(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を克服し、被溶接材同士を隅肉溶接した検査対象に対して、簡易な作業で溶接部の検査を行うことが可能な方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の溶接部検査方法は、
第1と第2の被溶接材
の一部同士を重ねて隅肉溶接した溶接部を挟んで、第1の被溶接材に振動体を配置し、第2の被溶接材にセンサを配置した状態で、振動体を用いて、第1の被溶接材
における前記溶接部とは異なる位置に衝撃を加える工程と、
センサを用いて、衝撃によって第1の被溶接材から溶接部を介して第2の被溶接材に伝搬した衝撃波の振動強度を
前記第2の被溶接材における前記溶接部とは異なる位置にて測定する工程と、
隅肉溶接の溶接部の検査パラメータを可変にして予め実験により得られた振動強度のピーク電圧と前記隅肉溶接の溶接部の前記検査パラメータとの相関関係と、測定された振動強度
のピーク電圧とを用いて、溶接部の検査パラメータを演算する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、衝撃波の振動強度を測定することで、溶接部の検査パラメータを演算可能となる。
【0008】
また、検査パラメータとして、のど厚を用いると好適である。
【0009】
また、測定された振動強度のピーク電圧を用いて、検査パラメータは演算されると好適である。
【0010】
また、振動体は、第1の被溶接材に1回の衝撃を加え、
衝撃波の振動強度は、1回の衝撃によって伝搬した衝撃波の振動強度が測定されると好適である。
【0011】
本発明の一態様の溶接部検査装置は、
一部同士を重ねて隅肉溶接された第1と第2の被溶接材のうち、第1の被溶接材
における前記隅肉溶接された溶接部とは異なる位置に衝撃を加える振動体と、
衝撃によって第1の被溶接材から溶接部を介して第2の被溶接材に伝搬した衝撃波の振動強度を
前記第2の被溶接材における前記溶接部とは異なる位置にて測定するセンサと、
隅肉溶接の溶接部の検査パラメータを可変にして予め実験により得られた振動強度のピーク電圧と前記隅肉溶接の溶接部の前記検査パラメータとの相関関係と、測定された振動強度
のピーク電圧とを用いて、溶接部の検査パラメータを演算する演算部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、テーブルと、
テーブルを支持する複数の脚と、
テーブルに形成された第1の開口部を通してテーブルのテーブル面と直交する方向に移動可能に配置された第1の軸と、
複数の脚によって支持されるテーブル面側の第1の軸の先端部と振動体とを、接合する角度が自由に変化可能に繋ぐ第1の自在継手と、
テーブルに形成された第2の開口部を通してテーブルのテーブル面と直交する方向に移動可能に配置された第2の軸と、
複数の脚によって支持されるテーブル面側の第2の軸の先端部とセンサとを、接合する角度が自由に変化可能に繋ぐ第2の自在継手と、
をさらに備えると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、被溶接材同士を隅肉溶接した検査対象に対して、簡易な作業で溶接部の検査を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における溶接部検査装置の装置構成の一例を示す概念図である。
図1において、溶接部検査装置100は、治具部150と制御部160とを備えている。
【0016】
図2は、実施の形態1における溶接部検査装置の治具部の斜視図である。
図1,2において、治具部150は、振動体10、センサ12、テーブル14、軸部材(シャフト)16,18、自在継手(ユニバーサルカップリング)20,22、複数の脚23,24、複数の雄ネジ25、複数の高さ調整ブロック26、複数のローレットナット28、ガイド30,32、及び抜け止め部材34,36を有している。
【0017】
