(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記筒状セラミックス体は、多孔質体からなる前記隔壁を有し、前記隔壁によって、流体の前記流路となる多数の前記セルが区画形成された前記ハニカム構造体である請求項1または2に記載の熱伝導部材。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0021】
図1に、本発明の熱伝導部材10を軸方向の一方の端面から見た図、
図2に、熱伝導部材10の斜視図を示す。熱伝導部材10は、筒状セラミックス体11と、筒状セラミックス体11の外周側に金属管12と、筒状セラミックス体11と金属管12との間に挟み込まれた中間材13と、を備える。筒状セラミックス体11は、一方の端面2から他方の端面2まで貫通し、加熱体である第一の流体が流通する流路を有する。中間材13は、少なくとも一部がヤング率150GPa以下である材質からなる。そして、筒状セラミックス体11の内部に第一の流体を、金属管12の外周面12h側に第一の流体よりも低温の第二の流体を流通させることにより、熱伝導部材10は、第一の流体と第二の流体との熱交換を行うことができる。熱伝導部材10は、筒状セラミックス体11の外周側に金属管12を備えるため、第一の流体と第二の流体とは、完全に分離されており、これらの流体は混じり合わない。また、熱伝導部材10は、金属管12を備えるため、設置場所や設置方法により加工することが容易であり、自由度が高い。熱伝導部材10は、金属管12によって筒状セラミックス体11を保護することができ外部からの衝撃にも強い。
【0022】
熱伝導部材10にヤング率150GPa以下である材質からなる中間材13を用いることにより、金属管12と筒状セラミックス体11との密着性を高めて、熱伝導性を向上させることができる。この場合、中間材13が、金属管12と筒状セラミックス体11との少なくとも一部に接触していることが、熱伝導部材10の熱伝導性を良好とするために好ましい。
【0023】
さらに、中間材13は、少なくとも一部の熱伝導率が1W/m・K以上であることが好ましい。中間材13の熱伝導率が1W/m・K以上であることにより、熱伝導部材10の熱伝導性を向上させることができる。
【0024】
中間材13としては、グラファイトシート、金属シート、ゲルシート、弾塑性流体等が挙げられる。金属シートを構成する金属としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)等が挙げられる。弾塑性流体とは、小さな力であれば、塑性変形せずに固体として振るまい(弾性率を有する)、大きな力を加えると自由に変形して流体のような変形をする材料であり、グリース等が例として挙げられる。中間材13として、密着性や熱伝導性等を考慮すると、グラファイトシートを用いることが好ましい。以下、中間材13として、グラファイトシートを例として説明する。
【0025】
金属管12と筒状セラミックス体11とを、グラファイトシートからなる中間材13を挟んだ状態で、例えば、焼きばめにより嵌合させることができる(後述する一体化の第一の方法)。金属管12と筒状セラミックス体11とを一体化することにより、第一の流体と第二の流体とが混ざり合うことを防止することができる。グラファイトシートからなる中間材13を挟んで焼きばめすることにより、金属管12と筒状セラミックス体11との接合部の使用時の常温〜150℃の環境において、グラファイトシートに圧がかかり、熱を伝達することができる。
【0026】
本明細書におけるグラファイトシートとは、膨張黒鉛を主成分とするグラファイトを圧延しシート状に加工したものや、高分子フィルムを熱分解して得られるシート状のものであり、黒鉛シート、カーボンシートと称されるものも含む。グラファイトシートは、厚み方向のヤング率が1GPa以下、厚み方向の熱伝導率が1W/m・K以上であることが好ましい。厚み方向の熱伝導率について、より好ましくは、3〜10W/m・Kである。また、面内方向の熱伝導率は、5〜1600W/m・Kが好ましく、100〜400W/m・Kがより好ましい。
【0027】
また、グラファイトシートのヤング率は、1MPa〜1GPaであることが好ましい。より好ましくは、5MPa〜500MPa、さらに好ましくは、10MPa〜200MPaである。ヤング率が1MPa以上であればグラファイトの密度が十分であり熱伝導性が良い。一方、500MPa以下である場合、薄いグラファイトシートでも焼きばめ時に十分弾性変形し、密着性や金属管12の応力緩和効果が得られる。
【0028】
