【実施例】
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る地中熱交換システムの概略側面図、
図2は、
図1における地中に埋設された熱交換パイプの上面図であり、前記地中熱交換システムの構成を示す。地中熱交換システム100は、熱媒体となる空気を外部から給気する給気用パイプ102と、給気用パイプ102に接続され、全体が地中に埋設され、パイプ内を移動する熱媒体と地中熱との温度差に応じて空気の放熱または採熱をされる熱交換パイプ104と、熱交換パイプ104に接続され、熱交換された空気を外部へ排気する排気用パイプ106とを備えて構成される。
【0014】
給気用パイプ102、熱交換パイプ104および排気用パイプ106は、ストレート形状のパイプ(直管パイプ)やR形状に折れ曲がったパイプ等を接続することで任意の形状、大きさに構成することが可能である。パイプ間の接続は、公知の技術、例えば接続具を介して行うことができる。
【0015】
給気用パイプ102は、一方の端部と他方の端部とを有する断面がほぼ円形状の管であり、図示する例では、給気用パイプ102がL字型に延在するように構成されているが、これは一例であって給気用パイプは、設計に応じて任意の形状に延在するように構成され得る。給気用パイプ102の一方の端部は、地表面に露出され、給気口から外気を取り込む。給気用パイプ102の他方の端部は、熱交換パイプ104に接続される。給気用パイプ102は、自然に空気を内部に供給するものであることができるが、任意な構成として、例えば、給気用パイプ102の給気口の付近には、強制的に外気を取り込み、取り込んだ外気を熱媒パイプ104に向かわせる吸引装置または送風装置114が取付けられる。給気用パイプ102あるいは吸引装置114は、外気を取り込む際、ホコリ、砂、微粒子など不要物の侵入を防止するためのフィルタを備えることができる。これにより、パイプ内に不要物が進入し堆積されることが抑制される。
【0016】
排気用パイプ106は、一方の端部と他方の端部とを有する断面がほぼ円形状の管であり、図示する例では、排気用パイプ106がL字型に延在するように構成されるが、これは一例であって排気用パイプは設計に応じて任意の形状に延在するように構成され得る。排気用パイプ106の一方の端部は、地表面に露出され、他方の端部は、熱交換パイプ104に接続される。熱交換パイプ104内で熱変換された空気(熱媒体)は、排気用パイプ106の端部の排気口から外部へ排出される。排気用パイプ106は、自然に空気を排出するものであることができるが、任意な構成として、例えば排気用パイプ106の排気口の付近には、強制的に空気を外部へ排出させる排出装置または送風装置を取付けるようにしてもよい。さらに排気用パイプ106あるいは排出装置は、ホコリ、砂、微粒子など不要物の侵入を防止するためのフィルタを備えることができる。
【0017】
熱交換パイプ104は、一方の端部と他方の端部とを有する断面がほぼ円形状の管であり、ここでは給気用パイプ102および排気用パイプ106と同じ形状のものが用いられる。例えば、熱交換パイプの外径は、200mmである。熱交換パイプ104は、ほぼ矩形状にかつ螺旋状に延在するように構成される。言い換えれば、ほぼ直角に折れ曲がるコーナーを介して角形の1周が形成され、その1周が垂直方向に複数段連なるように延在している。1周は、例えば、約8m×60cmであり、複数段の垂直方向の長さは約1mである。
【0018】
熱交換パイプ104の一方の端部が給気用パイプ102の端部に接続され、他方の端部が排気用パイプ106に接続され、給気用パイプ102から取り込まれた空気が熱交換パイプ104を介して排気用パイプ106から排出される。熱交換パイプ104は、地中に形成された溝または堀の中に埋設され、埋設される深さは任意であるが、好ましくは、年間と通じて変動の少ない温度を得ることが可能な深さであることが望ましい。例えば、熱交換パイプ104は、地中の数メートルの深さに埋設される。
【0019】
熱交換パイプ104は、垂直方向の各段のパイプ間の距離が小さくなるような角度で傾斜され、各段のパイプを密接させることでよりコンパクトな構造にすることができる。これにより、熱交換パイプ104を埋設する範囲を小さくすることができ、施工が容易になり施工コストの低減を図ることができる。また、熱交換パイプ104は、90度に折り曲げられたコーナー部を有するため、流入された空気の流速がコーナー部で遅延されるのでコーナー部での熱交換効率が向上される。他方、流速が弱まることでコーナー部には不要物が蓄積され易くなる。
【0020】
給気用パイプ102、熱交換パイプ104および排気用パイプ106は、熱伝導性の高い材料、耐久性の高い材料等から構成されることが望ましい。例えば、熱交換パイプ104は、熱伝導率の高いアルミニウムや、腐食等の劣化を防ぐことができる耐久性が高い安価な硬質塩化ビニール樹脂などを用いて構成される。
【0021】
また本実施例では、給気用パイプ110、熱交換パイプ104および排気用パイプ106の全体の最深部には、水を溜める水溜部116が形成されている。
