特許第5955788号(P5955788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955788
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】消去可能なトナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20160707BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20160707BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   G03G9/08 391
   G03G9/08 361
   G03G9/08 365
   G03G9/08 321
   G03G9/08 381
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-6439(P2013-6439)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-137494(P2014-137494A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2013年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝安
(72)【発明者】
【氏名】原 誉史
(72)【発明者】
【氏名】生田 真大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛司
(72)【発明者】
【氏名】宇土 基成
(72)【発明者】
【氏名】武田 和久
【審査官】 高松 大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−076778(JP,A)
【文献】 特開2006−317715(JP,A)
【文献】 特開2010−191430(JP,A)
【文献】 特開2011−113094(JP,A)
【文献】 特開2009−300991(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0209839(US,A1)
【文献】 特開2011−232758(JP,A)
【文献】 特開2011−138132(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0123919(US,A1)
【文献】 特開2011−232750(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0262850(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0123916(US,A1)
【文献】 特開2011−113090(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02325698(EP,A1)
【文献】 特開2011−158901(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0183248(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/087
G03G 9/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤、および変色温度調整剤を含む色可能なトナーであって、
示差熱走査型熱量測定による1回目の測定時の前記バインダー樹脂の吸熱ピーク温度Tgおよび前記変色温度調整剤の吸熱ピーク温度Thが、
Tg<Th、且つ、Th−Tg>25℃
を満たし、前記バインダー樹脂と架橋する反応性高分子との架橋反応成分を含有することを特徴とする消色可能なトナー。
【請求項2】
前記消色可能なトナーのフローテスター測定による2mmオフセット温度Tm、および前記変色温度調整剤の吸熱ピーク温度Thが、Tm<Thであることを特徴とする請求項1に記載の消色可能なトナー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の消色可能なトナーを充填していることを特徴とするトナーカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電子写真法、静電印刷法等における静電荷像、磁気潜像を現像するためのトナーに関し、特に消色可能なトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスの情報環境において、コンピューター、ソフト、ネットワークの普及により、情報処理の迅速化、共有化が可能となった。本来情報の電子化は、情報の保存、蓄積、検索等には優れているが、情報の表示(特に一覧性)、伝達には紙媒体に優位性があり、情報のデジタル化が進むにつれて、紙の使用量が増加しているのが実情である。一方、CO排出に代表される消費エネルギーの削減は各分野で急務であり、情報の一次的な表示、伝達に使用している紙媒体をリサイクルできれば、消費エネルギーの削減に大きく貢献できる。
