(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例(特許文献1参照)によると、車室内の暖房時でかつ電池の暖機時において、ヒートポンプサイクルの圧縮機により圧縮された高温の冷媒を、電池用熱交換装置に流すことにより燃料電池の暖機を行った後、その冷媒を空調用熱交換器に流すことにより車室内の暖房に使用している。このように、燃料電池の暖機によって温度が低下された冷媒を空調用熱交換器に流すため、電池の暖機能力が向上されるものの、車室内の暖房能力が低下するという問題があった。なお、ヒートポンプサイクルの圧縮機により圧縮された高温の冷媒を、空調用熱交換器に流してから電池用熱交換装置に流すことも考えられる。この場合、車室内の暖房能力の低下を抑制できるものの、燃料電池の暖機能力が低下するという問題をきたすことになる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、車室内の暖房時でかつ電池の暖機時における車室内の暖房能力の低下を抑制するとともに電池の暖機能力を向上することのできる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、車両走行用の電力を供給する電池を備えた車両に搭載される車両用空調装置であって、空調用の冷媒が循環する空調用冷媒回路、電池用の冷媒が循環する電池用冷媒回路、空調用冷媒回路と電池用冷媒回路との間で熱交換を行う熱交換器を備え、空調用冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内の暖房時において圧縮機によって温度が上昇した冷媒の熱で車室内を暖房するヒータコアと、車室内の冷房時において冷媒の蒸発作用により車室内を冷房する蒸発器とを備え、空調用冷媒回路に、ヒータコアをバイパスしかつ熱交換器を経由する電池用暖機流路を設け、車室内の暖房時でかつ電池の暖機時に、冷媒をヒータコアと熱交換器とに分配して並列的に流すように構成したものである。この構成によると、車室内の暖房時には、圧縮機によって温度が上昇した冷媒をヒータコアに流すことにより、その冷媒の熱で車室内の暖房を行うことができる。また、車室内の冷房時には、圧縮機から吐出された冷媒を蒸発器に流すことにより、その冷媒の蒸発作用によって車室内の冷房を行うことができる。また、車室内の暖房時でかつ電池の暖機時には、車室内の暖房時において圧縮機によって温度が上昇した冷媒を、電池用暖機流路に流して熱交換器を経由させる。熱交換器において、空調用冷媒回路の電池用暖機流路と電池用冷媒回路との間で熱交換が行われることにより、電池用冷媒回路の冷媒の温度が上昇されるので、その冷媒の熱で電池の暖機を行うことができる。ところで、圧縮機によって温度が上昇した冷媒をヒータコアと熱交換器とに分配して並列的に流すことによって、車室内の暖房能力の低下を抑制するとともに電池の暖機能力を向上することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、空調用冷媒回路は、圧縮機、ヒータコア及び蒸発器が順次直列に接続された主流路を備え、主流路のヒータコアと蒸発器との間に、冷媒を膨張させる第1膨張弁、冷媒を放熱させて凝縮させる凝縮器、及び、冷媒を膨張させる第2膨張弁が順次直列に配置され、主流路の蒸発器と圧縮機との間に、冷媒を気液分離する気液分離器が配置され、主流路には、ヒータコア及び第1膨張弁をバイパスする第1バイパス流路を設けるとともに、その主流路と第1バイパス流路とを選択的に開閉する第1切替弁を設け、主流路には、第2膨張弁及び蒸発器をバイパスする第2バイパス流路を設けるとともに、その主流路と第2バイパス流路とを選択的に開閉する第2切替弁を設け、車室内の暖房時に、第1切替弁が第1バイパス流路を閉じるとともに第2切替弁が第2バイパス流路を開く構成とし、車室内の冷房時に、第1切替弁が第1バイパス流路を開くとともに第2切替弁が第2バイパス流路を閉じる構成としたものである。