図1に示す例では、排気用パイプ106の最深部に水溜部116が形成されている。水溜部116は、熱交換パイプ104内などで発生した結露による水滴、あるいは熱交換パイプ104内の清掃の時に使用された水を溜めるものであり、一定量の液体を貯めることができる。水溜部116は、一定容量の水を蓄積可能にするため他のパイプの径よりも大きな径に構成されてもよいし、あるいは一定の深さを持つように構成されてもよい。水溜部116に溜まった水は、排気用パイプ106の掃除口112からポンプなどを用いて排出することができる。なお、水溜部116は、例えば、溜まった水を排水できるように、その底部に、複数の貫通口を設けてもよい。
【0022】
給気用パイプ102および排気用パイプ106のL字形状のコーナー部分に、掃除用の開口として掃除口110、112が形成される。掃除口110、112は、各パイプの内部を清掃するときに利用可能である。掃除口110、112は、例えば、ねじ付きの蓋により閉じられ、掃除する際に、その蓋を外すことが可能である。
【0023】
さらに本実施例では、給気用パイプ102、熱交換パイプ104および排気用パイプ106の内部に、可撓性の線状の埋め込み部材118が設けられる。埋め込み部材118は、金属材料、繊維材料またはプラスチック材料などから構成され、例えば金属ワイヤ、紐、ロープ等を用いることが可能である。
【0024】
図3(A)は、パイプ内の構成を示す図である。各パイプの内部には、掃除口110から掃除口112まで、埋め込み部材としてガイドワイヤ118が配設されている。ガイドワイヤ118は、例えば金属製のワイヤから構成される。ガイドワイヤ118は、給気用パイプ102、熱交換パイプ104および排気用パイプ106の全長と同程度かそれ以上の長さを有する。ガイドワイヤ118は、例えば、
図4(A)に示すように、掃除口112付近のパイプ内側に取付けられたフック120に、その端部が掛けられている。掃除口110側も同様に、フック120が設けらそこに固定されている。他の態様では、
図4(B)に示すように、ガイドワイヤ118は、掃除口110、112に取付けられた蓋(キャップ)110Aの貫通孔を通過され、貫通孔内にはゴムや金属等の固定部材122が取付けられ、固定部材122によってガイドワイヤ118の端部がしっかりと固定される。
【0025】
好ましい態様では、ガイドワイヤ118にブラシや布等の掃除用具を取付けてパイプ内の清掃が行われる。
図4Aは、掃除の一例を説明する図である。給気用パイプ102および排気用パイプ106の掃除口110、112に取付けられた蓋を取り外し、掃除口110、112からガイドワイヤ118のそれぞれの端部を外部に引き出す。次に、ガイドワイヤ118の一方の端部からブラシ等の掃除用具124をガイドワイヤに装着する。次に、ガイドワイヤ118の両端部を連結装置126によって連結し、ガイドワイヤ118の閉ループを形成する。連結装置126は、ガイドワイヤ118の両端部を着脱可能に連結するものであればよく、例えば、両端部をネジ等によって接続することができる。また、補助ワイヤ等を用いて両者を間接的に連結してもよい。そして、ガイドワイヤ118を移動させることで掃除用具124がパイプ内へ移動され、掃除用具124を1周させることでパイプ内の不要物を取り除くことができる。また、掃除を行うとき、掃除口110、112のいずれかから熱交換パイプ内に水を挿入し、パイプ内を水洗してもよい。
【0026】
さらに他の態様として、埋め込み部材118Aは、
図3(B)に示すように内部に空洞118Bが形成された中空の部材から構成され、中空の内部から外周に通じる溝118Cが形成されるものであってもよい。埋め込み部材118Aの端部から水を内部に供給することで溝118Cからパイプ内に水が排出される。これにより、パイプ内を掃除するときに水がパイプ内に供給され、不要物の除去をより容易に円滑に行うことができる。
【0027】
このように本実施例に係る地中熱交換システムでは、パイプ内に線状の埋め込み部材118を配設することで、熱交換パイプを地中に埋設した後に、パイプ内に蓄積された不要物を除去する等の清掃をすることができ、保守管理等のメンテナンスを容易にかつ効果的に行うことができる。これにより、熱交換パイプ内への不要物の蓄積を軽減し、特にコーナー部付近の不要物を除去することでコーナー部付近の熱交換効率を改善させることができ、さらに、熱交換された空気とともにホコリや砂が排出されることを防ぐことができる。
【0028】
なお、上記実施例では、掃除口110、112を給気用パイプ102の給気口および排気用パイプ106の排気口とは別個に設けたが、これに限らず、給気用パイプ102の給気口および排気用パイプ106の排気口が掃除口を兼用するものであってもよい。その例を
