【文献】
Y.Y. Durmaz, G. Yilmaz, Y. Yagci,N-Alkoxy Pyridinium Ion Terminated Polystyrenes: A Facile Route to Photoinduced Block Copolymerization,Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry,Wiley,2007年 2月 1日,Vol. 45, No. 3,pp.423-428
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Φが直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、アリール化合物、ヘテロアリール化合物、アラルキル化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー化合物、およびそれらの混合物よりなる群から選択され、
zが2から10であり、
前記マクロ光開始剤が400から500,000の数平均分子量を有し、
Lが、
少なくとも1つの二価有機部分を含むか、または、
少なくとも1つの二価有機部分と、−O−、−C(O)−、−O−C(O)−、−O−C(O)−O−、およびそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの二価無機部分とを含む、
二価連結基である、請求項1に記載のマクロ光開始剤。
Mが、1から20個の炭素原子をアルキル基中に有するアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、カルボン酸のビニルエステル、オレフィン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N−ジ(C1−C6アルキル)−(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物の少なくとも1つから誘導され、
zが5以下である、請求項5に記載のマクロ光開始剤。
前記重合開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルフォニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロ−C1−C6−カルボン酸のC1−C6−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C1−C6−アルキル)ベンゼン、ジ(C1−C6−アルキル)−2−ハロ−2−メチルマロネート、C1−C6−アルキル2−ハロイソブチレート、ジ(C1−C6−アルキル)−2,5−ジハロアジペート、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項9に記載のマクロ光開始剤の製造方法。
Φが、直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、アリール化合物、ヘテロアリール化合物、アラルキル化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー化合物、およびそれらの混合物よりなる群から選択され、
zが2から10であり、
前記マクロ光開始剤が、400から500,000の数平均分子量を有し、
Lが、
少なくとも1つの二価有機部分を含むか、または、
少なくとも1つの二価有機部分と、−O−、−C(O)−、−O−C(O)−、−O−C(O)−O−、およびそれらの組合せよりなる群から選択される少なくとも1つの二価無機部分とを含む、
二価連結基である、請求項12に記載の硬化性組成物。
Mが、1から20個の炭素原子をアルキル基中に有するアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、カルボン酸のビニルエステル、オレフィン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N−ジ(C1−C6アルキル)−(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物の少なくとも1つから誘導され、
zが5以下の整数である、請求項16に記載の硬化性組成物。
前記重合開始剤が、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルフォニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロ−C1−C6−カルボン酸のC1−C6−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C1−C6−アルキル)ベンゼン、ジ(C1−C6−アルキル)−2−ハロ−2−メチルマロネート、C1−C6−アルキル2−ハロイソブチレート、ジ(C1−C6−アルキル)−2,5−ジハロアジペート、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項20に記載の硬化性組成物の製造方法。
前記反応体の前記モノマーが、アルキル基中に1から20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、カルボン酸のビニルエステル、オレフィン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N−ジ(C1−C6アルキル)−(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物の少なくとも1つを含む、請求項23に記載の硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のマクロ光開始剤は開始剤の残基を含み、これを式(I)の記号Φで示す。開始剤によりマクロ光開始剤の少なくとも一部の形成が開始される。通常、開始剤は、エチレン系不飽和ラジカル重合性モノマーの重合を開始し、重合開始剤である。本発明の実施形態では、開始剤は制御ラジカル重合を開始し、以下でさらに詳細に議論するように移動性基(例えば、ラジカル移動性基)を含む。開始剤の残基Φは、直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、アリール化合物、ヘテロアリール化合物、アラルキル化合物、スルホニル化合物、スルフェニル化合物、カルボン酸のエステル、ポリマー化合物、およびそれらの混合物または組合せから選択されてよい。また、開始剤の残基は、官能基(例えば、グリシジル基のようなオキシラニル基、または、ヒドロキシル基、第1級アミン基および第2級アミン基のような活性水素基)で置換されてもよい。
【0021】
開始剤の残基は直鎖または分岐鎖脂肪族化合物から選択されてよく、その例としては、直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキル基(例えば、直鎖または分岐鎖C
1−C
10アルキル)、直鎖または分岐鎖C
2−C
20アルケニル基(例えば、直鎖または分岐鎖C
2−C
10アルケニル)、および直鎖または分岐鎖C
2−C
20アルキニル基(例えば、直鎖または分岐鎖C
2−C
10アルキニル)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルケニル基としては、ビニル、アリル、およびプロペニルが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、および2−ブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、直鎖または分岐鎖C
1−C
x基の記載、ここでxは最初の添字より大きく、例えば少なくとも2であり(例えば、直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキル基)、また、C
1−C
x直鎖または分岐鎖基のような同様の記載は、直鎖C
1−C
x基(例えば、直鎖C
1−C
20アルキル基)および分岐鎖C
3−C
x基(例えば、分岐鎖C
3−C
20アルキル基)を意味する。同様に、本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、直鎖または分岐鎖C
2−C
y基の記載、ここでyは最初の添字より大きく、例えば少なくとも3であり(例えば、直鎖または分岐鎖C
2−C
20アルケニル基、または直鎖または分岐鎖C
2−C
20アルキニル基)、また、C
2−C
y直鎖または分岐鎖基のような同様の記載は、直鎖C
2−C
y基(例えば、直鎖C
2−C
20アルケニル基、または直鎖C
2−C
20アルキニル基)および分岐鎖C
3−C
y基(例えば、分岐鎖C
3−C
20アルケニル基、または分岐鎖C
3−C
20アルキニル基)を意味する。
【0023】
開始剤の残基は脂環式化合物から選択されてよく、その例としては、C
3−C
12シクロアルキル基(例えば、C
3−C
10シクロアルキル基)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、およびシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
開始剤の残基は複素環式化合物から選択されてよく、その例としては、C
3−C
12ヘテロシクロアルキル基(少なくとも1つのヘテロ原子を環内に有する)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なヘテロシクロアルキル基としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、およびピペリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
開始剤の残基はアリール化合物から選択されてよく、C
5−C
18アリール基(多環式アリール基を含む)(例えば、C
5−C
10アリール基)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチル、およびアントラセニル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
開始剤の残基はヘテロアリール化合物から選択されてよく、C
5−C
18ヘテロアリール基(少なくとも1つのヘテロ原子を芳香族環に有し、多環式ヘテロアリール化合物を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なヘテロアリール基としては、フラニル、ピラニル、およびピリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
開始剤の残基はアラルキル化合物から選択されてよく、C
6−C
24アラルキル基(例えば、C
6−C
10アラルキル基)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアラルキル基としては、ベンジル(例えば、C
6H
5−CH
2−)、およびフェネチル(例えば、C
6H
5−CH
2CH
2−およびC
6H
5−CH(CH
3)−)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
開始剤の残基はスルホニル化合物から選択されてよく、下記の一般式l
【0029】
【化2】
で表されるものが挙げられる。一般式(l)において、R
aは、水素、直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、アリール化合物、ヘテロアリール化合物から選択されてよい。直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、アリール化合物、およびヘテロアリール化合物の種類および例としては、上記のものが挙げられる。一実施形態では、スルホニル化合物は、メタンスルホニル(R
aはメチル)およびp−トルエンスルホニル(R
aはp−トルエニル)から選択される。
【0030】
開始剤の残基はスルフェニル化合物から選択されてよく、下記の一般式(m)
【0031】
【化3】
によって表されるものが挙げられる。一般式(m)において、R
bは、直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、および複素環式化合物、アリール化合物、およびヘテロアリール化合物から選択されてよい。直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、アリール化合物、およびヘテロアリール化合物の種類および例としては、上記のものが挙げられる。一実施形態では、スルフェニル化合物は、直鎖または分岐鎖C
1−C
5アルキルスルフェニル、C
3−C
6シクロアルキルスルフェニルおよびベンゼンスルフェニルから選択される。
【0032】
開始剤の残基はカルボン酸のエステルから選択されてよく、下記の一般式(n)および(o)
【0033】
【化4】
によって表されるものが挙げられる。一般式(n)および(o)において、二価R
cおよび二価R
dは、各々独立して、直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、アリール化合物、ヘテロアリール化合物から選択されてよく、一般式(n)の一価R
cおよび一般式(o)の一価R
dは、各々、さらに水素から選択されてよい。直鎖または分岐鎖脂肪族化合物、脂環式化合物、複素環式化合物、アリール化合物、およびヘテロアリール化合物の種類および例としては、上記のものが挙げられる。開始剤の残基はカルボン酸のエステルから選択されてよく、ジカルボン酸のジエステル、例えば、ジ(C
1−C
6アルキル)マロネートおよびジ(C
1−C
6アルキル)アジペートも挙げられる。開始剤の残基はカルボン酸のエステルから選択されてよく、その例として、C
1−C
6−アルキル2−イソブチレート、例えば、−(CH
3CH
2)−CH−C(O)−O−(C
1−C
6アルキル)が挙げられる。
【0034】
開始剤の残基は、ポリマー化合物(オリゴマー化合物を含む)から選択されてよくリビングおよび非リビング重合によって合成されるポリマーが挙げられるがこれらに限定されず、また、これをマクロ開始剤の残基と呼ぶこともあり、それについては本明細書でさらに詳細に議論する。開始剤の残基はポリマー化合物から選択されてよく、その例としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(N−ビニルアミド)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、およびポリカーボネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
一般式(I)によって表されるポリマー鎖構造の残基Mは、少なくとも1つのエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマーから誘導される。本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「エチレン系不飽和ラジカル重合性モノマー」および類似の用語は、ビニルモノマー、アリルモノマー、オレフィン、およびラジカル重合性の他のエチレン系不飽和モノマーを含むことを意味する。
【0036】