【0003】
このような従来技術として、熱により消去可能なトナーを用いて紙上に画像形成、定着を行い、定着温度より高い温度により消色することで紙をリサイクルするという技術がある。しかしながら、上記した消去可能なトナーは、呈色剤、顕色剤、消色剤等の複数の成分を固層で取り扱うため、発色・消色の反応が迅速かつ十分でなく、また、消色の際の熱履歴によって、紙上のトナー成分が分解することによる消去跡が目立つという欠点がある。
【0004】
また、温度ヒステリシス特性を持った色材を用いた熱により消去可能なトナーが開示されているが、トナーの製造時や、画像定着時に消色してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3457538号明細書
【特許文献2】特開2009−300991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、迅速な消去が可能で、消去跡が目立たず、またトナー製造後も発色状態を保ち、且つ定着時に消色しないトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の消色可能なトナーは、バインダー樹脂、電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤、および変色温度調整剤を含む色可能なトナーであって、示差熱走査型熱量測定による1回目の測定時に上記バインダー樹脂の吸熱ピーク温度Tgおよび上記変色温度調整剤の吸熱ピーク温度Thが、Tg<Th、且つ、Th−Tg>25℃を満たし、上記バインダー樹脂と架橋する反応性高分子との架橋反応成分を含有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のトナーのDSC測定による吸熱ピーク温度を説明するための模式図である。
図2】本実施形態のトナーを適用した画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本実施形態の消色可能なトナーは、バインダー樹脂、電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤、および変色温度調整剤を含む色可能なトナーであって、示差熱走査型熱量測定による1回目の測定時に上記バインダー樹脂の吸熱ピーク温度Tgおよび上記変色温度調整剤の吸熱ピーク温度Thが、Tg<Th、且つ、Th−Tg>25℃を満たし、上記バインダー樹脂と架橋する反応性高分子との架橋反応成分を含有することを特徴としている。
【0011】
本実施形態では、消色可能なトナーのDSC測定におけるピーク温度に着目し、DSC1回目の測定時のバインダー樹脂由来のピーク温度Tgが、1回目の測定時の変色温度調製剤のピーク温度Thより低く、且つ、その差を25℃より大きくすることにより、トナー製造後も発色状態を保ち、且つ定着時に消色しないトナーとすることができる。
【0012】
図1は、本実施形態の消色可能なトナーのDSC測定による1回目の測定時の吸熱ピークを模式的に示した図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の消色可能なトナーは、バインダー樹脂に由来する吸熱ピークP1、変色温度調整剤の吸熱ピークP2、および離型剤に由来する吸熱ピークP3が現れている。これらピークP1、P2の温度をそれぞれ吸熱ピーク温度TgとThとしている。
【0014】
バインダー樹脂の吸熱ピーク温度Tgについては、本来2回目の測定時の吸熱ピークから求めるが、特にバインダー樹脂に非晶性の樹脂を用いた場合に、1回目と2回目の測定時の吸熱ピークが変動してしまう。具体的には、1回目の測定時のバインダー樹脂由来のピーク温度は、2回目の吸熱ピーク温度より高めの温度となる傾向がある。さらに、変色温度調整剤の吸熱ピークは、その特性上2回目の測定時には現れない場合がある。本実施形態では、DSC測定の1回目の測定時のバインダー樹脂由来の吸熱ピーク温度と変色温度調整剤由来の吸熱ピーク温度の関係で規定している。
【0015】
(電子供与性呈色剤)
電子供与性呈色剤は、文字や図形などを表示する色素の前駆体化合物である。電子供与性呈色剤としては、主にロイコ染料を用いることができる。ロイコ染料とは、後述する電子受容性顕色剤により発色することが可能な電子供与性の化合物である。例えばジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類が挙げられる。
【0016】
