(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図中の矢印で示した方向を上下方向、前後方向、左右方向とそれぞれ定義して説明を行う。
【0021】
まず、
図1を用いて、本発明に係る作業車両の実施の一形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
【0022】
なお、本実施形態においては、作業車両としてトラクタ1を例示するが、本発明はこれに限るものではない。すなわち作業車両は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であっても良い。
【0023】
トラクタ1は、主として機体フレーム2、前車輪3・3、リアアクスル機構4、後車輪(左後車輪5L及び右後車輪5R)、エンジン6、ボンネット7、変速装置8、ステアリングホイール9、座席10及びキャビン11を具備する。
【0024】
機体フレーム2は、その長手方向を前後方向として配置される。機体フレーム2の前部はフロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前車輪3・3に支持される。機体フレーム2の後部はリアアクスル機構4を介して左右一対の後車輪(左後車輪5L及び右後車輪5R)に支持される。
機体フレーム2の前部にはエンジン6が設けられる。エンジン6はボンネット7に覆われる。機体フレーム2の後部には変速ケース8aに収容された変速装置8が設けられる。
【0025】
エンジン6の動力は、変速装置8で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前車輪3・3に伝達可能とされると共に、リアアクスル機構4を経て前記後車輪に伝達可能とされる。エンジン6の動力によって前車輪3・3及び前記後車輪が回転駆動され、トラクタ1の走行が行われる。
【0026】
機体フレーム2の前後中途部から後部にかけては、ステアリングホイール9、変速操作具(不図示)、座席10等を有する運転操作部が設けられ、キャビン11によって覆われる。ステアリングホイール9は、その回動操作量に応じて左右一対の前車輪3・3の切れ角を調節(変更)し、トラクタ1を操舵することができる。
【0027】
上述のリアアクスル機構4は、左右一対の後車輪(左後車輪5L及び右後車輪5R)の中心間距離であるトレッドを変更することができるように構成されている。以下では、リアアクスル機構4の構成(特にトレッドの変更に関する構成)について説明する。なお、リアアクスル機構4は左右で略対称の構成であるため、以下ではリアアクスル機構4の左側の構成についてのみ説明する。
【0028】
図2から
図4までに示すリアアクスル機構4は、エンジン6からの動力を左後車輪5Lに伝達すると共に、左後車輪5L及び右後車輪5Rのトレッドを変更可能とするものである。リアアクスル機構4は、主として後車軸ケース22、摺動ケース24、左トレッドシリンダ26L、後車軸28及び左トレッド検出機構30を具備する。
【0029】
後車軸ケース22は、内部に動力伝達のための部材を配置することが可能な略箱状の部材である。後車軸ケース22は、変速ケース8aの左側面に取り付けられる。
【0030】
摺動ケース24は、内部に動力伝達のための部材を配置することが可能な略箱状の部材である。摺動ケース24は後車軸ケース22の左方に配置される。摺動ケース24の右端部は、後車軸ケース22の左側面に摺動可能に挿通される。
【0031】
左トレッドシリンダ26Lは、油圧によって伸縮可能な油圧シリンダである。左トレッドシリンダ26Lは、その長手方向を左右方向に向けた状態で配置される。左トレッドシリンダ26Lの一端(右端)は後車軸ケース22と連結され、他端(左端)は摺動ケース24と連結される。
【0032】
後車軸28は、変速装置8からの駆動力を左後車輪5Lに伝達するものである。後車軸28は、その長手方向を左右方向に向けた状態で配置される。後車軸28の一端は摺動ケース24に回動可能に支持され、他端は左後車輪5Lに固定される。変速装置8からの動力は、後車軸ケース22及び摺動ケース24内に配置された動力伝達のための部材(軸や歯車等)を介して後車軸28に伝達される。
【0033】
左トレッド検出機構30は、後車輪のトレッドの現在値を検出するためのものである。左トレッド検出機構30は、主として支持体32、左トレッドセンサ34L、リンク機構36及びカバー体38を具備する。
【0034】
支持体32は、複数の板材等を組み合わせて形成された略直方体状の部材である。支持体32は、後車軸ケース22の上面に固定される。
【0035】
左トレッドセンサ34Lは、後車輪のトレッドの現在値を検出するためのセンサである。左トレッドセンサ34Lは、回転角度を検出可能な回転式(ロータリー)ポテンショメータにより構成される。左トレッドセンサ34Lは、支持体32の前側面に固定される。
【0036】
リンク機構36は、後車軸ケース22に対する摺動ケース24の位置を左トレッドセンサ34Lに伝えるためのものである。リンク機構36は、板状の部材及び棒状の部材を組み合わせて構成される。リンク機構36の一端は左トレッドセンサ34Lの検出部に連結され、他端は摺動ケース24に連結される。
【0037】
カバー体38は、左トレッド検出機構30の構成部材(特に左トレッドセンサ34L)を保護するためのものである。カバー体38は、複数の板材等を組み合わせて形成される。カバー体38は、左トレッドセンサ34Lを前方から覆うようにして、支持体32の前部に固定される。
【0038】
なお、説明の便宜上、
図2においてはカバー体38の図示を省略している。また
図3においては、カバー体38によって左トレッドセンサ34Lが視認不能となっている。
【0039】
