特許第5955750号(P5955750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955750
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/45 20060101AFI20160707BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 31/685 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20160707BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20160707BHJP
   A61K 31/05 20060101ALN20160707BHJP
【FI】
   A61K36/45
   A61P17/00
   A61K9/107
   A61K47/10
   A61K47/14
   A61K31/685
   A61K8/97
   A61Q19/00
   !A61K31/05
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-254132(P2012-254132)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-101313(P2014-101313A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】北村 整一
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 隆一
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116835(JP,A)
【文献】 特開2008−239576(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043680(WO,A1)
【文献】 特開2007−262068(JP,A)
【文献】 特表2008−542296(JP,A)
【文献】 特開2002−308728(JP,A)
【文献】 特表2010−531816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴンベリー抽出物の微粉末、アルコール類、脂肪酸エステル類、スクワラン及び水素
添加レシチンを含む皮膚外用剤であって、
前記微粉末の個数平均粒子径(D90)が1.66μm〜5μmであり、
前記アルコール類の含有量が0.088質量%以上であり、
前記脂肪酸エステル類の含有量が0.17質量%以上であり、
前記スクワランの含有量が0.057質量%以上であり、かつ、
前記水素添加レシチンの含有量が0.012質量%以上であることを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
ラウリン酸ポリグリセリル−10、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸エステル類を含むことを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
グリセリン、セタノール及びペンチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸エステル類を含むことを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリフェノールは、天然物、特に植物に含まれる有用な物質として注目を集め、その研究開発が続けられており、様々な種類を有することが知られている。
【0003】
前記ポリフェノールの種類としては、例えば、マリグナン類、クルクミン類、クマリン類、カテキン、タンニン、アントシアニン、プロアントシアニジン、ルチン、ケルセチン、レスベラトロール等のフラボノイド類などが知られており、これらの中でも、近年、レスベラトロールが注目されている。
【0004】
しかしながら、前記レスベラトロール等のポリフェノールは、その分子量が大きく、水にも有機溶媒にも溶解しにくい化合物であるため、皮膚への吸収性が低く、塗布時に期待されるレスベラトロールの効果を十分に発揮することができないという問題がある。
【0005】
したがって、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れ、塗布時に期待されるレスベラトロールの効果を十分に発揮することができる皮膚外用剤の速やかな開発が強く望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−88123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れ、塗布時に期待されるレスベラトロールの効果を十分に発揮することができる皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末を皮膚外用剤に用いると、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れ、塗布時に期待されるレスベラトロールの効果を十分に発揮することができる皮膚外用剤となることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末を含むことを特徴とする皮膚外用剤である。
<2> 乳化剤を更に含む前記<1>に記載の皮膚外用剤である。
<3> 乳化剤の含有量が、1.0質量%〜5.0質量%である前記<2>に記載の皮膚外用剤である。
<4> 微粉末の個数平均粒径(D90)が、0.5μm〜5.0μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の皮膚外用剤である。
<5> レスベラトロール含有植物抽出物が、リンゴンベリー抽出物、コケモモ抽出物、ブドウ抽出物、カウベリー抽出物、インドキノ木抽出物、及びメリンジョ抽出物の少なくともいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の皮膚外用剤である。
<6> 乳化剤が、O/W型の乳化剤である前記<2>から<5>のいずれかに記載の皮膚外用剤である。
<7> 乳化剤が、アルコール類、脂肪酸エステル類、炭化水素類、及びレシチン類を少なくとも含有する前記<2>から<6>のいずれかに記載の皮膚外用剤である。
<8> アルコール類が、グリセリン、セタノール、及びペンチレングリコールの少なくともいずれかである前記<7>に記載の皮膚外用剤である。
<9> 脂肪酸エステル類が、ラウリン酸ポリグリセリル−10、トリ(カプセル酸/カプリン酸)グリセリル、及びマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルの少なくともいずれかである前記<7>から<8>のいずれかに記載の皮膚外用剤である。
