(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、流量や流量に伴う流体圧力の制御を行うために、ソレノイドバルブが広く利用されている。また、ソレノイドバルブにおいては、コイルへの通電量と流量を比例させるリニアソレノイドを用いたものが知られている。
図7〜
図9を参照して、リニアソレノイドを用いた従来例に係るソレノイドバルブについて説明する。
図7は従来例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が閉じた状態を示す模式的断面図である。
図8は従来例に係るソレノイドバルブにおいて、バルブ部付近における弁が開いた状態を示す模式的断面図である。
図9は従来例に係るソレノイドバルブにおけるコイルへの通電量と流量との関係を示すグラフである。
【0003】
この従来例に係るソレノイドバルブにおいては、コイルへの通電量に応じて往復移動するロッド100の先端面110の中央から更に先端方向に突出する弁体部120がロッド100に一体的に設けられている。そして、この弁体部120の外周にゴム製のOリング300が装着されている。また、弁座200には、弁孔210が設けられている。
【0004】
以上の構成により、コイルに対して通電されていない状態では、ロッド100の弁体部120が弁座200の弁孔210内に入り込み、Oリング300が、ロッド100の先端面110と弁座200の座面220との間に挟まれた状態となっている。これにより、弁孔210は弁体部120とOリング300によって塞がれた状態となる(
図7参照)。そして、コイルに対して通電されると、ロッド100の先端面110が座面220から離れる方向にロッド100が移動していく。これにより、弁孔210から弁体部120が抜け、かつOリング300が座面220から離れるため、弁孔210が開いた状態となる(
図8参照)。
【0005】
ここで、ゴム製のOリング300は、粘着性を有している。また、上記従来例においては、Oリング300は、ロッド100の先端面110と弁座200の座面220との間に挟まれた状態となっている。そのため、弁が閉じた状態から、ロッド100が移動し始めた直後においては、Oリング300は、座面220との粘着により、軸線方向に少し伸びた後に、座面220から離れて元の形状に戻るように変形する。なお、
図8中、点線で示すOリング300aは、座面220との粘着により、軸線方向に伸びた様子を示している。そのため、
図9中のグラフのX部に示すように、通電開始直後において、流体の流量が一瞬高くなるといった現象が生じてしまう。なお、
図9中、L1は非通電の状態から電流値が増加していく際の様子を示し、L2は電流値が高い状態から電流値が低減していき非通電になるまでの様子を示している。このグラフから分かるように、同じ電流値でもL1とL2では流量が異なっている。この流量の差はヒステリシスと呼ばれており、このヒステリシスが大きいほど、ある通電量に対する流量の誤差が大きくなってしまうことが分かる。このヒステリシスが生じる原因の一つとして、上述したOリング300の粘着の問題があると考えられている。
【0006】
このように、Oリング300が座面200に対して粘着してしまうことで変形時のふるまいが安定しない(一定でない)ことが、通電開始直後(弁が開き始めた直後)において流量制御を不安定にし、また、ヒステリシスを大きくしてしまい、流量制御の精度を低下させる原因となっている。なお、上記の説明においては、ソレノイドバルブにおける弁構造についての問題を説明したが、駆動源がソレノイド以外のもの(空圧アクチュエータ、
油圧アクチュエータ、圧電アクチュエータなど)における弁構造であっても、同様の問題が起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、流量制御の精度の向上を図った弁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明の弁構造は、
往復動用のアクチュエータによって往復移動するように構成された往復動部材の先端に設けられる弁体と、
該弁体の弁部が座面に着座することで弁孔が閉じられ、該弁部が座面から離れることで弁孔が開かれる弁座と、
を備える弁構造において、
前記弁体は、第1弁部と、前記第1弁部よりも前記弁座から離れた位置から前記弁座に向かって傘状に拡がるゴム製の第2弁部と、を有し、
前記弁座は、前記第1弁部が着座する第1座面と、前記第2弁部に対向して前記第1座面を囲むように設けられるとともに、溝が前記第1座面から所定の距離を空けて形成された環状の第2座面と、を有し、