グラファイトシートの厚みは、25μm〜1mmであることが好ましく、25μm〜500μmであることがより好ましく、50μm〜250μmであることがさらに好ましい。グラファイトシートは、薄くなるほど高価になる。また厚くなると、熱抵抗を生じる。この範囲のグラファイトシートを使用することにより、熱伝導性が良好となり、効率的に筒状セラミックス体11内の熱を金属管12の外側に排出できる。
【0029】
筒状セラミックス体11は、熱伝導率が100W/m・K以上であることが好ましい。より好ましくは、120〜300W/m・K、さらに好ましくは、150〜300W/m・Kである。この範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率的に筒状セラミックス体11内の熱を金属管12の外側に排出できる。
【0030】
なお、筒状セラミックス体11とは、セラミックスで筒状に形成され、軸方向の一方の端面2から他方の端面2まで貫通する流体の流路を有するものである。筒状とは、円筒状(円柱状)に限らず、軸(長手)方向に垂直な断面が楕円形状、円弧が複合されたオーバル形状、四角形、またはその他の多角形の、角柱状であってもよい。筒状セラミックス体11は、多孔質体からなる隔壁4を有し、隔壁4によって、流体の流路となる多数のセルが区画形成されたハニカム構造体1であることが好ましい。隔壁4を有することにより、筒状セラミックス体11の内部を流通する流体からの熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。
図1及び
図2は、多数のセルが形成されたハニカム構造体1を筒状セラミックス体11として用いた実施形態を示す。また、
図3には、隔壁4を有さず外周壁7のみで内部が中空のセラミックス管を筒状セラミックス体11として用いた実施形態を示す。
【0031】
筒状セラミックス体11は、耐熱性に優れるセラミックスを用いることが好ましく、特に伝熱性を考慮すると、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)が主成分であることが好ましい。なお、主成分とは、筒状セラミックス体11の50質量%以上が炭化珪素であることを意味する。
【0032】
但し、必ずしも筒状セラミックス体11の全体がSiC(炭化珪素)で構成されている必要はなく、SiC(炭化珪素)が本体中に含まれていれば良い。即ち、筒状セラミックス体11は、SiC(炭化珪素)を含むセラミックスからなるものであることが好ましい。
【0033】
なお、SiC(炭化珪素)であっても多孔体の場合は高い熱伝導率が得られないため、筒状セラミックス体11の作製過程でシリコンを含浸させて緻密体構造とすることが好ましい。緻密体構造にすることで高い熱伝導率が得られる。例えば、SiC(炭化珪素)の多孔体の場合、20W/m・K程度であるが、緻密体とすることにより、150W/m・K程度とすることができる。
【0034】
筒状セラミックス体11として、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、Si
3N
4、及びSiC等を採用することができるが、高い熱交換率を得るための緻密体構造とするためにSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを採用することができる。Si含浸SiCは、SiC粒子表面を金属珪素融体の凝固物が取り囲むとともに、金属珪素を介してSiCが一体に接合した構造を有するため、炭化珪素が酸素を含む雰囲気から遮断され、酸化から防止される。さらに、SiCは、熱伝導率が高く、放熱しやすいという特徴を有するが、Siを含浸するSiCは、高い熱伝導率や耐熱性を示しつつ、緻密に形成され、伝熱部材として十分な強度を示す。つまり、Si−SiC系(Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC)材料からなる筒状セラミックス体11は、耐熱性、耐熱衝撃性、耐酸化性をはじめ、酸やアルカリなどに対する耐蝕性に優れた特性を示すとともに、高熱伝導率を示す。
【0035】
筒状セラミックス体11を、隔壁4によって流路となる複数のセル3が区画形成されたハニカム構造体1として形成する場合、セル形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0036】
ハニカム構造体1のセル密度(即ち、単位断面積当たりのセルの数)については特に制限はなく、目的に応じて適宜設計すればよいが、25〜2000セル/平方インチ(4〜320セル/cm
