特許第5955751号(P5955751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955751
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】煙検出装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/10 20060101AFI20160707BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20160707BHJP
   G06T 7/00 20060101ALI20160707BHJP
   G06T 7/20 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   G08B17/10 Z
   G08B17/00 C
   G06T7/00 200A
   G06T7/20 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-255196(P2012-255196)
(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公開番号】特開2014-102737(P2014-102737A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 義英
【審査官】 山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−215809(JP,A)
【文献】 特開平11−224389(JP,A)
【文献】 特開平08−016234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00− 7/60
G08B 17/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことにより、煙の発生を検出する煙検出装置であって、
前記監視カメラにより時系列で撮像された複数の画像を画像時系列データとして記憶する画像メモリと、
前記画像時系列データおよび既存の検出アルゴリズムに基づいて流れる煙の候補として抽出された移動体について、前記移動体の所定サンプル数の時系列データのそれぞれに対して、膨張処理を施した膨張時系列データと、縮退処理を施した縮退時系列データとを生成する膨張・縮退処理部と、
前記膨張・縮退処理部で生成された前記膨張時系列データについて、それぞれのサンプル時刻での面積を算出し、膨張面積時系列データを作成するとともに、前記膨張・縮退処理部で生成された前記縮退時系列データについて、それぞれのサンプル時刻での面積を算出し、縮退面積時系列データを作成する面積変化算出部と、
前記所定サンプル数の前記膨張面積時系列データおよび前記縮退面積時系列データの相関値を算出する相関値算出部と、
前記相関値算出部で算出された前記相関値が所定値未満である場合には、前記移動体が流れる煙であると判定する煙判定処理部と
を備える煙検出装置。
【請求項2】
監視カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことにより、煙の発生を検出する煙検出装置に適用される煙検出方法であって、
前記監視カメラにより時系列で撮像された複数の画像を画像時系列データとして画像メモリに記憶させる記憶ステップと、
前記画像時系列データおよび既存の検出アルゴリズムに基づいて流れる煙の候補として抽出された移動体について、前記移動体の所定サンプル数の時系列データのそれぞれに対して、膨張処理を施した膨張時系列データと、縮退処理を施した縮退時系列データとを生成する膨張・縮退ステップと、
前記膨張・縮退ステップで生成された前記膨張時系列データについて、それぞれのサンプル時刻での面積を算出し、膨張面積時系列データを作成するとともに、前記膨張・縮退ステップで生成された前記縮退時系列データについて、それぞれのサンプル時刻での面積を算出し、縮退面積時系列データを作成する面積算出ステップと、
前記所定サンプル数の前記膨張面積時系列データおよび前記縮退面積時系列データの相関値を算出する相関処理ステップと、
前記相関処理ステップで算出された前記相関値が所定値未満である場合には、前記移動体が流れる煙であると判定する煙判定ステップと
を備える煙検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことにより、煙の発生を検出する煙検出装置に関し、特に、局所的に動くものに対して誤検出せずに、本来検出したい流れる煙を検出するのに適した煙検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火災発生時の初期消火、あるいは火災事故における逃げ遅れの防止の観点から、火災あるいは煙の早期発見が非常に重要となっている。そこで、煙検出装置の分野においては、監視カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことで、煙の早期発見を行うことが研究されている。
【0003】
その一例として、トンネル内などにカメラを設置し、カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことで、煙を検出する従来の煙検出装置がある。煙を検出するための画像処理では、一般的に、基準となる画像(基準画像)をあらかじめ記憶しておき、最新の撮像画像と基準画像との差分画像を演算し、変化の生じた領域を抽出することで、煙を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このように、カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施して煙検出を行うことで、次の2点のメリットが得られる。
1)監視カメラの画像を目視確認することで、遠隔地において煙検出状況の把握が可能となる。