Mは、ビニルモノマーの類から誘導されてよく、そのビニルモノマーの類としては、(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、およびカルボン酸のビニルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「(メタ)アクリレート」および類似の用語は、メタクリレートおよびアクリレートの両方を意味する。典型的には、残基Mは、アルキル基中に1から20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1つから誘導される。残基Mは、アルキル基中に1から20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートから誘導されてよく、その例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、および3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
また、残基Mは、1つ以上の(メタ)アクリレート基のような1つ以上のエチレン系不飽和ラジカル重合性基を有するモノマー、例えば、(メタ)アクリル無水物、ジエチレングリコールビス((メタ)アクリレート)およびトリメチロールプロパントリス((メタ)アクリレート)から選択されてもよい。また、残基Mは、ラジカル移動性基を含有するモノマー(例えば、アルキル(メタ)アクリレート)から選択されてもよく、それらは制御ラジカル重合プロセスにおいて、例えば、2−(2−ブロモプロピオンオキシ)エチルアクリレートのような分岐モノマーとして作用しうる。
【0038】
Mは、ビニル芳香族モノマーから誘導されてよく、その例としては、スチレン、p−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、およびジビニルナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。Mは、ビニルハライドから誘導されてよく、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデンが挙げられるが、これらに限定されない。Mは、カルボン酸のビニルエステルから誘導されてよく、そのカルボン酸のビニルエステルとしては、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニル3,4−ジメトキシベンゾエート、およびビニルベンゾエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「オレフィン」および類似の用語は、石油留分をクラッキングすることによって得られるような、1つ以上の二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素を意味する。Mは、オレフィンから誘導されてよく、その具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1,3−ブタジエン、イソブチレン、およびジイソブチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「アリルモノマー(単数または複数)」は、置換および/または非置換アリル官能基、すなわち、下記の一般式V
【0041】
【化5】
で表される1つ以上のラジカルを含有するモノマーを意味し、ここでR
10は、水素、ハロゲン、またはC
1からC
4アルキル基である。典型的にはR
10は、水素またはメチルであり、結果として一般式Vは、非置換(メタ)アリルラジカルを表す。アリルモノマーの例としては、(メタ)アリルアルコール、(メタ)アリルエーテル、例えば、メチル(メタ)アリルエーテル、カルボン酸のアリルエステル、例えば、(メタ)アリルアセテート、(メタ)アリルブチレート、(メタ)アリル3,4−ジメトキシベンゾエート、および(メタ)アリルベンゾエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
Mは、他のエチレン系不飽和ラジカル重合性モノマーから誘導されてよく、環状無水物(例えば、無水マレイン酸、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物およびイタコン酸無水物)、α、β−エチレン性不飽和ではない不飽和の酸のエステル(例えば、ウンデシレン酸のメチルエステル)、エチレン系不飽和二塩基酸のジエステル(例えば、ジエチルマレイン酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)、N,N−ジ(C
1−C
6アルキル)−(メタ)アクリルアミド、およびN−ビニルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
残基Mは、エポキシ(すなわち、エポキシドまたはオキシラン)官能基を有するモノマーから誘導されてもよく、すなわち、ペンダントエポキシ官能基を有するマクロ光開始剤を提供する。ペンダントエポキシ官能基は、本明細書でさらに詳細に議論するように、マクロ光開始剤を含有する硬化組成物中または硬化性組成物から製造される物品中に、マクロ光開始剤をさらに固定化するために使用されてよい。残基Mは、エポキシ官能性モノマーから誘導されてよく、その例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、およびアリルグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、エポキシ官能基は、後反応(by post−reaction)によって、例えば、そのポリマー主鎖にヒドロキシル基をペンダントさせたマクロ光開始剤を合成し、次いで、少なくとも一部のペンダントヒドロキシル基をエピクロロヒドリンと反応させることによって、マクロ光開始剤に含有させてよい。
【0044】
一実施形態では、モノマー残基Mは、アルキル基中に1から20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート(例えば、エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートおよび/またはn−ブチルアクリレート)の少なくとも1つ、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)、ビニルハライド、カルボン酸のビニルエステル、オレフィン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1種以上のN,N−ジ(C
1−C
6アルキル)−(メタ)アクリルアミド、およびそれらの混合物から誘導される。
【0045】
式(I)で表される一般ポリマー鎖構造の添字pは、モノマー残基のブロック(または残基のMブロック)内に生じるモノマー残基の平均数を表す。添字xは、Mブロックのセグメントの数(すなわち、x−セグメント)を表す。添字zは、開始剤の残基Φに付いているポリマー鎖セグメントの数を表す。添字pは、各x−セグメントに対して各々同じであっても、異なっていてもよい。添字xは、各z(またはz−ポリマー鎖セグメント)に対して同じであっても、異なっていてもよい。それ故に、開始剤の残基Φに付いている各ポリマー鎖セグメント(またはz−ポリマー鎖セグメント)は、zが1より大きい場合、同じであっても、異なっていてもよい。
【0046】
添字pは、各xに対して独立して、1から5000、または1から1000、または5から500、または10から200の整数であってよい。一実施形態では、添字pは、各xに対して独立して、2から20の整数である。添字pは、各zに対して独立して、1から20、または2から15、または3から10の整数であってよい。
【0047】
添字zは、開始剤の残基Φに付いているポリマー鎖セグメントの数に等しい。そのため、添字zは、少なくとも1であり、広い範囲の値を有することができる。例えば、開始剤の残基Φがいくつかのペンダントラジカル移動性基を有するマクロ開始剤の残基である櫛型またはグラフトポリマーの場合、zは10を超える値、例えば、50、100、または1000の値を有することができる。典型的にはzは10以下であり、例えば5以下である。添字zは1から10、または1から5であってよい。一実施形態では、添字zは1または2である。
【0048】
さらに、一般式(I)について、Mは1つ以上の種類のモノマー残基を表し、pは、x−セグメント内のM残基のブロック(M−ブロック)当たりに生じるM残基の平均総数を表す。各x−セグメント内で、一般式(I)の−(M)p−部分は、(1)単一種類のM残基のホモブロック、(2)二種類のM残基の交互ブロック、(3)2つ以上の種類のM残基のポリブロック(例えば、2つ以上の種類のM残基のランダムブロック)、または(4)2つ以上の種類のM残基の勾配ブロックを表す。
【0049】
説明を目的として、M−ブロックが、例えば、10モルのメチルメタクリレートから合成される場合、一般式(I)の−(M)p−部分は(x−セグメント内において)10残基のメチルメタクリレートのホモブロックを表す。M−ブロックが、例えば、5モルのメチルメタクリレートおよび5モルのブチルメタクリレートから合成される場合、一般式(I)の−(M)p−部分は(x−セグメント内において)(a)全部で10残基を有する(すなわち、p=10)、5残基のメチルメタクリレートおよび5残基のブチルメタクリレートのジブロック、(b)全部で10残基を有する、5残基のブチルメタクリレートおよび5残基のメチルメタクリレートのジブロック、(c)メチルメタクリレート残基またはブチルメタクリレート残基のいずれかで始まり全部で10残基を有するメチルメタクリレートおよびブチルメタクリレート残基の交互ブロック、または(d)メチルメタクリレート残基またはブチルメタクリレート残基のいずれかで始まり全部で10残基を有するメチルメタクリレートおよびブチルメタクリレート残基の勾配ブロックを表し、それは当業者には知られているように合成条件によって決まる。
【0050】
添字p、x、およびzは、各々独立して、マクロ光開始剤が少なくとも400の数平均分子量を有するように選択される。マクロ光開始剤は、例えば、少なくとも400、または少なくとも500、または少なくとも800、または少なくとも1,500の数平均分子量を有することができる。マクロ光開始剤は、例えば、500,000以下、または100,000以下、または80,000以下、または50,000以下、または35,000以下の数平均分子量を有することができる。マクロ光開始剤の数平均分子量は、任意の組合せのこれらの上限値と下限値の間の範囲内にあってよく、ただし、記述された上限値と下限値を含む。例えば、マクロ光開始剤の数平均分子量は、400から500,000、400から100,000、500から100,000、800から80,000、1,500から50,000、または1,500から35,000であってよく、ただし、記述された値を含む。
【0051】
本発明のマクロ光開始剤は、任意の好適な多分散性指数(PDI)を有することができる。典型的には、マクロ光開始剤は、4.0以下、例えば、3.5以下、または3.0以下のPDIを有する。一実施形態では、マクロ光開始剤は、2.5以下、または1.8以下(例えば、1.5)のPDIを有する。本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「多分散性指数」は、次式:(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))から決定される。単分散ポリマーは、1.0のPDIを有する。さらに、本明細書で用いる場合、MnおよびMwは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準のような適切なポリマー標準物質を用いてゲル浸透クロマトグラフィーから決定される。
【0052】
一般式(I)で表されるポリマー鎖構造の記号Lは、結合または1つ以上の二価有機部分および/または1つ以上の二価無機部分から選択される少なくとも1つの二価部分を含む二価連結基であってよい。二価連結基Lは、複数の二価有機部分および複数の二価無機部分を含んでいてよい。本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、用語「二価有機部分(単数または複数)」および類似の用語、例えば「二価有機基(単数または複数)」は、「二価ヒドロカルビレン部分」として記載されてもよい。より具体的には、本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、用語「二価有機部分(単数または複数)」および類似の用語、例えば「二価有機基(単数または複数)」は、置換または非置換直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキレン、置換または非置換直鎖または分岐鎖C
2−C
20アルケニレン、置換または非置換直鎖または分岐鎖C
2−C
10アルキニル、置換または非置換C
3−C
10シクロアルキレン、置換または非置換C
3−C
10ヘテロシクロアルキレン(少なくとも1つのヘテロ原子を環内に有する)、置換または非置換アリーレン(例えば、多環式アリーレン基を含むC
6−C
18アリール)、置換または非置換ヘテロアリーレン(少なくとも1つのヘテロ原子を環状アリーレン環(単数または複数)内に有する)を意味する。
【0053】
二価連結基Lは二価有機部分から選択されてよく、その二価有機部分に関して、二価アルキレン基の代表的かつ非限定的な例としては、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、プロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)、イソプロピレン(例えば、−CH
2CH(CH
3)−)、ブチレン(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)、イソブチレン、sec−ブチレン、tert−ブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、およびデシレンが挙げられるが、これらに限定されない。二価アルケニレン基の代表的かつ非限定的な例としては、ビニレン(−CH=CH−)およびプロペニレン(例えば、−C(CH
3)=CH−)が挙げられるが、これらに限定されない。二価アルキニレン基の代表的かつ非限定的な例としては、エチニレン(−C≡C−)、プロピニレン(−C≡C−CH
2−)、ブチニリレン(例えば、−C≡C−CH(CH
2)−)が挙げられるが、これらに限定されない。二価シクロアルキレン基の代表的かつ非限定的な例としては、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、およびシクロオクチレンが挙げられるが、これらに限定されない。ニ価ヘテロシクロアルキレン基の代表的かつ非限定的な例としては、テトラヒドロフラニレン、テトラヒドロピラニレン、およびピペリジニレンが挙げられるが、これらに限定されない。二価アリーレン基の代表的かつ非限定的な例としては、フェニレン、ナフチレン、およびアントラセニレンが挙げられるが、これらに限定されない。二価ヘテロアリーレン基の代表的かつ非限定的な例としては、フラニレン、ピラニレン、およびピリジニレンが挙げられるが、これらに限定されない。二価アラルキレン基の代表的、非限定的な例としては、ベンジレンおよびフェネチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
二価有機部分は様々な二価部分から選択され、その二価部分に関して用語「置換」は、二価有機部分の置換可能な水素の少なくとも1つが他の基で置換されることを意味する。例えば、置換C
1−C