2)の範囲であることが好ましい。セル密度を25セル/平方インチより大きくすると、隔壁4の強度、ひいてはハニカム構造体1自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。一方、セル密度を2000セル/平方インチ以下とすると、熱媒体が流れる際の圧力損失を小さくすることができる。
【0037】
また、ハニカム構造体1の1つ当たりのセル数は、1〜10,000が望ましく、200〜2,000が特に望ましい。セル数が多すぎるとハニカム自体が大きくなるため第一の流体側から第二の流体側までの熱伝導距離が長くなり、熱伝導ロスが大きくなり熱流束が小さくなる。またセル数が少ない時には第一の流体側の熱伝達面積が小さくなり第一の流体側の熱抵抗を下げることが出来ず熱流束が小さくなる。
【0038】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の厚さ(壁厚)についても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。壁厚を50μm〜2mmとすることが好ましく、60μm〜500μmとすることが更に好ましい。壁厚を50μm以上とすると、機械的強度が向上して衝撃や熱応力による破損を防止できる。一方、2mm以下とすると、ハニカム構造体側に占めるセル容積の割合が大きくなることにより流体の圧力損失が小さくなり、熱交換率を向上させることができる。
【0039】
ハニカム構造体1のセル3の隔壁4の密度は、0.5〜5g/cm
3であることが好ましい。0.5g/cm
3以上の場合、隔壁4の強度が十分であり、第一の流体が流路内を通り抜ける際に圧力により隔壁4が破損することを防止できる。また、5g/cm
3以下であると、ハニカム構造体1自体が重くなりすぎず、軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体1を強固なものとすることができる。また、熱伝導率を向上させる効果も得られる。
【0040】
熱交換器30(
図14参照)に流通させる第一の流体(高温側)が排ガスの場合、第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1のセル3内部の壁面には、触媒が担持されていることが好ましい。これは、排ガス浄化の役割に加えて、排ガス浄化の際に発生する反応熱(発熱反応)も熱交換することが可能になるためである。貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、亜鉛、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有すると良い。これらは金属、酸化物、及びそれ以外の化合物であっても良い。
【0041】
第一の流体(高温側)が通過するハニカム構造体1の第一流体流通部5のセル3の隔壁4に担持される触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましく、貴金属であれば0.1〜5g/Lであることが更に好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が十分に発現する。一方、400g/L以下とすると、圧力損失が大きくなりすぎず、製造コストの上昇も抑えることができる。
【0042】
金属管12としては、耐熱性、耐蝕性のあるものが好ましく、例えば、SUS管、銅管、真鍮管等を用いることができる。金属管12の外周面12h上を流通する第二の流体である冷却水の水温は120℃前後まで上昇しうるが、この時に熱膨張率の差により、筒状セラミックス体11と金属管12との間の圧力が抜けてしまわないように、金属管12の径を下記の式の範囲にすることが好ましい。すなわち、室温25℃での筒状セラミックス体11の外径をd、グラファイトシートの厚みをc、筒状セラミックス体11の熱膨張係数をα、金属管12の熱膨張係数をβ、焼きばめ温度を1000℃とすると、金属管12の内径Dは、
d+2×c−975×β×d<D<d+2×c−125×(β−α)×d
となるように設定することが好ましい。
【0043】
上記の金属管12の内径Dは、筒状セラミックス体11と金属管12との接合部で想定される常温〜150℃までの温度域で、締まりばめの圧力が確実にかかる範囲である。金属管12の内径Dをこの範囲とすることにより、必要以上に金属管12に引張応力が残らないようにすることができる。具体的には、例えば、筒状セラミックス体11の外径が42mm、筒状セラミックス体11の熱膨張係数αが4.0×10
−6、金属管12の熱膨張係数βが17×10
