(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5955819
(24)【登録日】2016年6月24日
(45)【発行日】2016年7月20日
(54)【発明の名称】エレベータ装置およびその運転方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20160707BHJP
【FI】
B66B5/02 P
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-189472(P2013-189472)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-54770(P2015-54770A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】饗場 純一
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−116655(JP,A)
【文献】
特開2011−046494(JP,A)
【文献】
特開2010−006496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震時自動診断運転を行うエレベータ装置であって、
操作されることによって消防運転が要求される消防運転スイッチ装置と、
前記地震時自動診断運転を行う際に、前記消防運転を行うことができない消防運転不可異常および前記消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない通常運転不可異常のそれぞれについて有無を診断する異常診断装置と
を備え、
前記消防運転不可異常があると前記異常診断装置が診断する場合には運転休止となり、前記消防運転不可異常がないと前記異常診断装置が診断する場合であって前記消防運転が要求された場合には前記消防運転を行うことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記異常診断装置は、前記地震時自動診断運転が行われている途中で前記消防運転が要求された場合に、前記通常運転不可異常の有無よりも前記消防運転不可異常の有無を優先して診断することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記消防運転不可異常および前記通常運転不可異常の何れもないと前記異常診断装置が診断する場合であって前記消防運転が要求されていない場合には前記通常運転を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記消防運転不可異常がなく前記通常運転不可異常があると前記異常診断装置が診断する場合であって前記消防運転が要求されていない場合には前記運転休止となることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れか一項に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
操作されることによって消防運転が要求される消防運転スイッチ装置と、地震時自動診断運転を行う際に、前記消防運転を行うことができない消防運転不可異常および前記消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない通常運転不可異常ののそれぞれについて有無を診断する異常診断装置とを備えたエレベータ装置の運転方法であって、
前記地震時自動診断運転を行う地震時自動診断運転工程と、
前記消防運転不可異常があると前記異常診断装置が診断する場合には運転休止となる運転休止工程と、
前記消防運転不可異常がないと前記異常診断装置が診断する場合であって前記消防運転が要求された場合には前記消防運転を行う消防運転工程と、
を備えたことを特徴とするエレベータ装置の運転方法。
【請求項6】
前記地震時自動診断運転工程において、前記消防運転が要求された場合には、前記異常診断装置は、前記通常運転不可異常の有無よりも前記消防運転不可異常の有無を優先して診断することを特徴とする請求項5に記載のエレベータ装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震時自動診断運転を行うエレベータ装置およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震感知器が地震を感知した場合に地震時管制運転を行い、地震時管制運転が行われた後、地震時自動診断運転を行うエレベータ装置が知られている。このエレベータ装置では、地震時自動診断運転において異常が検出されなかった場合に通常運転を行い、地震時自動診断運転において異常が検出された場合に運転休止となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−57192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地震時自動診断運転において、消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない程度の軽微な異常が検出された場合には、エレベータ装置は、運転休止となってしまい、消防運転が要求されても消防運転を行うことができないという問題点があった。
