(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
動物病院で使用する獣医科用ケージは、治療対象となるイヌやネコ、サル、フェレットなどの動物を収容し、経過を観察し、投薬等を行うための、言わば病室として使用されるものである。一般的に、ステンレス鋼などを用いて堅牢に形成されており、手前の開口部を格子扉とているものが多い。ところで、このような獣医科用ケージでは、治療対象となる動物としてイヌが占める比率が非常に高いことからイヌを収容するのに好適な構造としたものが多い。
【0003】
図16は、従来技術に係る獣医科用ケージの一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
図16において、100はケージ、101は開閉扉、102はヒンジ、103及び104は掛止ピン、105はリリースバー、106は掛止片、107はラッチである。
図16は、特開2008−092825公報において開示されている獣医科用ケージである。ケージ100は、開口部2を閉鎖する開閉扉101をヒンジ102によって回動可能に支持している。また、開閉扉101のヒンジ102とは反対側となる部位に掛止ピン103及び104を上下に備えた掛止片106を設け、さらにケージ本体100の開口部の周縁に掛止ピン103及び104と対応する位置にラッチ107を回動可能に設けている。くわえて、上下のラッチ107をリリースバー105で連結している。リリースバー105をケージ100の本体に向けて押動すると、リリースバー105に連結された上下のラッチ107は後方に回動して、掛止ピン103及び104を開放する構成となっている。このような構成によって、片手でリリースバー14を操作して開閉扉101の開止又は開放が可能になっている。
【0004】
しかしながら、このような従来技術に係るケージ100では、治療対象となる動物が例えば中型犬である場合にケージの内部空間が小さすぎるという課題がある。また、例えばネコのように、睡眠を取る空間、餌を食べる空間、排泄をする空間など生活に関わる空間がある程度仕切られており、またそれらの空間の間を自由に往来できる方が精神的に安定する動物がいるが、このようなケージでは内部空間を部分的に仕切ることは衛生管理などの観点から難しいと言える。以上のように、従来技術に係るケージでは、収容する動物の種類や大きさに応じて内部空間の大きさを適宜変更したり、部分的に仕切ったりすることが困難であった。さらに、内部空間の大きさを適宜変更したり、部分的に仕切ったりすることを実現するためには、必然的にケージの内部空間に可動な構成部材を設けることになる。可動な構成部材があると、ネコやサルなど巧みにモノを動かすことができる動物が構成部材を動かして遊ぼうとするので、獣医師等が操作する場合を除いて可動な構成部材を動かないようにすることが副次的な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、収容する動物の種類や大きさに応じて内部空間の大きさを適宜変更したり、部分的に仕切ったりすることが可能な獣医科用ケージを提供することを第1の目的とする。さらに、ケージの内部空間に設けた可動な構成部材が必要な場合を除いて動かないようにすることが可能な獣医科用ケージを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、手前側に開口部が設けられると共に動物を収容可能な筐体と、該筐体の内部空間を区画する間仕切り板とを有する獣医科用ケージにおいて、前記間仕切り板は、手前側に引くことによって前記筐体から抜き取り可能に設けられた本体部と、該本体部の手前側下方に形成された通行用開口部と、該通行用開口部を開閉可能に設けられた開閉板とを備え、前記筐体の開口部の周縁部に設けられると共に、前記間仕切り板が手前側に動くことを規制するロック機構をさらに有することを特徴とする獣医科用ケージである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記間仕切り板は、前記通行用開口部の周縁部に設けられると共に、前記開閉板を摺動可能に、かつ、手前側に抜き取り可能に保持する開閉板保持部と、前記開閉板の手前側端部に手前側に突出するように設けられた把手とを備えていることを特徴とする獣医科用ケージである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記間仕切り板は、前記本体部の手前側端部に上下方向に延在するように形成された保持用筒状部と、 前記保持用筒状部の前面側に上下方向に延在するように形成されたスリット状開口部と、 