−6、グラファイトシートの厚みcが0.2mmである場合は、41.704mm<D<42.332mmである。
【0044】
(熱伝導部材の製造方法)
次に、本発明の熱伝導部材10の製造方法を説明する。まず、平均粒径の異なるSiC粉末を混ぜ合わせて、SiC粉末の混合物を調製する。このSiC粉末の混合物に、バインダー、水を混ぜ合わせ、ニーダーを用いて混練することにより、混練物を得る。この混練物を真空土練機に投入し、円柱状の坏土を作製する。
【0045】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形では、適当な形態の口金や治具を選択することにより、外周壁の形状や厚さ、隔壁の厚さ、セルの形状、セル密度などを所望のものにすることができる。口金は、摩耗し難い超硬合金で作られたものを用いることが好ましい。ハニカム成形体については、外周壁を円筒形状または四角柱形状とし、外周壁の内部を隔壁により四角形の格子状に区分された構造となるように形成する。また、これらの隔壁については、互いに直交する方向のそれぞれで等間隔に並行し、かつ、真っすぐに外周壁の内部を横切るように形成する。これにより、外周壁の内部の最外周部以外にあるセルの断面形状を正方形にすることができる。
【0046】
次に、押出成形により得たハニカム成形体の乾燥を行なう。まず、ハニカム成形体を電磁波加熱方式で乾燥し、続いて、外部加熱方式で乾燥を行なう。こうした二段階の乾燥により、乾燥前のハニカム成形体に含まれる全水分量の97%以上に相当する水分をハニカム成形体から除去する。
【0047】
次に、ハニカム成形体に対して窒素雰囲気で脱脂を行なう。さらに、こうした脱脂により得られたハニカム構造体の上に金属Siの塊を載せ、真空中または減圧の不活性ガス中で、焼成をする。この焼成中に、ハニカム構造体の上に載せた金属Siの塊を融解させ、外周壁7や隔壁4に金属Siを含浸させる。例えば、外周壁7や隔壁4の熱伝導率を100W/m・Kにする場合には、ハニカム構造体100質量部に対して70質量部の金属Siの塊を使用する。また、外周壁7や隔壁4の熱伝導率を150W/m・Kにする場合には、ハニカム構造体100質量部に対して80質量部の金属Siの塊を使用する。
【0048】
次に、上記のようにして製造したハニカム構造体1、中間材13、及び金属管12の一体化の方法について説明する。第一の方法は、まず、中間材13として用いるグラファイトシートをハニカム構造体1の外周壁7の外周面7hに巻き付ける。このとき、接着剤を用いて貼り付けてもよい。接着剤を用いることにより、一様にグラファイトシートを貼り付けることができる。接着剤は、十分に薄く良伝熱性であることが望ましい。また、焼きばめ後は締まりばめ状態となるため、接着は、全面接着でも部分接着でもよい。続いて金属管12を高周波加熱機で1000℃程度まで昇温させる。そして、ハニカム構造体を金属管12に挿入して焼きばめにより一体化し、熱伝導部材10を形成することができる。
【0049】
ハニカム構造体1、中間材13、及び金属管12の一体化の第二の方法について説明する。第二の方法は、金属板(平板)を用いて金属管12とする。まず、ハニカム構造体1の外周壁7の外周面7hにグラファイトシートを巻き付ける。次に、ハニカム構造体1に金属板(平板)を圧をかけつつ、巻き付けて締め付ける(
図4参照)。そしてハニカム構造体1に巻き付けられて円筒状になった金属板の端部12a同士を接合して金属管12とする。金属板の端部12a同士の接合としては、例えば、レーザー溶接を用いることができる。
【0050】
ハニカム構造体1、中間材13、及び金属管12の一体化の第三の方法について説明する。第三の方法は、熱間塑性加工法である。まず、ハニカム構造体1の外周壁7の外周面7hにグラファイトシートを巻き付ける。次に、ハニカム構造体1を金属管12の内部に設置する。金属管12の内径はハニカム構造体1の外周径に比べ十分に大きいものを使用する。続いて、金属管12のハニカム構造体1が設置されている領域を、高周波加熱装置等を用いて400〜1100℃程度まで昇温させる。金属管12を局所的に加熱しながら金属管両端部を引っ張ることで、金属管12が縮径する。金属管12とハニカム構造体1とが一体化した後に冷却することで、熱伝導部材10を形成することができる。
【0051】
本発明の熱伝導部材10は、筒状セラミックス体11とその外周側の金属管12との間に、低ヤング率のグラファイトシート等からなる中間材13を備えることにより、密着性が向上する。このため厚み方向(管の径方向)の熱伝導率を3W/m・K以上とすることができ、熱伝導性が良好である。また、長手(軸)方向の熱伝導率を250W/m・K以上とすることができ、熱伝導性も良好である。グラファイトシート等により、横滑りが可能なため、筒状セラミックス体11と金属管12間の熱膨張差による応力が発生しにくい。このため、実用上熱耐久性が十分である。
