【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci.,1999年 5月25日,Vol.96, No.11,p.6025-6030
【文献】
J. Biol. Chem.,1988年 9月15日,Vol.263, No.26,p.13297-13302
【文献】
J. Bacteriol.,1990年 3月,Vol.172, No.3,p.1225-1231
【文献】
J. Bacteriol.,1991年 3月,Vol.173, No.6,p.1997-2005
【文献】
J. Biol. Chem.,1988年 7月25日,Vol.263, No.21,p.10300-10303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細菌膜からのタンパク質のトランスロケーションを導くための細菌分泌シグナルをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記細菌分泌シグナルが、pelBのP6S変異型(配列番号1)である、単離されたポリヌクレオチド。
前記外因性タンパク質コード配列が更に、pIII、pVII、pVIII、及びpIXから選択されるファージコートタンパク質をコードする配列に操作可能に連結され、そのようにして形成された融合タンパク質が、細菌膜から分泌されることになる、請求項2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
前記外因性タンパク質が、ペプチドを含むポリペプチド、抗体重鎖定常ドメイン、抗体重鎖、哺乳類受容体鎖、受容体細胞外ドメイン、フィブロネクチン様ドメイン、及びアンキリンリピートドメインからなる群から選択される、請求項3に記載の単離されたポリヌクレオチド。
外因性タンパク質に由来するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結された、細菌分泌シグナルをコードする核酸配列を含むベクターであって、前記コードされた細菌分泌シグナルが、pelBのP6S変異型(配列番号1)であり、前記細菌分泌シグナルが、野生型細菌分泌シグナルと比較して、細菌膜からトランスロケーションすることが判明する前記外因性タンパク質の割合を増強する、ベクター。
前記コードされた外因性タンパク質コード配列が更に、pIII、pVII、pVIII、及びpIXから選択される繊維状ファージコートタンパク質をコードする配列に融合される、請求項5に記載のベクター。
前記コードされた外因性タンパク質が、ペプチド、抗体重鎖定常ドメイン、抗体重鎖、哺乳類受容体鎖、受容体細胞外ドメイン、フィブロネクチン様ドメイン、及びアンキリンリピートドメインからなる群から選択される、請求項6に記載のベクター。
外因性タンパク質に操作可能に連結された細菌分泌シグナルをコードする請求項3に記載のポリヌクレオチドを封入した繊維状ファージ粒子であって、前記ファージの表面上に前記外因性タンパク質を有する、繊維状ファージ粒子。
前記外因性タンパク質が、繊維状ファージpVII又はpIXタンパク質のアミノ末端に融合され、その上で、前記タンパク質が、繊維状ファージタンパク質の表面で発現されるとき、1つの外因性タンパク質内のシステイン残基が、前記繊維状ファージ粒子の表面上で発現された第2の外因性タンパク質上のシステイン残基に酸化的に結合されるようになり、機能性タンパク質構造を形成する、請求項12に記載の繊維状ファージ粒子。
pelBのP6S変異型(配列番号1)のためのコード配列を含むポリヌクレオチドを用いて、細菌宿主細胞中で外因性タンパク質を発現させる方法であって、前記外因性タンパク質が、前記細菌宿主細胞の増殖を支持する培地から回収可能である、方法。
請求項1に記載の細菌分泌シグナルの変異型を含むポリヌクレオチドを用いて、細菌宿主細胞中で外因性タンパク質を発現させる方法であって、前記タンパク質が、繊維状ファージコートタンパク質に融合され、前記ファージ粒子の表面上で前記タンパク質を提示するファージの力価が、野生型細菌分泌シグナルが使用されるとき又は細菌分泌シグナルが使用されないときよりも高い、方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
略語
ADCC=抗体依存性細胞媒介型細胞傷害性、ADMC=抗体依存性単核細胞媒介型細胞傷害性、c1q=補体因子1q、EPO=組み換えエリスロポエチン、FcR=Fc受容体、Ig=免疫グロブリン、Hc=重鎖、Lc=軽鎖、IPTG=イソプロピルチオ−β−ガラクトシド、ompA=大腸菌外膜プロテインAをコードする遺伝子、pelB=軟腐病菌のペクチン酸リアーゼ遺伝子をコードする遺伝子。
【0016】
定義
本明細書で使用されるとき、別段の指示がない限り又は文脈から明白でない限り、抗体ドメイン、領域、及び断片は、当該技術分野において周知であるような標準的な定義に従う。本発明のタンパク質は、1つ以上の免疫グロブリンクラスの抗体に由来するか、又はその部分を組み込む。免疫グロブリンクラスには、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEアイソタイプ、またIgG及びIgAの場合は、それらのサブタイプ、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、及びIgG
4が含まれる。
【0017】
「シストロン」とは、アミノ酸配列をコード化し、上流及び下流DNA発現制御要素を含む、DNA分子におけるヌクレオチドの配列を意味する。
【0018】
「外因性ポリペプチド」又は「外因性タンパク質」又は「エキソタンパク質」とは、通常は野生型繊維状ファージゲノムによってコードされず、むしろ通常のファージタンパク質にとって異質であるタンパク質を意味する。典型的な外因性ポリペプチドは、それらがとりわけ、CH3、CH2、ヒンジ領域、及び/若しくはCH1ドメイン又はそれらの断片を含み得るFcドメインとして、天然に発生するように、抗体免疫グロブリン重鎖(Hc)ドメイン若しくは免疫グロブリン軽鎖(Lc)ドメイン、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(V
H)、免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(V
L)、天然若しくは合成ポリペプチド、単鎖抗体(scFv)、又は免疫グロブリンドメインの配列若しくは組み合わせを含む、目的とする任意のポリペプチドである。
【0019】
「Fc」とは、パパイン消化されたIgGの結晶化可能な開裂断片に与えられる標識であり、抗体定常ドメインに由来し、かつジスルフィド結合の鎖間連結を有するポリペプチド鎖の二量体構造を含む、抗体の機能的断片を意味する。ヒトIgG1において、パパインは、Cys226に対する断片C末端を作り出す(参照により本明細書に明示的に組み込まれる、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)にあるようなEUインデックスを用いて付番される)。「KabatにあるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基付番を指す。FcのN末端残基の定義は、異なり得るが、第1の鎖間結合システイン(Kabat系におけるC226)に対してN末端の第3残基である、Kabat付番系における少なくとも残基223を含むことが概して理解される。分子のFc部分は、抗体のその特異的な標的抗原との接触に直接に関与しないが、エフェクター機能を媒介する。これらの機能は、次の2つのタイプからなる:(1)C1q結合、並びに/又はIgGのためのFc受容体γ−タイプ結合、IgEのためのFc受容体ε結合、及びIgAのためのFc受容体α結合に続く、補体依存性細胞傷害性(CDC)活性若しくはADCC及びADMCのような、抗体の抗原への結合を要する機能、並びに(2)FcRnに結合し、細胞及び組織障壁(腸のような)を越えて経細胞輸送される能力による循環における持続性のような、抗原結合から独立した機能。特に、Fcの融合を介して、抗体分子又は他の分子の血清半減期を有意に増加させる能力は、非常に有利である。より長命の分子は、臨床治療に必要とされる量を低減させ、それによって投与の頻度を低減させ得る。