具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−[2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル]−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3,6−ジフェニルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンズ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンズ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンズ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン]−3’−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン]−3’−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−、スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン]−3’−オン,2−ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−、スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕−3’−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−4−メチル−、スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1’(3’H)イソベンゾフラン]−3’−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−フェニル、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等がある。さらに、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。これらは、単独で、又は2種以上混合して使用してもよい。
【0017】
(電子受容性顕色剤)
電子受容性顕色剤は、電子供与性呈色剤にプロトンを与える電子受容性化合物である。例えば、フェノール類、フェノール金属塩類、カルボン酸金属塩類、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、ベンゾフェノン類、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類、モノフェノール類、ポリフェノール類、1,2,3−トリアゾール及びその誘導体等があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等、さらにそれらの金属塩が挙げられる。
【0018】
具体的には、フェノール、o−クレゾール、t−ブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ジヒドロキシ安息香酸またはそのエステル、例えば2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル、レゾルシン、没食子酸、没食子酸ドデシル、没食子酸エチル、没食子酸ブチル、没食子酸プロピル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,6−ジヒドロキシアセトフェノン、3,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ビフェノール、4,4’−ビフェノール、4−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4−[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,6−ビス[(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,2,3−ベンゼントリオール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(ベンゼン−1,2,3−トリオール)]、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)ビス(1,2−ベンゼンジオール)]、4,4’,4’’−エチリデントリスフェノール、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレントリス−p−クレゾール等がある。これらは、単独で、又は2種以上混合して使用してもよい。
【0019】
(変色温度調整剤)
本実施形態に用いられる変色温度調整剤は、電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤、変色温度調整剤の3成分系において、熱により電子供与性呈色剤と電子受容性顕色剤による発色反応を阻害し、無色にすることが可能な化合物である。
【0020】
このような変色温度調整剤は、特に、特開昭60−264285、特開2005−1369、特開2008−280523等で公知である変色温度調整剤の温度ヒステリシスを利用した発色消色機構が、瞬時消去性において優れている。この発色した3成分系の混合物を、特定の温度(消色温度)以上に加熱すると、消色化させることができる。さらに、消色した混合物を消色温度以下の温度に冷却しても消色状態が維持される。さらに温度を下げると特定の温度(復色温度)以下において電子供与性呈色剤と電子受容性顕色剤による発色反応が再度復活し、発色状態に戻るという可逆的な発色消色反応を起こすことが可能である。特に、本実施形態で使用する変色温度調整剤は、消色温度が室温より高く、且つ復色温度が室温より低い関係を満たすことが好ましい。
