特許第5955690号(P5955690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955690
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】樹脂製プラグ体
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20160707BHJP
   F16B 17/00 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   F16B35/00 E
   F16B17/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-172155(P2012-172155)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-31824(P2014-31824A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077241
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 稔
(72)【発明者】
【氏名】直井 創
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−076740(JP,A)
【文献】 特開2010−266053(JP,A)
【文献】 実開昭50−111571(JP,U)
【文献】 特表2001−527374(JP,A)
【文献】 実公昭47−037976(JP,Y1)
【文献】 特開平09−119416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
F16B 17/00−19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、この頭部から延出される軸部と、この軸部の側方にあってこの軸部の軸線に交叉する向きの移動可能に弾性変形部を介して前記頭部又は軸部に連接された掛合部とを有し、前記頭部以外の部分を取付対象に形成された孔に挿入したときにこの孔内の被掛合部に前記掛合部を前記弾性変形部の弾性力により掛合させるようになっていると共に、
前記軸部に、前記頭部以外の部分を前記孔から抜き出す向きの力が作用されたときに、前記掛合部の前記軸部に向き合う背面部に形成された被案内部に接して前記孔の内面に押しつける向きにこの掛合部を案内する案内部が備えられており、
前記掛合部は前記背面部と反対の表面部に、取付対象の孔内に形成された被掛合部としての雌ネジ部に対応した雄ネジ部の一部よりなる掛合部分を備えていると共に、
前記軸部における前記掛合部の背面部と向き合う側と反対の表面部と、前記掛合部の表面部との間の距離を、前記孔の雌ネジ部のネジ山の頂部位置での内径よりもやや大きくさせていることを特徴とする樹脂製プラグ体。
【請求項2】
案内部及び被案内部の双方又は一方は、軸部の軸線に対して傾きを持った傾斜面であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製プラグ体。
【請求項3】
頭部を間に挟んでこの頭部の両側にそれぞれ、軸部及び掛合部が備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂製プラグ体。
【請求項4】
頭部に捻回操作用の操作部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製プラグ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、取付対象に形成された孔に頭部以外の部分を挿入可能で且つこの挿入によりこの孔側に掛合可能に構成されて、かかる掛合により前記取付対象に取り付け用いられる樹脂製プラグ体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部とアンカー状部を有し、アンカー状部の弾性変形によりこのアンカー状部のネジ孔への挿入を許容させると共に、この挿入停止位置でのアンカー状部の弾性復帰によりこのアンカー状部の先端をネジ孔の雌ネジ部に掛合させるようにしてなるクリップがある。