【0020】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するために使用される。FcRには、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスが含まれ、これにはこれらの受容体の対立遺伝子変異型、あるいはスプライスされた形態を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、それは主にその細胞質ドメインにおいて異なる類似したアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインにおいて免疫受容活性化チロシンモチーフ(FAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインにおいて免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,Annu.Rev.Immunol.,1997,15:203〜234における概説を参照されたく、FcRsは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.,1991,9:457〜92、Capel et al.,Immunomethods,1994,4:25〜34、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.,1995,126:330〜41において概説され、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0021】
「融合ポリペプチド」又は「融合タンパク質」とは、操作可能に結合(融合)される、それぞれ第1及び第2の核酸配列によってコードされる第1及び第2のポリペプチドを含む、融合ポリペプチド(タンパク質)を意味する。本明細書に例示されるように、ファージ粒子上に提示される融合タンパク質は、ファージプロテオーム原産でないタンパク質であるエキソタンパク質と、ファージコートタンパク質との融合である。
【0022】
用語「ライブラリ」は、変異型である、すなわち、ある種の領域が同じであるか又は類似しており、他の領域が異なる、コードされたタンパク質の集積を意味する。変形領域は、指向性又は無作為の変形(確率的又は非確率的変化)によるものであってもよい。ライブラリ又は変異型は、異なる変異型の数又はライブラリの「サイズ」の観点から説明することができる。有用なデノボ抗体ライブラリは、高い多様性(>10
10)を有し、変化に応じやすく、組立が容易であり、所望でない配列のバックグラウンドが低い。次の方法を組み合わせることにより、ライブラリアセンブリが加速され、低バックグラウンドがもたらされる:(a)Kunkel系単鎖突然変異誘発、(b)制限部位を有するパリンドロームループ、及び(c)メガプライマーアプローチの使用。
【0023】
本明細書で使用されるとき「二量体タンパク質」又は「多量体タンパク質」は、互いに関連して生体外又は生体内で単一の球状タンパク質を形成する、1つを超える別個のポリペプチド又はタンパク質鎖を指す。多量体タンパク質は、同じ種類の1つを超えるポリペプチドからなって、「ホモ二量体」又は「ホモ多量体」を形成し得る。あるいは、多量体タンパク質はまた、特有の配列の1つを超えるポリペプチドから構成されて、「ヘテロ二量体」又は「ヘテロ多量体」を形成し得る。故に、「ヘテロ多量体」は、少なくとも第1のポリペプチド及び第2のポリペプチドを含む分子であり、ここで第2のポリペプチドは、アミノ酸配列において第1のポリペプチドと、少なくとも1つのアミノ酸残基分だけ異なる。ヘテロ多量体は、第1及び第2のポリペプチドによって形成される「ヘテロ二量体」を含み得るか、又は2つを超えるポリペプチドが存在するより高秩序の三級構造を形成し得る。ヘテロ多量体についての例示の構造には、ヘテロ二量体(例えば、Fab、Fc断片、及び二重特異性抗体)、三量体G−タンパク質、ヘテロ四量体(例えば、F(ab’)2断片及びIgG)、及び更にオリゴマーの構造が含まれる。
【0024】
「ファージミド」又は「ファージベクター」は、プラスミドに由来するもののような、ファージ染色体及び外因性DNAの両方に由来する構成成分を含有する複製可能なクローニングベクターである。ファージミドは、ファージゲノムの部分を含有するため、宿主のヘルパーファージとの共感染時に、それはファージ粒子中にパッケージ化され得る。本発明のファージミドは、ファージM13粒子中にパッケージ化され得る。
【0025】
用語「ファージ粒子の表面」は、その中に粒子が含有される培地と接触している、バクテリオファージ粒子の部分を指す。ファージ粒子の表面は、コートタンパク質アセンブリ(粒子のタンパク質コートの組み立てられたメンバー)によって決定され、コートタンパク質アセンブリの内面は、適切な宿主細胞中でのファージの産生中に複製されたファージの核酸を含有する領域を結合させる。
【0026】
「ファージコートタンパク質」とは、天然産のバクテリオファージのファージコートを形成するタンパク質を意味する。f1、fd、及びM13のような繊維状バクテリオファージにおいて、コートタンパク質は、遺伝子IIIタンパク質(pIII)、遺伝子VIタンパク質(pVI)、遺伝子VIIタンパク質(pVII)、遺伝子VIIIタンパク質(pVIII)、及び遺伝子IXタンパク質(pIX)である。M13のコートタンパク質の配列、並びに繊維状バクテリオファージの密接に関連するメンバーの間の差異は、当業者に周知である(例えば、Kay,B.K.,Winter,J.& McCafferty,J.,eds.(1996).Phage display of peptides and proteins:a laboratory manual.Academic Press,Inc.,San Diegoを参照されたい)。
【0027】
概論
ファージコートタンパク質に対する融合タンパク質を作製する際、エキソタンパク質分子は、特にpIX又はpVIIに関して、ファージコートタンパク質と比べて大きいか、又は多様な化学的特徴を有し、組み換えファージ粒子のアセンブリを干渉し得る。アセンブリ干渉を回避するために、ファージミド系がしばしば使用されており、それによってファージ粒子は、ヘルパーファージの存在下で組み立てられ、したがって発現野生型タンパク質及びエキソタンパク質コートタンパク質の両方の融合を含有する。ファージミド系は、余分な工程が要求され、またたとえあるとしても、十分な量をはるかに下回る、エキソタンパク質を提示するコートタンパク質の完全補体しかもたらさないため、より厄介である。後者の理由のために、ファージミドディスプレイ系は、典型的には一価と考えられている。一方で、多価の提示を達成するためのファージベクター系の使用は、しばしば低い力価のファージ増殖を引き起こす。
【0028】
本発明は、コードされたシグナル(配列番号1)におけるプロリンからセリンへの変化をもたらす、配列の第6残基に対するコドンの第1塩基におけるTに対する、Cの軟腐病菌(pelB)からのペクチン酸リアーゼB分泌シグナルのためのコード配列における単一のヌクレオチド突然変異が、おそらく細胞周辺質の領域に対するペプチド及びタンパク質の分泌を改善することによって、M13ファージコートタンパク質上に提示されるタンパク質を含む、細菌宿主膜からの複数のタンパク質の分泌における改善を引き起こす、という発見に基づく。第2に、配列番号3のA11P変異型である、ompA分泌シグナルにおける突然変異は、ファージ提示ペプチド−コートタンパク質融合の力価を増強することが示されている。
【0029】