20アルキレン基は、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されてよい。置換二価有機部分の置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシル)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリルおよびプロペニル)、アルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、および2−ブチニル)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、およびシクロオクチル)、ヘテロシクロアルキル基(例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、およびピペリジニル)、アリール基(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびアントラセニル)、アラキル基(例えば、ベンジルおよびフェネチル)、およびヘテロアリール基(例えば、フラニル、ピラニル、およびピリジニル)、ハロまたはハロゲン基(例えば、クロロ、ブロモ、フルオロおよびヨード)、ケトン(例えば、ヒドロカルビルケトン)、カルボン酸エステル(例えば、ヒドロカルビルカルボキシレート)、ヒドロキシル、チオール、アミノ基(例えば、−NH
2)、エーテル(例えば、ヒドロカルビルエーテル)、チオエーテル(例えば、ヒドロカルビルチオエーテル)、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
二価有機部分は様々な二価部分から選択されてよく、その二価部分に関して用語「非置換」は、二価有機部分の置換可能な水素のいずれも他の基(例えば、ハロゲン)で置換されていないことを意味する。
【0056】
一般式(I)で表されるマクロ光開始剤における二価連結基Lの二価無機連結基は、例えば、−O−、−C(O)−、−C(O)−O−、−O−C(O)−O−、およびそれらの組合せの少なくとも1つから選択されてよい。二価連結基Lは二価無機連結基から選択されてよく、その追加の例として、−C(O)−NH−、−NH−C(O)−O−、−NH−C(O)−S−、−NH−C(S)−O−、および−NH−C(S)−S−が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
一般式(I)の記号Yは、硫黄基(S)、より具体的には、スルフィド結合(または二価スルフィド結合)、すなわち、−S−、または酸素基(O)、より具体的には、エーテル結合(すなわち、−O−)を表す。本発明の一実施形態では、二価結合−Y−と、二価連結基L、−L−との組合せ(すなわち、−Y−L−)は、下記の一般式(IIIa)
【0058】
【化6】
によって表されてよい。一般式(IIIa)において、R
6は、二価有機部分、およびR
7は、結合または二価有機部分である。R
6およびR
7は、各々独立して、二価有機部分から選択されてよく、その二価有機部分としては、一般式(I)の二価連結基Lに関して本明細書で前述したものと同じ二価有機部分が挙げられる。特定の実施形態では、YはSであり、一般式(I)の−Y−L−は従って−S−L−であり、二価スルフィド結合、−S−と、二価連結基L、−L−との組合せ(すなわち、−S−L−)は、下記の一般式(IIIb)
【0059】
【化7】
で表される。一般式(IIIb)において、R
6およびR
7は、一般式(IIIa)に関して説明されたものと同じである。
【0060】
R
6およびR
7は各々独立して、二価有機部分から選択されてよく、その二価有機部分としては、例えば、置換または非置換直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキレン、置換または非置換直鎖または分岐鎖C
2−C
20アルケニレン、置換または非置換直鎖または分岐鎖C
2−C
10アルキニル、置換または非置換C
3−C
10シクロアルキレン、置換または非置換C
3−C
10ヘテロシクロアルキレン(環内に少なくとも1つのヘテロ原子を有する)、置換または非置換アリーレン(例えば、多環式アリーレン基を含む、C
6−C
18アリール)、および置換または非置換ヘテロアリーレン(環状アリーレン環(単数または複数)内に少なくとも1つのヘテロ原子を有する)が挙げられる。用語、置換および非置換は、式(I)の二価結合基Lに関して本明細書で前述したものと同じである。
【0061】
一実施形態では、一般式(III)のR
6およびR
7は各々独立して、二価直鎖または分岐鎖C
1−C
6アルキレンから選択される。R
6およびR
7は各々独立して、二価直鎖または分岐鎖C
1−C
6アルキレン基から選択されてよく、その例としては、メチレン(−CH
2−)、エチレン(−CH
2CH
2−)、プロピレン(−CH
2CH
2CH
2−)、イソプロピレン(例えば、−CH
2CH(CH
3)−)、ブチレン(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)、イソブチレン、sec−ブチレン、tert−ブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、およびヘキシレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
一般式(I)の記号PIは、光開始剤の残基を表す。光開始剤(PI)の残基は、光活性部位を含む。光開始剤残基は、例えば、下記の一般式(a)
【0063】
【化8】
で表されるようなアントラキノン残基、例えば、下記の一般式(b)
【0064】
【化9】
で表されるようなチオキサントン残基、例えば、下記の一般式(c)
【0065】
【化10】
で表されるようなトリアジン残基、例えば、下記の一般式(d)
【0066】
【化11】
で表されるようなフルオレノン残基から選択されてよい。
【0067】
加えて、光開始剤残基PIは、下記の一般式(II)
【0068】
【化12】
で表される光開始剤残基から選択されてよい。一般式(II)で表される光開始剤残基について、Rは、アリール;直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキル、ハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモおよび/またはヨード)およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアリール;直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキル、ハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモおよび/またはヨード)、ヒドロキシルおよびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの置換基で任意に置換されたC
3−C
12シクロアルキル;または−CR
1R
2R
3であってよい。
【0069】
Rはアリール基から選択されてよく、その例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、およびアントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基の置換基であってよいC
1−C
20アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、およびイコサニルが挙げられるが、これらに限定されない。一般式(III)のRは、C
3−C
12シクロアルキルから選択されてよく、その例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、およびシクロドデシルが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、Rは、シクロアルキルから選択されてよく、そのシクロアルキルとしては、シクロペンチル、シクロへキシル、およびシクロヘプチルが挙げられる。
【0070】
一般式(II)中のRである−CR
1R
2R
3のR
1、R
2、およびR
3基は、各々、水素;ヒドロキシル;アリール;C
1−C
20アルキル、ハロゲン、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアリール;C
1−C
20ヒドロキシルアルキル;C
1−C
20アルコキシ;C
3−C
12シクロアルキル;および−C(O)−R
5から個々に独立して選択され、ここでR
5は、アリール、またはC
1−C
20アルキル、ハロゲン、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つの置換基で置換されたアリールである。アリール基およびそれらのアルキル置換基、ならびにシクロアルキル基は、Rに関して上で説明されたものと同じ種類および例から選択されてよい。R
1、R
2、およびR
3は、各々独立して、C
1−C
20ヒドロキシルアルキル基から選択されてよく、そのヒドロキシルアルキル基は、1つ以上のヒドロキシル基を有することができ、それらは単独でペンダント型に配置されてよく、または末端のアルキル基上に配置されてよい。R
1、R
2、およびR
3は、各々独立して、C
1−C
20アルコキシ基から選択されてよく、そのアルコキシ基は1つ以上のエーテル酸素、通常、1つのエーテル酸素を含んでいてよい。
【0071】
一般式(II)のR
4基は、いずれの場合も、水素、ハロゲン、直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキル、C
3−C
12シクロアルキル、およびアリールから独立して選択されてよい。アルキル、シクロアルキル、およびアリール基は、Rに関して上で説明されたものと同様の種類および例から選択されてよい。
【0072】
非限定的な説明を目的として、R
4が水素であり、かつRがフェニルである場合、一般式(II)によって表される光開始剤残基はベンゾフェノンの残基であり、それは下記の一般式(e)
【0074】
例えば、R
4が水素であり、かつRがメチルである場合、一般式(II)で表される光開始剤残基はアセトフェノンの残基であり、それは下記の一般式(f−1)
【0076】
例えば、R
4が水素であり、かつRがCR
1R
2R
3であり、ここでR
1が水素であり、R
2およびR
3が、各々、エトキシ(−OCH
2CH
3)である場合、一般式(II)で表される光開始剤残基はジエトキシアセトフェノンの残基であり、それは下記の一般式(f−2)
【0078】
例えば、R
4が水素であり、かつRが−C(O)−R
5であり、ここでR
5がフェニルである場合、一般式(II)で表される光開始剤残基はベンジルの残基であり、それは下記の一般式(g)
【0080】
さらに、非限定的な説明を目的として、R
4が水素であり、かつRがベンジルアルコール残基である場合、一般式(II)で表される光開始剤残基はベンゾインの残基であり、それは下記の一般式(h−1)
【0082】
R
4が水素であり、かつRがCR
1R
2R
3であり、ここでR
1が水素であり、R
2がフェニルであり、R
3がエトキシ(−OCH
2CH
3)である場合、一般式(II)で表される光開始剤残基はエチルベンゾインエーテルの残基であり、それは下記の一般式(h−2)
【0084】
例えば、R
4が水素であり、かつRがヒドロキシルアルキル基である場合、一般式(II)で表される光開始剤残基はヒドロキシルアルキルフェノンの残基であり、それは下記の一般式(i)
【0085】
【化19】
で表されてよい。一般式(i)のR’基は、直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキル基、例えば、メチルまたはエチルである。
【0086】
さらに、R
4が水素であり、かつRがシクロへキシルである場合、一般式(II)で表される光開始剤残基はフェニル−シクロへキシルケトンの残基であり、それは下記の一般式(j−1)
【0088】
R
4が水素であり、かつRが1−ヒドロキシシクロヘキシルである場合、一般式(II)で表される光開始剤残基はフェニル−1−ヒドロキシシクロヘキシルケトンの残基であり、それは下記の一般式(j−2)
【0090】
一実施形態では、光開始剤残基は一般式(II)で表され、そのRは−CR
1R
2R
3であり、ここでR
1は、水素またはヒドロキシルから選択され、R
2およびR
3は各々独立して、直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキルから選択され、R
4はいずれの場合も、水素、および直鎖または分岐鎖C
1−C
20アルキルから独立して選択される。
【0091】
さらなる実施形態では、光開始剤残基は一般式(II)で表され、それらのRは、−CR
1R
2R
3であり、ここでR
1はヒドロキシルであり、R
2およびR
3は各々独立して、直鎖または分岐鎖C
1−C
6アルキル(例えば、メチル)から選択され、R
4は水素である。加えて、一般式(I)の−Y−L−で表される二価結合は一般式(IIIa)で表され、ここでR
6およびR
7は各々独立して、二価直鎖または分岐鎖C
1−C
6アルキレン(例えば、エチレン)から選択される。
【0092】
一実施形態では、光開始剤残基は一般式(II)で表され、それらのRは−CR
1R
2R
3であり、ここでR
1はヒドロキシルであり、R
2およびR
3は、各々メチルであり、R
4は水素である。加えて、一般式(I)の−Y−L−で表される二価結合は一般式(III)で表され、ここでR
6およびR
7は、各々エチレンである。この実施形態では、一般式(I)のYはS(硫黄)であり、一般式(I)で表されるマクロ光開始剤の−Y−L−PI部分は、下記の一般式(k)
【0094】
マクロ光開始剤は、任意の好適な重合方法で合成されてよい。一実施形態では、マクロ光開始剤は、制御ラジカル重合によって合成される。制御ラジカル重合方法としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、一電子移動重合(SETP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、およびニトロキシド媒介重合(NMP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
マクロ光開始剤が制御ラジカル重合、例えば、ATRPまたはSETPによって合成される場合、開始剤としては、一般的には、移動性基(例えば、ラジカル移動性基)が挙げられ、それらはハロ(ハライドまたはハロゲン)基であってよい。ハロ(ハライドまたはハロゲン)基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、および/またはヨードから選択されてよい。通常、ハロ基は、クロロおよび/またはブロモ、より典型的には、ブロモから選択される。式(I)の開始剤の残基Φには移動性基がない。さらに、一般式(I)の添字zは、1から、当初に開始剤上に存在するラジカル移動性基の平均総数である。例えば、開始剤がジ(C
1−C
6−アルキル)−2,5−ジハロアジペートから選択された場合、それは2つのラジカル移動性ハロ基を有し、式(I)のzは2である。
【0096】
ATRPのような制御ラジカル重合は一般に「リビング重合」、すなわち、本質的に連鎖移動がなく、本質的に鎖停止もなく生長する連鎖生長重合として説明される。制御ラジカル重合によって合成されたポリマーの分子量は、反応体の化学量論、すなわち、モノマー(単数または複数)および開始剤(単数または複数)の初期濃度によって制御することができる。さらに、制御ラジカル重合は、例えば、狭い分子量分布、例えば、2.5未満のPDI値、および明確なポリマー鎖構造、例えば、ブロックコポリマーおよび交互コポリマーなどの特性を有するポリマーも提供する。
【0097】
