(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態>
〔画像形成装置1の全体の構成〕
まず、
図9を参照して、画像形成装置1の全体の構成について説明する。
画像形成装置1は、画像処理部11、原稿読取部12、原稿給送部13、搬送部(給紙ローラー42b、搬送ローラー対44、排出ローラー対45)、ネットワーク送受信部15、操作パネル部16、画像形成部17(画像形成手段)、FAX送受信部18(FAX送受信手段)、及び記憶部19等が、共通のバス等で制御部10に接続されている。各部は、制御部10によって動作制御される。
【0011】
制御部10は、GPP(General Purpose Processor)、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Processor、特定用途向けプロセッサー)等の情報処理手段である。
制御部10は、記憶部19のROMやHDDに記憶されている制御プログラムを読み出して、この制御プログラムをRAMに展開させて実行することで、後述する機能ブロックの各手段として動作させられる。また、制御部10は、図示しない外部の端末や操作パネル部16から入力された所定の指示情報に応じて、装置全体の制御を行う。
【0012】
画像処理部11は、DSP(Digital Signal Processor)やGPU(Graphics Processing Unit)等の制御演算手段である。画像処理部11は、画像データに対して所定の画像処理を行う手段であり、例えば、拡大縮小、濃度調整、階調調整、画像改善等の各種画像処理を行う。
画像処理部11は、原稿読取部12で読み取られた画像を、記憶部19に印刷データ300として記憶する。この際、画像処理部11は、印刷データ300をPDFやTIFF等のフォーマットのファイル単位に変換することも可能である。
【0013】
原稿読取部12は、セットされた原稿を読み取る(スキャン)手段である。
原稿給送部13は、原稿読取部12で読み取られる原稿を搬送する手段である。
画像形成部17は、ユーザーの出力指示により、記憶部19に記憶され、原稿読取部12で読み取られ、又は外部の端末から取得されたデータから記録紙への画像形成を行わせる手段である。
搬送部は、給紙カセット42a(
図10)から記録紙を搬送し、画像形成部17で画像形成させ、その後にスタックトレイ50へ搬送する。
なお、原稿読取部12、原稿給送部13、搬送部、画像形成部17の動作については後述する。
【0014】
ネットワーク送受信部15は、LAN、無線LAN、WAN、携帯電話網等の外部ネットワークに接続するためのLANボードや無線送受信機等を含むネットワーク接続手段である。
ネットワーク送受信部15は、データ通信用の回線ではデータを送受信し、音声電話回線では音声信号を送受信する。
【0015】
操作パネル部16は、LCD等の表示部と、テンキー、スタート、キャンセル、複写やFAX送信やスキャナー等の動作モードの切り換えのボタンと、選択された文書の印刷や送信や保存や記録等に関するジョブの実行に係る指示を行うためのボタンやタッチパネル等の入力部とを備えている。
操作パネル部16は、ユーザーによる画像形成装置1の各種ジョブの指示を取得する。また、操作パネル部16から取得したユーザーの指示により、各ユーザーの情報を入力、変更することも可能である。
【0016】
FAX送受信部18は、ファクシミリの送受信を行う手段であり、通常の電話回線やISDN回線等と接続されている。
また、FAX送受信部18は、受信したファクシミリ画像を印刷データ300(
図1)として記憶部19に記憶する。また、FAX送受信部18は、記憶部19に記憶された描画データ330を画像形成部17で記録する代わりに、ファクシミリ送信してもよい。
【0017】
記憶部19は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリーやHDD(Hard Disk Drive)等の記録媒体を用いた記憶手段である。
記憶部19のRAMは、省電力状態であっても、セルフリフレッシュ等の機能により、記憶内容が保持される。
記憶部19のROMやHDDには画像形成装置1の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。これに加えて、記憶部19は、ユーザーのアカウント設定も記憶している。また、記憶部19には、ユーザー毎の保存フォルダーの領域が含まれていてもよい。
【0018】
なお、画像形成装置1において、制御部10及び画像処理部11は、GPU内蔵CPU等やチップ・オン・モジュールパッケージのように、一体的に形成されていてもよい。
また、制御部10及び画像処理部11は、RAMやROMやフラッシュメモリー等を内蔵していてもよい。
【0019】
〔画像形成装置1の動作〕
次に、
図10を参照して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の動作について説明する。
原稿読取部12は、本体部14の上部に配設され、原稿給送部13は、原稿読取部12の上部に配設されている。スタックトレイ50は、本体部14に形成された記録紙の排出口41側に配設され、また、操作パネル部16は、画像形成装置1のフロント側に配設されている。
【0020】
原稿読取部12は、スキャナー12aと、プラテンガラス12bと、原稿読取スリット12cとを備えている。スキャナー12aは、露光ランプ、及びCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像センサー等から構成され、原稿給送部13による原稿の搬送方向に移動可能に構成されている。