この構成によると、車室内の暖房時には、第1切替弁が第1バイパス流路を閉じるとともに第2切替弁が第2バイパス流路を開く。これにより、圧縮機によって温度が上昇した冷媒を、ヒータコア、第1膨張弁、凝縮器、気液分離器に順次流す暖房用循環流路が構成されることにより、暖房効率を向上することができる。また、車室内の冷房時には、第1切替弁が第1バイパス流路を開くとともに第2切替弁が第2バイパス流路を閉じる。これにより、圧縮機から吐出された冷媒を、凝縮器、第2膨張弁、蒸発器、気液分離器に順次流す冷房用循環流路が構成されることにより、冷房効率を向上することができる。
【0008】
第3の発明は、第2の発明において、空調用冷媒回路の主流路の気液分離器と圧縮機との間に、熱交換器を経由する電池用冷却流路を設け、電池の冷却時に、気液分離器から流出された冷媒を電池用冷却流路を介して圧縮機に吸入させる構成としたものである。この構成によると、電池の冷却時には、気液分離器から流出された冷媒を、電池用冷却流路に流して熱交換器を経由させる。熱交換器において、空調用冷媒回路の電池用冷却流路と電池用冷媒回路との間で熱交換が行われることにより、電池用冷媒回路の冷媒の温度が低下されるので、その冷媒の熱で電池の冷却を行うことができる。一方、空調用冷媒回路の電池用冷却流路の冷媒は、熱交換器を経由することにより温度が上昇された後で圧縮機に吸入される。これにより、気液分離器から流出された冷媒が熱交換器を経由することなく圧縮機に吸入させる場合に比べて、圧縮機に吸入される冷媒の温度が高くなるため、圧縮機の省動力化を図ることができる。
【0009】
第4の発明は、第3の発明において、空調用冷媒回路の主流路の第2切替弁と第2膨張弁との間の流路部と、電池用冷却流路の熱交換器よりも上流側の流路部との間に、両者間で熱交換を行う内部熱交換器を設けたものである。この構成によると、車室内の冷房時でかつ電池の冷却時には、内部熱交換器において、空調用冷媒回路の主流路の第2切替弁と第2膨張弁との間の流路部と、電池用冷却流路の熱交換器よりも上流側の流路部との間で熱交換が行われる。これにより、空調用冷媒回路の主流路を流れる冷媒は、内部熱交換器において温度が低下された後で第2膨張弁、蒸発器へと順次流れるため、冷房効率を向上することができる。一方、空調用冷媒回路の電池用冷却流路の冷媒は、内部熱交換器において温度が上昇された後で熱交換器、圧縮機へと順次流れる。このため、圧縮機に吸入される冷媒の温度が高くなるため、圧縮機の省動力化を図ることができる。なお、電池用冷却流路の冷媒の温度は、内部熱交換器において上昇されるが、その温度は熱交換器を流れる電池用冷媒回路の冷媒の温度よりも低い。
【0010】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明において、電池に、相変化により発熱する潜熱蓄熱材を容器内に封入してなる潜熱蓄熱装置を備えたものである。したがって、車両の冷間始動時において、潜熱蓄熱装置の潜熱蓄熱材の相変化による発熱を利用して電池を加温することにより、潜熱蓄熱材の発熱分に相当する圧縮機の動力を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、車両走行用の電力を供給するための二次電池を備えた車両に搭載される車両用空調装置について例示する。
図1は車両用空調装置を示す構成図である。
図1に示すように、車両用空調装置10は、空調用の冷媒が循環する空調用冷媒回路12と、電池用の冷媒が循環する電池用冷媒回路14と、両冷媒回路12,14の間で熱交換を行う熱交換器16とを備えている。電池用冷媒回路14は、熱交換器(「第1熱交換器」という)16及び二次電池(「電池」という)18を順次経由する循環流路であり、電池用の冷媒を循環させる循環ポンプ20を備えている。