テーブル14の裏面は、高さ固定の例えば2本の脚23と、高さ調整可能な例えば2セットの脚24及び雄ネジ25の組み合わせによって支持される。例えば、テーブル14の振動体10が配置される側が高さ固定の例えば2本の脚23によって支持される。逆に、テーブル14のセンサ12が配置される側が高さ調整可能な例えば2セットの脚24及び雄ネジ25の組み合わせによって支持される。脚24は、脚23より短く形成される。脚24のテーブル14側の端部には、雄ネジ25が組み合わされる。そして、雄ネジ25の先端にはローレットナット28が配置され、ローレットナット28により雄ネジ25を回転させることができる。雄ネジ25は、テーブル14の裏面に固定された雌ねじが形成されている高さ調整ブロック26を介して脚24に接続される。よって、雄ネジ25と高さ調整ブロック26の雌ねじとがかみ合って、テーブル14の裏面側に突き出る雄ネジ25の長さを調整できる。
【0018】
テーブル14面の左右の領域には、それぞれ1つずつの計2つの貫通する開口部31,33が形成され、一方の開口部31(第1の開口部)にはガイド30が組み込まれる。他方の開口部33(第2の開口部)にはガイド32が組み込まれる。そして、テーブル14に形成された開口部31を通してテーブル14のテーブル面と直交する方向にガイド30によって移動可能に軸部材16(第1の軸)が配置される。また、テーブル14に形成された開口部33を通してテーブル14のテーブル面と直交する方向にガイド32によって移動可能に軸部材18(第2の軸)が配置される。ガイド30,32として、例えば、リニアガイドを用いると好適である。これにより、軸部材16,18はスムーズに上下方向に移動できる。或いは、ガイド30,32として、例えば、スライド軸受等であっても好適である。或いは、ガイド30,32を用いずに、軸部材16が開口部31側面を、軸部材18が開口部33側面を、それぞれスライドしてもよい。
【0019】
軸部材16の両先端部のうち、複数の脚23,24によって支持されるテーブル面(裏面)側の先端部と振動体10とが、自在継手20によって繋がれている。自在継手20によって繋ぐことで、接合する角度が自由に変化可能にできる。振動体10として、例えば、ソレノイド等を用いると好適である。軸部材18の両先端部のうち、複数の脚23,24によって支持されるテーブル面(裏面)側の先端部とセンサ12とが、自在継手22によって繋がれている。自在継手22によって繋ぐことで、接合する角度が自由に変化可能にできる。振動センサ12は、例えば、10Hz〜15kHzの測定周波数を有するものが好適である。但し、これに限るものではない。振動体10からの衝撃を測定可能な周波数帯を有していれば良い。また、例えば、1000mV程度の測定レンジを有するものが好適である。また、振動体10からの衝撃等によって軸部材16がテーブル14の開口部31から抜けないように軸部材16の他方の先端には、開口部31或いはガイド30の内径よりも外径が大きい抜け止め部材34が配置される。同様に、軸部材18の他方の先端には、開口部33或いはガイド32の内径よりも外径が大きい抜け止め部材36が配置される。振動体10とセンサ12との中心間距離は、適宜設定すればよいが、溶接部54の脚長よりも長い寸法であって、例えば、60mm程度に設定される。
【0020】
また、制御部160は、制御計算機110、メモリ111、インターフェース(I/F)回路119、制御回路120、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。制御計算機110、メモリ111、I/F回路119、制御回路120、及び記憶装置140は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0021】
制御計算機110内には、測定部70及びパラメータ演算部72が配置される。測定部70及びパラメータ演算部72といった各機能は、プログラムといったソフトウェアで構成されても良い。或いは、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。制御計算機ユニット110内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ111に記憶される。また、測定部70及びパラメータ演算部72の少なくとも1つがソフトウェアで構成される場合には、CPU或いはGPUといった計算器が配置される。
【0022】
図3は、実施の形態1における制御回路の内部構成の一例を示す概念図である。
図3において、制御回路120内には、計算器ユニット112、直流成分除去回路114、アンプ116、及び駆動回路118を有している。計算器ユニット112内には、取得部80、T
0演算部82、V
0演算部84、メモリ86、及び制御部88が配置される。取得部80、T
0演算部82、V