プラテンガラス12bは、ガラス等の透明部材により構成された原稿台である。原稿読取スリット12cは、原稿給送部13による原稿の搬送方向と直交方向に形成されたスリットを有する。
【0021】
プラテンガラス12bに載置された原稿を読み取る場合には、スキャナー12aは、プラテンガラス12bに対向する位置に移動され、プラテンガラス12bに載置された原稿を走査しながら原稿を読み取って画像データを取得して、取得した画像データを本体部14に備わる制御部10(
図9)に出力する。
また、原稿給送部13により搬送された原稿を読み取る場合には、スキャナー12aは、原稿読取スリット12cと対向する位置に移動され、原稿読取スリット12cを介し、原稿給送部13による原稿の搬送動作と同期して原稿を読み取って画像データを取得し、取得した画像データを本体部14に備わる制御部10に出力する。
【0022】
原稿給送部13は、原稿載置部13aと、原稿排出部13bと、原稿搬送機構13cとを備えている。原稿載置部13aに載置された原稿は、原稿搬送機構13cによって、1枚ずつ順に繰り出されて原稿読取スリット12cに対向する位置へ搬送され、その後、原稿排出部13bに排出される。
なお、原稿給送部13は、可倒式に構成され、原稿給送部13を上方に持ち上げることで、プラテンガラス12bの上面を開放させることができる。
【0023】
本体部14は、画像形成部17を備えると共に、給紙部42と、用紙搬送路43と、搬送ローラー対44と、排出ローラー対45とを備えている。給紙部42は、それぞれサイズ又は向きが異なる記録紙を収納する複数の給紙カセット42aと、給紙カセット42aから記録紙を1枚ずつ用紙搬送路43に繰り出す給紙ローラー42bとを備えている。給紙ローラー42b、搬送ローラー対44、及び排出ローラー対45は、搬送部として機能する。記録紙は、この搬送部により搬送される。
給紙ローラー42bによって用紙搬送路43に繰り出された記録紙は、搬送ローラー対44によって画像形成部17に搬送される。そして、画像形成部17によって記録が施された記録紙は、排出ローラー対45によってスタックトレイ50に排出される。
【0024】
画像形成部17は、感光体ドラム17aと、露光部17bと、現像部17cと、転写部17dと、定着部17eとを備えている。露光部17bは、レーザー装置やミラーやレンズやLEDアレイ等を備えた光学ユニットであり、画像データに基づいて光等を出力して感光体ドラム17aを露光し、感光体ドラム17aの表面に静電潜像を形成する。現像部17cは、トナーを用いて感光体ドラム17aに形成された静電潜像を現像する現像ユニットであり、静電潜像に基づいたトナー像を感光体ドラム17a上に形成させる。転写部17dは、現像部17cによって感光体ドラム17a上に形成されたトナー像を記録紙に転写させる。定着部17eは、転写部17dによってトナー像が転写された記録紙を加熱してトナー像を記録紙に定着させる。
【0025】
〔画像形成装置1のシステム構成〕
図1を参照し、画像形成装置1のシステム構成について説明する。
画像形成装置1は、印刷データ取得部100、属性判別部110(属性判別手段)、色位置算出部120(色位置算出手段)、及び色値変換部130(色値変換手段)を備えている。
記憶部19は、印刷データ300、K単色色変換テーブル310(第1の色変換テーブル)、色相面色変換テーブル320(第2の色変換テーブル)、描画データ330を記憶する。
【0026】
印刷データ取得部100は、原稿読取部12、FAX送受信部18、ネットワーク送受信部15に接続された外部の端末やサーバー(図示せず)、外部記録媒体(図示せず)等から、印刷データ300を取得して、記憶部19に保存する。
【0027】
属性判別部110は、印刷データ300に含まれるデータの属性を判別する。属性判別部110は、印刷データ300に含まれる文字や画像等のオブジェクト毎に、データの属性を判別してもよい。
【0028】
色位置算出部120は、第1色値401のRGB色空間における色相面と彩度とを算出する。色位置算出部120は、この際、印刷データ300のオブジェクト内の画像データの各ピクセルを第1色値401として、色相面と彩度とを算出してもよい。
色位置算出部120は、色相面ピーク算出部121(色相面ピーク算出手段)、色相面座標算出部122(色相面座標算出手段)、及び座標比率比較部123(座標比率比較手段)を含んでいる。
【0029】
色相面ピーク算出部121は、色相面色変換テーブル320において第1色値401の色相面のピーク値を算出する。このピーク値は、色相面色変換テーブル320の各色相面において彩度が最大となるRGB色空間上の色値を示す。
【0030】
色相面座標算出部122は、色相面ピーク算出部121により算出されたピーク値と、第1色値401との位置関係を算出し、無彩色との比率を彩度として算出する。
【0031】
座標比率比較部123は、第1色値401の色相面に対応するK単色色変換テーブル310の無彩色の格子点と無彩色に近い格子点との距離を所定の閾値として、色相面座標算出部122により算出された比率と比較する。
【0032】
色値変換部130は、色位置算出部120により算出された第1色値401の彩度が所定の閾値より大きい場合には無彩色が単色に設定されたK単色色変換テーブル310により、所定の閾値以下の場合には無彩色が複数色の混色に設定された色相面色変換テーブル320により、第1色値401を第2色値402に変換する。
また、色値変換部130は、第1色値401から変換された第2色値402で、印刷データ300のオブジェクトを描画して、描画データ330を作成する。
色値変換部130は、K単色補間演算部131(第1補間演算手段)、及び色相面補間演算部132(第2補間演算手段)を含んでいる。
【0033】
K単色補間演算部131は、第1色値401について座標比率比較部123により比較された比率が所定の閾値より大きい場合には、K単色色変換テーブル310により第1色値401を第2色値402に変換する際の補間演算を行う。