P6SpelB変異型分泌シグナルを用いて、出願者は、重度に正電荷、負電荷、又はジスルフィド結合の拘束ペプチドを含むペプチドが、首尾よくpIX及びpVIIファージコートタンパク質上に提示される可能性があること、並びに抗体断片、及びより最近では、全IgGを含む二量体抗体構造が、ファージミド系を用いてpIXコートタンパク質の融合タンパク質として首尾よく提示され得ることを実証している。加えて、本明細書に例示されるように、P6S pelB及びompAを用いて、多様な異なるペプチド及び小さいタンパク質ドメインは、本明細書に記載されるファージベクターを用いてpVIIと融合した多価で提示され得る。pIX上での大きい多量体タンパク質の上首尾かつ効率的な提示は、本明細書に記載される突然変異体pelB分泌シグナル(配列番号1)を用いて行われた。本明細書に記載されるpVII及びpIX上でのタンパク質の同時の多価の提示は、突然変異体pelB分泌シグナル(配列番号1)及びompA分泌シグナル(配列番号3)を用いたが、pelB分泌シグナル又はompA分泌シグナルのいずれかを、多価で提示されるタンパク質及びファージコートタンパク質融合の両方と組み合わせて使用してもよい。
【0030】
これらの結果は、ファージミドベクター又はファージベクターを用いるpIX又はpVIIコートタンパク質上でのエキソタンパク質提示を用いて発見及び実施化された、突然変異体pelBシグナル配列を包含する体系を使用して、生化学的に多様なペプチド及びタンパク質を提示できることを示す。加えて、フィブロネクチンのフィブロネクチンドメイン、チチン等のような、球状足場を含む他のタンパク質、タンパク質−AのZ−ドメイン、アンキリンリピート、PDZ−ドメイン、Knottins、CTLA−4細胞外ドメイン等が、この体系を用いて提示され得る。成長因子(例えば、エリスロポエチン受容体及びヘレグリンを含む受容体のERBBファミリー)、神経伝達物質受容体(例えば、γ−アミノ酪酸)、及び他の有機又は無機小分子受容体(例えば、鉱質コルチコイド、糖質コルチコイド)に結合するもののような、単量体、二量体、及び多量体受容体タンパク質は、野生型、突然変異体、又は切頭受容体ポリペプチド鎖を含むポリペプチド鎖のためのコード配列に共役された、配列番号1及び3から選択される突然変異体区分シグナルをコードするベクターを用いて提示され得るエキソタンパク質の例である。好ましいヘテロ二量体受容体は、核内ホルモン受容体(Belshaw et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 93(10):4604〜4607)、erbB3及びerbB2受容体複合体、並びに受容体のオピオイド(Gomes et al.(2000)J Neuroscience 20(22):RC110)、Jordan et al.(1999)Nature 399:697〜700)、ムスカリン、ドーパミン、セロトニン、アデノシン、及びGABA
Bファミリーを含むが、これらに限定されないGタンパク質共役受容体である。更に、無作為化及び多様化のための標準的な技術を用いて、上述の単量体、二量体、又は多量体タンパク質のための提示ベクターの構築は、ファージ上に提示される変異型分子のライブラリの構築の基盤としての役割を果たすことができる。そのようなライブラリは、これらのモチーフ及び足場に基づく、タンパク質再構築及び再操作の探索に有用なツールであり得る。
【0031】
本発明の出願者は、予想外に首尾よく、本明細書において、Fc受容体結合のような、天然抗体のFc−ドメインの既知の生物学的活性の少なくとも1つを提示するホモ二量体ジスルフィド結合タンパク質としての、繊維状ファージ粒子の表面上のpIX又はpVIIコートタンパク質に対する融合タンパク質として記載されるような、また二価抗原結合タンパク質の形態であるとき、標的抗原に特異的に結合する能力がある、抗体構成成分を提示している。ファージコートタンパク質に繋ぎ止められた大きいマルチドメインタンパク質は、今までに報告されておらず、単独で又は部分的にエキソタンパク質構築物における突然変異体pelB分泌シグナルの使用に起因すると考えられる。
【0032】
本発明を作製する方法
繊維状ファージ粒子上に提示された融合タンパク質において、外因性ポリペプチドと繊維状ファージコートタンパク質、及び特にpVII又はpIXコートタンパク質との間の「融合」は、アミド連鎖によって直接に連結されてもよく、又はリンカーポリペプチド(すなわち、「リンカー」)を含んでもよい。典型的に一続きの長さ約5〜50のアミノ酸である様々なリンカーのいずれを使用してもよい。特に好ましいリンカーは、そのリンカーの位置で融合タンパク質に対して大きな可動度を付与する。リピートの数が典型的には1〜12であるG4S(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)リピート又はG3S(Gly−Gly−Gly−Ser)を有するもののような、支配的にグリシン(G、Gly)残基からなるもののような、二次構造が欠けているリンカーを、この目的のために使用してもよい。
【0033】
第1のポリペプチドは、外因性タンパク質であり、第2のポリペプチドは、pVII又はpIXタンパク質のような、繊維状ファージコートタンパク質であり、それによって外因性タンパク質は、繊維状ファージタンパク質のアミノ末端と融合する。更に、融合タンパク質が未成熟形態であるとき、すなわち、リーダー配列がプロセス(除去)されていないとき、融合タンパク質は、本明細書に記載されるようなpelB又はompAのアミノ末端原核分泌シグナル変異型を含有し得る。
【0034】
抗体(免疫グロブリン)分子を発現させることが所望される場合、免疫グロブリンをコードするポリヌクレオチド分子は、(1)翻訳開始領域及び重鎖をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能と融合した分泌シグナルを含む第1のシストロン、並びに(2)翻訳開始領域及び軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列に操作可能と融合した分泌シグナルを含む第2のシストロンを含み、ここで原核宿主細胞中の軽及び重ポリペプチド鎖の発現時に、軽鎖及び重鎖は、生物学的に活性な免疫グロブリンを形成するように折り畳まれ、組み立てられる。ファージ粒子の表面上で安定的に会合して、二量体又はヘテロ二量体構造を形成することができる抗体又は少なくとも抗体の部分を発現させることが所望される場合、シストロンの1つ又は両方は、配列番号1及び3から選択される本発明の突然変異体分泌シグナルを含み、免疫グロブリンドメインと融合し、またそれがファージコートタンパク質と融合した、融合タンパク質をコードするであろう。
【0035】
天然抗体において、軽鎖ポリペプチド及び重鎖ポリペプチド鎖は、別個にコードされ、発現される。分子の典型的なヘテロの二量体構造IgGクラスは、分子の4つのポリペプチド鎖、2つの重鎖及び2つの軽鎖の中で及びそれらの間での、ジスルフィド結合の適切なアセンブリ及びその形成に依存している。故に、本発明において、抗体の二量体Fc部分のアセンブリ及び/又は軽鎖の会合は、存在するとき、タンパク質の個々のドメインが自己会合し、それらの間にジスルフィド結合を形成する限りにおいて、抗体形成の天然プロセスを再現する。
【0036】
一実施形態では、繊維状ファージ粒子の表面上に提示されるべきFc含有タンパク質は、天然抗体であり、ジシストロニックなベクターは、Fc構築物pIX又はFc構築物pVII融合タンパク質、並びに自己会合するであろう、別個にコードされ、発現された抗体Lc又は抗原結合ドメインの発現のために構築される。本発明の抗原結合タンパク質は、任意のエピトープ、抗原部位、又はタンパク質のための結合部位を有することができる。好ましい抗原結合タンパク質は、受容体への直接結合によって、又はそれらの同族のリガンド(複数可)の結合及び中和によって、受容体タンパク質の活性化を中和する。概して、抗原結合ドメインは、Fcドメインを含む天然抗体Hc配列と融合した抗体Lc及び抗体Hc可変ドメインから形成されるであろう。別の態様では、コートタンパク質融合タンパク質は、Fcドメインに連結されたscFvを含む。本発明の別の態様では、sscFvを含む重鎖及び軽鎖の抗原結合部位は、2つの異なる結合特異性を提供し、それによってファージ表面に提示された自己組立されたジスルフィド結合構築物タンパク質を、二特異的かつ二価の分子にするように異なってもよい。例えば、IgG分子のV