図4Bに示す。同図に示す地中熱交換システム100Aでは、給気用パイプ102および排気用パイプ106は、例えばストレート状に地中に向けて延在するように構成される。給気用パイプ102の給気口102Aは、外部から空気を取り込むとともに線状の埋め込み部材118の端部を取り出すことが可能である。線状の埋め込み部材118の端部は、例えば給気用パイプ102の側部においてフックや留め具等の固定装置122によって着脱可能に固定されている。同様に、排気用パイプ106の排気口106Aは、外部へ空気を排出するとともに線状の埋め込み部材118の端部を取り出すことが可能であり、その端部は固定装置122によって排気用パイプ106の側部に着脱可能に固定されている。
【0029】
さらに上記実施例では、給気用パイプ102の給気口および排気用パイプ106の排気口がそれぞれ1つの場合を例示したが、これに限らず、吸気口や排気口が複数形成されるようにしてもよい。
図4Cは、複数の給気用パイプ、複数の排気用パイプが熱交換パイプに接続される例を示している。同図に示すように、給気用パイプ102は、任意の形状、大きさ、数の給気用パイプ102A、102B、102Cを含むように構成され得る。同様に排気用パイプ106は、任意の形状、大きさ、数の排気用パイプ106A、106B、106を含むように構成され得る。
【0030】
このように、給気用パイプ102および排気用パイプ106の形状および線状の埋め込み部材118の固定方法は、あらゆる適切な態様によって行うことができ、図示する構成は一例であることに留意すべきである。
【0031】
図5(A)は、本実施例に係る地中熱交換システムの応用例を示す図である。本実施例に係る地中熱交換システム100は、例えば、農作物を栽培するビニールハウス200など農業施設の冷暖房補助システムに応用される。
図5(A)に示す例は、冬の季節に適した配置を示しており、給気用パイプ102、熱交換パイプ104および排気用パイプ106は、ビニールハウス200の内部に配置される。給気用パイプ102から取り込まれた空気は熱交換パイプ104内で熱交換され、排気用パイプ106から再びビニールハウス内に排出される。冬にはビニールハウス内の温度が低温になるので、ビニールハウス内で熱交換された空気を循環させ、これによりビニールハウス内の温度を効果的に温め、あるいは保持することができる。
【0032】
図5(B)は、夏の季節に適した配置を示しており、給気用パイプ102の給気口がビニールハウス200の外側に配置され、常に外気を取り込むように構成される。取り込まれた外気は、熱交換パイプ104によって熱交換された後、排気用パイプ104からビニールハウス内に排気される。夏には、ビニールハウス内の温度が高温になるので、外部から取り込んだ空気を地中熱交換システム100によって冷却し、冷却した空気をビニールハウス内に供給することで、ビニールハウス内の温度を冷却することができる。
【0033】
図5(C)は、複数の地中熱交換システム100をビニールハウス内に適用した例を示している。本例は、
図5(A)に示すような循環タイプの地中熱交換システム100が複数ビニールハウス内に配置されている。これ以外にも、
図5(B)に示すような地中熱交換システムを複数用いることも可能であるし、
図5(A)と
図5(B)に示すタイプを複数用いることも可能である。
【0034】
このように、ビニールハウス200は、年間を通じて地中熱温度に準じた室温で管理される。また、ビニールハウス内で冷暖房機器を使用する場合、地中熱交換システム100を併用することで、その稼動コストを低減することができる。
【0035】
上記応用例では、熱交換パイプがビニールハウス200内に地中に埋設される例を示したが、これに限らず熱交換パイプがビニールハウス外の地中に埋設されるようにしてもよい。さらに上記応用例では、1つの熱交換パイプから1つの排気用パイプの排気口が形成される構成を示したが、これに限らず、1つの排気用パイプを複数に分岐させ、複数の排気口が形成されるようにしてもよい。複数の排気口は、ビニールハウス内の所望の位置、例えば農作物の近傍に配置させることができる。
【0036】
図6(A)、(B)は、地中熱交換システムの第2の応用例を示す図である。第2の応用例では、地中熱交換システム100を2重構造のビニールハウス220に適用する。ビニールハウス220は、内張りビニール(内壁)222と外張りビニール(外壁)224との2重壁を有し、内壁222と外壁224との間に断熱層226を構成する。
図6(A)に示すように、給気用パイプ102がビニールハウス外の外気を給気し、排気用パイプ106が内壁222と外壁224との間に熱交換された空気を排出するように配置される。これにより、内壁222と外壁224との間に温度管理された断熱層を提供し、ビニールハウス220内の温度を外気温の変化の影響を強く受けないようにすることができる。
【0037】
また、
図6(B)に示すように、排気用パイプ106を複数から構成し、一部106Aをビニールハウス内に配置するようにしてもよい。特に夏の季節では、ビニールハウス内の温度が高温になるので、断熱層によって外気の影響を少なくするとともに、熱交換された空気をビニールハウス内に供給することで、ビニールハウス内の温度の冷却をより改善することができる。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。