13を駆動する。
【0019】
図2に、本実施形態に係る建設機械100のエンジンルームの内部構成を示す。ここで、図2は、本実施形態に係る建設機械100を後方から見たときの上部旋回体10Upの内部の構造である。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る建設機械100は、エンジンルームに、防振マウント(不図示)等を介して、エンジンEngを保持している。なお、建設機械100は、エンジンEngとして、例えば4気筒の4サイクルディーゼルエンジンを用いることができる。
【0021】
本実施形態に係る建設機械100は、エンジンルーム内のエンジンEngの側方(図におけて左側)に、ラジエータRdaを配置している。また、本実施形態に係る建設機械100は、エンジンEngとラジエータRdaとの間に、冷却ファンを配置している。冷却ファンは、(例えばVベルトなどを介して、)エンジンEngのクランク軸の回転を伝達される。これにより、建設機械100は、エンジンの駆動力を用いて、冷却ファンを回転することができる。
【0022】
更に、本実施形態に係る建設機械100は、エンジンルームの上部に、エンジンカバー(カバー部材)CvEを配置している。ここで、エンジンカバーCvEは、本実施形態では、縁部の一部をヒンジ等(不図示)により回転可能に固定している。これにより、エンジンカバーCvEは、エンジンルーム内をメンテナンス(及び点検)するときに、ヒンジ等を回転中心に、開閉されることができる。また、エンジンカバーCvEは、エンジンカバーCvEの他の縁部に、エンジンカバーCvEを建設機械100に掛け止めするための係止具など(不図示)を備える。
【0023】
本発明の実施形態に係る建設機械100は、ラジエータRdaとエンジンEngとの間に配置された冷却ファンを回転することによって、建設機械100外部からラジエータRdaを経由してエンジンルーム内に冷却空気(外気)を吸い込むことができる。建設機械100は、例えばエンジンカバーCvEの側面や上部旋回体10Upの側面に設けた吸気孔から、冷却空気を吸い込むことができる。また、建設機械100は、吸い込まれた冷却空気を用いて、ラジエータRda及びオイルクーラ(不図示)によって、エンジンEngの冷却水及び圧油(作動油)を冷却することができる。更に、建設機械100は、例えば上部旋回体10Upの側面又は下面に設けた排気孔から空気(冷却後の冷却空気)を排出することができる。
【0024】
なお、建設機械100は、吸い込まれた冷却空気を用いて、エンジンルーム内のエンジンカバーCvE近傍の空間を冷却してもよい。また、建設機械100は、冷却後の空気(冷却空気)をエンジンカバーCvEの側面に形成された排気孔から建設機械100外部に排出してもよい。
【0025】
本発明の実施形態に係る建設機械100は、図2に示すように、排気装置として、エンジンルーム内のエンジンEngの側方(図におけて右側)に配置したマフラー(消音器)Mufと、マフラーMufから流出する気体を建設機械100外部に排出する排気部材20とを有する。
【0026】
ここで、本実施形態に係る建設機械100は、エキゾーストパイプ(不図示)及びターボチャージャ(不図示)を介して、マフラーMufをエンジンEngの排気マニホールド(不図示)に接続(連通)している。すなわち、本実施形態に係る建設機械100は、エンジンEngの各気筒の排気ポートから排気される排ガス(気体)を排気マニホールドに収集し、収集した排ガスを排気マニホールドからターボチャージャ及びエキゾーストパイプを介してマフラーMufに排出することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る建設機械100は、マフラーMufから流出する排ガスを排気部材20に流入する。ここで、建設機械100は、マフラーMufから流出した排ガスを、後述する図3(a)に示すエンジンカバーCvEに取り付けられた排気部材20から建設機械100(エンジンルーム)外部に排気する。
【0028】
なお、建設機械100は、エキゾーストパイプとマフラーMufとの間隙にDPD(Diesel Particulate Defuser)や尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムなどを更に備えてもよい。
【0029】
(排気部材の構成)
本発明の実施形態に係る建設機械100の排気装置の排気部材20を、図3及び図4を用いて説明する。
【0030】
本実施形態に係る排気部材20は、マフラーMufから流出した気体(排ガス)を建設機械100の外部に排出する部材である。排気部材20は、本実施形態では、図2及び図3(a)に示すように、建設機械100の後部のエンジンカバーCvEに取り付けられている。本実施形態に係る排気部材20は、図3(b)に示すように、マフラーMufから流出した気体が流入する流入部21と、流入部21を通過した気体が流入する流出部22と、流入部21と流出部22との間隙に配置された逆流防止部材23とを有する。