(特許文献1参照)かかるクリップにあっては、前記アンカー状部を弾性変形し難くすればネジ孔とアンカー状部との掛合状態は強固となるが、単純にアンカー状部を弾性変形し難くするとこれをネジ孔へ挿入するときの挿入力を大きくさせてしまうため、前記掛合状態を強固とするのに限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−185387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、取付対象の孔に挿入し易く且つこの挿入後は抜け難い機能をもった樹脂製プラグ体を適切に構成できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、樹脂製プラグ体を、頭部と、この頭部から延出される軸部と、この軸部の側方にあってこの軸部の軸線に交叉する向きの移動可能に弾性変形部を介して前記頭部又は軸部に連接された掛合部とを有し、前記頭部以外の部分を取付対象に形成された孔に挿入したときにこの孔内の被掛合部に前記掛合部を前記弾性変形部の弾性力により掛合させるようになっていると共に、
前記軸部に、前記頭部以外の部分を前記孔から抜き出す向きの力が作用されたときに、前記掛合部の被案内部に接して前記孔の内面に押しつける向きにこの掛合部を案内する案内部が備えられているものとした。
【0006】
前記取付対象の孔に頭部以外の部分を挿入・掛合させた状態から、プラグ体にこの頭部以外の部分を前記孔から抜き出す向きの力が作用されると、案内部と被案内部の協働によって、掛合部は弾性変形部を変形させながら被掛合部との掛合を解く向きと逆の前記孔の内面に押しつけられる向きに案内される。これにより取付対象の孔に対するプラグ体の取り付け状態は安定的に維持される。すなわち、かかるプラグ体は、取付対象の孔に挿入し易く構成できる一方で、この孔より抜け難く構成することができる。
【0007】
前記案内部及び被案内部の双方又は一方を、軸部の軸線に対して傾きを持った傾斜面としておくことが、この発明の好ましい態様の一つとなる。
【0008】
前記頭部を間に挟んでこの頭部の両側にそれぞれ、軸部及び掛合部を備えさせておくこともある。このようにした場合、頭部を挟んだ一方側の頭部以外の部分を一方の取付対象の孔に挿入・掛合させ、かつ、頭部を挟んだ他方側の頭部以外の部分を他方の取付対象の孔に挿入・掛合させることで、プラグ体を介して二つの取付対象を連結させることができる。
【0009】
前記掛合部が、取付対象の孔内に形成された被掛合部としての雌ネジ部に対応した雄ネジ部の一部よりなる掛合部分を備えたものとしておくことが、この発明の好ましい態様の一つとなる。この場合さらに、前記頭部に捻回操作用の操作部を形成させておくこともある。このようにした場合、前記孔への掛合状態から、操作部を手指で摘み持って、あるいは、工具を嵌め合わせることで、プラグ体をスムースに捻り回すことができ、この捻り回しによりプラグ体を螺退させて前記孔からプラグ体の前記頭部以外の部分、つまり、前記軸部と掛合部を抜き出し前記取付対象からプラグ体を取り外すことができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、取付対象の孔に挿入し易く且つこの挿入後は抜け難い機能をもった樹脂製プラグ体を適切に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はこの発明の実施の形態の一つにかかるプラグ体(第一例)の斜視図である。
図2図2は前記第一例の斜視図である。
図3図3は前記第一例の平面図である。
図4図4は前記第一例の側面図である。
図5図5は前記第一例の断面図である。
図6図6は前記第一例のプラグ体の取付対象の孔への挿入途中の状態を示した断面図である。
図7図7は前記第一例のプラグ体の取付対象の孔への挿入しきった状態を示した断面図である。
図8図8は取付対象の孔への挿入された第一例のプラグ体にこの孔から抜き出される向きの力が作用された状態を示した断面図である。
図9図9はこの発明の実施の形態の他の一つにかかるプラグ体(第二例)の断面図である。
図10図10参考例にかかるプラグ体(第三例)の断面図である。
図11図11はこの発明の実施の形態のさらに他の一つにかかるプラグ体(第四例)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図11に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる樹脂製プラグ体は、取付対象Nに形成された孔Naに頭部1以外の部分を挿入可能で且つこの挿入によりこの孔Na側に掛合可能に構成されて、かかる掛合により前記取付対象Nに取り付け用いられるものである。かかるプラグ体は、典型的にはプラスチック材料を金型を使って成形することにより構成される。かかるプラグ体は、前記取付対象Nに取り付けられて、前記頭部1とこの取付対象Nとの間で別の対象物(図示は省略する。)を挟み込み状に保持するように用いることもできる。すなわち、かかるプラグ体は、いわゆるホールプラグとして用いることができるだけでなく、いわゆるクリップとしても用いることができるものである。