制御ラジカル重合プロセスを例示する目的で、ATRPプロセスをさらに詳細に説明する。ATRPプロセスには一般に、開始系の存在下で1つ以上のラジカル重合性モノマーを重合すること、ポリマーを形成すること、および形成されたポリマーを単離することが含まれると説明することができる。開始系は、通常、ラジカル移動性原子または基を有する開始剤、遷移金属化合物、すなわち、開始剤との可逆的レドックスサイクルに関与する触媒、および遷移金属化合物に配位する配位子を含む。
【0098】
本明細書において前述のとおり、ATRPのような制御ラジカル重合方法で使用される開始剤は、典型的には、少なくとも1つのラジカル移動性基(例えば、ハロ基)を有し、開始剤の残基(例えば、式(I)においてΦによって表される)にはラジカル移動性基はない。開始剤の残基は、ポリマー化合物から選択されてよい。マクロ光開始剤が制御ラジカル重合によって合成される場合、1つ以上のラジカル移動性基を有するポリマー化合物(オリゴマー化合物を含む)が開始剤として使用されてよく、本明細書では「マクロ開始剤」と呼ばれる。マクロ開始剤の例としては、カチオン重合によって合成され、末端ハライド、例えば、塩化物を有するポリスチレン、および2−(2−ブロモプロピオンオキシ)エチルアクリレート、および従来の非−リビングラジカル重合によって合成される1つ以上のアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ブチルアクリレートのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。マクロ開始剤は、例えばATRPおよびSETPプロセスのような制御ラジカルプロセスにおいて、グラフトブロックコポリマーのようなグラフトポリマーおよび櫛型コポリマーを合成するために使用することができる。
【0099】
本発明の一実施形態では、開始剤はより具体的には、ハロメタン、メチレンジハライド、ハロホルム、カーボンテトラハライド、メタンスルフォニルハライド、p−トルエンスルホニルハライド、メタンスルフェニルハライド、p−トルエンスルフェニルハライド、1−フェニルエチルハライド、2−ハロ−C
1−C
6−カルボン酸のC
1−C
6−アルキルエステル、p−ハロメチルスチレン、モノ−ヘキサキス(α−ハロ−C
1−C
6−アルキル)ベンゼン、ジ(C
1−C
6−アルキル)−2−ハロ−2−メチルマロネート、C
1−C
6−アルキル2−ハロイソブチレート、ジ(C
1−C
6−アルキル)−2,5−ジハロアジペート、およびそれらの混合物から選択される。
【0100】
マクロ光開始剤がATRPのような制御ラジカル重合によって合成される場合、式(I)の開始剤の残基Φは、典型的には、開始剤のラジカル移動性基(単数または複数)を含まず、ラジカル移動性基が以前に結合していた位置で(またはその位置を介して)マクロ光開始剤に結合する。非限定的な説明を目的として、マクロ光開始剤がATRPのような制御ラジカル重合によって合成され、かつ開始剤がジエチル−2−ブロモ−2−メチルマロネートである場合、式(I)の開始剤の残基Φは移動性ブロモ基を含まず、下記の一般式(IVa)
【0101】
【化23】
で表されてよい。式(IVa)で表されるジエチル−2−メチルマロネート残基は、その2位でマクロ光開始剤に結合する。
【0102】
非限定的な説明を目的として、マクロ光開始剤がATRPのような制御ラジカル重合によって合成され、かつ開始剤がジエチル−2,5−ジブロモアジペートである場合、式(I)の開始剤の残基Φは移動性ブロモ基を含まず、下記の一般式(IVb)
【0103】
【化24】
で表されてよい。式(IVb)で表されるジエチル−2,5−アジペート残基は、その2および5位で2つの異なったポリマー鎖セグメントに結合され、式(I)のzはそれに対応して2である。
【0104】
本発明のマクロ光開始剤のATRPによる合成に使用することができる触媒としては、開始剤および成長ポリマー鎖とのレドックスサイクルに関与できる任意の遷移金属化合物が挙げられる。遷移金属化合物は、通常、それが直接の炭素−金属結合をポリマー鎖と形成しないように選択される。本発明のマクロ光開始剤のATRPによる合成に有用な遷移金属触媒は、下記の一般式VI:
【0105】
【化25】
で表されてよい。式(VI)において、TMは遷移金属であり、nは0から7の値を有する遷移金属上の形式電荷であり、Xは対イオンまたは共有結合成分である。適した遷移金属(TM)の例としては、Cu、Fe、Au、Ag、Hg、Pd、Pt、Co、Mn、Ru、Mo、Nb、およびZnが挙げられるが、これらに限定されない。適した対イオン(X)の例としては、ハロゲン、ヒドロキシ、酸素、C
1−C
6−アルコキシ、シアノ、シアナト、チオシアナト、およびアジドが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、遷移金属はCu(I)であり、対イオンXはハロゲン(例えば、塩素)である。遷移金属触媒は、銅ハライド、例えば、Cu(I)Clから選択されてよい。一実施形態では、Cu(I)Clが使用される場合、遷移金属触媒は少量、例えば、1モル%のレドックス共役体(redox conjugate)、例えばCu(II)Cl
2を含んでいてよい。
【0106】
本発明のマクロ光開始剤をATRPによって合成するのに使用される配位子としては、1つ以上の窒素、酸素、リンおよび/または硫黄原子を有し、例えば、シグマおよび/またはパイ結合により遷移金属触媒化合物に配位することができる化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な配位子類としては、非置換および置換ピリジンおよびビピリジン、ポルフィリン、クリプタンド、クラウンエーテル(例えば、18−クラウン−6)、ポリアミン(例えば、エチレンジアミンおよびN,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンPMETAD)、グリコール(例えば、エチレングリコールのようなアルキレングリコール)、一酸化炭素、および配位モノマー(例えば、スチレン、アクリロニトリルおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)が挙げられるが、これらに限定されない。マクロ光開始剤のATRP合成で使用することができる配位子類としては、置換ビピリジン(例えば、4,4’−ジアルキル−ビピリジル)が挙げられる。
【0107】
本発明のマクロ光開始剤のATRPによる合成においては、ATRPが最も効果的に実施されるような開始剤、遷移金属化合物、および配位子の量および相対比率にする。使用される開始剤の量は広範囲に変化してよく、一般的には、反応媒体中に10
−4モル/リットル(M)から3M、例えば10
−3Mから10
−1Mの濃度で存在する。マクロ光開始剤の分子量は、開始剤およびモノマー(単数または複数)の相対濃度に直接的に相関する可能性があるため、モノマーに対する開始剤のモル比は、ポリマー合成における重要因子である。モノマーに対する開始剤のモル比は、典型的には、10
−4:1から0.5:1、例えば10
−3:1から5×10
−2:1の範囲にある。
【0108】
本発明のマクロ光開始剤のATRPによる合成において、開始剤に対する遷移金属化合物のモル比は、典型的には、100:1から10:1、例えば、0.1:1から5:1の範囲にある。遷移金属化合物に対する配位子のモル比は、典型的には、0.001:1から100:1、例えば、0.2:1から10:1の範囲にある。
【0109】
本発明のマクロ光開始剤は、溶媒を使用せずに、すなわち、バルク重合プロセスによって合成されてよい。一般に、マクロ光開始剤は、溶媒、典型的には、水および/または有機溶媒の存在下で合成される。有用な有機溶媒類としては、カルボン酸のエステル、エーテル、環状エーテル、C
5−C
10アルカン、C
5−C
8シクロアルカン、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、アミド、ニトリル、スルホキシド、スルホン、ケトンおよびそれらの混合物が挙がられるが、これらに限定されない。超臨界溶媒、例えば、CO
2、C
1−C
4アルカンおよびフルオロカーボンも採用されてよい。さらに典型的な溶媒の種類は、芳香族炭化水素溶媒、例えばキシレン、および、Exxon Chemical Americaから登録商標SOLVESSOで市販されている混合芳香族溶媒である。
【0110】
マクロ光開始剤がATRPによって合成される場合、マクロ光開始剤は、典型的には、25℃から140℃の範囲の反応温度(例えば、50℃から100℃)および1から100気圧の範囲の圧力、通常は雰囲気圧において合成される。原子移動ラジカル重合は、典型的には24時間未満(例えば、1から8時間の間で)で完結する。
【0111】
マクロ光開始剤が溶媒の存在下で合成される場合、溶媒はポリマーが形成された後、当業者に公知の好適な手段(例えば、真空蒸留)によって任意に除去されてよい。あるいは、ポリマーは公知の方法によって、溶媒から析出、ろ過、洗浄、および乾燥されてよい。溶媒の除去または溶媒から分離後、マクロ光開始剤(またはそれらのポリマー前駆体)は、典型的には、全ポリマー重量に対して少なくとも95重量%、典型的には少なくとも98重量%が固体(1グラムの試料を110℃以上のオーブン中に60分間置いて測定される)である。
【0112】
本発明の硬化性組成物で使用する前に、ATRP遷移金属触媒およびそれに関係する配位子は、通常、マクロ光開始剤から分離または除去される。ATRP触媒の除去は、公知の方法、例えば、ポリマー、溶媒および触媒の混合物に触媒結合剤を添加後ろ過するなどの方法を用いて実施される。適した触媒結合剤の例としては、アルミナ、シリカ、粘土、またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー、溶媒、およびATRP触媒の混合物は、触媒結合剤床を通過させてもよい。あるいは、ATRP触媒をin situで酸化し、マクロ光開始剤中に(または開始剤と共に)保持してもよい。
【0113】
マクロ光開始剤は、直鎖ポリマー構造、分岐鎖ポリマー構造、超分岐ポリマー構造、星型ポリマー構造、グラフトポリマー構造、およびそれらの組合せまたは混合物から選択される全体ポリマー構造(gross polymer architecture)を有することができる。用語、全体ポリマー構造(または全体構造(gross architecture))は、マクロ光開始剤またはその一部分の3次元構造を指す。一般的に、マクロ光開始剤は、実質的に直鎖ポリマー構造を有する。ポリマーの形状、または全体構造は、ポリマーの合成に使用される開始剤およびモノマーの選択によって制御することができる。直鎖マクロ光開始剤は、(例えば、ATRPによって)1または2個のラジカル移動性基を有する開始剤、例えば、ジエチル−2−ハロ−2−メチルマロネートおよびα,α’−ジクロロキシレンを使用して合成することができる。分岐鎖マクロ光開始剤は、分岐モノマー、すなわち、ラジカル移動性基または1を超えるエチレン系不飽和ラジカル重合性基を含有するモノマー、例えば、2−(2−ブロモプロピオンオキシ)エチルアクリレート、p−クロロメチルスチレン、およびジエチレングリコールビス(メタクリレート)を用いて合成することができる。超分岐マクロ光開始剤は、使用する分岐モノマー量を増やすことによって合成することができる。
【0114】
星型ポリマー構造を有するマクロ光開始剤は、3つ以上のラジカル移動性基を有する開始剤(例えば、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン)を使用して合成することができる。当業者には公知であるように、星型ポリマーは、コア−アームまたはアーム−コア法によって合成されてよい。コア−アーム法では、星型のポリマーは、多官能性開始剤(例えば、ヘキサキス(ブロモメチル)ベンゼン)の存在下でモノマーを重合することによって合成される。コア−アーム法では、類似の組成および構造を有するポリマー鎖、またはアームが、開始剤のコアから成長する。
【0115】
アーム−コア法では、アームはコアとは別に合成され、任意に、異なる組成、構造、分子量、PDIを有することができる。アームは、例えば、異なる光開始剤残基を有することができる。アーム合成後、それらはコアに取り付けられる。例えば、アームは、グリシジル官能性開始剤を用いてATRPによって合成されてよい。次いで、これらのアームを、エポキシドとの反応性がある3つ以上の活性水素基(例えば、カルボン酸またはヒドロキシル基)を有するコアに取り付けることができる。コアはクエン酸のような分子、またはATRPによって合成され、かつ末端反応性水素を含有する基(例えば、カルボン酸、チオール、またはヒドロキシル基)を有するコア−アーム星型ポリマーであってよい。コアの反応性水素基は、グリシジル官能性開始剤の残基と反応することができる。
【0116】
ATRPアーム−コア星型ポリマーにおけるコアとして使用することができる、ATRP方法によって合成されるコアの例を以下に記載する。第一段階では、6モルのメチルメタクリレートを1モルの1,3,5−トリス(ブロモメチル)ベンゼンの存在下で重合させる。第二段階では、3モルの2−ヒドロキシエチルメタクリレートを反応混合物に供給する。異なる、または同じ組成を有し、各々単一のエポキシド基(例えば、エポキシド官能性開始剤の残基)を含有する3つのリビングATRP合成アームを、ヒドロキシ末端コアに、そのコアのヒドロキシ基と各アーム中のエポキシド基との間の反応によって結合することができる。アームをコアに取り付けた後、任意に、取り付けられたそのアームのATRP重合をさらに継続してよい。
【0117】
グラフトポリマーの形状のマクロ光開始剤は、本明細書中で前述したマクロ開始剤を使用して合成することができる。典型的には、ATRPによってグラフトポリマーを形成するために使用されるマクロ開始剤は、複数のペンダントラジカル移動性基を有する。グラフトポリマーの形状のマクロ光開始剤は、さらに、櫛型状全体ポリマー構造を有するものとして説明することができる。
【0118】
マクロ光開始剤は、ホモポリマー主鎖構造、ランダムコポリマー主鎖構造、ブロックコポリマー主鎖構造、および勾配コポリマー主鎖構造から選択される主鎖構造(すなわち、ポリマー主鎖に沿ったモノマー残基または単位の配置)を有することができる。これらの様々な主鎖構造は、一般式(I)の−(M)p−部分に関して本明細書で前に議論および説明されてきた。
【0119】
制御ラジカル重合、例えば、ATRPまたはSETPによって合成される場合、マクロ光開始剤は二段階で合成することができる。第一段階では制御ラジカル重合が実施され、結果、下記の一般式(VII)
【0120】
【化26】
で表される中間体ポリマーが形成される。式(VII)において、記号Φ、M、p、x、およびzは、式(I)に関して本明細書中で前述したものと同じである。式(VII)において記号Tは開始剤のラジカル移動性基の残基を表し、それは典型的にはハロ基(例えば、ブロモ)である。次いで、式(VII)によって表される中間体ポリマーを下記の一般式(VIII)
【0121】
【化27】
によって表されるチオール官能性光開始剤と反応させる。式(VIII)において、−YHは、チオール基(−SH)またはヒドロキシル基(−OH)を表し、LおよびPIは、例えば、式(I)に関して本明細書で前述したものと同じである。
【0122】
式(VII)によって表されるポリマー中間体と、式(VIII)によって表されるチオール官能性またはヒドロキシル官能性(例えば、フェノール官能性)光開始剤との反応は、当該技術分野において認められているS