前記開閉板の手前側端部に上下方向に延在するように形成された受け用筒状部と、前記保持用筒状部の内部に上下方向に摺動可能に、かつ、自重によって下方に摺動したときに下端部及びその近傍部分が前記受け用筒状部に進入した状態になるように設けられた支持棒材と、前記支持棒材に基端部が固定されると共に先端側が前記スリット状開口部を介して手前側に突出するように設けられた別の把手とを備え、さらに、前記スリット状開口部は、前記別の把手が下端部又はその近傍に接しているときに前記支持棒材が前記受け用筒状部に進入して前記開閉板が手前側に動くことを規制し、かつ、前記別の把手が上端部若しくはその近傍に接しているとき、又は、これに近い位置にあるときに前記支持棒材が前記受け用筒状部から脱出して前記開閉板が手前側に動くことを規制しないような長さ範囲に形成されていることを特徴とする獣医科用ケージである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記ロック機構は、略板状に形成されると共に上下方向に配置された本体板部と、前記本体板部に上下方向に延在するように形成されたスリットと、前記スリットを介して前記筐体の前記開口部の前記周縁部に固定されると共に前記本体板部を上下方向に移動可能に支持する支持部材とを備え、さらに、前記スリットは、前記本体板部が下端部又はその近傍に接しているときに前記本体板部が前記間仕切り板の前記本体部が手前側に動くことを規制し、かつ、前記本体板部が上端部又はその近傍に接しているとき、又は、これに近い位置にあるときに前記本体板部が前記間仕切り板の前記本体部が手前側に動くことを規制しないような長さ範囲に形成されていることを特徴とする獣医科用ケージである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記筐体は、天井面に設けられると共に前記間仕切り板の前記本体部の上端部を保持するレール部材と、背面に設けられると共に前記間仕切り板の前記本体部の奥側端部を保持する保持部材とを備えていることを特徴とする獣医科用ケージである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求孔3ないし請求項5のいずれか一項に記載の発明において、さらに、前記筐体の開口部を閉止可能な第1の扉及び第2の扉と、前記第1の扉及び前記第2の扉をそれぞれ閉止状態で保持可能である第1のラッチ機構及び第2のラッチ機構を有し、前記間仕切り板の前記別の把手と前記開閉板の前記把手との少なくとも一方は、前記第1のラッチ機構と前記第2のラッチ機構との間に介在するように配置されていることを特徴とする獣医科用ケージである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、間仕切り板を筐体から抜き取ることによって、間仕切り板の左右両側の空間を1つの空間として使用できるので、中型犬など比較的大きい動物の収容が容易になる。また、間仕切り板によって内部空間を区画したままの状態で通行用開口部を開放すれば、間仕切り板によって区画された2つの空間が通行用開口部を介して往来可能となるので、ネコなどのように、2つの空間がある程度仕切られており、かつ、2つの空間の間を自由に往来することを好む動物に対して快適な空間を提供できる。さらに、間仕切り板が手前側に動くことを規制するロック機構を設けているので、ネコやサルなどが間仕切り板を勝手に動かして不測の事態を起こすことを防止できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、把手を手前に引くことによって開閉板を手前側に抜き取ることができるので、ケージの内部に手を入れずに通行用開口部を開放することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、別の把手を持ち上げて支持棒材を上昇させ、さらにその状態を保ったまま開閉板の把手を手前に引かないと通行用開口部を開放することができないので、収容した動物が通行用開口部を勝手に開放することをより確実に防止できる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、ロック機構の本体板部を上昇させ、さらにその状態を保ったまま間仕切り板の別の把手を手前に引かないと間仕切り板を抜き取ることができないので、収容した動物が間仕切り板を抜き取ることをより確実に防止できる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、レール部材と保持部材が間仕切り板を保持するので、動物が間仕切り板に体当たりしたときに間仕切り板が所定位置から離脱することを防止できる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、別の把手と把手との少なくとも一方が2つのラッチ機構との間に介在しているので、収容した動物が別の把手又は把手に触れることをより確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージの全体構成について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る獣医科用ケージを示す正面図である。