【0013】
かかるプラグ体は、頭部1と、軸部2と、掛合部3とを備えている。
図1図8に示される第一例及び図9に示される第二例では、一つの頭部1の一方側に一つの軸部2と掛合部3とを形成させてプラグ体を構成させている。
図10に示される第三例(参考例)では、一つの頭部1の一方側に一つの軸部2を形成させると共に、この軸部2の両側にそれぞれ掛合部3を形成させてプラグ体を構成させている。
図11に示される第四例では、一つの頭部1の両側にそれぞれ、軸部2及び掛合部3を形成させてプラグ体を構成させている。
【0014】
頭部1は、前記取付対象Nの孔Naに入り込まない大きさを備えている。図示の例では、かかる頭部1は前記取付対象Nの孔Naに入り込まない大きさの円板状部10を有している。第一例〜第三例では、頭部1の他方側には、プラグ体を全体として捻り回し可能とする捻回操作用の操作部11が形成されている。図示の例では、かかる操作部11は、筒一端を頭部1の他方側の面に一体に連接させた短寸筒部11aを有している。この短寸筒部11aは、その筒軸に直交する断面において、その外側及び内側の輪郭形状をいずれも多角形、図示の例では六角形としている。これにより、前記孔Naに掛合した状態から、操作部11を手指で摘み持って、あるいは、工具を嵌め合わせることで、プラグ体をスムースに捻り回すことができるようになっている。図示の例では、掛合部3は、取付対象Nの孔Na内に形成された被掛合部Nbとしての雌ネジ部Ncに対応した雄ネジ部の一部よりなる掛合部分30を備え、この掛合部分30によって孔Na側に掛合されるようになっており、前記捻り回しによりプラグ体を螺退させて前記孔Naからプラグ体の前記頭部1以外の部分、つまり、前記軸部2と掛合部3を抜き出し前記取付対象Nからプラグ体を取り外せるようになっている。図示の例ではまた、前記短寸筒部11a内において頭部1にドライバの先端の嵌まる凹部11bが形成されている。これにより、図示の例では、短寸筒部11aに先端を外嵌めされるレンチ、短寸筒部11aに先端を内嵌めされるスパナ、前記凹部11bに対応した先端を持ったドライバのいずれによっても、プラグ体をスムースに捻り回すことができるようになっている。
【0015】
軸部2は、軸一端を前記頭部1の一方側に一体に連接させてこの頭部1から延出されている。図示の例では、軸部2の軸一端20は前記頭部1を構成する円板状部10の中央に一体に連接されている。
【0016】
掛合部3は、前記軸部2の側方にあってこの軸部2の軸線xに交叉する向きの移動可能に弾性変形部4を介して前記頭部1又は軸部2に連接されている。第一例、第三例及び第四例では、前記軸部2と掛合部3とが弾性変形部4によって連接されている。一方、第二例では、前記頭部1と掛合部3とが弾性変形部4によって連接されている。図示の例では、掛合部3は、軸部2の軸一端20と軸他端21との間において、軸部2との間に間隔を開けて配されている。図示の例では、かかる掛合部3における軸部2に向き合う背面部33と反対の表面部32にネジ孔Naとして構成された前記取付対象Nの孔Naの内面の雌ネジ部Ncに対応した雄ネジ部の一部により構成された掛合部分30が形成されている。図示の例では、掛合部3の表面部32に、前記雄ネジ部のネジ山を構成するリブ31が、前記軸線方向において隣り合うリブ31との間に間隔を開けて三カ所設けられており、この三カ所のリブ31…31によって前記掛合部分30が構成されている。
【0017】
そして、この実施の形態にかかるプラグ体にあっては、前記頭部1以外の部分を取付対象Nに形成された孔Naに挿入したときにこの孔Na内の被掛合部Nbに前記掛合部3を前記弾性変形部4の弾性力により掛合させるようになっている。図示の例では、軸部2における前記掛合部3の背面部33と向き合う側と反対の表面部26と、この掛合部3の表面部32との間の距離は、前記孔Naの雌ネジ部Ncのネジ山の頂部位置での内径よりもやや大きくなっている。従って、プラグ体の頭部1以外の部分の前記孔Naへの挿入は、掛合部3の掛合部分30と雌ネジ部Ncとの接触に伴うこの掛合部分30を軸部2に近接させる向きの前記弾性変形部4の弾性変形により許容される。(図6)前記孔Naへのプラグ体の頭部1以外の部分の挿入を止めると前記弾性変形部4の弾性復帰により前記雌ネジ部Ncに掛合部分30がかみ合いプラグ体の掛合部3の前記孔Na側への掛合がなされる。(図7
