特許第5955816号(P5955816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955816
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】放射線防護衣
(51)【国際特許分類】
   G21F 3/02 20060101AFI20160707BHJP
   A41D 13/02 20060101ALI20160707BHJP
   A41D 1/00 20060101ALI20160707BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20160707BHJP
   A61B 6/10 20060101ALI20160707BHJP
【FI】
   G21F3/02 A
   A41D13/02
   A41D1/00 C
   A41D27/00 A
   A61B6/10 302
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-143041(P2013-143041)
(22)【出願日】2013年7月8日
(65)【公開番号】特開2015-17809(P2015-17809A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】301025977
【氏名又は名称】プロト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】松山 建宝
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−132127(JP,A)
【文献】 特開2012−007278(JP,A)
【文献】 特開平09−067711(JP,A)
【文献】 特開昭54−98499(JP,A)
【文献】 特開昭59−51375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/02
G21F 3/00
A41D 13/00
A41D 1/00
A41D 27/00
A61B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に着用されて、人を放射線から防護する放射線防護衣において、
一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体に巻いて身体を覆う覆い体と、
前記覆い体の略全面に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽部材と、
前記覆い体の一端側の表面と他端側の裏面に巻き方向にそれぞれ所定長さ設けられ、互いに係合されることで該一端側と該他端側とを連結する面ファスナと、
前記覆い体の一端側表面の先端部に前記所定長さより短い長さ分設けられ、前記面ファスナ部分とは区別して視認できる形態で成る、前記遮蔽部材の自重によって前記面ファスナの係合が外れる虞のあることを警告する警告表示部と、を備え、
前記警告表示部は、前記一対の面ファスナの互いの係合長が前記遮蔽部材の自重によって前記面ファスナの係合が外れる虞のない適正な係合長であるとき前記覆い体の他端側に隠され、前記一対の面ファスナの互いの係合長が前記適正な係合長でないとき前記覆い体の他端側に隠されることなく外部から見える状態となる、ことを特徴とする放射線防護衣。
【請求項2】
人に着用されて、人を放射線から防護する放射線防護衣において、
一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体に巻いて身体を覆う覆い体と、
前記覆い体の略全面に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽部材と、
前記覆い体の一端側の表面と他端側の裏面に巻き方向にそれぞれ所定長さ設けられ、互いに係合されることで該一端側と該他端側とを連結する面ファスナと、
前記覆い体の一端側表面の先端部に前記所定長さより短い長さ分設けられ、前記面ファスナ部分とは区別して視認できる形態で成る警告表示部と、を備え、
前記警告表示部は、前記一対の面ファスナの互いの係合長が適正であるとき前記覆い体の他端側に隠され、前記一対の面ファスナの互いの係合長が適正でないとき前記覆い体の他端側に隠されることなく外部から見える状態となり、
前記覆い体の他端側は、平面視でU字状に切欠いた形状とされており、
前記一対の面ファスナの互いの係合長が適正でない状態になったとき、前記U字状の切欠いた部分を通して前記警告表示部が見える状態となる、ことを特徴とする放射線防護衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人に着用されて、人を放射線から防護する放射線防護衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、放射線防護衣において、身体を覆う覆い体に、放射線(X線、α線、β線、ガンマ線等)を遮蔽する遮蔽部材を設けたものがある。覆い体は、天然繊維や合成繊維を用いた織布、不織布、合成皮革等により形成されている。遮蔽部材は、重金属をポリ塩化ビニルやポリエステル等の合成樹脂に含有させた部材により形成されており、覆い体の全面又は一部に設けられている。