【0005】
この発明は、より確実に消防運転を行うことができるエレベータ装置およびその運転方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ装置は、地震時自動診断運転を行うエレベータ装置であって、操作されることによって消防運転が要求される消防運転スイッチ装置と、地震時自動診断運転を行う際に、消防運転を行うことができない消防運転不可異常および消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない通常運転不可異常のそれぞれについて有無を診断する異常診断装置とを備え、消防運転不可異常があると異常診断装置が診断する場合には運転休止となり、消防運転不可異常がないと異常診断装置が診断する場合であって消防運転が要求された場合には消防運転を行う。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベータ装置によれば、操作されることによって消防運転が要求される消防運転スイッチ装置と、地震時自動診断運転を行う際に、消防運転を行うことができない消防運転不可異常および消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない通常運転不可異常のそれぞれについて有無を診断する異常診断装置とを備え、消防運転不可異常があると異常診断装置が診断する場合には運転休止となり、消防運転不可異常がないと異常診断装置が診断する場合であって消防運転が要求された場合には消防運転を行うので、地震時自動診断運転において、消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない程度の軽微な異常が検出された場合には、エレベータ装置は、消防運転が要求されることによって消防運転を行うことができる。その結果、エレベータ装置は、より確実に消防運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置を示すブロック図である。
【
図2】地震時自動診断運転が終了した後におけるエレベータ装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】地震時自動診断運転が行われている途中で消防運転の要求があった場合におけるエレベータ装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ装置を示すブロック図である。図において、エレベータ装置は、地震を感知する地震感知器1と、消防運転を行うための消防運転スイッチ装置2と、地震時自動診断運転を行う際にエレベータ装置についての異常を診断する異常診断装置3と、エレベータ装置の運転を制御する制御装置4とを備えている。エレベータ装置は、制御装置4の制御によって、地震時管制運転、地震時自動診断運転、消防運転、通常運転および運転休止を切り換えて行うようになっている。
【0010】
地震感知器1は、エレベータ装置が設置された建築物の揺れを感知する。地震感知器1は、例えば、エレベータ機械室または昇降路ピットに設置されている。地震感知器1は、地震を感知すると、制御装置4に対して地震情報を出力する。
【0011】
消防運転スイッチ装置2は、エレベータかごに設置されている。消防運転スイッチ装置2は、消防時に操作される一次消防スイッチ21および二次消防スイッチ22を有している。消防運転スイッチ装置2は、一次消防スイッチ21が操作された場合に、一次消防スイッチ21が操作されたことを示す一次消防情報を制御装置4に対して出力する。また、消防運転スイッチ装置2は、二次消防スイッチ22が操作された場合に、二次消防スイッチ22が操作されたことを示す二次消防情報を制御装置4に対して出力する。
【0012】
異常診断装置3は、エレベータ装置が地震時自動診断運転を行う際に、消防運転を行うことができない消防運転不可異常および消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない通常運転不可異常のそれぞれについて有無を診断する。消防運転不可異常としては、重大な異常であって、例えば、巻上機トルクの異常、終点スイッチの異常、着床装置の異常などが挙げられる。通常運転不可異常としては、軽微な異常であって、例えば、エレベータかごの昇降時における異音もしくは異常振動の発生、または、戸開閉速度の異常などが挙げられる。異常診断装置3は、診断結果を制御装置4に出力する。
【0013】
制御装置4は、地震感知器1から地震情報が入力されると、エレベータ装置が地震時管制運転を行うように動作する。
【0014】
また、制御装置4は、地震時管制運転が行われた後に、エレベータ装置が地震時自動診断運転を行うように動作する。地震時自動診断運転では、制御装置4は、超低速走行、低速走行、定格速走行の順にかごを走行させて、異常診断装置3にエレベータ装置の異常を診断させる。
【0015】
また、制御装置4は、消防運転不可異常があると異常診断装置3が診断した場合には、エレベータ装置を運転休止させる。
【0016】