図1において、10は獣医科用ケージ、11は外部筐体、12は下段左側ケージ、13は下段右側ケージ、14は上段左側ケージ、15は上段右側ケージ、16は格子扉、16a及び16bは支持棒、17は格子扉、17a及び17bは支持棒、18は格子扉、18a及び18bは支持棒、19は格子扉、19a及び19bは支持棒、20は下段間仕切り板、30は上段間仕切り板、40は下段間仕切り板ロック機構、49は上段間仕切り板ロック機構、50及び51は支持脚、52及び53はキャスタ、54、55、56及び57は把手、58a、58b、59a、59b、60a、60b、61a及び61bはヒンジである。また、
図2は、第1の実施の形態に係る獣医科用ケージの格子扉を取り外した状態を示す正面図である。
図2において、62及び63は背面窓、64、65、66及び67は支柱材、83は上段筐体背面、84は下段筐体背面であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0021】
この実施の形態に係る獣医科用ケージ10は、
図1に示すように、1つの外部筐体11の内部に下段左側ケージ12、下段右側ケージ13、上段左側ケージ14及び上段右側ケージ15の4つのケージを設けている。下段左側ケージ12と下段右側ケージ13とは、共通する下段内部筐体の内部空間を下段間仕切り板20で区画することによって、2つの独立した内部空間、すなわち、個別に動物を収容可能である下段左側ケージ12と下段右側ケージ13としたものである。したがって、後述する方法によって、下段間仕切り板20を抜き取ると、下段左側ケージ12と下段右側ケージ13とは1つの下段ケージとして使用することができる。上段左側ケージ14と上段右側ケージ15とについても同様に、共通する下段内部筐体の内部空間を上段間仕切り板30で区画したものであり、共通する上段内部筐体の内部空間を上段間仕切り板30で区画しており、上段間仕切り板30を抜き取ると1つの上段ケージとして使用することができる。勿論、上段間仕切り板30を配置しているときには、下段左側ケージ12と下段右側ケージ13とは独立したケージとして別個に使用できる。なお、本発明の実施の形態に係る獣医科用ケージ10は、ネコに対して特に好適なケージと言えるが、勿論、イヌ、フェレット、サルなど他の動物に対しても適しており、収容される動物は特に限定されない。また、獣医科以外の用途、例えば、いわゆるペットホテルにおいてペットを収容するなど、他の用途において使用することも可能である。
【0022】
また、下段左側ケージ12の開口部には、これを閉止するための格子扉16が設けられている。同様に、下段右側ケージ13、上段左側ケージ14及び上段右側ケージ15には、それぞれ格子扉17、18及び19が設けられている。格子扉16は、下段間仕切り板20側の端部に把手54が設けられており、反対側の端部に設けた支持棒16a及び16bがヒンジ58a及び58bによって回転可能に支持されている。また、格子扉17は、下段間仕切り板20側の端部に把手55が設けられており、反対側の端部に設けた支持棒17a及び17bがヒンジ59a及び59bによって回転可能に支持されている。したがって、格子扉16と格子扉17とは、下段間仕切り板20側から開く両開き扉になっている。格子扉18と格子扉19についても同様に、支持棒18a及び18bと、支持棒19a及び19bとがヒンジ60a及び60bと、ヒンジ61a及び61bとによって回転可能に支持されており、上段間仕切り板30側から開く両開き扉になっている。なお、これらの格子扉は、下段間仕切り板20又は上段間仕切り板30の反対側から開く構成としてもよいが、後述する理由により両開き扉とすることが望ましい。
【0023】
さらに、
図2に示すように、下段間仕切り板20と上段間仕切り板30とは、手前側端部が支柱材64と支柱材65との間隙、支柱材66と支柱材67との間隙にそれぞれ位置している。支柱材64と支柱材65との間隙は、下段間仕切り板20の手前側をしっかりと保持できるように非常に狭いものにしている。同様に、支柱材66と支柱材67との間隙も、上段間仕切り板30との手前側をしっかりと保持できるように非常に狭いものにしている。また、格子扉16、17、18及び19は、各支持棒を各ヒンジから抜き取ることができる。
図2は各支持棒を各ヒンジから抜き取って、格子扉16、17、18及び19を取り外した状態を示している。獣医科用機器は衛生管理が非常に重要になるが、獣医科用ケージ10は格子扉16、17、18及び19を取り外せるので、消毒作業などが容易にできる利点がある。また、上段筐体背面83には、背面窓62及び63を設けている。背面窓62及び63は、ネコやリスザルなどのように、周囲を動く人の姿などが見られる方が精神的に落ち着く動物のために設けたものである。なお、窓は、上段筐体の背面だけでなく、上段間仕切り板30と対向する側面に設けてもよく、下段筐体背面84又は側面に設けてもよい。また、左右のケージのうち一方のみに窓を設けてもよい。また、ケージの個数は2つ以上であればよく、4つに限定されるものではない。さらに、下段又は上段のケージに2枚以上の間仕切り板を設けることも可能である。