【0003】
このような放射線防護衣において、身体の一部の全周(腰から膝上に亘る部分の全周、胸から腰に亘る部分の全周、胸から膝上に亘る部分の全周等)を放射線から防護するものがある。このような放射線防護衣では、覆い体は、身体の一部の全周を覆うようになっており、遮蔽部材は、覆い体の全面に設けられている。また、このような放射線防護衣において、覆い体を一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体の一部の全周に巻いて、覆い体の一端側と他端側に設けられた面ファスナを互いに係合することで覆い体の一端側と他端側とを連結して、着用するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−132127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の放射線防護衣においては、遮蔽部材は、放射線を遮蔽するために重金属を含んでおり、重量が重い。このため、放射線防護衣を着用しているときに、面ファスナの互いの係合長が短いと(係合長が適正でないと)、遮蔽部材の自重によって、面ファスナの互いの係合が外れてしまう虞がある。また、面ファスナの互いの係合長が短いと、放射線防護衣の着用者が身動きしたときに、面ファスナの互いの係合が外れてしまう虞もある。面ファスナの互いの係合が外れてしまうと、覆い体の一端側と他端側との連結が外れてしまい、放射線防護衣の着用者の放射線から防護すべき身体の一部が露呈してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、覆い体の一端側と他端側とを連結する面ファスナの互いの係合が適正でないときに警告表示がなされて、防護衣の適正な着用を促し、ひいては、防護衣の面ファスナの互いの係合が外れるのを防止することができる放射線防護衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の放射線防護衣は、人に着用されて、人を放射線から防護する放射線防護衣において、一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体に巻いて身体を覆う覆い体と、覆い体の略全面に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽部材と、覆い体の一端側の表面と他端側の裏面に巻き方向にそれぞれ所定長さ設けられ、互いに係合されることで該一端側と該他端側とを連結する面ファスナと、覆い体の一端側表面の先端部に所定長さより短い長さ分設けられ、面ファスナ部分とは区別して視認できる形態で成る、遮蔽部材の自重によって面ファスナの係合が外れる虞のあることを警告する警告表示部と、を備え、警告表示部は、一対の面ファスナの互いの係合長が遮蔽部材の自重によって面ファスナの係合が外れる虞のない適正な係合長であるとき覆い体の他端側に隠され、一対の面ファスナの互いの係合長が適正な係合長でないとき覆い体の他端側に隠されることなく外部から見える状態となる。
【0008】
また、本発明の放射線防護衣は、人に着用されて、人を放射線から防護する放射線防護衣において、一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体に巻いて身体を覆う覆い体と、覆い体の略全面に設けられ、放射線を遮蔽する遮蔽部材と、覆い体の一端側の表面と他端側の裏面に巻き方向にそれぞれ所定長さ設けられ、互いに係合されることで該一端側と該他端側とを連結する面ファスナと、覆い体の一端側表面の先端部に所定長さより短い長さ分設けられ、面ファスナ部分とは区別して視認できる形態で成る警告表示部と、を備え、警告表示部は、一対の面ファスナの互いの係合長が適正であるとき覆い体の他端側に隠され、一対の面ファスナの互いの係合長が適正でないとき覆い体の他端側に隠されることなく外部から見える状態となり、覆い体の他端側は、平面視でU字状に切欠いた形状とされており、一対の面ファスナの互いの係合長が適正でない状態になったとき、U字状の切欠いた部分を通して警告表示部が見える状態となる。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射線防護衣を着用している状態において、面ファスナの互いの係合長が適正であるときには、警告表示部が覆い体の他端側に隠されて外部から見えない状態となり、面ファスナの互いの係合長が適正でないときには、警告表示部が覆い体の他端側に隠されることなく外部から見える状態となる。これにより、放射線防護衣の着用者又はその近くに居る者は、警告表示部が見えないときには、面ファスナの互いの係合長が適正であると判断することができ、警告表示部が見えるときには、面ファスナの互いの係合長が適正でないと判断することができる。従って、警告表示部が覆い体の他端側に隠されるように面ファスナを互いに係合させることにより、面ファスナの互いの係合長を適正状態にすることができ、面ファスナの互いの係合が外れるのを防止することができる。これにより、放射線防護衣の着用者の放射線から防護すべき身体の一部が露呈してしまうのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る放射線防護衣の人に着用された状態の正面図、(b)は同背面図。