【0031】
排気部材20は、図3(c)に示すように、マフラーMufから排ガスf1を排気部材20の一端(流入部21)に流入され、流入した排ガスf1を排気部材20の他端(流出部22)から流出(排出)する(図中のfex)。
【0032】
なお、本発明を適用することができる排気部材は、図3等に示すものに限定されない。すなわち、逆流防止部材23(後述)を用いて、マフラーと排気管(テールパイプ)との間の隙間から排ガスが漏洩することを防止する排気部材であれば、いずれの排気部材にも本発明を適用することができる。
【0033】
流入部(マフラーガイド)21は、マフラーMufから流出した気体(排ガス)が流入するものである。流入部21は、本実施形態では、図3(b)及び図4に示すように、略円筒形状の外形を有する。また、その略円筒形状の直径(内径)は、マフラーMufの出口部の直径(外径)よりも大きい。
【0034】
流出部(テールパイプ)22は、流入部21を通過した気体(排ガス)が流入するものである。流出部22は、本実施形態では、図3(a)及び図3(b)に示すように、略円筒形状の外形を有する。また、その略円筒形状の直径(内径)は、流入部21の直径(内径)よりも小さくすることができる。更に、流出部22は、その略中央部に屈曲部を有する。すなわち、建設機械100では排気装置の流出部22(テールパイプ)をエンジンカバーCvEに取り付けているため、雨水、塵及び埃等が浸入することを防ぐ目的で、排気部材20の流出部22の開口を後方やや下方に向けている。
【0035】
逆流防止部材23は、マフラーMufと流入部21との間の隙間から気体が漏れることを防止する部材である。逆流防止部材23は、本実施形態では、流入部21に流入した気体で、流出部22に流入しない気体(以下、「漏洩気体」という。)の流れ方向を変更することによって、マフラーMuf(の出口部)と排気部材20(流入部21)との間の隙間から気体(排ガス)が漏れることを防止する。逆流防止部材23が漏洩気体の流れ方向を変更する動作は、後述する(漏洩気体を還流する動作)で説明する。
【0036】
逆流防止部材23は、図3(b)及び図4に示すように、流入部21と流出部22とを接続する略円錐面形状の接続部材23cと、接続部材23cの内部に配置された円板形状の還流部材23rとを備える。また、逆流防止部材23は、本実施形態では、図に示すように、還流部材23rの中央部に略円形の開口部23roを有する。
【0037】
開口部23roの直径は、マフラーMufの出口部の直径(内径)よりも大きい。また、還流部材23rは、マフラーMufの出口部と所定の距離を離間した位置に配置される。ここで、所定の距離とは、エンジン、排気装置及びその他建設機械の仕様に対応した距離とすることができる。また、所定の距離は、実験又は数値計算等で予め定められる距離とすることができる。
【0038】
なお、本発明を適用することができる逆流防止部材23の還流部材23rは、図3等に示すマフラーMufから流出する気体の流れ方向に対して90度に配置されるものに限定されない。すなわち、還流部材23rは、例えば90度を超えるもの又は90度未満のものでも、後述する(漏洩気体を還流する動作)で説明するマフラーMufから流出した気体f1(図5)の流れに漏洩気体を還流させる角度であれば、いずれのものも用いることができる。また、本発明を適用することができる還流部材23rの中央部の開口部23roの形状は、略円形に限定されるものではない。
【0039】
本実施形態に係る排気部材20の取り付けは、例えば次のように行うことができる。
【0040】
(1)先ず、マフラーMufの出口部(開口部)に対向するエンジンカバーCvEの位置に開口部23roを形成する。次に、形成した開口部23roに対してエンジンルーム側の位置に流入部21を溶接などで固定する。次いで、形成した開口部23roの外側(エンジンルーム側に対して反対側)に接続部材23c(を含む流出部22(テールパイプ))を溶接などで取り付ける。これにより、エンジンカバーCvEの一部を還流部材23rとして用いることができる。このため、還流部材23r専用の部品を用いる必要がなく、部品点数を減らすことができる。
【0041】
(2)先ず、マフラーMufの出口部(開口部)に対向するエンジンカバーCvEの位置に開口部を形成する。次に、形成した開口部に、排気部材20(流入部21、流出部22及び逆流防止部材23が一体となったもの)を溶接などで取り付ける。これにより、排気部材20の取り付け作業にかかる時間を短縮することができる。なお、ボルトなどによって取り付けることにより、排気部材20をエンジンカバーCvEに取替え可能に取り付けてもよい。
【0042】
なお、本発明を適用することができる排気部材20は、流入部21(マフラーガイド)を備えない構成とすることができる。
【0043】
(漏洩気体を還流する動作)