L及びV
Hドメインの代わりに置換されるのは、異なる特異性のscFvドメインであり、これにより結果として生じる分子が2つの異なるエピトープに同時に結合することができるようになる。本発明の方法を用いてファージ粒子上に提示され得る、多数の可変ドメイン対を有する二特異的な抗体分子を作り出す他の方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第20020103345A1号に教示される。
【0037】
一実施形態では抗原結合又は受容体結合ドメインは、抗体ドメインに由来しないが、Fcドメインに融合される既知の又は無作為ペプチド配列である。同時係属中の出願、国際公開第04/002417号、同第04/002424号、同第05/081687号、及び同第05/032460号の出願人は、本明細書でMIMETIBODY(商標)構造と称される構造を説明し、これらの参考文献の各々は、参照により本明細書に全体的に組み込まれ、これらの構造は、pIX又はpVIIファージコートタンパク質と融合し、ファージ粒子の外表面上に提示され得る、二量体ジスルフィド結合構造として含まれる。
【0038】
一実施形態では、ファージ粒子上に提示されるタンパク質は、会合又は共有結合、具体的には、Cys−Cysジスルフィド結合によって連結される対である、生物活性ペプチド−リンカー−ヒンジ−CH2−CH3ポリペプチドの対を含む。生物活性ペプチドは、任意の長さの上にあってもよく、任意の種に由来する天然産の配列であっても、人口配列であってもよい。ペプチドは概して、ファージミドベクターによってコードされ、ファージ粒子上での提示のために構築物のFc部分に融合されるであろう。ペプチドが既知の生体活性を有さないが、それがマーカー、タグ、抗原としての機能を呈示するか、又はレポーター基、キレート基等の共役を提供する、類似した構造の他の構築物が、本発明の突然変異体分泌シグナルを組み込むベクターを用いて発現されてもよい。
【0039】
分泌されるタンパク質又はコートタンパク質融合タンパク質の発現のレベルは、転写のレベルで追加的に制御することができる。融合タンパク質は、Lac Zプロモータ/オペレータ系の誘導可能な制御下にある(
図1を参照されたい)。他の誘導可能なプロモータも同様に作動することができ、それらは当業者に既知である。高レベルの表面発現については、サプレッサーライブラリが、イソプロピルチオ−β−ガラクトシド(IPTG)のようなLac Zプロモータの誘導物質中で培養される。誘導可能な制御は、非発現条件下でライブラリを培養することによって、非機能的pIX融合タンパク質に対する生物学的選択が最小化され得るため、有益である。次いで発現は、ライブラリ内の抗体の全体的な集団がファージ表面上に正確に表されていることを確実にするためのスクリーニングの時にのみ誘導することができる。
【0040】
分泌されるタンパク質又はコートタンパク質融合タンパク質をコードするベクターは、エキソタンパク質及びコートタンパク質コード領域の接合部において、翻訳終止コドンを含み得る。対応する翻訳終止サプレッサーを担持する細菌細胞中で発現されるとき、融合タンパク質が産生される。対応する翻訳終止サプレッサーのない細菌細胞中で発現されるとき、遊離エキソタンパク質は、産生されない。
【0041】
本発明の使用方法
本発明の突然変異体分泌シグナル配列が、細菌宿主細胞、例えば、大腸菌中のタンパク質発現のためのベクターの構築において使用されるとき、ポリペプチドは、宿主細胞の周辺質中に分泌され、またそこから回収される。タンパク質回収は、典型的に、概して浸透性のショック、音波処理、又は溶解のような手段によって、微生物を妨害することを伴う。一旦、細胞が妨害されると、細胞残屑又は全細胞は、遠心分離又は濾過によって除去されてもよい。タンパク質は更に、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーによって精製されてもよい。あるいは、タンパク質は、培養培地中に輸送し、そこで単離することができる。細胞は、培養物から除去され、培養物上清は、産生されたタンパク質の更なる精製のために濾過及び濃縮され得る。発現ポリペプチドは更に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)及びウェスタンブロットアッセイのような一般的に知られる方法を用いて、単離及び特定され得る。
【0042】
本発明の突然変異体分泌シグナル配列が、ファージコートタンパク質と融合するエキソタンパク質である融合タンパク質の発現のためにファージベクター又はファージミドベクターの構築において使用されるとき、タンパク質は、宿主細胞膜、例えば、大腸菌細胞から形成及び分泌されるファージ粒子の表面上で組み立てられる。
【0043】
本明細書に出発点として例示されたファージベクターを用いて、タンパク質又はエキソタンパク質−ファージコートタンパク質融合は、分子のライブラリを生成するための指向性突然変異誘発を用いて、特異的な個別的な残基位置で、又はNXT配列と一般的に称されるN結合グリコシル化配列のような領域で、多様にされてもよい。各々が異なるエキソタンパク質配列を保有する数十億の大腸菌コロニーを生成するために使用され得る、修飾されたKunkel突然変異誘発法が、特に有用である。効率的である一方で、高度に複合の配列ライブラリを生成するとき、突然変異誘発されていない親DNAの割合は増加する。加えて、長いオリゴヌクレオチドの合成の技術的制限は、遠位領域において配列多様性を含有するライブラリを作製するために使用されるとき、本方法の有効性を低下させ得る。これらの制限を克服するために、350塩基を超えるオリゴヌクレオチドを生成する追加的な技術を使用することができる。これらの技術には、米国特許第20050048617号に記載されるような、標準的なKunkel突然変異誘発法(Kunkel at al.1987 Methods Enzymol.154:367〜382)と組み合わせた、メガプライマーの使用及び突然変異誘発テンプレートにおいて制限酵素認識部位を含有するステム−ループ配列の作製が含まれる。制限クローニング(Marks et al.,1991 J.Mol.Biol.222:581〜597、Griffiths et al.1994 EMBO J.13,3245〜3260、Hoet et al.2005 Nature Biotechnol 23,344〜348)、ファージ組み換え(Gigapack,Invitrogen)、及び配列特異的組み換えのような他のライブラリ技術と比較して、改善されたKunkelに基づく方法は、配列多様なライブラリ(10
9を超える)を生成する際に、有意により有効であり、標的化されたDNA中の任意の場所に配列多様性を導入するのにより万能である。
【0044】
Fc含有タンパク質の繊維状ファージ上での提示は、所望の結合特徴のために、そのような分子の大集団をスクリーニングすることが所望される場合に特に有用である。所望のタンパク質又はタンパク質融合を発現する細菌細胞は、融合遺伝子を担持するベクターDNAの、ファージ粒子中への優先的なパッケージングを可能にするM13変異型に感染させられる。各々結果として生じるファージ粒子は、融合タンパク質の1つ以上のコピーを提示し、融合タンパク質コードするベクターを含有する。そのようなファージ粒子の集団は、パンニング手順によって、所望の結合特徴のために強化することができる。典型的には、所望の粒子は、ELISAプレートのような、所望のファージ粒子がそこに結合し得る抗原によりコーティングされた固体表面上に固定化される。結合粒子は、収集され、細菌細胞を更に感染させるために使用される。パンニング手順は、所望の結合特徴のために更に強化するために反復される。