図2】(a)は同放射線防護衣の覆い体の一端側と他端側とを連結した状態の正面図、(b)は同覆い体の他端側を一端側から外して開いた状態の正面図、(c)は同覆い体を展開した状態の補強部材、覆い体の第2層、及び遮蔽部材の一部を破断した正面図。
図3】(a)は同放射線防護衣の面ファスナの係合長が適正であるときの着用例を示す正面図、(b)は同面ファスナの係合長が適正であるときの別の着用例を示す正面図、(c)は同面ファスナの係合長が適正でないときの着用例を示す正面図。
図4】(a)は本発明の第2の実施形態に係る放射線防護衣の人に着用された状態の正面図、(b)は同背面図。
図5】(a)は同放射線防護衣の覆い体の一端側と他端側とを連結した状態の正面図、(b)は同覆い体の他端側を一端側から外して開いた状態の正面図。
図6】(a)は本発明の第3の実施形態に係る放射線防護衣の人に着用された状態の正面図、(b)は同背面図。
図7】(a)は同放射線防護衣の覆い体の一端側と他端側とを連結した状態の正面図、(b)は同覆い体の他端側を一端側から外して開いた状態の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態による放射線防護衣について図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1(a)(b)、図2(a)(b)(c)は、第1の実施形態による放射線防護衣の構成を示す。放射線防護衣1は、人に着用されて、人を放射線から防護するものである。この放射線防護衣1は、スカートタイプの防護衣であり、人の身体の腰から膝上に亘る部分の全周を放射線から防護するものである。
【0012】
放射線防護衣1は、人の身体に巻いて身体を覆う覆い体2と、放射線(X線、α線、β線、ガンマ線等)を遮蔽する遮蔽部材3と、覆い体2の一端側と他端側とを連結する一対の面ファスナ4A、4Bと、放射線防護衣1が適正に着用されていないことを警告する警告表示部5とを備える。
【0013】
覆い体2は、天然繊維や合成繊維を用いた織布、不織布、合成皮革等の部材により形成されている。覆い体2は、一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体の腰から膝上に亘る部分に巻いて、身体の腰から膝上に亘る部分の全周を覆うことができる形状をしている。覆い体2の他端側は、平面視でU字状に切欠いた形状とされている。すなわち、覆い体2は、覆い体2の他端側の巻き方向に張り出す2つの張出部2a、2bを有する。U字状の切欠いた部分6(張出部2aと張出部2bとの間)は、放射線防護衣1が適正に着用されていないときに警告表示部5を見せるための窓の役割を果たすものである。
【0014】
遮蔽部材3は、重金属をポリ塩化ビニルやポリエステル等の合成樹脂に含有させた部材により形成されており、柔軟性を有するシート状をしている。遮蔽部材3は、重金属を含有していることにより、放射線を遮蔽する能力を有している。遮蔽部材3は、覆い体2の内部に設けられている。すなわち、覆い体2は第1層21と第2層22とを有する2層構造になっており、覆い体2の第1層21と第2層22との間に遮蔽部材3が設けられている。遮蔽部材3は、覆い体2の略全面に設けられており、覆い体2の張出部2a、2b以外の部分の全面に設けられている(張出部2a、2bの部分には設けられていない)。すなわち、遮蔽部材3は、覆い体2の張出部2a、2b以外の部分において、覆い体2と同じ形状をしていて、過不足なく覆い体2の第1層21及び第2層と重なっている。覆い体2の第1層21、第2層22、及び遮蔽部材3は、周縁部分において、周縁部分を補強する補強部材8と共に、糸9によって縫合されている。補強部材8は、覆い体2の第1層21、第2層22、及び遮蔽部材3の周縁全体に亘って、それらの端縁及び端面を覆っており、覆い体2の第1層21、第2層22、及び遮蔽部材3は、周縁に沿って、補強部材8と共に縫合されている。
【0015】
面ファスナ4A、4Bは、多数の微細係合体が密集して設けられたものであり、面ファスナ4Aの微細係合体と面ファスナ4Bの微細係合体とが係合することにより、面ファスナ4Aと面ファスナ4Bとが互いに係合して貼り付くように構成された留め具である。面ファスナ4Aは、覆い体2の一端側の表面(覆い体2の第1層21の表面)の一部に設けられており、面ファスナ4Bは、覆い体2の他端側の裏面(覆い体2の第2層22の表面)の一部に設けられている。但し、面ファスナ4Bは、覆い体2の他端側の裏面のうち、少なくとも張出部2a、2bの部分を含む一部に設けられている。面ファスナ4Aは、覆い体2の一端側の巻方向に所定長さ設けられており、覆い体2の一端側の端縁まで設けられている。面ファスナ4Bは、覆い体2の他端側の巻方向に所定長さ設けられており、覆い体2の他端側の端縁まで設けられている。面ファスナ4A、4Bは、接着剤等により覆い体2に接着されている。面ファスナ4A、4Bは、互いに係合されることで、覆い体2の一端側と他端側とを連結する。