【0013】
前記空調用冷媒回路12における冷媒の主流路22(
図1中、太線参照)には、圧縮機24、ヒータコア26、膨張弁28、凝縮器30、膨張弁32、蒸発器34、及び、気液分離器36が順次直列に接続されている。圧縮機24は、冷媒を圧縮するコンプレッサである。また、ヒータコア26は、車室内の暖房時において圧縮機24によって温度が上昇した冷媒の熱で車室内を暖房するものである。また、膨張弁(「第1膨張弁」という)28は、冷媒を膨張(減圧)させるものである。また、凝縮器30は、冷媒を放熱させて凝縮させる室外機である。また、膨張弁(「第2膨張弁」という)32は、冷媒を膨張させるものである。また、蒸発器34は、車室内の冷房時において冷媒の蒸発作用により車室内を冷房するエバポレータである。また、気液分離器36は、冷媒を気液分離するアキュムレータである。
【0014】
前記主流路22には、前記ヒータコア26及び前記第1膨張弁28をバイパスするバイパス流路38が設けられている。主流路22におけるバイパス流路(「第1バイパス流路」という)38の分岐部には、電磁式三方弁からなる切替弁40が設けられている。切替弁(「第1切替弁」という)40は、切替弁40よりも下流側(すなわちヒータコア26側)の主流路22と第1バイパス流路38とを選択的に開閉することによって、該切替弁40よりも上流側の主流路22に対して該切替弁40よりも下流側の主流路22と第1バイパス流路38とを選択的に切替えて接続するもので、後述する制御装置により切替制御される。
【0015】
前記主流路22には、前記第2膨張弁32及び前記蒸発器34をバイパスするバイパス流路42が設けられている。主流路22におけるバイパス流路(「第2バイパス流路」という)42の分岐部には、電磁式三方弁からなる切替弁44が設けられている。切替弁(「第2切替弁」という)44は、該切替弁44よりも下流側(すなわち第2膨張弁32側)の主流路22と第2バイパス流路42とを選択的に開閉することによって、該切替弁40よりも上流側の主流路22に対して該切替弁44よりも下流側の主流路22と第2バイパス流路42とを選択的に切替えて接続するもので、後述する制御装置により切替制御される。
【0016】
前記主流路22には、前記ヒータコア26をバイパスしかつ前記第1熱交換器16を経由する電池用暖機流路46が設けられている。主流路22における電池用暖機流路46の分岐部には、弁開度調整可能な電磁式三方弁からなる流量調整弁48が設けられている。流量調整弁48は、該流量調整弁48よりも上流側の主流路22から流れてくる冷媒を、該流量調整弁48よりも下流側(すなわちヒータコア26側)の主流路22と電池用暖機流路46とに分配しかつその分配割合を調整するもので、後述する制御装置により切替制御される。
【0017】
前記主流路22の気液分離器36と圧縮機24との間には、前記第1熱交換器16を経由する電池用冷却流路50が設けられている。電池用冷却流路50は、前記電池用暖機流路46における第1熱交換器16を含む流路部を併用している。このため、電池用冷却流路50は、上流側の流路部50aと下流側の流路部50bとに分割されている。上流側の流路部50aの上流端は、主流路22の気液分離器36と圧縮機24との間の流路部に接続されている。上流側の流路部50aの下流端は、電池用暖機流路46の第1熱交換器16よりも上流側の流路部に接続されている。また、下流側の流路部50bの上流端は、電池用暖機流路46の第1熱交換器16よりも下流側の流路部に接続されている。下流側の流路部50bの下流端は、主流路22の気液分離器36と圧縮機24との間でかつ上流側の流路部50aの接続部よりも下流側の流路部に接続されている。
【0018】