【0052】
図5は本発明の熱伝導部材10の他の実施形態を示す軸方向に平行な面で切断した断面図である。
図5に示すように、金属管12は、ハニカム構造体1の軸方向の長さよりも長い。このように構成すると、熱伝導部材10の設置場所や用途に応じて、金属管12の端部12aを加工しやすい。
【0053】
図6Aに一部にのみ中間材13が挟まれた実施形態の軸方向に平行な面で切断した断面図を示す。また、
図6Bに一部にのみ中間材13が挟まれた別の実施形態の軸方向に垂直な面で切断した断面図を示す。中間材13は、
図6A及び
図6Bに示すように、必ずしもハニカム構造体1の全体に備えられていなくてもよい。このような実施形態においても、熱応力緩和や熱伝導効率の向上の効果が得られる。また、中間材13は、網目状のものであってもよい。
【0054】
図7Aに、金属管12の内側にフィン12fを設けた実施形態を示す。また、
図7Bは、
図7Aの実施形態を軸方向に垂直な面で切断した断面図である。金属管12の内側の端部12aにフィン12fが設けられている。このように、金属管12にフィン12fを設けることにより、金属管の剛性を上げることができる。
【0055】
また、
図8Aに、金属管12の外側にフィン12fを設けた実施形態を示す。また、
図8Bは、
図8Aの実施形態を軸方向に垂直な面で切断した断面図である。金属管12の外側の軸方向のほぼ全長にわたってフィン12fが設けられている。このように、金属管12にフィン12fを設けることにより、金属管の剛性を上げることができる。
【0056】
図9Aは、金属管12の外側にフィン12fを設けた他の実施形態を示す模式図である。また、
図9Bは、
図9Aの実施形態を軸方向に垂直な面で切断した断面図である。フィン12fの形状は、
図8Bや
図9Bの実施形態に限定されない。
【0057】
図10Aは、金属管12に段部12dを設けた実施形態を示す軸方向に平行な面で切断した断面図である。また、
図10Bは、
図10Aの実施形態を示す軸方向に垂直な面で切断した断面図である。本実施形態では、段部12dは、内側に凹んだ形状に形成されている。このような形状の部位は、プレス製法により形成することができる。凹んだ部位を設けることで、金属管12の剛性を上げることができる。
図11のように、段部12dとして、金属管12に外側に出っ張った部位を形成してもよい。
【0058】
図12Aに金属管12の、ハニカム構造体1の端面2の近傍から端部12aまで段部12dが筒状に形成された実施形態を示す。本実施形態の段部12dは、ハニカム構造体1の端面2の近傍から金属管12の端部12aまで縮径とされており、段部12dが筒状(円筒状)に形成されている。このような段部12dを形成することにより、金属管12の応力を緩和することができる。
【0059】
図12Bにハニカム構造体1の端面2の近傍の金属管12に段部12dが円周状に形成された実施形態を示す。このような段部12dを形成することにより、金属管12の応力を緩和することができる。
【0060】
図12Cに金属管12の端部12aに段部12dが外側に出っ張って円周状に形成された実施形態を示す。このような段部12dを形成することにより、金属管12の応力を緩和することができる。
【0061】
図13Aに、ハニカム構造体1の外周壁7の軸方向のエッジを面取りした実施形態を示す。エッジの形状としては、C形状(C形状部7c)またはR形状(R形状部7r)が挙げられる。このようにエッジを面取りした形状に形成することにより、ハニカム構造体1のエッジの欠けを防止することができる。
【0062】
また、
図13Bに示すように、ハニカム構造体1の外周壁7のエッジにかかる部分の金属管12の内径を他の部分の内径よりも1.01倍以上あるように構成することも好ましい。このように構成することにより、ハニカム構造体1の外周壁7のエッジの欠けを防止することができる。
【0063】
図14に本発明の熱伝導部材10を含む熱交換器30の斜視図を示す。
図14に示すように、熱交換器30は、熱伝導部材10(ハニカム構造体1+中間材13+金属管12)と、熱伝導部材10を内部に含むケーシング21とによって形成されている。筒状セラミックス体11のハニカム構造体1のセル3が第一の流体が流通する第一流体流通部5となる。熱交換器30は、ハニカム構造体1のセル3内を、第二の流体よりも高温の第一の流体が流通するように構成されている。また、ケーシング21に第二の流体の入口22及び出口23が形成されており、第二の流体は、熱伝導部材10の金属管12の外周面12h上を流通する。
