【実施例】
【0019】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0020】
図において、符号1は、キャブオーバ型軽トラックの自動車で例示される車両で、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0021】
上記車体2は、その下端部側を構成して車体2の前後方向に長く延び、この車体2の骨格部材とされる板金製車体フレーム3と、車体2の前上部側を構成し、内部が車室4とされて上記車体フレーム3の前部に支持される運転台5と、車体2の後上部側を構成して上記車体フレーム3の後部側に支持される荷台6と、上記車体フレーム3に支持されて車体2を走行路面7上に支持する前、後車輪8,8とを備えている。
【0022】
上記車体フレーム3は、車体2の幅方向で互いに離れて位置し、それぞれ車体2の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ12,12と、車体2の幅方向に延び、上記左右サイドメンバ12,12の前端部から少し後方に位置してこれら左右サイドメンバ12,12の各前部を互いに結合させる前クロスメンバ13と、車体2の幅方向に延び、上記左右サイドメンバ12,12の各後部を互いに結合させる後クロスメンバ14と、上記左右サイドメンバ12,12の各前部からそれぞれ車体2の外側方に向かって突設されるアーム材15とを備えている。
【0023】
上記車体フレーム3は、車体2の幅方向の中央部を通る車体中心線16を基準として左右対称形とされる。そこで、以下、上記車体フレーム3の右側部につき詳しく説明し、車体フレーム3の左側部については説明を省略する。
【0024】
上記サイドメンバ12は、このサイドメンバ12の主体をなすサイドメンバ本体19と、このサイドメンバ本体19の前端部の開口を閉じ、このサイドメンバ本体19の前端部にスポット溶接により結合される閉じ板20と、上記サイドメンバ本体19の前端部から少し後方に位置して車体2の前後方向に延び、このサイドメンバ本体19の上端部を補強するようこのサイドメンバ本体19の上端部に結合されるバルクヘッド21とを有している。
【0025】
上記サイドメンバ本体19は、その長手方向の各部断面が倒立ハット形状をなしている。このサイドメンバ本体19は、車体2の幅方向で互いに少し離れて対面する左右側面板24,24と、上記サイドメンバ本体19の底面板を構成し、車体2の前後方向かつ車体2の幅方向に延びて上記左右側面板24,24の各下端縁部を互いに一体的に結合する平坦板25と、上記左右側面板24,24の各上端縁部にそれぞれ一体的に形成される左右外向きフランジ26,26とを有している。
【0026】
上記バルクヘッド21は、その長手方向の各部断面が偏平なU字形状をなしている。このバルクヘッド21は、車体2の幅方向で互いに少し離れて対面する左右側面板29,29と、上記バルクヘッド21の底面板を構成し、車体2の前後方向かつ車体2の幅方向に延びて上記左右側面板29,29の各下端縁部を一体的に結合する平坦板30とを有している。そして、上記バルクヘッド21の各側面板29が、上記サイドメンバ本体19の各側面板24の上端部に、スポット溶接により面接合される。
【0027】
上記前クロスメンバ13とアーム材15とは、それぞれ長手方向の各部断面が倒立ハット形状をなしている。これら前クロスメンバ13とアーム材15とは、それぞれ車体2の幅方向で互いに少し離れて対面する前、後面板33,34と、これら前、後面板33,34の各下端縁部を互いに一体的に結合する底面板35と、上記前、後面板33,34の各上端縁部にそれぞれ一体的に形成される前、後外向きフランジ36,36とを有している。
【0028】
上記アーム材15は、その突出端部15a側から基部15b側に向かうに従い、車体2の前後方向における幅寸法が漸増するよう形成されている。また、上記サイドメンバ12のバルクヘッド21の長手方向の中途部、上記前クロスメンバ13の後面板34、およびアーム材15の基部15bにおける後面板34は、車体2の前後方向で互いにほぼ同じところに位置している。
【0029】
車体2の前記運転台5は、この運転台5内部の車室4の側面を形成する側壁39と、この側壁39に形成され、車室4の内外を連通させるドア開口40と、このドア開口40を運転台5の外部側から開閉可能に閉じるサイドドア41とを有している。上記ドア開口40の前部開口縁部は、上記側壁39の前端縁部を構成するフロントピラー42により形成される。このフロントピラー42は上記運転台5の骨格部材をなし、上記フロントピラー42の下端部は、上記車体フレーム3のアーム材15の突出端部15aに結合されて強固に支持される。
【0030】
上記前クロスメンバ13とアーム材15とよりも前側に位置する上記サイドメンバ12のサイドメンバ本体19の前端部において、このサイドメンバ本体19の各側面板24に、それぞれ縦方向に延びる前後一対(複数本)の前部縦向きビード45,45が形成される。また、上記サイドメンバ本体19の前端部の平坦板25に、車体2の幅方向に延びる前後一対(複数本)の前部横向きビード46,46が形成される。
【0031】