【0034】
色相面補間演算部132は、第1色値401について座標比率比較部123により比較された比率が所定の閾値より以下の場合には、色相面色変換テーブル320により第1色値401を第2色値402に変換する際の補間演算を行う。
【0035】
印刷データ300は、取得された文書のデータである。印刷データ300は、原稿読取部12で読み取られた画像データ、FAX送受信部18で受信された画像データ、外部の端末等からネットワーク送受信部15を介して取得され又は外部記録媒体から取得されたPDL(Page Description Language)の印刷データ300、PDF(Portable Document Format)等の電子文書フォーマットのデータ、jpgやGIFやビットマップ等の画像データであってもよい。また、印刷データ300は、各種設定データを含んでいてもよい。また、印刷データ300は、ファイル名、ファイルの種類、作成時刻、更新時刻、閲覧時刻等のプロパティ情報も含んでいてもよい。
【0036】
印刷データ300は、文字や画像等の描画用のオブジェクト単位のデータを含んでいる。各オブジェクトのデータは、第1色値401を含んでいる。
第1色値401は、RGB色空間の色を示すデータである。第1色値401は、R、G、Bの各色の階調のデータを含む構造体等のデータ形式であってもよい。
【0037】
K単色色変換テーブル310は、RGB色空間内の所定間隔の格子点毎にCMYK色空間への変換値が設定されている。また、K単色色変換テーブル310は、無彩色の格子点にはK単色の値が設定されている。つまり、K単色色変換テーブル310は、格子点を等間隔に設定し、その格子点におけるRGB色からCMYK色へ割り当てるための値が保持されている。
印刷データ300の画像以外のオブジェクトと、画像のオブジェクトにおいて所定の閾値より彩度が大きい色については、このK単色色変換テーブル310で色変換される。
【0038】
色相面色変換テーブル320は、RGB色空間が所定間隔に分割された色相面において、K単色色変換テーブル310より細かい格子点毎のCMYK色空間への変換値が設定されている。また、色相面色変換テーブル320は、無彩色の格子点にはCMYK混色の値が設定されている。
印刷データ300の画像のオブジェクトにおいて、所定の閾値以下の彩度の色については、この色相面色変換テーブル320で色変換される。
【0039】
描画データ330は、画像形成部17等で出力されるビットマップデータや、当該ビットマップデータがランレングス圧縮されたデータ等である。描画データ330は、制御部10により、PDFやjpegデータ等に変換されて外部の端末に送信されたり、FAX送受信部18からファクシミリ送信されてもよい。
【0040】
描画データ330は、第1色値401が変換された第2色値402を含んでいる。
第2色値402は、CMYK色空間の色を示すデータである。第2色値402は、C、M、Y、Kの各色の階調のデータを含む構造体等のデータ形式であってもよい。
【0041】
ここで、画像形成装置1の制御部10は、記憶部19に記憶された制御プログラムを実行することで、印刷データ取得部100、属性判別部110、色位置算出部120、色相面ピーク算出部121、色相面座標算出部122、座標比率比較部123、色値変換部130、K単色補間演算部131、及び色相面補間演算部132として機能する。
また、上述の画像形成装置1の各部は、本発明の画像形成方法を実行するハードウェア資源となる。
【0042】
〔K単色色変換テーブル310及び色相面色変換テーブル320の詳細〕
図2は、本実施形態のK単色色変換テーブル310及び色相面色変換テーブル320の詳細について説明するための概念図である。
【0043】
図2(a)は、加色法の色空間であるRGB色空間を、三次元空間内の立方体として表現した例を示している。つまり、
図2(a)の立方体は、K(黒)から、R(Red)軸、G(Green)軸、B(Blue)軸方向にそれぞれ各色が加算された場合の各色の位置を示している。たとえば、RGB各色の階調が8ビット(0〜255)で表現された場合、立方体の頂点として、黒であるKはRGB=(0,0,0)、RはRGB=(255,0,0)、GはRGB=(0,255,0)、BはRGB=(0,0,255)として表現可能である。また、RGBのうち二種類の色が加算された色の頂点、Y(Yello)はRGB=(255,255,0)、C(Cyan)はRGB=(0,255,255)、M(Magenta)はRGB=(255,0,255)と表現される。また、RGB三種類が全て加算された頂点であるW(白)はRGB=(255,255,255)と表現される。
図2(b)は、RGB色空間のそれぞれの要素を等間隔に分割したものを格子点として色変換テーブルを作成する概念図を示している。上述の例のように、RGBで8ビット階調の場合、8の三乗となる約千七百万通りものCMYK色空間の色の割り当てを全て記憶するのは現実的でない。このため、階調を分割し、RGB色空間内で直交する各格子点について、CMYK色の割り当てを記憶する。
図2(b)の例では、8ビットの階調を4分割して各軸の格子数を5個とし、各格子点についてCMYK色の割り当てを保持したK単色色変換テーブル310を作成する例について示している。K単色色変換テーブル310では、格子点以外のRGB各色については、付近の格子点を利用した補間演算を用いて、CMYK色が算出される。
図2(c)は、RGB色空間におけるK(黒)とW(白)を結んだ線が、無彩色の軸となることを示している。すなわち、KからWまでの軸上に、RGB=(0,0,0)、RGB=(1,1,1)、RGB=(2,2,2)〜RGB=(255,255,255)となる無彩色が位置している。