前記主流路22における電池用冷却流路50の分岐部すなわち上流側の流路部50aの接続部には、電磁式三方弁からなる切替弁52が設けられている。切替弁(「第3切替弁」という)52は、該切替弁52よりも下流側(すなわち圧縮機24側)の主流路22と電池用冷却流路50(詳しくは上流側の流路部50a)とを選択的に開閉することによって、該切替弁52よりも上流側の主流路22に対して該切替弁52よりも下流側の主流路22と電池用冷却流路50とを選択的に切替えて接続するもので、後述する制御装置により切替制御される。
【0019】
前記電池用暖機流路46の第1熱交換器16よりも下流側の流路部における電池用冷却流路50の分岐部すなわち下流側の流路部50bの接続部には、電磁式三方弁からなる切替弁54が設けられている。切替弁(「第4切替弁」という)54は、該切替弁54よりも下流側(すなわち第1膨張弁28側)の電池用暖機流路46と下流側の流路部50bとを選択的に開閉することによって、該切替弁54よりも上流側(すなわち第1熱交換器16側)の電池用暖機流路46に対して該切替弁54よりも下流側の電池用暖機流路46と下流側の流路部50bとを選択的に切替えて接続するもので、後述する制御装置により切替制御される。
【0020】
前記主流路22の第2切替弁44と第2膨張弁32との間の流路部と、前記電池用冷却流路50の第1熱交換器16よりも上流側の流路部50aとの間には、両者間で熱交換を行う熱交換器56が設けられている。なお、熱交換器(「第2熱交換器」という)56は、空調用冷媒回路12内の同一の冷媒の間で熱交換を行うもので、本明細書でいう「内部熱交換器」に相当する。
【0021】
図7は電池を示す側面図である。
図7に示すように、前記電池18は、例えば複数の電池セル60を前後の両保持部材62,63の間に積層してなる。電池セル60の相互間にはセパレータ(図示省略)が配置されている。電池18において、適宜の隣り合う電池セル60の相互間には潜熱蓄熱装置65が介装されている。潜熱蓄熱装置65は、相変化により発熱する潜熱蓄熱材(図示省略)を容器66内に封入してなる。潜熱蓄熱装置65は、潜熱蓄熱材の相変化を促す発核装置68を備えている。潜熱蓄熱材は、発核装置68によって衝撃が与えられることによって発核し、相変化を起こすことによって発熱する。また、発核装置68は、後述する制御装置(図示省略)により作動制御されるようになっている。また、冷媒は、一方(前側)の保持部材62の入口70より電池18に導入され、電池セル60及び潜熱蓄熱装置65を流通してから他方(後側)の保持部材63の出口72から導出されるようになっている。
【0022】
前記車両用空調装置10は、図示しない制御装置(ECU)を備えている。制御装置はCPU、RAM、ROM等を備えたマイクロコンピュータを有する。CPUがROMからRAMに読み出したプログラムを実行することで、制御装置の各種作動が実現する。本実施形態においては、制御装置は、循環ポンプ20、圧縮機24、第1切替弁40、第2切替弁44、流量調整弁48、第3切替弁52、第4切替弁54、発核装置68等に制御信号を出力することで、これらを制御する。また、制御装置は、図示しない車両の操作装置に対する乗員の操作内容に応じて、車室内の冷房を行うか暖房を行うかを決定する。また、制御装置は、電池18の温度状態に応じて、電池18の暖機を行うか冷却を行うかを決定する。
【0023】
次に、前記空調装置の空調状態、すなわち、(1)車室内の暖房時、(2)車室内の冷房時、(3)車室内の暖房時でかつ電池18の暖機時、(4)車室内の暖房時でかつ電池18の冷却時、(5)車室内の冷房時でかつ電池18の冷却時のそれぞれの状態の作動について説明する。
図2は車両用空調装置の車室内の暖房時における冷媒の流れを示す説明図、
図3は同じく車室内の冷房時における冷媒の流れを示す説明図、
図4は同じく車室内の暖房時でかつ電池の暖機時における冷媒の流れを示す説明図、