このように構成されたリアアクスル機構4において、左トレッドシリンダ26Lが伸縮すると、それに伴って摺動ケース24が後車軸ケース22に対して左右方向に摺動する。このようにして、左右一対の後車輪のトレッドが変更される。
【0040】
また、摺動ケース24が後車軸ケース22に対して摺動した場合、その動きはリンク機構36を介して左トレッドセンサ34Lに伝えられる。このようにして、後車軸ケース22に対する摺動ケース24の位置を検出することができ、ひいては左右一対の後車輪のトレッドの現在値を検出することができる。
【0041】
以上の如く構成されたリアアクスル機構4は、左右略対称となるように機体の右側にも同様に設けられる。なお、機体の右側に設けられるリアアクスル機構4において、上述の左トレッドシリンダ26L及び左トレッドセンサ34Lに対応する部材を、以下ではそれぞれ右トレッドシリンダ26R(
図5参照)及び右トレッドセンサ34R(
図6参照)と記す。
本実施形態においては、アクチュエータとして左トレッドシリンダ26L及び右トレッドシリンダ26Rを用いている。また、本実施形態においては、センサとして左トレッドセンサ34L及び右トレッドセンサ34Rを用いている。
【0042】
次に、トレッドの変更に関する油圧回路について説明する。
【0043】
図4及び
図5に示すように、トレッドの変更に関する油圧回路は、主として油圧ポンプ40、制御バルブ42、左トレッドシリンダ26L及び右トレッドシリンダ26Rにより構成される。
【0044】
油圧ポンプ40は、作動油を圧送するためのものである。油圧ポンプ40はエンジン6により駆動され、変速ケース8a内の作動油を吸入して制御バルブ42へと圧送する。
【0045】
制御バルブ42は、左トレッドシリンダ26L及び右トレッドシリンダ26Rの伸縮動作を制御するためのバルブ群である。制御バルブ42は、主として左トレッド用バルブ44L及び右トレッド用バルブ44Rを具備する。
【0046】
左トレッド用バルブ44Lは、左トレッドシリンダ26Lの伸縮動作を制御するための電磁バルブである。左トレッド用バルブ44Lは、左伸び側ソレノイド44La及び左縮み側ソレノイド44Lbを具備する。
【0047】
左トレッド用バルブ44Lは、左伸び側ソレノイド44La及び左縮み側ソレノイド44Lbがいずれも励磁されていない場合、中立ポジションに保持されて油圧ポンプ40から圧送されてくる作動油を右トレッド用バルブへと案内する。この場合、左トレッドシリンダ26Lが駆動されることはない。
【0048】
左トレッド用バルブ44Lは、左伸び側ソレノイド44Laが励磁された場合、ポジションが切り替えられて油圧ポンプ40から圧送されてくる作動油を左トレッドシリンダ26Lのボトム側油室へと案内する。これによって、当該左トレッドシリンダ26Lが伸長する。
【0049】
左トレッド用バルブ44Lは、左縮み側ソレノイド44Lbが励磁された場合、ポジションが切り替えられて油圧ポンプ40から圧送されてくる作動油を左トレッドシリンダ26Lのロッド側油室へと案内する。これによって、当該左トレッドシリンダ26Lが縮小する。
【0050】
右トレッド用バルブ44Rは、右トレッドシリンダ26Rの伸縮動作を制御するための電磁バルブである。右トレッド用バルブ44Rは、右伸び側ソレノイド44Ra及び右縮み側ソレノイド44Rbを具備する。
【0051】
右トレッド用バルブ44Rは、右伸び側ソレノイド44Ra及び右縮み側ソレノイド44Rbがいずれも励磁されていない場合、中立ポジションに保持されて、左トレッド用バルブ44Lを介して油圧ポンプ40から圧送されてくる作動油を変速ケース8aへと戻す。この場合、右トレッドシリンダ26Rが駆動されることはない。
【0052】
右トレッド用バルブ44Rは、右伸び側ソレノイド44Raが励磁された場合、ポジションが切り替えられて、左トレッド用バルブ44Lを介して油圧ポンプ40から圧送されてくる作動油を右トレッドシリンダ26Rのボトム側油室へと案内する。これによって、当該右トレッドシリンダ26Rが伸長する。
【0053】
右トレッド用バルブ44Rは、右縮み側ソレノイド44Rbが励磁された場合、ポジションが切り替えられて、左トレッド用バルブ44Lを介して油圧ポンプ40から圧送されてくる作動油を右トレッドシリンダ26Rのロッド側油室へと案内する。これによって、当該右トレッドシリンダ26Rが縮小する。
【0054】
このように、油圧ポンプ40からの作動油が左トレッド用バルブ44L及び右トレッド用バルブ44Rに順に供給されるように、当該左トレッド用バルブ44L及び右トレッド用バルブ44Rは直列に接続されている。
【0055】
次に、トレッドの変更に関する制御機構について説明する。
【0056】
図4及び
図6に示すように、トレッドの変更に関する制御機構は、主として左トレッドセンサ34L、右トレッドセンサ34R、キースイッチ52、車軸回転センサ54、クランク位置センサ56、左伸び側ソレノイド44La、左縮み側ソレノイド44Lb、右伸び側ソレノイド44Ra、右縮み側ソレノイド44Rb、ブザー58、サブメータ60及びECU100により構成される。
【0057】
左トレッドセンサ34L及び右トレッドセンサ34Rは、前述の通り、後車輪のトレッドの現在値を検出するためのセンサである。
【0058】
キースイッチ52は、所定のキーを挿し込むことによって操作可能なものである。キースイッチ52は、入操作されることによってトラクタ1の各機器の電源の投入及びエンジン6の始動が可能である。またキースイッチ52は、切操作されることによって前記各機器の電源の切断及びエンジン6の停止が可能である。キースイッチ52は、トラクタ1のステアリングホイール9の下方に配置される(
図1参照)。
本実施形態においては、始動停止手段としてキースイッチ52を用いている。
【0059】