【0024】
次に、下段間仕切り板及び上段間仕切り板について説明する。
図3は、下段間仕切り板を示す図であり、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図である。
図3において、21は本体部、22は保持用筒状部、22aは筒状空間、22bはスリット状開口部、23は開閉板保持部、24は突き当て部、25は支持棒材、26は把手、27は開閉板、28は受け用筒状部、29は把手であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。また、
図4は、下段間仕切り板から開閉板の抜き取り方法を示す図であり、(a)は抜き取り途中における左側面図、(b)は抜き取り後の左側面図である。
図4において、21aは通行用開口部であり、その他の符号は
図3と同じものを示す。さらに、
図5は、上段間仕切り板の左側面図である。
図5において、31は本体部、32は保持用筒状部、33は開閉板保持部、34は突き当て部、35は支持棒材、36は把手、37は開閉板、38は受け用筒状部、39は把手であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。
【0025】
図3に示すように、下段間仕切り板20は、全体が矩形板状に形成されており、上段左側ケージ14と上段右側ケージ15とを完全に区画するために、奥側端部は上段筐体背面83に接した状態に配置される。また、下段間仕切り板20の本体部21の奥側端部には、この端面を囲うように突き当て部24が設けられている。突き当て部24は、奥側端部に沿って上下方向に延在するように設けられており、後述する保持部材に保持される。保持部材に保持されることによって、例えば興奮した動物が下段間仕切り板20に体当たりしたときに下段間仕切り板20が変形する、あるいは所定位置から離脱することを防止する。また、本体部21の手前側端部の上から約3分の2の範囲には、上下方向に延在するように保持用筒状部22が形成されている。保持用筒状部22は、本体部21の手前側端部近傍を折り曲げ加工して形成されたものであり、その内部空間である筒状空間22aには支持棒材25を摺動可能に保持している。また、保持用筒状部22の前面側には、上下方向に延在するようにスリット状開口部22bが形成されている。さらに、支持棒材25に対しては、把手26が設けられている。把手26は、基端部が支持棒材25に固定されており、スリット状開口部22bを介して手前側に突出している。したがって、把手26は、上下方向に摺動させることが可能である。
【0026】
また、本体部21の手前側端部の下から約3分の1の範囲は、開閉板27を挿抜するために保持用筒状部22を設けていない。すなわち、本体部21の手前側下方に通行用開口部21aが形成され、さらに通行用開口部21aの周縁部に開閉板保持部23を設けている。通行用開口部21aは、
図4(b)に示すように開口しており、収容している動物が下段左側ケージ12と下段右側ケージ13との間を往来するための出入り口となる。なお、通行用開口部21aは、手前側下方に設けられているので、かなり小型の動物でもこの開口部を越えて往来することが可能である。さらに、通行用開口部21aは、開閉板27によって開閉される。開閉板保持部23は、本体部21との間に開閉板27の厚みより若干広い間隙を確保するために、本体部21の手前側を除いてその外周部に沿って図示していないスペーサが設けられており、このスペーサを介して本体部21の左側の面に付着している。開閉板27を開閉板保持部23と本体部21とのスペーサを設けていない手前側の間隙から挿入すると、この間隙内を摺動しながら通行用開口部21aを閉止してゆく。通行用開口部21aは、
図3(b)に示すように、手前側端部には、上下方向に延在するように受け用筒状部28が形成されている。受け用筒状部28は、支持棒材25の進入を可能にするために、保持用筒状部22の内部空間が本体部21の内部空間と同じ幅と奥行きに設定されている。また、受け用筒状部28には、手前側に突出するように把手29が設けられている。なお、把手29は、受け用筒状部28に固定されており、上下方向に摺動しない。
【0027】
さらに、前述のスリット状開口部22bは、把手26が最も下方に位置している状態、つまり、把手26がスリット状開口部22bの下端部又はその近傍に接しているときに、
図3(b)に示すように、支持棒材25の下端部及びその近傍が受け用筒状部28に進入して、開閉板27が手前側に動くことを規制するように形成されている。同時に、スリット状開口部22bは、把手26が最も上方又はその近傍に位置している状態、つまり、把手26がスリット状開口部22bの上端部又はその近傍に接しているとき、又はこれに近い位置にあるときに、
