特許第5955668号(P5955668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955668
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】点火プラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/16 20060101AFI20160707BHJP
   F02P 13/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   H01T13/16
   F02P13/00 301J
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-149930(P2012-149930)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-13666(P2014-13666A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100128565
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼林 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】安藤 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 基正
(72)【発明者】
【氏名】中田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】能川 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏太朗
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−108478(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/020141(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0089807(US,A1)
【文献】 特開2000−133411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/16
F02P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング部と、前記ハウジング部に保持される碍子と、前記碍子から露出した中心電極と、前記中心電極との間で放電ギャップ部を形成する接地電極とを備えるとともに、前記ハウジング部と前記碍子との間にプラグポケットを有し、
前記ハウジング部の先端部のうち、径方向に沿って互いに対向する部分のいずれか一方の部分の内側にテーパ部が設けられており、且つ他方の部分に前記接地電極が設けられており、
前記テーパ部が設けられるのは、前記接地電極が設けられている側とは反対側のみである点火プラグ。
【請求項2】
請求項1記載の点火プラグであって、
前記テーパ部の周方向における各端部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分同士が形成する空間の幅が軸線方向に沿った所定の位置における前記碍子の外径以上の大きさに設定されている点火プラグ。
【請求項3】
請求項1または2記載の点火プラグであって、
前記テーパ部のうち径方向外側に位置する外周部のほうが径方向内側に位置する内周部よりも周方向に沿った長さが大きくなるように前記テーパ部が設けられている点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
点火プラグを備える内燃機関ではプレイグニッションが発生することがある。これに対し、特許文献1では主体金具が銅合金またはアルミニウム合金からなるコイル一体型点火プラグが開示されている。特許文献1ではこれにより熱引きを良好にし、外側電極や主体金具が高温にならないようにすることで、プレイグニッションのおそれがない耐熱性の良好なコイル一体型点火プラグを実現するようにしている。本発明と関連性があると考えられる技術はこのほか例えば特許文献2から4で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−133411号公報
【特許文献2】特開2008−108478号公報
【特許文献3】特開2010−267625号公報