車軸回転センサ54は、エンジン6から駆動輪(本実施形態においては、常時駆動される後車輪)への動力伝達経路における駆動速度を検出するものである。車軸回転センサ54は、トラクタ1の後車輪へと動力を伝達する車軸に設けられ、当該車軸の駆動速度を検出することができる(
図1参照)。
【0060】
クランク位置センサ56は、エンジン6のフライホイールの回転位置を検出し、ひいてはエンジン6の実際の回転数(軸回転数)を検出するものである。クランク位置センサ56は、エンジン6(より詳細には、エンジン6のフライホイール)の近傍に設けられる。
【0061】
左伸び側ソレノイド44La、左縮み側ソレノイド44Lb、右伸び側ソレノイド44Ra及び右縮み側ソレノイド44Rbは、前述の通り、左トレッド用バルブ44L及び右トレッド用バルブ44Rのポジションを切り替えるためのものである。
【0062】
ブザー58は、音を発することによって、所定の状況を作業者に報知するためのものである。ブザー58は、トラクタ1のステアリングホイール9の近傍に配置される(
図1参照)。
【0063】
サブメータ60は、トラクタ1に関する設定操作を行うと共に、トラクタ1に関する情報を作業者に報知するためのものである。サブメータ60は、トラクタ1の座席10の前方に配置されるメーターパネルとは別に、当該座席10の側方に配置される(
図1参照)。サブメータ60は、主として液晶表示部61及び操作部62を具備する。
【0064】
図7に示す液晶表示部61は、トラクタ1に関する情報を作業者に報知するためのものである。液晶表示部61は略矩形状に形成され、サブメータ60の上部に配置される。
本実施形態においては、表示部としてサブメータ60の液晶表示部61を用いている。
【0065】
操作部62は、トラクタ1に関する設定操作を行うためのものである。操作部62は複数のボタン(メニューボタン62a、第一ボタン62b、第二ボタン62c、第三ボタン62d及び第四ボタン62e)により構成される。操作部62の複数のボタンは、液晶表示部61の下方に一列に並べて配置される。
本実施形態においては、設定操作部としてサブメータ60の操作部62を用いている。
【0066】
図4及び
図6に示すECU100は、トラクタ1に関する情報を管理すると共に、接続された各機器の動作を制御するものである。ECU100はトラクタ1のキャビン11内に配置される(
図1参照)。ECU100は、記憶部、演算処理部等により構成される。ECU100には、トラクタ1の各機器を制御するためのプログラムや種々のデータが記憶される。
本実施形態においては、制御装置としてECU100を用いている。
【0067】
ECU100は左トレッドセンサ34L及び右トレッドセンサ34Rに接続され、当該左トレッドセンサ34L及び右トレッドセンサ34Rの検出値についての情報を受信することができる。ECU100は、当該情報に基づいて後車輪のトレッドの現在値を算出することができる。
ECU100はキースイッチ52に接続され、当該キースイッチ52の操作についての情報を受信することができる。
ECU100は車軸回転センサ54に接続され、エンジン6から後車輪への動力伝達経路における駆動速度についての情報を受信することができる。ECU100は、当該情報に基づいてトラクタ1の速度(車速)を算出することができる。
ECU100はクランク位置センサ56に接続され、エンジン6のフライホイールの回転位置についての情報を受信することができる。ECU100は、当該情報に基づいてエンジン6の実回転数を算出することができる。
【0068】
ECU100は左伸び側ソレノイド44La、左縮み側ソレノイド44Lb、右伸び側ソレノイド44Ra及び右縮み側ソレノイド44Rbにそれぞれ接続され、各ソレノイドの動作(励磁)を制御することができる。
ECU100はブザー58に接続され、当該ブザー58の動作を制御することができる。
【0069】
ECU100はサブメータ60に接続され、当該サブメータ60の液晶表示部61に種々の情報を表示させることができる。
またECU100は、当該サブメータ60の操作部62の操作についての情報を受信することができる。
【0070】
以下では、上述の如く構成されたトラクタ1における、トレッドの変更に関する制御について説明する。当該トレッドの変更に関する制御は、所定のプログラムに従って、ECU100によって行われる。
【0071】
図8に示すように、ECU100は、トレッドの変更に関する制御モードとして、主としてトレッド保持モードM1、トレッド変更モードM2、トレッド中断モードM3及びトレッド微調モードM4を具備する。まず、これらの制御モードについて簡単に説明する。
【0072】
トレッド保持モードM1は、トラクタ1のトレッドの現在値(現在の実際の値)を、作業者によって設定された設定値に保持するモードである。トレッド保持モードM1において、ECU100は、トレッドの現在値が設定値から所定の値より大きくずれると、トレッドの現在値を設定値(より詳細には、設定値から所定の値の範囲内)に保持するように、各ソレノイド(左伸び側ソレノイド44La等)を制御する。
【0073】
トレッド変更モードM2は、トレッドの設定値が変更された場合に、トレッドの現在値を当該設定値まで変更するモードである。トレッド変更モードM2において、ECU100は、トレッドの設定値が変更されると、トレッドの現在値が設定値になるように、各ソレノイドを制御する。
【0074】
トレッド中断モードM3は、トレッド変更モードM2中にキースイッチ52が切操作されることによって当該トレッド変更モードM2が中断され、次にキースイッチ52が入操作された際に実行されるモードである。トレッド中断モードM3において、ECU100は、トレッド変更モードM2が中断された旨をサブメータ60に表示すると共に、所定の操作がなされるまで当該トレッド中断モードM3を継続する。
本実施形態においては、中断モードとしてトレッド中断モードM3を設けている。
【0075】