図5は同じく車室内の暖房時でかつ電池の冷却時における冷媒の流れを示す説明図、
図6は同じく車室内の冷房時でかつ電池の冷却時における冷媒の流れを示す説明図である。
【0024】
(1)車室内の暖房時(
図2参照)
第1切替弁40がヒータコア26側(詳しくは流量調整弁48側)の主流路22を開くとともに、流量調整弁48が該切替弁40よりも下流側(ヒータコア26側)の主流路22を100%の弁開度で開く。また、第2切替弁44が第2バイパス流路42を開くとともに、第3切替弁52が該切替弁52よりも下流側(圧縮機24側)の主流路22を開く。これにより、車室内の暖房用循環流路(
図2中、太線経路参照)が構成される。なお、電池用冷媒回路14の循環ポンプ20は停止している。また、第4切替弁54は下流側の流路部50bを閉じている。
【0025】
この状態で、圧縮機24の作動により圧縮されて温度が上昇した高温の冷媒は、圧縮機24から吐出され、その全量がヒータコア26へ流れる。ヒータコア26によって、冷媒の熱が車室内に供給される空気と熱交換されることで、その空気が加熱される。これにより、車室内の暖房が行われる。また、ヒータコア26を流出した冷媒は、第1膨張弁28によって減圧された後、凝縮器30によって放熱されて凝縮される。さらに、凝縮器30から流出した冷媒は、気液分離器36によって気液分離される。気液分離器36から流出した気相の冷媒は、圧縮機24に吸入される。圧縮機24により、再び圧縮されて高温の冷媒となって吐出される。以下、このサイクルを繰り返す。
【0026】
(2)車室内の冷房時(
図3参照)
第1切替弁40が第1バイパス流路38を開き、第2切替弁44が該切替弁44よりも下流側(第2熱交換器56側)の主流路22を開くとともに、第3切替弁52が該切替弁52よりも下流側(圧縮機24側)の主流路22を開く。これにより、車室内の冷房用循環流路(
図3中、太線経路参照)が構成される。なお、電池用冷媒回路14の循環ポンプ20は停止している。また、第4切替弁54は電池用冷却流路50の下流側の流路部50bを閉じている。
【0027】
この状態で、圧縮機24の作動により圧縮されて温度が上昇した高温の冷媒は、圧縮機24から吐出され、凝縮器30へ流れる。凝縮器30によって、放熱されて凝縮される。また、凝縮器30を流出した冷媒は、第2熱交換器56を通過し、第2膨張弁32によって減圧された後、蒸発器34に流れる。蒸発器34によって、冷媒が蒸発され、そのときに必要な蒸発潜熱を車室内に供給される空気から吸収することで、その空気が冷却される。これにより、車室内の冷房が行われる。また、蒸発器34から流出した冷媒は、気液分離器36によって気液分離される。気液分離器36から流出した気相の冷媒は、圧縮機24に吸入される。圧縮機24により、再び圧縮されて高温の冷媒となって吐出される。以下、このサイクルを繰り返す。
【0028】
(3)車室内の暖房時でかつ電池18の暖機時(
図4参照)
前記「(1)車室内の暖房時(
図2参照)」において、流量調整弁48が、冷媒をヒータコア26側の主流路22と電池用暖機流路46とに分配するように調整される。また、第4切替弁54が該切替弁54よりも下流側(第1膨張弁28側)の電池用暖機流路46を開く。また、電池用冷媒回路14の循環ポンプ20の作動により冷媒が電池用冷媒回路14を循環する。なお、車室内の暖房用循環流路(
図2中、太線経路参照)における各装置の作動は、前記と同様であるから重複する説明を省略する。また、
図4中、太線は冷媒の流れる経路を示す。
【0029】
この状態で、圧縮機24から吐出された高温の冷媒の一部が流量調整弁48により電池用暖機流路46に分配される。電池用暖機流路46に分配された冷媒は、第1熱交換器16を経由した後、ヒータコア26と第1膨張弁28との間において主流路22に合流する。また、第1熱交換器16によって、電池用暖機流路46の冷媒の熱が電池用冷媒回路14の冷媒と熱交換されることで、電池用冷媒回路14の冷媒が加温される。また、電池用冷媒回路14において、第1熱交換器16から流出した冷媒は、電池18を経由することにより、電池18の暖機(加温)が行われる。