【0016】
警告表示部5は、覆い体2の一端側の表面の先端部に設けられている。警告表示部5は、覆い体2の一端側の巻方向に面ファスナ4Aの長さ(所定長さ)より短い長さ分設けられており、覆い体2の一端側の端縁まで設けられている。警告表示部5は、警告表示部5の周囲の部分とは区別して視認できる形態で成っており、例えば、警告表示部5の周囲の部分と色が異なっている。なお、警告表示部5は、面ファスナ4Aの一部であり、面ファスナ4Aの一部を兼ねている。すなわち、警告表示部5は、面ファスナ4Aのうちの警告表示部5以外の部分とは区別して視認できる形態で成っており、例えば、面ファスナ4Aのうちの警告表示部5以外の部分は、青色になっており、警告表示部5の部分は、黄色になっている。
【0017】
また、警告表示部5は、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長L(面ファスナ4Aと面ファスナ4Bとが互いに係合している部分の覆い体2の巻方向の長さ)が適正であるとき覆い体2の他端側に隠され、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないとき覆い体2の他端側に隠されることなく外部から見える状態となるように、設けられている。すなわち、警告表示部5は、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でない状態になったとき、覆い体2のU字状の切欠いた部分6(張出部2aと張出部2bとの間)を通して見える状態となるように、設けられている。
【0018】
面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であるときとは、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正下限係合長以上のときであり、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないときとは、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正下限係合長よりも短いときである。適正下限係合長は、遮蔽部材3の自重(放射線防護衣1の自重)や放射線防護衣1の着用者の身動きによって、面ファスナ4A、4Bの互いの係合が外れてしまう虞がないときの係合長の、下限の係合長である。この適正下限係合長は、放射線防護衣1の重量や形状、面ファスナ4A、4Bの取付位置や形状等によって異なり、試験等により求められる。この適正下限係合長に基いて、警告表示部5の長さ(覆い体2の一端側の巻方向の長さ)が決められる。
【0019】
このような構成の放射線防護衣1は、覆い体2を一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように人の身体の腰から膝上に亘る部分に巻いて、面ファスナ4Aと面ファスナ4Bとを互いに係合して覆い体2の一端側と他端側とを連結することにより、人に着用される。
【0020】
放射線防護衣1を着用している状態において、覆い体2は、一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体の腰から膝上に亘る部分に巻かれて、身体の腰から膝上に亘る部分の全周を覆う。従って、覆い体2の張出部2a、2b以外の部分の全面に設けられている遮蔽部材3も、覆い体2と同じように身体に巻かれて、身体の腰から膝上に亘る部分の全周を覆う。これにより、遮蔽部材3によって、人の身体の腰から膝上に亘る部分の全周が放射線から防護される。
【0021】
また、放射線防護衣1を着用している状態において、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であるときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されて外部から見えない状態となる。一方、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されることなく外部から見える状態となる。すなわち、覆い体2のU字状の切欠いた部分6(張出部2aと張出部2bとの間)を通して警告表示部5が見える状態となる。
【0022】
図3(a)(b)(c)は、放射線防護衣1の着用例を示す。図3(a)に示す例では、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されていて外部から見えていない(面ファスナ4Aも隠されていて外部から見えない)。従って、図3(a)に示す例では、面ファスナ4A、Bの互いの係合長Lは適正であり、放射線防護衣1は適正に着用されている。
【0023】
また、図3(b)に示す例では、面ファスナ4Aの一部が外部から見えているが、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されていて外部から見えていない。従って、図3(b)に示す例でも、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lは適正であり、放射線防護衣1は適正に着用されている。