本発明の実施形態に係る建設機械100の排気装置(排気部材20)が漏洩気体を還流する動作を、図5を用いて、説明する。
【0044】
図5に示すように、本実施形態に係る排気部材20は、逆流防止部材23を用いて、マフラーMufと流入部21との間の隙間から気体(排ガス)が漏れることを防止する。
【0045】
具体的には、排気部材20は、マフラーMufから流出した気体f1を流入部21で捕捉する。このとき、マフラーMufから流出した気体f1の大部分は流出部22に流入されるが、気体f1の一部f2は逆流防止部材23の接続部材23cの方向に逸れる。
【0046】
ここで、接続部材23cの方向に逸れた気体f2は、接続部材23cの円錐面に沿って流れる(f3)。また、接続部材23cの円錐面に沿って流れた気体f3は、逆流防止部材23の還流部材23rによって、還流部材23rの中心方向(気体f1の方向)に流れ方向を変化する(f4)。
【0047】
その後、流れ方向を変化した気体f4は、マフラーMufから流出した気体f1と合流する(f5)。すなわち、逸れた気体f2は、逆流防止部材23(接続部材23c及び還流部材23r)によって、マフラーMufから流出した気体f1の流れに還流される。
【0048】
これにより、本発明の実施形態に係る建設機械100の排気装置は、排気部材20の流入部21とマフラーMufとの間に隙間がある場合でも、この隙間から気体が漏れることを防止することができる。すなわち、本実施形態に係る排気装置は、逆流防止部材23を用いて、漏洩気体をマフラーMufから流出した排ガスの流れに還流することによって、排気部材20の流入部21とマフラーMufの出口部との間の隙間から排ガスが漏れることを防止することができる。
【0049】
以上により、本発明の実施形態に係る建設機械100の排気装置によれば、排気部材20の逆流防止部材23を用いて、流入部21に流入した気体(排ガス)で流出部22に流入しない気体(漏洩気体)を還流することができるので、排気部材20とマフラーMufとの隙間から排ガスが漏れることを防止することができる。また、本実施形態に係る排気装置によれば、排気部材20とマフラーMufとの隙間から排ガスが漏れることを防止することができるので、エンジンルーム内に排気ガスが侵入することを防止することができる。これにより、本実施形態に係る排気装置によれば、漏洩した排ガスでエンジン(エンジンルーム)及びその他エンジンの補機の温度が上昇することを防止することができる。更に、本実施形態に係る排気装置によれば、排気部材20とマフラーMufとの隙間から排ガスが漏れることを防止することができるので、その他の建設機械の内部に排気ガスが侵入することを防止することができる。これにより、本実施形態に係る排気装置によれば、予定しない場所に排ガスが排出されることを防止することができる。また、本実施形態に係る排気装置によれば、予定しない場所に排ガスを拡散させないことにより、建設機械付近の作業者が排気ガスを吸引することを防止することができる。
【0050】
なお、図6図8に、建設機械の排気装置の排気部材のその他の例20mを示す。
【0051】
図6及び図7に示すように、その他の例の排気部材20mは、建設機械のエンジンカバーCvEmに取り付けられている。また、その他の例の排気部材20mは、マフラーMufmから流出した気体が流入する流入部21mと、流入部21mを通過した気体が流入する流出部22mとを備える。
【0052】
図8に示すように、その他の例の排気部材20mは、マフラーMufmから流出した気体e1を流入部21mで捕捉する。このとき、マフラーMufmから流出した気体e1の大部分は流出部22mに流入するが、気体e1の一部e2は流出部22mに流入しない。
【0053】
ここで、流出部22mに流入しない気体e2は、流入部21mの内壁に沿って流れる(e3及びe4)。また、流入部21mの内壁に沿って流れた気体e4は、排気部材20mの流入部21mとマフラーMufmとの間の隙間からエンジンルーム内に漏れる(e5)。
【0054】
以上、建設機械の排気装置を用いて、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではない。また、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
100 : 建設機械
11 : ブーム
11c : ブームシリンダ
12 : アーム
12c : アームシリンダ
13 : バケット
13c : バケットシリンダ
20 : 排気部材
21 : 流入部(マフラーガイド)
22 : 流出部(テールパイプ、尾管)
23 : 逆流防止部材
23c : 接続部材
23r : 還流部材
23ro: 還流部材の開口部
Eng : エンジン
CvE : カバー部材(エンジンフード、エンジンカバー)
Muf : マフラー(消音器)
Rda : ラジエータ(熱交換器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8