図4(a)に示すように、支持棒材25が受け用筒状部28から脱出して開閉板27が手前側に動くことを規制しないように形成されている。スリット状開口部22bをこのような長さ範囲に形成したことによって、支持棒材25は、通常の状態では、自重によって把手26がスリット状開口部22bの下端部又はその近傍に接するところまで下降するので、下端部及びその近傍が受け用筒状部28に進入して、開閉板27が手前側に動くことを規制した状態となる。
【0028】
また、ネコやサルが把手26に触れて遊んでいるうちに、偶然に把手26を持ち上げて下端部及びその近傍が受け用筒状部28から離脱した場合でも、把手26を持ち上げたままの状態で把手29を手前に動かさなければ開閉板27を抜き取ることはできない。動物にとって、この二つの動作を同時に行うことは非常に困難であり、収容した動物が開閉板27を抜き取ることを防止できる構造と言える。その一方、獣医師等が開閉板27を抜き取って通行用開口部21aを開放する場合には、
図4(a)に示すように、把手26を持ち上げたまま把手29を手前に引くだけで、
図4(b)に示すような開放状態となる。したがって、例えば南京錠を使用するときのように、施錠又は解錠する際の負担が大幅に軽減されるという利点がある。
【0029】
次に、上段間仕切り板について説明する。
図5に示すように、上段間仕切り板30は、は本体部31の手前側端部の上から約3分の2の範囲に保持用筒状部32を設けており、手前側端部の下から約3分の1の範囲には開閉板保持部33の手前側端部が位置している。さらに、奥側端部には突き当て部34を設けているが、これらは下段間仕切り板20の対応する部分と同じ構造であり、同じ作用効果を奏する。また、保持用筒状部32の内部には支持棒材35が上下方向に摺動可能に設けられており、下端部及びその近傍は受け用筒状部38に進入可能である。さらに、支持棒材35には把手36が固定されており、把手36は保持用筒状部32の手前側に形成した図示していないスリット状開口部から手前側に突出している。また、開閉板37は、開閉板保持部33に保持されており、手前側端部に設けた受け用筒状部38には把手39を固定してある。以上の構成部も下段間仕切り板20の対応する部分と同じ構造であり、同じ作用効果を奏する。なお、下段間仕切り板20又は上段間仕切り板30の通行用開口部は、収容する動物の種類に応じて適宜変更可能である。また、下段間仕切り板20と上段間仕切り板30とのいずれかの通行用開口部を省略することも可能である。
【0030】
さらに、格子扉のラッチ機構について説明する。
図6は、格子扉のラッチ機構を示す部分斜視図である。
図6において、41は本体板部、42及び43は水平板部、44及び45はスリット、54a及び54b、55a及び55bは水平部、70及び80はラッチ部材であり、その他の符号は
図1と同じものを示す。また、
図7は、ラッチ機構の解除方法を示す図であり、(a)はラッチ機構の解除前の拡大右側面図、(b)はラッチ機構の解除後の拡大右側面図である。
図7において、68は支持部材、68aはスリット形成部、68bは爪部、69は支持部材、69aは爪部、69bはスリット形成部、71本体部、71a、71b及び71cは指掛け孔、72は挿入部、73はストッパ用スリット、74は段差部、75及び76は誘い込み部、77a及び77bは段差部、78は挿入部、79はストッパであり、その符号は
図2と同じものを示す。
【0031】
図6に示すように、下段左側ケージ12及び下段右側ケージ13のラッチ機構は、下段間仕切り板20の左右両側方に配置されたラッチ部材80及びラッチ部材70とこれらの周辺に設けたラッチ構成の構成部材からなる。下段間仕切り板20の把手26及び29は、これらのラッチ部材80とラッチ部材70との間隙に位置している。したがって、把手26及び29は、収容している動物から視認しにくい上に触れにくい位置にあり、収容した動物が把手26又は29に触れることを確実に防止できる。把手54の水平部54a及び54bと、把手55の水平部55a及び55bとは、いわゆる閂棒の役割を果たす。なお、ラッチ部材70及び80等のラッチ機構の構成部材は、下段間仕切り板20とは接することがないように配置されており、また下段間仕切り板ロック機構40とも機能的な関連性がない。
【0032】
さらに、ラッチ部材70等の下段右側ケージ13のラッチ機構について詳細に説明する。ラッチ部材70は、支持部材68及び69によって支持されている。
図7(a)に示すように、支持部材68は、スリット形成部68a及び爪部68bを備え、支柱材65の下端寄りの部位にねじで固定されている。支持部材68は、スリット形成部6a及び爪部68bを備えており、支柱材65にねじで固定されている。スリット形成部68は、下段右側ケージ13の手前側に水平に延びるように形成されており、さらに中央にラッチ部材70の挿入部72の摺動を案内し、かつ、保持するスリットが形成されている。爪部68bは、手前側に水平に延びるように、かつ、先端寄りの部分が略三角形形状に形成されている。この略三角形形状の部分の上側の端面は、格子扉17を閉じるときに把手55の水平部55aを案内する役割を持つ。
【0033】