トレッド微調モードM4は、ECU100が自動的に左トレッドセンサ34L及び右トレッドセンサ34Rの微調整を行うモードである。
【0076】
以下では、各制御モードの詳細及び制御モード間の遷移について、詳細に説明する。
【0077】
まず、
図9を用いて、トレッド保持モードM1における処理について説明する。
【0078】
ステップS102において、ECU100は、キースイッチ52が切操作されたか否かを判定する。
ECU100は、キースイッチ52が切操作された場合、ステップS114に移行する。すなわち、その時点でのトレッドの設定値を記憶して、キースイッチOFF状態(トラクタ1の各機器の電源の切断及びエンジン6の停止がなされた状態)M5(
図8参照)に遷移する。
ECU100は、キースイッチ52が切操作されていない場合、ステップS104に移行する。
【0079】
ステップS104において、ECU100は、後述する「Set」記号61mが選択されたか否かを判定する。
ECU100は、「Set」記号61mが選択された場合、ステップS116に移行する。すなわち、トレッド変更モードM2に遷移する。
ECU100は、「Set」記号61mが選択されていない場合、ステップS106に移行する。
【0080】
ステップS106において、ECU100は、微調条件が成立したか否かを判定する。なお、当該「微調条件」とは、トレッド微調モードM4に遷移するための条件として予め設定された特定の操作がなされることを意味する。
ECU100は、微調条件が成立したと判定した場合、ステップS118に移行する。すなわち、トレッド微調モードM4に遷移する。
ECU100は、微調条件が成立していないと判定した場合、ステップS108に移行する。
【0081】
ステップS108において、ECU100は、トレッドの現在値が設定値から所定の値より大きくずれているか否か、言い換えれば、トレッドの現在値が設定値から所定の値の範囲内に収まっているか否か、を判定する。
ECU100は、トレッドの現在値が設定値から所定の値の範囲内に収まっていると判定した場合、トレッド保持モードM1の処理を繰り返す。
ECU100は、トレッドの現在値が設定値から所定の値の範囲内に収まっていないと判定した場合、ステップS110に移行する。
【0082】
ステップS110において、ECU100は、ソレノイド出力条件が成立しているか否かを判定する。
【0083】
ここで、「ソレノイド出力条件」とは、ECU100が各ソレノイドの動作を制御する(励磁する)際に満たしていなければならない条件である。ソレノイド出力条件とは、具体的には、(1)トラクタ1が走行中である(速度が0より大きい)こと、(2)エンジン6の実回転数が所定値以上であること、の2点である。
【0084】
上記(1)の条件を満たすことで、トラクタ1の走行中にのみトレッドを変更することになる。これによって、車輪と地面との摩擦が大きいトラクタ1の停車中にトレッドが変更され、車輪やその他の部材に負荷が加わること(ひいては損傷が発生すること)を防止することができる。ECU100は、車軸回転センサ54の検出値に基づいてトラクタ1の速度を算出し、トラクタ1が走行中であるか否かを判定する。
【0085】
また、上記(2)の条件を満たすことで、エンジン6が所定の回転数以上で駆動している場合にのみ左トレッド用バルブ44L又は右トレッド用バルブ44Rを作動させることになる。これによって、油圧ポンプ40(
図5参照)が十分に駆動していないエンジン6の停止時に左トレッド用バルブ44L等のポジションが変更され、左トレッドシリンダ26L等から作動油が流出して正確なトレッドの変更ができなくなることを防止することができる。ECU100は、クランク位置センサ56の検出値に基づいてエンジン6の軸回転数を算出し、エンジン6が所定の回転数以上で駆動しているか否かを判定する。
【0086】
ECU100は、ソレノイド出力条件が成立していないと判定した場合、トレッド保持モードM1の処理を繰り返す。
ECU100は、ソレノイド出力条件が成立していると判定した場合、ステップS112に移行する。
【0087】
ステップS112において、ECU100は各ソレノイドを制御し、トレッドの現在値が前記設定値から前記所定の値の範囲内に収まるようにする。
【0088】
ここでECU100は、同時に2本以上のソレノイドを励磁しないように制御を行う。例えば、左トレッド用バルブ44Lのソレノイド及び右トレッド用バルブ44Rのソレノイド(
図5参照)をいずれも励磁する必要がある場合には、右トレッド用バルブ44Rのソレノイドの励磁を優先して行うようにする。このように各ソレノイドの励磁を行うことによって、直列に接続された左トレッド用バルブ44L及び右トレッド用バルブ44Rを正確に作動させ、トレッドの変更を確実に行うことができる。
【0089】
またECU100は、左トレッドシリンダ26Lと右トレッドシリンダ26Rの長さが同一になるように各ソレノイドを制御する。これによって、トラクタ1の機体の左右中心から左右の後車輪までの距離がそれぞれ同一となるように保持することができ、トラクタ1の姿勢を安定させることができる。
【0090】
ECU100は、当該処理を行った後、トレッド保持モードM1の処理を繰り返す。
【0091】
このように、トレッド保持モードM1においては、ECU100はトレッドの現在値が設定値から所定の値の範囲内に保持されるように(ステップS108)、各ソレノイドの動作を制御する(ステップS112)。これによって、トラクタ1のトレッドが設定値(正確には、設定値に近い値)に保持され、所望のトレッドでの作業や走行が可能となる。
【0092】
次に、トレッド保持モードM1からトレッド変更モードM2に遷移する際(ステップS104及びステップS116)のサブメータ60の操作及び表示について詳細に説明する。
【0093】