図2(d)は、K単色色変換テーブル310のRGB色空間上における無彩色の軸付近の格子点を表現したものである。K単色色変換テーブル310では、これらの格子点において、無彩色については、CMYKで各8ビット階調の場合、CMYK=(0,0,0,0)〜CMYK=(0,0,0,255)のようなK単色の値が割り当てられている。
図2(e)は、
図2(d)に示したK単色色変換テーブル310の無彩色の軸付近の格子点群311を抜き出したものを示している。等間隔の格子点を備えるK単色色変換テーブル310では、無彩色周辺も周辺の格子点群311により補完演算される。
図2(f)は、
図2(e)に示した無彩色の軸付近の格子点群311を、無彩色の軸を中心において、軸を立てたものを示している。格子点群311で囲まれる空間は、
図2(f)のようになる。ここで、無彩色周辺は、無彩色の軸に貫かれた格子立体に含まれる部分と、無彩色の軸に貫かれていない格子立体に含まれない部分とが存在する。つまり、K単色色変換テーブル310で無彩色付近の色を合成すると、その格子の種類によって計算誤差が大きくなる。
無彩色付近の色の誤差はヒトの視覚の特性上、認識されやすい。このため、本実施形態では、無彩色の軸を中心にした所定の閾値内の領域で、K単色色変換テーブル310よりもより詳細な格子点が設定された色相面色変換テーブル320を用意する。この色相面色変換テーブル320は、後述するように、無彩色においてもCMYKの複数色の混色に設定されている。これにより、無彩色付近でも正確な色変換が可能である。なお、後述するように、色相面色変換テーブル320は、RGB色空間の無彩色の軸を中心としてRMBCGYの各頂点方向を色相として複数に分割した色相面毎にCMYKの各色が割り当てられている。
【0044】
〔画像形成装置1による色変換描画処理〕
次に、
図3〜
図5を参照して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1による色変換描画処理の説明を行う。
本実施形態の色変換描画処理は、印刷データ300を取得して、この印刷データ300内に含まれる各オブジェクトの第1色値401を第2色値402に変換して描画データ330を作成して出力する。この際に、第1色値401の彩度が所定の閾値より大きい場合はK単色色変換テーブル310にて色変換を行い、逆に第1色値401の彩度が所定の閾値以下の場合は色相面補間演算部132で色変換を行う。
本実施形態の色変換描画処理は、主に制御部10が、記憶部19に記憶されたプログラムを、各部と協働し、ハードウェア資源を用いて実行する。
以下で、
図3のフローチャートを参照して、色変換描画処理の詳細をステップ毎に説明する。
【0045】
(ステップS101)
まず、制御部10が、印刷データ取得部100により、印刷データ取得処理を行う。
制御部10は、原稿読取部12に載置された原稿を印刷データ300として読み取って取得する。この場合、印刷データ300に含まれるオブジェクトは、主にページ毎の画像データとなる。
また、制御部10は、FAX送受信部18からファクシミリ受信した印刷データ300を取得してもよい。この場合も、印刷データ300に含まれるオブジェクトは、主にページ毎の画像データとなる。
また、制御部10は、他の端末やサーバー(図示せず)から送信される印刷データ300をネットワーク送受信部15から取得してもよい。この場合は、印刷データ300にはページ毎の文字データと画像データのオブジェクトが含まれていてもよい。
また、制御部10は、外部に接続された記録媒体(図示せず)から印刷データ300を取得してもよい。この場合も、印刷データ300には、ページ毎の文字データと画像データのオブジェクトが含まれてもよい。
制御部10は、取得された印刷データ300を記憶部19に保存する。
【0046】
(ステップS102)
次に、制御部10が、属性判別部110により、オブジェクト属性判別処理を行う。
制御部10は、印刷データ300を解析し、当該印刷データ300に含まれる印刷単位であるオブジェクトを選択して取得し、このオブジェクトのデータの属性を判別する。
また、制御部10は、印刷データ300がPDL等の場合は、画像データとそれ以外の文字データ等に分解してもよい。
また、制御部10は、オブジェクトのデコードや変換等を行ってもよい。たとえば、制御部10は、オブジェクトがjpegの画像データであった場合、実際に描画されるビットマップ画像にデコードしてもよい。
【0047】
(ステップS103)
次に、制御部10が、属性判別部110により、印刷データ300のオブジェクトが画像データであるか否かを判定する。制御部10は、選択されたオブジェクトのデータの属性が画像データであった場合、Yesと判定する。この画像データとしては、ビットマップ等の画像データ以外に、ベクトル描画されるグラフや図形等のデータが含まれていてもよい。また、制御部10は、それ以外の場合、つまり選択されたオブジェクトのデータの属性が画像データ以外の文字データ等であった場合には、Noと判定する。
Yesの場合、制御部10は、処理をステップS104に進める。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS110に進める。
【0048】
(ステップS104)
選択されたオブジェクトが画像データであった場合、制御部10が、色位置算出部120により、第1色値取得処理を行う。
制御部10は、色変換が必要な印刷データ300のオブジェクトの画像データ中の各点のRGB値を取得する。この取得されたRGB値が第1色値401となる。
【0049】
(ステップS105)
次に、制御部10が、色位置算出部120の色相面ピーク算出部121により、ピーク値算出処理を行う。
図4(a)は、