【0021】
このような温度ヒステリシスを引き起こすことが可能な変色温度調整剤は、例えばアルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。特にエステル類が良い。
【0022】
具体的には、置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、脂肪酸と分岐脂肪族アルコールのエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上混合して使用しても良い。
【0023】
本実施形態において、発色消色作用を向上させるために電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤、および変色温度調整剤を含むコア成分にシェル成分によるカプセル化を行うのが好ましい。カプセル化することにより、発色消色作用が向上する。
【0024】
カプセル化の方法としては、界面重合法、コアセルベーション法、In−Situ重合法、液中乾燥法、液中硬化被膜法等がある。特にメラミン樹脂をシェル成分として使用するIn−Situ重合法、ウレタン樹脂をシェル成分として使用する界面重合法が好ましい。In−Situ重合法の場合、先ず、電子供与性呈色剤、電子受容性顕色剤、および変色温度調整剤を溶解混合し、水溶性高分子または界面活性剤水溶液中に乳化させる。その後、メラミンホルマリンプレポリマー水溶液を添加し、加熱し重合することによりカプセル化することができる。界面重合法の場合は、上記の3成分と多価のイソシアネートプレポリマーを溶解混合し、水溶性高分子または界面活性剤水溶液中に乳化させる。その後、ジアミンまたはジオール等の多価塩基を添加し、加熱重合することによりカプセル化することができる。
【0025】
(バインダー樹脂)
本実施形態においてバインダーとして用いる樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応を経て重縮合して得られるポリエステル系樹脂が好ましい。スチレン系樹脂では一般にガラス転移温度がポリエステル系樹脂に比較して高いため、低温定着の観点で不利となる。
【0026】
本実施形態に用いられるポリエステル樹脂は、非晶性、結晶性のいずれも使用することができ、また、組成の異なる2種以上のポリエステル樹脂を混合して使用してもよい。
【0027】
本実施形態に用いられるポリエステル樹脂の酸成分としては、例えばテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ピメリン酸、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族カルボン酸等が挙げられる。
【0028】
また、アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等のエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。また、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)やグリセリン等の3価以上の多価のカルボン酸や多価のアルコール成分を用いて、上記のポリエステル成分を架橋構造にしてもよい。これらは組成の異なる2種類以上のポリエステル樹脂を混合して使用してもよい。
【0029】
バインダー樹脂のガラス転移温度は45℃〜70℃の範囲が好ましい。ガラス転移温度が45℃より低いと、トナーの耐熱保存性が悪化し、また消去時の樹脂の光沢が目立つ。一方、ガラス転移点が70℃より高いと、低温定着性が悪化し、また加熱時の消去性が劣る。より好ましくは50℃〜65℃の範囲である。
【0030】
(離型剤)
本実施形態に用いられる離型剤としては、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスおよびそれらの変性物、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、ライスワックス等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゲソライト、セレシン等の鉱物系ワックス、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド、機能性合成ワックス、シリコーン系ワックス等が挙げられる。
【0031】
特に、アルコール成分とカルボン酸成分からなる成分のエステル結合を持つものが好ましい。アルコール成分としては高級アルコール、カルボン酸成分としては直鎖アルキル基を持つ飽和脂肪酸、モノエン酸、ポリエン酸等の不飽和脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。また不飽和多価カルボン酸としてマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等が挙げられる。またこれらの無水物でも良い。