【0024】
一方、図3(c)に示す例では、警告表示部5の一部が覆い体2のU字状の切欠いた部分6(張出部2aと張出部2bとの間)を通して外部から見えている。従って、図3(c)に示す例では、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lは適正でなく、放射線防護衣1は適正に着用されていない。
【0025】
警告表示部5の一部又は全部がU字状の切欠いた部分6を通して外部から見えているときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されるように面ファスナ4Aと面ファスナ4Bとの係合を正すことにより、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lを適正にし、適正な着用となるようにする。
【0026】
本実施形態の放射線防護衣1によれば、放射線防護衣1を着用している状態において、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であるときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されて外部から見えない状態となり、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されることなく外部から見える状態となる。これにより、放射線防護衣1の着用者又はその近くに居る者は、警告表示部5が見えないときには、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であると判断することができ、警告表示部5が見えるときには、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないと判断することができる。従って、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されるように面ファスナ4A、4Bを互いに係合することにより、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正である状態にすることができ、放射線防護衣1を着用しているときに、面ファスナ4A、4Bの互いの係合が外れるのを防止することができる。これにより、放射線防護衣1を着用しているときに、覆い体2の一端側と他端側との連結が外れてしまうのを防ぐことができ、放射線防護衣1の着用者の放射線から防護すべき身体の一部が露呈してしまうのを防ぐことができる。
【0027】
しかも、覆い体2の他端側のU字状の切欠いた部分6は注目し易く、このU字状の切欠いた部分6を通して警告表示部5が見える状態となるため、警告表示部5が見える状態となっているときに、警告表示部5を発見し易い。これにより、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でなくて、警告表示部5が見える状態となっているときに、すぐに、警告表示部5を発見して、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないと判断することができる。
【0028】
また、覆い体2の他端側をU字状の切欠いた形状とすることにより、覆い体2の全面に設けられている遮蔽部材3の他端側も覆い体2と同じように切欠いた形状とすることになり、この切欠いた部分の重量だけ、放射線防護衣1を軽量化することができる。また、張出部2a、2bの部分に遮蔽部材3が設けられていないので、張出部2a、2b(及び張出部2a、2bの部分に設けられている面ファスナ4B)の柔軟性が高く、張出部2a、2bの部分に設けられている面ファスナ4Bの全体を面ファスナ4Aに係合させ易く、面ファスナ4A、4Bの互いの係合を良くすることができる。
【0029】
<第2の実施形態>
図4(a)(b)、図5(a)(b)は、第2の実施形態による放射線防護衣の構成を示す。本実施形態の放射線防護衣1は、上着タイプの防護衣であり、人の身体の胸から腰に亘る部分の全周を放射線から防護するものである。
【0030】
本実施形態の放射線防護衣1は、上記第1の実施形態と同様に、覆い体2と、遮蔽部材3と、面ファスナ4A、4Bと、警告表示部5とを備える。
【0031】
覆い体2は、上記第1の実施形態と同様に、天然繊維や合成繊維を用いた織布、不織布、合成皮革等の部材により形成されている。但し、本実施形態の放射線防護衣1では、覆い体2は、人の左右の腕を通すための開口7L、7Rがあり、開口7L、7Rに左右の腕を通した状態で、一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体の肩から腰に亘る部分に巻いて、身体の胸(開口7L、7Rの直下の部分)から腰に亘る部分の全周を覆うことができる形状をしている。覆い体2の他端側は、上記第1の実施形態と同様に、平面視でU字状に切欠いた形状とされている。すなわち、覆い体2は、覆い体2の他端側の巻き方向に張り出す2つの張出部2a、2bを有する。
【0032】