図2(c)の立方体をKとWを結んだ無彩色の軸にて立てた状態の正面図を示している。この図では、RMBCGYの色相における位置と彩度とを表現できる。たとえば、RGB色空間内におけるR軸、G軸、B軸の階調の値により示される座標を(r,g,b)とすると、第1色値401を示すQ(r,g,b)は、RMBCGYの各色の頂点を結んだ領域内に位置する。制御部10は、この第1色値401の点Qの属する色相面と、最大彩度の値であるピーク値Pを算出する。
図4(b)は、点Qの位置座標を算出するための関係図である。制御部10は、点Qにおいて、同色相面のピーク値を、以下の式(1)で算出する:
ピーク値P(r,g,b)={Q(r,g,b)−min(Q(r,g,b))}/{max(Q(r,g,b))−min(Q(r,g,b))} …… 式(1)
ここで、「min()」は、同一色相面における(r,g,b)の最低明度の座標を示す。また、「max()」は、同一色相面における(r,g,b)の最大明度の座標を示す。
【0050】
(ステップS106)
次に、制御部10が、色位置算出部120の色相面座標算出部122により、色相面座標算出処理を行う。
制御部10は、色相面におけるピーク値Pと、無彩色の軸と、第1色値401の点Qとの関係から、点Qにおける距離比率βqを算出する。
制御部10は、色相面のピーク値Pとの位置関係を求め無彩色との距離比率βqを、以下の式(2)で算出する:
βq=max(Q(r,g,b))−min(Q(r,g,b)) …… 式(2)
【0051】
(ステップS107)
次に、制御部10が、色位置算出部120の座標比率比較部123により、座標比率比較処理を行う。
図5によると、制御部10は、通常色変換テーブルの格子点において、無彩色と、無彩色に近い格子点との距離αを閾値として上記のβqと比較する。つまり、点Qについて、その色相面における無彩色の軸と、ピーク値Pとの比率による比較を行う。
制御部10は、例えば、閾値を通常のK単色色変換テーブル310の格子数Nを利用して、閾値α=1/(N−1)とし、閾値αと距離比率βqの値を比較する。
図5(a)では、無彩色の軸を立ててRMBCGYの色相面において、K単色色変換テーブル310における無彩色軸から一つ分離れた格子点(
図2)と同様の格子点Rα、Mα、Bα、Cα、Gα、Yαは、それぞれ同じ所定距離離れた座標となる。この距離の部分がαであり、色相面色変換テーブル320を適用する範囲としてもよい。これにより、無彩色付近の色を、無彩色付近の格子との距離により補完することが可能となる。
つまり、色相面色変換テーブル320は、無彩色の軸から所定距離で囲んだ空間の座標における無彩色付近の値を補間するときに利用される。色相面色変換テーブル320は、RMBCGYの色相面を所定数に分割して、当該色相面毎にCMYK色の割り当てを保持してもよい。
図5(a)では、色相面色変換テーブル320として、色相面の分割数M=24とした例を示している。分割数M=48の場合はさらに詳細にCMYK色が割り当てられる。
【0052】
(ステップS108)
次に、制御部10が、色位置算出部120の座標比率比較部123により、第1色値401の彩度が所定の閾値以下であって、無彩色以外であるか否かを判定する。制御部10は、上述の式(2)で算出されたβqが閾値α以下であり、且つ、βqが0でない場合にYesと判定する。制御部10は、それ以外の場合、つまりβqが閾値αより大きかった場合、又は閾値α以下であってもβqが0の場合には、Noと判定する。なお、第1色値401のRGB色がほぼ同一の場合に、無彩色であると判定してもよい。
Yesの場合、制御部10は、処理をステップS109に進める。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS110に進める。
【0053】
(ステップS109)
彩度が所定の閾値以下の場合、制御部10が、色値変換部130の色相面補間演算部132により、色相面色変換処理を行う。
図5(b)によると、制御部10は、第1色値401の点Qが無彩色付近の場合、RMBCGYの色相面を利用した色相面色変換テーブル320を用いて補間演算を行い、第2色値402に変換する。βqがαの時、つまり、点Qの位置が閾値α以下で無彩色の軸に近い領域に含まれる場合、色相面ごとに細かく分割された色相面色変換テーブル320で補間演算を行う。
制御部10は、この補完演算において、第1色値401の点Q(r,g,b)が当該色相面に載っていない場合は、隣の色相面との間で線形補完してもよい。なお、制御部10は、無彩色の軸から所定距離で囲んだ空間の座標全てにおいて、CMYK色の割り当てを保持していてもよい。
制御部10は、その後、処理をステップS111に進める。
【0054】
(ステップS110)
彩度が所定の閾値より大きい場合及びデータの属性が画像以外であった場合、制御部10が、色値変換部130のK単色補間演算部131により、K単色色変換処理を行う。
制御部10は、無彩色の軸から遠い領域では、通常の色変換テーブルであるK単色色変換テーブル310で、第2色値402に変換する。つまり、第1色値401の点Qがαより大きい領域に含まれる場合、格子点に分割されたK単色色変換テーブル310により、線形補間を行う。
また、制御部10は、βqが閾値α以下であっても、βq=0、つまり点Qが無彩色である場合には、無彩色をK単色にするため、K単色色変換テーブル310の無彩色の軸の格子点により、線形補間を行ってもよい。なお、この際、制御部10は、無彩色の専用の一次元色変換テーブルを別途用いて補間計算を行ってもよい。
また、制御部10は、印刷データ300のオブジェクトのデータの属性が、画像データ以外であった場合にも、K単色色変換テーブル310により、線形補間を行う。
【0055】
(ステップS111)
ここで、制御部10が、色値変換部130により、描画処理を行う。