N2法に従って実施されてよい。それらの間の反応では、YがSの場合、式(VII)によって表される中間体ポリマーの末端ハロ基(T)は、式(VIII)によって表されるチオール官能性光開始剤のチオール基で置換され、その結果、スルフィド結合、および、これに対応してそのYがSである式(I)によって表される本発明のマクロ光開始剤が形成されることになる。あるいは、YがOの場合、式(VII)によって表される中間体ポリマーの末端ハロ基(T)は、式(VIII)によって表されるヒドロキシル官能性光開始剤のヒドロキシル基で置換され、その結果、エーテル結合、および、これに対応してそのYがOである式(I)によって表される本発明のマクロ光開始剤が形成されることになる。一実施形態では、式(VIII)のYがOである場合、そのヒドロキシル基(−OH)は、フェニル基のような芳香族基に結合(例えば、Lに結合、またはLが結合の場合、PIに直接結合)される(その場合、式(VIII)のヒドロキシル基は芳香族ヒドロキシル基、例えば、フェノール基と呼ばれてよい)。
【0123】
式(VII)によって表される中間体ポリマーは、例えば、開始剤成分(例えば、銅触媒)および/または制御ラジカル重合プロセスから生じる共生成物を除去するために処理されてよい。あるいは、開始剤成分および/または制御ラジカル重合プロセスから生じる共生成物の除去は、例えば式(I)によって表される本発明のマクロ光開始剤を形成する後続の置換反応(例えば、S
N2反応)の後に実施されてよい。
【0124】
チオール官能性光開始剤の残基をその末端に有する本発明のマクロ光開始剤(例えば、ここで式(I)および(VIII)のYは、Sである)の合成については、実施例においてさらに詳細に説明する。ヒドロキシル官能性光開始剤の残基をその末端に有する本発明のマクロ光開始剤(例えば、ここで式(I)および(VIII)のYは、Oである)は、当該技術分野において認められている方法に従って合成することができる。非限定的な説明を目的として、ヒドロキシル官能性光開始剤の残基をその末端に有する本発明のマクロ光開始剤の合成は、一般に、下記の合成スキーム−Aを参照して以下のとおり説明することができる。
【0126】
第一段階において、ブロモ末端ポリアクリレート中間体(A−1)は、一電子移動重合方法を採用して合成することができる。例えば、モル比20対1のn−ブチルアクリレート(n−BA)とt−ブチルアクリレート(t−BA)(例えば、128g;1.0モルの全アクリレート)、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me
6−TREN)(例えば、0.037g;0.161ミリモル)、銅粉末(例えば、0.20g;粒径10μm未満)およびジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(DEDBA)(例えば、1.16g;3.23ミリモル)の混合物を、ジメチルアセトアミド(DMAc)中で、連続攪拌して、窒素雰囲気下、適した反応容器(例えば、丸底ガラスフラスコ)中で、アクリレートモノマーの転化100%まで重合させる。アクリレートモノマー対溶媒比、1対2が採用できる。ブロモ末端ポリアクリレート中間体(A−1)は、当該技術分野において認められている方法(例えば、本明細書の実施例−2でさらに詳細に説明する)に従って決定されることになる、適した任意の分子量、例えば、数平均分子量約40,000を有することができる。ブロモ末端ポリアクリレート中間体(A−1)は、当該技術分野において認められている方法に従って(例えば、銅粉末および溶解した銅塩を除去するためにポリマー溶液を中性アルミナ床を通過させることにより)処理することができる。
【0127】
第二段階では、ブロモ末端ポリアクリレート中間体(A−1)は、末端ブロモ基をヒドロキシル官能性光開始剤、例えば、4−ヒドロキシベンゾフェノン(4−OH−BP)で置換することによって、マクロ光開始剤(A−2)に転化することができる。例えば、黄色光のような非−化学線の下で、炭酸カリウム(例えば、1.173g;8.50ミリモル)および4−ヒドロキシベンゾフェノン(例えば、1.40g;7.10ミリモル)を、ブロモ末端ポリアクリレート中間体(A−1)を含有するポリマー溶液に添加し、その混合物を50℃に加熱、6時間保持してよい。一般的に、得られた溶液をろ過し、溶媒を減圧除去し本発明のマクロ光開始剤(A−2)が得られ、それは一般に、ジベンゾフェノン末端ポリ(n−ブチルアクリレート−co−t−ブチルアクリレート)として記載することができる。
【0128】
また、本発明は、(a)式(I)に関して本明細書中で前述した少なくとも1つのマクロ光開始剤、および(b)少なくとも1つのエチレン系不飽和ラジカル重合性基、例えば、1つ以上のC
1−C
20アルキル(メタ)アクリレートを有する少なくとも1つの反応体を含む硬化性組成物にも関する。本発明の硬化性組成物は、化学線に曝露することによって硬化される。そのため、本発明の硬化性組成物は光硬化性組成物と呼ぶことができる。
【0129】
反応体としては、ビニルモノマー、アリルモノマー、オレフィン、およびそれらの組合せから選択されるモノマーを挙げることができるが、いずれの場合にも、少なくとも1つの(例えば、1、2、またはそれより多い)エチレン系不飽和ラジカル重合性基を有する。反応体のビニルモノマー、アリルモノマー、およびオレフィンは、マクロ光開始剤が合成されるモノマーに関して本明細書で前述したモノマーの種類および例から選択されてよい。
【0130】
一実施形態では、硬化性組成物の反応体として、少なくとも2つのエチレン系不飽和ラジカル重合性基、例えば、2、3、または4つのエチレン系不飽和ラジカル重合性基を有するモノマーが挙げられる。少なくとも2つのエチレン系不飽和ラジカル重合性基を有するモノマーは、当該技術分野において認められている種類および例から選択されてよい。一実施形態では、少なくとも2つのエチレン系不飽和ラジカル重合性基(例えば、多官能性モノマー)を有する、硬化性組成物のモノマーは、(メタ)アクリレート官能性ポリオールから選択される。ポリオールは、単量体(例えば、C
2−C
6アルキレングリコールのようなアルキレングリコール)、オリゴマー(例えば、ジ、トリ、またはテトラアルキレングリコール)、またはポリマー(例えば、ポリエチレンエーテルのようなヒドロキシル官能性ポリエーテル、および、ポリテトラヒドロフラン)であってよい。例えば、多官能性モノマーは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートから選択することができる。
【0131】
一実施形態では、反応体のモノマーは、多官能性モノマーに加えて、またはその代わりに、アルキル基中に1から20個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、カルボン酸のビニルエステル、オレフィン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N−ジ(C
1−C
6アルキル)−(メタ)アクリルアミド、および、それらの2つ以上の組合せおよび/または混合物の少なくとも1つを含み、それらはいずれの場合も、マクロ光開始剤が合成されるモノマーに関して本明細書で前述したとおりである。
【0132】
本発明のさらなる実施形態では、硬化性組成物は、硬化性チオール−エン組成物である。本発明の硬化性チオール−エン組成物は、典型的には、(a)式(I)に関して本明細書で前述した少なくとも1つのマクロ光開始剤、(b)ラジカル重合性である少なくとも1つのエチレン系不飽和基を有する少なくとも1つの反応体であって、本明細書で前述したモノマーの種類および例から選択される反応体、および(c)少なくとも1つのチオール基を有するチオール官能性材料を含む。いかなる理論にも縛られることを意図しないが、手元の証拠によると、チオール−エン組成物は、連鎖成長機構よりはむしろフリーラジカル逐次成長機構によって重合(または硬化)すると考えられる。本発明のチオール−エン組成物は、望ましい光学的特性、例えば、光学的透明度および高い屈折性指数を有することができ、そのため、光学部品(例えば、フォトクロミックレンズなどの、眼科用および非眼科用のレンズ)の組立てにおいて接着剤として使用することができる。マクロ光開始剤は、チオール−エン組成物中に、任意の好適な量、例えば、チオール−エン組成物の全重量に対して5から80重量%で存在してよい。
【0133】
本発明のチオール−エン組成物において、エチレン系不飽和反応体(b)は、通常、少なくとも2個(例えば、2、3、4、5または6個)のエチレン系不飽和基を有し、最小限の自己重合を起こすか、または実質的に自己重合を起こさない(例えば、実質的に、エチレン系不飽和基の間でラジカル重合を起こさない)。チオール官能性材料(c)は、通常、少なくとも2個(例えば、2、3、4、5または6個)のチオール基を有する。一実施形態では、エチレン系不飽和反応体(b)のエチレン系不飽和基およびチオール官能性材料(c)のチオール基のモル比は、通常、実質的に等しい(例えば、実質的に1対1)。エチレン系不飽和反応体(b)およびチオール官能性材料(c)は、本発明のチオール−エン組成物中に任意の好適な量が含まれてよい。一実施形態では、エチレン系不飽和反応体(b)およびチオール官能性材料(c)は、本発明のチオール−エン組成物中に、チオール−エン組成物の全重量に対して、合わせて20から95重量%の量が含まれる。
【0134】
本発明のチオール−エン組成物のエチレン系不飽和反応体(b)は、本明細書で前述したような、例えば、ジビニルベンゼンのようなアルケン(またはオレフィン);環状オレフィン(例えば、シクロオクテン);エチレン系不飽和エーテル(例えば、ビニルエーテルおよび/またはプロペニルエーテル);アリル基;アルキン(またはアセチレン);多環式オレフィン(例えば、ノルボルネン);およびそれらの組合せから選択されるエチレン系不飽和基を有することができる。一実施形態では、チオール−エン組成物のエチレン系不飽和反応体(b)は、トリアリルトリアジントリオンを含む。チオール−エン組成物の反応体(b)は、本明細書で前述したように、最小限の自己重合を起こすか、あるいは実質的に自己重合を起こさないエチレン系不飽和反応体を含むことに加えて、任意に、自己重合を起こすエチレン系不飽和反応体、例えば(メタ)アクリレート官能性材料をさらに含んでよい。
【0135】
チオール−エン組成物のエチレン系不飽和反応体(b)は多官能性オレフィンモノマーから選択されてよく、その例としては、ジビニルベンゼン、例えば、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼンおよびジビニルベンゼンの構造異性体の混合物;ジイソプロペニルベンゼン、例えば、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼンおよびジイソプロペニルベンゼンの構造異性体の混合物;トリビニルベンゼン、例えば、1,2,4−トリエテニルベンゼン、1,3,5−トリエテニルベンゼンおよびトリエテニルベンゼンの構造異性体の混合物;ジビニルナフタレン、例えば、2,6−ジエテニルナフタレン、1,7−ジエテニルナフタレン、1,4−ジエテニルナフタレンおよびジビニルナフタレンの構造異性体の混合物;ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼンおよびジビニルナフタレンのハロゲン置換誘導体、例えば、2−クロロ−1,4−ジエテニルベンゼン;およびそのような芳香族モノマーの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
チオール−エン組成物のチオール官能性材料(c)は、公知のチオール官能性材料、例えば、メルカプトアセテート、ポリジスルフィド、メルカプタン化オレフィンおよびメルカプタン化エポキシドから選択されてよい。本発明のチオール−エン組成物中に含まれてよいチオール官能性材料の例としては、2,2’−チオジエタンチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオール、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール、4,4’−チオジベンゼンチオール、ベンゼンジチオール、エチレングリコールジ(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールジ(2−メルカプトアセテート)、ポリエチレングリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)およびそのようなポリチオールモノマーの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
一実施形態では、非限定的な説明を目的として、本発明のチオール−エン組成物は、式(I)に関して本明細書で前述したような少なくとも1つのマクロ光開始剤;トリアリルトリアジントリオンを含むエチレン系不飽和反応体(b);およびペンタエリスリトールテトラメルカプトプロピオネートを含むチオール官能性材料(c)とを含む。
【0138】
本発明の硬化性組成物は、当該技術分野において認められている方法によって合成することができる。例えば、マクロ光開始剤、反応体、および、添加物および溶媒のような任意の成分は、任意の順序で、適した容器(例えば、ステンレススチール容器)内で、例えば攪拌翼のような好適な混合手段によって混合される。硬化性組成物の過熱(それは早期重合につながりうる)を回避するために、冷却された液体を制御しながら通すことができる熱交換ジャケットを容器に取り付けてもよい。
【0139】
本発明の硬化性組成物の成分(例えば、マクロ光開始剤および反応体)の相対量は、望ましい物理的特性、例えば、硬度、柔軟性、および強靱性を有する硬化生成物をもたらすように選択されてよい。典型的には、反応体(b)に対するマクロ光開始剤(a)の重量比は、チオール官能性材料(c)非存在下で、9:1から1:9、例えば、7:1から1:7または5:1から1:5(例えば、2.5:1または2.3:1)である。
【0140】
マクロ光開始剤、反応体および任意のチオール官能性材料に加えて、本発明の硬化性組成物は、任意にさらなる成分、例えば、光開始剤(本発明のマクロ光開始剤以外の、すなわち、追加の光開始剤)、安定剤、溶媒、流動改質剤、および強化剤が含まれてよい。
【0141】
本発明の硬化性組成物中に含むことができる追加の光開始剤としては、Ciba−Geigy Corp.,Tarrytown、N.Y.から商標名「IRGACURE」および「DAROCUR」で市販されている光開始剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような追加の光開始剤の例としては、「IRGACURE」184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、369(2−ベンジル−2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン)、500(1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンおよびベンゾフェノンの組合せ)、651(2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン)、1700(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4−,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの組合せ)、および819[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド]が挙げられるが、これらに限定されない。追加の光開始剤のさらなる例としては、「DAROCUR」1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン)および4265(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキシドおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの組合せ)が挙げられるが、これらに限定されない。また、可視光(例えば、青色光)に曝露することによって活性化される追加の光開始剤、例えば、dl−カンファーキノンおよび「IRGACURE」784DCも使用することができる。そのような追加の光開始剤の2つ以上の組合せも本発明の硬化性組成物で使用することができる。