また、制御装置4は、消防運転不可異常がないと異常診断装置3が診断した場合であって、消防運転スイッチ装置2から一次消防情報または二次消防情報が入力された場合、つまり、消防運転が要求された場合には、エレベータ装置が消防運転を行うように動作する。消防運転の具体例としては、一次消防情報が入力された場合には、制御装置4は、乗場呼びを無効とし、各階で乗場呼びがされても、それに応じることなく目的階まで直行させる。一方、二次消防情報が入力された場合には、制御装置4は、乗場の戸開検出装置の検出結果を無効とし、エレベータかごまたは乗場の扉が戸閉位置にない状態であっても、エレベータかごの走行が可能となる。
【0017】
また、制御装置4は、異常診断装置3が消防運転不可異常および通常運転不可異常の何れもないと診断した場合であって、消防運転スイッチ装置2から一次消防情報および二次消防情報の何れも入力されていない場合、つまり、消防運転が要求されていない場合には、制御装置4は、エレベータ装置が通常運転を行うように動作する。
【0018】
また、制御装置4は、消防運転不可異常がなく通常運転不可異常があると異常診断装置3が診断した場合であって、消防運転スイッチ装置2から一次消防情報および二次消防情報の何れも入力されていない場合、つまり、消防運転が要求されていない場合には、エレベータ装置を運転休止させる。
【0019】
次に、エレベータ装置の運転方法について説明する。まず、消防運転が要求されていない場合におけるエレベータ装置の地震時自動診断運転について説明する。消防運転が要求されずに、地震時管制運転が終了すると、エレベータ装置は、消防運転不可異常および通常運転不可異常のそれぞれについての地震時自動診断運転を行う(地震時自動診断運転工程)。消防運転不可異常および通常運転不可異常のそれぞれについての地震時自動診断運転は、同時進行で行われる。
【0020】
次に、地震時自動診断運転が終了した後におけるエレベータ装置の動作について説明する。
図2は地震時自動診断運転が終了した後におけるエレベータ装置の動作を示すフローチャートである。まず、制御装置4は、異常診断装置3の診断結果に基づいて、消防運転不可異常または通常運転不可異常かがあるか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101で、消防運転不可異常および通常運転不可異常の何れもないと制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、通常運転(運転再開)を行う(通常運転工程)(ステップS102)。その後、制御装置4は、消防運転の要求があるか否かを判定する(ステップS103)。
【0021】
ステップS103で、消防運転の要求があると制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、消防運転を開始し(消防運転工程)(ステップS104)、その後、エレベータ装置は、消防運転を終了し(ステップS105)、その後、エレベータ装置は、通常運転(運転再開)を行う(通常運転工程)(ステップS106)。ステップS103で、消防運転の要求がないと制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、通常運転を継続する。
【0022】
一方、ステップS101で、消防運転不可異常または通常運転不可異常があると制御装置4が判定すると、制御装置4は、異常診断装置3の診断結果に基づいて、消防運転不可異常があるか否かを判定する(ステップS107)。ステップS107で、消防運転不可異常があると制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、消防運転が不可(運転休止)となる(運転休止工程)(ステップS108)。
【0023】
一方、ステップS107で、消防運転不可異常がないと制御装置4が判定すると、制御装置4は、消防運転の要求があるか否かを判定する(ステップS109)。
【0024】
ステップS109で、消防運転の要求があると制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、消防運転を開始し(消防運転工程)(ステップS110)、その後、エレベータ装置は、消防運転を終了し(ステップS111)、その後、エレベータ装置は、運転休止となる(運転休止工程)(ステップS112)。
【0025】
ステップS109で、消防運転の要求がないと制御装置4が判定すると、ステップS112に進む。
【0026】
次に、地震時自動診断運転が行われている途中で消防運転の要求があった場合のエレベータ装置の動作について説明する。
図3は地震時自動診断運転が行われている途中で消防運転の要求があった場合におけるエレベータ装置の動作を示すフローチャートである。まず、地震時管制運転が終了すると、エレベータ装置は、地震時自動診断運転を開始する(地震時自動診断運転工程)(ステップS201)。
【0027】
地震時自動診断運転工程において、消防運転の要求があると(ステップS202)、エレベータ装置は地震時自動診断運転を中断し(ステップS203)、その後、エレベータ装置は、消防運転不可異常についてのみの地震時自動診断運転を行う(消防運転不可異常診断運転工程)(ステップS204)。つまり、異常診断装置3は、通常運転不可異常の有無よりも消防運転不可異常の有無を優先して診断する。この時、エレベータ装置は、エレベータかごの走行速度を通常の走行速度よりも上げて地震時自動診断運転を行う。