前記往復動部材が前記座面側に移動している状態では、前記第1弁部が前記第1座面に着座するともに、前記第2弁部が撓んだ状態で前記第2弁部における前記第2座面との対向面側が前記第2座面に着座し、径方向において、前記第1座面と前記溝が設けられている領域との間の環状領域がシール領域となり、
前記往復動部材の前記座面から離れる方向への移動に伴って前記第1弁部が前記第1座面から離れるとともに、第2弁部が前記第2座面から離れるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、弁が閉じた状態から、弁体の第1弁部及び第2弁部が弁座の第1座面及び第2座面からそれぞれ離れる方向に往復動部材が移動していくとき、撓んだ状態で第2座面に着座していた第2弁部が元の形状に戻るように変形しつつ、第2座面から離れていく。ここで、本発明における第2弁部は、第1弁部よりも弁座から離れた位置から弁座に向かって傘状に拡がる構成が採用されている。従って、従来例のOリングの場合のように両側から圧縮された状態から座面から離れるのに比べて、本発明における弁体の第2弁部の方が座面から離れ易い。また、本発明においては、第2座面には、第1座面から所定の距離を空けて溝が形成されている。従って、第2弁部が撓んだ状態から元の形状に戻る過程で、第2弁部が第2座面から離れる前の段階から溝を通って流体が流れていく。以上のことから、弁が開き始めた直後から流体制御を安定的に行うことが可能となる。また、弁部が座面から離れ易いことからヒステリシスによる流量制御の誤差も少なくすることができる。
【0012】
また、前記第1座面は、前記弁孔の内周面であり、
前記第1弁部は、前記第1座面に対向する着座面を有するとともに該着座面よりも先端側が先端に向かうほど先細となるテーパ面になっているとよい。
【0013】
これにより、弁体が往復移動する際の弁座に対する中心軸線の位置ずれを抑制できる。従って、弁体の第2弁部が第2座面に着座する位置の精度を高めることができる。また、第1弁部の着座面より先端側がテーパ面になっていることにより、第1弁部が第1座面から離れてからの開弁度合の変化がなだらかとなり、流量の変化がなだらかとなる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、流量制御の精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下の説明においては、弁構造が適用される装置の一例として、ソレノイドバルブの場合を例にして説明する。
【0017】
(実施例)
図1〜
図6を参照して、本発明の実施例に係るソレノイドバルブについて説明する。
【0018】
<ソレノイドバルブの全体構成>
図1を参照して、本発明の実施例に係るソレノイドバルブの全体構成を説明する。ソレノイドバルブSVは、往復動用のアクチュエータであるソレノイド部Sと、弁構造としてのバルブ部Vと、これらソレノイド部Sとバルブ部Vを構成する各種部材を収容するハウジング部Hとから構成される。
【0019】
ソレノイド部Sは、ボビン11と、ボビン11に巻かれ、通電により磁界を発生するコイル12と、コイル12によって発生した磁界により磁気回路が形成されることでセンターポスト14に磁気的に吸引される往復動部材としてのプランジャ13とを備えている。また、ソレノイド部Sは、上記の磁気回路を形成するべく、いずれも磁性部材からなる一対のプレート15a,15b及びケース15cも備えている。また、ソレノイド部Sは、プランジャ13をセンターポスト14から離れる方向に付勢するスプリング16aと、このスプリング16aを受けるスプリング受け16bと、スプリング受け16bの位置調整
を行うアジャストスクリュ16cとを備えている。また、ソレノイド部Sは、コイル12に電気的に接続された端子17も備えている。更に、ソレノイド部Sは、プランジャ13の往復移動において弁を閉じる際のプランジャ13のストロークの終端位置を画定するためのストッパー50を備えている。
【0020】
ハウジング部Hは、ソレノイド部Sとバルブ部Vを構成する各種部材を収容するハウジング本体21と、ハウジング本体21に固定されるカバー22と、ハウジング本体21を補強する補強部材23とから構成される。ハウジング本体21には、元圧側から流体を流入させるための入力ポート部21aと、出力側(制御圧側)に流体を排出させるための出力ポート部21bが設けられている。また、ハウジング本体21には、外部電源からの電気供給を得るために電気的な接続を行うためのコネクタ部21cも設けられている。
【0021】