【0142】
追加の光開始剤のさらなる種類および例としては、例えばメチル、エチル、プロピル、およびブチルピルビン酸塩のようなアルキルピルビン酸塩、および、例えばフェニル、ベンジルのようなアリールピルビン酸塩、およびそれらの適切な置換誘導体が挙げられる。
【0143】
特に、紫外線および/または可視光に曝露することによって活性化される追加の光開始剤の例としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(例えば、「IRGACURE」651)、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン(例えば、「DAROCUR」1173)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(例えば、「IRGACURE」819)、およびビス(2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4−,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、「IRGACURE」1700)との紫外線/可視光光開始剤の組合せ、さらには、可視光光開始剤ビス(m,5,2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム(例えば、「IRGACURE」784DC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
本発明の硬化性組成物は、望ましい流動特性、例えば、低粘度、中粘度、高粘度、またはチクソ性流動特性を有するように、当該技術分野において認められている方法によって配合されてよい。本発明の硬化性組成物に添加することができる流動改質剤の例としては、ポリメチル(メタ)アクリレートおよびヒュームドシリカが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、硬化性組成物が、それが接着される基体の間の小さな(例えば、2.5ミクロン以下の)間隔に吸い上げられることが望ましい用途においては、一般的に低粘度が望ましい。当該技術分野において認められている増粘剤および/または粘度改質剤を使用しない場合、本発明の硬化性組成物は、通常、低粘度(例えば、25℃で1から500mPa.s)を有する。
【0145】
中粘度配合物(例えば、25℃で500から5000mPa.s)は、より高度な流動制御が望ましい用途、例えば、成形ポリマー部品を互いに接着させるような用途により適している可能性がある。高粘度配合物(例えば、25℃で5000から5,000,000MPa.s)は、多孔質基体および/またはより大きな間隔(例えば、約12ミクロンを超える)を有する基体を含む用途により適している可能性がある。
【0146】
本発明の硬化性組成物は、米国特許第4,105,715号明細書(Gleave)で教示されているように、約2から200ミクロンの粒径を有する粉末の有機フィラーを添加することにより、(例えば、チクソ性ペーストの形態で)チクソ性を付与することができ、あるいは、米国特許第4,102,945号明細書(Gleave)で教示されているように、剥離強度を改善するために、コポリマーまたはターポリマー樹脂により増粘することができる。上記各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0147】
本発明の硬化性組成物の高温における熱劣化に対する耐性は、抗酸化剤、例えば、フェノール性化合物を含有させることにより増強することができる。
【0148】
当該技術分野において認められているエラストマーゴム材料は、当業者に公知であるように、その硬化性組成物を用いて製造された硬化生成物の強靱性を改善する目的で本発明の硬化性組成物に含有されてよい。当該技術分野において認められている無水物は、当業者に公知であるように、その硬化性組成物を用いて製造された硬化生成物の熱間強度を改善する目的で本発明の硬化性組成物に含まれてよい。
【0149】
また、本発明は、硬化性組成物を硬化する方法にも関し、(a)所定量の硬化性組成物を(例えば、基体上に)付与すること、および(b)前記硬化性組成物を化学線に掛ける、または曝露することによって、前記硬化性組成物を硬化させることを含む。
【0150】
本発明の硬化性組成物は、硬化性接着剤組成物であってよい。接着剤として使用される場合、基体表面に提供される硬化性組成物の量は、組成物が塗布された基体表面との間で硬化し適切な接合を形成するのに十分な量でなければならない。例えば、硬化性組成物の塗布は、薄膜を形成するために、滴下方式で、または液体流れとして、刷毛塗り、浸漬などにより組成物を付与することによって行うことができる。硬化性組成物の塗布は、組成物の流動性または粘度に依存しうる。そのため、上述のとおり、粘度改質剤が組成物中に含まれてよい。硬化性組成物は、具体的な用途によって、接合される基体表面の特定の部分または全表面に渡って塗布されてよい。
【0151】
本発明の硬化性組成物は、硬化性成形組成物であってよい。成形品、例えば、造形成形品を形成するために使用される場合、硬化性組成物は、通常、鋳型に導入(例えば、射出)される。鋳型は、一般に、その中に在る硬化性組成物を化学線に曝露することができるように構成される。例えば、鋳型には、化学線に対して透過性の開口部が取り付けられてよい。硬化性組成物は、鋳型の中で化学線に曝露され硬化することができる。通常は、鋳型を開けて成形品(例えば、ガスケットまたは光学レンズのようなレンズ)を取り出す。
【0152】
本発明の硬化性組成物を硬化するために使用される化学線は、例えば、紫外線、可視光、電子ビーム、X線、赤外線、およびそれらの組合せから選択されてよい。一般的には、化学線は紫外線である。紫外線の線源としては、例えば、「H」、「D」、「V」、「tX」、「M」、および「A」ランプ、水銀アークランプ、およびキセノンアークランプ(例えば、Loctite Corporation(Rocky Hill、CN)、Fusion UV Curing Systems(Buffalo Grove、IL)、またはSpectroline(Westbury、NY)から市販されているものなどを含む)が挙げられる。追加の有用な紫外線の線源としては、マイクロ波発生紫外線源、太陽光線源、および蛍光線源が挙げられる。照射される放射線を硬化性組成物の上または中に集束する、または電磁スペクトルの特定領域を選択する目的で、反射鏡および/またはフィルターを化学線と共に使用することができる。同様に、熱蓄積の程度を最小限にするように、化学線を、定常的にまたは断続的に、直接発生させてもよい。
【0153】
望ましい硬化度を達成するために、化学線の強度、化学線への曝露回数および曝露の長さ(または時間)は個別にまたは任意の組合せで選択することができ、望ましい硬化度は、一般的に、硬化性組成物の完全な硬化である。化学線の強度の調節に関して、採用されるランプは、1インチ当たり少なくとも約100ワット(1cm当たり少なくとも約40ワット)の出力定格を有するべきであり、1インチ当たり少なくとも約300ワット(1cm当たり少なくとも約120ワット)の出力定格が特に望ましい。また、本発明のマクロ光開始剤は、硬化が生じる電磁放射線スペクトル内の波長をシフトするように設計されることがあるため、容易にかつ制御して調節できる特性または変数(例えば、波長、距離など)を有する電磁放射線線源を使用することが望ましい場合がある。
【0154】
硬化プロセス中、硬化性組成物は、線源の大きさ、型、幾何学的形状;電磁放射線への曝露の継続時間;放射線強度(および、硬化を起こすのに適する領域内で放出される放射線部分の放射線強度);基体などの任意の介在材料による電磁放射線の吸収性;および化学線線源から硬化性組成物の位置までの距離などのパラメータにより決定される量のエネルギー(例えば、KJ/m
2単位で測定される)を放出する化学線線源に曝露される。
【0155】
化学線線源は、硬化を起こすために硬化性組成物がその進路を通過する間、固定されたままであってよい。あるいは、硬化性組成物で被覆された基体は、硬化性組成物から反応生成物への変換を完結するために、化学線線源がその上またはその周りを通過する間固定されたままであってよい。さらにあるいは、硬化性組成物が硬化を生じるのに十分な化学線に曝露される限り、化学線線源と硬化性組成物の両方が互いに移動しても、または両者が固定されたままであってもよい。
【0156】
本発明の硬化性組成物を硬化するために使用することができる市販されている硬化システムとしては、「ZETA」7200または7400紫外線硬化チャンバー(Loctite Corporation、Rocky Hill、CN);FusionUV硬化システムF−300B(Fushion UV Curing Systems、Buffalo Grove、IL);HanoviaUV硬化システム(Hanovia Corp.、Newark、NJ);BlackLight Model B−100(Spectroline、Westbury、NY);およびRC500 A Pulsed UV硬化システム(Xenon Corp.、Woburn、MA)が挙げられるが、これらに限定されない。低強度水銀蒸気ランプおよびターンテーブルが取り付けられたSunlighter UVチャンバーは、本発明の硬化性組成物を硬化するために使用されてよい。
【0157】
接着剤フィルムのようなフィルムまたはコーティングを形成するために使用される場合、本発明の硬化性組成物は、通常、基体表面に塗布される。硬化性組成物を塗布することができる基体は非常に多い。本発明の硬化性組成物を塗布することができる基体としては、有機材料(例えば、有機ポリマー)、無機材料(例えば、セラミックおよび/またはシリカガラス)、金属(例えば、冷延スチールのようなスチール)、およびそれらの組合せを挙げることができる。2つの基体の間に硬化性組成物を配置する場合、通常、基体の少なくとも1つは組成物の硬化を起こすために使用される化学線に対して透過性である。有機ポリマー材料の例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスルホン(例えば、ポリエーテルスルホン)、ポリビニルアセテート、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドおよび誘導体、およびそれらのコポリマーが挙げられ、これらには、加工性を補助し、または基体として使用される材料の物理的特性および性質を改良するために、当該技術分野において認められている添加物を混合または配合することができる。基体として採用され得るコポリマーの例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン−アクリロニトリルセルロース、テレフタル酸をベースにする芳香族コポリエステル、p,p−ジヒドロキシビフェニルおよびp−ヒドロキシ安息香酸、ポリアルキレン(例えば、ポリブチレンまたはポリエチレン)テレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンオキシドまたはスルフィド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。有機コポリマーを含めて、化学線を透過できる有機ポリマーが使用されることが多い。
【0158】
非限定的な説明が目的であるが、その基体上に塗布された硬化性組成物を有する基体は、例えば紫外線のような化学線の適切な線源を備えた、「ZETA」7200紫外線硬化チャンバーのような化学線硬化装置内に、線源から適切な距離、例えば約1から2インチ(2.5から5cm)の範囲の距離で配置されてよく、約3インチ(7.6cm)が望ましい。上記のように、組成物で被覆された基体は所定の位置にあり続けてもよく、あるいは、例えば約1から約60秒/フィート(0.03から約2秒/cm)の範囲、例えば約5秒/フィート(約0.16秒/cm)などの適切な速度で線源下を通過してもよい。そのような移動は1回以上、あるいは基体上の組成物の硬化を起こさせるために必要に応じて行われてよい。硬化される組成物の厚みおよび、当然ながら、組成物自体の成分に応じて、照射時間は、(一回照射に対して)数秒以下から(1回照射または多重照射のいずれかに対して)所望であれば数十秒以上の範囲内であってよい。
【0159】
本発明の硬化性組成物は、基体とは別に形成されるフィルム形態の硬化生成物(例えば、独立型フィルム)を製造するために使用されてよく、それは後に、後続のステップにおいて基体上に塗布、接着、または配置することができる。本発明の硬化性組成物からそのようにして形成されたフィルムは、組成物が後に塗布される基体に自己接着することができ、そのため別の接着剤を使用する必要がない。カレンダー法、流延法(casting)、圧延加工(rolling)、コーティング、押し出し加工(extrusion)、および熱成形などの当該技術分野において認められているフィルム製造方法を、本発明の硬化性組成物からフィルム(例えば、独立型フィルム)を製造するために採用することができる。コーティングに関しては、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、ローラーコーティング、ブラシコーティング、または転写コーティングなどの従来の技術を使用することができる。
【0160】
本発明は、下記の実施例においてより具体的に説明されるが、さまざまな修正、変更は当業者にとっては明白なものであるため、実施例は単に例示を目的とするものにすぎない。別に指示する場合を除き、すべての部および百分率(%)は重量によるものである。
【実施例】
【0161】
(実施例−1)
本発明のマクロ光開始剤の合成において使用するチオール官能性光開始剤、1−[4−(2−{2’−メルカプトプロピオネート}エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(C)を、2−メルカプトプロピオン酸(A)と1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(B)とのエステル化反応により下記の記載に従って合成した。チオール官能性光開始剤(C)の合成を下記の合成スキーム−1にまとめる。
【0162】
【化29】
【0163】
黄色光の下で合成を行った。ディーンスターク分離器、還流コンデンサー、熱電対、磁気攪拌機、および加熱マントルを取り付けた1Lの反応フラスコに、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(B)(67.247g;0.30モル)、2−メルカプトプロピオン酸(A)(31.822g;0.30モル)、トルエン(200ml)、およびp−トルエンスルホン酸(pTsOH)(0.901g)を添加した。混合物を攪拌し、還流するために加熱し、温度110℃−115℃の範囲で共沸蒸留によって水を除去した。初期の混合物は濁っていたが、約60℃で透明になるのが観察された。2.75時間後蒸留は完了し、5.2ml(ミリリットル)の水を採取した(理論量の96%)。反応液を冷却し、塩基性アルミナ(70g;150メッシュ)のカラムによりろ過した。カラムをトルエン(3×100ml量)で洗い流してろ液を集めた。溶媒を減圧蒸留により除去し、粘性の液体として粗エステルを得た(92.90g;収率99%)。粗材料をジクロロメタン(380ml)に溶解し、溶液を炭酸水素ナトリウム飽和溶液(4×400ml)で洗浄後、脱イオン水(1×400ml)で洗浄した。洗浄した溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ろ過し、溶媒を除去して粘性の液体として精製エステルを得た(80.29g;収率86%)。