上記アーム材15の基部15bの車体2の前後方向における後端部は、このアーム材15の基部15bにおける上記後面板34と後側の外向きフランジ36とにより構成される。上記基部15bにおける後端部の車体2の前後方向での近傍で、上記サイドメンバ12のサイドメンバ本体19の平坦板25の部分と、上記サイドメンバ12のバルクヘッド21の平坦板30の部分とに、それぞれ車体2の幅方向に延びる前後一対(複数本)の横向きビード48,48が形成される。
【0032】
具体的には、車体2の平面視(
図3)で、上記アーム材15の基部15bの後端部を通り車体2の幅方向に延びる仮想線50が中心となるよう、この仮想線50に対し上記両横向きビード48,48は前後に振り分け配置される。なお、これら横向きビード48,48は、上記各平坦板25,30のうち、いずれか一方の平坦板にのみ形成してもよい。
【0033】
そして、車両1の前突時に、衝撃力F1が上記サイドメンバ12のサイドメンバ本体19の前端部に対しその前方から与えられた場合(正突の場合)には、上記サイドメンバ12のサイドメンバ本体19の前端部に形成された各前部縦向きビード45と前部横向きビード46とは、それぞれその長手方向に交差する方向から衝撃力F1を与えられることとなる。ここで、このような方向からの衝撃力F1に対しては上記各ビード45,46の剛性は低いため、上記衝撃力F1により、上記サイドメンバ本体19の前端部はその長手方向に容易に収縮するよう塑性変形する。よって、上記衝撃力F1に基づくエネルギーが効果的に吸収され、これにより、上記衝撃力F1が効果的に緩和される。
【0034】
また、上記衝撃力F1が大きい場合、この衝撃力F1は上記サイドメンバ12の前端部から少し後方に形成された上記各後部横向きビード48にも与えられる。この場合、上記各後部横向きビード48は、それぞれその長手方向に交差する方向から衝撃力F1が与えられることとなる。ここで、このような方向からの衝撃力F1に対しては上記各横向きビード48の剛性は低いため、上記衝撃力F1により、上記サイドメンバ12の前部はその長手方向に容易に収縮するよう塑性変形する。よって、上記衝撃力F1に基づくエネルギーが更に効果的に吸収され、これにより、上記衝撃力F1が更に効果的に緩和される。
【0035】
一方、車両1の前突時に、衝撃力F2が上記車体フレーム3のアーム材15に対しその前方から与えられた場合(オフセット前突の場合)には、上記衝撃力F2に基づくモーメントMが、上記アーム材15の基部15b、およびこの基部15bと互いに結合されている上記サイドメンバ12の前部における部分12aに対し与えられる。すると、上記モーメントMにより、上記サイドメンバ12の部分12aに応力集中が生じて、このサイドメンバ12の部分12aが単に屈曲すると共に、上記アーム材15がその基部15bを中心として車体2の内側方に向かって回動変位するおそれを生じる(
図3中一点鎖線)。
【0036】
そして、上記の場合には、上記衝撃力F2に基づくエネルギーの吸収が不十分となって、上記衝撃力F2は十分には緩和されず、また、上記アーム材15と、このアーム材15に支持された車体2の運転台5のフロントピラー42とが車室4側に回動変位して乗員に接近するという不都合を生じる。
【0037】
しかし、車両1の前突時に、その衝撃力F2が上記車体フレーム3のアーム材15に対しその前方から与えられて、上記衝撃力F2に基づくモーメントMが、上記アーム材15の基部15b、およびこの基部15bと互いに結合されている上記サイドメンバ12の部分12aに対し与えられるときには、上記アーム材15の基部15bにおける後端部と車体2の幅方向で対向する上記横向きビード48に対し上記モーメントMによる外力が与えられ、この際、この外力に対抗する反力が上記横向きビード48に生じる。この場合、上記反力の作用線は上記仮想線50上に位置するため、この仮想線50が中心となるよう振り分けられた上記両横向きビード48,48の間の中央部に上記反力の作用線が位置することとなる。しかも、上記反力は、上記各横向きビード48,48が大きい剛性を有するその長手方向に向かうものであることから、上記反力は上記モーメントMに対し強固に対抗する。
【0038】
よって、上記モーメントMにより上記サイドメンバ12の部分12aが単に屈曲することは防止されると共に、上記アーム材15がその基部15bを中心として車体2の内側方に向かって回動変位することも防止される。この結果、上記衝撃力F2により、上記サイドメンバ12は上記部分12aを含んでその長手方向に収縮するよう塑性変形しがちとなることから、上記衝撃力F2に基づくエネルギーは効果的に吸収され、これにより、上記衝撃力F2は効果的に緩和される。また、上記アーム材15と共に車体2の運転台5のフロントピラー42が車室4側に向かって回動変位して、乗員に接近するということも防止される。
【0039】
また、上記した車両1の前突時における衝撃力F1,F2の効果的な緩和や乗員の保護という効果は、車両1の前突時に上記アーム材15と力学的に関連するサイドメンバ12の部分12aに横向きビード48を形成することにより達成されるのであって、サイドメンバ12の前部の板厚を大きくしたり、別途補強材を設けたりしないで足りる。よって、上記効果を達成するようにした場合でも、車体2の質量が過大になったり、車体2の構成が複雑になったりすることを回避できることから、車体2の生産性が良好に維持される。