支持部材69は、スリット形成部69b及び爪部69aを備えており、支柱材65にねじで固定されている。スリット形成部69bは、下段右側ケージ13の手前側に水平に延びるように形成されており、さらに中央にラッチ部材70の挿入部78の摺動を案内し、かつ、保持するスリットが形成されている。爪部69aは、手前側に水平に延びるように、かつ、先端寄りの部分が略三角形形状に形成されている。この略三角形形状の部分の上側の端面は、格子扉17を閉じるときに把手55の水平部55bを案内する役割を持つ。ラッチ部材70の本体部71は、把手55をラッチする上で中核的な役割を持つ。すなわち、本体部71は、全体を上下方向に延びる略帯状板に形成されており、さらに下と上の端部近傍の部分が細幅の挿入部72と挿入部78として形成されている。また、本体部71には、下端寄りの部位に手前側から上方に向かって、かつ、本体部71に対して漸次深く切れ込んで行く誘い込み部75と、上端寄りの部位に手前側から上方に向かって、かつ、本体部71に対して漸次深く切れ込んで行く誘い込み部76とが形成されている。
【0034】
また、誘い込み部75は、把手55の水平部55aを呼び込んで保持するためのものであり、本体部71が下方に向かって摺動すると、水平部55aは誘い込み部75の最も奥の部分、つまり先端部分に呼び込まれる。誘い込み部76は、把手55の水平部55bを呼び込み、爪部69aと共に水平部55bを挟持するためのものであり、本体部71が下方に向かって摺動すると、水平部55bは誘い込み部76の最も奥の部分、つまり先端部分に呼び込まれる。本体部71の挿入部72と挿入部78と中央寄りの部分との境界には、それぞれ段差部74と段差部77a及び77bが形成されている。本体部71の段差部74の上側の部分の幅は、スリット形成部68aのスリットの長さよりも大きいので、段差部74はこのスリットを通り抜けることはない。同様に、本体部71の段差部77a及び77bの下側の部分の幅は、スリット形成部69bのスリットの長さよりも大きいので、段差部77a及び77bはこのスリットを通り抜けることはない。よって、本体部71は、上下方向に摺動可能であるが、下方に向かって動いたときには段差部74がスリット形成部68aに当接したところで、上方に向かって動いたときには段差部77a及び77bがスリット形成部69bに当接したところで摺動が規制される。
【0035】
また、ストッパ用スリット73は、ストッパ79を移動させるためのスリットであり、「J」字を上下逆転した形状に形成されている。すなわち、ストッパ79が高い方の端部にあるときには、ストッパ79がスリット形成部68aに当接して本体部71を持ち上げることを規制する。したがって、水平部55a及び55bに対するラッチが解除されない。ストッパ79が低い方の端部にあるときには、ストッパ79がスリット形成部68aに当接しないので本体部71を持ち上げることが可能となる。くわえて、指掛け孔71a、71b及び71cは、本体部71を操作しやすくするためのものであるが、同時に、本体部71を軽量化する役割も持つ。
【0036】
さらに、ラッチ機構の動作について説明する。ラッチ機構の解除前においては、把手55の水平部55aと水平部55bはそれぞれ誘い込み部75と誘い込み部76との最も奥の部分に入り込んでいる。その上に、水平部55aは、誘い込み部76と爪部69aとによって周囲を囲まれた状態になっている。この状態おいて、まずストッパ79を解除し、
図7(a)に示すように、本体部71を上方に持ち上げてゆくと、誘い込み部75の最も奥の部分が水平部55aから、また誘い込み部76の最も奥の部分が水平部55bからそれぞれ離れ始める。さらに、本体部71を上方に持ち上げると、
図7(b)に示すように、水平部55aと水平部55aとは、誘い込み部75と誘い込み部76との縁辺にそれぞれ当接して水平部55a及び水平部55aが動物用ケージ10の手前側に押し出される。この状態において、把手55を掴んで格子扉17を手前に引くと、支持棒17a及び17bを中心に回転して格子扉16が開く。なお、以上した格子扉17に関するラッチ機構は、格子扉16、18及び19に共通するものである。
【0037】
続けて、下段間仕切り板のロック機構について説明する。
図8は、下段間仕切り板のロック機構を示す拡大正面図である。
図8において、46は本体板部支持材、47及び48はねじであり、その他の符号は
図6と同じものを示す。
【0038】
下段間仕切り板ロック機構40は、
図8及び
図6に示すように、下段のケージの上枠、つまり上段のケージとの境界となる構造材に取り付けられている。また、下段間仕切り板ロック機構40は、本体板部41の下端部近傍と上端部近傍を手前側に折り曲げ下降することによって、水平板部42及び43としている。水平板部42及び43は、手前側に水平に突出することによって獣医師等が指を掛けやすいようにしたものであり、操作部となる部分である。また、本体板部41には、上下方向に、かつ、互いに平行に延在するスリット44及び45が形成されている。さらに、本体板部41の手前側には略短冊形状の本体板部支持材46が設けられている。また、本体板部支持材46は、ねじ47及び48によって下段のケージの上枠に固定されている。ねじ47及び48はスリット44及び45を介して下段のケージの上枠に固定されているので、本体板部41は本体板部支持材46によって下段のケージの上枠に保持された状態となる。ただし、本体板部支持材46が本体板部41に軽く当接する程度の締め付け状態にしており、本体板部41は下段のケージの上枠と本体板部支持材46とに対して上下方向に摺動可能に設けられている。