【0045】
ファージライブラリから回収されたタンパク質(例えば、抗体又はFc含有分子)をスクリーニングするための1つのアプローチは、提示のためにタンパク質分子に連結されたファージコートタンパク質を除去することである。ファージコートタンパク質の除去を促進するために、酵素的開裂部位は、エキソタンパク質とコートタンパク質との間でコード化され、タグ、例えば、Flag又はヘキサヒス配列を含む又は除外するように適切に位置づけられてもよい。
【0046】
ファージ及び他の抗体ディスプレイ方法は、生体外の抗原又は受容体標的に対する選択を操る機会を利用可能にする。生体外選択法の1つの特定の利点は、標的タンパク質上の多様な部位への抗体結合を得るように選択手順を操る能力である。あるいは、全細胞を使用して、バインダーを選択してもよい。
【0047】
ファージライブラリは、機能的属性に関連する遺伝物質の検索を単純化するが、ライブラリから最良の候補を単離するために多重ステップのパンニング戦略が要求される。ドメイン又はエピトープ指向性パンニングは、標的タンパク質に結合する抗体を選択する日常的な方法となっている。そのような選択は、選択的パンニング、脱選択的(De-selective)パンニング、リガンド捕捉、サブトラクティブパンニング又は道しるべ(pathfinder)選択として多様に知られる方法を利用する抗体のステップによる選択を用いることによって、主に達成されてきた。
【0048】
サブトラクティブパンニングにおいては、重複するが、完全に同一でない結合部位を有する標的(複数可)を使用して、不必要なバインダーを脱選択することができる。この戦略は、癌細胞に対するバインダーを脱選択するために通常の細胞を使用する際と同様に、未知の抗原さえにも対応するバインダーを特定するために使用されている。あるいは、関連する抗原の間で異なる又は共通の部位への抗体結合を得るために、幾つかの共通のドメイン又は構造を有する天然産のタンパク質が、連続的な又は競合選択において使用される。場合によっては、関連するケモカイン又はタンパク質の突然変異バージョンのような天然産のタンパク質が、サブトラクティブパンニングにおいて使用され得る。
【0049】
リガンド捕捉指向性パンニングは、無関係の及び隣接していないエピトープに固定化された抗体が、ファージパンニングのために好ましい標的リガンドの結合面を捕捉し、呈示するために使用されるという点で、ELISAサンドイッチアッセイに類似している(米国特許第6376170号)。その他のものは、所望の標的ドメイン以外における抗原を選択的にマスクするために競合抗体を使用している(Tsui,P.et al.2002.J.Immunol.Meth.263:123〜132)。道しるべ技術は、モノクローナル及びポリクローナル抗体、並びに西洋ワサビビペルオキシダーゼ(HRP)に直接に又は関節に共役させられた天然リガンドを使用する。ビオチンチラミンの存在下で、これらの分子は、標的抗原に極めて接近したファージ結合のビオチン化を触媒し、ストレプトアビジンを用いて全集団からの「タグされた」ファージの特異的な回収を可能にする。このようにして、標的自体に又はそのすぐ近くに結合するファージは、選択的に回収される(Osborn,J.K.et al.1998.Immunotechnol.3:293〜302)。これらの方法、方法の変形、及び当業者に既知の他の方法を用いて、本発明の突然変異体分泌シグナルに依存する発現方法を用いて生成されるエキソタンパク質のライブラリを問い合わせることができる。
【0050】
一実施形態では、ファージライブラリは、FcRgammaIII(CD16)、FcRgammaII(CD32)、及びFcRgammaI(CD64)のような、天然又は組み換えFc受容体への増強された、減少された、又は変化した結合のために、分子のFc部分の変異型をスクリーニングするために使用される。
【0051】
本発明は一般論として記述されてきているが、本発明の実施形態は、特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない以下の実施例で更に開示される。
【実施例】
【0052】
実施例1.pVII上での多価のペプチド提示
pVIIが、多コピーの異なるペプチド及びタンパク質を効率的かつ安定的に提示することができるかどうかを試験するために、ファージゲノム提示ベクターを設計及び構築した。pVIIベクターを、ファージゲノムM13KE、M13mp19の誘導体(一本鎖の雄型特異的繊維状DNAバクテリオファージM13、NCBI NC_003287の誘導体であるベクター、およそ7250bp長)を用いて構築した。pVII及びpIXコード配列は、ゲノム中で互いに隣接して位置する。このベクターにおいて、出発コドンを有するペプチド及びGSGGGリンカーを、pVIIのN末端中に挿入した(
図1A)。pVIIコード領域の前のBsrG I制限エンドヌクレアーゼ部位及びpIXコード領域の末端部におけるBspHI部位を、クローニングに使用した。
【0053】
線状ペプチド(HA)、重度に負電荷のペプチド(Flag)、正電荷(6XHisタグ)、及びジスルフィド結合拘束ペプチド(PHPEP 190、PHPEP 97)を含む、一連の生化学的に多様なペプチドを、このベクターへとクローニングし、試験した(表1)。シグナル配列、ペプチド、GSリンカー、pVII、及びpIXをコードするDNA断片、並びにBsrG I及びBspH I認識部位にまで延長する、5’及び3’末端部上の隣接DNA配列を、オーバーラップPCRによって生成した。ゲル生成したPCR産物を、BsrG I及びBspHI制限エンドヌクレアーゼで消化し、次いで同じ酵素で消化された二本鎖M13KEファージDNA中にライゲートした。ライゲートした組み換えファージDNAを、XL1−ブルー大腸菌コンピテント細胞(Strata遺伝子)に形質転換した。
【0054】
【表2】
【0055】
次いで形質転換細胞を、XL1−ブルー宿主細胞の菌叢上にプレートして、単一のプラークを単離した。XL1−ブルー大腸菌菌叢上のファージプラークをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁して、ファージ粒子を上層寒天から拡散させた。拡散したファージをXL1−ブルー液体培地に添加し、光学密度0.5になるまで増殖させて、大腸菌細胞を感染させた。培養物を37℃で5時間振盪した。振盪後、細菌を遠心分離によって除去した。上清中のファージ粒子を、冷0.5M塩化ナトリウムの10分の1容量、4% PEG−800を添加することによって沈殿させ、混合物を4℃で3時間インキュベートした。混合物を遠心分離にかけ、ファージペレットをPBS中に再懸濁させ、アリコートし、−20℃で保管した。
【0056】
マイクロタイタープレート(ファージELISA)上に固定化したリガンドへの全ファージ結合のアッセイ、DNA塩基配列決定法、及びファージ力価の滴定を使用して、ファージを特徴化し、ファージ表面上でのそれらの提示を評価した。黒色マキシソープELISAプレート(NUNC)を、炭酸塩コーティング緩衝剤、pH 9.5中、5g/mLの濃度で提示されたペプチドを認識する、100μL/ウェルの抗体又はタンパク質で一晩コーティングした。コーティングしたプレートを、0.1% Tween−20(TBST)を含有するトリス緩衝生理食塩水で3回洗浄し、ケミブロッカー(Chemicon International)で、室温で1時間ブロックした。ケミブロッカー中に希釈したファージ試料を結合のためにプレートに添加した。室温で1時間のインキュベーション後、プレートを再び3回洗浄して、結合していないファージを除去した。検出抗体、抗M13/西洋ワサビペルオキシダーゼ共役体(GE healthcare)をTBST/10%ケミブロッカー中で1:5,000に希釈し、プレートに100μL/ウェルで添加し、室温で1時間インキュベートした。最終洗浄後、POD化学発光基質(Roche)を、検出のために100μL/ウェルでプレートに添加し、プレートをテカンプレートリーダー上で即座に読み取った。