【0032】
離型剤の軟化点は、低温定着性の観点から50℃〜120℃が好ましく、60℃〜110℃がより好ましい。
【0033】
(反応性高分子)
本実施形態のバインダー樹脂を架橋する能力を有する反応性高分子を用いても良い。反応性高分子を添加することにより、色材微粒子をトナー中に完全に取り込むことが可能となり、画像形成した際の画像濃度(ID)の改善やカブリ等の画像欠陥が改善される。
【0034】
このような反応性高分子としては、例えばオキサゾリン基を有する反応性高分子がある。本実施形態では、水系で製造するために反応性高分子は水溶性であることが好ましい。具体的には、例えばエポクロスWS−500、エポクロスWS−700(いずれも商品名、日本触媒社製)等が挙げられる。また、水溶性の他の反応性高分子として、エポキシ基を有する化合物を挙げることができる。具体的には、例えばデナコールEX313,314,421,512,521(いずれも商品名、ナガセケムテック社製)等を挙げることができる。これらエポキシ基を有する化合物は、バインダー樹脂がカルボキシル基を有する樹脂(酸価を持つポリエステル系やポリスチレン系樹脂)の場合、単独で用いてもよい。またはアミノ基やヒドロキシル基を有する樹脂を加えてもよい。そのほかにはカルボジイミド基を有する化合物が挙げられる。カルボジイミド当量が300〜800程度のポリカルボジイミド樹脂が好ましい。例えばSV−02,V−02,V−02−L2,V−04(いずれも商品名、日清紡ケミカル社製)等が挙げられる。
【0035】
(帯電制御剤)
本実施形態においては、摩擦帯電電荷量を制御するための帯電制御剤などを配合しても良い。帯電制御剤としては、含金属アゾ化合物が用いられ、金属元素が鉄、コバルト、クロムの錯体、錯塩、あるいはその混合物が好ましい。また、含金属サリチル酸誘導体化合物も用いられ、金属元素がジルコニウム、亜鉛、クロム、ボロンの錯体、錯塩、あるいはその混合物が好ましい。
【0036】
(外添剤)
本実施例においては、トナー粒子に対して流動性や帯電性を調整するために、トナー粒子に対して0.01〜20重量%の無機微粒子を外添混合してもよい。このような無機微粒子としてはシリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム、酸化錫等が挙げられる。これら無機微粒子は、単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、無機微粒子は疎水化剤で表面処理されたものを使用することが環境安定性向上の観点から好ましい。また、このような無機微粒子以外に1μm以下の樹脂微粒子をクリーニング性向上のために外添してもよい。
【0037】
(トナー製法)
本実施形態の消色可能なトナーは、トナー製造時に消色しない製法であれば、特に制限されないが、例えば従来から用いられる混練粉砕法では、一般的な混練時の混練温度が、本実施形態のトナーに含有される色材の消色温度より高い。このため、一般的な混練温度では、混練時に消色してしまう。本実施形態では、トナー成分の微粒化物を製造し、それを凝集融着法にて所望のトナー粒径にする、所謂ケミカル製法で行うのが好ましい。
【0038】
ケミカル製法において、トナー粒子を凝集した後、融着処理を行う。融着処理は、トナー表面を平滑化しトナー円形度を上げるために行うものである。融着温度Tfは、DSC測定における1回目のバインダー樹脂由来の吸熱ピーク温度Tg、DSC測定における1回目の変色温度調整剤由来の吸熱ピーク温度Thとの関係において、下記式(1)を満たすことが好ましい。
【0039】
Tg−5<Tf<Th (1)
融着温度Tfが、DSC測定における1回目のバインダー樹脂由来の吸熱ピーク温度Tgより5℃以上低い場合には、凝集したトナー粒子が融着しにくくなる。一方、融着温度TfがDSC測定における1回目の変色温度調整剤の吸熱ピーク温度Th以上である場合には、融着処理中に色材が消色してしまう。
【0040】
(画像定着)
一般に、画像形成後のトナーを定着させる定着温度は、バインダー樹脂のガラス転移点より高いだけでは十分でなく、トナーの熔融温度Tm近傍である必要がある。本実施形態では、定着時に画像を消色させないため、トナーの熔融温度Tmは、消色温度Thより低くする必要がある。
【0041】
なお、熔融温度Tm(2mmオフセット温度)は、フローテスター測定により荷重10kg、オリフィス径1mmで30℃から2.5℃/minで昇温し、トナーの溶融物が2mm流出したところの温度とした。
【0042】
このようにして得られた本実施形態にかかる消色可能なトナーは、例えばトナーカートリッジに収められ、加熱により定着するシステムを備えたMFP(Multi-Functional Peripheral)等の画像形成装置に装着されて電子写真法による画像形成に使用される。
【0043】
また、本実施形態にかかるトナーは、定着温度よりも高い消去温度にて消色するシステムに使用される。
【0044】
以下に、本実施形態にかかる消色可能なトナーを適用した画像形成装置の一例について図2を参照して詳細に説明する。
【0045】
図2は、本実施形態にかかる消色可能なトナーを適用した電子写真方式の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0046】