【0030】
また、電池18の暖機時において、潜熱蓄熱装置65(
図7参照)の発核装置68の作動により潜熱蓄熱材が発核し、相変化を起こすことによって発熱する。これにより、電池18を暖機することができる。なお、潜熱蓄熱装置65の潜熱蓄熱材は、電池18が所定温度以上に上昇したときにその熱を吸熱する。
【0031】
(4)車室内の暖房時でかつ電池18の冷却時(
図5参照)
前記「(1)車室内の暖房時(
図2参照)」において、第3切替弁52が電池用冷却流路50の上流側の流路部50aを開くとともに、第4切替弁54が下流側の流路部50bを開く。また、電池用冷媒回路14の循環ポンプ20の作動により冷媒が電池用冷媒回路14を循環する。なお、車室内の暖房用循環流路(
図2中、太線経路参照)における各装置の作動は、前記と同様であるから重複する説明を省略する。また、
図5中、太線は冷媒の流れる経路を示す。
【0032】
この状態で、気液分離器36から流出した気相の冷媒は、その全量が電池用冷却流路50に流れる。電池用冷却流路50を流れる冷媒は、第2熱交換器56を通過し、第1熱交換器16を経由した後、下流側の流路部50bを介して主流路22に合流し、圧縮機24に吸入される。また、第1熱交換器16によって、電池用暖機流路46の冷媒の熱が電池用冷媒回路14の冷媒と熱交換されることで、電池用冷媒回路14の冷媒が冷却される。また、電池用冷媒回路14において、第1熱交換器16から流出した冷媒は、電池18を経由することにより、電池18の冷却が行われる。
【0033】
(5)車室内の冷房時でかつ電池18の冷却時(
図6参照)
前記「(2)車室内の冷房時(
図3参照)」において、第3切替弁52が電池用冷却流路50の上流側の流路部50aを開くとともに、第4切替弁54が下流側の流路部50bを開く。また、電池用冷媒回路14の循環ポンプ20の作動により冷媒が電池用冷媒回路14を循環する。なお、車室内の冷房用循環流路(
図3中、太線経路参照)における各装置の作動は、前記と同様であるから重複する説明を省略する。また、
図6中、太線は冷媒の流れる経路を示す。
【0034】
この状態で、気液分離器36から流出した気相の冷媒は、その全量が電池用冷却流路50に流れる。電池用冷却流路50を流れる冷媒は、第2熱交換器56に流れる。第2熱交換器56によって、主流路22(詳しくは、第2切替弁44と第2膨張弁32との間の流路部)を流れる冷媒と、上流側の流路部50a(第1熱交換器16よりも上流側の流路部)の冷媒との間で熱交換が行われる。これにより、主流路22を流れる冷媒の温度が低下されるとともに、上流側の流路部50aの冷媒の温度が上昇される。
【0035】
また、第2熱交換器56から流出した冷媒は、第1熱交換器16を経由した後、下流側の流路部50bを介して主流路22に合流し、圧縮機24に吸入される。また、第1熱交換器16によって、電池用暖機流路46の冷媒の熱が電池用冷媒回路14の冷媒と熱交換されることで、電池用冷媒回路14の冷媒が冷却される。また、電池用冷媒回路14において、第1熱交換器16から流出した冷媒は、電池18を経由することにより、電池18の冷却が行われる。
【0036】
前記した車両用空調装置10によると、車室内の暖房時(
図2参照)には、圧縮機24によって温度が上昇した冷媒をヒータコア26に流すことにより、その冷媒の熱で車室内の暖房を行うことができる。また、車室内の冷房時(
図3参照)には、圧縮機24から吐出された冷媒を蒸発器34に流すことにより、その冷媒の蒸発作用によって車室内の冷房を行うことができる。
【0037】
また、車室内の暖房時でかつ電池18の暖機時(