【0028】
ステップS204の地震時自動診断運転が終了した後、制御装置4は、異常診断装置3の診断結果に基づいて、消防運転不可異常があるか否かを判定する(ステップS205)。ステップS205で、消防運転不可異常があると制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、消防運転が不可(運転休止)となる(運転休止工程)(ステップS206)。
【0029】
一方、ステップS205で、消防運転不可異常がないと制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、消防運転を行う(消防運転工程)(ステップS207)。
【0030】
ステップS207の消防運転が終了した後、エレベータ装置は、まだ有無が診断されていない通常運転不可異常についての地震時自動診断運転を行う(通常運転不可異常診断運転工程)(ステップS208)。
【0031】
ステップS208の地震時自動診断運転が終了した後、制御装置4は、異常診断装置3の診断結果に基づいて、通常運転不可異常があるか否かを判定する(ステップS209)。ステップS209で、通常運転不可異常があると制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、運転休止となる(ステップS210)。
【0032】
一方、ステップS209で、通常運転不可異常がないと制御装置4が判定すると、エレベータ装置は、通常運転を行う(通常運転工程)(ステップS211)。
【0033】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置によれば、操作されることによって消防運転が要求される消防運転スイッチ装置2と、地震時自動診断運転を行う際に、消防運転不可異常および通常運転不可異常のそれぞれについて有無を診断する異常診断装置3とを備え、消防運転不可異常があると異常診断装置3が診断する場合には運転休止となり、消防運転不可異常がないと異常診断装置3が診断する場合であって消防運転が要求された場合には消防運転を行うので、地震時自動診断運転において、消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない程度の軽微な異常が検出された場合には、エレベータ装置は、消防運転が要求されることによって消防運転を行うことができる。その結果、エレベータ装置は、より確実に消防運転を行うことができる。
【0034】
また、異常診断装置3は、地震時自動診断運転が行われている途中で消防運転が要求された場合に、通常運転不可異常の有無よりも消防運転不可異常の有無を優先して診断するので、消防運転不可異常の有無をより速く診断することができる。その結果、エレベータ装置は、より早く消防運転を開始することができる。
【0035】
また、エレベータ装置は、消防運転不可異常および通常運転不可異常の何れもないと異常診断装置3が診断する場合であって消防運転が要求されていない場合には通常運転を行うので、地震時診断運転が行われた後に、一般の利用者がエレベータ装置を利用することができる。
【0036】
また、エレベータ装置は、消防運転不可異常がなく通常運転不可異常があると異常診断装置3が診断する場合であって消防運転が要求されていない場合には運転休止となるので、通常運転不可異常がある場合に、一般の利用者がエレベータ装置を利用することを防止することができる。
【0037】
また、この発明の実施の形態1に係るエレベータ装置の運転方法によれば、地震時自動診断運転を行う地震時自動診断運転工程と、消防運転不可異常があると異常診断装置3が診断する場合には運転休止となる運転休止工程と、消防運転不可異常がないと異常診断装置3が診断する場合であって消防運転が要求された場合には消防運転を行う消防運転工程とを備えているので、地震時自動診断運転において、消防運転を行うことができるものの通常運転を行うことができない程度の異常が検出された場合には、エレベータ装置は、消防運転が要求されることによって消防運転を行うことができる。その結果、エレベータ装置は、より確実に消防運転を行うことができる。
【0038】
また、地震時自動診断運転工程において、消防運転が要求された場合には、異常診断装置3は、通常運転不可異常の有無よりも消防運転不可異常の有無を優先して診断するので、消防運転不可異常の有無をより速く診断することができる。その結果、エレベータ装置は、より早く消防運転を開始することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態1では、エレベータ装置が地震時自動診断運転の後に通常運転を行う構成について説明したが、この通常運転には、仮復旧運転も含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 地震感知器、2 消防運転スイッチ装置、3 異常診断装置、4 制御装置、21 一次消防スイッチ、22 二次消防スイッチ。