0演算部84、及び制御部88といった各機能は、プログラムといったソフトウェアで構成されても良い。或いは、電子回路等のハードウェアで構成されてもよい。或いは、これらの組み合わせであってもよい。計算器ユニット112内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度メモリ86に記憶される。また、取得部80、T
0演算部82、V
0演算部84、及び制御部88の少なくとも1つがソフトウェアで構成される場合には、CPU或いはGPUといった計算器が配置される。
【0023】
ここで、
図1〜3では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。溶接部検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0024】
図4は、実施の形態1における検査対象の一例を示す断面図である。検査対象となる板材50(第2の被溶接材)と板材52(第1の被溶接材)は、重ねて、例えば、板材52の端部と板材50の表面との間で隅肉溶接されている。ここでは、例えば、炭素鋼の板材を用いている。但し、これに限るものではない。その他の溶接可能な金属材料であってもよい。また、例えば、縦1.2m×横1m×厚さ9mmの材料を用いる。但し、これに限るものではない。縦横サイズや厚さはその他のサイズであってもよい。
図4に示すように、隅肉溶接によって、板材52と板材50の結合部には、溶接部54が形成される。実施の形態1では、溶接部54の例えばのど厚L
1を溶接部54の検査パラメータとして測定する。ここでは、例えば、板材50表面と板材52の端部側面との交点Oから板材50表面に対して45°の角度の溶接部54の隅肉表面までの長さをのど厚として測定する。但し、のど厚の定義は、これに限るものではなく、例えば、溶接部54の脚長L
2の0.7倍の値(或いは、脚長L
2を√2で割った値)をのど厚としてもよい。よって、検査パラメータとして、のど厚L
1の他に、例えば、溶接部54の脚長L
2等を用いても好適である。
図4の例では、溶接部54の脚長L
2(底辺長さ)が高さ(板材52の厚さ)よりも長くなるように溶接しているが、これに限るものではない。溶接強度が十分であれば、溶接部54の断面が、設計上、直角2等辺三角形の形状になっても構わない。
【0025】
かかる検査パラメータを測定するにあたって、まず、検査対象となる板材50と板材52に溶接部検査装置100の治具部150を配置する。
図1に示したように、板材50,52を隅肉溶接した溶接部54を挟んで、板材52表面上に振動体10を配置する。そして、板材50表面上にセンサ12を配置する。かかる位置に合わせて、治具部150を配置する。
図1の例では、板材50表面上に2本の脚23を載せる。そして、板材50に板材52を重ねたことで高さが高くなった板材52表面上に2本の脚24を載せる。そして、2本の脚24側で高さ調整を行うことで、テーブル14をできるだけ水平に配置する。振動体10とセンサ12は、溶接部54の溶接線に対して、直交する方向に配置する。より好ましくは、溶接部54の溶接線に対して、略線対称の位置になるように配置すると好適である。振動体10と軸部材16は自在継手20によって繋がれているので、軸部材16を固定しているテーブル14が水平状態からずれても、振動体10は板材52に接触面積が広くなるように設置できる。言い換えれば、水平に設置できる。よって、加える衝撃値のムラ(誤差)を抑制できる。同様に、センサ12と軸部材18は自在継手22によって繋がれているので、軸部材18を固定しているテーブル14が水平状態からずれても、センサ12は板材50に接触面積が広くなるように設置できる。よって、検出する振動強度の検出誤差を低減できる。
【0026】
ここで、溶接線に対する振動体10と振動センサ12の位置関係による測定毎のばらつきを抑えるために、振動体10と振動センサ12の間に、図示しない線発光する光源或いは直線的に並ぶ複数の点光源から光線を溶接線と例えば板材52との境目に対して照射しても好適である。また、振動体10を駆動するための電源ケーブルと振動センサ12の測定用ケーブルは、例えばテーブル14に設けた図示しないコネクターから制御部160へと接続すると好適である。これにより、ケーブルを外せば、治具部150と制御部160とを別々に持ち運ぶことができる。
【0027】
なお、