トレッド保持モードM1においては、ECU100は、サブメータ60の液晶表示部61にトラクタ1に関する情報(例えば、トラクタ1の速度(車速)等)を表示させている。当該表示させる情報は、予め作業者が任意に選択することが可能である。
【0094】
この状態において、作業者がメニューボタン62aを所定時間以上押し続ける(以下、単に「長押し」と記す)と、ECU100は液晶表示部61を
図7に示す各種設定画面に切り替える。各種設定画面は、作業者がトラクタ1に関する設定操作を行うための画面である。
【0095】
ここで、記号61aは車輪の周長の設定を、記号61bはトラクタ1に取り付けられる作業機の幅の設定を、記号61cは時間の設定を、記号61dは走行距離の計測に関する設定を、記号61eはトラクタ1のスリップ率の制御に関する設定を、記号61fはトラクタ1の作業履歴に関する設定を、記号61gはトラクタ1に取り付けられる作業機の昇降と車速を連動させる制御の設定を、記号61hはトレッドの設定を、それぞれ行う際に選択されるものである。
【0096】
作業者は、トラクタ1のトレッドを変更する場合、
図10(a)に示すように、第二ボタン62bや第三ボタン62dを複数回押して記号61hにカーソルを合わせ、第四ボタン62eを押して当該記号61hを選択する。記号61hが選択されると、ECU100は液晶表示部61を
図10(b)に示すトレッド設定画面に切り替える。トレッド設定画面は、トラクタ1のトレッドの設定値を変更するための画面である。
【0097】
トレッド設定画面では、ECU100は、液晶表示部61の略中央部にトラクタ1のトレッドの現在値61j及び設定値61kを同時に表示させる。
図11(a)に示すように、作業者は、設定値61kにカーソルを合わせ、第一ボタン62b又は第二ボタン62cを押して当該設定値61kの値を任意に変更する。この際、第一ボタン62b又は第二ボタン62cを長押しすることによって、設定値61kを連続して素早く増加又は減少させることができる。
図11(a)においては、設定値61kの値を1400(mm)に変更するものとする。
【0098】
なお、設定値61kの値は、予め定められた複数段階の値に変更可能とすることも、無段階に変更可能とすることもできる。
【0099】
作業者は、設定値61kの値を所望の値に変更した後、
図11(b)に示すように、第三ボタン62dを押して「Set」記号61mにカーソルを合わせ、第四ボタン62eを押して当該「Set」記号61mを選択し、設定値61kを確定させる。
【0100】
このようにして、ステップS104及びステップS116で説明したように、ECU100はトレッド保持モードM1からトレッド変更モードM2へと遷移することになる。
【0101】
なお、このトレッド設定画面においては、第一ボタン62bを押して(又は長押しして)トレッドの設定値61kを減少させていくと、
図12(a)に示すように、ECU100は所定の値(本実施形態においては、1320(mm))で設定値61kの減少を一旦止める。すなわち、上述の第一ボタン62bを押す操作(又は、長押しする操作)では、それ以上設定値61kを減少させることができなくなる。ECU100は、ボタン(第一ボタン62b)を一旦離し、再度長押しされた場合にのみ、当該設定値61kをさらに減少させる。
【0102】
これは、トレッドを当該所定の値(1320(mm))未満に設定する場合、車輪(後車輪)のサイズ(型)によってはトラクタ1の機体と当該後車輪とが干渉するおそれがあるため、当該所定の値未満に容易に設定できないようにするための措置である。
【0103】
そして、第一ボタン62bを長押しして設定値61kを所定の値未満に減少させた場合、
図12(b)に示すように、ECU100は当該所定の値未満に設定されたトレッドでトラクタ1の機体と干渉することなく使用(装着)可能な車輪のサイズを記号61nとして表示する。
【0104】
このように、車輪とトラクタ1の機体とが干渉するおそれがあるトレッドの設定値に変更する際には、作業者はそれ以前の設定操作とは異なる所定の操作(一旦ボタンを離し、再度ボタンを長押しする操作)を行う必要がある。さらに、このようなトレッドの設定値に変更した際には、ECU100は記号61nを表示させ、使用可能な車輪のサイズを作業者に報知する。このようにして、作業者に車輪のサイズに関する注意を喚起し、車輪と機体との干渉の発生を未然に防止することができる。
【0105】
なお、本実施形態においてはトレッドの設定値を所定の値未満に設定する場合にのみ、前記所定の操作を必要とするものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、トレッドの設定値を所定の値より大きく設定する場合にも、同様の操作を必要とする構成とすることも可能である。これによって、トレッドを大きい値に変更する際に、車輪とトラクタ1の周囲の障害物との接触等が発生しないように作業者に注意を喚起することができる。
【0106】
このように、トレッドの設定値を所定の範囲外(所定の値未満の値や、所定の値より大きい値)へと変更する際に、所定の範囲内において変更する場合とは異なる前記所定の操作を必要とする構成とすることが可能であり、また当該所定の範囲は、トラクタ1の機種や作業内容等に応じて予め任意に設定することが可能である。
【0107】
次に、
図13及び
図14を用いて、トレッド変更モードM2における処理について説明する。
【0108】
ステップS202において、ECU100は、キースイッチ52が切操作されたか否かを判定する。
ECU100は、キースイッチ52が切操作された場合、ステップS212に移行する。
ECU100は、キースイッチ52が切操作されていない場合、ステップS204に移行する。
【0109】
ステップS204において、ECU100は、「CANCEL」記号61pが選択されたか否かを判定する。
【0110】
ここで、