【0164】
分光分析によって、生成物の構造がチオール官能性光開始剤(C):1−[4−(2−{2’−メルカプトプロピオネート}エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンであることを確認した。チオール官能性光開始剤(C)生成物のNMRおよびIR分析結果を以下のとおりまとめる。
1HNMR(300MHz;CDCl
3):δ8.06、d、2H(Ar−HオルトC=O);δ6.95、d、2H(Ar−HメタC=O);δ4.49、t、2H(−CH
2−O−C=O);δ4.21、t、2H(−CH
2−O−Ar);δ2.74、m、4H(−S−CH
2−CH
2−C=O);δ1.60、s、6H(−C(CH
3)
2−);δ1.70、s、1H(−SH)。
IR(薄膜、ATR法):3474cm
−1(O−H);2975および2934cm
−1(C−H);2572cm
−1(S−H);1736cm
−1(C=Oエステル);1663cm
−1(C=O芳香族ケトン)。
【0165】
(実施例−2)
本発明のマクロ光開始剤(E)を下記の記載に従って二段階で合成した。第一段階では、ブロモ末端ポリ(n−ブチルアクリレート)ポリマー(D)を、一電子移動重合方法を用いて合成した。第二段階では、ブロモ末端ポリ(n−ブチルアクリレート)ポリマー(D)を、その末端ブロモ基を実施例−1のチオール官能性光開始剤(C)で置換することによってマクロ光開始剤(E)へと転化した。マクロ光開始剤(E)の合成を下記の合成スキーム−2にまとめる。
【0166】
【化30】
【0167】
合成の第一段階(またはパート−A)(すなわち、ブロモ末端ポリ(n−ブチルアクリレート)ポリマーDの合成)を以下のとおり行った。窒素注入口、および攪拌機の攪拌翼の周りに巻かれた銅線(0.1188g;1.87ミリモル;直径0.1mm)を有する機械的攪拌機を取り付けた30ml円筒形のガラス反応器に、n−ブチルアクリレート(6.029g;47.1ミリモル)、ジメチルスルホキシド(DMSO;3.002g)、およびジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(DEDBA;0.4355g;1.21ミリモル)を添加した。室温ですべてのアジペート開始剤が溶解するまで混合物を攪拌し、その後、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA;0.172g;0.994ミリモル)を添加した。ヘッドスペースに窒素を流して空気を除去した。重合反応の全体を通して、混合物を窒素の微正圧下に維持した。重合の間、青緑色に着色することが認められ、混合物の粘性が次第に増加した。室温で24時間攪拌後、反応混合物の一部を取り出しIR分光法で分析した。アクリレート二重結合の特徴である805cm
−1での吸収帯はスペクトルから完全に消失し、C=Oカルボニルエステルの吸収帯は1724cm
−1から1731cm
−1にシフトし、不飽和モノマーが対応する飽和ポリマーに完全に転化したことを示した。100%転化率におけるリビング重合に対する公知の相関関係に従いポリマーの数平均分子量(Mn)を、下記の式
【0168】
【数1】
を用いて算出した。式中、MW
Mはモノマー(ブチルアクリレート)の分子量であり、[M]
0および[I]
0は、モノマーおよび開始剤(DEDBA)の初期のモル濃度をそれぞれ表し、MW
Iは開始剤の分子量である。その結果、ブロモ末端ポリ(n−ブチルアクリレート)ポリマー(D)の分子量は5,342と算出された。
【0169】
マクロ光開始剤(E)の合成を、下記の記載に従って第二段階(またはパート−B)で行った。黄色光の下で、第一段階からのポリマー溶液の一部(4.5216g;1.13ミリモルBr)を30mlガラス反応器に移し、エチルアセテート(5ml)、および炭酸カリウム(0.2707g;1.96ミリモル)を添加した。混合物を攪拌し、実施例−1のチオール官能性光開始剤(C)(0.5227g;1.68ミリモル)を添加した。混合物を室温で72時間攪拌し、ろ過し、溶媒の一部を減圧除去した。残留物をエチルアセテート(15ml)に溶解し、メタノールと水の混合物(10ml;1:1容量/容量)を添加して、淡青色の粘性樹脂として得られる粗ポリマー生成物を析出させた。粗材料をエチルアセテート(10ml)に再溶解し水(5ml)で洗浄した。水層を分離しエチルアセテート(2×10ml量)で抽出した。エチルアセテート洗液を合わせて硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、ろ過し、溶媒を除去して淡黄色の粘性樹脂としてマクロ光開始剤(E)を得た(2.660g;収率79%)。
【0170】
マクロ光開始剤(E)の構造および分子量を、分光分析およびクロマトグラフ分析によって確認した。結果を以下にまとめる。
1HNMR(300MHz;CDCl
3):δ8.07、d、4H(Ar−HオルトC=O);δ6.96、d、4H(Ar−HメタC=O);δ4.45、t、4H[エチレングリコール末端単位の−CH
2−O−C(=O)−];δ4.3−3.9、m、88H[開始剤およびブチル反復単位基の−CH
2−O−Arおよび−CH
2−O−C(=O)−];δ2.92、m、4H(−S−CH
2−);δ2.74、m、4H[−S−CH
2−CH
2−C(=O)−];δ2.28、ブロードm、38H(−CH−主鎖);1.20−2.00[主鎖およびブチル反復単位基C−CH
2−C、開始剤断片エチル基CH
3および−C(CH
3)
2−];δ0.95、t、116H(ブチル基の−CH
3)。NMRによって測定された数平均分子量は5,760であり、第一段階で記載した手順に従って計算した対応する理論値は5,804であった。これらの値は非常に近く、中間体ジブロモポリマー(D)に対して計算した平均分子量(5,342;第一段階を参照)とは著しく異なる。このため、第一段階の中間体ジブロモポリマー(D)の2つの臭素原子(160質量単位)をチオエーテル結合光開始剤基(622質量単位)で置換することにより第二段階から生じるポリマー(すなわち、マクロ光開始剤E)が形成されることが裏付けられる。
GPC(PMMA較正、THF、1ml/分):マクロ光開始剤−(E)に対して、平均Mn=9,163、多分散性(Mn/Mw)=1.20。
【0171】
(実施例−3)
下記の記載に従って、本発明のマクロ光開始剤(G)を二段階で合成した。第一段階では、エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、およびブチルアクリレートの残基をモル比5/3/2で含有するブロモ末端ポリアクリレートターポリマー(F)を一電子移動重合方法により合成した。第二段階では、ブロモ末端ポリアクリレートターポリマー(F)を、その末端ブロモ基を実施例−1のチオール官能性光開始剤(C)で置換することによって、マクロ光開始剤(G)に転化した。マクロ光開始剤(G)の合成を下記の合成スキーム−3にまとめる。
【0172】
【化31】
【0173】
合成の第一段階(またはパート−A)(すなわち、ブロモ末端ポリアクリレートターポリマーFの合成)を以下のとおり実施した。ステンレススチールプロペラ翼およびシャフト、ドライアイス冷却器、熱電対、ATR赤外線検出器プローブ、およびアルゴン・パージラインを取り付けた500mlのジャケット形ガラス反応器に、エチルアクリレート(EA;101.86g;1.02モル)、2−メトキシエチルアクリレート(MEA;87.23g;0.67モル)、n−ブチルアクリレート(BA;60.91g;0.48モル)、銅粉末(0.32g;粒径10μm未満)、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン(0.058g;0.25ミリモル)(Me
6−TREN;M.Ciampolini,Inorg.Chem.1966,5(1),41の記載に従って合成した)、エタノール(99.42g;200プルーフ)、および水(6.63g)を添加した。混合物を攪拌して均一溶液とし、5℃に冷却した。アルゴン流通下15トールで反応器を排気し、真空を解放してアルゴン雰囲気とした。真空脱ガスのステップを繰り返し、ジエチルメソ−2,5−ジブロモアジペート(4.50g;12.50ミリモル)をアルゴン正圧下で添加した。反応器をシールし、先に記載したように真空脱ガスした。混合物を25℃に加温し、10分間後モノマーの重合が起こり緩やかな発熱が認められた。次の25分に渡って反応温度は43℃に上がり、その後、発熱は低下した。反応混合物をさらに25℃で3時間攪拌し、その時のIRスペクトルはモノマー転化率89%を示した。テトラヒドロフラン(1,000g)を混合物に添加し、淡緑色の溶液を中性アルミナ(400g)のカラムを通してろ過し、無色の溶液を得た。溶媒および残存モノマーを減圧蒸留によって除去し、その後、減圧下で3時間加熱し(40℃、650ミリトール)、エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートおよびn−ブチルアクリレートのモル比率5/3/2のジブロモ末端ランダムターポリマーを粘性の液体として得た(すなわち、ブロモ末端ポリアクリレートターポリマーF)(198g;収率79%)。ポリマーの構造および組成を分光分析およびクロマトグラフ分析によって確認した。実施例−2に記載した式を用いて算出した理論数平均分子量は、18,144であった。
【0174】
マクロ光開始剤(G)の合成を、下記の記載に従って第二段階(またはパート−B)で実施した。黄色光の下、ターポリマー(F)の一部(5.203g;0.26ミリモル)をアセトン(12ml)に溶解し、磁気攪拌機を取り付けた50mlガラス反応フラスコに溶液を移した。実施例−1のチオール官能性光開始剤(C)のアセトン(4.0ml)溶液を、攪拌中のターポリマー(F)溶液に添加した。無水炭酸カリウム(0.237g;1.72ミリモル)および追加のアセトン(1ml)を添加し、混合物を23℃で72時間攪拌した。反応混合物をアセトン(50ml)で希釈しろ過した。ろ液から溶媒を減圧蒸留により除去し、マクロ光開始剤(G)を定量的収量(5.32g)で得た。
【0175】
マクロ光開始剤(G)の構造および組成を分光分析およびクロマトグラフ分析によって確認した。結果を以下にまとめる。
1HNMR(300MHz;CDCl
3):δ8.07、d、4H(Ar−HオルトC=O);δ6.96、d、4H(Ar−HメタC=O);δ4.45、t、4H[エチレングリコール末端単位の−CH
2−O−C(=O)−];δ4.3−3.9、m、272H[開始剤およびエステル反復単位基の−CH
2−O−Arおよび−CH
2−O−C(=O)−];δ3.56、t、82H(MEAの−CH
2OCH
3基);δ3.35、s、124H(MEAの−OCH
3基);δ3.0−2.6、ブロードm、8H[−S−CH
2−CH
2−C(=O)−];δ2.15−2.50、m、128H(主鎖−CH−);δ1.30−2.10、m、438H[主鎖およびブチル反復単位基C−CH
2−C、開始剤断片のエチル基−CH
3、および−C(CH
3)
2−];δ1.25、t、180H(EA単位および開始剤断片のエチル基の−CH
3);δ0.95、t、78H(BA単位のブチル基の−CH
3)。
GPC(PMMA較正、THF、1ml/分):平均Mn=24,700、多分散性=1.26。ポリマー主鎖中のコモノマー単位、BA/MEA/EAの相対モル比率を、NMRスペクトルから5.1/3.0/1.9と推定した。これらの比は用いられたモノマー供給比(すなわち、4.7/3.1/2.2、パート−A)にかなり近似しているため、各々のモノマーの重合速度が近似しており得られたターポリマー(F)および対応するマクロ光開始剤(G)は各々ランダムコポリマー主鎖構造を有することを示唆する。さらに、NMRスペクトルは、チオール官能性光開始剤(C)の2−メルカプトプロピオネート基の消費(δ2.74を中心にした狭い多重線の消失)および対応する2−チオプロピオネートエーテル末端ポリマー(G)の形成(δ2.6−3.0の広幅多重線の出現)を裏付けている。積分比δ4.45/δ4.3−3.9(末端基/反復単位)から推定される末端官能基度はほぼ定量的(すなわち、100%二官能性またはポリマー鎖当たり2光開始剤基)であることが分かった。
【0176】
(実施例−4)
本発明のマクロ光開始剤(I)を下記の記載に従って二段階で合成した。第一段階では、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、および2−メトキシエチルアクリレートの残基をモル比、7.5/2.0/0.5で含有するブロモ末端ポリアクリレートターポリマー(H)を、一電子移動重合方法で合成した。第二段階では、ブロモ末端ポリアクリレートターポリマー(H)を、末端ブロモ基を実施例−1のチオール官能性光開始剤(C)で置換することによって、マクロ光開始剤(I)に転化した。
【0177】
合成の第一段階(またはパート−A)(すなわち、ブロモ末端ポリアクリレートターポリマーHの合成)を以下のとおり実施した。ドライアイス・コンデンサー、機械的攪拌機、熱電対、FTIRプローブ、アルゴンパージ、ゴム隔膜付注入口、真空ラインを取り付け、さらに蠕動ポンプを用いて反応器に接続した外部触媒チャンバーを取り付けた6Lジャケット形重合反応器に、n−ブチルアクリレート(BA;2,012g;15.70モル)、エチルアクリレート(EA;419g;4.19モル)、2−メトキシエチルアクリレート(MEA;136g;1.05モル)、アセトン(2,135g)、水(142g)、およびトリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン(1.0g;4.3ミリモル)を添加した。反応混合物を攪拌して3℃に冷却し、約4.6m
2/kgの表面積を有する金網状の銅のロール(16.85g)を触媒チャンバーに置いた。システムをアルゴンでパージし、ジメチル−2,6−ジブロモヘプタンジオエート(26.336g;0.076モル)を、注射器を用いて隔膜より添加した。攪拌混合物を27℃に加温し、ポンプにより銅触媒を含む外部チャンバーへ速度400ml/分で送り出し、モノマーの重合を開始した。反応温度は、ポンプ輸送の最初の1時間に48℃まで上がり、次の3時間で徐々に27℃に下がり、その段階でもう一度トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン(1.0g;4.3ミリモル)を添加した。反応をさらに4時間続け、その段階におけるIR分析はモノマー転化率が92%であることを示した。緑色溶液を中性アルミナ(100g)床を介してろ過することにより溶解した銅塩を除去し、溶媒および残存モノマーを減圧蒸留によって除去し、モル比率が7.5/2.0/0.5であるブチルアクリレート、エチルアクリレート、および2−メトキシエチルアクリレートのジブロモ末端ランダムターポリマー(H)をほぼ無色の粘性液体(2,145g;収率83%)として得た。数平均分子量は、実施例−2の式を用いた計算により31,400に決定した。
【0178】
中間体ターポリマー(H)の構造および組成を
1HNMR分光分析およびクロマトグラフ分析によって確認した。結果を以下のとおりまとめる。
1HNMR(300MHz;CDCl
3):スペクトルは、以下の化学シフト、積分値、多重度、および帰属により、ポリアクリレート主鎖の特徴的なシグナルを示した:δ4.3−3.9、m、510H[エステル反復単位基の−CH