<10> 炭化水素類が、スクワランである前記<7>から<9>のいずれかに記載の皮膚外用剤である。
<11> レシチン類が、水素添加レシチンである前記<7>から<10>のいずれかに記載の皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れ、塗布時に期待されるレスベラトロールの効果を十分に発揮することができる皮膚外用剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、試験例1の経皮吸収性試験の結果を示すグラフである。
図2図2は、試験例2の経皮吸収性試験の結果を示すグラフである。
図3図3は、試験例3の経皮吸収性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末を含んでなり、乳化剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0013】
<レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末>
前記レスベラトロールは、スチルベノイド(スチルベン誘導体)ポリフェノールの一種であり、系統名は、3,5,4’−トリヒドロキシ−trans−スチルベンであり、下記構造式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0014】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末としては、前記レスベラトロールを含有する植物抽出物の微粉末であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末として、前記レスベラトロールの化合物(前記構造式1で表される化合物)の微粉末を使用してもよく、前記レスベラトロールを含有する組成物(レスベラトロール含有組成物)の微粉末を使用してもよく、前記レスベラトロールの化合物及び前記レスベラトロール含有組成物を併用した微粉末を使用してもよい。
【0015】
前記レスベラトロール含有植物抽出物としては、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができるが、市販品を使用してもよい。
【0016】
前記レスベラトロール含有植物抽出物には、レスベラトロール含有植物の抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を使用してもよい。前記レスベラトロール含有植物抽出物は、後述する調製方法により、その後微粉末化される。
【0017】
前記レスベラトロール含有植物としては、前記レスベラトロールを含有する植物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コケモモ(Vaccinium vitis−idaea L.)、ブドウ(Vitis vinifera L.)、インドキノ木(Pterocarpus marsupium)、メリンジョ(Gnetum gnemon Linn.)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、コケモモ又はブドウが好ましい。
【0018】
前記レスベラトロール含有植物であるコケモモの亜種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リンゴンベリー(Vaccinium vitis−idaea var. minus Lodd.)、カウベリー(Vaccinium vitisidaea var. vitisidaea L.)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、レスベラトロールの効果を十分に発揮することができる点で、リンゴンベリー(Vaccinium vitis−idaea var. minus Lodd.)が好ましい。
【0019】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記レスベラトロールを多く含有する部位が好ましく、前記コケモモ及び前記リンゴンベリーから抽出する場合、前記レスベラトロールを多く含有する点で、果実及び果皮部がより好ましく、前記ブドウから抽出する場合、前記レスベラトロールを多く含有する点で、茎部がより好ましい。
【0020】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の抽出部位の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記レスベラトロールの抽出効率向上及び製造安定性の点で、前記抽出部位を細分乃至圧搾して調製する方法が好ましく、具体的には、前記抽出部位を機械(ミキサー等)により細分乃至圧搾して調製する方法、前記抽出部位を手作業により細分乃至圧搾して調製する方法などが挙げられる。
【0021】
前記レスベラトロール含有植物の抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を用いることができ、例えば、前記調製された植物の抽出部位に抽出溶媒を加えて攪拌した後、遠心分離機(デカンター連続式横型遠心分離機、自動バスケット型遠心分離機等)にて固液分離することにより抽出する方法などが挙げられる。これらの抽出は、1種類の遠心分離機を用いて行ってもよいし、種々の組成を有するレスベラトロール含有抽出物を得るために、2種類以上の遠心分離機を併用して行ってもよい。
【0022】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の抽出溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の抽出溶媒である水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水道水、蒸留水、ミネラル水、アルカリイオン水等の冷水、温水、熱水などが挙げられる。これらの中でも、熱水が好ましい。前記熱水(水温が50℃以上の水)の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生理活性物質の抽出効率に優れる点で、50℃〜120℃が好ましく、70℃〜100℃がより好ましい。
【0024】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の抽出溶媒である有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、食用油脂等の食品又は薬剤の製造に許容される有機溶媒などが挙げられる。これらの中でも、エタノールが好ましい。