遮蔽部材3は、上記第1の実施形態と同様に、重金属をポリ塩化ビニルやポリエステル等の合成樹脂に含有させた部材により形成されており、覆い体2の内部に設けられている。遮蔽部材3は、覆い体2の略全面に設けられており、覆い体2の張出部2a、2b以外の部分の全面に設けられている(張出部2a、2bの部分には設けられていない)。
【0033】
面ファスナ4Aは、上記第1の実施形態と同様に、覆い体2の一端側の表面の一部に設けられている。面ファスナ4Bは、上記第1の実施形態と同様に、覆い体2の他端側の裏面の一部に設けられている。面ファスナ4A、4Bは、互いに係合されることで、覆い体2の一端側と他端側とを連結する。
【0034】
警告表示部5は、上記第1の実施形態と同様に、覆い体2の一端側の表面の先端部に設けられている。なお、警告表示部5は、上記第1の実施形態と同様に、面ファスナ4Aの一部であり、面ファスナ4Aの一部を兼ねている。
【0035】
また、警告表示部5は、上記第1の実施形態と同様に、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であるとき覆い体2の他端側に隠され、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないとき覆い体2の他端側に隠されることなく外部から見える状態となるように、設けられている。すなわち、警告表示部5は、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でない状態になったとき、覆い体2のU字状の切欠いた部分6(張出部2aと張出部2bとの間)を通して見える状態となるように、設けられている。
【0036】
このような放射線防護衣1は、覆い体2の左右の開口7L、7Rに人の左右の腕を通し、覆い体2を一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように人の身体の肩から腰に亘る部分に巻いて、面ファスナ4Aと面ファスナ4Bとを互いに係合して覆い体2の一端側と他端側とを連結することにより、人に着用される。
【0037】
放射線防護衣1を着用している状態において、覆い体2は、一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体の肩から腰に亘る部分に巻かれて、身体の胸(開口7L、7Rの直下の部分)から腰に亘る部分の全周を覆う。従って、覆い体2の張出部2a、2b以外の部分の全面に設けられている遮蔽部材3も、覆い体2と同じように身体に巻かれて、身体の胸から腰に亘る部分の全周を覆う。これにより、遮蔽部材3によって、人の身体の胸から腰に亘る部分の全周が放射線から防護される。
【0038】
また、放射線防護衣1を着用している状態において、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であるときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されて外部から見えない状態となる。一方、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されることなく外部から見える状態となる。すなわち、覆い体2のU字状の切欠いた部分6(張出部2aと張出部2bとの間)を通して警告表示部5が見える状態となる。
【0039】
本実施形態の放射線防護衣1によれば、上着タイプの防護衣において、上記第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0040】
<第3の実施形態>
図6(a)(b)、図7(a)(b)は、第3の実施形態による放射線防護衣の構成を示す。本実施形態の放射線防護衣1は、コートタイプの防護衣であり、人の身体の胸から膝上に亘る部分の全周を放射線から防護するものである。
【0041】
本実施形態の放射線防護衣1は、上記第1の実施形態と同様に、覆い体2と、遮蔽部材3と、面ファスナ4A、4Bと、警告表示部5とを備える。
【0042】
覆い体2は、上記第1の実施形態と同様に、天然繊維や合成繊維を用いた織布、不織布、合成皮革等の部材により形成されている。但し、本実施形態の放射線防護衣1では、覆い体2は、人の左右の腕を通すための開口7L、7Rがあり、開口7L、7Rに左右の腕を通した状態で、一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体の肩から膝上に亘る部分に巻いて、身体の胸(開口7L、7Rの直下の部分)から膝上に亘る部分の全周を覆うことができる形状をしている。また、覆い体2の他端側は、上下の2箇所において、平面視でU字状に切欠いた形状とされている。すなわち、覆い体2は、覆い体2の他端側の巻き方向に張り出す3つの張出部2a、2b、2cを有する。2箇所のU字状の切欠いた部分6a、6b(張出部2aと張出部2bとの間、及び張出部2bと張出部2cとの間)は、放射線防護衣1が適正に着用されていないときに警告表示部5を見せるための窓の役割を果たすものである。
【0043】
遮蔽部材3は、上記第1の実施形態と同様に、重金属をポリ塩化ビニルやポリエステル等の合成樹脂に含有させた部材により形成されており、覆い体2の内部に設けられている。遮蔽部材3は、覆い体2の略全面に設けられており、覆い体2の張出部2a、2b、2c以外の部分の全面に設けられている(張出部2a、2b、2cの部分には設けられていない)。