図2に示すように、画像形成装置1は、上面部に原稿載置台2を備える。原稿載置台2の上部側に自動原稿搬送装置3を備え、下部側に原稿載置台2上に置かれた原稿、または自動原稿搬送装置3によって送られる原稿を露光するスキャナ4を備える。スキャナ4は原稿に光を照射する光源5と、原稿から反射される光を所定方向に反射させる第1の反射ミラー6と第1の反射ミラー6から反射される光を順次反射させる第2及び第3の反射ミラー7,8と、第3の反射ミラー8から反射される光を受光する受光素子9を備える。
【0047】
画像形成装置1内の中央部には画像形成部10を備える。画像形成部10は、像担持体として矢印m方向に回転自在な感光体ドラム11を有する。感光体ドラム11は、表面に有機光導電体(OPC)を有し、所定の周速度、例えば136m/s、で回転する。感光体ドラム11の周囲には、その回転方向に沿って順次、感光体ドラム11の表面を帯電する帯電装置12、感光体ドラム11の表面を画像露光するレーザー露光ユニット13、感光体ドラム11上の静電潜像へ本実施形態にかかる消色可能なトナーを供給する現像装置14、感光体ドラム11上のトナー像を用紙等の被転写体に転写させる転写ローラ15、感光体ドラム11上に残留した転写残トナーを除去、回収するクリーニング装置16、及び感光体ドラム11を除電する除電ランプ17を備える。
【0048】
現像装置14は、現像ローラ14aを備える容器14bと、容器14b内のトナー及びキャリアを攪拌搬送するミキサー14cを備える。トナーは、キャリアと共に攪拌搬送されながら現像ローラ14aに供給される。現像ローラ14aは、感光体ドラム11上の静電潜像にトナーを供給する。
【0049】
なお、クリーニング装置16で回収された使用済みトナーを現像装置14に補給して再度使用するリサイクル機構を備えていてもよい。この場合、現像装置14とクリーニング装置16はリサイクル機構を介して接続している。
【0050】
画像形成部10の上方部にはトナーカートリッジ18を備える。トナーカートリッジ18は、トナーを収容する容器18aと、容器18a内のトナーを現像装置14に供給するトナー供給口18bと、容器18a内のトナーを攪拌、トナー供給口18bへ搬送する攪拌部材18cを有する。トナーカートリッジ18は、画像形成装置1本体に着脱自在であり、トナー供給口18bはトナーカートリッジ18を画像形成装置1にセットすることで現像装置14と接続する。トナーカートリッジ18は、トナーカートリッジ18に充填されているトナーを現像装置14へ供給する。トナーの供給は、現像装置14内のトナー濃度に応じて適宜なされる。
【0051】
画像形成装置1内の下部側には給紙カセット19,20を備える。これら給紙カセット19,20から用紙が送り出される。これらの用紙は搬送系21を介して上方へ搬送される。搬送系21は搬送ローラ対22、レジストローラ対23、定着装置24の下流に位置する排紙ローラ対25を有する。また、これら用紙の両面への転写を行うための再搬送装置26を備える。
【0052】
定着装置24は、ヒートローラ24aと、無端回動する加圧ベルト24bを有する。加圧ベルト24bは、用紙搬送方向上流側に位置するベルトヒートローラ24cと、用紙搬送方向下流側に位置する加圧ローラ24dとテンションローラ24eの周りに巻き掛けられて張架されている。加圧ベルト24bは、ベルトヒートローラ24cと加圧ローラ24dとの間でヒートローラ24aの外周面に所定範囲にわたり当接し、ニップを形成する。加圧ベルト24bの内側に配置した加圧パットホルダー24fには加圧パッド24gが保持され、加圧パッド24gをニップの中央部で加圧ベルト24bをヒートローラ24aに加圧接触させている。ヒートローラ24aおよびベルトヒートローラ24cは、内部に加熱源として、例えばハロゲンランプを備える。ヒートローラ24aおよびベルトヒートローラ24cの表面温度は、それぞれサーミスタ24hにより検知され、所定の温度となるように制御されている。
【0053】
画像形成時には、原稿載置台2上の原稿に光源5から光が照射される。この光は原稿から反射され、第1乃至第3の反射ミラー6乃至8を介して受光素子9に受光されて原稿画像が読み取られる。この読取情報に基づいてレーザー露光ユニット13からレーザー光13aが、予め帯電装置12により負極に帯電された感光体ドラム11の表面に照射される。これにより、原稿の画像部分に対応する領域で感光体ドラム11の表面電位が画像の濃度に応じて0に近づき、静電潜像が形成される。この静電潜像は感光体ドラム11の回転により現像装置13に対向され、この位置でキャリアを介して供給されるトナーを吸着してトナー像(可視像)となる。なお、レーザー露光ユニット13は、原稿載置台2上の原稿からの読取情報の他、画像形成装置1と無線、或いは有線で接続されたパソコン等から出力される画像情報に基づいてレーザー光13aを照射し静電潜像を形成することもできる。
【0054】
給紙カセット19,20から供給された用紙は、レジストローラ23で整位されたのちに感光体ドラム11と転写ローラ15間に送り込まれ、感光体ドラム11上のトナー像が転写される。トナー像が転写された用紙は、定着装置24へ搬送され、ニップを通過する際に加圧されるとともに加熱されて画像が用紙に定着される。定着後、用紙は排紙ローラ対25を介して排紙トレイ27上に排出される。