2−O−C(=O)−];δ3.67、s、4.32H(ピメレート開始剤の−OCH
3);δ3.60、t、17H(MEAの−CH
2OCH
3基);δ3.40、s、30H(MEAの−OCH
3基);δ2.25−2.45、m、234H(主鎖の−CH−);δ1.25−2.25、m、1430H(主鎖、BA反復単位および開始剤断片のC−CH
2−C基、およびEA単位のCH
3);δ0.95、t、597H(BA単位のブチル基の−CH
3)。数平均分子量(Mn)およびBA/EA/MEAの相対モル比率を、それぞれ39,700および7.8/1.8/4.0と推定した。
SEC(THF;1ml/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=35,300;PD=1.09。
【0179】
マクロ光開始剤(I)の合成を下記の記載に従って第二段階(またはパート−B)で実施した。ブロモ末端ターポリマー(H)(1000g;0.032モル)のアセトン(1,000ml)溶液を、機械的攪拌機、熱電対、および注入口を取り付けた3Lガラスジャケット形反応器に添加した。この溶液に、実施例1のチオール官能性光開始剤(C)(24.84g;0.080モル)および炭酸カリウム(10.99g;0.080モル)を黄色光の下で添加した。混合物を27℃で72時間攪拌し、CELITE珪藻土(100g)およびアルミナ(500g)の層状床を用いて圧力ろ過し、固体を除去した。溶媒を減圧除去し、臭素基がチオール官能性光開始剤(C)のチオール基によって置換された対応するターポリマー(810g;収率79%)を得た。得られたポリマー(I)の数平均分子量を、31,900と算出した。
【0180】
マクロ−光開始剤(I)の構造および組成を、
1HNMRおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で確認し、その結果を以下のとおりまとめる。
1HNMR(300MHz;CDCl
3):δ8.07、d、4H(Ar−HオルトC=O);δ6.96、d、4H(Ar−HメタC=O);δ4.45、t、4H[エチレングリコール末端単位の−CH
2−O−C(=O)−];δ4.47、t、(4H)[エチレングリコール末端単位の−CH
2−O−C(=O)−];δ4.3−3.9、m、562H[エステル反復単位基の−CH
2−O−Arおよび−CH
2−O−C(=O)−];δ3.63、s、8H(開始剤断片の−OCH
3);δ3.50、t、24H(MEAの−CH
2OCH
3基);δ3.32、s、34H(MEAの−OCH
3基);δ3.0−2.6、ブロードm、(12H)[−S−CH
2−CH
2−C(=O)−];δ2.17−2.48、m、267H(主鎖の−CH−);δ1.30−2.10、m、1609H[主鎖およびBA反復単位基C−CH
2−C、開始剤断片のエチル基、EA単位−CH
3および−C(CH
3)
2−];δ0.95、t、597H(BA単位のブチル基の−CH
3)。数平均分子量およびモル比率BA/EA/MEAを、それぞれ32,600および7.5/0.4/2.1であると推定した。
SEC(THF、1ml/分;RI検出器):Mn=37,200;PD=1.11。
【0181】
中間体のブロモ末端ポリアクリレートターポリマー(H)および対応する実施例−4のマクロ光開始剤(I)の相対的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析をインライン屈折率およびUV検出器を用いて実施した。
【0182】
UV検出波長として、マクロ−光開始剤(I)の芳香族ケトンに関連する非常に強いπ−π
*遷移に対応する270nmを選択した。両ポリマーの屈折率応答は似ていることが予想される(例えば、分子量および組成が類似しているため)のに対し、マクロ−光開始剤(I)中には芳香族ケトン基が存在するため270nmでのUV応答は著しく異なることが予想された。GPCの結果は、2つのポリマー構造における違いを明瞭に示した。図面の
図4(a)および4(b)を参照されたい。両ポリマーの屈折率応答は、類似の溶出時間で隆起ピークを示し類似していた。
図4(a)を参照されたい。対照的にUV応答は著しく異なった。
図4(b)を参照されたい。マクロ光開始剤(I)は、屈折率検出器からの溶出時間に対応して、非常に強い応答(すなわち、ピーク)を示した。しかしながら、中間体のブロモ末端ポリアクリレートターポリマー(H)は、UVに顕著な応答を示さなかった(全溶出時間に渡って実質的にベースライン出力波形を維持した)。
図4(b)を参照されたい。これらの観察結果により、実施例−4のマクロ光開始剤(I)がポリマー鎖の末端部分に付いた光開始剤基を有していたことが裏付けられる。
【0183】
(比較例−1)
チオール官能性光開始剤(C)から誘導された末端光開始剤基ではなく、末端アクリレート基を有する比較ターポリマー(J)を下記の記載に従って二段階で合成した。第一段階で、エチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、およびブチルアクリレート残基をモル比5/3/2で含有するブロモ末端ポリアクリレートターポリマー(F)を、実施例−3の第一段階(またはパート−A)に記載したように、一電子移動重合方法を用いて合成した。第二段階では、ブロモ末端ポリアクリレートターポリマー(F)を、その末端ブロモ基をアクリル酸のナトリウム塩で置換することにより比較ターポリマー(J)に転化した。比較ターポリマー(J)の合成を下記の合成スキーム−4にまとめる。
【0184】
【化32】
【0185】
機械的攪拌機および二重タービン翼、熱電対、還流コンデンサー、および加熱マントルを取り付けた5Lガラス反応器に、4−メトキシフェノール(0.32g;0.026モル)、分子量20,400および多分散性1.30のジブロモ末端アクリレートターポリマー(F)(1,546.00g)(実施例−4のパート−Aに記載した手順により、溶媒としてDMSOを使用して合成した)、およびDMSO(2,319g)を添加した。混合物を攪拌し、45℃で約1時間加熱してポリマーを溶解し、その後、粉砕ナトリウムアクリレート(73.45g;0.78モル)を添加した。加熱および攪拌をさらに144時間続けた。CELITE珪藻土(45g)を添加し、混合物を25分間攪拌し、加圧ろ過した。ろ液を蒸留フラスコに移し、ロータリーエバポレーターで772gのDMSOを除去して濃縮した(70℃、約20トール)。濃縮溶液を、機械的攪拌機を取り付けた12Lフラスコに移し、3.3Lのジクロロメタンで希釈し、3.3Lの水で3回洗浄した。ジクロロメタン溶液を遠心分離機で2,000rpm、30分間処理し、残留水を分離した。硫酸マグネシウム(150g)を添加し、混合物を加圧ろ過し、溶媒を減圧除去し、わずかに濁った、鎖末端で置換されたアクリレート基を有する液体ポリマーを得た(1,202g;収率78%)
【0186】
比較ターポリマー(J)の構造および組成を赤外線および
1HNMR分光法およびサイズ排除クロマトグラフィーによって確認した。その結果を以下にまとめる。ポリマー鎖当たりの平均末端アクリレート基数は、NMRスペクトルより1.9と推定された。
IR(ATR法):1727cm
−1ポリアクリレートのエステルカルボニル。
1HNMR(300MHz;CDCl
3):δ6.45、d、2H(C
1末端アルケン;シソイド);δ6.15、m、1H(C
2末端アルケン);δ5.90、d、2H(C
1末端アルケン;トランソイド);δ5.00、m、2H(C
4メチン、α−エステル);δ3.90−4.30、m、309H(−OCH
2−)(NMRスペクトルからの推定平均Mn=18,200)。
SEC(THF;1ml/分;RI検出器):平均Mn(PMMA較正)=20,600;多分散性=1.30(単峰性分布)。
【0187】
(実施例−A)
実施例−2のマクロ光開始剤(E)を含む硬化性組成物を調製し、下記の記載に従って化学線に曝露することによって硬化した。紫外線(UV)感受性組成物を、黄色光の下、0.065gの実施例−2のマクロ光開始剤(E)と、0.603gの1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとの混合によって調製した。マクロ光開始剤(E)は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートに容易に溶解し透明な溶液になった。得られた硬化性組成物の厚さ約1mmの液滴をスライドガラス上に置き、ZETA7730UVランプのワンドの先端の2.0cm下に配置し、5秒間、UV光に曝露した。較正済みUVPuckラジオメーターを用い、スライド表面での入射UV光強度は、0.23W/cm
2(UVA)、0.01W/cm
2(UVB)、0.0W/cm
2(UVC)、および0.22W/cm
2(UVV)であることが分かった。全ての場合に、液滴は硬質の透明なプラスチック固体に硬化したことが分かり、アセトンに不溶であった。対照的に、1,6−ヘキサンジオール単独の液滴は、同条件で紫外線(UV)光に曝露した場合、硬化しなかった。その結果は、本発明のマクロ光開始剤を含有する硬化性組成物が化学線、例えば、UV光への曝露により有効に硬化することを示す。
【0188】
(実施例−BおよびC)
実施例−3のマクロ光開始剤(G)を含む硬化性組成物を調製し、下記の記載に従って化学線への曝露により硬化した。硬化性液体組成物を、黄色光の下、表1に記載した成分を混合することにより調製した。液体材料を1cm×2cm、深さ0.5mmの浅い長方形のアルミニウム鋳型に流し込み、Fusion Systems H−バルブを取り付けたZETA7216ランプシステムからのUV光に30秒間曝露した。入射光強度は180mW/cm
2(UVA)と測定した。両方の配合物は、急速に硬化してアセトンに不溶の固体生成物(または重合物)となった。
【0189】
【表1】
【0190】
表−2にまとめた硬化状態の結果は、化学線、例えば、UV光に曝露することによって、本発明のマクロ光開始剤を含有する硬化性組成物が有効に硬化することを示し、ポリ(プロピレングリコールジアクリレート)、2−エチルヘキシルアクリレート、または1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどの少なくとも1つのエチレン系不飽和ラジカル重合性基を有する反応体の選択によって、得られる硬化生成物(または重合物)の特性を予想通りに制御できることを示す。
【0191】
(実施例−DおよびE)
実施例−3のマクロ光開始剤(G)を含む硬化性組成物、および比較例−1の比較ターポリマー(J)を含む硬化性組成物を、下の表−2にまとめる成分を混合することによって調製した。
【0192】
【表2】
【0193】
表−2で、DARACUR1173光開始剤は化学的には2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンであり、Ciba Specialty Chemicalsから市販されている。実施例−Eで添加した光開始剤の量は実施例−Dのマクロ光開始剤(G)の末端光開始剤基のモル濃度(すなわち、0.12モル/L)に対応するように選択した。実施例−DおよびEの光活性発色団は構造的に同じであり等しい量で存在するので、両組成物の吸光度または光学密度は類似している。アクリレート基の濃度は類似している(実施例−Dでは2.4当量アクリレート/リットル、実施例−Eでは1.8当量アクリレート/リットル)。
【0194】
振動光レオメーター(oscillatory photorheometer)を用いて、実施例−DおよびEの光硬化応答を検討した。これらの評価では、固定したUV透過性ガラスプレート(例えば、石英)と振動アルミニウムプレートとの間に密閉された組成物の均一フィルム(1.00mmのフィルム厚さ)に、正弦波歪みを加え生じた剪断をモニターした。周波数1Hz、および歪み振幅1%(線形粘弾性領域)で初期ひずみを与えた。定常応答の確立後(16秒)、レオメーターの透過プレート直下に設置した光ガイドを介して透過した水銀ランプ線源からのUV光にフィルムを曝露した。減衰フィルターおよび電子シャッターによってUV線量および照射時間を制御した。ピーク感度波長365nmの較正済みラジオメーターによる測定で、フィルム表面の入射UV光強度が8mW/cm
2となるように、フィルターを調節した。
【0195】
上述の手法により、UV光照射の結果としての機械特性の変化をリアルタイムでモニターした。複素弾性率(G
*)は、ゲル化前の異相粘性または液体応答(損失弾性率、G”)およびポリマーネットワークを形成した後の同相弾性または固体応答(貯蔵弾性率、G’)に関する(またはこれを追跡する)。ゲル化点を粘性および弾性率の交差(すなわち、位相角が45°)から推定する。図面の
図1で示すように、UV照射の間に起こるG
*の変化は大きい(約4桁)。実施例−DおよびEは、照射前、類似の粘度を有し10秒におけるG
*は実施例−DおよびEに対してそれぞれ0.6および0.3KPaである。しかしながら、硬化後の特性は著しく異なる。実施例−Dは、100秒において4.7MPaの剪断弾性率を有し、一方、実施例−Eの対応値は1.9MPaである。その結果は、末端光開始剤基を有するポリマー(すなわち、マクロ光開始剤G)が、対応するアクリレート末端置換基を有するポリマー(すなわち、比較ターポリマーJ)より効果的にポリマーネットワーク中に包含されることを示す。さらに、望ましい機械特性を得るためには、本発明のマクロ光開始剤(例えば、マクロ光開始剤G)を使用してポリマー鎖末端から重合を開始すること(例えば、グラフト化)が、非連結型の光開始剤を用いエチレン系不飽和のラジカル重合性末端基(例えば、比較ターポリマーJの末端アクリレート基のような)に結合されたポリマーを介してグラフト化する比較手法より有利であることを示す。
【0196】
図面の
図2に関しては、実施例−DおよびEの組成物が光硬化する間に起こる対応する位相角の変化を示す。UV光への曝露前は両組成物は安定な液体であるが、照射直後に位相角が急激に減少しそのとき液体材料がゲル化生成物(すなわち、位相角45°未満)を形成する。
【0197】
ゲルまたはネットワーク構造の形成に必要とされる初期照射からの時間により光硬化速度を推定することができる。さらに
図2を参照すると、実施例−Dに対するゲル化時間は4秒であり、一方、実施例−Eに対しては6秒であった。この結果は、光感受性が本発明のマクロ光開始剤を使用することにより改善されることを示す。これは特に驚くべき結果である。なぜなら、一般的には、ポリマーに結合する光重合性基のような反応性基を有するポリマーは、より高質量のポリマー材料に付随する分子移動性の低下および拡散速度の増加に起因して、同様の濃度における同等の低モル質量の化合物よりもゆっくり反応することが観察されるためである。
【0198】
初期照射直後の時間のレオメーター粘度測定データをさらに精査することにより、硬化速度をより正確に推定することができる。図面の
図3を参照すると、UV光の初期照射直後に明確な誘導時間が観察され、その間、非常に迅速なゲル化にもかかわらず弾性率の顕著な上昇は見られない。誘導時間については、
図3に示すように初期弾性率曲線の線形部分に対する接線を時間軸(すなわち、x−軸)に引き伸ばす(または延長する)ことによって決定した。この方法により誘導時間9秒(実施例−D)および13秒(実施例−E)を決定した。次いで、相対硬化速度を接線の傾きから推定し、3.9(実施例−D)および1.0(実施例−E)であることが分かった。従って、
図2を参照して議論したように、本発明のマクロ光開始剤の光感受性が望ましく増強されることが、
図3を参照してより正確に裏付けられた。
【0199】
本発明は、その特定の実施形態の特定の詳細を参照して説明されてきた。そのような詳細が添付の特許請求の範囲に含まれている場合を除いて、その詳細が本発明の範囲を限定すると見なされることは意図していない。