2)すでに設置されている監視カメラを流用することが可能であり、効率的な設備を構築できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3909665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には次のような課題がある。
従来技術においては、煙を検出するために、フレーム差分画像あるいは背景画像からの輝度差が所定の閾値を超えた画素領域を抽出していた。このような処理により、拡散する煙や流れる煙に関しては、検出することができる。
【0007】
しかしながら、監視対象エリア内でとどまって作業する人の動きのように、局所的に動くものに対しては、流れる煙として誤検出してしまうおそれがあった。
【0008】
また、検出対象である煙自体は、色味が少なく背景色によっては、撮像された画像における輝度変化(輝度差)が少ない場合があり、単純に差分画像を求めるだけでは、その輝度差の閾値設定が難しく、高感度な煙検出を行うことができない場合がある。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、流れる煙を検出する際に、局所的に動くものを誤検出することを抑制し、高感度に流れる煙の検出を行うことのできる煙検出装置および煙検出方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る煙検出装置は、監視カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことにより、煙の発生を検出する煙検出装置であって、監視カメラにより時系列で撮像された複数の画像を画像時系列データとして記憶する画像メモリと、画像時系列データおよび既存の検出アルゴリズムに基づいて流れる煙の候補として抽出された移動体について、移動体の所定サンプル数の時系列データのそれぞれに対して、膨張処理を施した膨張時系列データと、縮退処理を施した縮退時系列データとを生成する膨張・縮退処理部と、膨張・縮退処理部で生成された膨張時系列データについて、それぞれのサンプル時刻での面積を算出し、膨張面積時系列データを作成するとともに、膨張・縮退処理部で生成された縮退時系列データについて、それぞれのサンプル時刻での面積を算出し、縮退面積時系列データを作成する面積算出部と、所定サンプル数の膨張面積時系列データおよび縮退面積時系列データの相関値を算出する相関値算出部と、相関値算出部で算出された相関値が所定値未満である場合には、移動体が流れる煙であると判定する煙判定処理部とを備えるものである。
【0011】
また、本発明に係る煙検出方法は、監視カメラにより撮像された画像に対して画像処理を施すことにより、煙の発生を検出する煙検出装置に適用される煙検出方法であって、監視カメラにより時系列で撮像された複数の画像を画像時系列データとして画像メモリに記憶させる記憶ステップと、画像時系列データおよび既存の検出アルゴリズムに基づいて流れる煙の候補として抽出された移動体について、移動体の所定サンプル数の時系列データのそれぞれに対して、膨張処理を施した膨張時系列データと、縮退処理を施した縮退時系列データとを生成する膨張・縮退ステップと、膨張・縮退ステップで生成された膨張時系列データについて、それぞれのサンプル時刻での面積を算出し、膨張面積時系列データを作成するとともに、膨張・縮退ステップで生成された縮退時系列データについて、それぞれのサンプル時刻での面積を算出し、縮退面積時系列データを作成する面積算出ステップと、所定サンプル数の膨張面積時系列データおよび縮退面積時系列データの相関値を算出する相関処理ステップと、相関処理ステップで算出された相関値が所定値未満である場合には、移動体が流れる煙であると判定する煙判定ステップとを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、流れる煙の候補として抽出された移動体に関して、膨張処理後の面積に関する時系列データと、縮退処理後の面積に関する時系列データとの相関を求め、求めた相関値が所定の相関値未満の場合にのみ、その移動体が流れる煙であると判定することにより、流れる煙を検出する際に、局所的に動くものを誤検出することを抑制し、高感度に流れる煙の検出を行うことのできる煙検出装置および煙検出方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1における煙検出装置の構成図である。
図2】本発明の実施の形態1における煙検出装置の全体処理の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態1における膨張・縮退処理部によって実行される膨張処理および縮退処理の説明図である。
図4】本発明の実施の形態1における面積変化算出部により算出された所定のサンプル分の面積の遷移状態に基づいて、相関値算出部による相関処理を行ったときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の煙検出装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における煙検出装置の構成図である。本実施の形態1における煙検出装置は、画像メモリ10、第1次煙検出処理部20、および第2次煙検出処理部30を備えている。
【0016】
画像メモリ10は、カメラ1により撮像された画像を、過去一定期間分、時系列データとして記憶できるように、複数フレーム分の画像メモリとして構成されている。
【0017】
第1次煙検出処理部20は、例えば上述した特許文献1に記載されているような既存のアルゴリズムを用いて、画像メモリ10に記憶された、カメラ1により撮像された過去一定期間分の画像(画像時系列データ)に基づいて、流れる煙の候補となる部分を、移動体として抽出する。ここで、第1次煙検出処理部20により抽出される移動体には、本来検出すべき流れる煙だけではなく、誤検出要因である局所的に動くものが含まれている可能性がある。
【0018】
第2次煙検出処理部30は、第1次煙検出処理部20により抽出された移動体について、本来検出すべき流れる煙と、誤検出要因である局所的に動くものとを識別し、流れる煙の有無を判定する処理部である。そして、この第2次煙検出処理部30は、移動体の中から本来検出すべき流れる煙を抽出するために、膨張・縮退処理部31、面積変化算出部32、相関値算出部33、および煙判定処理部34を含んで構成されている。