制御部10は、第1色値401から変換された第2色値402で、印刷データ300のオブジェクトを描画して、描画データ330を作成する。
【0056】
(ステップS112)
次に、制御部10が、色値変換部130により、オブジェクトの描画が完了したか否かを判定する。制御部10は、オブジェクトの描画が完了した場合に、Yesと判定する。制御部10は、それ以外の場合には、Noと判定する。
Yesの場合、制御部10は、処理をステップS113に進める。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS104に戻して、当該オブジェクト内で色変換が必要な第1色値401の第2色値402への変換を続ける。
【0057】
(ステップS113)
次に、制御部10が、色値変換部130により、ページの描画が完了したか否かを判定する。制御部10は、印刷データ300のページ内にある、全てのオブジェクトの描画が完了した場合に、Yesと判定する。制御部10は、それ以外の場合には、Noと判定する。
Yesの場合、制御部10は、処理をステップS114に進める。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS102に戻して、印刷データ300の他のオブジェクトの描画を続ける。
【0058】
(ステップS114)
ここで、制御部10が、ページ出力処理を行う。
制御部10は、描画データ330を、画像形成部17により出力させる。これにより、印刷データ300の第1色値401が第2色値402に色変換された状態のページが出力される。
なお、制御部10は、合成された描画データ330を、PDFやPSファイルの作成、外部の記録媒体への記録、外部の端末やサーバーへのファイル送信、ファクシミリ送信等により出力してもよい。
【0059】
(ステップS115)
次に、制御部10が、すべてのデータの出力が完了したか否かを判定する。制御部10は、印刷データ300に含まれる全てのページの出力が完了した場合に、Yesと判定する。制御部10は、それ以外の場合には、Noと判定する。
Yesの場合、制御部10は、色変換描画処理を終了する。
Noの場合、制御部10は、処理をステップS102に戻して、印刷データ300の次のページのオブジェクトの描画を行う。
以上により、本発明の実施の形態に係る色変換描画処理を終了する。
【0060】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
従来、特許文献1の画像形成装置では、非線形のスプライン変換により変換を行っていたため、演算量が多くなるという問題があった。このため、色変換の演算処理部のコストが高くなっていた。
これに対して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、取得された第1色値401を第2色値402に変換する色変換装置において、第1色値401の色相面と彩度とを算出する色位置算出部120と、色位置算出部120により算出された第1色値401の彩度が所定の閾値より大きい場合には無彩色が単色に設定されたK単色色変換テーブル310により、所定の閾値以下の場合には無彩色が複数色の混色に設定された色相面色変換テーブル320により、第1色値401を第2色値402に変換する色値変換部130とを備えることを特徴とする。
このように構成することで、スプライン変換のような複雑な処理をしなくても、色変換テーブルを分けることで無彩色付近の色変換を精度よく行うことができる。このため、色変換を行う制御部10のコストを低減させることができる。
【0061】
また、従来の格子点に分割された色変換テーブルにて、無彩色付近の色を計算するときに、単純な体積比率補間だと、体積を求める頂点として取得する格子点が、同じ色相内ではないため、余計な色が混じる可能性が高かった。
つまり、従来の格子点に分割された色変換テーブルは、無彩色の部分のみK単色に設定されている。この場合、補間演算で格子点以外の点を補完計算すると、無彩色付近にて設計値とはかけ離れた色(LAB値)を示すという問題があった。無彩色付近の色は、少しの色相差でもヒトの目には検知しやすい傾向があるため、これらの色変換の不具合が印刷物の見た目の品質を下げていた。
これに対して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、第1色値401の無彩色部分との位置関係を求め、この位置関係により色変換テーブル形状を切り換える。この際に、無彩色にはK単色ではなく、CMYK混色の色相面を利用した色相面色変換テーブル320を用いて、データの属性に応じて無彩色部分の出力色を置き換える。
このため、色変換テーブルを利用して色変換を行う際に、無彩色付近の色を精度良く再現し、印刷物の見た目の品質を向上させることができる。
【0062】
また、従来、スプライン関数等を用いて非線形の色変換を行うと、非線形に由来する誤差が発生していた。また、色空間をCIEの色相等の円柱形の座標に変換した場合、空間にゆがみを入れることで、データが非線形になるために補間によって得られるデータにゆがみが生じていた。このため、複雑な演算を行っても、正確な色変換ができなかった。
これに対し、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、第1色値401はRGB色空間の色を示し、第2色値402はCMYK色空間の色を示し、K単色色変換テーブル310は、RGB色空間内の所定間隔の格子点毎にCMYK色空間への変換値が設定され、無彩色の格子点にはK単色の値が設定され、色相面色変換テーブル320は、RGB色空間が所定間隔に分割された色相面においてK単色色変換テーブル310より細かい格子点毎のCMYK色空間への変換値が設定され、無彩色の格子点にはCMYK混色の値が設定されていることを特徴とする。