【0057】
結果
ファージELISAデータを
図2A−Eに示し、それによりすべての5つのペプチドが、種々の構造及び生物理学的特性を有するにもかかわらず、pVIIコートタンパク質に繋ぎ止められたファージ表面上に首尾よく提示されたことが実証される。
【0058】
ファージ対ファージミド提示比較を
図3に示し、ここで五価のディスプレイファージ系(pVIIのすべての5つのコピーが融合タンパク質を提示する)を、平均して1つのコピーのみのペプチドが提示されたpIX上でのハイブリッドディスプレイ系(国際公開第2009/085464号及び同第2009/085468号に記載されるように、野生型及び融合されたpIXコード配列、p99の両方を有するファージベクター)からの結果と比較する。ELISA結果により、pVIIファージベクターに由来するファージ上に提示されたHペプチドが、p99ハイブリッド系に由来するファージよりも、抗HA抗体に劇的に良好に結合したことが実証され、ベクター系が多価のファージディスプレイを産生したことが示唆される。
【0059】
実施例2分泌シグナルのペプチド提示に及ぼす効果
野生型pVIIは、それが宿主細胞中の内膜タンパク質であるという事実にもかかわらず、シグナルペプチドなしに天然に合成される。しかしながら、pVII及びpIXディスプレイ系の以前の研究において、シグナルペプチドが使用された(Gao,et al.1999,Proc Natl Acad Sci U S A 96:6025;Kwasnikowski et al.2005 Journal of Immunological Methods 307:135〜143)。細菌シグナル配列がpVII上でのファージディスプレイに必要であるかどうかを検査するために、Hペプチド、続いてGSGGGリンカー及びpVIIの前に、pelBを添加したか、又は添加しなかったいずれかの構築物を作製した。
【0060】
図4は、pelBなしにHAがファージ表面上に提示され得たことを示す。しかしながら、HAは、使用されたファージ粒子の数が、pelBを用いたファージに対する数と同じであったにもかかわらず、より弱いELISAシグナルによって示されるように、有意に低い効率性でファージ表面上に提示された(
図4)。ELISAデータにより、シグナル配列pelBが、必要ではないとしても、おそらくHA融合pVIIペプチドを、ファージが組み立てられる膜中に導く一助となることによって、ペプチド提示を改善することが示唆された。ファージ増殖の経時的研究により、pelBを有するファージベクターに由来するファージが、pelBを有さないものに由来するファージ(データは示されず)よりも迅速に増殖することが示され、細菌シグナルペプチドが、HAが表面上に提示されるファージのアセンブリの一助となるという更なる証拠が提供された。
【0061】
実施例3:pelB突然変異
ストレプトアビジンに結合する、PHPEP 97(RECHPQNWTSCSN)、ジスルフィド結合拘束13アミノ酸ペプチドは、pVIIファージディスプレイについて試験したペプチドのうちの1つであった(実施例1)。ファージELISAにおいて、PEP97(CL#7及びCL#8)の2つのクローンは、ストレプトアビジンへの高まった結合能力を示した(
図2E)。これらのクローンの配列分析により、両方のクローンのpelB配列中の単一のアミノ酸突然変異Pro6からSer(
図5A)が明らかとなった。
【0062】
次いで、P6S pelBを、他のペプチドの提示を増強するその能力について試験し、提示効率性の改善もまた観察した(データは示されず)。突然変異がタンパク質分泌に影響を及ぼしたかどうかを試験するために、pelB又は突然変異pelBをアルカリホスファターゼ(AP)と融合し、DH10B細菌中のAPの分泌を試験した。
【0063】
細胞培養で分泌されたアルカリホスファターゼ活性を決定した。
図6Aにおいて、結果は、突然変異が確かに、細胞培地(上清分留)中へのAP分泌を有意に改善したが、細胞の内部のAP濃度は同じであったことを示した(
図6B)。したがって、突然変異pelBが、PHPEP97−pVIIの、そこでファージがこの突然変異によって組み立てられた膜へのトランスロケーションを改善したと仮定した。我々の知る限りでは、タンパク質分泌を増加させるpelBにおける突然変異の他の報告はなされていない。
【0064】
実施例4:ファージpVII及びpIX上でのペプチドの二重多価の提示
2つの異なるペプチドを同時に多価で提示するために、ファージベクターを、ファージゲノムM13KEに基づいて構築し、ここで突然変異体P6S細菌シグナルペプチドpelB(配列番号2、C16T)、ペプチドA、及び可動性のGSGGGリンカーをpVII遺伝子のN末端に挿入し、野生型細菌シグナルペプチドompA(配列番号4、G31)、ペプチドB、及び可動性のGSGGGリンカーをpIXのN末端中に挿入した(
図1B)。pVIIコード領域の前のBsrG I制限エンドヌクレアーゼ部位及びpIXコード領域の末端部におけるBspH I部位を、クローニングに使用した。シグナル配列、ペプチド、GSリンカー、pVII、pIX遺伝子をコードするDNA断片、並びにBsrG I及びBspH I認識部位にまで延長する、5’及び3’末端部上の隣接DNA配列を、オーバーラップPCRによって生成した。ゲル生成したPCR産物を、BsrG I及びBspH I制限エンドヌクレアーゼで消化し、次いで同じ酵素で消化された二本鎖M13KEファージDNA中にライゲートした。ライゲート組み換えファージDNAを、XL1−ブルー大腸菌コンピテント細胞(Strata遺伝子)に形質転換し、形質転換細胞をXL1−ブルー宿主細胞の菌叢上にプレートして、前述のように単一のプラークを単離した。
【0065】
FLAG及びHペプチドの両方の提示をファージELISAによって評価し(
図7)、それにより両方のペプチドがファージ粒子上に提示されることが実証された。しかしながら、PHPEP 97の提示についてと同様に、元のプラーク寸法は非常に小さく、ファージ力価は低かった。
【0066】
増殖率を改善し得る、ファージにおける偶発突然変異について選択するために、ファージを2つの個々のクローンから継続的に継代させた。5回の継続的な継代後、1つのクローン(#11)のファージ力価の経時的に有意な増加を観察した(
図8)。5回目及び10回目のファージから精製した全ファージゲノムの配列の比較により、シグナルペプチドompAの11位に位置する、AlaからProへの1つのみの単一アミノ酸突然変異が特定された(
図5B)。同じ突然変異を他のクローン(#9)のファージから特定した。しかしながら、突然変異は、pelBにおける突然変異が及ぼしたようには、アルカリホスファターゼの分泌に有意に影響を及ぼさなかった(
図6A)。
【0067】
実施例5:ファージ粒子上での完全IgG提示
A.ベクター設計。
完全IgG提示ファージミド(vDR47、
図9)を、国際公開第2009/085462号に記載されるように、ファージミド構築物から出発して構築した(pCNTO Fab IX)。ヒトIgG1ヒンジ、CH2及びCH3ドメインをコードする配列、並びにP6S pelB変異型シグナル配列を付加し、ベクターは、lacI遺伝子を有さないが、発現は、lacプロモータによって制御することができた。
【0068】
B.完全IgGディスプレイのために使用される構築物の特徴付け。
pIX上での完全IgGの提示を査定するために、試験構築物のパネルを作製した。6〜2及び16〜7と表記されるIL13に対する抗体、並びに抗サイトカイン抗体9〜4を、新たな完全IgG分子を構築するためのプロトタイプとして選択した。異なるコドン利用の効果を決定するために、2つの構築物を抗IL13抗体の各々に対して作製し、このうち1つはヒトコドン最適化を伴い、もう1つは大腸菌コドン最適化を伴った。表1は、5つの完全IgG試験構築物についてのベクター表記を列挙する。最適化された遺伝子を合成し、米国特許第6,670,127号及び同第6,521,427号に記載されるような二本鎖DNAに組み立てた。加えて、pIXと融合したEMP−1ペプチド−Fc融合構築物(US7393662のCNTO530、配列番号88)を、それがヒトIgGヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含有するが、軽鎖を含有しないため、対照として含めた。