図1の例では、下側の板材52上に振動体10を配置し、上側の板材50上にセンサ12を配置したが、これに限るものではない、配置位置は逆であってもよい。
【0028】
図5は、実施の形態1における溶接部検査方法の要部工程を説明するためのフローチャート図である。
図5において、コマンド送信工程(S102)と、衝撃印加工程(S104)と、振動強度測定工程(S106)と、直流成分除去工程(S108)と、衝撃波プロファイル取得工程(S110)と、ピーク時間演算工程(S112)と、ピーク電圧演算工程(S114)と、パラメータ演算工程(S116)という一連の工程を実施する。
【0029】
コマンド送信工程(S102)として、測定部70は、制御回路120に対して、測定開始コマンドを送信する。制御回路120内では、計算器ユニット112が測定開始コマンドを入力する。そして、計算器ユニット112内の制御部88は、駆動回路118に対して、衝撃印加を指示する信号を出力する。
【0030】
衝撃印加工程(S104)として、溶接部54を挟んで板材52に振動体10を配置し、板材50にセンサ12を配置した状態で、駆動回路118は、振動体10を駆動して、板材52に衝撃を加える。駆動回路118は、測定開始の時刻0〜T1は0Vとし、その後の時刻T1〜T2に間に振動体10が駆動する電圧を振動体10に印加する。衝撃は、1回加えればよい。鉄板の音速を5950m/sとすると、例えば15kHzの波長が約40cmとなり、板材50,52の厚さや溶接部53断面の外径寸法に対して十分長くなる。これにより溶接部全体を伝搬してきた波を検知できる。よって、1回の衝撃波で十分溶接部全体を伝搬してきた波を検知できる。但し、これに限るものではなく、複数回の衝撃を加えてもよい。但し、複数回の衝撃を加える場合には、1つ前の衝撃波が減衰した後に加えると好適である。また、振動体10による衝撃荷重は、センサ12によって数100mV程度の振動強度が得られる程度が好適である。但し、これに限るものではない。センサの性能に応じて適宜設定してもよい。
【0031】
振動強度測定工程(S106)として、センサ12は、板材52への衝撃によって板材52から溶接部54を介して板材50に伝搬した衝撃波60の振動強度を検出(測定)する。センサ12は、上述した時刻T1〜T2の間の衝撃波の振動強度を検出する。これにより、時間のずれによる測定ミスを防止できる。センサ12の検出結果は、アンプ116に出力され、増幅される。
【0032】
直流成分除去工程(S108)として、直流成分除去回路114は、アンプ116の出力から直流成分を除去する。
【0033】
図6は、実施の形態1における直流成分が含まれる衝撃波プロファイルの一例を示す図である。
図6では、縦軸に振動強度、横軸に時間を示す。測定された衝撃波の振動強度には、バイアス成分(直流成分)が含まれている場合があり、
図6の例では、衝撃波プロファイル全体が、100mV程度シフトしている。そこで、直流成分除去回路114は、かかる直流成分を除去して、測定開始前の振動強度の値が触れていない状態を0に調整する。また、直流成分が含まれていない場合には、直流成分除去工程(S108)を省略してもよい。
【0034】
衝撃波プロファイル取得工程(S110)として、取得部80は、直流成分除去回路114から衝撃波プロファイルを取得する。
【0035】
図7は、実施の形態1における衝撃波プロファイルの一例を示す図である。
図7において、縦軸に振動強度、横軸に時間が示される。
図7の例では、直流成分が除去された衝撃波プロファイルの一例が示されている。また、
図7の例では、時刻T1を時間0として、時間軸を調整している。
【0036】
ピーク時間演算工程(S112)として、T
0演算部82は、測定開始(T1)時刻から測定された振動強度のピーク(最大値)A時刻までの時間T
0を演算する。或いは、ある基準時刻からの時間を演算してもよい。ここでは、サンプリング周期で得られた、振動強度(電圧)の時系列データから、最大電圧の時刻(或いは測定開始(T1)時刻からの時間)を計算すればよい。
【0037】
ピーク電圧演算工程(S114)として、V
0演算部84は、時間T
0に対応する、測定された振動強度のピーク電圧V
0(最大電圧)を演算する。演算されたピーク電圧V
0は、制御計算機110に出力される。
【0038】
図8は、実施の形態1における試験片の断面の一例を示す図である。検査に先だって、予め、ピーク電圧V