【特許文献4】国際公開第2008/102842号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレイグニッションにはハウジングと碍子との間に形成されるプラグポケットに滞留する混合気が受熱し、高温になることで発生する態様があることがわかってきた。そして、プラグポケットに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を抑制するには、プラグポケットの温度状態を改善する必要がある。このため、例えば特許文献1が開示するコイル一体型点火プラグのように外側電極や主体金具が高温にならないようにすることでは、プラグポケットに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を抑制できない虞がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、プラグポケットに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を抑制可能な点火プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はハウジング部と、前記ハウジング部に保持される碍子と、前記碍子から露出した中心電極と、前記中心電極との間で放電ギャップ部を形成する接地電極とを備えるとともに、前記ハウジング部と前記碍子との間にプラグポケットを有し、前記ハウジング部の先端部のうち、径方向に沿って互いに対向する部分のいずれか一方の部分の内側にテーパ部が設けられており、且つ他方の部分に前記接地電極が設けられている点火プラグである。
【0007】
本発明は前記テーパ部の周方向における各端部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分同士が形成する空間の幅が軸線方向に沿った所定の位置における前記碍子の外径以上の大きさに設定されている構成とすることができる。
【0008】
本発明は前記テーパ部のうち径方向外側に位置する外周部のほうが径方向内側に位置する内周部よりも周方向に沿った長さが大きくなるように前記テーパ部が設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プラグポケットに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の点火プラグの要部を示す図である。
図2】実施例1のテーパ部の設置可能範囲を示す図である。
図3】プラグポケットに流入する気流の様子を示す図である。
図4】自着火発生率の一例を示す図である。
図5】碍子の表面温度の一例を示す図である。
図6】接地電極の他の配置例を示す図である。
図7】実施例2の点火プラグの要部を示す図である。
図8】実施例2のテーパ部の設置可能範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は点火プラグ1Aの要部を示す図である。図1(a)は点火プラグ1Aの断面図を示す。図1(b)は点火プラグ1Aの下面図(接地電極5側から軸線方向に沿って見た図)を示す。図1(a)、図1(b)では内燃機関のシリンダヘッド10に設けた状態で点火プラグ1Aの要部を示す。
【0013】
点火プラグ1Aはハウジング部2Aと碍子3と中心電極4と接地電極5とを備えている。ハウジング部2Aは筒状の形状を有しており、碍子3を保持している。碍子3は中心電極4の周囲に設けられている。中心電極4は軸線方向に沿って延伸している。そして、先端側(点火プラグ1Aをその中心軸線に直交する方向に沿って見た場合に、軸線方向において接地電極5が設けられている側)で碍子3から露出している。接地電極5はハウジング部2Aに設けられている。接地電極5は中心電極4との間で放電ギャップ部Gを形成している。
【0014】
点火プラグ1Aはシリンダヘッド10に設けられる。具体的には点火プラグ1Aはガスケット6を介してシリンダヘッド10に締結される。シリンダヘッド10は図示しないシリンダブロックやピストンとともに燃焼室Cを形成する。燃焼室Cには放電ギャップ部Gが配置される。燃焼室Cには放電ギャップ部Gを通過する気流Fが生成される。気流Fは具体的にはタンブル流となっている。気流Fは点火プラグ1Aが設けられる内燃機関の吸気行程および圧縮行程のうち、少なくともいずれかにおいて放電ギャップ部Gを通過する気流とすることができる。気流Fは必ずしもタンブル流に限られず、例えばスワール流であってもよい。点火プラグ1Aが設けられる内燃機関において、点火プラグ1Aはハウジング部2Aが燃焼室Cに突出しないように設けられる。