【0069】
【表3】
【0070】
C.ファージ産生
上記のB節に記載される完全IgGディスプレイ構築物を、標準的なプロトコルに従って2つの異なるF’大腸菌株、TG−1、及びXL−1ブルーに形質転換した。これらの2つの株を試験する理由は、仮説上、完全IgG pIX融合タンパク質のパッケージング及びディスプレイに影響を及ぼし得る、増殖率におけるそれらの差異である。個々の形質転換体を採取し、カルベニシリンを補充した(常に100μg/mLで使用される)2XYT培地中で一晩増殖させた。次いで一晩の培養物(500μL)を使用して、25mLの2XYT/カルベニシリンを接種し、培養物を37℃、250rpmで、OD(600nm)が0.5に到達するまで増殖させた。振盪を行わずに37℃で30分間インキュベーションする間に、細菌を10^
11pfu/mLのVCSM13ヘルパーファージ(Stratagene,La Jolla,CA)に感染させ、続いて3,000rpmで15分間、遠心分離工程を行った。この工程において、標準的なプロトコルにより、2XYT/カルベニシリン/IPTG(1mM)での細菌培養が求められた。しかしながら、我々は、この体系の漏出性が、その後のファージパッケージングを伴う融合タンパク質を産生するために十分であろうとの仮説により、培養物を2つに分割し、1mM IPTGを一方に添加し、他方には添加しなかった。要約すると、各構築物について、4つの異なるファージ調製物を作成した:(i)IPTGを有するTG−1(ii)IPTGを有さないTG−1(iii)IPTGを有するXL−1ブルー(iv)IPTGを有さないXL−1ブルー。培養を30℃、250rpmで一晩増殖させ、翌日、3,000rpmで15分間遠沈させ、続いてPEG/NACl中でファージ上清の沈殿を行った。氷上で2時間後、沈殿したファージを10,000rpmで、15分間遠沈させ、ファージペレットを2mL PBS中に再懸濁させた。ファージ調製物を更に、10,000rpmで10分間スピンすることによって、あらゆる残存する細菌ペレットから清澄化し、2mL管中、4℃で保管した。
【0071】
D.ファージ力価
標準的なプロトコルに従ってファージ力価を決定した。簡潔に述べると、OD(600nm)が0.5に到達するまで、TG−1細胞を2XYT中で増殖させた。ファージ調製物を、96ウェルプレート中のPBS中に連続的に希釈し、TG−1細胞をファージに添加し、37℃でインキュベートして感染可能にした。30分後、1%グルコース及びカルベニシリンを含有するLB寒天プレートに、2μLの各ウェルを分与することによって、スポット滴定を行った。プレートを37℃で一晩インキュベートし、ファージ濃度を、mL当たりのコロニー形成単位(cfu)の観点から決定した。表3は、すべての構築物及び培養条件についてのファージ滴定からの結果を示す。すべてのクローンは、10^
11〜10^
13cfu/mLの間の高いファージ力価を産生し、それは予測範囲内であり、ファージが効率的に産生されることを示した。
【0072】
【表4】
【0073】
E.機能的提示を査定するためのIgGドメイン−特異的なサンドイッチELISA
ファージpIX上での完全IgG分子の提示を査定するために、一連のサンドイッチELISAを設定した。黒色マキシソーププレートを、1μg/mLの、TBS中に希釈した捕捉抗体;ヒツジ抗ヒトIgG(Fd、CH1)抗体(The Binding Site,Birmingham,UK)、マウス抗ヒトカッパ軽鎖(Southern Biotech,Birmingham,AL)、マウス抗ヒトIgG(CH2ドメイン)抗体(AbD Serotec,Raleigh,NC)、及びマウス抗ヒトIgG(CH3ドメイン)抗体(AbD Serotec)のうちの1つでコーティングした。プレートをケミブロッカー(Chemicon/Millipore,Billerica,MA)でブロックした後、プレートを洗浄し、ファージを2×10^11cfu/mLの濃度(10%ケミブロッカー/TBST中に希釈)で添加し、1時^11間インキュベートした。プレートを洗浄し、HRP共役したマウス抗M13抗体をプレートに添加した。30分のインキュベーション後、プレートを洗浄し、化学発光基質をウェルに添加し、プレートをEnvisionプレートリーダーにおいて読み取った。
図10A〜Dは、それぞれCH1(
図10A)、カッパ(
図10B)、CH2(
図10C)、及びCH3(
図10D)サンドイッチELISAからの結果を示す。ELISAで使用した対照は、vDR10中のクローン6−2のFab−pIX融合物(ヒトコドン最適化、TG−1細胞中で作製、IPTG誘導を伴う)、非特異的な足場タンパク質−pIX融合物、又はCNTO530−pIX融合物を提示するファージであった。CH1及びカッパELISAにおいて、6−2 Fabは、陽性対照としての機能を果たす一方で、EMP−1構築物(CNTO530)分子は、陰性対照としての機能を果たす。CH2及びCH3 ELISAにおいて、6−2 Fabは、陰性対照としての機能を果たし、CNTO530分子は、陽性対照としての機能を果たす。足場タンパク質ファージは、それがいかなる抗体ドメインも担持しないため、すべてのELISAにおいて陰性対照としての機能を果たす。ファージの異なる捕捉抗体への結合を防止するために、可溶性競合物質として、5μg/mLの濃度での抗IL13完全IgG1抗体の添加によるELISAアッセイもまた行った。
【0074】
図10A〜Dに示されるように、サンドイッチELISAのすべてにおいてファージを検出することができ、ファージが実際には、表面上で異なる抗体ドメインを提示しているという証拠を提供した。XL−1ブルー細胞中で産生されたファージは、最も高いシグナルを有し、IPTGの添加は、結合シグナルに対する明白な効果を有した。ファージの結合は、特異的な相互作用を示す、可溶性抗IL13抗体の添加によって阻害され得る。しかしながら、可溶性抗IL13抗体は、ファージとCH3ドメインとの間の相互作用を完全に競合除去(compete off)することはできなかった(
図10D)。これは、完全IgG−pIX融合物の両方について、並びにEMP−1−Fc−pIX融合物(CNTO530)について観察された。
【0075】
F.IL13への完全IgG pIXファージ結合
IgG分子のすべてのドメインを、ELISAによってファージ粒子上で検出できることを実証した後、構築物が、それらのそれぞれの抗原に結合する能力も保持するかどうかを決定することが必要であった。IL13結合ELISAを、黒色マキシソーププレートを、1μg/mLの商業用の抗IL13抗体(マウス抗ヒトIL13、MAB213、R&D Systems)でコーティングすることによって設定した。MAB213は、IL13への結合をめぐって6−2又は16−7と競合せず、故に、サンドイッチELISA捕捉抗体として理想的である。洗浄及びブロッキング後、ビオチン化ヒトIL13R130Qヒト(Peprotech)を100nMで添加し、1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、pIX上で6−2及び16−7の完全IgGバージョンを提示するファージを2×10
11cfu/mLで、単独で又は競合のための可溶性抗IL13抗体と一緒に添加した。結合ファージを、HRP共役したマウス抗M13抗体で検出し、化学発光をEnvision機器において読み取った。