バルブ部Vは、プランジャ13の先端に設けられる弁体30と、弁体30が着座したり離れたりすることで弁の開閉がなされる弁座40とを備えている。また、バルブ部Vは、弁座40の外周面とハウジング本体21の内周面との間の隙間を封止するシールリング60と、弁座40を支持する支持部材70とを備えている。
【0022】
なお、上述したスプリング16aによる付勢力と、コイル12への通電量による磁力とのバランスによって、所望の流量(又は流量に伴う流体圧力)の制御がなされるように、アジャストスクリュ16cにより、スプリング受け16bの位置の調整がなされる。
【0023】
<バルブ部(弁構造)>
<<バルブ部の構成>>
特に、
図2〜
図5を参照して、バルブ部Vの構成について、より詳細に説明する。バルブ部Vは、上記の通り、弁体30と、弁座40とを備えている。
【0024】
弁体30は、軸部30aと、第1弁部31と、第2弁部32とを備えている。弁体30は、おねじ部を有する軸部30aがプランジャ13の先端に取り付けられた支持部材13aの凹部のめねじ部に螺合されることによって、プランジャ13の先端に固定される。これにより、プランジャ13が往復移動することにより、プランジャ13と共に弁体30も往復移動する。第1弁部31は、軸に平行な周面である着座面31aと、着座面31aよりも先端側において先端に向かうほど先細となるように径が変化するテーパ面31bと、を有している。第2弁部32は、軸部30aの外周に固定される円筒部32aを有し、該円筒部32aから、すなわち、第1弁部31よりも弁座40から離れた位置から弁座40に向かって傘状に拡がるように構成されている。第2弁部32において弁座40に対向する面が着座面32bとなる。第2弁部32は、ゴム製の部材であり、軸部30aに対して一体成形によって設けてもよいし、成形後に組み付けてもよい。弁体30は、軸部30a、第1弁部31、第2弁部32の各中心軸線が互いに一致するように構成されている。
【0025】
弁座40は環状の部材であり、その中央に貫通孔である弁孔40aが設けられている。この弁孔40aの中心軸線は、プランジャ13や弁体30の中心軸線と一致するように設けられている。弁座40は、弁孔40aの内周面が、第1弁部31の着座面31aが着座する第1座面41となり、弁孔40aの周囲の環状の端面において弁体30に対向する領域が、第2弁部32の着座面32bが着座する第2座面42となる。第2座面42には、弁孔40a(第1座面41)から所定の距離を空けかつ周方向に互いに間隔を空けて複数の溝43が設けられている。溝43は、弁孔40aを中心に放射状に延びるように設けられている。溝43と弁孔40aとの間の距離は、第1弁部31と第2弁部32の開弁のタイミング等の仕様に応じて適宜設定される。
【0026】
ストッパー50は環状の部材であり、ソレノイド部Sのケース15cの内周面のバルブ
部V側に取り付けられており、プランジャ13のバルブ部V側の先端面13bに当接することでプランジャ13の移動を規制する規制面50aを有する。この規制面50aの位置によってプランジャ13の閉弁時のストロークの終端位置が規定される。
【0027】
<<バルブ部のメカニズム>>
特に、
図3〜
図5を参照して、バルブ部Vのメカニズムについて説明する。
図3(a)は、弁が閉じた状態におけるバルブ付近を拡大して示す模式的断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のAA断面図である。
図4(a)は、弁体30が移動して第2弁部32と第2座面42が開弁した状態におけるバルブ付近を拡大して示す模式的断面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のBB断面図である。
図5(a)は、弁体30がさらに移動して弁が完全に開いた状態におけるバルブ付近を拡大して示す模式的断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のCC断面図である。
【0028】
図3(a)に示すように、ソレノイド部Sのコイル12に対して通電されていない状態では、磁力は発生しておらず、スプリング16aによる付勢力によって、プランジャ13は、センターポスト14から離れる方向に移動し、ストッパー50によって規制される位置で停止している。これにより、
図3(a)に示すように、弁体30における第1弁部31及び第2弁部32は弁座40の第1座面41及び第2座面42にそれぞれ着座している。このとき、傘状の第2弁部32は、撓んだ状態で、第2弁部32における第2座面42との対向面側が第2座面42に対して着座する。これにより、弁が閉じた状態となる。
【0029】