【0055】
一方、用紙に転写されずに感光体ドラム11上に残留した転写残トナーは、クリーニング装置16により除去される。感光体ドラム11は、転写残トナー除去後、除電ランプ17により除電される。
【0056】
上記した現像により現像装置14内のトナーが消費されると、トナーカートリッジ18から本実施形態にかかる消色可能なトナーが補給される。また、トナーリサイクル機構を有する場合には、除去された転写残トナーは、クリーニング装置16で回収されたのち、使用済みトナーとして現像装置14へ戻されて再利用される。
【実施例】
【0057】
以下に具体例を示して本実施形態についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明において、「%」および「部」とあるのは、特に断りが無い限り全て重量基準である。
【0058】
[色材の製造]
(色材A)
ロイコ染料として3−(4−ジエチルアミノ−2−ヘキシルオキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド2部、顕色剤として1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4部、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)n−デカン4部、変色温度調整剤として1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル50部からなる成分を均一に加温溶解し、カプセル化剤として芳香族多価イソシアネートプレポリマー30部、酢酸エチル40部を混合した。
【0059】
得られた溶液を8%ポリビニルアルコール水溶液300部中に乳化分散し、90℃で1時間攪拌を続けた後、反応剤として水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に6時間攪拌を続けてカプセル粒子を得た。体積中位径は3μmであった。また、完全消色温度は86℃であった。
【0060】
なお、完全消色温度とは、画像濃度(ID)が0.10以下になる温度である。
【0061】
(色材B)
色材Aの変色温度調整剤として加えた1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステルに代えて、スペリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステルとしたこと以外は色材Aと同様にして製造した。体積中位径は3μmであった。また、完全消色温度は97℃であった。
【0062】
(色材C)
色材Aの変色温度調整剤として加えた1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステルに代えて、1,18−オクタデカンジカルボン酸と2−[4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル]エタノールとのジエステルとしたこと以外は色材Aと同様にして製造した。体積中位径は3μmであった。また、完全消色温度は68℃であった。
【0063】
[バインダー樹脂の製造]
(非晶性ポリエステル樹脂A)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン53.1部、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン21.1部、フマル酸22.6部、アジピン酸3.2部、t−ブチルカテコール0.1部およびオクチル酸錫0.5部を入れ、窒素雰囲気下で210℃まで昇温し、210℃で反応させた後に、更に減圧下、8.3KPaにて所望の軟化点に達するまで縮合反応を行い、非晶性ポリエステル樹脂Aを得た。
【0064】
(非晶性ポリエステル樹脂B)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン83.3部、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン0.8部、テレフタル酸15.9部、ジブチル錫オキサイド0.3部を入れ、窒素雰囲気下で230℃まで昇温し5時間反応させた後に、更に減圧下で反応させ非晶性ポリエステル樹脂Bを得た。
【0065】
[離型剤分散液Aの製造]
1リットル容のビーカーに、脱イオン水480部及びアルケニルコハク酸ジカリウム水溶液(商品名:ラテムルASK、花王社製、有効濃度28%)4.3部を入れ、カルナウバロウワックス120部を分散させた。この分散液を90〜95℃に保持しながら、超音波ホモジナイザーUS−600T(日本精機製作所社製)で30分間処理を行って分散させた。冷却後、脱イオン水を加え、固形分を20%に調整し、離型剤分散液Aを得た。得られた離型剤分散液Aの体積中位径は0.42μmであった。
【0066】
〈実施例1〉