図11は、IL13ファージELISAの結果を示す。結合は、ほとんどの条件において検出され、このうち1mM IPTGを有するXL−1ブルー細胞中で産生されたファージが最も高いシグナルを示した。ペプチド−Fc−pIX及び代替的な足場分子−pIX融合物は、予測通り陰性であり、6−2 Fab pIX対照は、陽性であった。結合は、可溶性抗IL13抗体を添加することによって阻害され、相互作用が特異的であることを示した。IL13結合を更に検査するために、ELISAを設定し、そこで可溶性競合抗体を50μg/mL〜0.01μg/mLまで連続的に希釈した。対照抗体もまた含めた。
図12A及びBは、それぞれ6〜2 IgG pIX及び6〜2Fab pIXのIL13結合に及ぼす可溶性抗体競合の効果を示す。結合の阻害は、およそ0.1μg/mLのIC50により、両方の構築物について見られた。しかしながら、完全IgG pIX構築物については、阻害は、非常に高い競合物質濃度においてさえ不完全であり、あるレベルの非特異的な相互作用が存在することを示唆する。
【0076】
G.IL13及びIL17への完全IgG pIXファージ結合
第2の確証的な実験を行った。これは、抗IL17A抗体の完全IgGバージョンをクローニングすることによって行った。構築物をXL−1ブルー細胞に形質転換し、ファージを、上述のように産生した。ELISAを行って、
図13に示されるように、pIX上でのIL17 IgGの提示、並びにヒトIL17Amut6抗原へのその結合を確認した。各ELISA(FD捕捉、カッパ捕捉、CH2捕捉、CH3捕捉、IL13捕捉、及びIL17捕捉)について、ファージを単独で又は可溶性抗IL13 mAb若しくはA可溶性抗IL17A mAbと一緒にのいずれかで添加した。競合物質mAbの添加は、ELISAの特異性を示す。上記の
図12A及びBにおいて明白なように、IL17 IgGは、IL13 IgGよりも低いレベルではあるが、pIX上に提示される。これは、これらの構築物の間のFab発現レベルにおける差異と一致する(データは図示されず)。ファージ上の抗IL13 IgGは、IL17に結合せず、ファージ上の抗IL17 IgGは、IL13に結合しないことから、抗原結合の特異性を見ることができる。加えて、ファージの2つのタイプの各々の結合は、それらの可溶性mAb対応物によって阻害され得る。
【0077】
実施例X:pVIIと融合したFc含有タンパク質の提示
追加的に、pVIIファージミド系を用いて、Fc及びMIMETIBODY(商標)タンパク質がファージ表面上に提示され得ることを実証した。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
細菌膜からタンパク質のトランスロケーションを導くために、菌分泌シグナルをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、pelBのP6S変異型(配列番号1)及びompAのA11P変異型(配列番号3)から選択される、単離されたポリヌクレオチド。
[2]
エキソタンパク質コード配列に操作可能に連結され、前記エキソタンパク質が、前記細菌膜から分泌されることになる、上記[1]に記載の単離されたポリヌクレオチド。
[3]
前記エキソタンパク質が更に、pIII、pVII、pVIII、及びpIXから選択されるファージコートタンパク質をコードする配列に操作可能に連結され、そのようにして形成された融合タンパク質が、細菌膜から分泌されることになる、上記[2]に記載の単離されたポリヌクレオチド。
[4]
前記エキソタンパク質が、ペプチドを含むポリペプチド、抗体重鎖定常ドメイン、抗体重鎖、哺乳類受容体鎖、受容体細胞外ドメイン、フィブロネクチン様ドメイン、及びアンキリンリピートドメインからなる群から選択される、上記[3]に記載の単離されたポリヌクレオチド。
[5]
外因性タンパク質に由来するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結された、細菌分泌シグナルをコードする核酸配列を含むベクターであって、前記コードされた分泌シグナルが、pelBのP6S変異型(配列番号1)及びompAのA11P変異型(配列番号3)から選択され、前記分泌シグナルが、野生型分泌シグナルと比較して、前記細菌膜からトランスロケーションすることが判明するエキソタンパク質の割合を増強する、ベクター。
[6]
前記コードされた外因性タンパク質コード配列が更に、pIII、pVII、pVIII、及びpIXから選択される繊維状ファージコートタンパク質をコードする配列に融合される、上記[5]に記載のベクター。
[7]
ファージミドベクターである、上記[6]に記載のベクター。
[8]
ファージベクターである、上記[6]に記載のベクター。
[9]
突然変異体分泌シグナルに連結されたエキソタンパク質コード配列が、pVIIに融合され、突然変異体分泌シグナルに連結されたエキソタンパク質配列が、pIXに融合され、それによって、前記ベクターが宿主細胞中で複製されるとき、前記両方のエキソタンパク質が多重コピーとして前記ファージ粒子の表面上に存在するようにする、上記[8]に記載のベクター。
[10]
前記コードされたエキソタンパク質が、ペプチド、抗体重鎖定常ドメイン、抗体重鎖、哺乳類受容体鎖、受容体細胞外ドメイン、フィブロネクチン様ドメイン、及びアンキリンリピートドメインからなる群から選択される、上記[6]に記載のベクター。
[11]
誘導可能なプロモータを更に含む、上記[5]に記載のファージベクター。
[12]
前記誘導可能なプロモータが、lacプロモータ又はlacの突然変異体である、上記[11]に記載のファージベクター。
[13]
上記[3]に記載のエキソタンパク質に操作可能に連結された、分泌シグナルをコードするポリヌクレオチドを封入した繊維状ファージ粒子であって、前記ファージの表面上に前記エキソタンパク質を有する、繊維状ファージ粒子。
[14]
前記エキソタンパク質が、繊維状ファージpVII又はpIXタンパク質のアミノ末端に融合され、その上で、前記タンパク質が、繊維状ファージタンパク質の表面で発現されるとき、1つのエキソタンパク質内のシステイン残基が、前記繊維状ファージ粒子の表面上で発現された第2のエキソタンパク質上のシステイン残基に酸化的に結合されるようになり、機能性タンパク質構造を形成する、上記[13]に記載の繊維状ファージ粒子。
[15]
前記機能性タンパク質構造が、抗体Fc領域を含む、上記[14]に記載の繊維状ファージ粒子。
[16]
前記タンパク質構造の機能的活性が、FcRn結合である、上記[15]に記載の繊維状ファージ粒子。
[17]
上記[13]に記載の繊維状ファージを含む、細菌宿主細胞。
[18]
上記[17]に記載の繊維状ファージベクターを含む、細菌宿主細胞のファージライブラリ。
[19]
前記各ポリヌクレオチドが、アミノ酸置換を有するFc形成配列をコードする、上記[14]に記載のファージライブラリ。
[20]
前記Fc形成配列が更にリガンド結合ドメインを含む、前記核酸鎖である、上記[15]に記載のファージライブラリ。
[21]
前記リガンド結合ドメインが、受容体結合リガンド、受容体細胞外ドメイン、可変ドメイン及び定常ドメインを含む抗体Fabドメイン、並びに単鎖Fv構築物からなる群から選択される、上記[16]に記載のファージライブラリ。
[22]
前記Fabドメインが、前記結合ドメイン内の特異的残基において互いに異なる配列を含む、上記[17]に記載のファージライブラリ。
[23]
pelBのP6S変異型のためのコード配列を含むポリヌクレオチドを用いて、細菌宿主細胞中でエキソタンパク質を発現させる方法であって、前記エキソタンパク質が、前記細菌宿主細胞の増殖を支持する培地から回収可能である、方法。
[24]
上記[1]に記載の細菌分泌シグナルの変異型を含むポリヌクレオチドを用いて、細菌宿主細胞中でエキソタンパク質を発現させる方法であって、前記タンパク質が、繊維状ファージコートタンパク質に融合され、前記ファージ粒子の表面上で前記タンパク質を提示するファージの力価が、野生型細菌分泌シグナルが使用されるとき又は細菌分泌シグナルが使用されないときよりも高い、方法。
[25]
上記[14]に記載のライブラリから選択される配列を有するタンパク質変異型を含む、医薬組成物。