【0025】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の抽出溶媒である水と有機溶媒との混合溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、含水アルコール(アルコール水溶液等)などが挙げられる。これらの中でも含水エタノールが好ましい。前記含水アルコールのアルコール濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液状、懸濁液状、半固体状(ゲル状、ペースト状等)、固体状(粉末状、顆粒状等)などが挙げられる。これらの中でも、前記レスベラトロールの経皮吸収性に優れる点及び後述する微粉末の調製がしやすい点で、粉末状が好ましい。
【0027】
前記レスベラトロール含有植物抽出物は、前記レスベラトロールの含有量を増加させる目的で、精製してもよい。前記精製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶媒を使用して精製する方法、溶媒を使用しないで精製する方法、例えば、限外濾過や、吸着性担体(ダイヤイオン(登録商標)HP−20、セファデックス(登録商標)LH20等の合成吸着剤、キチン等の天然吸着剤)を用いたカラム法、バッチ法などが挙げられる。
【0028】
<<レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末の調製方法>>
前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記レスベラトロール含有植物抽出物を凍結乾燥させた粉粒体を溶媒に溶解させて微細化する湿式法;前記レスベラトロール含有植物抽出物を凍結乾燥させた粉粒体を更に微細化する乾式法などが挙げられる。これらの中でも、前記レスベラトロールの抽出効率に優れる点、及び前記レスベラトロール含有植物抽出物を乾燥する等の製造工程を省略できる点で、乾式法が好ましい。
【0029】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末を調製する際に行う凍結乾燥にかかる時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
前記レスベラトロール含有植物抽出物を微細化する際に用いる粉砕装置としては、特に制限はなく、目的に応じて市販のものを適宜選択することができ、例えば、高圧雰囲気下において1以上の小径穴と特定流路とを有するノズル内を流体が高速移動することにより対象物を粉砕する高圧ホモジナイザー;超音波を用いて対象物を粉砕する超音波粉砕機;粉砕室内で超高速の空気の旋回渦流を発生し、衝撃、剪断、圧縮、摩砕、高周波振動等の作用をもって対象物を微粒化する気流式粉砕機;高速撹拌又は衝撃により対象物を粉砕する高速回転衝撃粉砕機;粉砕媒体を使用するボールミル又はビーズミルなどが挙げられる。
【0031】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の微細化条件としては、前記レスベラトロール含有植物抽出物を微細化できる条件であれば、特に制限はなく、前記粉砕装置、前記粉砕装置のノズルの種類、微粉砕処理前の前記抽出物の粒径等に応じて適宜選択することができる。
【0032】
前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉砕処理の回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末の個数平均粒径(D90)が好ましい範囲内となるよう、1回であってもよいし、必要に応じて2回以上であってもよい。
【0033】
−レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末の個数平均粒径(D90)−
前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末の個数平均粒径(D90:積算値が90%のときの粒径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜5.0μmが好ましい。なお、前記個数平均粒径(D90)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
【0034】
<<レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末の含有量>>
前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末の前記皮膚外用剤における含有量としては、特に制限はなく、使用する皮膚外用剤の目的に応じて適宜選択することができるが、0.00001質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。
【0035】
<<レスベラトロールの含有量>>
前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末における前記レスベラトロールの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
<乳化剤>
前記乳化剤は、前記皮膚外用剤を乳化(エマルション化)させるために使用する添加剤である。前記乳化剤を用いることにより、レスベラトロールの経皮吸収作用に更に優れた水中油滴型(O/W型)の皮膚外用剤となる。
【0037】
前記乳化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水中油滴型(O/W型)の乳化剤、油中水滴型(W/O型)の乳化剤などが挙げられる。これらの中でも、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れる点で、水中油滴型(O/W型)の乳化剤が好ましい。
【0038】
前記乳化剤の前記皮膚外用剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れる点で、1.0質量%〜5.0質量%が好ましく、2.5質量%〜3.5質量%がより好ましい。
【0039】
前記乳化剤としては、前記皮膚外用剤を乳化させることができる乳化剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れる点で、アルコール類、脂肪酸エステル類、炭化水素類、及びレシチン類を少なくとも含有することが好ましく、更に水を含有してもよい。
【0040】
<<アルコール類>>