【0015】
ハウジング部2Aと碍子3との間にはプラグポケットPが形成されている。プラグポケットPは碍子3の周囲に形成されるとともに、燃焼室Cに開口している。ハウジング部2Aにはテーパ部T1が設けられている。テーパ部T1はハウジング部2Aの先端側の端部である先端部のうち径方向に沿って互いに対向する部分のいずれか一方の部分の内側に設けられている。そして、他方の部分は接地電極5が設けられている部分となっている。テーパ部T1はハウジング部2Aの先端部のうち、当該一方の部分にのみ設けられている。テーパ部T1は先端側から軸線方向に沿って見た場合に中心線Lが介在するように設けられている。中心線Lは先端側から軸線方向に沿って見た場合の接地電極5の中心線であり、接地電極5の延伸方向に沿って延伸している。
【0016】
テーパ部T1は周方向における端部E11、E12を備えている。端部E11、E12は幅W1を形成している。幅W1は各端部E11、E12のうちプラグポケットPに隣接する部分同士が形成する空間の幅となっている。幅W1は具体的には先端側から軸線方向に沿って見た場合に中心線Lに直交する方向に沿って形成されている。そして、テーパ部T1は先端側から軸線方向に沿って見た場合にその中心線が中心線Lと重なるように設けられている。したがって、テーパ部T1は先端側から軸線方向に沿って見た場合に中心線Lを間に挟んで対称となる形状を有している。
【0017】
幅W1は軸線方向に沿った所定の位置における碍子3の外径以上の大きさに設定されている。所定の位置は軸線方向においてプラグポケットPが形成されている範囲に含まれる位置とすることができる。所定の位置はさらに軸線方向において幅W1が形成されている位置から後端側(点火プラグ1Aをその中心軸線に直交する方向に沿って見た場合に、軸線方向において接地電極5が設けられている側とは反対側)に広がる範囲に含まれる位置とすることができる。所定の位置は具体的には例えば軸線方向において幅W1が形成されている位置とすることができる。幅W1は軸線方向に沿った各位置において端部E11、E12同士が形成する幅それぞれのうち最小の幅となっている。
【0018】
テーパ部T1は径方向外側に位置する外周部R11と径方向内側に位置する内周部R12とを備えている。テーパ部T1は外周部R11のほうが内周部R12よりも周方向に沿った長さが大きくなるように設けられている。具体的にはテーパ部T1は先端側から軸線方向に沿って見た場合に端部E11、E12同士が形成する空間の幅が内側から外側に向かって次第に広がる末広がりの形状を有するように設けられている。この点、端部E11、E12は先端側から軸線方向に沿って見た場合に径方向に沿ってそれぞれ延伸している。
【0019】
テーパ部T1はテーパ角α1と切欠き角βとを有している。テーパ角α1は点火プラグ1Aの中心軸線を含むテーパ部T1の断面において、点火プラグ1Aの中心軸線とテーパ部T1のテーパ面とがなす鋭角となっている。切欠き角βは先端側から軸線方向に沿って見た場合の端部E11、E12間の角度となっている。テーパ角α1は45°に、切欠き角βは60°にそれぞれ設定されている。テーパ角α1と切欠き角βとはともに30°以上に設定することができる。
【0020】
テーパ部T1は外周部R11がハウジング部2Aの先端外周部の一部を構成するように設けることができる。テーパ部T1は軸線方向において外周部R11がハウジング部2Aの先端面よりも後端側に位置するように設けられてもよい。また、先端側から軸線方向に沿って見た場合に切欠き角βの範囲内にハウジング部2Aの先端面が残るように(すなわち、ハウジング部2Aの先端外周部よりも内側に)設けられてもよい。
【0021】
テーパ部T1を前述した一方の部分に設けるにあたっては、具体的には次のようにテーパ部T1を設けることができる。すなわち、先端側から軸線方向に沿って見た場合にハウジング部2Aの先端部のうち、点火プラグ1Aの中心軸線を含み、且つ中心線Lに直交する面から接地電極5が設けられている側とは反対側の部分にテーパ部T1を設けることができる。換言すれば、一方の部分は具体的には当該反対側の部分とすることができる。
【0022】
図2はテーパ部T1の周方向に沿った設置可能範囲を示す図である。図2(a)は周方向に沿って最小限の大きさで設けたテーパ部T1であるテーパ部T11を示す。図2(b)は周方向に沿って最大限の大きさで設けたテーパ部T1であるテーパ部T12を示す。図2(a)に示すようにテーパ部T11では軸線方向において幅W1が形成されている位置における碍子3の外径の大きさに合わせて幅W1が設定されている。図2(b)に示すようにテーパ部T12ではハウジング部2AのうちプラグポケットPに隣接する部分の径に合わせて幅W1が設定されている。テーパ部T12では端部E11、E12が点火プラグ1Aの中心軸線を含み、且つ中心線Lに直交する面に含まれるように設けられている。