【0064】
つまり、ケーシング21の内側面24と金属管12の外周面12hとによって第二流体流通部6が形成されている。第二流体流通部6は、ケーシング21と金属管12の外周面12hとによって形成された第二の流体の流通部であり、第一流体流通部5とハニカム構造体1の隔壁4、中間材13、金属管12によって隔たれて熱伝導可能とされており、第一流体流通部5を流通する第一の流体の熱を隔壁4、中間材13、金属管12を介して受け取り、流通する第二の流体である被加熱体へ熱を伝達する。第一の流体と第二の流体とは、完全に分離されており、これらの流体は混じり合わないように構成されている。
【0065】
第一流体流通部5は、ハニカム構造として形成されており、ハニカム構造の場合、流体がセル3の中を通り抜ける時には、流体は隔壁4により別のセル3に流れ込むことが出来ず、ハニカム構造体1の入口から出口へと直線的に流体が進む。また、本発明の熱交換器30内のハニカム構造体1は、目封止されておらず、流体の伝熱面積が増し熱交換器30のサイズを小さくすることができる。これにより、熱交換器30の単位体積あたりの伝熱量を大きくすることができる。さらに、ハニカム構造体1に目封止部の形成やスリットの形成等の加工を施すことが不要なため、熱交換器30は、製造コストを低減することができる。
【0066】
熱交換器30は、第二の流体よりも高温である第一の流体を流通させ、第一の流体から第二の流体へ熱伝導するようにすることが好ましい。第一の流体として気体を流通させ、第二の流体として液体を流通させると、第一の流体と第二の流体の熱交換を効率よく行うことができる。つまり、本発明の熱交換器30は、気体/液体熱交換器として適用することができる。
【0067】
以上のような構成の本発明の熱交換器30に流通させる第一の流体である加熱体としては、熱を有する媒体であれば、気体、液体等、特に限定されない。例えば、気体であれば自動車の排ガス等が挙げられる。また、加熱体から熱を奪う(熱交換する)第二の流体である被加熱体は、加熱体よりも低い温度であれば、媒体としては、気体、液体等、特に限定されない。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
(坏土の作製)
まず、平均粒径45μmのSiC粉末70質量%と、平均粒径35μmのSiC粉末10重量%と、平均粒径5μmのSiC粉末20重量%と、を混ぜ合わせて、SiC粉末の混合物を調製した。このSiC粉末の混合物100質量部に、バインダー4質量部、水を混ぜ合わせ、ニーダーを用いて混練することにより、混練物を得た。この混練物を真空土練機に投入し、円柱状の坏土を作製した。
【0070】
(押出成形)
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成した。押出成形では、適当な形態の口金や治具を選択することにより、外周壁の形状や厚さ、隔壁の厚さ、セルの形状、セル密度などを所望のものにした。口金は、摩耗し難い超硬合金で作られたものを用いた。ハニカム成形体については、外周壁を円筒形状または中空の四角柱形状とし、外周壁の内部を隔壁により四角形の格子状に区分された構造となるように形成した。また、これらの隔壁については、互いに直交する方向のそれぞれで等間隔に並行し、かつ、真っすぐに外周壁の内部を横切るように形成した。これにより、外周壁の内部の最外周部以外にあるセルの断面形状を正方形にした。
【0071】
(乾燥)
次に、押出成形により得たハニカム成形体の乾燥を行った。まず、ハニカム成形体を電磁波加熱方式で乾燥し、続いて、外部加熱方式で乾燥を行った。こうした二段階の乾燥により、乾燥前のハニカム成形体に含まれる全水分量の97%以上に相当する水分をハニカム成形体から除去した。
【0072】
(脱脂、Si金属の含浸および焼成)
次に、ハニカム成形体に対して窒素雰囲気で500℃、5時間の脱脂を行った。さらに、こうした脱脂により得られたハニカム構造体の上に金属Siの塊を載せ、真空中または減圧の不活性ガス中で、1450℃、4時間、焼成をした。この焼成中に、ハニカム構造体の上に載せた金属Siの塊を融解させ、外周壁や隔壁に金属Siを含浸させた。外周壁や隔壁の熱伝導率を150W/m・Kにする場合には、ハニカム構造体100質量部に対して80質量部の金属Siの塊を使用した。
【0073】
以上のようにして、材質が炭化珪素、本体サイズが直径(外径)40mm、長さ80mmの円柱状(筒状)のハニカム構造体1を製造した。すなわち、筒状セラミックス体11として、ハニカム構造体1を用いた。ハニカム構造体1のセル密度は23.3セル/cm