図14(a)に示すように、トレッド変更モードM2においては、ECU100はサブメータ60の液晶表示部61に「CANCEL」記号61pを表示させる。「CANCEL」記号61pは、左トレッドシリンダ26L及び右トレッドシリンダ26Rの駆動を任意のタイミングで停止させるためのものである。
作業者は、第三ボタン62dを押して「CANCEL」記号61pにカーソルを合わせ、第四ボタン62eを押して当該「CANCEL」記号61pを選択することができる。
【0111】
ECU100は、「CANCEL」記号61pが選択されたと判定した場合、ステップS216に移行する。
ECU100は、「CANCEL」記号61pが選択されていないと判定した場合、ステップS206に移行する。
【0112】
ステップS206において、ECU100は、トレッドの現在値が設定値から所定の値より大きくずれているか否か、言い換えれば、トレッドの現在値が設定値から所定の値の範囲内に収まっているか否か、を判定する。
ECU100は、トレッドの現在値が設定値から所定の値の範囲内に収まっていると判定した場合、ステップS218に移行する。すなわちこの場合、ECU100はブザー58から音を発して作業者に報知すると共に、トレッド保持モードM1に遷移する。
ECU100は、トレッドの現在値が設定値から所定の値の範囲内に収まっていないと判定した場合、ステップS208に移行する。
【0113】
ステップS208において、ECU100は、ソレノイド出力条件が成立しているか否かを判定する。当該ソレノイド出力条件はトレッド保持モードM1のものと同一であるため、説明を省略する。
ECU100は、ソレノイド出力条件が成立していないと判定した場合、トレッド変更モードM2の処理を繰り返す。
ECU100は、ソレノイド出力条件が成立していると判定した場合、ステップS210に移行する。
【0114】
ステップS210において、ECU100は、トレッドの現在値が前記設定値に近づく方向に変化するように、各ソレノイドを制御する。
【0115】
このとき、
図14(a)に示すように、ECU100は、サブメータ60の液晶表示部61に、トレッドの現在値61jと設定値61kを上下に並べて同時に表示させる。これによって、設定値に対して現在のトレッドの値(現在値)がどの程度の値なのかを作業者に容易に報知することができる。さらに、ECU100は、当該現在値61jの表示を点滅させる。これによって、作業者にトレッドが現在変更されている最中である旨を報知することができる。
【0116】
ECU100は、当該処理を行った後、トレッド変更モードM2の処理を繰り返す。
【0117】
また、ステップS202から移行したステップS212において、ECU100は、中断フラグとして「1」という値を記憶する。
ここで、「中断フラグ」とは、トレッドの変更中にキースイッチ52が切操作されたか否かを判定するためのものである。なお通常は、中断フラグには「0」という値が記憶されている。
ECU100は当該処理を行った後、ステップS214に移行する。すなわち、キースイッチOFF状態M5に遷移する。
【0118】
また、ステップS204から移行したステップS216において、ECU100は、「CANCEL」記号61pが選択されたときのトレッドの現在値を設定値として設定(記憶)する。
ECU100は、当該処理を行った後、ステップS218に移行する。すなわち、トレッド保持モードM1に遷移する。
【0119】
このように、トレッド変更モードM2においては、ECU100は、各ソレノイドの動作を繰り返し制御し(ステップS210)、トレッドの現在値を設定値(正確には、設定値に近い値)となるように(ステップS206)変更する。当該トレッドの変更が終了した場合には(ステップS206)、ECU100は制御モードをトレッド保持モードM1に遷移させ(ステップS218)、トレッドを設定値に保持する制御を開始する。また、トレッド変更モードM2の実行中、すなわちトラクタ1のトレッドが設定値になるように変更されている最中にキースイッチ52が切操作された場合には(ステップS202)、ECU100は中断フラグとして1という値を記憶し(ステップS212)、キースイッチOFF状態M5に遷移する(ステップS214)。
【0120】
次に、キースイッチOFF状態M5からトレッド保持モードM1又はトレッド中断モードM3に遷移する際の様子について説明する。
【0121】
図8に示すように、ECU100は、トレッド保持モードM1においてキースイッチ52が切操作された場合(
図9のステップS102)、トレッド変更モードM2においてキースイッチ52が切操作された場合(
図13のステップS202)、後述するトレッド中断モードM3においてキースイッチ52が切操作された場合(
図15のステップS302)、又はトレッド微調モードM4(詳細な説明は省略する)においてキースイッチ52が切操作された場合には、キースイッチOFF状態M5に遷移する。
【0122】
キースイッチOFF状態M5においてキースイッチ52が入操作されると、ECU100はキースイッチOFF状態M5からイニシャライズ処理状態M6に遷移する。
【0123】
イニシャライズ処理状態M6において、ECU100は、記憶されているトレッドの設定値及び前記中断フラグの値を読み出す。そしてECU100は、前記中断フラグの値が0である場合には、トレッド保持モードM1へと遷移する。またECU100は、前記中断フラグの値が1である場合、すなわち、前回のトレッド変更モードM2においてトラクタ1のトレッドが設定値になるように変更されている最中にキースイッチ52が切操作された場合には、トレッド中断モードM3へと遷移する。
【0124】
次に、
図14及び
図15を用いて、トレッド中断モードM3における処理について説明する。
【0125】
ステップS302において、ECU100は、キースイッチ52が切操作されたか否かを判定する。