このように構成することで、RGB色空間からCMYK色空間への色変換テーブルで色変換する際に、入力データのRGB色空間座標に応じた変換を行うことができる。このため、RGB色空間で表現される第1色値401を、いちいちCIEの色相等に変換せずにCMYK色空間に変換することができ、座標変換によるゆがみが生じない。このため、色変換の精度を向上させることができる。
【0063】
また、従来、CIEの色相等の円柱形の座標に変換して色変換を行う場合は、本来利用しない色空間の領域を利用する必要があった。つまり、従来、高彩度且つ高明度部分や、高彩度且つ低明度部分の値は実際には殆ど存在しないにもかかわらず、色変換テーブルにとして格子を設定する必要があり、無駄な記憶容量が必要になっていた。
これに対して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、RGB色空間のK単色色変換テーブル310及び色相面色変換テーブル320を用意することで、色変換テーブルの記憶容量を削減し、記憶部19のコストを削減できる。
【0064】
また、従来の色変換テーブルにおいて、等間隔の格子に分割された色変換テーブルは、格子数がNの場合、(N^3)×4色分のデータが必要となっていた。つまり、格子数を増加させると三乗のオーダーで記憶容量が必要になっていた。
これに対して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、無彩色付近の色の精度を上げるために、色相面に沿った詳細な色変換テーブルである色相面色変換テーブル320を用いる。色相面をM分割することにより、N個の無彩色データと、一つの色相面につき、N−1個の無彩色付近の格子データが必要となるため、色相面色変換テーブル320は(N+(N−1)×M)×4のデータ数が必要になる。また、色変換を行うデータの属性に合わせて、K単色の無彩色を形成しなければならないため、K単色のN個の1次元色変換テーブルを用意してもよい(N×4色)。上記の無彩色付近における詳細色変換テーブルでは、無彩色データは、CMYK混色で形成されるようになっている。
つまり、本実施形態の画像形成装置1は、色変換テーブルのデータ数を、単純に三乗のオーダーで増加させず、合計すると4×(N^3+N(2+M)−M)に削減することが可能となる。この状態でも、精度良い色変換が可能である。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、色位置算出部120が、色相面色変換テーブル320において第1色値401の色相面のピーク値を算出する色相面ピーク算出部121と、色相面ピーク算出部121により算出されたピーク値と、第1色値401との位置関係を算出し、無彩色との比率を彩度として算出する色相面座標算出部122と、第1色値401の色相面に対応するK単色色変換テーブル310の無彩色の格子点と無彩色に近い格子点との距離を所定の閾値として、色相面座標算出部122により算出された比率と比較する座標比率比較部123とを備え、色値変換部130が、第1色値401について座標比率比較部123により比較された比率が所定の閾値より大きい場合には、K単色色変換テーブル310により第1色値401を第2色値402に変換する際の補間演算を行うK単色補間演算部131と、第1色値401について座標比率比較部123により比較された比率が所定の閾値より以下の場合には、色相面色変換テーブル320により第1色値401を第2色値402に変換する際の補間演算を行う色相面補間演算部132とを備えることを特徴とする。
このように構成することで、閾値によりK単色色変換テーブル310と色相面色変換テーブル320とを容易に判別することが可能となる。また、例えば、8ビットカラー以上の色の変換においても、容易に色変換テーブルの使い分けの判別が可能となる。
また、二つの色変換テーブルを容易に使い分けることで、複雑な計算を行ったり、膨大なデータを保持したりすることなく、色変換処理を行うことができる。
【0066】
また、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1は、印刷データ300に含まれるデータの属性を判別する属性判別部110を備え、色値変換部130は、属性判別部110により判別されたデータの属性が画像データ以外であった場合、K単色色変換テーブル310により色変換することを特徴とする。
このように構成することで、画像データ以外の文字データの属性をもつデータについては、色再現で無彩色をK単色と扱うことができる。これにより、文字をカラートナーで印刷する必要がなくなり、トナーを節約し、印刷時間も短縮でき、コストを削減できる。
【実施例】
【0067】
(色変換テーブルの作成)
図6は、下記で説明する比較例1と実施例1とに用いられるK単色色変換テーブル310と色相面色変換テーブル320を作成する例を示している。
図6では、格子数を9個とした際に、赤(RGB=255,0,0)をピークとする色相面の暗い領域(低明度、低彩度となる領域)の格子点の一部がどのような色値(CIE LAB)になるかについての例を示している。
図6(a)では、赤の色相面の黒色に近い部分の格子点P1、P2、P0において、RGB色空間の第1色値401に対してのLAB色空間の色値が示されている。
図6(b)では、各点P1、P2、P0において、LAB値に対応する画像形成装置1のデバイス依存のCMYKの色値が算出され、K単色色変換テーブル310と色相面色変換テーブル320とにそれぞれ登録される例を示している。この際、K単色色変換テーブル310は無彩色についてはKの単色で、色相面色変換テーブル320はCMYKの混色を登録する。本実施例では、色相面色変換テーブル320について、格子点以外の各色相面については、CMYKの混色を登録しない。