前記アルコール類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セタノール、ペンチレングリコール、グリセリン、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れる点で、セタノール、ペンチレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0041】
前記アルコール類の前記乳化剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
<<脂肪酸エステル類>>
前記脂肪酸エステル類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリン酸ポリグリセリル−10、トリ(カプセル酸/カプリン酸)グリセリル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れる点で、ラウリン酸ポリグリセリル−10、トリ(カプセル酸/カプリン酸)グリセリル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルが好ましい。
【0043】
前記脂肪酸エステル類の前記乳化剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0044】
<<炭化水素類>>
前記炭化水素類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スクワラン、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマー、イソパラフィン、セレシン、パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れる点で、スクワランが好ましい。
【0045】
前記炭化水素類の前記乳化剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0046】
<<レシチン類>>
前記レシチン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水素添加レシチン、分別レシチン、酵素分解レシチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れる点で、水素添加レシチンが好ましい。
【0047】
前記レシチン類の前記乳化剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0048】
<<水>>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記水の乳化剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、油脂類、ロウ類、多価アルコール類(グリセリン、1,3−ブチレングリコール等)、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、キレート剤、乳化安定剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
<皮膚外用剤の製造方法>
前記皮膚外用剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末を調製する工程と、前記皮膚外用剤の基材に対して、前記微粉末を配合する工程とを含むことが好ましく、必要に応じて前記基材に前記乳化剤及び前記その他の成分を配合させてもよい。
【0052】
<皮膚外用剤の使用方法>
前記皮膚外用剤の使用対象となる動物種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ヒトに対して好適に適用することができ、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、トリ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、サルなどに対して適用することもできる。
前記皮膚外用剤の使用部位としては、皮膚を有する部位であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、手、足、顔、背中、頭皮などが挙げられる。
前記皮膚外用剤の使用方法としては、前記皮膚外用剤を皮膚に浸透させるために使用できる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記皮膚外用剤の使用量としては、特に制限はなく、塗布対象個体の年齢、体重、体質等の様々な要因を考慮して適宜選択することができるが、前記皮膚外用剤は前記レスベラトロールの経皮吸収性に優れるため、従来の塗布量よりも少量であってもよい。
【0053】
<用途>
本発明の皮膚外用剤は、レスベラトロールの経皮吸収性に優れ、塗布時に期待されるレスベラトロールの効果を十分に発揮することができるため、レスベラトロールを含有する軟膏、クリーム、ピーリング剤、乳液、ローション、美容液、パック、リップクリーム、スプレー、リキッドファンデーション、口紅等の皮膚化粧料、整髪料、洗浄剤、クレンジング剤、入浴剤等の医薬部外品、医薬品、美白剤、抗酸化剤、抗老化剤、抗肥満剤などに好適に利用することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
[試験例1:皮膚外用剤の経皮吸収作用試験]
製造した各皮膚外用剤(乳化剤未添加)の経皮吸収作用試験を行った。
【0056】
<皮膚外用剤の製造>
各皮膚外用剤は、表1に示す組成となるよう、レスベラトロールと、水とを混合乃至溶解させて水溶液を調製し、皮膚外用剤を製造した。
ここで、実施例1で用いたレスベラトロールは、レスベラトロール含有植物抽出物(リンゴンベリー抽出物、BGG Japan株式会社製)をホモジナイザーにより微粉砕処理したもの(レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末と称する)を使用した。前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末の個数平均粒径(D90)は、1.66μmであった。
比較例1で用いたレスベラトロールは、実施例1で用いたレスベラトロール含有植物抽出物において、前記微粉砕処理していないもの(レスベラトロールの粉末と称する)を使用した。前記レスベラトロールの粉末の個数平均粒径(D90)は、8.95μmであった。
なお、前記個数平均粒径(D90)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した。
【0057】
<試験例1の試験方法>
経皮吸収作用試験は、製造した各皮膚外用剤を3次元皮膚モデル(Lab Cyte EPIMODEL24、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製、皮膚モデル直径6.4mm)の上層に50μL滴下して3時間経過した後の3次元皮膚モデルの下部に位置するリン酸緩衝生理食塩水中のポリフェノール量を、Folin−Denis法により測定することにより行った。