【0023】
次に点火プラグ1Aの主な作用効果について説明する。ここで、点火プラグ1Aをシリンダヘッド10に設けるにあたって、接地電極5の周方向に沿った位置は一般に所定の位置には定まらない。このため、図1(b)に示すように点火プラグ1Aをシリンダヘッド10に設けた状態で、接地電極5はその開放端部が先端側から軸線方向に沿って見た場合に気流Fに対向するように配置されることがある。一方、このように接地電極5が配置される場合には次に説明するようにプラグポケットPに滞留する混合気に起因してプレイグニッションが発生し易くなる。
【0024】
すなわち、この場合には接地電極5がプラグポケットPに流入しようとする気流とプラグポケットPから流出しようとする気流のうち、プラグポケットPから流出しようとする気流の流出を妨げることになる。また、プラグポケットPからの気流の流出が妨げられることで、気流の流入出のバランス上、プラグポケットPへの気流の流入も生じ難くなる。結果、プラグポケットPに混合気が滞留し易くなることから、プラグポケットPに滞留する混合気に起因してプレイグニッションが発生し易くなる。
【0025】
これに対し、点火プラグ1Aはハウジング部2Aの先端部のうち、径方向に沿って互いに対向する部分のいずれか一方の部分の内側にテーパ部T1が設けられており、且つ他方の部分に接地電極5が設けられている構成となっている。このため、点火プラグ1Aは次に説明するようにプラグポケットPに流入する気流の向きを変更させることができる。
【0026】
図3はプラグポケットPに流入する気流の様子を示す図である。図3(a)は点火プラグ1Aの場合を示す。図3(b)は点火プラグ1A´の場合を示す。点火プラグ1A´はハウジング部2Aの代わりにハウジング部2A´を備える点以外、点火プラグ1Aと実質的に同一となっている。ハウジング部2A´はテーパ部T1が設けられていない点以外、ハウジング部2Aと実質的に同一のものとなっている。図3(a)、図3(b)に示すように、点火プラグ1Aは接地電極5が上述のように配置された場合であっても、テーパ部T1を備えることで点火プラグ1A´と比較してプラグポケットPに流入する気流の向きを緩やかに変更させることができる。
【0027】
このため、点火プラグ1Aは気流の流入抵抗を減少させることで、プラグポケットPに気流を流入し易くするとともに、プラグポケットPにおける気流の流速を高めることができる。結果、プラグポケットPの掃気性を高めることで、プラグポケットPの温度状態を改善することができる。したがって、プラグポケットPに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を抑制できる。
【0028】
図4は自着火発生率の一例を示す図である。図5は碍子3の表面温度の一例を示す図である。図4において縦軸は自着火発生率、横軸は点火時期を示す。図4では所定の条件下で運転中の内燃機関で点火を中止した際の自着火発生率を示す。図5では図4に示す所定の点火時期tにおける自着火発生率で自着火が発生した際の碍子3の表面温度を示す。図4図5では比較対象として点火プラグ1A´の場合についても同時に示す。
【0029】
図4に示すように自着火発生率は点火時期を進角させるほど増加する。これに対し、点火プラグ1Aではテーパ部T1を備えることで、プラグポケットPの掃気性を高めることができる。このため、点火プラグ1Aは点火時期を進角させても点火プラグ1A´よりも自着火発生率を低下させることができる。図5に示すように点火プラグ1Aはプレイグニッションの発生を抑制することで、点火プラグ1A´よりも碍子3の表面温度を低下させることもできる。結果、プラグポケットPに滞留する混合気が碍子3からの受熱によって高温になること自体も抑制できる。
【0030】
点火プラグ1Aは、他方の部分に接地電極5が設けられている構成を有しているので、燃焼室Cにおける接地電極5の位置に応じて特に混合気がプラグポケットPに滞留し易くなる場合のプラグポケットPの掃気性を好適に高めることができる。また、このような構成でテーパ部T1を設けることで加工を簡素にすることもできる。
【0031】