【0039】
したがって、本体板部41は、通常は自重によってねじ47及び48がスリット44及び45の上端部にそれぞれ当接するところまで降下している。このように降下した状態では、
図8に示すように、下段間仕切り板20の保持用筒状部22の手前に本体板部41の下側が位置しているので、本体板部41が障壁となって下段間仕切り板20を手前に抜き取ることができない。したがって、獣医師等が本体板部41を持ち上げない限り、下段間仕切り板20をロックした状態が継続することになる。なお、この実施の形態では、下段間仕切り板ロック機構40の全体が構造材の手前に露出している構成としたが、例えば下段間仕切り板ロック機構を操作するハンドルのみが構造材の手前に露出しているようにし、他の機構を構造材の内部に設けてもよい。
【0040】
さらに、下段間仕切り板の案内機構について説明する。
図9は、下段間仕切り板の案内機構を示す部分斜視図である。85は下段筐体天井面、86は保持部材、87はレール部材であり、その他の符号は
図2と同じものを示す。
【0041】
図9は、下段のケージを構成する筐体の内部において、下段間仕切り板20を挿入する部位を、下段右側ケージ13側から下段左側ケージ12側に向かって見上げた状態を示す図である。下段筐体背面84の左右方向における中間部位には、保持部材86が上下方向に延在するように設けられている。保持部材86は、下段間仕切り板20の突き当て部24を左右から軽く挟持するものであり、動物が下段間仕切り板20に体当たりしたときに下段間仕切り板20が本来設置されるべき位置からから離脱することを防止する。また、下段筐体天井面85の左右方向における中間部位には、レール部材87が下段筐体天井面85の手前側端部近傍から奥側端部までの範囲に延在するように設けられている。レール部材87は、下段間仕切り板20の上端部を左右から軽く挟持することによって、下段間仕切り板20の挿入又は抜き取りを案内することと同時に、下段間仕切り板20が本来設置されるべき位置からから離脱することを防止する。なお、下段のケージの床面には、衛生管理上の観点から、レール部材87に相当するものなどを一切設けていない。また、上段のケージを構成する筐体の内部は、特に図示していないが、下段のものと同様に保持部材とレール部材を設けている。
【0042】
次に、下段間仕切り板の抜き取り方法について説明する。
図10は、下段間仕切り板のロック機構を解除した状態を示す拡大正面図である。
図10において用いた符号は、すべて
図8と同じものを示す。また、
図11は、下段間仕切り板の抜き取り方法を示す部分斜視図(1)である。
図11において用いた符号は、すべて
図6及び
図7と同じものを示す。さらに、
図12は、下段間仕切り板の抜き取り方法を示す部分斜視図(2)である。
図12において用いた符号は、すべて
図3及び
図6と同じものを示す。
【0043】
まず、
図10に示すように、水平板部42又は43を押し上げて、下段間仕切り板ロック機構40のロックを解除する。これによって、下段間仕切り板20の状保持用筒状部22の手前に障壁となるものがなくなり、下段間仕切り板20を手前に抜き取ることが可能となる。次に、
図11に示すように、下段間仕切り板ロック機構40のロックを解除したままの状態で、下段間仕切り板20の把手26を手前に引く。そして、
図12に示すように、下段間仕切り板20全体を抜き取る。なお、下段間仕切り板20を手前側に少し引き出した後は、下段間仕切り板ロック機構40から手を離しても構わない。下段間仕切り板20を完全に抜き取ると、下段左側ケージ12と下段右側ケージ13とは1つの下段のケージを構成して、比較的大きい動物を収容できるようになる。
【0044】
くわえて、開閉板の抜き取り方法について説明する。
図13は、下段間仕切り板から開閉板を抜き取る方法を示す部分斜視図(1)である。
図13において用いた符号は、すべて
図11と同じものを示す。また、
図14は、下段間仕切り板から開閉板を抜き取る方法を示す部分斜視図(2)である。
図14において用いた符号は、すべて
図11と同じものを示す。
【0045】
図13に示すように、把手26を持ち上げ、ここで図示していない支持棒材25を受け用筒状部28から抜き出す。そして、把手26を持ち上げたまま、開閉板27の把手29を手前に引く。その次に、