前記Folin−Denis法によるポリフェノール量の測定は、以下のようにして行った。まず、被試験物質25μL、リン酸緩衝生理食塩水25μLを加え、10質量%炭酸ナトリウム50μLを加えて3分間放置した。次に、Folin試薬50μLを加え、1時間室温で発色させた。そして、発色した前記被試験物質を遠心分離(13,000rpm、5分間)した後、上清100μLを96ウェルマイクロプレートに移し、吸光度(波長730nm)を測定した。得られた吸光度の値から、前記被試験物質1mL中に含まれるポリフェノール量(μg)を、検量線に基づき換算した。
なお、前記検量線は、11.1μg/mL、3.70μg/mL、1.24μg/mL、0.412μg/mLに調製した各リンゴンベリー抽出物(溶液)を使用した。結果を表1及び図1に示す。
【表1】
【0058】
<試験例1の結果>
以上より、レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末を含有する皮膚外用剤を用いることにより、レスベラトロールの経皮吸収が高まることが示唆された。
【0059】
[試験例2:皮膚外用剤の経皮吸収作用試験]
製造した各皮膚外用剤(乳化剤添加)の経皮吸収作用試験を行った。
【0060】
<乳化剤の製造>
乳化剤(O/W型)は、表2−1に示す組成となるよう、表2−1に記載の各成分を混合乃至溶解させた後、湿式微粒化装置(アルティマイザーシステム)を用いて、各成分を分散させることにより製造した。
【表2-1】
【0061】
<皮膚外用剤の製造>
各皮膚外用剤は、表2−2に示す組成となるよう、レスベラトロールと、多価アルコール(グリセリン及び1,3−ブチレングリコール)と、水とを混合乃至溶解させて水溶液を調製した。そして、前記水溶液に対して、表2−2に示す組成となるよう上記で製造した乳化剤を添加し、ホモジナイザーを用いて乳化させて、皮膚外用剤(乳濁液状の皮膚外用剤)を製造した。
ここで、実施例2で用いたレスベラトロールは、実施例1で用いたレスベラトロール含有植物抽出物の微粉末(個数平均粒径(D90):1.66μm)と同様のものを使用した。また、比較例2で用いたレスベラトロールは、比較例1で用いたレスベラトロールの粉末(個数平均粒径(D90):8.95μm)と同様のものを使用した。
【0062】
<試験例2の試験方法>
経皮吸収作用試験は、製造した各皮膚外用剤を3次元皮膚モデル(Lab Cyte EPIMODEL24、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング製、皮膚モデル直径6.4mm)の上層に20μL滴下して3時間経過した後の3次元皮膚モデルの下部に位置するリン酸緩衝生理食塩水中のポリフェノール量を、Folin−Denis法により測定することにより行った。
前記Folin−Denis法によるポリフェノール量の測定は、以下のようにして行った。まず、被試験物質を遠心エバポレーター中で乾燥させ、100μLの精製水に溶解後、50μLを1.5mLマイクロチューブに測り取り、10質量%炭酸ナトリウム50μLを加えて3分間放置した。次に、Folin試薬50μLを加え、1時間室温で発色させた。そして、発色した前記被試験物質を遠心分離(13,000rpm、5分間)した後、上清100μLを96ウェルマイクロプレートに移し、吸光度(波長730nm)を測定した。得られた吸光度の値から、前記被試験物質1mL中に含まれるポリフェノール量(μg)を、検量線に基づき換算した。
なお、前記検量線は、11.1μg/mL、3.70μg/mL、1.24μg/mL、0.412μg/mLに調製した各リンゴンベリー抽出物(溶液)を使用した。結果を表2−2及び図2に示す。
【表2-2】
【0063】
<試験例2の結果>
以上より、レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末(微粉砕処理あり)と乳化剤とを併用する皮膚外用剤は、レスベラトロールの粉末(微粉砕処理なし)と乳化剤とを併用する皮膚外用剤よりも、レスベラトロールの経皮吸収が格段に高まることが示唆された。
【0064】
[試験例3:皮膚外用剤の経皮吸収作用試験]
製造した各皮膚外用剤(乳化剤添加)の経皮吸収作用試験を行った。
【0065】
<乳化剤の製造>
乳化剤は、試験例2で使用したものと同様のものを使用した。
【0066】
<皮膚外用剤の製造>
各皮膚外用剤は、表3に示す組成となるよう、レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末と、多価アルコール(グリセリン及び1,3−ブチレングリコール)と、水とを混合乃至溶解させて水溶液を調製した。そして、前記水溶液に対して、表3に示す組成となるよう上記で製造した乳化剤を添加し、ホモジナイザーを用いて乳化させて、皮膚外用剤(乳濁液状の皮膚外用剤)を製造した。ここで、前記レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末は、実施例1で用いたレスベラトロール含有植物抽出物の微粉末(個数平均粒径(D90):1.66μm)と同様のものを使用した。
【0067】
<試験例3の試験方法>
経皮吸収作用試験は、試験例2と同様の方法により行った。
但し、皮膚モデルに滴下した各皮膚外用剤の量は5μLとした。
結果を表3及び図3に示す。
【表3】
【0068】
<試験例3の結果>
以上より、レスベラトロール含有植物抽出物の微粉末と乳化剤とを併用する皮膚外用剤を用いることにより、レスベラトロールの経皮吸収が格段に高まることが示唆された。
また、これらの結果からもわかるように、前記乳化剤の前記皮膚外用剤における含有量が1.0質量%〜5.0質量%である皮膚外用剤を用いると、レスベラトロールの経皮吸収作用について格別顕著な作用効果を発揮することがわかった。
【0069】
なお、レスベラトロール含有植物抽出物として、コケモモ抽出物、ブドウ抽出物、カウベリー抽出物、インドキノ木抽出物、及びメリンジョ抽出物を用いても、試験例1〜3と同様に、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れる結果となることが想定された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の皮膚外用剤は、レスベラトロールの経皮吸収作用に優れ、塗布時に期待されるレスベラトロールの効果を十分に発揮することができるため、レスベラトロールを含有する軟膏、クリーム、ピーリング剤、乳液、ローション、美容液、パック、リップクリーム、スプレー、リキッドファンデーション、口紅等の皮膚化粧料、整髪料、洗浄剤、クレンジング剤、入浴剤等の医薬部外品、医薬品などに好適に利用することができる。
図1
図2
図3