図3(b)は弁が閉じた状態における第2座面42と第2弁部32との位置関係を示している。第2弁部32が第2座面42に着座した状態においては、第2弁部32における第2座面42との対向面側の面は、第2座面42に設けられた複数の溝43に対向する領域よりも内側の部分が第2座面42に密着するように構成されている。これにより、第2弁部32が第2座面42に着座した状態においては、径方向において、第1座面41が設けられている領域と複数の溝43が設けられている領域との間の環状領域(
図3(b)中、シールラインRの周辺領域)がシール領域となる。これにより、入力ポート部21aから出力ポート部21bへと至る流路は、このシール領域によって遮断される。
【0030】
図4(a)に示すように、ソレノイド部Sのコイル12に対する通電量を増加させるに従い、磁気吸引力が高まるため、スプリング16aによる付勢力に抗して、プランジャ13はセンターポスト14に向かって移動する。これに伴って、プランジャ13の先端に設けられた弁体30もセンターポスト14に向かって移動するため、弁体30における第2弁部32は、中心側(弁孔40aに近い側)の領域から徐々に弁座40の第2座面42から離れ始める。そして、
図4(b)に示すように、第2座面42の溝43よりも内側に位置していたシールラインR(
図3(b))が徐々に拡径(外側に移動)し、溝43と重なる位置までくると、溝43を介して第2弁部32と第2座面42との間に隙間ができる。このとき、第1弁部31の着座面31aは、第1座面41から完全に離れていない。
【0031】
図5(a)に示すように、コイル12に対する通電量をさらに増加させると、プランジャ13がさらにセンターポスト14に向かって移動し、弁体30が弁座40からさらに離れる。これに伴って、第2弁部32が第2座面42から離れ、シールラインRが消滅するとともに(
図5(b))、第1弁部31の着座面31aも第1座面41から離れる。これにより、弁孔40aから弁体30の外周面側に抜けていく流路が形成される(
図5(a)中矢印A参照)。従って、入力ポート部21aから流入された流体は、出力ポート部21bから排出される。ここで、コイル12への通電量に応じて、プランジャ13の先端に設けられた弁体30の位置が定まり、第1弁部31と第1座面41との隙間、第2弁部32と第2座面42との隙間の大きさがそれぞれ定まる。従って、コイル12への通電量を制御することによって、出力ポート部21bから排出される流体の流量や流体圧力を制御す
ることが可能となる。
【0032】
<本実施例に係るソレノイドバルブの優れた点>
本実施例に係るソレノイドバルブSVによれば、コイル12に対して通電されていない状態から通電が開始され、通電量が増加するに従い、弁体30の第1弁部31及び第2弁部32が弁座40の第1座面41及び第2座面42から離れる方向にプランジャ13が移動していく。このとき、撓んだ状態で第2座面42に着座していた第2弁部32が元の形状に戻るように変形しつつ、第2座面42から離れていく。
【0033】
ここで、本実施例に係る第2弁部32は、第1弁部31よりも弁座40から離れた位置から弁座40の第2座面42に向かって傘状に拡がる構成が採用されている。従って、従来例のOリングの場合のように両側から圧縮された状態から座面から離れるのに比べて、本実施例に係る弁体30の第2弁部32の方が第2座面42から離れ易い。また、本実施例においては、弁座40の第2座面42に第1座面から所定の距離を空けかつ周方向に互いに間隔を空けて複数の溝43が形成されている。従って、第2弁部32が撓んだ状態から元の形状に戻る過程で、第2弁部32が第2座面42から離れる前の段階から複数の溝43を通って流体が流れていく。そして、第2弁部32と第2座面42との間が流通可能となってから、第1弁部31が第1座面41から離れる状態となる。以上のことから、通電開始直後(弁が開き始めた直後)から流体制御を安定的に行うことが可能となる。また、第2弁部32が第2座面42から離れ易いことからヒステリシスによる流量制御の誤差も少なくすることができる。また、従来例のOリングの場合には、プランジャが往復移動する毎に粘着状態が異なってしまい、流量特性にバラツキが生じるのに対して、本実施例に係るソレノイドバルブSVの場合には、そのような問題が解消され、流量特性を安定させることができる。
【0034】