2、隔壁4の厚さ(壁厚)は0.3mm、ハニカム構造体1の熱伝導率は150kW/m・Kであった。
【0074】
次に、ハニカム構造体1の外周面7hにアクリル系粘着材付きグラファイトシート(大塚電機 HT−705A)を貼り付けた。グラファイトシートは、熱伝導率が厚み方向で6W/m・K、ヤング率が0.1GPaのものを用いた。今回は粘着材付きグラファイトシートを用いたが、別途伝熱性接着剤を用いて接着しても良い。
【0075】
続いて金属管12を高周波加熱機で1000℃まで昇温させ、ハニカム構造体1を金属管12に挿入して、焼きばめた。なお、金属管12は、使用時に圧力が抜けてしまわないように以下の径のものを用いた。すなわち、室温25℃での筒状セラミックス体11(ハニカム構造体1)の外径をd、グラファイトシートの厚みをc、筒状セラミックス体11の熱膨張係数をα、金属管12の熱膨張係数をβとしたとき、金属管の内径Dが、
d+2×c−975×β×d<D<d+2×c−125×(β−α)×d
となるものを用いた。
【0076】
具体的には、筒状セラミックス体11の外径が42mm、筒状セラミックス体11の熱膨張係数αが4×10
−6/℃、金属管12の熱膨張係数βが17×10
−6/℃、グラファイトシートの厚みcが0.2mmであり、41.704mm<D<42.332mmとした。本実施例において、金属管12は、SUS304薄肉管を用いた。
【0077】
(参考例
1)
比較対象(基準試料)として金属管12で被覆しない筒状セラミックス体11(ハニカム構造体1)単体を用意した。筒状セラミックス体11は、実施例1と同じものである。
【0078】
(比較例1)
実施例1と同様にして、グラファイトシートの中間材13を有しない筒状セラミックス体11(ハニカム構造体1)と金属管12とからなる熱伝導部材を作製した。
【0079】
(伝熱効率試験)
実施例1、参考例
1、比較例1の試料について、300℃に加熱した第一の流体を熱伝導部材10のハニカム構造体1のセル3中を通過させたときの第二の流体への伝熱効率を測定した。具体的には、以下のように行った。ハニカム構造体1の第一流体流通部5に窒素ガスを流し、ケーシング21内の第二流体流通部6に(冷却)水を流した。第一の流体、第二の流体のハニカム構造体1への入口温度、流量は全て同一条件とした。第一の流体の、300℃の窒素ガス(N
2)を、ハニカム構造体1に対する流量を7.6L/sとして流した。また、第二の流体の(冷却)水を、ハニカム構造体1に対する流量を10L/minとして流した。実施例1は、第一の流体の流路となる熱伝導部材10の外周側に第二の流体の流路があるものを用いたものである(
図14参照)。
【0080】
(試験結果)
表1に伝熱効率を示す。伝熱効率(%)は、第一の流体(窒素ガス)及び第二の流体(水)のΔT℃(ハニカム構造体1の出口温度−入口温度)から其々エネルギー量を算出し、式1で計算した。
(式1) 伝熱効率(%)=(第一の流体(ガス)の入口温度−第一の流体(ガス)出口温度)/(第一の流体(ガス)の入口温度−第二の流体(冷却水)の入口温度)
【0081】
【表1】
【0082】
筒状セラミックス体11単体(参考例
1)に対し、グラファイトシートなしの熱伝導部材(比較例1)は、伝熱効率が5.0%低下しているが、グラファイトシートを挟むことにより(実施例1)、2.6%の低下に抑えられた。これにより、グラファイトシートによって熱的な密着性の向上が確認されたといえる。つまり、筒状セラミックス体11を金属管で被覆する場合、グラファイトシートを挟み込むことにより、熱的な結合状態を向上させることができる。
【0083】
(実施例1〜
4、参考例
1〜6、比較例1,2)
さらに他の中間材13についても同様の伝熱効率試験を行い、伝熱効率を求めた。また、伝熱効率試験の後に、筒状セラミックス体11にクラックが発生しているか否かを調べた。表2に示す。表2の実施例1、参考例
1、比較例1は、表1と同じものである。参考例
1と比較例1以外は、筒状セラミックス体11+中間材13+金属管12である。参考例
1は、筒状セラミックス体11単体、比較例1は、筒状セラミックス体11+金属管12で、中間材13無しである。
【0084】
【表2】
【0085】
実施例1〜
4、参考例2〜6では、伝熱効率が中間材13のない比較例1よりも良かった。また、筒状セラミックス体11にクラックは発生しなかった。比較例2は、中間材13としてSUS304を用いたが、ヤング率が197GPaであり、伝熱効率は良くなかった。