図14に示すように、開閉板27を抜き取る。なお、開閉板27を手前側に少し引き出した後は、把手26から手を離しても構わない。開閉板27を完全に抜き取ると、通行用開口部21aが開放されて、収容したネコなどが下段左側ケージ12と下段右側ケージ13との間を自由に往来できるようになる。また、ケージの中に手を入れる必要もなく、収容した動物を驚かせることもない。
【0046】
以上のように、本発明の第1の実施の形態に係る獣医科用ケージ10は、下段間仕切り板20又は上段間仕切り板30を筐体から抜き取ることによって、これらの間仕切り板の左右両側にある下段左側ケージ12と下段右側ケージ13、又は、上段左側ケージ14と上段右側ケージ15を1つの空間として使用できるので、中型犬など比較的大きい動物の収容が容易になる。また、下段間仕切り板20又は上段間仕切り板30によって内部空間を区画したままの状態で、開閉板27又は37を引き抜いて通行用開口部21a又は31aを開放すれば、これらの間仕切り板によって区画された2つの空間が通行用開口部21a又は31aを介して往来可能となるので、ネコなどのように、2つの空間がある程度仕切られており、かつ、2つの空間の間を自由に往来することを好む動物に対して快適な空間を提供できる。さらに、下段間仕切り板20及び上段間仕切り板30が手前側に動くことを規制する下段間仕切り板ロック機構40及び上段間仕切り板ロック機構49を設けているので、ネコやサルなどが間仕切り板を勝手に動かして不測の事態を起こすことを防止できる。くわえて、把手29又は39を手前に引くことによって開閉板27又は37を手前側に抜き取ることができるので、ケージの内部に手を入れずに通行用開口部21a又は31aを開放することができる。
【0047】
また、把手26又は36を持ち上げて支持棒材25又は35を上昇させ、さらにその状態を保ったまま把手29又は39手を手前に引かないと通行用開口部21a又は31aを開放することができないので、収容した動物が通行用開口部21a又は31aを勝手に開放することをより確実に防止できる。さらに、下段間仕切り板ロック機構40又は上段間仕切り板ロック機構49の本体板部を上昇させ、さらにその状態を保ったまま把手26又は36を手前に引かないと下段間仕切り板20又は上段間仕切り板30を抜き取ることができないので、収容した動物が下段間仕切り板20又は上段間仕切り板30を勝手に抜き取ることをより確実に防止できる。くわえて、レール部材87と保持部材86が下段間仕切り板20を保持するので、動物が下段間仕切り板20に体当たりしたときに下段間仕切り板20が本来の設置位置から離脱することを防止できる。また、上段間仕切り板30も同様に保持されているので、本来の設置位置から離脱することを防止できる。
【0048】
次に、本発明の第2実施の形態に係る獣医科用ケージについて説明する。
図15は、第2の実施の形態に係る獣医科用ケージの下段間仕切り板を示す部分斜視図である。
図15において、81及び82は把手、88はラッチ部材、89は本体部、89a及び89bは指掛け孔、90はラッチ部材であり、その他の符号は
図6と同じものを示す。
【0049】
本発明の第2の実施の形態に係る獣医科用ケージにおいて、把手81と把手82とは、第1の実施の形態の把手26と把手29とに相当するものである。把手81は、把手26よりも低い位置に設けられており、ラッチ部材88とラッチ部材90との間に介在していることは把手26と把手29と同じである。しかし、ラッチ部材88及び90の側面側から見ると、把手81と把手82と共にラッチ部材88及び90によってほとんど全体が隠れるように配置されている。また、把手81の近くに指掛け孔を設けず、ラッチ部材88の指掛け孔を、指掛け孔89a及び89bの2つに減らしており、さらにラッチ部材90も2つとしている。したがって、動物の視野から把手81と把手82とを隠すことができ、把手81及び82の存在自体を動物に認識させないことができる。さらに、ラッチ部材88及びラッチ部材90が障壁となって把手81及び82を掴むことが困難であり、サルのように格子扉16又は17の格子の隙間から手を伸ばして把手81又は把手82を巧みに掴む可能性がある動物に対して特に有用な獣医科用ケージと言える。
【0050】
なお、本発明は、以上に説明した各実施の形態の説明内容に限定されるものではなく、例えば、一部のケージだけについて、間仕切り板を抜き取り可能としてもよい。くわえて、本体部21に開閉板保持部23を設けず、開閉板27の手前側以外の周縁部に本体部21の通行用開口部21aを周縁部の両面を軽く挟み込むレール部材を設け、開閉板27はこのレース部材に案内されて摺動するようにしてもよい。また、格子扉16、17、18及び19の一部又は全部を樹脂製の扉にしてもよい。また、筐体の底面を除いた部分の一部または全部を透光性のある樹脂、又は、金属の格子で形成してもよい。また、扉を折り戸にしてもよく、さらに扉を観音開きに構成することも可能である。さらに、2つの実施の形態の構成を組み合わせてもよい。このような事例のように、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変形を加えることが可能である。