また、本実施例に係るソレノイドバルブSVにおいては、プランジャ13の移動に伴って弁体30の第1弁部31が弁座40の弁孔40aに挿通され、軸に平行な周面である着座面31aが弁孔40aの内周面である第1座面41に着座するように構成されている。これにより、弁体30が往復移動する際の弁座40に対する中心軸線の位置ずれを抑制できる。従って、弁体30の第2弁部32が第2座面42に着座する位置の精度を高めることができる。また、第1弁部31の着座面31aの先端側は先細となるテーパ面31bとなっている。したがって、弁体30の往復移動において第1弁部31と弁孔40aとの間の流路面積は徐々に変化するため、第1弁部31の弁孔40aへの挿通動作は滑らかに行われる。
【0035】
なお、第1弁部31は、弁孔40aを完全に塞ぐ、すなわち、着座面31aが第1座面41に完全に密着する構成でなくてよい。つまり、弁が塞がれた状態は、実質的には、第2弁部32が第2座面42に密着することにより形成されればよい。第1弁部31は、閉弁動作時には、テーパ面31bによって徐々に流量を絞り、着座面31aが第1座面41に対向した状態において流量を最小限とする。第2弁部32は、第1弁部31と第1座面41との間を流通する流量が最小限となってから、シールラインRが溝43よりも内側に移動する、すなわち、第2座面42と完全に密着する状態となる。こうすることで、閉弁時における第2弁部32の挙動を安定させることができる。また、第1弁部31は、開弁動作時には、シールラインRが溝43よりも内側に位置している間は、着座面31aが第1座面41と対向することで流量を最小限で維持し、第2弁部32と第2座面42との間が溝43によって流通可能になってから、テーパ面31bによって流量を徐々に増やしていく。すなわち、第1弁部31が第1座面41から離れてからの開弁度合の変化がなだらかとなり、流量の変化がなだらかとなる。こうすることで、開弁時に第2弁部32に過度に入力ポート部21からの流体圧力が加わることが抑制され、開弁動作を安定させることができる。
【0036】
また、本実施例に係るソレノイドバルブSVにおいては、上記の通り、第2弁部32が撓んだ状態から元の形状に戻る過程で、第2弁部32が第2座面42から離れる前の段階から複数の溝43を通って流体が流れていく。つまり、第2弁部32が撓んだ状態から元の形状に戻る過程で、溝43の内側(弁孔40aに近い側)の部分から、流体が流れる流路の面積が徐々に広くなっていく。本実施例では、溝43の形状を、
図3〜
図5に示すように、中心軸線方向に見た場合に、弁孔40aに向かって先細となるV字形状としている。また、溝34の深さは、弁孔40aに近づくにつれて浅くなるように構成している。これにより、第2弁部32が撓んだ状態から元の形状に戻る過程で、流体が流れる流路の面積が急に広くなってしまわないようにしている。なお、この溝43の角度や長さなどの大きさや、数の設定によって、コイル12への通電量に対する流量の変化をリニアにすることができ、かつ最大流量を調整することができる。また、溝43の構成は種々の構成を採用することができる。溝43の断面形状としては、例えば、
図6に示すように、深さ方向に対して溝幅が変化しない略矩形形状(
図6(a))、溝幅が深さ方向に対して徐々に狭くなる略三角形形状(
図6(b))や略半円形状(
図6(c))等が挙げられる。また、溝43の開口形状としては、
図3〜
図5に示すような略三角形状に限られず、例えば、軸方向に溝幅が変化しない略矩形、溝幅の変化がなだらかな台形形状等が挙げられる。また、溝43の数や配置も、
図3〜
図5に示すように、12個を等配する構成に限られるものではない
【0037】
また、本実施例に係るソレノイドバルブSVにおいては、弁体30における第2弁部32の肉厚や形状、及び溝43の形状や大きさや個数の設定によって、ある電流値に対する流量が、元圧の大きさによってあまり変化しないようにすることができる。なお、元圧とは、入力ポート部21aから流入される流体の圧力である。これにより、元圧が変化してしまうような場合であっても、制御圧(出力ポート部21bから排出される流体の圧力)を安定させることができる。
【0038】
なお、上記実施例においては、弁体30がプランジャ13の先端に支持部材13aを介して設けられた場合の構成を示したが、本発明は弁体がプランジャの先端に直接設けられる場合にも適用可能である。また、上記実施例においては、弁構造がソレノイドバルブに適用される場合を例にして説明した。しかしながら、本発明の弁構造は、ソレノイドバルブ以外の弁構造にも適用可能である。すなわち、往復動部材を往復移動させるための往復動用のアクチュエータとしては、ソレノイドには限られず、空圧アクチュエータ,油圧アクチュエータ及び圧電アクチュエータなども適用可能である。本発明は、これらの各種往復動用のアクチュエータによって往復移動するように構成された往復動部材に弁体が設けられた弁構造に対しても適用可能である。