図4参照)には、圧縮機24によって温度が上昇した冷媒を、電池用暖機流路46に流して第1熱交換器16を経由させる。第1熱交換器16において、空調用冷媒回路12の電池用暖機流路46と電池用冷媒回路14との間で熱交換が行われることにより、電池用冷媒回路14の冷媒の温度が上昇されるので、その冷媒の熱で電池18の暖機を行うことができる。
【0038】
ところで、圧縮機24によって温度が上昇した冷媒をヒータコア26と第1熱交換器16とに分配して並列的に流すことによって、車室内の暖房能力の低下を抑制するとともに電池18の暖機能力を向上することができる。また、電池18の暖機能力の向上により、電池18の加熱スピードを向上することができる。
【0039】
また、車室内の暖房時(
図2参照)には、第1切替弁40が第1バイパス流路38を閉じるとともに第2切替弁44が第2バイパス流路42を開く。これにより、圧縮機24によって温度が上昇した冷媒を、ヒータコア26、第1膨張弁28、凝縮器30、気液分離器36に順次流す暖房用循環流路(
図2中、太線経路参照)が構成されることにより、暖房効率を向上することができる。
【0040】
また、車室内の冷房時(
図3参照)には、第1切替弁40が第1バイパス流路38を開くとともに第2切替弁44が第2バイパス流路42を閉じる。これにより、圧縮機24から吐出された冷媒を、凝縮器30、第2膨張弁32、蒸発器34、気液分離器36に順次流す冷房用循環流路(
図3中、太線経路参照)が構成されることにより、冷房効率を向上することができる。
【0041】
また、電池18の冷却時には、気液分離器36から流出された冷媒を、電池用冷却流路50に流して第1熱交換器16を経由させる。第1熱交換器16において、空調用冷媒回路12の電池用冷却流路50と電池用冷媒回路14との間で熱交換が行われることにより、電池用冷媒回路14の冷媒の温度が低下されるので、その冷媒の熱で電池18の冷却を行うことができる。一方、空調用冷媒回路12の電池用冷却流路50の冷媒は、第1熱交換器16を経由することにより温度が上昇された後で圧縮機24に吸入される。これにより、気液分離器36から流出された冷媒が第1熱交換器16を経由することなく圧縮機24に吸入させる場合に比べて、圧縮機24に吸入される冷媒の温度が高くなるため、圧縮機24の省動力化を図ることができる。
【0042】
また、車室内の暖房時でかつ電池18の冷却時(
図5参照)、又は、車室内の冷房時でかつ電池18の冷却時(
図6参照)には、第2熱交換器56において、空調用冷媒回路12の主流路22の第2切替弁44と第2膨張弁32との間の流路部と、電池用冷却流路50の第1熱交換器16よりも上流側の流路部50aとの間で熱交換が行われる。これにより、空調用冷媒回路12の主流路22を流れる冷媒は、第2熱交換器56において温度が低下された後で第2膨張弁32、蒸発器34へと順次流れるため、冷房効率を向上することができる。一方、空調用冷媒回路12の電池用冷却流路50の冷媒は、第2熱交換器56において温度が上昇された後で第1熱交換器16、圧縮機24へと順次流れる。このため、圧縮機24に吸入される冷媒の温度が高くなるため、圧縮機24の省動力化を図ることができる。なお、電池用冷却流路50の冷媒の温度は、第2熱交換器56において上昇されるが、その温度は第1熱交換器16を流れる電池用冷媒回路14の冷媒の温度よりも低い。
【0043】
また、電池18に、相変化により発熱する潜熱蓄熱材を容器66内に封入してなる潜熱蓄熱装置65を備えたものである(
図7参照)。したがって、車両の冷間始動時において、潜熱蓄熱装置65の潜熱蓄熱材の相変化による発熱を利用して電池18を加温することにより、潜熱蓄熱材の発熱分に相当する圧縮機24の動力を低減することができる。
【0044】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。