【0018】
また、この実施の形態にかかるプラグ体にあっては、前記軸部2に、前記頭部1以外の部分を前記孔Naから抜き出す向きの力が作用されたときに、前記掛合部3の被案内部34に接して前記孔Naの内面に押しつける向きにこの掛合部3を案内する案内部22が備えられている。
【0019】
図示の例では、案内部22及び被案内部34の双方が、軸部2の軸線xに対して傾きを持った傾斜面t、t’となっている。案内部22は、軸部2における前記掛合部3の背面部33と向き合う側であって、この軸部2の軸線x方向略中程の位置に形成されている。図示の例では、案内部22の傾斜面tは軸部2の前記位置に形成された山状の膨出部23の頭部1側に向けられた側面よって形成されている。一方、掛合部3の傾斜面t’は、掛合部3の背面部33に形成されており、前記案内部22の傾斜面tと同じ向きの傾きを持ったものとなっている。すなわち、いずれの傾斜面t、t’も前記頭部1側に向かうに連れて軸部2の表面部26に近づく傾きを持つように構成されている。
【0020】
取付対象Nの孔Naに頭部1以外の部分を挿入・掛合させた状態から、プラグ体にこの頭部1以外の部分を前記孔Naから抜き出す向きの力が作用されると、案内部22と被案内部34の協働によって、掛合部3は弾性変形部4を変形させながら被掛合部Nbとの掛合を解く向きと逆の前記孔Naの内面に押しつけられる向きに案内される。(図8)これにより取付対象Nの孔Naに対するプラグ体の取り付け状態は安定的に維持される。すなわち、かかるプラグ体は、取付対象Nの孔Naに挿入し易く構成できる一方で、この孔Naより抜け難く構成することができる。図示の例とは異なり、案内部22及び被案内部34のいずれか一方を、軸部2の軸線xに対して傾きを持った傾斜面としておいても同様の機能を奏することができる。
【0021】
(第一例)
図1図8に示される第一例では、軸部2の軸他端21は、頭部1の中心を通る仮想の直線y上に円の中心を位置させる円板体24によって構成されている。軸部2の軸他端21と軸一端20との間は、軸他端21より細く、前記仮想の直線yとの間に間隔を開けて形成された前記掛合部3側に向いた背面部25と、前記仮想の直線yを中心軸とする仮想の円柱の外面に倣った表面部26とから構成されている。この第一例では、弾性変形部4は、軸部2の軸他端21と膨出部23との間において前記背面部25から前記軸線xに略直交する向きに突き出すと共に、膨出部23の頂部より前方となる位置において頭部1側に向けて屈曲されてこの頭部1側に向けられた端部を掛合部3における軸他端21側に向けられた側部に一体に連接させた屈曲腕部40によって構成されている。
【0022】
(第二例)
図9に示される第二例では、弾性変形部4は、頭部1と掛合部3におけるこの頭部1側に向けられた側部との間に架設された湾曲片41によって構成されている。
【0023】
(第三例/参考例
図10に示される第三例では、軸部2におけるその軸線xを挟んだ両側にそれぞれ、第一例と実質的に同一の構成の掛合部3、弾性変形部4、案内部22を構成する膨出部23が形成されている。この第三例では、前記軸線xを挟んだ一方側の形状は、この軸線xを中心とした他方側の形状に対して線対称となる形状となっている。
【0024】
(第四例)
図11に示される第四例では、頭部1を間に挟んでこの頭部1の両側にそれぞれ、第一例と実質的に同一の構成の掛合部3、弾性変形部4、案内部22を構成する膨出部23が形成されている。この第四例では、頭部1の形成位置において前記軸線xに直交する仮想の線分zを挟んだ一方側の形状が、この線分zを中心とした他方側の形状に対して線対称となる形状となっている。この第四例のように構成した場合、頭部1を挟んだ一方側の頭部1以外の部分を一方の取付対象Nの孔Naに挿入・掛合させ、かつ、頭部1を挟んだ他方側の頭部1以外の部分を他方の取付対象Nの孔Naに挿入・掛合させることで、プラグ体を介して二つの取付対象Nを連結させることができる。
【符号の説明】
【0025】
N 取付対象
Na 孔
x 軸線
1 頭部
2 軸部
22 案内部
3 掛合部
34 被案内部
4 弾性変形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11