0と検査パラメータとの相関データを取得しておく。そのために、検査対象と同じ材料、同じ板厚、同じ板幅等で溶接部の検査パラメータを可変にした複数の試験片を用意する。
図8の例では、検査パラメータとして、溶接部ののど厚を用いている。
図8(a)では、板材51aと板材53aとを隅肉溶接した溶接部55aが直角三角形になる設計のど厚と実質的に同様な溶接を行った試験片の例を示している。
図8(b)では、板材51bと板材53bとを隅肉溶接した溶接部55bの隅肉表面が凹んでいる(のど厚が設計のど厚よりも小さい)試験片の例を示している。
図8(c)では、板材51cと板材53cとを隅肉溶接した溶接部55cの隅肉表面が凸に膨らんでいる(のど厚が設計のど厚よりも大きい)試験片の例を示している。
図8に示すような、のど厚の値を可変にした複数の試験片を用意して、同様の衝撃を各試験片に加え、それぞれピーク電圧V
0を測定しておく。また、設置場所(固定方法)等の条件も検査対象に合わせておく。各試験片ののど厚の値は、断面から実測すればよい。
【0039】
図9は、実施の形態1におけるピーク電圧とのど厚との相関データの一例を示すグラフである。
図9において、縦軸に振動強度、横軸にのど厚を示している。のど厚の値を可変にした複数の試験片から得られたピーク電圧V
0をプロットして、測定点を近似して近似式を演算する。
図9の例では、例えば、1次比例の近似式(y=ax+b)を得る。そして、かかる近似式のデータをピーク電圧V
0と検査パラメータとの相関データとして、記憶装置140に格納しておく。
【0040】
パラメータ値演算工程(S116)として、パラメータ演算部72は、記憶装置140に格納された相関データ(例えば近似式、或いは近似式の係数)を読み出し、測定された振動強度を相関データ(例えば近似式)に代入して、溶接部53ののど厚(検査パラメータの一例)を演算する。そして、演算結果は、I/F回路119を介して、図示しない表示装置(例えばモニタ)へ出力される。出力されたのど厚を用いて、溶接部53の使用可否(安全性)を判定すればよい。
【0041】
以上のように検査することで、被溶接材同士を隅肉溶接した検査対象に対して、簡易な作業で溶接部53の検査を行うことができる。
【0042】
図10は、実施の形態1におけるピーク電圧の演算方法の一例を説明するための概念図である。例えば、センサ12によるサンプリング周期が実際のピーク電圧の時刻に一致せず、ピーク電圧を検出していない場合もあり得る。かかる場合に、ピーク時間演算工程(S112)において、T
0演算部82は、測定開始(T1)から、例えば、検出されたデータのピーク付近と想定される複数の時間T
n−1,T
n,T
n+1を演算する。時間T
n−1,T
n,T
n+1は、サンプリング周期と同期している。そして、これらの複数の時間T
n−1,T
n,T
n+1での振動強度をプロットして、多項式により近似する。そして、ピーク電圧演算工程(S114)として、V
0演算部84は、近似された曲線から振動強度のピーク電圧V
0(最大電圧)を演算する。これにより、実際のピーク電圧により近い電圧T
0を演算できる。
【0043】
ここで、上述した例では、ピーク電圧V
0を用いているが、これに限るものではない。例えば、
図7に示す振動強度の最大値Aと最小値Bの差分値(差分電圧)を用いてもよい。かかる場合には、上述した複数の試験片を用いて予め実験し、相関データとして、振動強度の最大値と最小値の差分電圧とのど厚との相関データを取得しておくことは言うまでもない。そして、V
0演算部84は、ピーク電圧V
0を演算するだけでなく、最小電圧を演算し、さらに、これらの差分電圧を演算すれよい。
【0044】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、検査パラメータとして、上述したように脚長を用いてもよい。かかる場合には、脚長を可変にした複数の試験片を用いて予め実験し、相関データとして、振動強度のピーク電圧(最大値)と溶接部の脚長との相関データを取得しておくことは言うまでもない。或いは、振動強度の最大値と最小値の差分電圧と溶接部の脚長との相関データを取得しておけばよい。
【0045】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0046】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての溶接部検査方法及び溶接部検査装置は、本発明の範囲に包含される。