点火プラグ1Aは幅W1が軸線方向に沿った所定の位置における碍子3の外径以上の大きさに設定されている構成とすることができる。これにより、テーパ部T1を介してプラグポケットPに気流を流入させるにあたり、軸線方向に沿った所定の位置における碍子3の外径以上の広がりを有した状態で気流を流入させることができる。結果、碍子3の周囲に滞留し、碍子3からの受熱によってプレイグニッションを引き起こし易くなる混合気を効率的に掃気することができる。
【0032】
点火プラグ1Aは外周部R11のほうが内周部R12よりも周方向に沿った長さが大きくなるようにテーパ部T1が設けられている構成とすることができる。これにより、テーパ部T1からプラグポケットPに流入する気流の流速を高めることで、プラグポケットPの掃気性をより高めることができる。
【0033】
図6は接地電極5の他の配置例を示す図である。図6に示すように接地電極5は点火プラグ1Aをシリンダヘッド10に設けた状態で、先端側から軸線方向に沿って見た場合に開放端部が気流Fに沿った方向において下流側に位置するように配置されることもある。そしてこの場合には、接地電極5がプラグポケットPに流入しようとする気流の流入を妨げることになる。また、プラグポケットPへの気流の流入が妨げられることで、プラグポケットPからの気流の流出も生じ難くなる。結果、プラグポケットPに混合気が滞留し易くなることから、プラグポケットPに滞留する混合気に起因してプレイグニッションが発生し易くなる。
【0034】
これに対し、点火プラグ1Aは接地電極5がこのように配置された場合であっても、テーパ部T1を備えることでテーパ部T1が特段設けられていない場合よりもプラグポケットPから流出する気流の向きを緩やかに変更させることができる。結果、プラグポケットPから気流を流出させ易くすることができる。また、先端側から軸線方向に沿って見た場合に、気流Fに沿った方向において碍子3の下流側に形成される負圧空間がテーパ部T1によって増加する分、プラグポケットPから気流を流出させ易くすることもできる。
【0035】
このため、点火プラグ1Aはこの場合でもプラグポケットPの掃気性を高めることで、プラグポケットPの温度状態を改善することができる。結果、プラグポケットPに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を抑制できる。
【0036】
点火プラグ1Aはこの場合でも幅W1が軸線方向に沿った所定の位置における碍子3の外径以上の大きさに設定されている構成とすることで、碍子3の周囲に滞留する混合気を効率的に掃気することができる。また、外周部R11のほうが内周部R12よりも周方向に沿った長さが大きくなるようにテーパ部T1が設けられている構成とすることで、プラグポケットPの掃気性をより高めることができる。
【0037】
ハウジング部2Aが燃焼室Cに突出するように点火プラグ1Aが内燃機関に設けられる場合、プラグポケットPの掃気性を高めるにはハウジング部2Aのうち、プラグポケットPの周囲の部分に貫通孔を設けることもできる。ところが、ハウジング部2Aが燃焼室Cに突出しないように点火プラグ1Aが内燃機関に設けられる場合には、プラグポケットPの周囲の部分に貫通孔を設けることではプラグポケットPの掃気性を高めることができない。このため、点火プラグ1Aはハウジング部2Aが燃焼室Cに突出しないように内燃機関に設けられる構成である場合に、プラグポケットPの掃気性を高めるのに適している。
【0038】
点火プラグ1Aは燃焼室Cに放電ギャップ部Gを通過する気流Fが生成される内燃機関に設けられるとともに、気流Fを旋回気流(例えばタンブル流やスワール流)とする構成である場合に、気流Fの高い流速を利用してプラグポケットPの掃気性を高めることができる。このため、点火プラグ1Aはかかる構成である場合に適している。
【実施例2】
【0039】
図7は点火プラグ1Bの要部を示す図である。図7(a)は点火プラグ1Bの断面図を示す。図7(b)は点火プラグ1Bの下面図を示す。図7(a)、図7(b)では内燃機関のシリンダヘッド10に設けた状態で点火プラグ1Bの要部を示す。点火プラグ1Bはハウジング部2Aの代わりにハウジング部2Bを備える点以外、点火プラグ1Aと実質的に同一となっている。
【0040】
ハウジング部2Bはテーパ部T1の代わりにテーパ部T2を備える点以外、ハウジング部2Aと実質的に同一となっている。テーパ部T2は端部E11、E12の代わりに端部E21、E22を備える点と、これに伴い外周部R11および内周部R12の代わりに外周部R21および内周部R22を備えるとともに、幅W1の代わりに幅W2を形成し、さらにテーパ角α1および切欠き角βの代わりにテーパ角α2を有する点以外、テーパ部T1と実質的に同一となっている。
【0041】