【0019】
そこで、次に、本発明の技術的特徴であるこの第2次煙検出処理部30の具体的な処理機能について、図2図4を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1における煙検出装置の全体処理の流れを示すフローチャートである。まず始めに、ステップS201において、第1次煙検出処理部20は、既存のアルゴリズムを用いて、流れる煙の候補となる部分を、移動体として抽出する。上述したように、この移動体として抽出されたものには、本来検出すべき流れる煙だけではなく、誤検出要因である局所的に動くものが含まれている可能性がある。
【0020】
次に、ステップS202において、第2次煙検出処理部30内の膨張・縮退処理部31は、所定の時間にわたってステップS201で抽出された、所定サンプル数の移動体に対して、膨張処理および縮退処理を行うことで、膨張時系列データおよび縮退時系列データを生成する。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態1における膨張・縮退処理部31によって実行される膨張処理および縮退処理の説明図である。より具体的には、図3(a)は、流れる煙に関して膨張処理および縮退処理を施した際のイメージを示している。一方、図3(b)は、局所的に動くものの代表例である作業者に関して膨張処理および縮退処理を施した際のイメージを示している。
【0022】
図3(a)に示したように、流れる煙は、膨張処理を施すことで、1つの固まりと見なすことができるが、縮退処理を施すことで、バラバラの複数の部分に分割される結果となる。
【0023】
これに対して、図3(b)に示したように、局所的に動くものは、膨張処理を施すことで、全体的に膨張した1つの固まりと見なすことができ、縮退処理を施すことで、全体的に縮退した1つの固まりと見なすことができる結果となる。
【0024】
膨張・縮退処理部31は、所定サンプル時刻ごとに抽出された移動体に対して、このような図3に示した膨張処理および縮退処理を施すことで、所定サンプル数からなる膨張時系列データおよび縮退時系列データを生成することとなる。
【0025】
次に、ステップS203において、第2次煙検出処理部30内の面積変化算出部32は、先のステップS202で生成された膨張時系列データおよび縮退時系列データのそれぞれに対して、膨張/縮退処理後の移動体部分の面積を算出し、膨張面積時系列データおよび縮退面積時系列データを生成する。
【0026】
すなわち、ステップS202による膨張・縮退処理、およびステップS203による面積変化算出処理は、所定の時間間隔で所定のサンプル数のデータに対して行われることとなる。
【0027】
次に、ステップS204において、第2次煙検出処理部30内の相関値算出部33は、所定のサンプル数に対して生成された膨張面積時系列データおよび縮退面積時系列データについて、相関演算を行う。より具体的には、例えば、時刻t0〜t15までの16サンプル分の膨張面積時系列データおよび縮退面積時系列データについて、相関値を求めることとなる。
【0028】
図4は、本発明の実施の形態1における面積変化算出部32により算出された所定のサンプル分の膨張面積時系列データおよび縮退面積時系列データに基づいて、相関値算出部33による相関処理を行ったときの説明図である。
【0029】
より具体的には、図4(a)は、ステップS201で抽出された移動体が流れる煙であった場合に、時系列の16サンプルに対して生成された膨張面積時系列データおよび縮退面積時系列データ、および両者の相関値を示している。一方、図4(b)は、ステップS201で抽出された移動体が局所的に動くものの代表例である作業者であった場合に、時系列の16サンプルに対して生成された膨張面積時系列データおよび縮退面積時系列データ、および両者の相関値を示している。
【0030】
図4(a)に示したように、流れる煙は、膨張面積時系列データにおける膨張処理後の面積と、縮退面積時系列データにおける縮退処理後の面積の相関関係が低く、この図4(a)の例では、相関値が0.55となっている。
【0031】
これに対して、図4(b)に示したように、局所的に動くものは、膨張面積時系列データにおける膨張処理後の面積と、縮退面積時系列データにおける縮退処理後の面積の相関関係が、流れる煙の場合と比較すると高く、この図4(b)の例では、相関値が0.90となっている。
【0032】
そこで、本来検出すべき流れる煙と、誤検出要因である局所的に動くものとを識別するための所定の閾値として、例えば0.7を設定しておくことで、煙判定処理部34は、図4(a)のようなデータが得られた場合には流れる煙と判定し、図4(b)のようなデータが得られた場合には局所的に動くものであり、流れる煙ではないと判定できる。
【0033】
従って、ステップS205において、第2次煙検出処理部30内の煙判定処理部34は、ステップS204で算出された相関値が、所定値未満であれば、ステップS201で抽出した移動体は、流れる煙であると判断する。一方、煙判定処理部34は、ステップS204で算出された相関値が、所定値以上であれば、ステップS201で抽出した移動体は、局所的に動くものであり、流れる煙ではないと判断する。
【0034】
以上のように、実施の形態1によれば、流れる煙の候補として抽出された移動体に関して、膨張処理後の面積に関する時系列データと、縮退処理後の面積に関する時系列データとの相関を求め、求めた相関値が所定の相関値未満の場合にのみ、その移動体が流れる煙であると判定している。この結果、流れる煙を検出する際に、局所的に動くものを誤検出することを抑制し、高感度に流れる煙の検出を行うことのできる煙検出装置および煙検出方法を実現できる。
【符号の説明】
【0035】
1 カメラ、10 画像メモリ、20 第1次煙検出処理部、30 第2次煙検出処理部、31 膨張・縮退処理部、32 面積変化算出部、33 相関値算出部、34 煙判定処理部。
図1
図2
図3
図4