ECU100は、キースイッチ52が切操作された場合、ステップS308に移行する。すなわち、キースイッチOFF状態M5(
図8参照)に遷移する。
ECU100は、キースイッチ52が切操作されていない場合、ステップS304に移行する。
【0126】
ステップS304において、ECU100は、サブメータ60の液晶表示部61に通知画面61qを表示させる。
【0127】
ここで、通知画面61qとは、
図14(b)に示すように、作業者に現在トレッド中断モードM3を実行している旨を報知するための画面である。通知画面61qは液晶表示部61の略全域に亘って表示され、その他の情報(例えば、
図7に示すような各種設定画面のメニューや、
図14(a)に示すようなトレッドの現在値61j及び設定値61k等)が同時に表示されることはない。このように、液晶表示部61に通知画面61qのみを表示させることで、作業者にトレッド中断モードM3を実行している旨をより確実に報知することができる。
【0128】
ECU100は、当該処理を行った後、ステップS306に移行する。
【0129】
ステップS306において、ECU100は、第四ボタン62eが押し操作されたか否かを判定する。
ECU100は、第四ボタン62eが押し操作されたと判定した場合、ステップS310に移行する。
ECU100は、第四ボタン62eが押し操作されていないと判定した場合、トレッド中断モードM3の処理を繰り返す。
【0130】
ステップS310において、ECU100は、第四ボタン62eが押し操作された際のトレッドの現在値を、設定値として設定する。
ECU100は、当該処理を行った後、ステップS312に移行する。すなわち、トレッド保持モードM1に遷移する。
【0131】
このように、トレッド中断モードM3においては、ECU100は第四ボタン62eが押し操作されるまで(ステップS306)サブメータ60に通知画面61qのみを表示し続ける(ステップS304)。そして作業者は、当該通知画面61qを見て、現在トレッド中断モードM3が実行されていること、すなわち、前回のトレッド変更モードM2においてトラクタ1のトレッドが設定値になるように変更されている最中にキースイッチ52が切操作されたことを認識することができる。
【0132】
また作業者は、第四ボタン62eを押し操作することによって(ステップS306)、トレッド中断モードM3を終了し、トレッド保持モードM1に遷移することができる(ステップS312)。ここで、第四ボタン62eを押し操作したときのトレッドが新たに設定値として設定されているため(ステップS310)、トレッド保持モードM1に遷移した直後に不意にトレッドが変更されることを防止することができる。またこの際、左トレッドシリンダ26Lと右トレッドシリンダ26Rの長さが何らかの理由(例えば、キースイッチOFF状態M5における各シリンダからの作動油の漏れ等)で異なっている場合には、トレッド保持モードM1において再び左右のシリンダの長さが同一となるように調整される(ステップS112参照)。
【0133】
またこのトレッド中断モードM3においては、トレッドの現在値が設定値と異なっていたとしても、当該トレッドを設定値になるように変更する処理(制御)を行うことがない。これによって、不意にトレッドの変更が行われることを防止(牽制)することができる。
【0134】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車両)は、
入操作によって機器の電源の投入及びエンジン6の始動が可能であると共に、切操作によって前記機器の電源の切断及びエンジン6の停止が可能なキースイッチ52(始動停止手段)と、
トレッドを変更するアクチュエータ(左トレッドシリンダ26L及び右トレッドシリンダ26R)と、
機体に関する設定操作を行うためのサブメータ60の操作部62(設定操作部)と、
トレッドの現在値を検出するためのセンサ(左トレッドセンサ34L及び右トレッドセンサ34R)と、
トレッドの現在値が、操作部62によって設定された設定値になるように前記アクチュエータの駆動を制御することが可能なECU100(制御装置)と、
を具備するトラクタ1であって、
ECU100は、
トレッドの現在値が前記設定値になるように前記アクチュエータを駆動させている最中にキースイッチ52が切操作された後に、キースイッチ52が再度入操作された場合において、トレッドの現在値が前記設定値と異なっていたとしても前記アクチュエータを駆動させないトレッド中断モードM3(中断モード)を実行するものである。
このように構成することにより、トレッドが変更されている最中にエンジン6等が停止されてその後再度始動された場合に、不意にトレッドの変更が行われないように牽制することができる。
【0135】
また、ECU100は、
トレッド中断モードM3の実行中に、操作部62の第四ボタン62eの押し操作(所定の操作)がなされた場合、当該操作されたときのトレッドの現在値をトレッドの設定値として設定すると共に、トレッド中断モードM3を終了するものである。
このように構成することにより、トレッド中断モードを終了する際にトレッドの現在値を設定値として設定することで、トレッド中断モードの終了後に不意にトレッドの変更が行われないように牽制することができる。
【0136】
また、トラクタ1は、
機体に関する情報を作業者に報知するためのサブメータ60の液晶表示部61(表示部)をさらに具備し、
ECU100は、
トレッド中断モードM3を実行している場合、液晶表示部61に当該トレッド中断モードM3を実行している旨(通知画面61q)のみを表示すると共に、他の情報を表示しないものである。
このように構成することにより、トレッド中断モードM3を実行している旨をより確実に作業者に報知することができる。
【0137】
また、本実施形態に係るトラクタ1は、