端部E21、E22は先端側から軸線方向に沿って見た場合に中心線Lに沿って延伸するように設けられている。端部E21、E22は幅W2を形成している。幅W2は幅W1と同様に各端部E21、E22のうちプラグポケットPに隣接する部分同士が形成する空間の幅となっている。また、幅W1と同様に先端側から軸線方向に沿って見た場合に中心線Lに直交する方向に沿って形成されている。
【0042】
一方、点火プラグ1Bでは各端部E21、E22のうち、プラグポケットPに隣接する部分以外の部分同士が形成する幅も幅W2と同等の大きさに設定されている。このため、点火プラグ1Bでは外周部R21と内周部R22との間で周方向に沿った長さが互いに同等になるようにテーパ部T2が設けられている。
【0043】
テーパ部T2はテーパ角α2を有するように設けられている。テーパ角α2は点火プラグ1Bの中心軸線と中心線Lとを含むテーパ部T2の断面およびこれに平行なテーパ部T2の断面それぞれにおいて、点火プラグ1Bの中心軸線或いはこれに平行な直線とテーパ部T2のテーパ面とがなす鋭角となっている。テーパ角α2は45°に設定されている。テーパ角α2はテーパ角α1と同様に30°以上に設定することができる。
【0044】
このように構成された点火プラグ1Bは点火プラグ1Aと同様にハウジング部2Bの先端部のうち径方向に沿って互いに対向する部分のいずれか一方の部分の内側にテーパ部T2が設けられており、且つ他方の部分に接地電極5が設けられてい構成となっている。また、幅W2が軸線方向に沿った所定の位置における碍子3の外径以上の大きさに設定されている構成となっている。所定の位置は点火プラグ1Aの場合と同様である。一方の部分にテーパ部T2を設けるには、テーパ部T1と同様にテーパ部T2を設けることができる。
【0045】
図8はテーパ部T2の周方向に沿った設置可能範囲を示す図である。図8(a)は周方向に沿って最小限の大きさで設けたテーパ部T2であるテーパ部T21を示す。図8(b)は周方向に沿って最大限の大きさで設けたテーパ部T2であるテーパ部T22を示す。図8(a)に示すようにテーパ部T21では軸線方向において幅W2が形成されている位置における碍子3の外径の大きさに合わせて幅W2が設定されている。図8(b)に示すようにテーパ部T22ではハウジング部2BのうちプラグポケットPに隣接する部分の径に合わせて幅W2が設定されている。テーパ部T22では端部E21、E22が先端側から軸線方向に沿って見た場合に中心線Lに沿って延伸するように設けられている。
【0046】
次に点火プラグ1Bの主な作用効果について説明する。点火プラグ1Bはテーパ部T2を備えることで点火プラグ1Aと同様にプラグポケットPの掃気性を高めることができる。このため、点火プラグ1BはプラグポケットPの温度状態を改善することで、プラグポケットPに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を抑制できる。なお、点火プラグ1Bはシリンダヘッド10に設けられた状態で接地電極5が図7に示すように配置される場合だけでなく、図6に示すように配置される場合でも、点火プラグ1Aと同様にプレイグニッションの発生を抑制できる。
【0047】
点火プラグ1Bは点火プラグ1Aと同様に幅W2が軸線方向に沿った所定の位置における碍子3の外径以上の大きさに設定されている構成とすることで、碍子3の周囲に滞留する混合気を効率的に掃気することもできる。また、点火プラグ1Aと同様にハウジング部2Bが燃焼室Cに突出しないように内燃機関に設けられる構成である場合や、燃焼室Cに放電ギャップ部Gを通過する気流Fが生成される内燃機関に設けられるとともに、気流Fを旋回気流とする構成である場合に適している。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0049】
例えばテーパ部は必ずしも先端側から軸線方向に沿って見た場合にその中心線が接地電極の中心線と重なるように設けられていなくてもよい。また、必ずしも先端側から軸線方向に沿って見た場合に接地電極の中心線を間に挟んで対称となる形状を有していなくてもよい。この場合でも、点火プラグは先端側から軸線方向に沿って見た場合に接地電極の中心線が介在するようにテーパ部が設けられている構成とすることで、プラグポケットに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0050】
点火プラグ 1A、1A´、1B
ハウジング部 2A、2A´、2B
碍子 3
中心電極 4
接地電極 5
ガスケット 6
シリンダヘッド 10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8