【0068】
(比較例1)
図7(a)は、比較例1として、K単色色変換テーブル310にて、格子点に設定された値に基づいて、格子点同士の中間点が線形補間される色変換の例について示す。
図7(a)では、無彩色の部分をK単色として、単一の色変換テーブルを生成した際に、第1色値401(入力)、色変換後の第2色値402(補完値)、第2色値402についてLAB色空間で計測した計測値をそれぞれ示している。
図7(a)の*印は、P0とP2の色値を示している。
図7(b)は、
図7(a)の補完値をCIE LAB計測し、計測値のLAB値をCIE CとCIE Lの軸で示したグラフを示している。グラフ中の「設計値」を示す直線は、本来の第2色値402として算出されるべき設計値(理想値)を示している。実際の色を計測すると、格子点間の補間により線形補間された補完値(補完後の測定値)は、設計値とは大きく離れた値となる。つまり、第2色値402は、CMYKの色値としては、格子点の間の値を通っているものの、実質の値を計測すると、格子を補間できていないことが分かる。
【0069】
(実施例1)
図8(a)は、実施例1として、無彩色の部分をK単色ではなく、CMYKの混色として生成した色相面色変換テーブル320により、格子点同士の中間点が線形補完される色変換の例について示す。
図8(a)においても、第1色値401(入力)、第2色値402(補完値)、第2色値402のLAB色空間の計測値を示している。また、*印は、P0とP2の色値を示している。
図8(b)は、
図8(a)の計測値をCIE CとCIE Lの軸で示したグラフで示したものである。グラフ中の設計値、グラフの軸の値は、
図7(b)と同様である。色相面色変換テーブル320において格子点間の補完をすると、第2補完値(補完値)は設計値になる。実際に出力された色を物理的に計測しても、補間で得られた部分が、設計値(理想値)に近いものとなる。つまり、格子点の値の中間を取ったCMYKの色値と、その値に対する計測値であるCIE LAB値とはそれぞれ、理想に近い線形性を保つことができている。
このように、実施例1では、無彩色についてCMYKの混色とした色相面色変換テーブル320で線形補完することで、設計値(理想値)と近い値に色変換することが可能となる。なお、上述の実施の形態において示したように、色相面色変換テーブル320として色相を分割してK単色色変換テーブル310より細かい格子点を設定することで、より精度高く色変換を行うことが可能となる。
【0070】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は、画像形成装置以外の色変換装置にも適用できる。つまり、ネットワークスキャナー、スキャナーをUSB等で別途接続したサーバー等を用いる構成であってもよい。
また、色変換装置として動画像を変換する汎用のコンピュータや、ディスプレイに色を割り当てるような装置に用いることも可能である。
また、上述の実施の形態においては、色空間としてRGB色空間とCMYK色空間について説明したが、他の色空間を用いてもよい。たとえば、CMYK以外の色が加えられた色空間について色変換をする構成であってもよい。
このように構成することで、無彩色付近の色に敏感なヒトの視覚に合わせた色の制御が可能となる。
【0071】
また、描画データ330のビットマップ画像の各点において、画像データ以外のデータ由来であるか否かを判別するためのフラグ画像等を用意してもよい。つまり、このような構成の場合、画像形成装置1の色値変換部130は、印刷データ300の各オブジェクトの描画時に、フラグ画像に、当該オブジェクトの属性を書き込む。そして、属性判別部110は、RGB色空間での描画後に、描画データ330の各点について属性を判別して色変換を行う。
このように構成することで、画像の上に文字が重ねられて表示されたデータ等において、色変換の時間を短縮できる。
また、属性判別部110は、印刷データ300の文字データ以外のオブジェクトについて、色相面色変換テーブル320を用いた色変換を行ってもよい。
これにより、画像データ以外の飾り文字やグラフ等のオブジェクトについても、色相面色変換テーブル320を用いた色変換を行うことができる。
【0072】
また、印刷データ300の各オブジェクトについて、色が少ない場合は、変換するRGBの色毎に変換を行い、結果をキャッシュデータとして記憶部19に記憶しておいてもよい。
このように構成することで、数色で構成された図面等の画像データのオブジェクトについて、いちいち色変換を行う必要がなくなり、処理を高速化できる。
また、画像データ以外の文字データ等についても、無彩色以外は色相面色変換テーブル320で変換するような構成としてもよい。
このように構成することで、無彩色の文字は黒単色で印刷されるためカラートナーの消費量を抑えて印刷を高速化させることができる。また、無彩色以外の文字については、より設計値に近い色で印刷できる。
【0073】
また、上述の実施の形態において、閾値αは閾値はK単色色変換テーブル310の分割数により設定した。しかしながら、これには限られず、画像形成装置1の色表現の設計値やヒトの色認識の測定値等から閾値αを設定してもよい。
この場合、格子点と格子点との境界面において、K単色色変換テーブル310と色相面色変換テーブル320とを両方用いて補完するように構成してもよい。
また、所定の閾値以下の無彩色に近い色値であることを判別するために、第1色値401の各色の色差の絶対値や平均値や分散等を算出し、この絶対値が閾値以下であるか否かを判別してもよい。たとえば、第1色値401の点QのR、G、Bの色差の絶対値が所定の閾値以下の場合、無彩色の軸に近い領域に含まれると判断してもよい。
【0074】
また、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。