【0044】
面ファスナ4Aは、上記第1の実施形態と同様に、覆い体2の一端側の表面の一部に設けられている。面ファスナ4Bは、上記第1の実施形態と同様に、覆い体2の他端側の裏面の一部に設けられている。但し、本実施形態の放射線防護衣1では、面ファスナ4Bは、覆い体2の他端側の裏面のうち、少なくとも張出部2a、2b、2cの部分を含む一部に設けられている。面ファスナ4A、4Bは、互いに係合されることで、覆い体2の一端側と他端側とを連結する。
【0045】
警告表示部5は、上記第1の実施形態と同様に、覆い体2の一端側の表面の先端部に設けられている。なお、警告表示部5は、上記第1の実施形態と同様に、面ファスナ4Aの一部であり、面ファスナ4Aの一部を兼ねている。
【0046】
また、警告表示部5は、上記第1の実施形態と同様に、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であるとき覆い体2の他端側に隠され、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないとき覆い体2の他端側に隠されることなく外部から見える状態となるように、設けられている。但し、本実施形態の放射線防護衣1では、警告表示部5は、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でない状態になったとき、覆い体2の2箇所のU字状の切欠いた部分6a、6b(張出部2aと張出部2bとの間、及び張出部2bと張出部2cとの間)を通して見える状態となるように、設けられている。
【0047】
このような放射線防護衣1は、覆い体2の左右の開口7L、7Rに人の左右の腕を通し、覆い体2を一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように人の身体の肩から膝上に亘る部分に巻いて、面ファスナ4Aと面ファスナ4Bとを互いに係合して覆い体2の一端側と他端側とを連結することにより、人に着用される。
【0048】
放射線防護衣1を着用している状態において、覆い体2は、一端側と他端側とを互いに重ね合わせるように身体の肩から膝上に亘る部分に巻かれて、身体の胸(開口7L、7Rの直下の部分)から膝上に亘る部分の全周を覆う。従って、覆い体2の張出部2a、2b、2c以外の部分の全面に設けられている遮蔽部材3も、覆い体2と同じように身体に巻かれて、身体の胸から膝上に亘る部分の全周を覆う。これにより、遮蔽部材3によって、人の身体の胸から膝上に亘る部分の全周が放射線から防護される。
【0049】
また、放射線防護衣1を着用している状態において、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であるときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されて外部から見えない状態となる。一方、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されることなく外部から見える状態となる。すなわち、覆い体2の2箇所のU字状の切欠いた部分6a、6b(張出部2aと張出部2bとの間、及び張出部2bと張出部2cとの間)の少なくとも一方を通して警告表示部5が見える状態となる。
【0050】
本実施形態の放射線防護衣1によれば、コートタイプの防護衣において、上記第1の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0051】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態において、覆い体2の他端側は、平面視でU字状に切欠いた形状とされておらず、真っ直ぐな形状とされていてもよい。このような構成においても、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正であるときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されて外部から見えない状態となり、面ファスナ4A、4Bの互いの係合長Lが適正でないときには、警告表示部5が覆い体2の他端側に隠されることなく外部から見える状態となり、上記各実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。覆い体2は、1層構造であって、遮蔽部材3は、覆い体2の表面又は裏面に設けられていてもよい。面ファスナ4Aの長さと面ファスナ4Bの長さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。警告表示部5は、面ファスナ4Aの一部を兼ねていなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 放射線防護衣
2 覆い体
2a、2b、2c 張出部
3 遮蔽部材
4A、4B 面ファスナ
5 警告表示部
6、6a、6b U字状の切欠いた部分
7L、7R 開口
8 補強部材
9 糸
21 覆い体の第1層
22 覆い体の第2層
図1
図4
図2
図3
図5
図6
図7