機体に関する情報を作業者に報知するためのサブメータ60の液晶表示部61と、
トレッドを変更する前記アクチュエータと、
機体に関する設定操作を行うためのサブメータ60の操作部62と、
トレッドの現在値を検出するための前記センサと、
トレッドの現在値が、前記設定操作部によって設定された設定値になるように前記アクチュエータの駆動を制御することが可能なECU100と、
を具備するトラクタ1であって、
ECU100は、
液晶表示部61にトレッドの現在値61j及び設定値61kを表示させるものである。
このように構成することによって、トレッドの現在値61j及び設定値61kを容易に確認することができる。
【0138】
また、ECU100は、
液晶表示部61にトレッドの現在値61j及び設定値61kを同時に表示させるものである。
このように構成することにより、当該トレッドの設定値61kと現在値61jを同時に確認することができる。
【0139】
また、ECU100は、
トレッドの現在値が前記設定値になるように前記アクチュエータを駆動させている場合、トレッドの現在値61jを点滅させるものである。
このように構成することにより、トレッドが変更中であることを容易に確認することができる。
【0140】
また、ECU100は、
操作部62の操作によってトレッドの設定値61kを所定の範囲外の値に変更する場合、所定の範囲内の値に変更する場合とは異なる所定の操作を行った場合にのみ変更可能とし、
前記所定の範囲外のトレッドに変更された機体に装着可能な車輪を作業者に報知するものである。
このように構成することにより、トレッドの設定値61kを所定の範囲外の値へと変更する際に所定の操作を要求することで、作業者に注意を喚起することができる。また、作業者は装着可能な車輪を容易に確認することができる。
【0141】
また、ECU100は、
トレッドの現在値が前記設定値になるように前記アクチュエータを駆動させている最中に、液晶表示部61に前記アクチュエータの駆動を停止させるための「CANCEL」記号61p(停止記号)を表示させ、
「CANCEL」記号61pを選択する操作がなされた場合、前記アクチュエータの駆動を停止させるものである。
このように構成することにより、トレッドの設定値61kにかかわらず、トレッドの変更を任意のタイミングで停止させることができる。
【0142】
なお、本実施形態においては、始動停止手段として所定のキーを挿し込むことによって操作可能なキースイッチ52を用いているが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の操作具(例えば、押しボタン等)を用いることも可能である。
【0143】
また、本実施形態においては、設定操作部及び表示部としてサブメータ60(液晶表示部61及び操作部62)を用いているが、本発明はこれに限るものではなく、例えば設定操作部と表示部とを別部材で構成することや、タッチパネルを用いて設定操作部と表示部とを一体的に構成すること等も可能である。また、本実施形態においては、設定操作部にボタン(メニューボタン62a、第一ボタン62b、第二ボタン62c、第三ボタン62d及び第四ボタン62e)を用いているが、本発明はこれに限るものではなく、例えばダイヤルを用いて表示部に表示されるトレッドの設定値を変えることも可能である。
【0144】
また、本実施形態においては、アクチュエータとして左トレッドシリンダ26L及び右トレッドシリンダ26Rを用いているが、本発明はこれに限るものではなく、左右の摺動ケース同士を一本のシリンダで連結することや、トレッドを変更可能なものであればその他のアクチュエータ(例えば、モータ等)を用いることも可能である。
【0145】
また、本実施形態においては、制御装置としてECU100を用いているが、本発明はこれに限るものではなく、例えばトラクタ1が有する複数のECU(エンジン6を制御するためのECU、トレッドを制御するためのECU等)を組み合わせて制御装置として用いることも可能である。
【0146】
また、本実施形態においては、センサとして回転式ポテンショメータ(左トレッドセンサ34L及び右トレッドセンサ34R)を用いているが、本発明はこれに限るものではなく、トラクタ1のトレッドを検出することができるセンサであれば良い。
【0147】
また、本実施形態においては、トレッドの設定値を所定の範囲外(所定の値未満)へと変更する際には、当該トレッドで使用可能な車輪のサイズを記号61nとして表示するものとしたが(
図12(b)参照)、例えば、トラクタ1に装着された車輪のサイズをサブメータ60から予め入力し、トレッドの設定値を当該車輪のサイズに適した範囲にのみ変更可能とすることも可能である。このように、車輪のサイズに応じて変更可能な設定値の範囲を制限することによって、作業者の誤操作によって不適切な値がトレッドの設定値として設定されることを防止することができる。
【0148】
また、本実施形態においては、左右一対の後車輪(5L、5R)が装着されているが、本発明はこれに限るものではなく、例えばクローラ型の後車輪を装着してもよい。
【0149】
また、本実施形態においては、左右一対の後車輪(5L、5R)における本制御を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、前車輪(3・3)において本制御を実施することも可能である。
【0150】
また、本実施形態においては、ECU100は液晶表示部61にトレッドの現在値61jと設定値61kを同時に表示させるものとした(
図11等参照)が、本発明はこれに限るものではない。すなわち
図16に示すように、現在値61j(
図16(a))と設定値61k(
図16(b))とを別々に表示させることも可能である。またこの場合、当該現在値61j又は設定値61kの表示を、操作部62の操作によって切り替える構成とすることも可能である。