5リットル容のステンレス釜で、非晶性ポリエステル樹脂A600g、及び、アニオン性界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名:ネオペレックスG−15、花王社製、固形分:15%)40g、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン(26mol)オレイルエーテル(商品名:エマルゲン430、花王社製)6g、及び5%水酸化カリウム水溶液218gを200r/minの攪拌下、25℃で分散させた後、90℃へ昇温した。内容物を90℃で安定させ攪拌下で2時間保持した。続いて、脱イオン水1076gを6g/minで滴下し乳化物を得た。乳化物を冷却後、金網を通してトナーバインダー樹脂分散液Aを得た。得られたトナーバインダー樹脂分散液A中の樹脂微粒子の体積中位径は0.16μm、固形分濃度は32%であった。
【0067】
得られたトナーバインダー樹脂分散液A(有効固形分56.7部)と色材A10部、離型剤A(有効固形分5部)を混合し、凝集剤として硫酸アンモニウム18部を加えて45℃で凝集させた。8μmまで粒径が成長したところで、トナーバインダー樹脂分散液A(有効固形分28.3部)を加えてトナーをカプセル化した。
【0068】
次いで、トナー固形分に対して0.2部のジエチレントリアミンを添加した後、エポキシ化合物デナコールEX313(ナガセケムテック社製)1.0部を加え45℃で5時間加熱した。
【0069】
その後、分散剤としてエマールE−27C(花王社製)6.7部をフィードして55℃まで昇温し、融着温度55℃で2時間放置してトナーを融着した。体積中位径は10μmであった。その後、純水によりトナーを洗浄し、水分濃度が1%以下になるまで乾燥した。その後、外添剤としてSiO(商品名:NAX50、日本エアロジル社製)をトナー100%に対して3.0%、TiO(商品名:NKT90、日本エアロジル社製)を0.3%で外添した。
【0070】
〈実施例2〉
非晶性ポリエステル樹脂Aに代えて非晶性ポリエステル樹脂Bに、色材Aに代えて色材Bにし、融着温度を65℃としたこと以外は実施例1と同様にしてトナーを製造した。
【0071】
参考例
ジエチレントリアミンとエポキシ化合物デナコールEX313(ナガセケムテック社製)を加えなかったこと以外は実施例1と同様にしてトナーを製造した。
【0072】
〈比較例1〉
色材Aに代えて色材Cにし、融着温度を56℃としたこと以外は実施例1と同様にしてトナーを製造した。
【0073】
〈比較例2〉
色材Bに代えて色材Aにし、融着温度を70℃としたこと以外は実施例2と同様にしてトナーを製造した。
【0074】
[評価]
(DSCピーク温度)
得られた実施例比較例および参考例のトナーについて、Q−2000(TAインスツルメント社製)にてDSC測定を行った。
【0075】
測定温度は0℃から180℃で、昇温速度10℃/minで昇温した。その後180℃まで加熱したトナーを0℃まで降温速度10℃/minで降温した。この操作を2回繰り返した。1回目の測定時のバインダー樹脂由来の吸熱ピーク温度Tg、色材(変色温度調整剤)由来の吸熱ピーク温度Thを表1に示す。
【0076】
(2mmオフセット温度)
得られた実施例比較例および参考例のトナーについて、CFT−500D(島津製作所製)にてフローテスター測定を行った。荷重10kg、オリフィス径は1mmで30℃から2.5℃/minで昇温し、トナーの溶融物が2mm流出したところの温度を溶融温度(2mmオフセット温度)Tmとした。 評価結果を表1に示す。
【0077】
(画像濃度(ID))
得られた実施例、比較例および参考例のトナーを、それぞれシリコーン樹脂等で被服したフェライトキャリアと混合して現像剤を作成した。
【0078】
得られた現像剤を用いて、MFPにて定着器温度を85℃に、紙送り速度を40mm/secに調整し、東芝社製 ppc用紙(P−50s)上に、1.0cmの正方形のパッチ300個(搬送方向に対して垂直に15列、水平に20列)形成し、次いで定着を行った。
【0079】
定着後の画像濃度(ID)を反射濃度計(RD−19I、Gretagmacbeth社製)にて測定した。評価結果を表1に示す。
【表1】
【0080】
表1に示すように、本実施形態の消色可能トナーを用いた実施例1,2は、定着後も発色を保っていることが分かる。また反応性高分子を添加せず架橋処理を施さなかった参考例は、架橋処理を施した実施例1,2に比べ画像濃度(ID)が低下しており、発色性は架橋処理がされているトナーの方がよいことが分かる。
【0081】
一方、比較例1は、実施例1および参考例の最低定着温度(85℃)と同じであるにも関わらず、定着後に消色してしまっていることが分かる。また、同様に、比較例2は、実施例2の最低定着温度(90℃)と同じであるにも関わらず、定着後に消色してしまっているのが分かる。
【符号の説明】
【0082】
1…画像形成装置
2…原稿載置台
3…自動原稿搬送装置
4…スキャナ
5…光源
6,7,8…反射ミラー
9…受光素子
10…画像形成部
11…感光体ドラム
12…帯電装置
13…レーザー露光ユニット
14…現像装置
15…転写ローラ
16…クリーニング装置
17…除電ランプ
18…トナーカートリッジ
19,20…給紙カセット
21…搬送系
24…定着装置
26…再搬送装置
27…排紙トレイ
図1
図2